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haiku
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kigo
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鰤網引く腹の底から声を出し
平賀節代
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たんぽぽ
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winter
{ "id": 2292, "word": "鰤", "kana": "ぶり", "old_kana": null, "season": "winter", "subtitle": [ "寒鰤" ] }
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柩打つ冷たき石を持たさるる
平賀節代
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たんぽぽ
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winter
{ "id": 1885, "word": "冷たし", "kana": "つめたし", "old_kana": null, "season": "winter", "subtitle": [ "底冷え" ] }
40,486
母の待つおほつごもりの峠越ゆ
平賀節代
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たんぽぽ
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winter
{ "id": 1871, "word": "大晦日", "kana": "おおみそか", "old_kana": "おほみそか", "season": "winter", "subtitle": [ "大年", "大つごもり", "大三十日" ] }
40,487
鉄棒の子の腹見えて冬ぬくし
平賀節代
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たんぽぽ
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winter
{ "id": 1854, "word": "冬", "kana": "ふゆ", "old_kana": null, "season": "winter", "subtitle": [ "三冬", "九冬", "玄冬", "冬帝", "冬将軍" ] }
40,488
母ひとり残して帰る三日かな
平賀節代
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たんぽぽ
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new_year
{ "id": 2394, "word": "三日", "kana": "みっか", "old_kana": null, "season": "new_year", "subtitle": [] }
40,489
喧嘩独楽まつ黒に塗り無敵なる
平賀節代
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たんぽぽ
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new_year
{ "id": 2519, "word": "独楽", "kana": "こま", "old_kana": null, "season": "new_year", "subtitle": [ "独楽廻し", "独楽遊び", "独楽打つ" ] }
40,490
ぶちまける水の氷れり多喜二の忌
平賀節代
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たんぽぽ
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{ "id": 307, "word": "多喜二忌", "kana": "たきじき", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [ "多喜二の忌" ] }
40,491
闇へ手をのばして受くる春の雪
平賀節代
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たんぽぽ
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spring
{ "id": 67, "word": "春の雪", "kana": "はるのゆき", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [ "春雪", "春吹雪", "淡雪", "沫雪", "牡丹雪" ] }
40,492
父を知る人と話してあたたかし
平賀節代
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たんぽぽ
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spring
{ "id": 30, "word": "暖か", "kana": "あたたか", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [ "ぬくし", "春暖" ] }
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海にまだ匂ひのなくて春浅し
平賀節代
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たんぽぽ
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spring
{ "id": 7, "word": "春浅し", "kana": "はるあさし", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [ "浅き春", "浅香" ] }
40,494
遠足の子につぎつぎと牛鳴けり
平賀節代
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たんぽぽ
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{ "id": 117, "word": "遠足", "kana": "えんそく", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [] }
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さくらさくら一人になつてしまひけり
平賀節代
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たんぽぽ
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{ "id": 404, "word": "桜", "kana": "さくら", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [ "彼岸桜", "枝垂桜", "糸桜", "大山桜", "大島桜", "富士桜", "豆桜", "霞桜", "嶺桜", "深山桜", "丁子桜", "牡丹桜", "里桜", "染井吉野", "朝桜", "夕桜", "夜桜", "若桜", "老桜" ] }
40,497
島の数かぞへて春を惜しみけり
平賀節代
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たんぽぽ
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spring
{ "id": 43, "word": "春惜しむ", "kana": "はるおしむ", "old_kana": "はるをしむ", "season": "spring", "subtitle": [ "惜春", "三月尽", "弥生尽", "四月尽" ] }
40,498
生徒らと五月の朝の窓あけて
長谷川素逝
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長谷川素逝全句集
素逝は、昭和9年9月から母校である津中学校へ、国語の教師として赴任。ボート部を指導し、当時のクルーは全国優勝を果たした。スポーツマンで偉丈夫な素逝だったが、昭和12年、日華事変に応召して中国大陸を転戦、体をこわし昭和21年、40歳の若さで亡くなる。虚子はその死を悼み「まっすぐに炉に飛び込みし如くなり」とうたった。明快で、さわやかな掲句、朝早く登校した生徒らと一緒に窓を開けるのである。明るい話し声が聞こえてきそうだ。校庭の木々を揺らしみどりの風が吹いてくる。五月という季語が動かない。五月以外の何月であっても、このみずみずしさ、さわやかさは伝わらない。素逝はどんな先生だったのだろうとふっと思った。私は15歳で陸の孤島とよばれた旧南島町の漁村を出て、一人自炊をして伊勢の宇治山田高等学校に通った。そこでS先生との出会いがあった。50年経た今も、先生に教えられた、物の見方考え方、数々の言葉が私を支えてくれている。教科は国語、新聞部の顧問だった。先生は「よく遊びよく学べ」をモットーに、教室を飛び出して屋上や戸外での授業もよくされた。私たちは、休みには津の先生のお家にお邪魔した。大学生や、社会人の教え子も集まってきて交流が始まる。一部屋に20人も30人も入り、歌を歌った。戦争を平和を、世の中の矛盾を、恋愛を夜が明けるまで語り合った。沢山の詩歌も教えてもらった。心を自由にしてもらった。先生は私たちの学校から津高へ転勤、素逝と同じボート部の顧問に。その頃、津高ボート部は100周年を迎え、その事業として素逝の句碑を建立する事になった。選ばれた句、この「五月の朝の窓」の句。生徒誰もが読めるようにと明朝体で刻まれた。今も校門のそばで登校する生徒を迎えている。「人生が豊かになるぞ」と俳句に誘って下さったのもS先生だった。先生を慕う教え子たちで俳句会を立ち上げ、再び教えを受けた。高齢でS先生の指導を願えなくなった現在も俳句会は続いている。
平賀節代
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summer
{ "id": 587, "word": "五月", "kana": "ごがつ", "old_kana": "ごぐわつ", "season": "summer", "subtitle": [ "五月来る", "聖五月" ] }
40,498
生徒らと五月の朝の窓あけて
長谷川素逝
null
長谷川素逝全句集
素逝は、昭和9年9月から母校である津中学校へ、国語の教師として赴任。ボート部を指導し、当時のクルーは全国優勝を果たした。スポーツマンで偉丈夫な素逝だったが、昭和12年、日華事変に応召して中国大陸を転戦、体をこわし昭和21年、40歳の若さで亡くなる。虚子はその死を悼み「まっすぐに炉に飛び込みし如くなり」とうたった。明快で、さわやかな掲句、朝早く登校した生徒らと一緒に窓を開けるのである。明るい話し声が聞こえてきそうだ。校庭の木々を揺らしみどりの風が吹いてくる。五月という季語が動かない。五月以外の何月であっても、このみずみずしさ、さわやかさは伝わらない。素逝はどんな先生だったのだろうとふっと思った。私は15歳で陸の孤島とよばれた旧南島町の漁村を出て、一人自炊をして伊勢の宇治山田高等学校に通った。そこでS先生との出会いがあった。50年経た今も、先生に教えられた、物の見方考え方、数々の言葉が私を支えてくれている。教科は国語、新聞部の顧問だった。先生は「よく遊びよく学べ」をモットーに、教室を飛び出して屋上や戸外での授業もよくされた。私たちは、休みには津の先生のお家にお邪魔した。大学生や、社会人の教え子も集まってきて交流が始まる。一部屋に20人も30人も入り、歌を歌った。戦争を平和を、世の中の矛盾を、恋愛を夜が明けるまで語り合った。沢山の詩歌も教えてもらった。心を自由にしてもらった。先生は私たちの学校から津高へ転勤、素逝と同じボート部の顧問に。その頃、津高ボート部は100周年を迎え、その事業として素逝の句碑を建立する事になった。選ばれた句、この「五月の朝の窓」の句。生徒誰もが読めるようにと明朝体で刻まれた。今も校門のそばで登校する生徒を迎えている。「人生が豊かになるぞ」と俳句に誘って下さったのもS先生だった。先生を慕う教え子たちで俳句会を立ち上げ、再び教えを受けた。高齢でS先生の指導を願えなくなった現在も俳句会は続いている。
平賀節代
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summer
{ "id": 593, "word": "皐月", "kana": "さつき", "old_kana": null, "season": "summer", "subtitle": [ "五月", "早苗月" ] }
40,499
梅一輪一輪ずつの放射能
高野ムツオ
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萬の翅
作者は宮城県多賀城市在住。梅は春の訪れを告げる花。3.11までは、一輪一輪咲き増えてくる梅に、いのち溢れる春の到来を喜んでおられたことだろう。福島原発の水素爆発は、放射能を拡散、福島、宮城をはじめ広範な国土を、瞬時に汚染してしまった。14万人もの人が、ふるさとを追われ、今も9万人もの人がわが家に帰れないでいる。あの日から五たびの春が巡り、梅は咲いた。梅は咲いてもそこに春を喜ぶ人がいない。汚染土を詰めた黒い袋が累々と並ぶばかり。永久に時間が止まったような町。この句の内に広がる光景は、身の竦むほど怖ろしいものだ。原発の安全神話が崩れたこの時、やっぱりと思った。故郷南島町(現南伊勢町)は、37年にわたり中部電力芦浜原発設置に反対して、白紙撤回を勝ち取った。「本当に安全ならもっと便利な都会に作れ」と漁民は言いつづけた。中電、国、県、学者が一丸となり、圧倒的な金と権力で、貧しくても助けあって生きてきた共同体をずたずたに引き裂き、踏みにじった。転んで泣く子を、反対派の子か賛成派かと顔を確かめる。中学校の同窓会も開けない。親、兄弟、親戚が二つに分かれていがみ合う。反対派への嫌がらせは手を変え品を変えて壮絶だった。海を守る、と男たち、子どもを守る、と女たち。この闘いの終盤、12月の底冷えのする朝、機動隊と対峙することになった。その時、流血を避けるため女たちがピケの前列に立った。母たち年寄りは般若心経を唱えた。「ゴボウぬき」が始まる。妹はその後に、自分たちが闘つていたもの大きさ怖さを知ったと言った。いのち賭けの闘いが白紙撤回を勝ち取るまでには、この後6年を有した。福島原発のこの事態にだれ一人責任をとらない。溶融した原子炉の処理の方法すら見つからずにいるのに再稼働。あろうことか海外へ売ろうとまでしている。国のため、金儲けのために多くの犠牲を可とする、弱い者を切り捨てる差別が原発政策の底にある。春天より我らが生みし放射能高野ムツオ痛恨の一句が迫ってくる。
平賀節代
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spring
{ "id": 398, "word": "梅", "kana": "うめ", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [ "好文木", "花の兄", "春告草", "野梅", "白梅", "臥竜梅", "豊後梅", "枝垂梅", "盆梅", "老梅", "梅が香", "梅林", "梅園" ] }
40,500
芒原キツネにさびしい尾があって
室生幸太郎
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昭和
心象のキツネが現れた。尾は太くて長い。「芒原のキツネ」の世界が見えて来た。実際、夜行性の狐が行動狡猾で人を化かすという伝承があるにしても、眼前の動物はやはり心象のキツネである。「芒原のキツネ」「さびしい尾があって」の世界であれば、季重ねにはならない。さびしい尾が愛おしく思えてくる、同時に句全体が芒原いちめんに変っていくようでおもしろい。自然は全てをさらけだしている。作者は、“出来るだけ肩の力を抜いて俳句とつき合っていきたい、自然にわき出るような句を作りたい。また、戦中、戦後を肌で感じながら育った昭和一桁生まれの私にとって、「昭和」という時代にたいする思いは深い”と、言っている。室生氏は、岡山県笠岡市生まれ。大阪府箕面市在住。昭和27年「青玄」入会、日野草城に師事。昭和31年草城没後は伊丹三樹彦に師事。平成18年「青玄」終刊により、19年後継誌「暁」を創刊、代表。20年、第63回現代俳句協会賞を受賞。句集に、『海辺』『夕景』、他に『日野草城全句集』『日野晏子遺句集』『日野草城句集』の編集など。句集『昭和』より(平成21年角川書店刊)昭和ヒトケタ前へ進めず花の中飛花落花昭和を忘れたい人に大昼寝老いては猫にしたがって母をなおこの世にのこすぼたん雪眼帯して少年の日の西日に会う芒原昭和の波の音ばかり父の声探す黄落の樹を揺すり
関戸美智子
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autumn
{ "id": 1808, "word": "芒", "kana": "すすき", "old_kana": null, "season": "autumn", "subtitle": [ "薄", "尾花", "花芒", "鬼芒", "糸芒", "十寸穂の芒" ] }
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体内を去らぬ昏さよ梅の花
岡田一夫
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月の庭
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spring
{ "id": 398, "word": "梅", "kana": "うめ", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [ "好文木", "花の兄", "春告草", "野梅", "白梅", "臥竜梅", "豊後梅", "枝垂梅", "盆梅", "老梅", "梅が香", "梅林", "梅園" ] }
40,502
魂を運び疲れて麦の秋
岡田一夫
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月の庭
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summer
{ "id": 591, "word": "麦の秋", "kana": "むぎのあき", "old_kana": null, "season": "summer", "subtitle": [ "麦秋", "麦秋" ] }
40,503
自画像に黄金の鋲打つ油照り
岡田一夫
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月の庭
null
null
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summer
{ "id": 654, "word": "油照", "kana": "あぶらでり", "old_kana": null, "season": "summer", "subtitle": [ "脂照" ] }
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竹馬のいつかゆきつく父の闇
岡田一夫
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月の庭
null
null
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winter
{ "id": 2157, "word": "竹馬", "kana": "たけうま", "old_kana": null, "season": "winter", "subtitle": [] }
40,505
月の庭いくさのあとの匂ひせり
岡田一夫
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月の庭
null
null
null
autumn
{ "id": 1389, "word": "月", "kana": "つき", "old_kana": null, "season": "autumn", "subtitle": [ "初月", "二日月", "三日月", "新月", "弦月", "夕月", "宵月", "夕月夜", "有明月", "昼の月", "遅月", "月白", "月夜", "月の出", "月光", "月明り", "月影" ] }
40,506
僧侶たち眼に種子を播いてをり
岡田一夫
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月の庭
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spring
{ "id": 171, "word": "種蒔", "kana": "たねまき", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [ "種下し", "播種", "籾蒔く" ] }
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口に飯運び疲れて鳥渡る
岡田一夫
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月の庭
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null
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autumn
{ "id": 1593, "word": "渡り鳥", "kana": "わたりどり", "old_kana": null, "season": "autumn", "subtitle": [ "鳥渡る", "小鳥来る", "鳥雲" ] }
40,509
櫻花論ひとり二人と飯にゆく
岡田一夫
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月の庭
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spring
{ "id": 404, "word": "桜", "kana": "さくら", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [ "彼岸桜", "枝垂桜", "糸桜", "大山桜", "大島桜", "富士桜", "豆桜", "霞桜", "嶺桜", "深山桜", "丁子桜", "牡丹桜", "里桜", "染井吉野", "朝桜", "夕桜", "夜桜", "若桜", "老桜" ] }
40,510
修司忌の果肉のおつる喉の闇
岡田一夫
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月の庭
null
null
null
summer
{ "id": 2815, "word": "修司忌", "kana": "しゅうじき", "old_kana": null, "season": "summer", "subtitle": [ "寺山忌", "修司の忌" ] }
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手のすすき車中を祓ひ了りけり
岡田一夫
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月の庭
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autumn
{ "id": 1808, "word": "芒", "kana": "すすき", "old_kana": null, "season": "autumn", "subtitle": [ "薄", "尾花", "花芒", "鬼芒", "糸芒", "十寸穂の芒" ] }
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秋天や体内に斧たてかけて
岡田一夫
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月の庭
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autumn
{ "id": 1384, "word": "秋の空", "kana": "あきのそら", "old_kana": null, "season": "autumn", "subtitle": [ "秋空(あきぞら)", "秋の天", "秋天" ] }
40,513
寺棲みの蚊に刺されけり東人
岡田一夫
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月の庭
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summer
{ "id": 1055, "word": "蚊", "kana": "か", "old_kana": null, "season": "summer", "subtitle": [] }
40,514
花芒寺の厠に日が差して
岡田一夫
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月の庭
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autumn
{ "id": 1808, "word": "芒", "kana": "すすき", "old_kana": null, "season": "autumn", "subtitle": [ "薄", "尾花", "花芒", "鬼芒", "糸芒", "十寸穂の芒" ] }
40,515
唇美しき仏と寝たり柿月夜
岡田一夫
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月の庭
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autumn
{ "id": 1389, "word": "月", "kana": "つき", "old_kana": null, "season": "autumn", "subtitle": [ "初月", "二日月", "三日月", "新月", "弦月", "夕月", "宵月", "夕月夜", "有明月", "昼の月", "遅月", "月白", "月夜", "月の出", "月光", "月明り", "月影" ] }
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梵鐘の微動してゐる秋のてふ
岡田一夫
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月の庭
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autumn
{ "id": 1625, "word": "秋の蝶", "kana": "あきのちょう", "old_kana": "あきのてふ", "season": "autumn", "subtitle": [ "秋蝶" ] }
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緑陰を浴ぶる肉体盛りかな
岡田一夫
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月の庭
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summer
{ "id": 1133, "word": "緑蔭", "kana": "りょくいん", "old_kana": null, "season": "summer", "subtitle": [ "翠蔭(すいいん)" ] }
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わが肉の容も映り冬がすみ
岡田一夫
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月の庭
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winter
{ "id": 1934, "word": "冬霞", "kana": "ふゆがすみ", "old_kana": null, "season": "winter", "subtitle": [ "冬の霞", "寒霞" ] }
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花冷えの指のつづきの腕かな
岡田一夫
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月の庭
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spring
{ "id": 35, "word": "花冷え", "kana": "はなびえ", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [] }
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ゆつくりと倒されてゆく春の寺
岡田一夫
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月の庭
null
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spring
{ "id": 1, "word": "春", "kana": "はる", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [ "陽春", "芳春" ] }
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この秋の何処まで父を捨てにゆく
岡田一夫
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黄塵
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autumn
{ "id": 1336, "word": "秋", "kana": "あき", "old_kana": null, "season": "autumn", "subtitle": [ "素秋", "金秋", "三秋", "九秋" ] }
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非常ベル短く試す秋の昏れ
岡田一夫
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黄塵
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autumn
{ "id": 1359, "word": "秋の暮", "kana": "あきのくれ", "old_kana": null, "season": "autumn", "subtitle": [ "秋の夕べ", "秋の夕暮" ] }
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尼寺やみみず伸縮してゐたり
岡田一夫
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黄塵
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summer
{ "id": 1078, "word": "蚯蚓", "kana": "みみず", "old_kana": null, "season": "summer", "subtitle": [ "蚯蚓出づ(ず)" ] }
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春の日は毎日をはり晩ご飯
岡田一夫
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黄塵
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spring
{ "id": 45, "word": "春の日", "kana": "はるのひ", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [ "春日", "春日", "春日影" ] }
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うぐひすや鏡の前を片付けて
岡田一夫
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spring
{ "id": 327, "word": "鶯", "kana": "うぐいす", "old_kana": "うぐひす", "season": "spring", "subtitle": [ "黄鳥", "匂鳥", "春告鳥", "初音", "鶯の谷渡り", "鶯笛" ] }
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風呂敷の持ち重りして藤の花
岡田一夫
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spring
{ "id": 435, "word": "藤", "kana": "ふじ", "old_kana": "ふぢ", "season": "spring", "subtitle": [ "藤の花", "白藤", "山藤", "藤の房", "藤浪", "藤棚" ] }
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水曲げて使ふホースや鳥帰る
岡田一夫
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spring
{ "id": 343, "word": "鳥帰る", "kana": "とりかえる", "old_kana": "とりかへる", "season": "spring", "subtitle": [ "小鳥帰る", "鳥引く", "引鳥" ] }
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足跡の草起き上がる芒種かな
岡田一夫
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summer
{ "id": 595, "word": "芒種", "kana": "ぼうしゅ", "old_kana": "ばうしゅ", "season": "summer", "subtitle": [] }
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象膚に象くるまれて花の山
岡田一夫
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{ "id": 405, "word": "花", "kana": "はな", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [ "花盛り", "花明り", "花影", "花時", "花過ぎ", "花の雨", "花の山", "花の昼", "花の雲", "花埃", "花便り", "花の宿", "花片" ] }
40,531
花ミモザ肩甲骨に飛翔感
岡田一夫
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spring
{ "id": 436, "word": "ミモザの花", "kana": "みもざのはな", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [ "銀葉(ぎんよう)アカシア" ] }
40,532
笛の衆眉毛に霧をのせてをり
岡田一夫
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autumn
{ "id": 1418, "word": "霧", "kana": "きり", "old_kana": null, "season": "autumn", "subtitle": [ "朝霧", "夕霧", "夜霧", "山霧", "川霧", "狭霧", "霧襖", "霧雨", "濃霧", "霧笛" ] }
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水差の水嵩の影素十の忌
岡田一夫
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autumn
{ "id": 1585, "word": "素十忌", "kana": "すじゅうき", "old_kana": "すじふき", "season": "autumn", "subtitle": [ "金風忌" ] }
40,534
焼芋の一つ余ると皆おもふ
岡田一夫
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{ "id": 2035, "word": "焼藷", "kana": "やきいも", "old_kana": null, "season": "winter", "subtitle": [ "焼芋", "石焼芋" ] }
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公園の周りの街の年用意
岡田一夫
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winter
{ "id": 1964, "word": "年用意", "kana": "としようい", "old_kana": null, "season": "winter", "subtitle": [ "春支度" ] }
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右腕は雲の匂いに蓬摘む
守谷茂泰
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「耀」
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{ "id": 563, "word": "蓬", "kana": "よもぎ", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [ "餅草", "艾草", "さしも草", "蓬生", "蓬摘む" ] }
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冬蜂に琥珀の日向ありにけり
守谷茂泰
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「海程」
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{ "id": 2308, "word": "冬の蜂", "kana": "ふゆのはち", "old_kana": null, "season": "winter", "subtitle": [ "冬蜂", "凍蜂" ] }
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夜の卓に逃亡兵の蟻が来る
守谷茂泰
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「海程」
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{ "id": 1068, "word": "蟻", "kana": "あり", "old_kana": null, "season": "summer", "subtitle": [ "山蟻", "蟻の道", "蟻の塔", "蟻塚", "蟻の列", "蟻の門渡り" ] }
40,539
音のない花火が開く水枕
守谷茂泰
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「海程」
null
null
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summer
{ "id": 860, "word": "花火", "kana": "はなび", "old_kana": null, "season": "summer", "subtitle": [ "煙火", "打揚花火", "仕掛花火", "線香花火", "手花火", "春花火", "遠花火", "花火舟", "花火見" ] }
40,540
蜂の眼にわれはさびしき銀河かな
守谷茂泰
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「海程」
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spring
{ "id": 391, "word": "蜂", "kana": "はち", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [ "蜜蜂", "女王蜂", "働蜂", "熊蜂", "穴蜂", "土蜂", "足長蜂", "蜂の巣" ] }
40,541
渇水の街にさなぎの月が出る
守谷茂泰
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「海程」
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autumn
{ "id": 1389, "word": "月", "kana": "つき", "old_kana": null, "season": "autumn", "subtitle": [ "初月", "二日月", "三日月", "新月", "弦月", "夕月", "宵月", "夕月夜", "有明月", "昼の月", "遅月", "月白", "月夜", "月の出", "月光", "月明り", "月影" ] }
40,543
刃を入れる朱欒あかるき気体なり
守谷茂泰
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「海程」
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winter
{ "id": 2333, "word": "朱欒", "kana": "ざぼん", "old_kana": null, "season": "winter", "subtitle": [ "うちむらさき", "文旦", "ぼんたん" ] }
40,545
こときれる冬蜂ひとつまみの火薬
守谷茂泰
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「海程」
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winter
{ "id": 2308, "word": "冬の蜂", "kana": "ふゆのはち", "old_kana": null, "season": "winter", "subtitle": [ "冬蜂", "凍蜂" ] }
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知恵の輪の解けるしずけさ蝶生まる
守谷茂泰
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「海程」
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spring
{ "id": 390, "word": "蝶", "kana": "ちょう", "old_kana": "てふ", "season": "spring", "subtitle": [ "蝶々", "胡蝶", "初蝶", "白蝶", "黄蝶", "紋白蝶", "烏蝶", "蝶生る", "てふてふ" ] }
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枇杷剥くや水半球は夜のなか
守谷茂泰
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「海程」
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summer
{ "id": 1122, "word": "枇杷", "kana": "びわ", "old_kana": null, "season": "summer", "subtitle": [ "枇杷の実" ] }
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転校生セロリのように笑う初夏
守谷茂泰
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「海程」
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summer
{ "id": 585, "word": "初夏", "kana": "しょか", "old_kana": "しよか", "season": "summer", "subtitle": [ "初夏", "夏初め", "首夏", "孟夏" ] }
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二十世紀に長い余白の月昇る
守谷茂泰
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「海程」
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autumn
{ "id": 1389, "word": "月", "kana": "つき", "old_kana": null, "season": "autumn", "subtitle": [ "初月", "二日月", "三日月", "新月", "弦月", "夕月", "宵月", "夕月夜", "有明月", "昼の月", "遅月", "月白", "月夜", "月の出", "月光", "月明り", "月影" ] }
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ふきのとう日溜りというかすかな毒
守谷茂泰
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「海程」
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{ "id": 562, "word": "蕗の薹", "kana": "ふきのとう", "old_kana": "ふきのたう", "season": "spring", "subtitle": [ "蕗の芽", "蕗の花", "春の蕗" ] }
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蒲公英はアジアの天幕の匂い
守谷茂泰
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「海程」
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spring
{ "id": 538, "word": "蒲公英", "kana": "たんぽぽ", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [ "鼓草", "藤菜", "蒲公英の絮" ] }
40,552
耳とはなんのかけらであろう鳥帰る
守谷茂泰
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「海程」
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spring
{ "id": 343, "word": "鳥帰る", "kana": "とりかえる", "old_kana": "とりかへる", "season": "spring", "subtitle": [ "小鳥帰る", "鳥引く", "引鳥" ] }
40,553
ひとごろしのような空だな蟇
守谷茂泰
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「海程」
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summer
{ "id": 957, "word": "蟇", "kana": "ひきがえる", "old_kana": "ひきがへる", "season": "summer", "subtitle": [ "蟾蜍", "蟾", "蝦蟇", "がまがへる" ] }
40,554
かりんの実雨の神経てのひらに
守谷茂泰
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「海程」
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autumn
{ "id": 1679, "word": "榠櫨の実", "kana": "かりんのみ", "old_kana": "くわりんのみ", "season": "autumn", "subtitle": [ "花梨の実" ] }
40,555
冬雲をこつんと置いたピアニスト
守谷茂泰
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「海程」
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winter
{ "id": 1902, "word": "冬の雲", "kana": "ふゆのくも", "old_kana": null, "season": "winter", "subtitle": [ "冬雲", "凍雲", "寒雲" ] }
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風邪の子の夢はやどり木のかたち
守谷茂泰
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「海程」
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winter
{ "id": 2164, "word": "風邪", "kana": "かぜ", "old_kana": null, "season": "winter", "subtitle": [ "感冒", "流行風邪", "流感", "風邪声", "鼻風邪", "風邪心地", "風邪薬", "風邪の神" ] }
40,557
古書店に入る凍雲を嗅ぐように
守谷茂泰
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「海程」
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winter
{ "id": 1902, "word": "冬の雲", "kana": "ふゆのくも", "old_kana": null, "season": "winter", "subtitle": [ "冬雲", "凍雲", "寒雲" ] }
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橙を夜の船室と思い剥く
守谷茂泰
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「海程」
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autumn
{ "id": 1675, "word": "橙", "kana": "だいだい", "old_kana": null, "season": "autumn", "subtitle": [ "回青燈", "かぶす" ] }
40,559
刃を呑んだ顔で真冬の月昇る
守谷茂泰
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「海程」
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winter
{ "id": 1892, "word": "冬深し", "kana": "ふゆふかし", "old_kana": null, "season": "winter", "subtitle": [ "冬深む", "暮の冬", "真冬" ] }
40,560
てのひらがいちばん明るい枯野かな
守谷茂泰
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「海程」
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winter
{ "id": 1942, "word": "枯野", "kana": "かれの", "old_kana": null, "season": "winter", "subtitle": [ "大枯野", "朽野", "枯野道", "枯野人", "枯野宿", "枯原" ] }
40,561
灰のような会話の上を鳥帰る
守谷茂泰
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「海程」
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spring
{ "id": 343, "word": "鳥帰る", "kana": "とりかえる", "old_kana": "とりかへる", "season": "spring", "subtitle": [ "小鳥帰る", "鳥引く", "引鳥" ] }
40,562
空蟬の中は運河の街であり
守谷茂泰
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「海程」
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summer
{ "id": 1049, "word": "空蟬", "kana": "うつせみ", "old_kana": null, "season": "summer", "subtitle": [ "蟬の殻", "蟬の脱殻" ] }
40,564
芒野を最上階と思うかな
守谷茂泰
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「海程」
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autumn
{ "id": 1808, "word": "芒", "kana": "すすき", "old_kana": null, "season": "autumn", "subtitle": [ "薄", "尾花", "花芒", "鬼芒", "糸芒", "十寸穂の芒" ] }
40,565
冬かもめ朝が漂流物であり
守谷茂泰
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「海程」
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winter
{ "id": 2284, "word": "冬鷗", "kana": "ふゆかもめ", "old_kana": null, "season": "winter", "subtitle": [ "鷗", "鴎" ] }
40,566
目かくしと思う月日よ蓬摘む
守谷茂泰
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「海程」
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spring
{ "id": 563, "word": "蓬", "kana": "よもぎ", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [ "餅草", "艾草", "さしも草", "蓬生", "蓬摘む" ] }
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水際は物思うなり木の実降る
守谷茂泰
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「海程」
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autumn
{ "id": 1701, "word": "木の実", "kana": "このみ", "old_kana": null, "season": "autumn", "subtitle": [ "木の実落つ", "木の実降る", "木の実雨", "木の実独楽" ] }
40,569
微塵の語ふと怖ろしき寒卵
守谷茂泰
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「海程」
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winter
{ "id": 2032, "word": "寒卵", "kana": "かんたまご", "old_kana": null, "season": "winter", "subtitle": [] }
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流星に音なき不思議冬の旅
守谷茂泰
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「海程」
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winter
{ "id": 1854, "word": "冬", "kana": "ふゆ", "old_kana": null, "season": "winter", "subtitle": [ "三冬", "九冬", "玄冬", "冬帝", "冬将軍" ] }
40,571
わが影を憶えていたる春の坂
守谷茂泰
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「海程」
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spring
{ "id": 1, "word": "春", "kana": "はる", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [ "陽春", "芳春" ] }
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大百足夜より黒く歩みけり
守谷茂泰
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「海程」
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summer
{ "id": 1073, "word": "百足", "kana": "むかで", "old_kana": null, "season": "summer", "subtitle": [ "蜈蚣" ] }
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惑星の引き合う夜の葡萄かな
守谷茂泰
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「海程」
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autumn
{ "id": 1665, "word": "葡萄", "kana": "ぶどう", "old_kana": "ぶだう", "season": "autumn", "subtitle": [ "葡萄園", "葡萄棚" ] }
40,574
象の居た後の日溜り二月来る
守谷茂泰
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「海程」
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spring
{ "id": 2, "word": "二月", "kana": "にがつ", "old_kana": "にぐわつ", "season": "spring", "subtitle": [ "二月尽" ] }
40,575
ここにいることが遠景梅咲けり
守谷茂泰
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「海程」
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spring
{ "id": 398, "word": "梅", "kana": "うめ", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [ "好文木", "花の兄", "春告草", "野梅", "白梅", "臥竜梅", "豊後梅", "枝垂梅", "盆梅", "老梅", "梅が香", "梅林", "梅園" ] }
40,576
優しさや既に目の無き山椒魚
守谷茂泰
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「海程」
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summer
{ "id": 958, "word": "山椒魚", "kana": "さんしょううお", "old_kana": "さんせううを", "season": "summer", "subtitle": [ "はんざき" ] }
40,577
船上のごとき夏野に傾けり
守谷茂泰
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「海程」
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summer
{ "id": 661, "word": "夏野", "kana": "なつの", "old_kana": null, "season": "summer", "subtitle": [ "夏野原", "青野" ] }
40,578
人体はみな岬かな鳥帰る
守谷茂泰
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「海程」
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spring
{ "id": 343, "word": "鳥帰る", "kana": "とりかえる", "old_kana": "とりかへる", "season": "spring", "subtitle": [ "小鳥帰る", "鳥引く", "引鳥" ] }
40,579
ゆりの木の花の一座や地下墓地(カタコンベ)
宮坂静生
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雛土蔵
イタリア三句の前書ある中の一句。アッピア街道沿いのカタコンベ訪問時の吟である。歴史の一翼を担って逝った古代キリスト教徒を、祝ぐようにまた悼むように零れてゆく白い花に託した鎮魂詠であり、目前のゆりの木の花となって蘇った彼らへの詠嘆でもある。静生俳句の紛れもない特質である地貌詠は、土地土地への関心を強く喚起する。止み難い異郷への関心に突き動かされた海外詠が、静生俳句に多々登場するのも当然の帰結でもある。同時に、貪欲とも言い得ることばの探索も要求し、地貌と措辞は謂わば静生俳句の車の両輪とも表現できるであろう。昨年同行したポルトガル吟行時の印象は殊に強烈であった。静生は、行く先々の名所旧跡にてのガイドの話を逐一書き留めていく外、その事物のスケッチまでも始めるのである。そこまで礼を尽くされた対象は、微笑んで最も適切なことばをそっと耳にささやくことになる。その伝で行けば掲句は、「花の一座」という出色の措辞によって実現した一編のドラマである。ゆりの木の花々が、古代イタリアの歴史模様を、クリスチャンの魂を包摂して演じ切り、読み手にどうだと見栄を切った趣は、日本固有の風流とも表現できるであろう。平成二十三年作。句集『雛土蔵』所収。撮影:青木繁伸(群馬県前橋市)
柏田浪雅
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summer
{ "id": 2723, "word": "百合の木", "kana": "ゆりのき", "old_kana": null, "season": "summer", "subtitle": [ "ユリノキ", "百合の樹" ] }
40,582
蝶が来ぬ生後三日の牛の仔に
細田恵子
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碧海
楸邨門下の俊英である。惜しくも先年遠い国へ旅立ってしまったが、仲間内では今もって「紅梅忌」の忌日名を持ち、光輝を放ち続けている。写実を基本としつつも、諷詠に確固たる心象を込め、虚と実の間を自在に遊ぶことのできる人であった。俳句に足を踏み入れたばかりの浪雅が、いつも憧憬をもって句会を共にした覚えがある。後年、宿痾に苦しみ続けたが、決して俳句を捨てることのなかった女性俳人である。掲句は、叙景に終始した単調な詠みぶりながらも、名状しがたい不思議な雰囲気を感じる。それが何であるのか把握するのに、かなり時間をかけることとなってしまった。昨今は全盛であるが、当時は一部の人が唱える他に関心を寄せる人の少なかったアニミズムに、細田は深く感じ入り理解していたことが窺える。生まれたばかりの仔牛に、細田は魂が宿って行くのを確かに見た。その時実景の蝶がふらふらと飛んできたというのである。蝶にしつらえ、魂を牛に宿らせた造化の妙に感動した細田の顔がまざまざと見えて来る。またそれを大袈裟にでなく、叙景の句として淡々と詠い得る細田の手腕に驚かされる。楸邨存命の頃は、シルクロード他の海外にまで同行し、旺盛な作句活動に終始した人であった。生前、彼女からの海外土産を頂戴することがあったのも懐かしい思い出である。春立つやサハラの砂を残し逝く浪雅
柏田浪雅
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spring
{ "id": 390, "word": "蝶", "kana": "ちょう", "old_kana": "てふ", "season": "spring", "subtitle": [ "蝶々", "胡蝶", "初蝶", "白蝶", "黄蝶", "紋白蝶", "烏蝶", "蝶生る", "てふてふ" ] }
40,584
かさぶたを桜のようにはがします
中内亮玄
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眠れぬ夜にひとりで読んでみろよ
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spring
{ "id": 404, "word": "桜", "kana": "さくら", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [ "彼岸桜", "枝垂桜", "糸桜", "大山桜", "大島桜", "富士桜", "豆桜", "霞桜", "嶺桜", "深山桜", "丁子桜", "牡丹桜", "里桜", "染井吉野", "朝桜", "夕桜", "夜桜", "若桜", "老桜" ] }
40,585
猫の恋透明なリストカットかな
中内亮玄
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眠れぬ夜にひとりで読んでみろよ
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{ "id": 319, "word": "猫の恋", "kana": "ねこのこい", "old_kana": "ねこのこひ", "season": "spring", "subtitle": [ "恋猫", "猫交る", "うかれ猫", "猫の夫", "猫の妻", "春の猫", "孕猫" ] }
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少女ひとり夏みかんくらい寡黙です
中内亮玄
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眠れぬ夜にひとりで読んでみろよ
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{ "id": 438, "word": "夏蜜柑", "kana": "なつみかん", "old_kana": null, "season": "spring", "subtitle": [] }
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酷暑かな汚れのように蟻潰す
中内亮玄
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眠れぬ夜にひとりで読んでみろよ
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{ "id": 614, "word": "極暑", "kana": "ごくしょ", "old_kana": "ごくしよ", "season": "summer", "subtitle": [ "酷暑", "劫暑" ] }
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炎天にかさぶたとなり青蛙
中内亮玄
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眠れぬ夜にひとりで読んでみろよ
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{ "id": 653, "word": "炎天", "kana": "えんてん", "old_kana": null, "season": "summer", "subtitle": [ "炎気", "炎天下" ] }
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ひまわりの嘘ひとつずつちょっと死ぬ
中内亮玄
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眠れぬ夜にひとりで読んでみろよ
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summer
{ "id": 1181, "word": "向日葵", "kana": "ひまわり", "old_kana": "ひまはり", "season": "summer", "subtitle": [ "日車", "日輪草", "天蓋花", "天竺葵" ] }
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満月や僕のからっぽということ
中内亮玄
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眠れぬ夜にひとりで読んでみろよ
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autumn
{ "id": 1389, "word": "月", "kana": "つき", "old_kana": null, "season": "autumn", "subtitle": [ "初月", "二日月", "三日月", "新月", "弦月", "夕月", "宵月", "夕月夜", "有明月", "昼の月", "遅月", "月白", "月夜", "月の出", "月光", "月明り", "月影" ] }
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出し忘れた嘘とか二月の燃えないごみ
中内亮玄
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眠れぬ夜にひとりで読んでみろよ
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spring
{ "id": 2, "word": "二月", "kana": "にがつ", "old_kana": "にぐわつ", "season": "spring", "subtitle": [ "二月尽" ] }
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君はまだ冬の風詰めた麻袋
中内亮玄
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眠れぬ夜にひとりで読んでみろよ
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winter
{ "id": 1854, "word": "冬", "kana": "ふゆ", "old_kana": null, "season": "winter", "subtitle": [ "三冬", "九冬", "玄冬", "冬帝", "冬将軍" ] }