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土壌物理的要因の制御による乾田直播水稲の湿害の再現 -出芽不良発生条件の解明
本研究課題は、8つの供試土の土壌物理性を把握した上で、土壌水分量や水移動の有無、湛水等の土壌環境を精密に制御した条件下で、水稲品種「アケボノ」を供試した出芽試験を実施し、湿害(出芽不良)を再現するとともに、2種のライシメータ等を用いた検証実験を行うことで、出芽不良が発生する土壌物理的条件を解明すること、を目的としている。H30年度には、シャーレを用いた発芽試験、水分特性曲線の測定に用いられる吸引法装置を用いた出芽試験(室内出芽試験)、検定槽等を用いた出芽試験(検定槽出芽試験)を実施した。尚、検定槽に充填されていたグライ土・強グライ土については、地下水位の制御が不十分であったため、グライ化した様子が確認できなかったため、実験を中止した。昨年度までの試験により、供試種子の出芽率は98%であり、健全な種子であることが確認された。豊浦砂・黒ボク土・黄色土・灰色低地土・四国水田土を用いた室内出芽試験の結果、粘土分の多い、灰色低地土や四国水田土壌の吸引圧0cm条件で、顕著な出芽率の低下を示し、湿害の発生が確認された。その他の土壌についても、吸引圧が低いほど低い出芽率を示した。さらに、ロジスティックモデルで出芽率を近似し、出芽率の立ち上がりを比較すると、灰色低地土と四国水田土の立ち上がりが他の土壌に較べて遅かった。一方、検定槽出芽試験(黒ボク土・黄色土・灰色低地土)では、黒ボク土の出芽率の低下が著しく、続いて灰色低地土、黄色土の順となった。また、吸引圧30cmの条件を維持すれば土壌にかかわらず7割程度、60cmでは8割以上の出芽率を確保できた。さらに、ロジスティックモデルによる近似の結果、出芽率の立ち上がりは、概ね黒ボク土、黄色土、灰色低地土の順に遅くなり、土壌間差異が確認された。室内出芽試験は順調に実施出来たが、検定槽を用いた野外における出芽試験においては、想定以上に時間を要した。また、出芽試験の性質上、一定程度の気温等を確保できる期間しか実験の実施が困難であるため、実験可能期間が限られているため、野外における試験については一部を次年度に延期せざるを得なかった。当該課題の実施期間を1年間延長し(申請・承認済)、未実施分の試験を実施する。また、最終年度であるため、これまでの成果をとりまとめ、学会発表・論文投稿にあたる。本研究課題は、8つの供試土の土壌物理性を把握した上で、土壌水分量や水移動の有無、湛水等の土壌環境を精密に制御した条件下で出芽試験を実施し、湿害(出芽不良)を再現するとともに、2種のライシメータを用いた検証実験を行うことで、出芽不良が発生する土壌物理的条件を解明すること、を目的としている。H28年度は、「実験条件を適切に設定するための供試土の土壌物理性測定」から実施した。供試土に1豊浦砂2クニゲルV13四国水田土壌4強グライ土5グライ土6灰色低地土7黄色土8黒ボク土を用いて、飽和透水係数を測定したところ、12.34×10-1、32.23×10-1、48.28×10-1、53.50×10-3、63.63×10-1、74.38×10-2、82.01×10-2 cm s-1であった。また、乾燥密度は11.59、31.22、41.10、51.20、61.05、70.99、80.66 Mg m-3であった。モデル土壌の豊浦砂については、既往の研究と同程度の値を示したが、ライシメータ充填土壌である38については、管理機による耕耘後だったせいもあり、想定よりも飽和透水係数は高く、乾燥密度は低かった。とりわけ4の飽和透水係数は、大型の礫を含んでいたため、想定よりも大幅に高い値を示した。水分特性曲線と不飽和透水係数については、現在8のサンプルを実施中であり、得られた結果を踏まえて実験条件(土壌水分量:pF)を整理し、計画していた「土壌水分量一定条件下における乾田直播水稲の湿害再現実験ー水移動がない場合ー」と「土壌水分量一定条件下における乾田直播水稲の湿害再現実験ー水移動がある場合ー」の出芽試験を実施する。H28年度は、「実験条件を適切に設定するための供試土の土壌物理性測定」と「土壌水分量一定条件下における乾田直播水稲の湿害再現実験ー水移動がない場合ー」、「土壌水分量一定条件下における乾田直播水稲の湿害再現実験ー水移動がある場合ー」を計画していた。最初に実施する必要がある土壌の物理性測定については、機材納品や実験スペース確保等の事情から、整備済の装置を用いた吸引法等から順次開始し、7つの供試土の飽和透水係数・水分特性曲線・乾燥密度等を得たが、1供試土について蒸発法を現在も継続中である。当該試験の完了後、出芽試験の土壌水分条件を整理し、順次出芽試験を開始する。
KAKENHI-PROJECT-16K07953
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07953
土壌物理的要因の制御による乾田直播水稲の湿害の再現 -出芽不良発生条件の解明
一方で、H29年度から整備開始予定であった野外試験の準備(雨除けテント等の設置)については、他の研究課題と連携することで計画以上の雨除け設備(パイプハウス)をH28年度中に整備できた。このため、当初は供試土ごとに実施予定であった「ライシメータにおける乾田直播水稲の湿害(出芽不良)発生条件の検証実験」について、5供試土同時に実施可能になった。本研究課題は、8つの供試土の土壌物理性を把握した上で、土壌水分量や水移動の有無、湛水等の土壌環境を精密に制御した条件下で出芽試験を実施し、湿害(出芽不良)を再現するとともに、2種のライシメータを用いた検証実験を行うことで、出芽不良が発生する土壌物理的条件を解明すること、を目的としている。H29年度は、「吸引法装置を用いて、土壌水分量一定条件下における乾田直播水稲の湿害再現実験ー水移動がない場合ー」を実施した。当該試験では、供試土壌の水ポテンシャルを0, 30, 60cmH2O(それぞれ、pF=0, 1.5, 1.8に相当)に保ち、深さ1cmに30粒播種した「アケボノ」の出芽率を経時的に2週間観測した。その結果、一般的な水田土壌である灰色低地土では、30,60cmH2Oの条件下で、播種7日後から出芽が観察され始め、10日後頃80%以上の出芽率に達し、最終的には90%程度の出芽率に至った。一方、0cmH2Oの条件下では、10日後まで出芽確認されず、最終的にも出芽率は40%に至らず、湿害が再現できた。また、豊浦砂を用いた試験では、全ての条件で播種8日後から出芽確認され、1013日後に最大の出芽率に達した。また、60cmH2Oでは出芽率100%、30cmH2Oでは90%、0cmH2Oでは80%となり、どの条件でも湿害が再現されなかった。今後も、出芽時期の遅延と最大出芽率の低下に着目しながら、「土壌水分量一定条件下における乾田直播水稲の湿害再現実験ー水移動がある場合ー」を実施すると共に、温度条件等が加味されることとなる、「検定槽を用いた野外での湿害再現実験」に着手する。H29年度は、H28年度に実施できなかった室内における湿害再現試験(水移動なし・水移動あり)を計画していた。機材の整備が完了してからは、順調に試験を実施できているものの、1回の試験にかかる時間が長いこと(2週間)や反復(3反復)が必要であること等から、計画通りに進捗しているとは言えない。本研究課題は、8つの供試土の土壌物理性を把握した上で、土壌水分量や水移動の有無、湛水等の土壌環境を精密に制御した条件下で、水稲品種「アケボノ」を供試した出芽試験を実施し、湿害(出芽不良)を再現するとともに、2種のライシメータ等を用いた検証実験を行うことで、出芽不良が発生する土壌物理的条件を解明すること、を目的としている。H30年度には、シャーレを用いた発芽試験、水分特性曲線の測定に用いられる吸引法装置を用いた出芽試験(室内出芽試験)、検定槽等を用いた出芽試験(検定槽出芽試験)を実施した。尚、検定槽に充填されていたグライ土・強グライ土については、地下水位の制御が不十分であったため、グライ化した様子が確認できなかったため、実験を中止した。昨年度までの試験により、供試種子の出芽率は98%であり、健全な種子であることが確認された。豊浦砂・黒ボク土・黄色土・灰色低地土・四国水田土を用いた室内出芽試験の結果、粘土分の多い、灰色低地土や四国水田土壌の吸引圧0cm条件で、顕著な出芽率の低下を示し、湿害の発生が確認された。その他の土壌についても、吸引圧が低いほど低い出芽率を示した。さらに、ロジスティックモデルで出芽率を近似し、出芽率の立ち上がりを比較すると、灰色低地土と四国水田土の立ち上がりが他の土壌に較べて遅かった。一方、検定槽出芽試験(黒ボク土・黄色土・灰色低地土)では、黒ボク土の出芽率の低下が著しく、続いて灰色低地土、黄色土の順となった。また、吸引圧30cmの条件を維持すれば土壌にかかわらず7割程度、60cmでは8割以上の出芽率を確保できた。さらに、ロジスティックモデルによる近似の結果、出芽率の立ち上がりは、概ね黒ボク土、黄色土、灰色低地土の順に遅くなり、土壌間差異が確認された。
KAKENHI-PROJECT-16K07953
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07953
三次元レジストレーションと血流シミュレーションに基づく脳動脈瘤の進行過程の解明
未破裂脳動脈瘤は形状の変化を注意深く観察する必要がある。しかし、撮像時期の異なる検査は頭位のズレのために観察方向を一致させることが難しく、ミリ単位の変化を把握するのは容易ではない。本研究では、まず三次元画像を可視化するパラメーターとして、0.5×(最大信号値+背景信号値)の閾値を用いるのが良いことを明らかにした。次に異なった時期に撮像された同一患者の三次元画像の頭位のズレを相互相関法を用いて補正し、頭蓋骨は0.1mm未満、脳血管は1mm程度の誤差で補正出来ることを明らかにした。最後に、脳動脈瘤の増大は偏心性ではなく全体的に増大することが多いことを明らかにした。三次元画像を用いた脳血管病変の経時的観察をテーマに研究を遂行しています。1.未破裂脳動脈瘤、2.塞栓術後の脳動脈瘤、3.ガンマナイフ照射後の脳動静脈奇形の3テーマです。テーマ1:20症例の増大症例のデータを収集し、匿名化などの解析のためのデータ処理を済ませることが出来ました。今後、レジストレーションおよびセグメンテーションなど詳細な三次元画像解析を開始する予定です。テーマ2:40症例の解析を終えました。脳動脈瘤に留置されたコイルが移動すること、再発症例では特徴的な形状変化が見られることが明らかになりました。アメリカ神経放射線学会で2014年5月に発表予定です。論文化をすすめています。テーマ3:開始出来ていません。未破裂脳動脈瘤は形状の変化を注意深く観察する必要がある。しかし、撮像時期の異なる検査は頭位のズレのために観察方向を一致させることが難しく、ミリ単位の変化を把握するのは容易ではない。本研究では、まず三次元画像を可視化するパラメーターとして、0.5×(最大信号値+背景信号値)の閾値を用いるのが良いことを明らかにした。次に異なった時期に撮像された同一患者の三次元画像の頭位のズレを相互相関法を用いて補正し、頭蓋骨は0.1mm未満、脳血管は1mm程度の誤差で補正出来ることを明らかにした。最後に、脳動脈瘤の増大は偏心性ではなく全体的に増大することが多いことを明らかにした。三次元画像を用いた脳血管病変の経時的観察をテーマに研究を行っています。未破裂脳動脈瘤,塞栓術後の脳動脈瘤,ガンマナイフ照射後の脳動静脈奇形という3つの疾患をテーマに研究を開始いたしました。その中で,特に,塞栓術後の脳動脈瘤というテーマで研究が進んでいます。データの入手,統一的な画像処理方法の検討・作成といったステップを経て,具体的な解析も15症例で済ませることが出来ました。今後は,既に確立した方法で症例数を増やすことが可能と思われます。また,未破裂脳動脈瘤や脳動静脈奇形に関しても研究を着手できると考えています。三次元画像を用いた脳血管病変の経時的観察をテーマに研究を遂行しています。1.未破裂脳動脈瘤2.塞栓術後の脳動脈瘤3.ガンマナイフ照射後の脳動静脈奇形以上の3つのテーマを対象としました。テーマ1:20症例の未破裂脳動脈瘤の画像データを収集し、匿名化・整理などの前処理を完成させました。セグメンテーションおよびレジストレーションを行って、三次元画像解析を行いました。テーマ2:脳動脈瘤に留置されたコイルの移動量・変形の様式に関してデータをまとめて、論文化しました。まだ投稿は出来ていません。テーマ3:このテーマに関しては、解析を行うことが出来ませんでした。脳動脈瘤三次元画像を用いた脳血管病変の経時的観察をテーマに研究を遂行しています。1.未破裂脳動脈瘤、2.塞栓術後の脳動脈瘤、3.ガンマナイフ照射後の脳動静脈奇形の3つです。テーマ1に関しては、データ収集をすませ、解析を開始することが出来ました。テーマ2に関しては、解析を終えることが出来ました。解析のまとめと論文化をこれから行います。テーマ3に関しては、着手できていません。未破裂脳動脈瘤,塞栓術後の脳動脈瘤,ガンマナイフ照射後の脳動静脈奇形の3つの疾患をテーマに三次元画像を用いた経時的な観察を行う研究を遂行中です。平成24年度は,この中でも,特に塞栓術後の脳動脈瘤に関しての研究を進めることが出来ました。解析用のデータを入手し,匿名化する作業は非常に手間がかかります。保存されたデータメディアが破損していることもあり,その修理を行いながら作業を行いましたが,2010年度に当院で手術が行われ,1年後に経過観察が行われている15症例のデータを整えることができました。それらの画像から適切なパラメーターを抽出する作業も終了しました。まだ統計学的な処理は行っていません。一方,未破裂脳動脈瘤とガンマナイフ照射後の脳動静脈奇形に関しては,各々2症例ずつの解析を行いました。今後,どの様に多数例の解析を行うかの手探りをしている状態です。三次元画像を用いた脳血管病変の経時的観察をテーマに研究を遂行しています。1.未破裂脳動脈瘤、2.塞栓術後の脳動脈瘤、3.ガンマナイフ照射後の脳動静脈奇形の3つです。テーマ1を鋭意すすめます。テーマ2の論文化を急ぎます。テーマ3に関しては断念するかもしれません。
KAKENHI-PROJECT-24592114
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24592114
三次元レジストレーションと血流シミュレーションに基づく脳動脈瘤の進行過程の解明
現時点では,塞栓術後の脳動脈瘤に関して,特に研究が進んでいます。とくにこの領域に注目して私たちの研究を推し進めていきたいと考えています。私たちの行っている三次元画像処理は研究方法として新しいと思われるため,テクニカルレポートとしてまず報告をするのを平成25年度の目標にしています。その上で,症例数を3倍程度に増加させ,まとまった統計処理を含んだ報告の作成を行いたいと考えています。テーマ1とテーマ3の遂行に遅れがあり、平成25年度は解析ソフトを使用しなくて済んだ。テーマ1に関しては若干の遅れが見られているが、本年度は解析のためのソフトを使用せねばならない。1年間の使用料金が80万円であり、本年度早期に使用する予定。解析に必要なソフトの維持費,解析に必要なハードウェアの維持費,英文校正費用,学会旅費などを考えています。
KAKENHI-PROJECT-24592114
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24592114
膀胱無抑制収縮および膀胱尿道協調運動におけるNOの関与
1)3kgウサギをネンブタールで麻酔し、動物睡眠法下で膀胱内に生食水を持続注入し、反射性排尿時のUDSを行った。2チャンネルアンプを用い、膀胱内圧と尿道内圧を各々測定し、同時にクリップ型電極で膀胱利尿筋筋電図、針電極で外尿道活約筋筋電図を記録した。膀胱内圧15.6cmH2O(1125cmH2O)、尿道静止圧28.5cmH2O(2247cmH2O)であった。排尿時の尿道開大時圧測定は膀胱からの尿流の影響を受け、再現性、正確さに欠けた。排尿時には外尿道活約筋の弛緩がみられた。ウサギの外頸静脈よりN-nitro-L-arginine 1.5mg/kg/min、L-arginine 20mg/kg/minを静注し、投与量も変化させて各パラメータを測定した。しかし単独投与ではいずれも有意な圧変化を認めなかった。これはNOやNOS阻害剤が、ノルアドレナリン(NA)などによる収縮反応に対する補助的な役割をしているとも考えられ、NA、Achなどで予め収縮または弛緩さたうえでNOやNOS阻害剤を併用した。各々の薬剤の適切な投与量がまだ決定されていない。2)尿管内圧および尿管筋電図を記録した。尿管蠕動速度は2.0cm/secで、利尿剤投与により3.75cm/secとなった。尿閉にすると膀胱充満時には尿管の蠕動運動が停止した。L-arginineの投与により尿管蠕動回数が低下する傾向にあったが、有意差は得られなかった。3)下腹神経電気刺激による尿道活約筋の収縮に関しては補助金不足のため購入しえず、実験していない。4)廃用膀胱におけるNOの影響をみる目的で、ネンブタール深麻酔下に両側尿管皮膚瘻を作成した。尿管切断端にステントを留置しこれを皮膚に固定したが、ステントの閉塞や尿管が筋層以下に落ち込み狭窄となり水腎症をきたすことがあり、両側とも水腎にならなかった例数が少なかった。腎機能障害はNOの反応にも影響を及ぼす可能性があり、完全な尿路変更の作成は手技的に確率していない。1)3kgウサギをネンブタールで麻酔し、動物睡眠法下で膀胱内に生食水を持続注入し、反射性排尿時のUDSを行った。2チャンネルアンプを用い、膀胱内圧と尿道内圧を各々測定し、同時にクリップ型電極で膀胱利尿筋筋電図、針電極で外尿道活約筋筋電図を記録した。膀胱内圧15.6cmH2O(1125cmH2O)、尿道静止圧28.5cmH2O(2247cmH2O)であった。排尿時の尿道開大時圧測定は膀胱からの尿流の影響を受け、再現性、正確さに欠けた。排尿時には外尿道活約筋の弛緩がみられた。ウサギの外頸静脈よりN-nitro-L-arginine 1.5mg/kg/min、L-arginine 20mg/kg/minを静注し、投与量も変化させて各パラメータを測定した。しかし単独投与ではいずれも有意な圧変化を認めなかった。これはNOやNOS阻害剤が、ノルアドレナリン(NA)などによる収縮反応に対する補助的な役割をしているとも考えられ、NA、Achなどで予め収縮または弛緩さたうえでNOやNOS阻害剤を併用した。各々の薬剤の適切な投与量がまだ決定されていない。2)尿管内圧および尿管筋電図を記録した。尿管蠕動速度は2.0cm/secで、利尿剤投与により3.75cm/secとなった。尿閉にすると膀胱充満時には尿管の蠕動運動が停止した。L-arginineの投与により尿管蠕動回数が低下する傾向にあったが、有意差は得られなかった。3)下腹神経電気刺激による尿道活約筋の収縮に関しては補助金不足のため購入しえず、実験していない。4)廃用膀胱におけるNOの影響をみる目的で、ネンブタール深麻酔下に両側尿管皮膚瘻を作成した。尿管切断端にステントを留置しこれを皮膚に固定したが、ステントの閉塞や尿管が筋層以下に落ち込み狭窄となり水腎症をきたすことがあり、両側とも水腎にならなかった例数が少なかった。腎機能障害はNOの反応にも影響を及ぼす可能性があり、完全な尿路変更の作成は手技的に確率していない。
KAKENHI-PROJECT-07771330
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07771330
大衆社会化過程における若者の政治文化と「無党派」的政治運動
本研究は、大衆社会化過程における若者の政治運動を、演説や結社などの政治文化および反既成政党=「無党派」的志向性に着目しつつ分析することによって、近代日本における若者と政治との関係性を明らかにすることを目的とするものである。今年度は、日露戦後から大正期にかけて活溌な政治運動を展開した「院外青年」(中央議院外を政治運動の主なフィールドとした若者)、とりわけ橋本徹馬によって率いられた立憲青年党の動向を明らかにすることに努めた。それは冒頭の目的全体に照らせば、「院外青年」運動の全体像をまとめる(他系統の運動から得られた知見との総合を計る)という基礎的研究の総括段階に相当している。具体的には、以下のような手順・方法をもって研究を進めた。1、文献・資料の精査年間を通じ、主として政治史関係の基礎文献を収集・精査するとともに、立憲青年党の機関誌『一大帝国』および『労働世界』の調査を進めた。後者については、経年劣化のため複写・撮影とも許されず難航したが、前者については当初の目的を達した。2、中心人物の周辺調査まず4月に橋本が1924年に組織した結社「紫雲荘」を訪問し一次資料の所在を調査した。そこで『一大帝国』の一部複写という便宜を得たものの、他資料の手がかりを得ることはできなかった。そこで研究計画調書記載の代替案を実行に移し、9月に橋本の郷里愛媛県、尾崎士郎の郷里愛知県において資料調査を行った。前者においては、新居郡において発生した産米検査実施問題に絡む地主・小作間対立への橋本の積極的な関与を確認し、「院外青年」の地域問題への介入という新たな知見を得ることができた。3、論考として整理以上から得られた成果をまとめ、今年1月に開かれた学習院大学東洋文化研究所主催の国際シンポジウムにおいて報告した。また現在、学会誌への投稿準備を進めている。本研究は、大衆社会化過程における若者の政治運動を、演説や結社などの政治文化および反既成政党=「無党派」的志向性に着目しつつ分析することによって、近代日本における若者と政治との関係性を明らかにすることを目的とするものである。今年度は、日露戦後から大正期にかけて活溌な政治運動を展開した「院外青年」(中央議院外を政治運動の主なフィールドとした若者)、とりわけ橋本徹馬によって率いられた立憲青年党の動向を明らかにすることに努めた。それは冒頭の目的全体に照らせば、「院外青年」運動の全体像をまとめる(他系統の運動から得られた知見との総合を計る)という基礎的研究の総括段階に相当している。具体的には、以下のような手順・方法をもって研究を進めた。1、文献・資料の精査年間を通じ、主として政治史関係の基礎文献を収集・精査するとともに、立憲青年党の機関誌『一大帝国』および『労働世界』の調査を進めた。後者については、経年劣化のため複写・撮影とも許されず難航したが、前者については当初の目的を達した。2、中心人物の周辺調査まず4月に橋本が1924年に組織した結社「紫雲荘」を訪問し一次資料の所在を調査した。そこで『一大帝国』の一部複写という便宜を得たものの、他資料の手がかりを得ることはできなかった。そこで研究計画調書記載の代替案を実行に移し、9月に橋本の郷里愛媛県、尾崎士郎の郷里愛知県において資料調査を行った。前者においては、新居郡において発生した産米検査実施問題に絡む地主・小作間対立への橋本の積極的な関与を確認し、「院外青年」の地域問題への介入という新たな知見を得ることができた。3、論考として整理以上から得られた成果をまとめ、今年1月に開かれた学習院大学東洋文化研究所主催の国際シンポジウムにおいて報告した。また現在、学会誌への投稿準備を進めている。
KAKENHI-PROJECT-21720241
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21720241
反対称化分子動力学法による不安定原子核における分子的性質の徴視的研究
反対称化分子動力学法を用いた数値シミュレーションの手法により、軽い不安定原子核の構造を研究した。特に、Beアイソトープの励起状態における分子的構造に着目して、分子的構造出現の予言やクラスター構造の発達メカニズムを解明した。中性子過剰核に興味深いのは、クラスターの発達に余剰中性子が重要な役割を果たすことである。^<10>Be,^<12>Beのクラスター構造では、2つのαクラスターの周りをまわる分子的軌道に半端な中性子が入ることで、クラスターの発達あるいは変形を増加に大きな効果を与えることが分かった。^<12>Beに特徴的な性質として、すでに基底状態でクラスターの発達が見られることを理論的に表し、ベータ崩壊の実験値などをうまく説明できることを示した。さらに、最近実験で観測された励起状態を理論的に矛盾なく説明することに成功した。^<12>Be基底状態が大きく変形したクラスター構造をもつことは、従来知られていた中性子数8の魔法数が破れていることを意味し、常識を破る新しい未知の現象の一つとして注目されている。その構造を記述したのは本研究が初めての理論計算である。同様の魔法数の破れとして注目されているのが^<32>Mg近傍での中性子数20の魔法数の問題である。魔法数が破れる可能性が、シェル模型などの理論計算によって指摘されている。本研究では、^<32>Mgという比較的重い中性子過剰核においても、やはり、クラスター的構造から起因する大きな陽子変形によって中性子構造も変形構造を好むために、魔法数が破れの現象が現れうるという解釈を与えた。このように、軽い通常核で提唱されていたクラスター構造が中性子過剰核の諸性質においても重要であり、さまざまな興味深い現象として現れうる。こうした原子核全般におけるクラスター的様相は従来のシェル模型などの枠組みでは説明の難しい性質であり、その意味においても、本研究の独創性は重要である。拡張した反対称化分子動力学を用いて不安定原子核の基底状態及び励起状態を理論的に研究し、不安定原子核における分子的構造の研究を行った。特に軽い中性子過剰核において,中性子数あるいは励起エネルギーが増加したときに構造がどのように変化するか解析し、殻模型的構造と分子的構造の移り変わりや、分子的構造の発達,魔法数の破れ,余剰中性子の役割などを調べた。本研究において、実験的諸性質から構造に関する情報を引き出すため、ガモフ・テラー型のベータ崩壊の遷移確率を求める計算プログラムを完成させた。^<10>Beや^<12>Beの基底状態と励起状態からのベータ遷移強度を実験値と比較し、我々の計算で予言されている分子的構造がベータ遷移を矛盾なく説明できることを確認した。^<12>Beの基底状態が分子的構造を持っていることを裏付ける初めての微視的理論計算である。^<12>Beの基底状態に現れる分子的構造は、中性子数の魔法数8が中性子過剰核では壊れているという奇妙な現象を示す。この原因には、Beアイソトープ内で二つの^4Heクラスター構造が発達しやすく葉巻型に変形しやすいこと、スピン軌道力によるp3/2閉殻の芯、安定線からの遠く離れて陽子中性子の割合が異なることが重要であるという知見を得た.計算を更に質量数の大きい中性子過剰なMgアイソトープについて実行し、中性子の魔法数20の破れの原因には、Mg'アイソトープ内で二つの^<12>Cクラスターのような構造が発達しやすく葉巻型に変形しやすいこと、スピン軌道力によるサブシェル構造が重要であるということを発見した。こうした性質はBeの場合と良く似ており、魔法数の破れや分子的構造の発達のメカニズムにBeとMgで類似点を持っていることを示唆している。反対称化分子動力学法を用いた数値シミュレーションの手法により、軽い不安定原子核の構造を研究した。特に、Beアイソトープの励起状態における分子的構造に着目して、分子的構造出現の予言やクラスター構造の発達メカニズムを解明した。中性子過剰核に興味深いのは、クラスターの発達に余剰中性子が重要な役割を果たすことである。^<10>Be,^<12>Beのクラスター構造では、2つのαクラスターの周りをまわる分子的軌道に半端な中性子が入ることで、クラスターの発達あるいは変形を増加に大きな効果を与えることが分かった。^<12>Beに特徴的な性質として、すでに基底状態でクラスターの発達が見られることを理論的に表し、ベータ崩壊の実験値などをうまく説明できることを示した。さらに、最近実験で観測された励起状態を理論的に矛盾なく説明することに成功した。^<12>Be基底状態が大きく変形したクラスター構造をもつことは、従来知られていた中性子数8の魔法数が破れていることを意味し、常識を破る新しい未知の現象の一つとして注目されている。その構造を記述したのは本研究が初めての理論計算である。同様の魔法数の破れとして注目されているのが^<32>Mg近傍での中性子数20の魔法数の問題である。魔法数が破れる可能性が、シェル模型などの理論計算によって指摘されている。本研究では、^<32>Mgという比較的重い中性子過剰核においても、やはり、クラスター的構造から起因する大きな陽子変形によって中性子構造も変形構造を好むために、魔法数が破れの現象が現れうるという解釈を与えた。このように、軽い通常核で提唱されていたクラスター構造が中性子過剰核の諸性質においても重要であり、さまざまな興味深い現象として現れうる。
KAKENHI-PROJECT-10740131
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10740131
反対称化分子動力学法による不安定原子核における分子的性質の徴視的研究
こうした原子核全般におけるクラスター的様相は従来のシェル模型などの枠組みでは説明の難しい性質であり、その意味においても、本研究の独創性は重要である。
KAKENHI-PROJECT-10740131
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10740131
定位放射線治療の最適化における基礎研究
本研究ではマウス腫瘍モデルを用い1回大線量の放射線治療後の腫瘍内低酸素の変化、HIF-1活性の変化、血管構築の変化を経時的に評価した。抗腫瘍効果との関連をみると同時に正常組織へ大線量照射の影響も評価し、治療の最適化および治療効果を増強する因子についての検討も試みた。HIF-イメージングを参照して治療効果が最大となる2回目の照射スケジュールの検討を開始し、抗腫瘍効果が最大となる最適スケジュールについて検討を行った。放射線治療の効果を増強する新たな治療標的の候補についても検討を行ったが、有意なものについては明らかにすることができなかった。本研究ではマウス腫瘍モデルを用い1回大線量の放射線治療後の腫瘍内低酸素の変化、HIF-1活性の変化、血管構築の変化を経時的に評価し、抗腫瘍効果との関連をみる。それと同時に正常組織への大線量照射の影響も評価し、治療の最適化および治療効果を増強するHIF-1阻害剤などの薬剤についても検討する。マウスにHIF-1応答性のルシフェラーゼ遺伝子を導入したH441を皮下移植し放射線照射後のHIF-1の経時的な変化を光イメージングで観察し、治療効果が最大となる2回目の照射スケジュールの検討を前年に引き続き行っている。また、HIF-1、pimonidazoleの陽性領域と血管の位置関係と照射スケジュールの関係について免疫染色での検討を継続中である。本研究ではマウス腫瘍モデルを用い1回大線量の放射線治療後の腫瘍内低酸素の変化、HIF-1活性の変化、血管構築の変化を経時的に評価した。抗腫瘍効果との関連をみると同時に正常組織へ大線量照射の影響も評価し、治療の最適化および治療効果を増強する因子についての検討も試みた。HIF-イメージングを参照して治療効果が最大となる2回目の照射スケジュールの検討を開始し、抗腫瘍効果が最大となる最適スケジュールについて検討を行った。放射線治療の効果を増強する新たな治療標的の候補についても検討を行ったが、有意なものについては明らかにすることができなかった。本研究ではマウス腫瘍モデルを用い1回大線量の放射線治療後の腫瘍内低酸素の変化、HIF-1活性の変化、血管構築の変化を経時的に評価し、抗腫瘍効果との関連をみると同時に正常組織への大線量照射の影響も評価し、治療の最適化および治療効果を増強するHIF-1阻害剤などの薬剤についても検討する。肺がんの体幹部定位放射線治療は手術困難な高齢の患者に有効であることが臨床上、明らかになってきているが、いまだに最適な線量分割、総線量及び総治療期間については不明である。臨床的にいろいろな線量分割での治療が試みられているが、具体的な生物学的根拠には乏しく評価が難しいため、本研究での基礎的な検討の意義は高いと考えられる。ヌードマウスにHIF-1応答性のルシフェラーゼ遺伝子を導入したヒト肺がん細胞H441を皮下移植した腫瘍モデルを用い、移植腫瘍への局所放射線照射後のHIF-1の経時的な変化を光イメージングで観察し、腫瘍内の低酸素領域の変化について検討した。HIF-1イメージングを参照して治療効果が最大となる2回目の照射スケジュールの検討を開始し、抗腫瘍効果が最大となる最適スケジュールについては検討を継続中である。同時に腫瘍組織の免疫染色からHIF-1、pimonidazoleの陽性領域と血管の位置関係と照射後のタイミングについて検討を開始している。今後、照射スケジュールと血管構築の変化の関係からも最適な照射スケジュールについて検討予定である。本研究ではマウス腫瘍モデルを用い1回大線量の放射線治療後の腫瘍内低酸素の変化、HIF-1活性の変化、血管構築の変化を経時的に評価した。抗腫瘍効果との関連をみると同時に正常組織への大線量照射の影響も評価し、治療の最適化および治療効果を増強する因子についての検討も試みた。肺がんの体幹部定位放射線治療は手術困難な高齢の患者に有効であることが臨床上、明らかになってきているが、いまだに最適な線量分割、総線量及び総治療期間については不明である。臨床的にいろいろな線量分割での治療が試みられているが、具体的な生物学的根拠には乏しく評価が難しいため、本研究において基礎的な検討を試みた。ヌードマウスにHIF-1応答性のルシフェラーゼ遺伝子を導入したヒト肺がん細胞H441を皮下移植した腫瘍モデルを用い、移植腫瘍への局所放射線照射後のHIF-1の経時的な変化を光イメージングで観察し、腫瘍内の低酸素領域の変化について検討した。HIF-1イメージングを参照して治療効果が最大となる2回目の照射スケジュールの検討を開始し、抗腫瘍効果が最大となる最適スケジュールについては検討を行った。同時に腫瘍組織の免疫染色からHIF-1、pimonidazoleの陽性領域と血管の位置関係と照射後のタイミングについて検討を行った。放射線治療の効果を増強する新たな治療標的の候補についても検討を行ったが、有意なものについては明らかにすることができなかった。放射線治療HIF-1応答性のルシフェラーゼ遺伝子を導入したヒト肺がん細胞H441をヌードマウスに皮下移植した腫瘍モデルを用い、移植腫瘍への局所放射線照射にて治療効果が最大となる2回目の照射スケジュールのタイミングを検討すると同時に、HIF-1、pimonidazoleの陽性領域と血管の位置関係と照射スケジュールの関係もあわせて免疫染色での検討しているため、やや遅れている。ヌードマウスにHIF-1応答性のルシフェラーゼ遺伝子を導入したヒト
KAKENHI-PROJECT-24659563
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24659563
定位放射線治療の最適化における基礎研究
肺がん細胞H441を皮下移植した腫瘍モデルを用い、移植腫瘍への局所放射線照射にて治療効果が最大となる2回目の照射スケジュールのタイミングを検討しているが、現在照射スケジュールの最適化に時間を取られている。放射線治療スケジュールの最適化と同時に皮下腫瘍組織の免疫染色からHIF-1、pimonidazoleの陽性領域と血管の位置関係と照射スケジュールの関係を明らかにする。また、VEGF、糖代謝や腫瘍の悪性化に関わるGlut-1、TGF-βなどのHIF-1下流の因子の検討を行い、放射線治療の効果を増強する新たな治療標的の候補の検索を引き続き行う。また複数の種類の腫瘍細胞にて放射線治療スケジュールの最適化を行うことで、HIF-1活性と最適な放射線治療スケジュールの関連について検討する。肺がんの肺同所移植モデルに対し、肺の局所照射後の、抗腫瘍効果および正常肺組織の障害について組織学的検討を行う。HIF-1阻害剤の治療効果と肺障害への影響を検討し、放射線肺炎のリスクを抑えた肺癌の定位放射線治療法の開発を行う。また、臨床での使用が始まっている血管新生阻害剤、上皮細胞増殖因子(EGF)阻害剤、および今後の臨床応用が期待されるHIF-1阻害剤などの分子標的薬と1回大線量の放射線治療との併用について、治療効果と正常組織の障害の両面の評価を行い、臨床応用への発展も考慮した検討を継続する。引き続き、放射線治療スケジュールの最適化をすすめ、腫瘍組織の免疫染色からHIF-1、pimonidazoleの陽性領域と血管の位置関係と照射スケジュールの関係を明らかにする。同時にVEGFだけでなく、糖代謝や腫瘍の悪性化に関わるGlut-1、TGF-βなどのHIF-1下流の因子の検討を開始し、放射線治療の効果を増強する新たな治療標的の候補の検索を行う。また複数の種類の腫瘍細胞にて放射線治療スケジュールの最適化を行うことで、HIF-1活性と最適な放射線治療スケジュールの関連について検討する。1回大線量の放射線治療のスケジュールの最適化を行うともに、その放射線治療の効果を増強する新たな治療標的の候補の検索、検証を行う。また、肺がんの肺同所移植モデルを用い、肺の局所照射を行った後、抗腫瘍効果および正常肺組織の障害について組織学的検討を行う。HIF-1阻害剤による、治療効果と肺障害への影響を検討し、放射線肺炎のリスクを抑えた肺癌の定位放射線治療法の開発を行う。また、臨床での使用が始まっている血管新生阻害剤、上皮細胞増殖因子(EGF)阻害剤、および今後の臨床応用が期待されるHIF-1阻害剤などの分子標的薬と1回大線量の放射線治療との併用について、治療効果と正常組織の障害の両面の評価を行い、臨床応用への発展も考慮した検討を開始する。動物実験が当初より遅れているため、次年度使用額が生じた。動物実験の前年度分を繰り越して行う予定であり、それに伴いマウスの購入、維持、腫瘍細胞培養のための消耗品、および免疫染色に必要な抗体、試薬の購入に伴う費用を、当初より増額して研究を行う。動物実験の継続のため、マウスの購入、維持、腫瘍細胞培養のための消耗品、および免疫染色に必要な抗体、試薬の購入。情報取集目的の学会参加費での使用を予定している。
KAKENHI-PROJECT-24659563
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構築主義に基づく中学校社会科教育課程の開発研究
現行の中学校社会科は、分野制に基づいて、日本人や日本国民の立場からみた地理や歴史や社会の事実を客観的な真理として教授するため、価値多元社会に相応しい国家・社会の形成者を育成することができなくなっている。そこで、本研究では、この問題点を克服すべく、地理や歴史や社会の事実が社会的に作られていることを子どもに学習させ、その多様な可能性を議論させる構築主義社会科論を提起し、中学校社会科の教育課程を開発した。現行の中学校社会科は、分野制に基づいて、日本人や日本国民の立場からみた地理や歴史や社会の事実を客観的な真理として教授するため、価値多元社会に相応しい国家・社会の形成者を育成することができなくなっている。そこで、本研究では、この問題点を克服すべく、地理や歴史や社会の事実が社会的に作られていることを子どもに学習させ、その多様な可能性を議論させる構築主義社会科論を提起し、中学校社会科の教育課程を開発した。本研究の目的は、構築主義という考え方を基盤にすることで、価値多元社会に相応しい国家・社会の形成者を育成する中学校社会科の教育課程を開発することである。そのため、今年度は、次の二点を明らかにした。1、構築主義の社会問題研究を理論的根拠にした中学校社会科教育課程を仮説的に開発し、その成果を学会で発表した。現行の社会科は、国家の地誌や通史や制度を教授する教育課程を編成して、既存の国家や社会の現実を自明視するマジョリティの地理や歴史や社会の見方を子どもに習得させている。そこで、本研究では、構築主義の社会問題研究を理論的根拠にすることによって、人々が地誌的・通史的・制度的な社会の見方を共有して既存の国家や社会の現実を構成する論理に即して、教育内容となる社会問題を取り上げる現実構成論という中学校社会科の教育課程論を提起した。この理論に基づいて教育課程を編成すれば、中学校社会科は、既存の現実を自明視するマジョリティの見方をマイノリティの立場から相対化させ、その多様なあり方を子どもに吟味させる教育内容を構成できるため、価値多元社会に相応しい国家・社会の形成者を育成できることを明らかにした。2、仮説的に開発した現実構成論という中学校社会科教育課程論の妥当性を部分的に検討し、その成果を発表した。本研究の理論仮説として提起した現実構成論の妥当性を検討するために、地理単元「障害者問題を考える」、歴史単元「遺跡保存問題を考える」の授業モデルを開発した。前者は既存の福祉国家の現実を根拠づける身近な地域の見方を、後者は既存の国民国家の現実を根拠づける古代史の見方を、それぞれ相対化させ、その多様なあり方を子どもに吟味させることをめざす単元である。このように、二つの授業モデルの開発を通して、現実構成論の妥当性を地理的分野と歴史的分野で検討した。構築主義に基づくことによって、価値多元社会に相応しい国家・社会の形成者を育成する中学校社会科の教育課程を開発するという本研究の目的に関わって、今年度は、次の二点を明らかにした。(1)構築主義に基づいて中学校社会科の教育課程を開発する意義を明らかにした。経験主義は、社会生活の多様な可能性を議論させることができるが、分野制の教育課程を編成できなかった。系統主義と科学主義は、分野制の下で実現可能な教育課程を編成できるが、日本人や日本国民又は科学者の立場からみた地理や歴史や社会の事実を客観的真理として絶対視させてしまうという問題点があった。それに対して、構築主義は、地理や歴史や社会の事実が社会的に作られていることを学習させ、その多様な可能性を議論させることができるため、価値多元社会に相応しい国家・社会の形成者を育成する中学校社会科教育課程を開発できることを明らかにした。(2)開発した教育課程の妥当性を検討するために、授業モデルの実践と学習評価を実施した。身近な環境の空間配分が争点となる障害者問題を教材にすることによって、障害者と健常者の空間意識を学習させ、そのよりよい空間配分のあり方を議論させる単元「障害者問題を考える」の実践と学習評価を行った。実験授業は、平成22年12月、熊本県甲佐中学校第2学年の生徒を対象に実施した。学習評価の結果、学習意義を実感した子どもが大半を占め、授業モデルの有効性を確かめることができた。
KAKENHI-PROJECT-21830085
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高安動脈炎とクローン病との合併を引き起こす病態の解明と治療応用を目指した研究
高安動脈炎は大動脈とその主要分岐動脈が炎症に侵される疾患である。一方、クローン病は腸管を炎症に侵される疾患であるが、いずれも臓器特異的な自己免疫疾患であり、しかも両疾患を合併する割合は約10%と決して少なくない。そこで、共通した遺伝的背景の存在が示唆される高安動脈炎とクローン病の合併例における病因や病状の進展機序を解明し、両疾患の新たな治療標的を探索することを目的としている。すでに進行している研究としては、高安動脈炎患者を対象とした全ゲノム関連解析(GWAS)の結果見出された疾患関連遺伝子IL-12B遺伝子とMLX遺伝子に注目し、高安動脈炎の病態解明をせまる研究がある。MLX遺伝子のQ139R変異がその転写活性を亢進させ、転写産物TXNIPの発現を増加させることから、機能獲得型変異であり、転写産物TXNIPの発現量増加に伴ってNLRP3インフラマソームの活性が亢進することを見出し、2018年度に論文を発表した。(Tamura N etal. Circ Genom Precis Med. 2018;11:e002296. )さらに、MLX遺伝子が多く存在する部位が褐色脂肪組織と腸管であることがわかっているため、変異型MLX遺伝子を持っている場合、血管周囲の褐色脂肪組織や腸管において、TXNIPを介してNLRP3インフラマソームが活性化し、血管炎強いては腸炎を起こしやすくなるのではないか、また、腸管に多く分布するMLX遺伝子が腸管の炎症に関わり、高安動脈炎とクローン病の合併症例の一因になるのではないかと考え、変異型MLX遺伝子のノックインマウスを作成している。このマウスで高安動脈炎やクローン病の合併疾患モデルマウスを作成することで疾患の病態解明にせまる研究を継続している。変異型遺伝子MLXのノックインマウス作成が順調に進んでいる。高安動脈炎の疾患モデルマウスについては方法を探索しながら継続中である。高安動脈炎の疾患モデルマウスを作成し、様々な条件において、動脈炎の程度や腸炎の程度を比較し、病態解明を目指したいと考えている。高安動脈炎は大動脈とその主要分岐動脈が炎症に侵される疾患である。一方、クローン病は腸管を炎症に侵される疾患であるが、いずれも臓器特異的な自己免疫疾患であり、しかも両疾患を合併する割合は約10%と決して少なくない。そこで、共通した遺伝的背景の存在が示唆される高安動脈炎とクローン病の合併例における病因や病状の進展機序を解明し、両疾患の新たな治療標的を探索することを目的としている。すでに進行している研究としては、高安動脈炎患者を対象とした全ゲノム関連解析(GWAS)の結果見出された疾患関連遺伝子IL-12B遺伝子とMLX遺伝子に注目し、高安動脈炎の病態解明をせまる研究がある。MLX遺伝子のQ139R変異がその転写活性を亢進させ、転写産物TXNIPの発現を増加させることから、機能獲得型変異であり、転写産物TXNIPの発現量増加に伴ってNLRP3インフラマソームの活性が亢進することを見出し、2018年度に論文を発表した。(Tamura N etal. Circ Genom Precis Med. 2018;11:e002296. )さらに、MLX遺伝子が多く存在する部位が褐色脂肪組織と腸管であることがわかっているため、変異型MLX遺伝子を持っている場合、血管周囲の褐色脂肪組織や腸管において、TXNIPを介してNLRP3インフラマソームが活性化し、血管炎強いては腸炎を起こしやすくなるのではないか、また、腸管に多く分布するMLX遺伝子が腸管の炎症に関わり、高安動脈炎とクローン病の合併症例の一因になるのではないかと考え、変異型MLX遺伝子のノックインマウスを作成している。このマウスで高安動脈炎やクローン病の合併疾患モデルマウスを作成することで疾患の病態解明にせまる研究を継続している。変異型遺伝子MLXのノックインマウス作成が順調に進んでいる。高安動脈炎の疾患モデルマウスについては方法を探索しながら継続中である。高安動脈炎の疾患モデルマウスを作成し、様々な条件において、動脈炎の程度や腸炎の程度を比較し、病態解明を目指したいと考えている。想定より効率良く費用を使用することができたためであり、次年度の消耗品、主に抗体などに使用する計画である。
KAKENHI-PROJECT-18K15841
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K15841
遺跡探査パルスレーダ用アンテナの設計と埋設物のイメージング法に関する研究
本研究は,地下の石室,金属遺物,遺溝等を探査するための,高性能のパルスレーダ用アンテナの設計法と埋設物のイメージング法について理論的・実験的に検討するものであり,本年度は以下の研究成果を得た.1.パルスレーダ用アンテナの設計:アンテナの放射機構を解明すると共に,レーダ用アンテナ設計の高効率化を図るため,地中遺跡探査レーダ用アンテナの3次元計解析コードを開発した.このコードは,実際に使われる複雑なアンテナを高速かつ高精度で解析できる.今後はこのコードを用いて遺跡探査用アンテナの最適設計を行う予定である.また,この計算コードの開発と平行して,地中探査用アンテナの試作を行った.アンテナの形状,キャビティの寸法,吸収体の種類や取り付け場所などがアンテナの特性に与える影響を詳細に検討し,ほぼ満足できる特性を持つアンテナを得た.2.埋設物のイメージング法:本研究者らは,近似をほとんど含まないバイスタティックイメージング法を提案した.この手法の有効性を確かめるため,野外での探査実験を行った.まず,予備実験として,学内で種々の埋設物の探査を行い,イメージング法の妥当性を確認した.次に,宮城県名取市の雷神山古墳と宮城県村田町の愛宕山古墳の探査を行った.愛宕山古墳の探査結果は以前に行われたピンさし探査やレーダ探査の結果とほぼ一致し,本手法の有効性が確かめられると同時に遺物の存在を明らかにした.アンテナの最適設計,地中の誘電率の測定及び,アンテナのアレー化や時間域測定器による測定の効率化が今後の課題である.本研究は,地下の石室,金属遺物,遺溝等を探査するための,高性能のパルスレーダ用アンテナの設計法と埋設物のイメージング法について理論的・実験的に検討するものであり,本年度は以下の研究成果を得た.1.パルスレーダ用アンテナの設計:アンテナの放射機構を解明すると共に,レーダ用アンテナ設計の高効率化を図るため,地中遺跡探査レーダ用アンテナの3次元計解析コードを開発した.このコードは,実際に使われる複雑なアンテナを高速かつ高精度で解析できる.今後はこのコードを用いて遺跡探査用アンテナの最適設計を行う予定である.また,この計算コードの開発と平行して,地中探査用アンテナの試作を行った.アンテナの形状,キャビティの寸法,吸収体の種類や取り付け場所などがアンテナの特性に与える影響を詳細に検討し,ほぼ満足できる特性を持つアンテナを得た.2.埋設物のイメージング法:本研究者らは,近似をほとんど含まないバイスタティックイメージング法を提案した.この手法の有効性を確かめるため,野外での探査実験を行った.まず,予備実験として,学内で種々の埋設物の探査を行い,イメージング法の妥当性を確認した.次に,宮城県名取市の雷神山古墳と宮城県村田町の愛宕山古墳の探査を行った.愛宕山古墳の探査結果は以前に行われたピンさし探査やレーダ探査の結果とほぼ一致し,本手法の有効性が確かめられると同時に遺物の存在を明らかにした.アンテナの最適設計,地中の誘電率の測定及び,アンテナのアレー化や時間域測定器による測定の効率化が今後の課題である.
KAKENHI-PROJECT-05205201
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05205201
遺伝的アルゴリズムによる流出モデル定数の同定に関する研究
遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm,GA)は、選択淘汰、交叉、突然変異といった生物進化の原理に基づく最適化手法で、多点探索を行うという点で他の最適化手法とは大きく異なる。本研究では、流出モデル定数の同定にGAを適用し、その適応性を検討した。さらに、GAそのものではないが、GAに類似した進化の概念を取り入れたSCE-UA法についても同様の検討を行った。その概要は次のようである。1.GAによるタンクモデル定数の同定GAを16個の未知定数を持つ直列4段タンクモデルの定数探索に適用した。ここでは、永源寺ダム流域の日降水量、蒸発量、および、それらを適当な定数(真値)を設定したタンクモデルに入力して得た日流出高を用いて、16定数ないしは8定数の同定を数値実験的に試みた。この結果、16定数の同定では、ほぼ真値が同定されている定数(第1段タンクの6定数)もあるが、真値とかなり異なる値が同定されている定数もあり、厳密解を得るには到らなかった。一方、探索する定数を流出孔と浸透孔の8定数に絞ったときは、ほぼ真値に近い定数を得ることができた。2.SCE-UA法によるタンクモデル定数の同定最近、米国アリゾナ大学で開発されたSCE-UA法(Shuffled Complex Evolution Method)は、局所的探索法の一つであるシンプレックス法にランダム探索、競争進化、集団混合の概念を取り入れた大域的探索法である。この方法をタンクモデル定数の同定に適用するとともに、その適応性をシンプレックス法と比較した。青蓮寺ダム流域の資料に基づいてGAと同様の数値実験を行ったところ、シンプレックス法によって同定された定数は、探索出発点によってかなりばらつくのに対して、SCE-UA法では、探索出発点に関わらずほぼ真値に近い定数が同定できることが分かった。遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm,GA)は、選択淘汰、交叉、突然変異といった生物進化の原理に基づく最適化手法で、多点探索を行うという点で他の最適化手法とは大きく異なる。本研究では、流出モデル定数の同定にGAを適用し、その適応性を検討した。さらに、GAそのものではないが、GAに類似した進化の概念を取り入れたSCE-UA法についても同様の検討を行った。その概要は次のようである。1.GAによるタンクモデル定数の同定GAを16個の未知定数を持つ直列4段タンクモデルの定数探索に適用した。ここでは、永源寺ダム流域の日降水量、蒸発量、および、それらを適当な定数(真値)を設定したタンクモデルに入力して得た日流出高を用いて、16定数ないしは8定数の同定を数値実験的に試みた。この結果、16定数の同定では、ほぼ真値が同定されている定数(第1段タンクの6定数)もあるが、真値とかなり異なる値が同定されている定数もあり、厳密解を得るには到らなかった。一方、探索する定数を流出孔と浸透孔の8定数に絞ったときは、ほぼ真値に近い定数を得ることができた。2.SCE-UA法によるタンクモデル定数の同定最近、米国アリゾナ大学で開発されたSCE-UA法(Shuffled Complex Evolution Method)は、局所的探索法の一つであるシンプレックス法にランダム探索、競争進化、集団混合の概念を取り入れた大域的探索法である。この方法をタンクモデル定数の同定に適用するとともに、その適応性をシンプレックス法と比較した。青蓮寺ダム流域の資料に基づいてGAと同様の数値実験を行ったところ、シンプレックス法によって同定された定数は、探索出発点によってかなりばらつくのに対して、SCE-UA法では、探索出発点に関わらずほぼ真値に近い定数が同定できることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-05750486
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05750486
潜在的態度から見た道徳的責任の再検討
今年度は、研究課題である「潜在的態度から見た道徳的責任の再検討」をおこなうにあたって、実施計画に挙げた(1)潜在的態度の定式化(潜在的態度のありようを明確にすること)にくわえて、(2)潜在的態度(から生じる行為)の道徳的責任の考察をおこなった。(1)「潜在的態度は、道徳的評価を可能にする本当の自己をあらわしているのか」という問いについて、フランクファートとその批判者たちによる本当の自己をめぐる一連の議論をベースに考察をすすめた。そのさい、潜在的態度がしばしば推論や証拠に不感的であること、またそれが通時的に不安定なものであることを示す経験的研究を参照することで、「潜在的態度は、すくなくとも既存の議論の枠組みのもとでは、本当の自己を反映したものとはみなされない」という結論に達した。この研究成果は「潜在的態度は「本当の私」なのか」(『倫理学年報』第68集)として公表される。(2)(1)から派生するかたちで,潜在的態度(およびその道徳的責任)を個体の外部の視座から、つまり外部主義的に捉えようと試みた。ここでは、ペインたちの提唱する「群衆バイアスモデル」を糸口に、潜在的態度を個体ではなく状況に位置づけるアイデアに注目し、潜在的態度の道徳的責任を個体に内在的な性質に基礎づけるのではなく、個体の外部にある(社会的)環境の観点から理解する可能性を探った。2018年10月に開催された日本科学哲学会第51回大会において「群衆バイアスモデルは帰属可能性としての道徳的責任を配慮しうるか」というタイトルでこの考えを発表し、有益なフィードバックを受けることができた。このように潜在的態度を外部主義的に捉える試みはかなり有望だと考えている。以上の研究実績は、現代の社会問題の多くの根底にあると考えられる潜在的態度と、そこから生じる行為の道徳的責任とのつながりを明らかにする一歩となったと考える。本年度の目標は、ときに顕在的態度と対立する潜在的態度のありようについて、その先行研究を整理し、潜在的態度がどのような特徴をした心的状態であるかを明確にすることだった。このような潜在的態度のありようをめぐる議論は、現在も多数の論文が出版されているホット・トピックのひとつだが、上記の研究実績の概要で述べたように、この問題を扱う査読論文を公表することができた。このことは、本研究が国内で高い評価を受けて、上記の目標について一定の達成ができたことを意味する。さらに,この目標から派生するかたちで、潜在的態度の道徳的責任をめぐる問題についても、ある程度まで踏み込んで考察した発表を学会でおこなうことができた。そこでは,潜在的態度(およびその道徳的責任)を外部主義の視座から捉える考えを展開したが、現在この考えにもとづいた論文を執筆中である。このようにして今後の研究を、新たな、より興味深い視座からすすめるための足場を築くことができたと考えている。以上より、現在までの研究の進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断している。先に述べたように、潜在的態度を外部主義的に捉える可能性が有望に思われるため、実施計画に記載したアプローチをすこし変えて,これまでの研究成果をもとに上記の可能性についてさらに検討をすすめたい。そのためにまず、これまで潜在的態度のありようについてどのような提案がなされてきたかを包括的に考察し、それらがおおむね個体主義的な前提にもとづいたものであるかどうか,外部主義的に捉える立場があるかどうかという観点から整理する。またその一方で、社会/制度的な要因を強調することで「潜在的態度を個体主義的に理解することがもつ実践的な意義」を批判する議論も考察する。このようにして既存の議論状況を整理すること、とくに潜在的態度を個体主義的に捉えることが主流になっていることを示すことが、最初の目標である。つぎに、そのような先行研究の整理をふまえて、潜在的態度を外部主義的に理解する考えを展開する。ここでは、いくつかの経験的研究、とりわけ潜在的態度がパーソナルな態度というよりむしろある種の文化的知識であることを示す研究、および,潜在的態度が個体の外部の文脈のなかで理解される社会的役割や社会的アイデンティティに可感的であることを示す研究に依拠することで、潜在的態度を外部主義的に捉えることの経験的な妥当性を示すことが目標となる。そのうえで、潜在的態度を外部主義的に理解したばあい、その道徳的責任をどのように理解することが求められるのかを考察する。既存の主要な議論は、個体に内在的な性質に焦点をあてることで潜在的態度の道徳的責任を理解しようとしてきたが、上記の理解はそのような主張に反対する。それゆえここでの目標は、既存の主張の代替案として、集団的責任や文脈主義などの立場から、潜在的態度の道徳的責任を検討することである。今年度は、研究課題である「潜在的態度から見た道徳的責任の再検討」をおこなうにあたって、実施計画に挙げた(1)潜在的態度の定式化(潜在的態度のありようを明確にすること)にくわえて、(2)潜在的態度(から生じる行為)の道徳的責任の考察をおこなった。(1)「潜在的態度は、道徳的評価を可能にする本当の自己をあらわしているのか」という問いについて、フランクファートとその批判者たちによる本当の自己をめぐる一連の議論をベースに考察をすすめた。
KAKENHI-PROJECT-18K00013
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K00013
潜在的態度から見た道徳的責任の再検討
そのさい、潜在的態度がしばしば推論や証拠に不感的であること、またそれが通時的に不安定なものであることを示す経験的研究を参照することで、「潜在的態度は、すくなくとも既存の議論の枠組みのもとでは、本当の自己を反映したものとはみなされない」という結論に達した。この研究成果は「潜在的態度は「本当の私」なのか」(『倫理学年報』第68集)として公表される。(2)(1)から派生するかたちで,潜在的態度(およびその道徳的責任)を個体の外部の視座から、つまり外部主義的に捉えようと試みた。ここでは、ペインたちの提唱する「群衆バイアスモデル」を糸口に、潜在的態度を個体ではなく状況に位置づけるアイデアに注目し、潜在的態度の道徳的責任を個体に内在的な性質に基礎づけるのではなく、個体の外部にある(社会的)環境の観点から理解する可能性を探った。2018年10月に開催された日本科学哲学会第51回大会において「群衆バイアスモデルは帰属可能性としての道徳的責任を配慮しうるか」というタイトルでこの考えを発表し、有益なフィードバックを受けることができた。このように潜在的態度を外部主義的に捉える試みはかなり有望だと考えている。以上の研究実績は、現代の社会問題の多くの根底にあると考えられる潜在的態度と、そこから生じる行為の道徳的責任とのつながりを明らかにする一歩となったと考える。本年度の目標は、ときに顕在的態度と対立する潜在的態度のありようについて、その先行研究を整理し、潜在的態度がどのような特徴をした心的状態であるかを明確にすることだった。このような潜在的態度のありようをめぐる議論は、現在も多数の論文が出版されているホット・トピックのひとつだが、上記の研究実績の概要で述べたように、この問題を扱う査読論文を公表することができた。このことは、本研究が国内で高い評価を受けて、上記の目標について一定の達成ができたことを意味する。さらに,この目標から派生するかたちで、潜在的態度の道徳的責任をめぐる問題についても、ある程度まで踏み込んで考察した発表を学会でおこなうことができた。そこでは,潜在的態度(およびその道徳的責任)を外部主義の視座から捉える考えを展開したが、現在この考えにもとづいた論文を執筆中である。このようにして今後の研究を、新たな、より興味深い視座からすすめるための足場を築くことができたと考えている。以上より、現在までの研究の進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断している。先に述べたように、潜在的態度を外部主義的に捉える可能性が有望に思われるため、実施計画に記載したアプローチをすこし変えて,これまでの研究成果をもとに上記の可能性についてさらに検討をすすめたい。そのためにまず、これまで潜在的態度のありようについてどのような提案がなされてきたかを包括的に考察し、それらがおおむね個体主義的な前提にもとづいたものであるかどうか,外部主義的に捉える立場があるかどうかという観点から整理する。またその一方で、社会/制度的な要因を強調することで「潜在的態度を個体主義的に理解することがもつ実践的な意義」を批判する議論も考察する。このようにして既存の議論状況を整理すること、とくに潜在的態度を個体主義的に捉えることが主流になっていることを示すことが、最初の目標である。つぎに、そのような先行研究の整理をふまえて、潜在的態度を外部主義的に理解する考えを展開する。
KAKENHI-PROJECT-18K00013
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里親養育と実親をつなぐ支援プログラムの開発研究
本研究では、里親養育委託における子どもの実親との交流や支援がどのように行われているか、現状と課題について児童相談所と里親への調査を行うとともに、実親との交流を有する里親へのインタビュー調査を行った。その結果,里親業務に専任の児童福祉司を配置している児童相談所は、5割未満であり、里親委託児で、実親との交流のある児童は2割と非常に少なかった。実親と児童の交流の成否は、実親が約束を守ることができるか否かで有意差が認められ、実親へのアセスメントと支援が必要であると思われた。被虐待などにより社会的養護を要する子どもは増加の一途をたどっている。愛着形成に問題を抱える子どもが多いなかで、家庭を基盤としたケアである里親養育(ファミリーホームを含む)は世界的スタンダードである。わが国も平成23年里親委託優先の原則を示し、その推進を目指しているが、平成24度末で14.8%と先進諸国では最低である。その背景に、実親の里親委託への抵抗があり、そのため実親との交流の見込めない子を里親委託している状況であるといわれている。また、里親制度自体の理解が進んでいない状況もある。従って、本研究では、実親と里親養育をつなぐにはどのような課題があるかを明らかにし、里親養育の質を高め、実親支援を包括した里親養育のあり方とその支援プログラムを研究することで里親委託推進を図ることを目的とする。27年度は、里親委託における実親との関係についての現状を明らかにするために全国208か所の児童相談所に対し、里親養育を受けている子どもと実家族との交流がどの程度行われているのか、里親養育と実親との関係に関する意識、および実親への支援の現状についてアンケート調査を実施し、現在分析中である。さらに、子どもの受け入れをしている里親の実親との関係に関する意識がどのような状況にあるのか、また、実親への支援の現状についても現状把握のためアンケート調査を児童相談所の協力を得て実施し、現在回収中である。全国の児童相談所に対する里親委託における実親との関係についてのアンケート調査を実施することができ、さらに委託を受けている子どもと実親の交流がある里親へのアンケート調査についても実施することができたことは意義が大きいと考える。また、国の子ども家庭福祉制度の変革期を迎えるなかで、里親制度に関する包括的支援を行っている里親支援センターの視察や日本子どもの虐待防止学会第21回大会において企画シンポジウム「家庭養護のさらなる推進と支援に向けて九州からの発信」が採択され、専門家、関係者間で活発な議論が行われたことは成果であると考えられると同時に今後の研究を進める上でも多くの示唆を得ることができた。わが国の里親委託率は約16%と欧米先進諸国と比べると最低である。その背景に、実親の里親委託への抵抗があることや里親制度自体の理解が進んでいないこと、里親養育のコンピテンシーも問われている。従って、本研究では、実親と里親養育をつなぐにはどのような課題があるかを明らかにし、里親養育の質を高め、実親支援を包括した里親養育のあり方を研究することで里親委託推進を図ることを目的としている。平成28年度は、平成27年度に全国208児童相談所に実施した里親養育と実親との関係性に関する調査の分析を行った。124ヶ所の児童相談所から回答があり、回収率は、59.6%であった。中央児童相談所で県としてまとめて回答したところがあること、県単位で見ると47都道府県中、45県から回答を得ていることから、ほぼ全国の児童相談所の状況の調査ができていると考えられた。里親への委託児童数は3225名で、うち実親との交流がある子どもは621名、19.3%であった。ファミリーホーム(FH)への委託児童は834名で、交流がある子どもが399名、47.8%であり、里親とFHでは差が認められた。交流が行われていない理由として、交流を望めない子どもを委託」が84.6%、「実親のニーズがない」が56.1%、「実親との交流が不適切」が48.8%であり、施設入所に比べ里親委託については実親との関係性が大きく影響していることが示唆された。また、6月20日6月29日、里親養育の先進地であるオランダ・アムステルダムの里親支援センターPARLANを訪問するとともに、SOS子どもの村世界大会(インスブルック)に参加し、世界134国にあるSOSの取り組み及び社会的養護の将来・SOSの今後について視察した。また、移民家族の地域支援を行っているSOSこどもの村フランクフルトを視察した。オランダの里親支援機関等への視察は、欧州においてもここ数年里親養育における実親支援が強化されてきていること、虐待による分離介入だけなく、子どもの自立支援を踏まえた実家族支援が強化されてきていることを実感した視察であった。日本においても、平成28年6月児童福祉法の改正が行われ、実家族支援、里親養育の推進が明示されたことからも、今回の調査や視察は時期を得たものであり、先駆的なものとなっていると考えられる。児童相談所への調査とともに、実親との交流を行っている里親への調査も実施でき、回収率は59.2%であった。これらの調査結果のまとめを平成29年6月の第18回日本子ども家庭福祉学会において口頭発表予定であり、アクセプトされている。
KAKENHI-PROJECT-15K04132
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里親養育と実親をつなぐ支援プログラムの開発研究
本研究では、里親養育委託における子どもの実親との交流や支援がどのように行われているか、現状と課題について委託行政機関である児童相談所と受託者である里親それぞれへの調査を行うとともに、実親との交流を有する里親へのインタビュー調査を行った。その結果以下のまとめと課題が示された。1里親支援業務に関わる人員のほとんどは児童福祉司であるが、里親業務に専任で取り組める児童相談所は、全体の50%を切っている。里親委託された児童のうち、実親交流のある児童は19.2%であり、非常に少ない。2実親との交流は、その機会を定期的に予定し、外泊を取り入れ、予定された交流が確実に実現し、子どもの家庭復帰の予定がなくとも子どもの最善の利益を目的として行われる時成果を期待できると言える。3子どもと実親の親子関係再構築を目標とする際に、里親委託された子どもに起こる真実告知やルーツ探し、忠誠葛藤、遺伝的対象としての実親等についての理解が重要であるが、里親と実親双方にこれらを伝えるのは52.4%であり、里親に伝えるは35.3%、実親に伝えるは4.0%で最下位であることから、実親に対する養育者としての信頼が十分でないことが伺われた。これは委託重視で親子関係再構築までを見通していない現状を物語っているとも言えよう。4交流において、児相の介入があると、里親は安心して実親にアプローチし、実親家庭の生活改善を図ることができ、子どもの外泊交流への抵抗が軽減していることも認められた。里親委託された子どもの8割が実親との交流がないことは、子どもの権利条約の理念、平成28年度の改正児童福祉法の理念から考えても、今後検討していく大きな課題であると思われる。児童相談所の職員体制や専門性の強化とともに、中立的な支援機関として、包括的な里親支援機関が必要である。本研究の成果として報告書を作成し、全国児童相談所等関係機関に配付した。本研究では、里親養育委託における子どもの実親との交流や支援がどのように行われているか、現状と課題について児童相談所と里親への調査を行うとともに、実親との交流を有する里親へのインタビュー調査を行った。その結果,里親業務に専任の児童福祉司を配置している児童相談所は、5割未満であり、里親委託児で、実親との交流のある児童は2割と非常に少なかった。実親と児童の交流の成否は、実親が約束を守ることができるか否かで有意差が認められ、実親へのアセスメントと支援が必要であると思われた。平成28年度は、現在進めている児童相談所および里親へのアンケート調査のデータ分析を行う。また、子どもと実親との交流体験を有する里親への半構造化面接を実施、質的分析を進める。国際NGOであるSOS子どもの村における里親支援についての視察調査も含め、西欧先進国の里親支援についての視察調査を行う。平成29年度は、これまでの調査の分析をさらに進め、里親養育のあり方を実親との関係性を踏まえて検討する。児童相談所など関係機関との連携により、里親養育と実親との関係性、交流についての事例検討を行い、実親支援のあり方とともに、里親に求められるコンピテンシーについて質的研究を行う。研究成果を学会等で発表するとともに報告書を作成する。臨床心理学アンケート調査の結果回収が年度末になり、郵便の後納支払い額が不確定であったため残額が生じた。アンケートの回収は28年度も継続しているため残額はその郵送費用の補充に当てる予定である。
KAKENHI-PROJECT-15K04132
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アポ蛋白A-II、C-I、C-IIのアポ蛋白B含有リポ蛋白代謝に及ぼす影響
冠動脈疾患の危険因子として高中性脂肪(TG)血症の重要性が注目されている。TGに富むリポ蛋白質(TRL)は、アポ蛋白B以外に、アポ蛋白AII,CI,CII,GIII,Eなどが様々なパターンで存在している。これらのアポ蛋白はそれぞれ固有の機能を持っており動脈硬化性を規定すると考えられる。本研究では、1)TRL分布をアポ蛋白組成ごとに評価し脂肪負荷の変化を検討し、2)安定同位体を組み込んだアミノ酸をトレーサーとしたヒトでのリポ蛋白体内代謝研究法と用いて、アポ蛋白のTRL体内代謝動態に及ぼす影響を検討した。アポ蛋白A-II、C-I、C-II、C-III含有VLDLは、それぞれ13%、17%、16%、43%であった。これらのアポ蛋白を含むVLDLは、コレステロール、TG含有量が多い傾向が見られた。脂肪負荷後、アポ蛋白組成の有無で増加の程度に差は認めなかった。アポ蛋白含有率からアポ蛋白C-IIIとアポ蛋白EのTRL体内代謝動態に及ぼす影響を検討することした。Large VLDLでは、E-/C+とE+/C+の異化速度が約5pools/dayと亢進していたDense VLDL、IDLでも同様の傾向であった。LDLではE-/C-、E-/C+、E+/C+の順に異化速度が増加した。異化経路の検討では、large VLDLでは、E-/C-、E-/C+のdirect removalは低かったが、E+/C-で100%、E+/C+では70%であった。以上から、アポ蛋白A-II、C-I、C-II含有TRL粒子はいずれも20%以下でTRLの中では特殊な亜分画であった。また代謝の研究はアポ蛋白C-IIIとアポ蛋白Eを同時に検討した初めての研究となった訳であるが、アポ蛋白C-IIIの存在の有無にかかわらず、アポ蛋白Eはリポ蛋白リパーゼによる水解を抑制して直接の取り込みを促進することが明らかになった。冠動脈疾患の危険因子として高中性脂肪(TG)血症の重要性が注目されている。TGに富むリポ蛋白質(TRL)は、アポ蛋白B以外に、アポ蛋白AII,CI,CII,GIII,Eなどが様々なパターンで存在している。これらのアポ蛋白はそれぞれ固有の機能を持っており動脈硬化性を規定すると考えられる。本研究では、1)TRL分布をアポ蛋白組成ごとに評価し脂肪負荷の変化を検討し、2)安定同位体を組み込んだアミノ酸をトレーサーとしたヒトでのリポ蛋白体内代謝研究法と用いて、アポ蛋白のTRL体内代謝動態に及ぼす影響を検討した。アポ蛋白A-II、C-I、C-II、C-III含有VLDLは、それぞれ13%、17%、16%、43%であった。これらのアポ蛋白を含むVLDLは、コレステロール、TG含有量が多い傾向が見られた。脂肪負荷後、アポ蛋白組成の有無で増加の程度に差は認めなかった。アポ蛋白含有率からアポ蛋白C-IIIとアポ蛋白EのTRL体内代謝動態に及ぼす影響を検討することした。Large VLDLでは、E-/C+とE+/C+の異化速度が約5pools/dayと亢進していたDense VLDL、IDLでも同様の傾向であった。LDLではE-/C-、E-/C+、E+/C+の順に異化速度が増加した。異化経路の検討では、large VLDLでは、E-/C-、E-/C+のdirect removalは低かったが、E+/C-で100%、E+/C+では70%であった。以上から、アポ蛋白A-II、C-I、C-II含有TRL粒子はいずれも20%以下でTRLの中では特殊な亜分画であった。また代謝の研究はアポ蛋白C-IIIとアポ蛋白Eを同時に検討した初めての研究となった訳であるが、アポ蛋白C-IIIの存在の有無にかかわらず、アポ蛋白Eはリポ蛋白リパーゼによる水解を抑制して直接の取り込みを促進することが明らかになった。本年度は、代謝実験の前段階として、まずアポ蛋白に対する抗体を吸着させたカラムを作成しアポ蛋白組成によるVLDLの分画を検討した。アポ蛋白C-III含有VLDLは全体の43%であったのに対して、アポ蛋白A-II、C-I、C-II含有VLDLはそれぞれ12、30、12%であった。さらに、これらのアポ蛋白には同じリポ蛋白上に存在する傾向は低かった。すなわち、アポ蛋白A-II、C-I、C-II中の2種類のアポ蛋白の有無の組み合わせでは、一部の分画で代謝実験で必要とされる量のアポ蛋白B-100を得ることができなかった。したがって、最も含有率の高かったアポ蛋白CIとアポ蛋白C-IIIとの組み合わせ亜分画することとした。また、前回我々は、アポ蛋白E、C-IIIの組み合わせでは、E-/CIII-43%、E-/CIII+12%、E+/CIII-8%、E+CIII+38%であることを報告した(Khoo C et al., J.Lipid Res.1999)。この分布は代謝実験でも分析可能なものであり、今回の組み合わせと並行してアポ蛋白EとCIIIの亜分画代謝の検討も実施することにした。これらの基礎検討の後、まず5名の正脂血症に対して、承諾を得た上で代謝実験を施行した。
KAKENHI-PROJECT-14571110
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14571110
アポ蛋白A-II、C-I、C-IIのアポ蛋白B含有リポ蛋白代謝に及ぼす影響
安定同位体(2H3-leucine)を12時間持続点滴し、72時間後まで頻回に採血した。血漿分離後、まず抗アポ蛋白CIII抗体吸着カラムにアプライしてアポ蛋白CIIIを含む分画、含まない分画に分離した。その後、それぞれの分画を2分してそれぞれ抗アポ蛋白CI抗体と抗アポ蛋白E抗体吸着カラムにかけた。次に超遠心法でlight VLDL, dense VLDL, IDL, LDL1,LDL2,LDL3に分けイソプロパノール沈殿法でアポ蛋白B100を沈殿させた。現在、アミノ酸修飾とGC-MSによるtracer/tracee ratioの測定を行っている。冠動脈疾患の危険因子として高中性脂肪(TG)血症の重要性が注目されている。TGに富むリポ蛋白(TRL)は、アポ蛋白B以外に、アポ蛋白AII, CI, CII, CIII, Eなどが様々なパターンで存在している。これらのアポ蛋白はそれぞれ固有の機能を持っており動脈硬化性を規定すると考えられる。本研究では、1)TRL分布をアポ蛋白組成ごとに評価し脂肪負荷の変化を検討し、2)安定同位体を組み込んだアミノ酸をトレーサーとしたヒトでのリポ蛋白体内代謝研究法と用いて、アポ蛋白のTRL体内代謝動態に及ぼす影響を検討した。アポ蛋白A-II、C-I、C-II、C-III含有VLDLは、それぞれ13%、17%、16%、43%であった。これらのアポ蛋白を含むVLDLは、コレステロール、TG含有量が多い傾向が見られた。脂肪負荷後、アポ蛋白組成の有無で増加の程度に差は認めなかった。アポ蛋白含有率からアポ蛋白C-IIIとアポ蛋白EのTRL体内代謝動態に及ぼす影響を検討することとした。Large VLDLでは、E-/C+とE+/C+の異化速度が約5pools/dayと亢進していた。Dense VLDL、IDLでも同様の傾向であった。LDLではE-/C-、E-/C+、E+/C+の順に異化速度が増加した。異化経路の検討では、large VLDLでは、E-/C-、E-/C+のdirect removalは低かったが、E+/C-で100%、E+/C+では70%であった。以上から、アポ蛋白A-II、C-I、C-II含有TRL粒子はいずれも20%以下でTRLの中では特殊な亜分画であった。また代謝の研究はアポ蛋白C-IIIとアポ蛋白Eを同時に検討した初めての研究となった訳であるが、アポ蛋白C-IIIの存在の有無にかかわらず、アポ蛋白Eはリポ蛋白リパーゼによる水解を抑制して直接の取り込みを促進することが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-14571110
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HGF/c-Metシグナル活性化による移植膵島アポトーシス制御の試み
2014年から、継続して21ー41kgの豚を購入し、研究を行ってまいりました。獣医の協力のもと、豚に点滴ラインを確保し、気管挿管を行い、全身麻酔下で開腹膵臓全摘手術を行い、1型糖尿病のモデル作成に着手してまいりました。術後血液検査で血糖値を刑継時的に測定していたしました。前回の報告のごとく、術後1週間までは血糖が上昇するものの、その後は下降傾向となり、術後2週間ではインスリン投与せずに正常レベルまで回復してしまいました。膵臓全摘したにも関わらず血糖値の持続的な高値を伴う糖尿病が誘導されないため、不完全な膵臓切除の可能性、残存する膵臓が機能している可能性を考慮し、膵臓全摘後の豚に術後2日目と7日目にストレプトゾトシン50 mg/日を投与し、残存膵島破壊を試みました。しかしながら、術後2週間目の血糖値はストレプトゾトシン非投与群と比較してやや高値ではあるものの糖尿病は誘発されませんでした当初の予定では、低侵襲な腹腔鏡下膵臓全摘術を行うつもりでしたが、その前に開腹手術により、確実に膵臓摘出後糖尿病モデルを作成すべく検討してまいりました。手技的な要因も、解剖の理解にも問題なく開腹膵臓全摘術を行いましたが、予想に反して長期の糖尿病を誘導することが困難な状況でした。前述のごとく、開腹膵臓全摘によっても切除できていない残膵の膵島が機能して、糖尿病が誘発されない可能性があると考えております。カナダアルバータ大学に問い合わせをし、手技の確認を行いましたが、まずは小動物から行うべきとのアドバイスをいただきました。動物施設移転などにより、実験がなかなか開始できず、B6マウスの膵島分離手技を確立するところまでは到達いたしました。しかしながら、研究代表者の旭川医大退職に伴い研究は中止せざるおえなくなり、研究費の残額は全て返金させていただきました。本年は確かな1型糖尿病のモデル作りを行うことを主眼におき実験を行いました。また、腹腔鏡下膵臓全摘術を行う前に、開腹で確実に膵臓全摘を行い、豚膵臓の解剖の理解、および膵全摘後の糖尿病の評価を行うことを目標にいたしました。23ー26kg(平均28kg)の豚を用いて、全身麻酔下で開腹膵臓全摘手術を行い、1型糖尿病のモデル作成をいたしました。現在までに12頭の豚に対して手術を行い、術中死が1例ありましたが、その他は全例生存いたしました。摘出膵は52ー97g(平均74.8kg)でした。術後、4日目、7日目、14日目に血液検査を行い、血糖値、肝機能(AST/ALT,総ビリルビン値、LDH)、コレステロール値、中性脂肪値を測定いたしました。生存した11頭のうち、術後3週以内に4頭が脂肪肝を発症いたしました。その一方で、膵臓全摘を施行したにも関わらず血糖値は術後3日目には平均132.7 mg/ dLとなり、術後7日目には平均217.6 mg/ dLと一時的に上昇するものの、術後14日目には平均163.8 mg/ dLとインスリン投与なしに自然に下降いたしました。また、組織学的にも脂肪肝を認めましたが、AST/ALTは一貫して高値になることはありませんでした。コレステロール値、中性脂肪値も術後、正常値でした。本年度は12頭の豚に対して開腹の膵臓全摘術を行い、1型糖尿病モデルの作成を試みましたが、予想に反して血糖値上昇は認められませんでした。考察としては、豚の膵臓が下大静脈の背側に回り込んでいるために、切除が不完全であった可能性が考えられます。今後、モデル変更を含め検討すべきと考えられました。豚に膵臓全摘したにも関わらず、期待していたほどの高血糖にならず1型糖尿病としてのモデル作成に難渋しております。21.4ー40.4kg(平均27.6kg)の豚を購入し研究を行いました。点滴ラインを留置し、気管挿管を行い、全身麻酔下で開腹膵臓全摘手術を行い、1型糖尿病のモデル作成を検討いたしました。現在までに17頭の豚に対して手術を行い、術中死が1例、術後4日目、6日目、12日目、13日目にそれぞれ1例ずつ死亡し、生存率は70.6 %でした。摘出膵は32ー107g(平均73.4kg)でした。研究を開始してから9例目までは術後、4日目、7日目に血液検査を行い、それ以降の実験では術後、1日目、2日目、7日目、14日目に血液検査を行い血糖値、肝逸脱酵素ASTを測定いたしました。術前の血糖値は平均120.8 mg/ dLでした。膵臓全摘により、術後1日目に血糖値平均153.8 mg/ dL、術後2日目に血糖値平均164.9 mg/ dLとやや上昇傾向でした。術後7日目には平均205.6 mg/ dLとさらに上昇いたしましたが、術後14日目には平均168.8 mg/ dLとインスリン投与なしに自然に下降いたしました。
KAKENHI-PROJECT-15K10178
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HGF/c-Metシグナル活性化による移植膵島アポトーシス制御の試み
AST値は術前値の25.6 IU/Lから術後1日目には64.1 IU/Lと一時的に上昇いたしましたが、その後下降し、術後7日目には25.6 IU/Lと術前値と同値になり、おそらく手術の影響による上昇と考えられました。膵臓全摘したにも関わらず血糖値の持続的な高値を伴う糖尿病が誘導されないため、不完全な膵臓切除の可能性を考慮し、膵臓全摘後の豚に術後2日目と7日目にストレプトゾトシン50 mg/日を投与し、残存膵島破壊を試みました。しかしながら、術後14日目の血糖値は234 IU/Lとやや高値ではあるものの糖尿病は誘発されませんでした。本年は昨年に引き続き、豚における1型糖尿病のモデル作りを行うことを主眼におき実験を行いました。今年度も、腹腔鏡下膵臓全摘術を行う前に、開腹で確実に膵臓全摘を行い、豚膵臓の解剖の理解を深め、さらには膵全摘後に確実に豚糖尿病モデルが作成できるかどうかを検討することといたしました。現在までに17頭の豚に対して開腹の膵臓全摘術を行い、1型糖尿病モデルの作成を試みました。開腹膵臓全摘の手技は徐々に安定してきたものの、予想に反して血糖値上昇は認められず、安定した糖尿病状態を誘導することができず、現在模索中しており、やや計画が遅れております。膵島移植の世界的権威であるカナダアルバータ大学のJames Shapiro教授に相談したところ、豚の膵全摘は難易度が高いため、安定したモデルを作成するには時間がかかるとのお話でした。前回も考察したように、豚の膵臓が下大静脈の背側に回り込んでいるために、切除が不完全であった可能性もあり、それに対してストレプトゾトシンを投与しましたが、効果は認められませんでした。今後はモデル変更を含め検討しており、さらに研究を継続しております。2014年から、継続して21ー41kgの豚を購入し、研究を行ってまいりました。豚に点滴ラインを確保し、気管挿管を行い、全身麻酔下で開腹膵臓全摘手術を行い、1型糖尿病のモデル作成に着手してまいりました。術後血液検査で血糖値を測定しておりますが、術後1週間までは血糖が上昇するものの、その後は下降傾向となり、術後2週間ではインスリン投与せずに正常レベルまで回復いたしました。膵臓全摘したにも関わらず血糖値の持続的な高値を伴う糖尿病が誘導されないため、不完全な膵臓切除の可能性、残存する膵臓が機能している可能性を考慮し、膵臓全摘後の豚に術後2日目と7日目にストレプトゾトシン50 mg/日を投与し、残存膵島破壊を試みました。しかしながら、術後2週間目の血糖値はストレプトゾトシン非投与群と比較してやや高値ではあるものの糖尿病は誘発されませんでした当初の予定では、低侵襲な腹腔鏡下膵臓全摘術を行うつもりでしたが、その前に開腹手術により、確実に膵臓摘出後糖尿病モデルを作成すべく検討してまいりました。手技的な要因も、解剖の理解にも問題なく開腹膵臓全摘術を行いましたが、予想に反して長期の糖尿病を誘導することが困難な状況でございます。前述のごとく、開腹膵臓全摘によっても切除できていない残膵の膵島が機能して、糖尿病が誘発されない可能性があると考えております。小動物での検討をまず行い、その結果を参考にして大動物へ応用したいと考えております。大動物における膵臓全摘手術で、糖尿病が安定して誘導できないというのは誤算でした。ストレプトゾトシンも効果がなく残念な結果となってしまいました。現在、本来の目的であるhepatocyte growthfactor (HGF)の膵島に対する細胞保護効果を確認することを第1の目標とし、マウスモデルで検討することにいたしました。そして、その効果が確認できましたところで、大動物へ応用することも検討したいと考えております。2014年から、継続して21ー41kgの豚を購入し、研究を行ってまいりました。獣医の協力のもと、豚に点滴ラインを確保し、気管挿管を行い、全身麻酔下で開腹膵臓全摘手術を行い、1型糖尿病のモデル作成に着手してまいりました。術後血液検査で血糖値を刑継時的に測定していたしました。
KAKENHI-PROJECT-15K10178
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K10178
メタノール酵母細胞内動態のビジュアル化とソーティング・エンジニアリング
1.メタノール資化性酵母におけるオルガネラ動態のビジュアル化と応用機能開発(1)代謝及び蛋白質輸送機能メタノール酵母に発達しているペルオキシソーム代謝、特に抗酸化代謝機能に関わる2つの蛋白質、カタラーゼとPmp20について、その生理生化学的機能を明らかにした。特にPmp20については、ペルオキシソームに局在するペルオキシレドキシンとして過酸化脂質を基質としたグルタチオンペルオキシダーゼであることを初めて明らかにし、カタラーゼの持つ抗酸化反応との差異を明確にした(J.Biol.Chem,276,14279)。また、これらの蛋白質のペルオキシソームへの局在化効率には差があることを示し、その差は局在化シグナルとそのレセプターとの相互作用の強さに依存していることがわかった(J.Bacteriol.,183,6372他)(2)ペルオキシソーム分解の分子機構ペルオキシソームの発達した細胞をその不要な培地に移すとペルオキシソームが選択的に分解される。この過程を2重蛍光染色法により1細胞で追跡することにより、液胞が分断化しながらペルオキシソームを包み込みこんで行くことを明らかにした。さらにその過程を支配する20以上のPAZ遺伝子を同定しペルオキシソーム分解の分子モデルを提出した(Genes Cells,7,75他)。(3)蛋白質生産系への開発と応用蛋白質やペルオキシソーム分解に関わるPEP4及びPRB1遺伝子をCandida boidiniiiからクローニングして高蛋白質生産用の宿主を創生した。さらに臨床診断酵素として有用なペルオキシソーム酵素であるD-アミノ酸オキシダーゼの高生産に成功した(Biosci, Biotechnol.Biochem.,65,627;ibid.,66 628)。平成13年度に予定されていた本研究は、申請者が基盤研究(S)を受けることになったため、辞退することになった。しかしながら、その決定通知を受け取るより以前の段階において、上記成果を論文発表するための図表作製に必要な消耗品として、本研究費の一部を充当することになった。メタノール酵母単膜系オルガネラであるペルオキシソームと液胞は細胞内体積の大部分を占めているオルガネラである。我々はメタノール資化性酵母を用いて、強力な異種遺伝子発現系の開発に成功している。我々は細胞内タンパク質動態をビジュアル化することにより、発現させたタンパク質の細胞内動態を知り、それを利用して、タンパク質の機能解析や、従来、発現の困難であった有用タンパク質の生産に取り組んでいる。このような技術をソーティング・エンジニアリングと名付け細胞内輸送工学の中の一技術として位置づけている。本年度は、タンパク質のペルオキシソームへの局在過程の3つの過程についてのビジュアル化、ペルオキシソームの形と数のビジュアル化に成功した。一方、このような研究過程で細胞内容量の30%を占める巨大なオルガネラであるペルオキシソームが液胞に取り込まれて分解されることを見いだし(Y.Sakai et al.,J.Cell Biol.,141,625(1998)オルガネラでの異種タンパク生産性向上を妨げていると考えている。そこで、ペルオキシソームの分解過程については、新たにリアルタイムでビジュアル化することにより、液胞が分断化しながらペルオキシソームを取り囲んでいくことを明らかにした。また、ペルオキシソームにおける有用タンパク質の生産についても、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼだけでなく、アセチルスペルミジンオキシダーゼ、D-アミノ酸オキシダーゼなど、オキシダーゼの生産に一般的にペルオキシソームにおける生産が有効であることを示した。また、ペルオキシソーム内における酸化ストレスを分解する分子として、Pmp20を同定し、世界で初めてPmp20が脂質過酸化物に対してグルタチオンペルオキシダーゼ活性を示すことを生化学的に明らかにする一方、Pmp20を用いたソーティングエンジニアリングにより、Pmp20がメタノールでの生育に必須の分子であり、かつ、ペルオキシソーム内で生体膜を保護している分子であることを明らかにした。1.メタノール資化性酵母におけるオルガネラ動態のビジュアル化と応用機能開発(1)代謝及び蛋白質輸送機能メタノール酵母に発達しているペルオキシソーム代謝、特に抗酸化代謝機能に関わる2つの蛋白質、カタラーゼとPmp20について、その生理生化学的機能を明らかにした。特にPmp20については、ペルオキシソームに局在するペルオキシレドキシンとして過酸化脂質を基質としたグルタチオンペルオキシダーゼであることを初めて明らかにし、カタラーゼの持つ抗酸化反応との差異を明確にした(J.Biol.Chem,276,14279)。また、これらの蛋白質のペルオキシソームへの局在化効率には差があることを示し、その差は局在化シグナルとそのレセプターとの相互作用の強さに依存していることがわかった(J.Bacteriol.,183,6372他)(2)ペルオキシソーム分解の分子機構ペルオキシソームの発達した細胞をその不要な培地に移すとペルオキシソームが選択的に分解される。この過程を2重蛍光染色法により1細胞で追跡することにより、液胞が分断化しながらペルオキシソームを包み込みこんで行くことを明らかにした。さらにその過程を支配する20以上のPAZ遺伝子を同定しペルオキシソーム分解の分子モデルを提出した(Genes Cells,7,75他)。(3)蛋白質生産系への開発と応用蛋白質やペルオキシソーム分解に関わるPEP4及びPRB1遺伝子をCandida boidiniiiからクローニングして高蛋白質生産用の宿主を創生した。
KAKENHI-PROJECT-12460149
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メタノール酵母細胞内動態のビジュアル化とソーティング・エンジニアリング
さらに臨床診断酵素として有用なペルオキシソーム酵素であるD-アミノ酸オキシダーゼの高生産に成功した(Biosci, Biotechnol.Biochem.,65,627;ibid.,66 628)。平成13年度に予定されていた本研究は、申請者が基盤研究(S)を受けることになったため、辞退することになった。しかしながら、その決定通知を受け取るより以前の段階において、上記成果を論文発表するための図表作製に必要な消耗品として、本研究費の一部を充当することになった。
KAKENHI-PROJECT-12460149
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代数的組合せ論の研究
代数的組合せ論と関連する諸分野,既ちグラフ理論,有限群論,数論,代数幾何学から数値計算を含めた総合的な研究を目的とした.又,副次的に,この研究を夫々の分野に反映させ,新しい視野での研究の発展も計った.この目的に応じ,千葉大学教養部の関連する上記教官がグループを作り,共同して資料の収集,国内研究者との打ち合せ等を行い,研究を進めた.又研究代表者及び分担者により,テキスト(Algebraic Combinatorics I, Association Schemes, Eiichi Bannai and Tatioro Ito, Mathematics Lecture Note Series及びApplied Graph Theory, C.W.Marshall)の輪講,論文の紹介も定期的に行い,基礎知識の復習並びに解明すべき問題の把握に努めた.更に,ここで得られた群論組合せ論,数論等の知識と手法を応用して,各分担者は夫々の専門分野での新しい研究の契機と成果を得た.尚,必ずしも課題とは直結しない発表論文もあるが,それらの基礎は本研究によって得られたものである.以下,主論文についての概要を述べる.2.R^2上の円周をnormalに埋め込んだ像C上の2重点からCを通ってその点に戻る単純閉曲線の個数とC上の2重点の個数との関係を完全に与えた.3.最適停止時刻問題のゲーム変形において,停止領域に制限を持つ特別な場合には, 2つの通常の停止問題に分割出来ることを示した.4.ある種の区分的線形余次元1葉層の例外極小集合は,半真葉を有限枚しか持たないことを示した.又,記号力学系をホロノミー構造として持つ極小集合の例を構成した.5.rational mapがbirational mapとなる小さい整数m(n)を見つける問題で, n≦5の場合のm(n)の値を求めた.代数的組合せ論と関連する諸分野,既ちグラフ理論,有限群論,数論,代数幾何学から数値計算を含めた総合的な研究を目的とした.又,副次的に,この研究を夫々の分野に反映させ,新しい視野での研究の発展も計った.この目的に応じ,千葉大学教養部の関連する上記教官がグループを作り,共同して資料の収集,国内研究者との打ち合せ等を行い,研究を進めた.又研究代表者及び分担者により,テキスト(Algebraic Combinatorics I, Association Schemes, Eiichi Bannai and Tatioro Ito, Mathematics Lecture Note Series及びApplied Graph Theory, C.W.Marshall)の輪講,論文の紹介も定期的に行い,基礎知識の復習並びに解明すべき問題の把握に努めた.更に,ここで得られた群論組合せ論,数論等の知識と手法を応用して,各分担者は夫々の専門分野での新しい研究の契機と成果を得た.尚,必ずしも課題とは直結しない発表論文もあるが,それらの基礎は本研究によって得られたものである.以下,主論文についての概要を述べる.2.R^2上の円周をnormalに埋め込んだ像C上の2重点からCを通ってその点に戻る単純閉曲線の個数とC上の2重点の個数との関係を完全に与えた.3.最適停止時刻問題のゲーム変形において,停止領域に制限を持つ特別な場合には, 2つの通常の停止問題に分割出来ることを示した.4.ある種の区分的線形余次元1葉層の例外極小集合は,半真葉を有限枚しか持たないことを示した.又,記号力学系をホロノミー構造として持つ極小集合の例を構成した.5.rational mapがbirational mapとなる小さい整数m(n)を見つける問題で, n≦5の場合のm(n)の値を求めた.
KAKENHI-PROJECT-62540015
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小児の声と共鳴の発達に関する研究:健常児と口蓋裂児の比較
唇顎口蓋裂児の声の共鳴について鼻咽腔閉鎖機能の発達という観点から種々の実験と調査を行い、研究報告書として取りまとめを行った。その内容は以下の通りである。第1章では、唇顎口蓋裂児の乳児期の叫喚音声の音響特性と鼻腔共鳴量、及びそれらの発達的変化を調査した。また、この研究に先立って調査に用いるKAY社製Nasometer^【○!R】の有効性について、本機の計測結果と言語治療士の聴覚判定との比較を行う予備調査を実施した。その結果、両者に相関を認め、さらに聴覚的判定でとらえられない僅少の差を測定する事ができる事が確認された。本調査では、鼻咽腔閉鎖機能不全が起こりえない唇顎裂児との比較検討を通して、叫喚音声の音響分析結果から鼻咽腔閉鎖機能不全は早期から叫喚音声に影響を及ぼすこと、聴覚印象とNasometer^【○!R】による調査結果から生後4カ月になると叫喚発声にも鼻咽腔閉鎖機能が関与し始めることが明らかになった。第2章では、Nasometer^【○!R】を用いて得られた鼻腔共鳴度を臨床診断に役立てる上で必要な基準値を得る目的で、正常な鼻腔共鳴を有する非口蓋裂幼児260名を検査して資料を採取し、この資料を示した。また、これを開鼻声のない唇顎口蓋裂児と比較すると鼻腔共鳴度は明らかな低値を示したことから、基準値の設定には口蓋裂がない健常児のデータを用い、なおかつ地域の方言も検討に加えた検査文を作成する必要があることを提示した。第3章では、二段階口蓋形成手術法を実施した唇顎口蓋裂70例について鼻咽腔閉鎖機能と構音について長期間の経年的変化を観察・評価した結果を詳述した。鼻咽腔閉鎖機能は口蓋形成術後の6歳までの長期間にわたって機能の改善がみられること、すなわち、術後ただちに機能が得られるのではなく、発達的に獲得され続けることを立証した。さらに、機能が幼児期の早期に獲得されない場合には構音障害が多発しやすいが、適切な構音治療を行えば8歳までには良好な改善が得られることを資料に基づいて提示した。唇顎口蓋裂児の声の共鳴について鼻咽腔閉鎖機能の発達という観点から種々の実験と調査を行い、研究報告書として取りまとめを行った。その内容は以下の通りである。第1章では、唇顎口蓋裂児の乳児期の叫喚音声の音響特性と鼻腔共鳴量、及びそれらの発達的変化を調査した。また、この研究に先立って調査に用いるKAY社製Nasometer^【○!R】の有効性について、本機の計測結果と言語治療士の聴覚判定との比較を行う予備調査を実施した。その結果、両者に相関を認め、さらに聴覚的判定でとらえられない僅少の差を測定する事ができる事が確認された。本調査では、鼻咽腔閉鎖機能不全が起こりえない唇顎裂児との比較検討を通して、叫喚音声の音響分析結果から鼻咽腔閉鎖機能不全は早期から叫喚音声に影響を及ぼすこと、聴覚印象とNasometer^【○!R】による調査結果から生後4カ月になると叫喚発声にも鼻咽腔閉鎖機能が関与し始めることが明らかになった。第2章では、Nasometer^【○!R】を用いて得られた鼻腔共鳴度を臨床診断に役立てる上で必要な基準値を得る目的で、正常な鼻腔共鳴を有する非口蓋裂幼児260名を検査して資料を採取し、この資料を示した。また、これを開鼻声のない唇顎口蓋裂児と比較すると鼻腔共鳴度は明らかな低値を示したことから、基準値の設定には口蓋裂がない健常児のデータを用い、なおかつ地域の方言も検討に加えた検査文を作成する必要があることを提示した。第3章では、二段階口蓋形成手術法を実施した唇顎口蓋裂70例について鼻咽腔閉鎖機能と構音について長期間の経年的変化を観察・評価した結果を詳述した。鼻咽腔閉鎖機能は口蓋形成術後の6歳までの長期間にわたって機能の改善がみられること、すなわち、術後ただちに機能が得られるのではなく、発達的に獲得され続けることを立証した。さらに、機能が幼児期の早期に獲得されない場合には構音障害が多発しやすいが、適切な構音治療を行えば8歳までには良好な改善が得られることを資料に基づいて提示した。健常児の声と構音の特徴を調査するために、新潟県の方言分布において/ηa/の使用が認められる県北西部の新発田市の保育園ないし幼稚園に在籍し、翌年度就学予定の幼児(いわゆる年長児)260名を対象として、開鼻声ならびに閉鼻声を指標とした鼻腔共鳴度、声の基本周波数、声質を、今回購入したKay社製Nasometer II^<【○!R】>およびSona-Speech^<【○!R】>を連動させたシステムを用いて計測し、あわせて、聴覚判定による構音検査を実施した。検査項目は以下とした。1『ことばのテスト絵本』:テスト1(言語理解検査)、テスト2(囁語による聴力検査)、テスト3(構音検査)2 Nasometer^<【○!R】>による鼻腔共鳴度nasalance検査:独自に開発した音節・文章復唱検査をサンプルとした。3 Sona-Speech^<【○!R】>による声の検査:上記2との同時測定および母音/e/の持続発声を採集し、声の基本周波数と母音のフォルマント(F1,F2)周波数を測定し、嗄声を示すものではその音響特性の抽出を試みた。
KAKENHI-PROJECT-14571923
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14571923
小児の声と共鳴の発達に関する研究:健常児と口蓋裂児の比較
その結果、1の検査では、言語理解が3歳相当レベルに達していないものは1名(0.4%)、中重度聴力損失を示すものは12名(4.6%)、構音障害が認められたものは10名(3.8%)であった。2では、聴覚印象で開鼻声(0名)あるいは閉鼻声(18名)が認められたもの以外での文章検査の平均nasalanceは32.5%で、そのうち通鼻音を含まない文章では22.3%であった。閉鼻声を示す幼児では文章検査全体の平均は22.5%で有意差が認められた。3では、声の基本周波数とF1,F2の周波数分布について年長児が示す範囲を概ね把握することができたが、幼児における嗄声の音響特性の抽出とともに音響分析を行う上でさらに工夫が必要であると思われ、次年度の課題とした。健常児および口蓋形成術後の唇顎口蓋裂児を対象として、開鼻声ならびに閉鼻声を指標とした鼻腔共鳴度、声の基本周波数、声質を、前年度購入したNasometer II【○!R】およびSona-Speech【○!R】を連動させたシステムを用いて計測し、あわせて、聴覚判定による構音検査を実施して両群間で比較検討を行った。対象は、健常児ついては昨年度資料を収集した健常年長幼児260名とし、術後唇顎口蓋裂児は新潟大学医歯学総合病院歯科言語治療室を通院中の幼児45名とした。検査項目は以下とした。1.『ことばのテスト絵本』:テスト1(言語理解検査)、テスト2(囁語検査)、テスト3(構音検査)2.Nasometer^<【○!R】>による鼻腔共鳴度(nasalance)評価:独自に開発した音節・文章復唱検査を実施した。3.Sona-Speech^<【○!R】>による声の評価:上記2との同時測定および母音/e/の持続発声を採集し、声の基本周波数と母音のフォルマント(F1,F2)周波数を測定し、嗄声を示すものではその音響特性の抽出を試みた。その結果、『ことばのテスト絵本』テスト1にて言語理解が3歳相当レベルに達していないものは健常幼児が1名(0.4%)で、唇顎口蓋裂児では1名(2.2%)、中重度聴力損失を示すものは健常幼児12名(4.6%)、唇顎口蓋裂児3名(6.7%)、構音障害は健常幼児10名(3.8%)に対して唇顎口蓋裂児では25名(55.5%)であった。Nasometer^<【○!R】>による鼻腔共鳴度評価では、健常幼児は聴覚印象で開鼻声(0名)あるいは閉鼻声(18名)が認められたもの以外での文章検査の平均nasalanceは32.5%で、そのうち通鼻音を含まない文章では22.3%であったのに対して、唇顎口蓋裂児では開鼻声が認められた10名を除いた平均nasalanceは38.5%と有意な差が認められた。開鼻声例では平均は45.5%であった。声の基本周波数とF1,F2の周波数分布は健常幼児と唇顎口蓋裂児で差は認められなかった。種々の言語障害および幼児の発声の発達を研究する際の基礎データとすることを目的として、健常児および口蓋形成術後の唇顎口蓋裂児を対象として、開鼻声ならびに閉鼻声を指標とした鼻腔共鳴度と声質を、Nasometer^<【○!R】>およびSona-Speech^<【○!R】>を連動させたシステムを用いて計測し、両群間で比較検討を行った。被験者は健常児ついてはこれまでに音声データを収集した健常幼児260名で、術後唇顎口蓋裂児は新潟大学医歯学総合病院歯科言語治療室を通院中の幼児85名とした。検査方法は以下のように行った。
KAKENHI-PROJECT-14571923
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偏光顕微ラマン分光法による核酸二次構造の研究
この研究は、DNAの二重らせんの立体構造、すなわち核酸の二重鎖およびそれらに蛋白質の結合した複合体における、核酸塩基や蛋白質残基の配向をミクロな環境で、偏光ラマンスペクトル法により明らかにする事を最終目標としている。そのため以下のような手順を踏んで研究を推進した。第一に、核酸塩基および核酸モノマーモデル化合物の単結晶を作成し、それらの偏光ラマンスペクトルからラマンテンソルを決定できるかを検討した。第二に、DNAやpolyRNAなどポリマー二重らせんの配向繊維を作成し、それらの偏光ラマンスペクトルをどのように解析すべきかを検討した。第三に、ラマンテンソルの転用性を検討した。違った分子の結晶間ではどうか、モノマーの値をそのままポリマーに使えるか、得られたテンソル値はAb-initio MO法による量子化学的計算結果によって裏付けられるかなどについて、仔細に検討した。第四に、DNAの二重らせん形成による核酸塩基のラマンテンソルの変化を、二つの面から検討した。G-C,A-T,A-Uのワトソン・クリックの二重らせん形成において、塩基環の呼吸振動モードの、円盤状のラマンテンソルが長楕円状になるかどうか?環面内振動のラマンテンソルが、上下の環の重なりによるスタッキング効果によって、らせん軸方向の成分を増大させ、丸みを帯びるかどうかの二点に絞って、実験と理論の面から考察した。最後に、二種類の稀少アミノ酸である、トリプトファンとチロシンを取り上げ、それらの単結晶のラマンテンソルを決定し、タンパク質中におけるこれらの残基の配向を推定した。以上の成果を、報文15報にまとめて報告した。ラマンテンソルの転用性の問題は、本研究によって初めて明らかになったものであり、今後の研究の指針をあたえるものである。この研究は、DNAの二重らせんの立体構造、すなわち核酸の二重鎖およびそれらに蛋白質の結合した複合体における、核酸塩基や蛋白質残基の配向をミクロな環境で、偏光ラマンスペクトル法により明らかにする事を最終目標としている。そのため以下のような手順を踏んで研究を推進した。第一に、核酸塩基および核酸モノマーモデル化合物の単結晶を作成し、それらの偏光ラマンスペクトルからラマンテンソルを決定できるかを検討した。第二に、DNAやpolyRNAなどポリマー二重らせんの配向繊維を作成し、それらの偏光ラマンスペクトルをどのように解析すべきかを検討した。第三に、ラマンテンソルの転用性を検討した。違った分子の結晶間ではどうか、モノマーの値をそのままポリマーに使えるか、得られたテンソル値はAb-initio MO法による量子化学的計算結果によって裏付けられるかなどについて、仔細に検討した。第四に、DNAの二重らせん形成による核酸塩基のラマンテンソルの変化を、二つの面から検討した。G-C,A-T,A-Uのワトソン・クリックの二重らせん形成において、塩基環の呼吸振動モードの、円盤状のラマンテンソルが長楕円状になるかどうか?環面内振動のラマンテンソルが、上下の環の重なりによるスタッキング効果によって、らせん軸方向の成分を増大させ、丸みを帯びるかどうかの二点に絞って、実験と理論の面から考察した。最後に、二種類の稀少アミノ酸である、トリプトファンとチロシンを取り上げ、それらの単結晶のラマンテンソルを決定し、タンパク質中におけるこれらの残基の配向を推定した。以上の成果を、報文15報にまとめて報告した。ラマンテンソルの転用性の問題は、本研究によって初めて明らかになったものであり、今後の研究の指針をあたえるものである。核酸の二次構造や配向状態を、さらにそれと結合する蛋白質や薬剤の会合構造の知見を得るために、顕微ラマン分光の研究を進めている。仔牛胸腺のDNAは、保存状態の湿度を調整して、A形・B形の配向繊維を得た。偏光ラマンスペクトルを測定して、二次構造のマーカーバンドの挙動を明らかにしたが、主鎖骨格のリン酸ジエステル部位の解釈に疑問が残った。また、合成RNAのA形繊維であるポリ(rI)・ポリ(rC)の偏光ラマンスペクトルを取得し、ラマンテンソルかららせん軸に対する塩基の傾き状態を推定した。本研究費によるAr^+レーザーチューブの更新によって、ラマン励起光源が納入時の強度に復帰し、偏光ラマンスペクトルの質が向上するとともに、水溶液の偏光解消度の精度も上げることができた。ポリマーの知見を定量化し確実にするために、核酸や蛋白質の構成単位の単結晶作製とラマンスペクトルの取得に努めた。イノシン酸・環状アデノシン1リン酸などのヌクレオチドや、シチジン・チミジンなどのヌクレオシド、シトシン・チミン・プリン・ヒポキサンチン・プソイドウリジンなどの塩基について解析を進め、個々の部位とくに塩基部位に基づくラマンバンドを識別し、幾つかの特徴的なバンドのラマンテンソルを決定した。さらにアミノ酸についても、側鎖に環状構造を持つトリプトファンやチロシン・フエニルアラニンなどについて単結晶作製とラマンスペクトルの解析を推進した。DNAの、生体中での三次元構造を探る手法の一つとして、顕微ラマン分光法がある。結晶であれ液体であれ、1ミクロン以下の小さな部位の構造知見を得ることが出来る。核酸塩基のラマンスペクトルから、ラマンシフトと散乱強度の強さがわかり、ラマンテンソルの異方性から、その転用性を仮定できる範囲で、塩基の構造と方位を知ることが出来る。
KAKENHI-PROJECT-07640685
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07640685
偏光顕微ラマン分光法による核酸二次構造の研究
本年度はピリミジン塩基の一つであるチミンを取り上げ、チミン様塩基について基準振動・ラマンテンソルの形状・転用性について詳細に検討した。チミン様塩基としてはチミン自身の他、ヌクレオシドであるチミジン、チミジンの3'-OHをアジド基N_3で置換したAZT、チミンの5位のメチル基をハロゲンで置換した5-クロロウラシル(5ClU),5FU,5BrU,5IU、およびこのメチル基がリボースの1'CHに置換したプソイドウリジンを取り上げた。それぞれ単結晶を作成し、X線回折によって結晶の軸方位を定め、単結晶の偏光ラマンスペクトルとして(aa),(bb),(cc),(ab),(bc),(ca)の各成分を取得した。又溶液の偏光解消度も同じ構造に対するものを測定した。チミン本体については非経験的分子軌道(MO)法6-31Gを用いたHONDO8.5によって、基準振動数、赤外およびラマン強度を算出し、実測と比較考察した。得られたラマンテンソルは、グラフ表示する事にし、実際に近い三次元透視図と、主軸切片表示を試みた。MO法を参照すると、チミンのラマンテンソルの実験結果からの推定値は、それほど狂っていない事が判明した。MO法と実際の結晶の結果では、静電場・真空中での単一分子と、交番電場・分子間相互作用下の分子との相違を反映して、定性的には一致しても定量的には必ずしも一致しなかった。しかし、同じ単結晶のチミン、チミジン、AZT、プソイドウリジンの4分子の間には、ラマンテンソルの転用性が予想以上に成り立っている事がわかった。本研究は、DNAの二重らせんの立体構造、核酸塩基の配向をミクロな環境で、偏光ラマンスペクトル法により明らかにする事を目標とした。得られたラマンテンソルの値を整理し、構成成分間及び構成単位とポリマーとの間の転用性を検討した。違った分子の結晶間ではどうか、モノマーの値をそのままポリマーに使えるか、得られたテンソル値はAb-initio MO法による量子化学的計算結果によって裏付けられるかなどについて、仔細に検討した。DNAの二重らせん形成による核酸塩基のラマンテンソルの変化を、面内及び上下の塩基のコンプレックス形成という二つの面から検討した。G-C,A-T,A-Uのワトソン・クリックの二重らせん形成において、塩基環の呼吸振動モードの、円盤状のラマンテンソルが長楕円状になるかどうか?環面内振動のラマンテンソルが、上下の環の重なりによるスタッキング効果によって、らせん軸方向の成分を増大させ、丸みを帯びるかどうかの二点に絞って、実験と理論の面から考察した。最後に、二種類の稀少アミノ酸である、トリプトファンとチロシンを取り上げ、それらの単結晶のラマンテンソルを決定し、タンパク質中におけるこれらの残基の配向を推定した。以上の成果を、報文6報にまとめて報告し、また本年9月上旬に南アフリカで開催される第16回国際ラマンコンファレンスで報告する予定である。ラマンテンソルの転用性適用の適不適の問題は、本研究によって初めて明らかになったものであり、今後の研究の指針をあたえるものである。
KAKENHI-PROJECT-07640685
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07640685
コアフコースによる高度機能化バイオ医薬品の開発プラットフォームの構築
平成29年度に明らかにしたアスパラギン結合型糖鎖(N型糖鎖)修飾によるヒトα1,6-フコース転移酵素(FUT8)の活性調節の詳細を調べるために、今年度はヒトFUT8N型糖鎖付加変異体の酵素標品の調製とその機能解析を試みた。酵素標品の調製にはバキュロウイルス-昆虫細胞発現系を用い、分泌型酵素とするためにFUT8のN末端側にバキュロウイルスのエンベロープタンパク質であるgp67のシグナル配列を導入し、また精製を簡便にすることを目的としてC末端にポリヒスチジンタグを導入した組換えウイルスを作製した。作製した組換えウイルスを昆虫細胞であるSf21細胞に感染させ酵素標品を発現・培地中に分泌させたところ、野生型および糖鎖付加変異体FUT8(D186N, E347N/A349T, E348N, D186N/E347N/A349T, D186N/E348N)が培地中に分泌されそれぞれFUT8活性を持つことが確認された。またグリコシダーゼ消化により培地中に分泌された糖鎖付加変異体がすべてにおいて実際に糖鎖修飾を受けていることが明らかになった。続けて野生型とD186N糖鎖付加変異体について金属キレートアフィニティークロマトグラフィーにより精製することで酵素標品とし速度論的解析を行ったところ、D186N糖鎖付加変異体において受容体基質に対するKm値が野生型に比べ小さくなっており受容体基質に対する親和性が上昇している可能性が示唆された。今後は、その他の変異体についても同様の解析を行っていく予定である。性状解析のためのFUT8糖鎖付加変異体酵素標品を得るためにバキュロウイルス/昆虫細胞発現系を用いることが有効であることがわかり、これまでに調製を終えたWTやD186N以外の変異体酵素の調製を行っているところである。また、FUT8糖鎖付加変異体を恒常的に発現する細胞をタンパク質高発現細胞として知られるCHO, HEK293, Sf21細胞を用いて構築し、これらの機能解析を現在行っている。さらに医薬品タンパク質として有名であるエリスロポエチンをコアフコシル化糖タンパク質のモデルとし、作製したFUT8糖鎖付加変異体発現細胞を用いて発現させコアフコシル化エリスロポエチンの調製を試みているところである。現在進行中のFUT8糖鎖付加変異体酵素、FUT8糖鎖付加変異体の恒常的発現細胞、コアフコシル化エリスロポエチンの機能解析や糖鎖構造解析を行う。同時に最終年度の研究計画にあるEGFレセプターやγ-GTPなどについてもコアフコース付加体を調製しコアフコース付加による機能化について検討していく予定である。本申請ではアスパラギン結合型糖鎖(N型糖鎖)の構造改変によるバイオ医薬品の機能化を目的とした開発プラットフォームを構築するために、近年注目を浴びているコアフコース構造を合成するFUT8の変異導入による反応高効率化及び変異体酵素の恒常的発現細胞を樹立することによるコアフコシル化糖タンパク質高発現系を作製していく。平成29年度は、FUT8の反応高効率化を目指して翻訳後修飾改変FUT8変異体の作製についてN型糖鎖導入変異体の作製を中心に行った。カイコFUT8の糖鎖付加部位を参照にヒトFUT8のAsp-186, Glu-347, Glu-348に変異導入を行い糖鎖付加変異体を作製した。また、SNPデータベースに登録のあったAsn-213に糖鎖付加部位が導入されるAsn215Ser変異体も併せて作製した。一般的にタンパク質発現によく利用されるCOS-1, HEK293, CHO, HepG2, Sf21細胞に各変異体を発現させFUT8酵素活性を測定したところ、Asp-186, Glu-347, Glu-348に糖鎖付加部位を導入した変異体では酵素活性の上昇が見られたがSNP変異体であるAsn215Ser変異体では酵素活性の低下が見られた。糖鎖付加部位を複数導入した変異体では、更に活性が上昇する傾向にあることも観察された。これらの結果から、ヒトFUT8のAsp-186, Glu-347, Glu-348への変異導入による糖鎖付加は活性上昇に効果的であることが示された。更に興味深いことにGlu-347の糖鎖付加変異体ではCOS-1細胞で発現させた場合に糖鎖付加が約50%しかなされなかったことが明らかになり、糖鎖改変において宿主やタンパク質の部位特異的に糖鎖の付加効率が変化することが示唆された。コアフコシル化糖タンパク質高発現系を作製するにあたって、FUT8の活性調節に変異導入による糖鎖付加が有効な手段である可能性を示すことができた。また発現させた細胞種の違いや、FUT8への糖鎖付加部位の導入場所の違いによって糖鎖付加効率が変わることが示され、本申請での糖鎖改変技術を開発する上での基礎データとなり得ることがわかった。平成29年度に明らかにしたアスパラギン結合型糖鎖(N型糖鎖)修飾によるヒトα1,6-フコース転移酵素(FUT8)の活性調節の詳細を調べるために、今年度はヒトFUT8N型糖鎖付加変異体の酵素標品の調製とその機能解析を試みた。
KAKENHI-PROJECT-17K06929
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K06929
コアフコースによる高度機能化バイオ医薬品の開発プラットフォームの構築
酵素標品の調製にはバキュロウイルス-昆虫細胞発現系を用い、分泌型酵素とするためにFUT8のN末端側にバキュロウイルスのエンベロープタンパク質であるgp67のシグナル配列を導入し、また精製を簡便にすることを目的としてC末端にポリヒスチジンタグを導入した組換えウイルスを作製した。作製した組換えウイルスを昆虫細胞であるSf21細胞に感染させ酵素標品を発現・培地中に分泌させたところ、野生型および糖鎖付加変異体FUT8(D186N, E347N/A349T, E348N, D186N/E347N/A349T, D186N/E348N)が培地中に分泌されそれぞれFUT8活性を持つことが確認された。またグリコシダーゼ消化により培地中に分泌された糖鎖付加変異体がすべてにおいて実際に糖鎖修飾を受けていることが明らかになった。続けて野生型とD186N糖鎖付加変異体について金属キレートアフィニティークロマトグラフィーにより精製することで酵素標品とし速度論的解析を行ったところ、D186N糖鎖付加変異体において受容体基質に対するKm値が野生型に比べ小さくなっており受容体基質に対する親和性が上昇している可能性が示唆された。今後は、その他の変異体についても同様の解析を行っていく予定である。性状解析のためのFUT8糖鎖付加変異体酵素標品を得るためにバキュロウイルス/昆虫細胞発現系を用いることが有効であることがわかり、これまでに調製を終えたWTやD186N以外の変異体酵素の調製を行っているところである。また、FUT8糖鎖付加変異体を恒常的に発現する細胞をタンパク質高発現細胞として知られるCHO, HEK293, Sf21細胞を用いて構築し、これらの機能解析を現在行っている。さらに医薬品タンパク質として有名であるエリスロポエチンをコアフコシル化糖タンパク質のモデルとし、作製したFUT8糖鎖付加変異体発現細胞を用いて発現させコアフコシル化エリスロポエチンの調製を試みているところである。H29年度に得られた結果を基に、各種培養細胞に糖鎖付加FUT8変異体を遺伝子導入し、薬剤スクリーニングにより恒常的に糖鎖付加変異体酵素を発現している細胞株を樹立する。樹立した細胞を用いてモデルタンパク質を発現させ、親株や野生型FUT8を恒常的に発現している細胞株を対照にして変異体酵素によるモデルタンパク質へのコアフコース導入効率を評価する。最も高効率でコアフコース付加が行える変異体酵素発現細胞株をコアフコシル化糖タンパク質高発現系とし、種主のタンパク質においてコアフコースによる機能化が可能であるか検討していく。また糖鎖付加FUT8変異体の分泌型酵素発現系を作製し、発現系から調製した精製酵素を用いることでFUT8の糖鎖付加による活性上昇の機構についても明らかにしていきたい。現在進行中のFUT8糖鎖付加変異体酵素、FUT8糖鎖付加変異体の恒常的発現細胞、コアフコシル化エリスロポエチンの機能解析や糖鎖構造解析を行う。同時に最終年度の研究計画にあるEGFレセプターやγ-GTPなどについてもコアフコース付加体を調製しコアフコース付加による機能化について検討していく予定である。平成30年度は、予定していたシンポジウムに参加できなかったため、また予定していた研究時期のずれのため研究費を次年度に持ち越すこととなった。次年度の研究費については、当該年度の研究計画と今年度時期のずれた研究計画を遂行するために利用する。次年度の予算については、消耗品・発表のための学会参加にかかる旅費・論文作成にかかる費用に使用する予定であり、計画にない機器や高額物品を購入する予定はない。
KAKENHI-PROJECT-17K06929
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電子スピン共鳴法を用いたラジカル反応によるリグニン分解機構の解明
白色腐朽菌Ceriporiopsi subvermisporaによるリグニン分解にはラジカル反応が関与しているが、生成するラジカル種を直接測定した例はない。本研究では、ESR法によるラジカルの直接測定を行い、ラジカル反応によるリグニンモデル化合物の分解機構の解明をおこなった。その結果、ラジカルによってモデル化合物のベンジル位からの水素引き抜き反応が引き起こされていること、その反応性はラジカルの反応性およびモデル化合物のベンジル位におけるC-H結合解離エネルギーと高い相関を持つことが明らかになった。白色腐朽菌Ceriporiopsi subvermisporaによるリグニン分解にはラジカル反応が関与しているが、生成するラジカル種を直接測定した例はない。本研究では、ESR法によるラジカルの直接測定を行い、ラジカル反応によるリグニンモデル化合物の分解機構の解明をおこなった。その結果、ラジカルによってモデル化合物のベンジル位からの水素引き抜き反応が引き起こされていること、その反応性はラジカルの反応性およびモデル化合物のベンジル位におけるC-H結合解離エネルギーと高い相関を持つことが明らかになった。1.ESR実験実験に必要となる、フェノール性および非フェノール性の単量体、二量体等のリグニンモデル化合物の有機合成をおこなった。また、合成と並行して、UV照射装置(LIGHTEST社製・CUREMATE200)とESR装置(日本電子製・FR30)とを組み合わせたUV-ESR装置のセットアップをおこなった。すなわち、リグニンモデル化合物と反応させる初発ラジカルが確実に発生しているか否か、すなわち装置が正確にセッティングされているかを確認する為、リグニンモデル化合物を添加していない系にラジカル発生剤のみを添加してUV照射をおこない、生成する初発ラジカルを検出する予備実験をおこなった。ラジカル発生剤としては、カーボンセンターラジカルおよびペルオキシルラジカル発生剤としてAIBN等のアゾ化合物を、アルコキシルラジカル発生剤としてジ-tert-ブチルペルオキシド等を用いた。これらはラジカル重合の開始剤として用いられることの多い物質であるが、本研究においては逆にリグニンモデルダイマーおよび将来的にはリグニンポリマーの分解を想定して用いた。2.分子軌道計算Wavefunction社製Spartan'06を用いて、リグニンモデル化合物(A-H)およびA-Hから水素原子が引き抜かれた生成物(A・)それぞれのポテンシャルエネルギーを計算し、両者の差を計算することでA-H結合の結合解離エネルギー(BDE)を求めた。まず分子構造を描画したのちにAM1によって立体構造の最適化をおこない、その後密度汎関数法(DFT)によってB3LYP/6-311G*レベルにおけるポテンシャルエネルギー計算をおこなった。その結果、様々なリグニンモデル化合物において最も引き抜かれやすい水素原子はベンジル位のものであることが明らかになった。1. ESR実験昨年度にセットアップ済みのUV-ESR装置を用いて、アゾ化合物由来カーボンセンターラジカルとリグニンモデル化合物(LMC)との反応で生成するラジカルを測定した。具体的には、アゾ化合物及びLMCを石英セル中に採取してESR装置にセットし、UV照射を行うことで初発ラジカルをin situで発生させ、これをLMCと反応させることで生成するLMCラジカルのESRスペクトルを直接測定した。その結果、ベラトリルアルコールをLMCとして用いた際にはACVAおよびAAPH由来カーボンセンターラジカルが、二量体型の非フェノール性LMCを用いた際にはAIBNおよびACVA由来カーボンセンターラジカルがそれぞれLMCと反応することが明らかになった。一方、AMVN由来ラジカルはどちらとも反応しなかった。AAPH由来ラジカルおよび二量体LMCとの反応は溶媒への溶解度の関係でおこなわなかった。2.分子軌道計算Wavefunction社製Spartan'06を用いて、リグニンモデル化合物(A-H)がA・+H・となる際の結合解離エネルギーおよび種々のカーボンセンターラジカル(C・)が水素原子(H・)を引きぬいて安定化する(C-H)際のエネルギー変化を比較した。その結果、ベラトリルアルコールと二量体LMCでは、ベラトリルアルコールの方が水素を引き抜かれにくいことが明らかになった。また、水素原子を得ることによるカーボンセンターラジカルの安定化エネルギーに関しては、より安定化するものからAAPH、ACVA、AIBN、AMVN由来ラジカルの順となった。この値はラジカルによる水素原子の引き抜きの強さの指標となる。本計算の結果は、上記ESR実験における各LMCおよびカーボンセンターラジカルとの反応性と強い相関がみられた。
KAKENHI-PROJECT-20780128
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20780128
マグネトプラズモニック構造体を用いた温度自己制御型グリーン素子の創成
強磁性MnSb薄膜の光学特性および局在プラズモンを励起したAu/ MnSb複合ナノ構造の共鳴条件へのスピン依存散乱の影響を検討した.波長200-1700 nm,温度25-375°Cの範囲で光学特性を評価した結果,以下のことがわかった.(1) MnSb薄膜の誘電率の温度変化は,長波長領域(620 nm以上)で顕著に現れる.(2)キュリー点近傍で抵抗率と伝導電子の散乱時間の温度依存性の傾向が変化する.これはスピン依存散乱がドルーデ項に反映された結果であると考えられる.(3)スピン依存散乱の効果は,Auと複合化した強磁性ナノ構造においても,局在プラズモンの共鳴条件の変化として現れる.強磁性MnSb薄膜の光学特性および局在プラズモンを励起したAu/ MnSb複合ナノ構造の共鳴条件へのスピン依存散乱の影響を検討した.波長200-1700 nm,温度25-375°Cの範囲で光学特性を評価した結果,以下のことがわかった.(1) MnSb薄膜の誘電率の温度変化は,長波長領域(620 nm以上)で顕著に現れる.(2)キュリー点近傍で抵抗率と伝導電子の散乱時間の温度依存性の傾向が変化する.これはスピン依存散乱がドルーデ項に反映された結果であると考えられる.(3)スピン依存散乱の効果は,Auと複合化した強磁性ナノ構造においても,局在プラズモンの共鳴条件の変化として現れる.本研究は,「強磁性金属薄膜の誘電率が可視光から赤外光領域にわたって,キュリー温度(Tc)付近で変化する現象」を活用し,Au/強磁性層/Auマグネトプラズモニック構造体の局在表面プラズモン(LSPR)共鳴のON/OFFをTcを利用して制御しようという挑戦的な試みである.所望のTcを有する強磁性金属材料を上記マグネトプラズモニック構造体に用いることにより,Tcを境としてLSPRの励起/抑制を制御することが狙いである.Tcに傾斜を付けておくことにより,簡単な温度センサとなることは元より,屋外で太陽光を利用することにより,温度自己制御型素子(LSPR損失にて自己発熱,昇温にてTcを超えると共鳴は自己停止)への展開を目指す.平成25年度は,「Tc近傍での強磁性金属薄膜の誘電率スペクトルの温度変化」現象について,Ni系薄膜以外の材料について検討した.測定時の加熱による薄膜の構造変化の効果を排除するため,高温側から室温側へと温度を低下させながら光学スペクトルを評価した結果,MnSb薄膜(Tc: 320°C付近)において325-100°Cの温度範囲にて,特に2 eV以下(620 nm以上の波長範囲)で大きく変化することを見出した.振動子モデルを用いて誘電率スペクトル解析を行い,ドルーデ項をフィッティングした結果,抵抗率および伝導電子の緩和時間の値や温度依存性がTcを境に変化しており,格子振動による抵抗率変化が,温度の一次関数であることを踏まえると,スピン依存散乱による抵抗率変化は約300μΩcmと見積られた.これは,バルク試料の直流抵抗から導出された文献値である約200μΩcmと同等の値である.本手法は,非接触なプローブにより材料のTcを評価できるという点でも興味深く,ハードディスクの熱アシスト磁気記録用材料評価の観点からも注目された.本研究は、「強磁性金属薄膜の誘電率が可視光から赤外光領域にわたって,キュリー温度(Tc)付近で変化する現象」を活用し,Au/強磁性層/Auマグネトプラズモニック構造体の局在表面プラズモン(LSPR)共鳴のON/OFFをTcを利用して制御しようという挑戦的な試みである.所望のTcを有する強磁性金属材料を上記マグネトプラズモニック構造体に用いることにより,Tcを境としてLSPRの励起/抑制を制御することが狙いである.Tcに傾斜を付けておくことにより,簡単な温度センサとなることは元より,屋外で太陽光を利用することにより,温度自己制御型素子(LSPR損失にて自己発熱,昇温にてTcを超えると共鳴は自己停止)への展開を目指す.平成26年度は,初年度に得た強磁性薄膜のTc近傍での誘電率スペクトルの温度変化特性を基に強磁性材料と層構成を決定し,電子線リソグラフィとミリングによる微細加工技術を確立して,Au/強磁性層/Auマグネトプラズモニック構造体を単位構造とする配列組織を作製した.実際に温度変化させてLSPRスペクトルを評価した.微細加工条件については,40nm厚さの多層膜試料をドット径として50nm,周期150nmの配列組織を実現した.この試料のLSPR吸収波長を評価したところ,キュリー温度付近で温度変化率が変化することが明らかとなった.また並行して,微細加工を必要とせずにスピンの配列で誘電率を変化させる手段として,スピンの平行/反平行配列を実現するために,RKKY的相互作用を発現させて磁化の反平行配列を安定化させたCo/Ru/Co多層膜を作製し,マグネトリフラクティブ効果を評価し,プラズモニック構造体への展開に向けた基礎検討を行った.波長1550nmで平行/反平行のスピン配列変化に対応して1%程度の透過率変化が現れることを明らかとした.
KAKENHI-PROJECT-25630116
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25630116
マグネトプラズモニック構造体を用いた温度自己制御型グリーン素子の創成
電気・電子材料室温成膜により作製される,合金薄膜や金属間化合物薄膜を高温に加熱した場合に生じる構造緩和が光学特性変化に及ぼす影響を無視できず,スピン依存散乱の温度依存性がもたらす光学特性変化との効果の切り分けに計画以上の時間を費やした.赤外光領域では,加熱されている材料のみならずヒータブロックからも赤外光が放射されているため,試料からの反射光のみを検出する光学系を構築する工夫が必要であった.以上のハードルをクリアできたため,MnSb薄膜のキュリー温度付近での誘電率スペクトルの赤外光領域での温度変化特性を評価できたもの(当初目標)と考えている.局在プラズモン共鳴(LSPR)誘導のためのAuとの積層化のための条件出しは,薄膜試料の微細加工技術に負っている.微細加工の知見を連携研究者から助言を得て条件確立を急ぐと共に,加工領域である数100μメートル領域の光学特性の温度変化を計測可能な光学系を立ち上げ,Tc付近でのLSPR条件の変化を確認する検証実験を実施したいと考えている.
KAKENHI-PROJECT-25630116
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25630116
睡眠時エネルギー代謝に影響を及ぼす生活習慣の時系列解析を用いた検討
日本人の糖尿病患者は,明らかに性質が異なると分類される1型糖尿病患者と2型糖尿病患者の欧米の糖尿病患者と比べ,連続性を持っているということは周知の事実であり,そのことに基づいた検討を行った.その際,以前から取り組んできた時系列の特徴であるフラクタル成分の性質をより正確に表すことのできるDFA(detrended fluctuation analysis)法を用いて得ることが可能な"血糖ゆらぎ"を表す指標と,従来から臨床現場で用いられている指標(HbAlc,グリコアルブミン,1,5-AG,尿中CPR)の関係について,ようやく雑誌にアクセプトされたところである.またヒューマン・カロリメーターを用いた実験として取り組んできた夕食を就寝直前に摂取することによる健常者の睡眠時エネルギー代謝,また1日の総エネルギー消費量に与える影響についての検討結果についても雑誌にアクセプトされたところである.またそれ以外の研究についても,フィールド及び実験室レベルでの長距離走行中の血糖変動とレースパフォーマンスに関する検討,さらに血糖上昇閾値に関する検討結果について,具体的な形となって現われた年となった.健常者を対象に日常生活の中で身体活動(non-exercise acticity thermogenesis)を制限することにより,血糖ゆらぎに変化が認められるという結果が得られており,現在雑誌に投稿中である.食事誘発性熱産生(diet-induced thermogenesis)についても加速度計を用いることで詳細な算出方法が可能となり,さらに両者を組み合わせることで一日の安静時代謝の変動も算出することが可能となったことから,それらのデータをまとめ投稿論文を作成中である.さらに睡眠時エネルギー代謝の詳細な解析を進めるにあたり,客観的な脳波の解析を行う手法および環境については今年度に整えることができた.日本人の糖尿病患者は,明らかに性質が異なると分類される1型糖尿病患者と2型糖尿病患者の欧米の糖尿病患者と比べ,連続性を持っているということは周知の事実であり,そのことに基づいた検討を行った.その際,以前から取り組んできた時系列の特徴であるフラクタル成分の性質をより正確に表すことのできるDFA(detrended fluctuation analysis)法を用いて得ることが可能な"血糖ゆらぎ"を表す指標と,従来から臨床現場で用いられている指標(HbAlc,グリコアルブミン,1,5-AG,尿中CPR)の関係について,ようやく雑誌にアクセプトされたところである.またヒューマン・カロリメーターを用いた実験として取り組んできた夕食を就寝直前に摂取することによる健常者の睡眠時エネルギー代謝,また1日の総エネルギー消費量に与える影響についての検討結果についても雑誌にアクセプトされたところである.またそれ以外の研究についても,フィールド及び実験室レベルでの長距離走行中の血糖変動とレースパフォーマンスに関する検討,さらに血糖上昇閾値に関する検討結果について,具体的な形となって現われた年となった.健常者を対象に日常生活の中で身体活動(non-exercise acticity thermogenesis)を制限することにより,血糖ゆらぎに変化が認められるという結果が得られており,現在雑誌に投稿中である.食事誘発性熱産生(diet-induced thermogenesis)についても加速度計を用いることで詳細な算出方法が可能となり,さらに両者を組み合わせることで一日の安静時代謝の変動も算出することが可能となったことから,それらのデータをまとめ投稿論文を作成中である.さらに睡眠時エネルギー代謝の詳細な解析を進めるにあたり,客観的な脳波の解析を行う手法および環境については今年度に整えることができた.
KAKENHI-PROJECT-23800008
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23800008
時間栄養学を視点とした機能性食品成分の探索と応用研究
体内時計作用栄養学の視点で以下の実験成果を得た。2型糖尿病モデルマウスと、慢性腎疾患(CKD)モデルマウスを作成した。2型糖尿病マウスは肝臓の時計遺伝子の発現リズムの振幅が低下する傾向が見られた。これらのマウスに、ヒトの糖尿病食やCKD食を与えたところ、基本的には、体内時計の同調をもたらした。つまり、ヒトの糖尿病やCKDの治療食でも、末梢の体内時計は十分に同調させることが可能であることが分かった。夜食症のモデルマウスでは、うつ病の症状が出やすいことを見つけ、この作用には脳の5-HT2b受容体のリズム性の発現がかかわっていることを見出した。そこで、夜食症のヒトは体内時計がずれている可能性を調べた。4時間おきに4ー5本の髭の毛母細胞からmRNAを抽出し、Per3、Rev-erbα、Rev-erbβ遺伝子発現リズムを評価した。その結果、睡眠後退者の髭の時計遺伝子発現は有意に後退したが、正常者や夜食症は後退せず、位相は個人差が大きかった。次に、日勤務者、1日の徹夜者、8時間おきのシフトワーク者に分類し、時計遺伝子発現リズムに変化があるか否かについて調べた。その結果、一過性の徹夜勤務では遺伝子発現にはほとんど影響を及ぼさず、シフトワーク者はリズムの位相が大きく乱れ、また、遺伝子発現の絶対量が低かった。つまりシフトワークは体内時計に負荷がかかることが明らかになった。イヌリンや菊芋などの水溶性食物繊維を豊富に有する食材は、血糖値の増加を抑制し、腸内細菌の多様性をもたらすことが知られている。そこで、粉末菊芋5gを朝食時に摂取するか、夕食時に摂取するかを夫々15名の被験者に介入試験した。その結果、朝の摂取は、24時間の血糖値の上昇を抑止し、さらに昼食・夕食の血糖値の上昇を抑制した(セカンドミール効果)。また、便秘指数も朝摂取が改善させ、腸内細菌に対する作用も朝摂取で顕著であった。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。体内時計作用栄養学の視点で以下の実験を行った。タンパク質・アミノ酸、脂質栄養素、漢方生薬、天然物化合物などを用いて、細胞、マウス個体、ヒトのリズムに対して作用する化合物群をスクリーニングし、有効な成分を見出す。まず、タンパク質100%の餌でも体内時計位相を変容する作用が見いだせた。これは、従来は食事中の炭水化物からの糖によるインスリン分泌が体内時計の位相を動かすことが知られていたものとは、異なった機序で体内時計を動かす仕組みの発見につながる。またアミノ酸では、ロイシン、ヒスチジン、システインなどが候補として挙がってきた。また、カフェインの作用を調べたところ、細胞レベルや個体レベルでも、体内時計の周期を延長させること、また、マウスの活動期の始めの投与で位相前進を、活動期の終わりの投与で位相後退を起こすことが分った。時間栄養学の視点で以下の実験成果を得た。カフェイン朝投与は夕投与に比較して、より強い抗肥満効果を見出すことができた。一方、クロロゲン酸は朝投与に比較して夕投与で、より強い抗肥満効果を見出した。以上をまとめ、人社会に応用すれば、カフェインを含むコーヒーの朝投与は高肥満効果と体内時計のリセット効果をあらわし有用であり、一方、不眠予防や体内時計の夜型化予防とクロロゲン酸の抗肥満を期待するならば、デカフェの摂取は夕方に向いていることが示唆された。1日2食と2回の輪回し運動の組み合わせが抗肥満効果に及ぼす影響について調べた。(1)朝食後に運動と夕食後に運動、(2)運動後に朝食と運動後に夕食、(3)と(4)は(1)と(2)の逆の組み合わせでおこなう。その結果、(1)の群は、内臓脂肪の蓄積が最も低く、また骨格筋の発達が一番大きかった。以上の結果、食事後の運動が効果的だったので、カフェインと運動のタイミングの組み合わせの研究が興味をもたれる。体内時計作用栄養学の視点で以下の実験成果を得た。光照射を22ー26時間の周期で与えると体内時計がリセットされることと同様に、食餌パターンのリセットも光と同様の周期であることが判明した。食餌内容に関しては、ω3脂質であるDHAやEPAを含む魚油やこれらの脂肪酸が顕著な体内時計リセット効果を生み出すことを発見した。また、漢方薬・生薬では猪苓や柴胡などに強力な体内時計リセット効果を見いだした。現在、これらを含む漢方薬についてもその効果を検討中である。タンパク質・アミノ酸に関する実験では、胃からの排出速度が速い酸性乳が、対照群の乳に比較して、肝臓のPer2時計遺伝子の発現増大を示した。また、タンパク質100%食による体内時計リセットは、グルカゴン受容体拮抗薬ではブロックされなかったので、IGF-1による時計リセットである可能性が浮上してきた。ヒトの体内時計を調べる方法として、4時間おきに4ー5本の髭の毛母細胞からmRNAを抽出し、Per3遺伝子発現リズムを見ることを提案した。夜型の人はリズム発現が不安定で、かつ、位相が後退していた。つまりヒトの体内時計作用栄養学の有効なツールとなることが分った。時間栄養学の視点では以下の実験成果を得た。骨格筋や骨量に対する種々の食品成分や運動の効果を調べた。
KAKENHI-PROJECT-26220201
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26220201
時間栄養学を視点とした機能性食品成分の探索と応用研究
マウスの後肢懸垂により骨格筋の低下ならびに大腿骨の骨体積や骨密度が低下することが知られている。これらの低下に対して、朝の輪回し運動は夕の運動に比較して、より効果的であった。別のモデルとしてヒラメ筋と腓腹筋の腱切除による足底筋の代償性肥大を開発した。1日量は一定にし、高タンパク質食を朝に与えた腱切除マウスは、夕に与えた群に比較して、顕著な筋肥大をもたらした。またこの効果は、分枝鎖アミノ酸であるBCAAの高含量を朝食に与えても見られた。以上、朝運動とBCAAを含む高タンパク質食が、サルコペニア予防には良いことが分った。体内時計作用栄養学において、機能性食品の中で、DHA・EPAの体内時計に対する作用を明らかにでき、論文発表ができたことは、研究が順調に進んでいることになる。また、生薬と漢方薬についても、実験はほぼ終わり、猪苓と柴胡を同定できたことも順調である。さらに、ヒトの研究に必須である、髭を用いた体内時計モニター系を確立できた成果は大きい。また、夜遅い食事やストレスが体内時計を顕著に乱すという発見は、新聞社やNHKのニュースに取り上げられ、社会的インパクトを与えた。また時間栄養学において、筋委縮、代償性筋肥大、廃用性骨粗鬆など、多くの筋・骨のモデル系を開発し、これを利用して種々の機能性食材を評価できた。特に、高タンパク質や分枝鎖アミノ酸の摂取時刻が筋維持に重要であるという先駆的な発見をした。また、運動負荷が朝に有効であるという、全く新規な発見ももたらされた。以上、研究の達成度は十分であると考えられる。体内時計作用栄養学の視点で以下の実験成果を得た。まず、Per2::Lucマウス由来のMEF細胞の発光リズムを指標にフラボン、フラボノール、フラバン、イソフラボンの作用について調べた。その結果、ポリメトキシフラボンのノビレチン、タンゲリチンが、周期延長と振幅増大作用を示すことが分かった。また、米ぬか成分のγオリザノールやその活性本体であるフェルラ酸の体内時計に対する作用を調べた。その結果、フェルラ酸はMEFの実験では、周期を延長させかつ、振幅を増大させた。また、脂溶性であるγオリザノールは、脳への移行が大きい物質であるので、生体の特に脳の体内時計に対する作用を調べた。0.5%あるいは1%のγオリザノール含有餌を2-4週間与え、行動リズムに対する作用を調べた。明暗環境下では、γオリザノールは行動量などには何ら影響を及ぼさなかった。一方、恒常暗の行動フリーラン条件下にマウスを移すと、24時間より短い周期でフリーランしたが、γオリザノール摂餌群では、フリーラン周期は24時間より長い周期で動いた。このようにγオリザノールは脳の中心時計である視交叉上核作用することが分かり、その作用はインビトロの結果を支持するものであった。すなわち、時計の根本治療に使える可能性が示唆された。次に、ヒトの研究成果について記述する。ヒトの体内時計を調べる方法として、4時間おきに4ー5本の髭の毛母細胞からmRNAを抽出し、Per3、Rev-erba、Rev-erbb遺伝子発現リズムを観察できることが分かった。つまりヒトの体内時計作用栄養学の有効なツールとなることが分った。30人程度の60歳以上の高齢者の体内時計の髭の遺伝子発現リズムと活動性の関係を調べた。
KAKENHI-PROJECT-26220201
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金属ナノ構造-酸化膜複合系におけるプラズモン誘起水分解反応の光STMによる解析
本研究は、金属ナノ構造-酸化膜複合系におけるプラズモンに基づく水分解反応を対象として、極低温走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて、プラズモンによる水分子の反応の解析を目的とした。まず、プラズモンの励起に有利な先端直径が20 nmの金製のSTM探針を再現性よく作製する手法を確立した。酸化膜として、1-3層までのMgO超薄膜をAg(100)上に形成した。得られたMgO薄膜は欠陥が多くあり、今後さらなる最適化が必要である。金属上の水分子のプラズモン誘起化学反応を検証した。探針と試料の間に光照射することで生成するプラズモンにより、銀基板上では水分子の分解は起こらず、水クラスターの脱離が観測された。本研究は、金属ナノ構造-酸化膜複合系におけるプラズモンに基づく水分解反応を対象として、極低温走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて、プラズモンによる水分子の反応の解析を目的とした。まず、プラズモンの励起に有利な先端直径が20 nmの金製のSTM探針を再現性よく作製する手法を確立した。酸化膜として、1-3層までのMgO超薄膜をAg(100)上に形成した。得られたMgO薄膜は欠陥が多くあり、今後さらなる最適化が必要である。金属上の水分子のプラズモン誘起化学反応を検証した。探針と試料の間に光照射することで生成するプラズモンにより、銀基板上では水分子の分解は起こらず、水クラスターの脱離が観測された。化学
KAKENHI-PROJECT-16K17862
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Wnt/β-cateninシグナルを標的とした肝細胞がんに対する新規治療薬の開発
国内がん死因の第5位に位置している肝細胞癌は再発を繰り返すことが特徴で5年相対生存率が低い予後不良のがんである。現在、肝細胞がんの化学療法はマルチキナーゼ阻害薬が主流である。また免疫チェックポイント阻害薬であるPD-1抗体の臨床試験結果が報告され臨床応用が近い将来可能となる。しかし、いずれの薬剤も奏効率は高くなく、より抗腫瘍効果のある肝細胞がん治療薬の開発が望まれる。肝細胞がんはその腫瘍形成にβ-cateninの変異と関連があるがん腫のひとつである。肝細胞癌に対するβ-cateninシグナル阻害剤の抗腫瘍効果を解析することで、肝細胞がんの治療薬としての可能性を検証する。国内がん死因の第5位に位置している肝細胞癌は再発を繰り返すことが特徴で5年相対生存率が低い予後不良のがんである。現在、肝細胞がんの化学療法はマルチキナーゼ阻害薬が主流である。また免疫チェックポイント阻害薬であるPD-1抗体の臨床試験結果が報告され臨床応用が近い将来可能となる。しかし、いずれの薬剤も奏効率は高くなく、より抗腫瘍効果のある肝細胞がん治療薬の開発が望まれる。肝細胞がんはその腫瘍形成にβ-cateninの変異と関連があるがん腫のひとつである。肝細胞癌に対するβ-cateninシグナル阻害剤の抗腫瘍効果を解析することで、肝細胞がんの治療薬としての可能性を検証する。
KAKENHI-PROJECT-19K17448
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ハンセン病政策と医学 - 日本と世界 -
ハンセン病政策と医学の関係を日本と世界について検証した。本研究成果は以下の4つである。1.国立ハンセン病療養所における入退所動向に関する研究-1909年から2010年まで102年間の検証-2.WHOのハンセン病対策と世界のハンセン病の現状の研究3.世界のハンセン病政策の医学史的研究4.Web公開ハンセン病学術データベース「近現代ハンセン病資料アーカイブス」の構築と公開の開始明治に始まり平成まで維持された日本の隔離政策と医学の関わりを国内外の調査・研究から検証するために本年度は以下の5点の研究をおこなった。1.日本の療養所における入所者数、死亡者数、退所者数の100年間の統計的研究がまとまり、投稿を行い採択された(「日本のハンセン病政策に関する研究I 国内療養所における入退所者数統計ー」日本ハンセン病学会雑誌in press」)。2.WHOのハンセン病対策の研究を行った(「2012年から2013年上四半期における世界のハンセン病の現況について」日本ハンセン病学会誌82.133-142,2013)。4.ハンセン病回復者、療養所OB、厚生省OBなどからハンセン病に関する資料を収集し、データベース化を開始した。今年度、デタベースは皓星社に委託し基本プログラムが完成し、写真や文書、音声、聞き書き資料のデータベース化が進んでいる。5.世界のハンセン病政策の歴史をローマ時代、ギリシャ時代、西欧中世まで研究し、まとめを行った(「ハンセン病と医学ー第1回、ヨーロッパへのハンセン病の伝搬ー日本ハンセン病学会雑誌83.22-28,2014)。ハンセン病資料の収集と事例調査を行った。資料収集は主に療養所職員(医師、看護師、事務官)OBおよび入所者、社会復帰者およびその家族から資料の提供を受けた。具体的には犀川一夫(医師、元愛楽園園長)、石原重徳(医師、元駿河療養所所長)、横山秀夫(社会復帰者、歌人)などから日記、研究記録、会議記録、写真、原稿(遺稿)、諸外国の隔離の視察の記録など約8000点の譲渡を受けた。また、彼らの家族への事例研究を行い、録音、テキストなどにより隔離政策の実態を記録した。加えて、これらの資料のデータベース化を行うためにデータベースシステムを作成し、犀川一夫の資料を中心に約2000点の写真、書類などをデータベースに登録した。現在は公開に向けて倫理審査(国立感染症研究所)とベータ版の改善、情報公開方法の検討が進んでいる。ハンセン病医学と隔離政策進展の関連の研究では東京大学大学院総合文化研究科との共同研究として『LEPRA誌』(明治末から大正時代のハンセン病医学の国際ジャーナル、フランス語、ドイツ語、英語の論文が混在している)の翻訳と医学、医学史、公衆衛生対策の観点から研究を進めた。また、ハンセン病療養所での社会復帰の実態と再入所数、社会復帰の困難であった要因などを国立療養所東北新生園を中心に調査した。その結果、退所(社会復帰)、再入所の実態が明らかとなった。この他、社会復帰者とネットワークが生まれ、社会復帰の実態と問題点、邑久新良田高校(長島愛生園内にあった入所者のための高校)の果たした役割などの調査を進展させている。現在、日本のハンセン病政策は公衆衛生政策上の過失であったと評価されるが、その実態は未だ十分には検証されていない。本研究ではハンセン病政策と医学の関わりに関する研究、WHOの解放医療政策に関する研究、世界の隔離政策に関する研究、日本の隔離政策下での解放医療の試みに関する研究、日本の隔離政策関係者への聞き取り調査などによるその実態解明の研究、日本の隔離政策における入所者数・退所者数の動向を日本ハンセン病学会会員の方々の協力の下で資料を収集し、1909年から2010年までの記録を検証し、その動向を明らかとした。これらの研究過程で独自に資料を収集・検証し、学術研究に役立てるためにデータベース化を行った。本年度はデータベース事業である「近現代ハンセン病資料アーカイブス」(近現代ハンセン病資料アーカイブス作成委員会:委員長森修一、副委員長廣野喜幸)のWeb上での公開を始めた。日本の隔離政策における入所者数・退所者数の動向の研究結果の投稿を行った。また、国立療養所松丘保養園(国立ハンセン病療養所、1909年開設)所蔵資料の調査・研究を行うと共に全資料の目録作成を行い研究資料、データベース資料としての内容を検討できるようにした(川西健登園長にご協力をいただいた。目録作成は研究協力者である高野弘之氏(埼玉県立文書館)の協力を得た)。日本の隔離政策推進の一要因と考えられる在野の患者の実態と収容について検証するために患者集住地であった湯之沢部落と第二鈴蘭村の調査を行った。世界のハンセン病政策の実態とWHOの多剤併用療法政策の成功要因を知るために関係者から聞き取りをおこなった(湯浅洋氏(元笹川記念保健協力財団医療部長)の協力を得た)。日本の隔離政策維持の要因を明らかにするために犀川一夫氏により推進された台湾の解放医療政策の成立過程を検証した(犀川珠子氏の協力を得た)。ハンセン病政策と医学の関係を日本と世界について検証した。本研究成果は以下の4つである。1.国立ハンセン病療養所における入退所動向に関する研究-1909年から2010年まで102年間の検証-
KAKENHI-PROJECT-25350389
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25350389
ハンセン病政策と医学 - 日本と世界 -
2.WHOのハンセン病対策と世界のハンセン病の現状の研究3.世界のハンセン病政策の医学史的研究4.Web公開ハンセン病学術データベース「近現代ハンセン病資料アーカイブス」の構築と公開の開始調査と研究が多岐に渡ること(医学研究、事例研究、データベース作成など)、その解析とまとめ(論文作成)などが複雑であり、人手不足も重なり進展に少々の遅れが出ている。「近現代ハンセン病資料アーカイブス」は近現代のハンセン病に関する未公開資料を収集・検証し、Web上に公開することによって、ハンセン病問題の学術研究の進展へ貢献すること、多くの方々へハンセン病問題への理解を深めていただくことを目的とする学術データベースです。また、本データベースはハンセン病の歴史を未来に残し、ハンセン病問題を人類の歴史として記憶することを目指すものです。ハンセン病の医学史次年度は事例調査の継続、データベース公開、ハンセン病療養所での社会復帰の実態などの調査を日本ハンセン病学会の協力の下で行う予定である。また、諸外国(台湾やハワイ、フィリピンなど)の隔離政策の実態を現地のハンセン病対策担当者OBや資料研究などで研究する。最終年であるため論文投稿を行いまとめとする予定である。本研究の目的は明治に始まり平成まで維持された日本の隔離政策と医学の関わりを国内外の調査・研究から検証することである。今年度は日本の隔離政策における療養所内での入所者数、退所者数、死亡者数などの100年間の総計をまとめその実態を明らかにした。埋葬習慣とハンセン病の関わりをを歴史学的および分子疫学的に証明した。WHOのハンセン病政策と世界のハンセン病の現況を研究しハンセン病の課題を調べた。今まで未公開であった回復者(社会復帰者)、療養所OB(医師、看護師、事務官)、厚生省OBなどの資料(写真、日記、研究記録、論文、随筆)や面談資料のデータベース化を始めた。また、日本の隔離政策の要因となる世界のハンセン病の歴史を研究した。これらの成果から研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。年度末納品等にかかる支払いが平成27年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。平成26年度分についてはほぼ使用済みである。今後はハンセン病医学に関する国内外の文献資料の調査と系統解析を行う。合わせて療養所OBなどの面談調査(国内)を継続する。また、海外でのハンセン病医学の一次資料調査を開始すると共に面談調査(国内・国外)を主とした研究へと移行する。同時にデータベースの作成を進め、公的な公開を目指すが、公開した場合の倫理面の問題や公開時に予想される批判などを十分に考慮し、部分公開や申請者への公開など、どの形態を採用するかを複数の専門家を交えて慎重に議論したい。本データベースの今後の進展を見て、公開費用、データベースの作成費用などの申請を行いたい。上記のとおり。英文校正費用の請求が決算まで間に合わなかったため、本費用が次年度使用額となった。英文校正費用の支払いに用いる。
KAKENHI-PROJECT-25350389
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25350389
タミフルのワンポット、ワンフローでの集積化全合成
欲しい有機化合物を少ない工程数で簡便に合成する事は、化学における最重要課題の1つである。申請者は、同一容器中に化合物を順次加えていく事により、複数の反応が順次進行し、目的の化合物が得られるone-pot集積化反応に基づく合成研究を行っている。2009年diphenylprolinol silyl ether有機触媒を用いた不斉マイケル反応を鍵反応とする、インフルエンザ治療薬タミフルの3ポット合成を報告した。反応に改良を加え、ポット数の減少を検討し、2ポット合成を2010年に、さらにone-pot合成を2013年に報告した。一方、フロー合成はバッチ合成に比べ、エネルギー効率、反応速度、収率、安全性、スケールアップ、装置の設置箇所や対応できる反応、条件の制御能に優れるとされる。特別大きな反応釜が必要なく、必要な時に、狭いスペースで大量の化合物を合成できる手法である。申請者の開発したone-potタミフル合成をフローに適用できれば、より実用的かつ大量合成可能な手法になる。2013年のone-pot法では長時間を要する反応があり、フローに適用するには短時間で完結する反応条件を見出す必要がある。また、有機溶媒に難溶性の反応試剤があり、溶解度の向上した反応試剤に置き換える必要がある。平成28年度は、反応時間という観点から、スキームの変更および反応条件の詳細な最適化をバッチ方式で行い、できるだけ短時間で完結するone-pot合成法の確率を目指した。その結果、チオウレアの添加、マイクロウェーブの使用等により、1時間という短時間で終了する反応条件を見出した。またマイクロウェーブを使用しなくても3時間で反応が完了する。平成29年度は、バッチ方式で最適化した反応を、フロー方式に適用した。再度、フローでの最適化を行い、最終的にマルチステップ、ワンフローでのタミフル合成に成功した。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。欲しい有機化合物を少ない工程数で簡便に合成する事は、化学における最重要課題の1つである。申請者は、同一容器中に化合物を順次加えていく事により、複数の反応が順次進行し、目的の化合物が得られるone-pot集積化反応に基づく合成研究を行っている。2009年diphenylprolinol silyl ether有機触媒を用いた不斉マイケル反応を鍵反応とする、インフルエンザ治療薬タミフルの3ポット合成を報告した。反応に改良を加え、ポット数の減少を検討し、2ポット合成を2010年に、さらにone-pot合成を2013年に報告した。一方、フロー合成は、再現性に優れた、効率的な物質合成法である。タミフルのone-pot合成は、試薬を順次加えるだけで、反応溶媒の置換がなく、フロー合成に適用可能と考え、本学術領域研究では、タミフルのワンフロー合成に挑戦する。2013年のone-pot法では長時間を要する反応があり、フローに適用するには短時間で完結する反応条件を見出す必要がある。また、有機溶媒に難溶性の反応試剤があり、溶解度の向上した反応試剤に置き換える必要がある。まず、初年度は、反応時間という観点から、スキームの変更および反応条件の詳細な最適化を行い、できるだけ短時間で完結するone-pot合成法の確立を目指す。連続する3つの不斉点を有するタミフルをone-potで合成すること自身が挑戦的な課題である。さらに短時間で合成を完了するのは、現在の有機合成化学の力量を持ってしてもかなり困難な課題であると考えられる。種々検討を行った結果、ニトロ基の還元反応にマイクロウェーブを使用することにより、全ての反応を1時間という短時間で終了する反応条件を見出した。またマイクロウェーブを使用しなくても3時間で反応が完了する。申請者は2008年頃より、タミフルの合成に取り組んでいる。また本研究を開始する以前の研究により、1つの反応容器を用い、5工程の反応でタミフルを合成する手法を開発した。全反応時間は約3日である。そこで、この手法をフローに適用する事を考えたが、いくつかの問題点がある。1工程目:反応基質が反応溶媒に難溶である。2工程目:塩基Cs2CO3が有機溶媒に難溶である。3工程目:チオールのマイケル反応が長時間である。5工程目:チオールのレトロマイケル反応が長時間である。この問題に対して、先ずはバッチ方式で反応の最適化を行い、解決することを目指した。第一工程の反応の検討として、種々の添加剤の効果を調べた。すると予期に反し、チオウレア誘導体を添加すると、大幅な反応時間の短縮を見出した。この現象の本質を見極めることが不可欠であることから、追加実験を行う必要が生じた。そのため、当初の予定よりも研究は遅れている。欲しい有機化合物を少ない工程数で簡便に合成する事は、化学における最重要課題の1つである。申請者は、同一容器中に化合物を順次加えていく事により、複数の反応が順次進行し、目的の化合物が得られるone-pot集積化反応に基づく合成研究を行っている。2009年diphenylprolinol silyl ether有機触媒を用いた不斉マイケル反応を鍵反応とする、インフルエンザ治療薬タミフルの3ポット合成を報告した。反応に改良を加え、ポット数の減少を検討し、2ポット合成を2010年に、さらにone-pot合成を2013年に報告した。
KAKENHI-PUBLICLY-16H01128
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H01128
タミフルのワンポット、ワンフローでの集積化全合成
一方、フロー合成はバッチ合成に比べ、エネルギー効率、反応速度、収率、安全性、スケールアップ、装置の設置箇所や対応できる反応、条件の制御能に優れるとされる。特別大きな反応釜が必要なく、必要な時に、狭いスペースで大量の化合物を合成できる手法である。申請者の開発したone-potタミフル合成をフローに適用できれば、より実用的かつ大量合成可能な手法になる。2013年のone-pot法では長時間を要する反応があり、フローに適用するには短時間で完結する反応条件を見出す必要がある。また、有機溶媒に難溶性の反応試剤があり、溶解度の向上した反応試剤に置き換える必要がある。平成28年度は、反応時間という観点から、スキームの変更および反応条件の詳細な最適化をバッチ方式で行い、できるだけ短時間で完結するone-pot合成法の確率を目指した。その結果、チオウレアの添加、マイクロウェーブの使用等により、1時間という短時間で終了する反応条件を見出した。またマイクロウェーブを使用しなくても3時間で反応が完了する。平成29年度は、バッチ方式で最適化した反応を、フロー方式に適用した。再度、フローでの最適化を行い、最終的にマルチステップ、ワンフローでのタミフル合成に成功した。タミフル合成の問題点として以下の行程がある。2工程目:塩基Cs2CO3が有機溶媒に難溶である。3工程目:チオールのマイケル反応が長時間である。5工程目:チオールのレトロマイケル反応が長時間である。今後、これら第二から第五工程の問題点の解決を行う。これらの問題点を解決し、短時間でのタミフルの合成法を確立する。その後、フロー合成手法を用いて、タミフルのワンフロー合成を実現する。各反応のバッチ方式での最適化の後に、フロー方式での最適化を行う。フロー合成では濃度、流速、流路長、温度を再度最適化する。各素反応をそれぞれ個別にフローで最適化した後、それらを連結しワンフローでの合成を検討する。連続的にフローを行う事で、タミフルの連続的ワンフロー合成法として確立する。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-16H01128
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H01128
定量的リン酸化プロテオーム解析による慢性骨髄増殖性腫瘍の発症機序の解析
チロシンキナーゼJAK2の点変異体(V617F)は、慢性骨髄増殖性腫瘍の原因遺伝子である。JAK2V617F変異体は恒常的な活性化型であり、異常な細胞増殖や腫瘍形成を誘導することが知られているが、JAK2 V617F変異体が誘導する発がんシグナルの分子機構は不明である。JAK2V617F変異体が誘導する発がんシグナルを理解するには、JAK2V617F変異体の下流における全てのシグナル分子の状態変化を同時に網羅的に解析する必要がある。本研究では、定量的リン酸化プロテオーム解析を行い、JAK2V617F変異体の下流でリン酸化される分子を同定し、それらの発がんシグナルにおける役割を解析した。慢性骨髄増殖性腫瘍(MPN)の原因遺伝子としてチロシンキナーゼJAK2の点変異体が同定されたが、現在までJAK2の点変異がMPNを引き起こすメカニズムは不明である。本研究では、分子レベルでMPNの発症機序を解明することをめざして、細胞内においてJAK2変異体が誘導するシグナル分子の状態変化を同時に網羅的に検討するために、定量的リン酸化プロテオーム解析を行い、JAK2変異体の下流で特異的にリン酸化されるタンパク質を探索した。その結果、JAK2変異体の下流で特異的にリン酸化される分子を約50種類同定した。その中には、DNAの安定化に関与するファンコニ貧血症原因因子(FANC)と呼ばれる一連の因子が含まれており、今年度は、JAK2変異体発現細胞におけるFANCファミリーの役割に着目した。JAK2変異体は、転写因子STAT5の活性化を介して、FANCファミリーの一つであるFANCCの発現を特異的に誘導することを見出した。また、JAK2変異体発現細胞では、FANCD2のユビキチン化が誘導され、DNA修復系が活性化されることを明らかにした。実際、JAK2変異体発現細胞は多くの抗がん剤に対し耐性を示すことが知られているが、FANCCをノックダウンするとCDDP (シスプラチン)やMMC (マイトマイシン)などのDNA架橋剤に対して感受性が亢進することが明らかになった。したがって、MPNで見られる抗がん剤耐性には、JAK2変異体によるFANCファミリーの発現誘導や活性化が関与していることを明らかにした。慢性骨髄増殖性腫瘍(MPN)の原因遺伝子として、チロシンキナーゼJAK2の点変異体(V617F)が同定されたが、JAK2の点変異がMPN発症へと至る分子機構は不明である。これまでに、JAK2V617F変異体のシグナル伝達経路を解明することをめざし、JAK2V617F変異体を発現したBa/F3細胞を作製し、定量的リン酸化プロテオーム解析を行い、JAK2変異体の下流で特異的にリン酸化されるタンパク質を網羅的に探索した。その結果、JAK2変異体発現細胞で特異的にリン酸化される分子を約50種類同定した。今年度はその分子群の中で、サイトカイン抑制因子CISに着目し、CISのJAK2変異体による細胞増殖や腫瘍形成に及ぼす影響を検討した。リン酸化プロテオーム解析により、JAK2変異体発現細胞では、CISのチロシン残基(Y253)がリン酸化されていることを見出した。CISの機能に及ぼすリン酸化の役割を検討するために、Y253をフェニルアラニンに置換した非リン酸化型CISを作製した。CISの過剰発現は、JAK2変異体発現細胞の増殖能を顕著に抑制したが、非リン酸化型CISは、JAK2変異体発現細胞の増殖能に影響を及ぼさなかった。また、ヌードマウスにおけるJAK2変異体による腫瘍形成は、CISの発現により顕著に阻害された。一方、非リン酸化型CISは、JAK2変異体による腫瘍形成を全く抑制しなかった。このCISのリン酸化は、JAK2変異体により誘導されることが予測され、JAK2変異体は、リン酸化を介して、CISによる抑制シグナルを阻害することにより、細胞増殖や腫瘍形成を誘導するという新しい分子機構を明らかにした。慢性骨髄増殖性腫瘍患者で同定されたチロシンキナーゼJAK2の点変異体(V617F)は、細胞増殖や腫瘍形成を誘導する強力な癌遺伝子産物である。しかしながら、現在まで、JAK2の点変異が慢性骨髄増殖性腫瘍の発症を引き起こすメカニズムは不明である。本研究では、定量的リン酸化プロテオーム解析を行い、JAK2V617F変異体の下流で特異的にリン酸化されるタンパク質を探索し、それらの機能を解析することにより、慢性骨髄増殖性腫瘍の発症機構の解明をめざした。JAK2V617F変異体の下流では、エリスロポエチン受容体(EpoR)やRNAヘリカーゼDDX5のリン酸化が誘導されることを見出した。EpoRの細胞内領域に存在するリン酸化チロシン残基を全てフェニルアラニンに置換した非リン酸化EpoR変異体(EpoR-YF)を作製し、JAK2V617変異体が誘導するがん化シグナルに及ぼすリン酸化EpoRの影響を検討した。その結果、EpoR-YF変異体は、JAK2V617F変異体との結合やJAK2V617F変異体の活性化には影響を及ぼさなかったが、JAK2V617F変異体が誘導する細胞増殖や腫瘍形成を完全に阻害した。したがって、EpoRのリン酸化は、JAK2V617F変異体の発がん誘導に必須の役割を果たすことが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-25460073
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25460073
定量的リン酸化プロテオーム解析による慢性骨髄増殖性腫瘍の発症機序の解析
また、野生型JAK2発現細胞に比べて、JAK2V617F変異体発現細胞では、DDX5の発現が亢進していることを見出した。shRNAを用いて、JAK2V617F変異体発現細胞におけるDDX5の発現を抑制すると、増殖能や腫瘍形成能が顕著に抑制されたことから、JAK2V617F変異体は、DDX5の発現誘導を介して発がんシグナルを活性化することが示唆された。チロシンキナーゼJAK2の点変異体(V617F)は、慢性骨髄増殖性腫瘍の原因遺伝子である。JAK2V617F変異体は恒常的な活性化型であり、異常な細胞増殖や腫瘍形成を誘導することが知られているが、JAK2 V617F変異体が誘導する発がんシグナルの分子機構は不明である。JAK2V617F変異体が誘導する発がんシグナルを理解するには、JAK2V617F変異体の下流における全てのシグナル分子の状態変化を同時に網羅的に解析する必要がある。本研究では、定量的リン酸化プロテオーム解析を行い、JAK2V617F変異体の下流でリン酸化される分子を同定し、それらの発がんシグナルにおける役割を解析した。今年度は、JAK2変異体の下流でリン酸化される分子の機能解析およびリン酸化の意義を解明することを目標とした。今回着目したCISに関しては、JAK2変異体が誘導するがん化シグナルにおける役割だけでなく、そのリン酸化の意義も明らかにすることができた。よって、概ね計画通りに研究が進んでいると思われる。シグナル伝達今後は、JAK2変異体の下流で特異的にリン酸化されるタンパク質として同定したCIS以外のリン酸化分子について、JAK2変異体のがん化シグナルにおける影響を検討し、そのリン酸化の役割を解析している予定である。その一つとして、現在までに、JAK2変異体発現細胞では、核内タンパク質HMGAが顕著にリン酸化されることを見出している。HMGAは、これまでに多くのがん細胞で高発現していることが確認されているが、その機能に関しては不明な点が多い。今後は、JAK2変異体のがん化シグナルにおけるHMGAの機能およびそのリン酸化の役割を解析することを計画している。今年度の計画として、1定量的リン酸化プロテオーム解析を行い、JAK2変異体の下流で特異的にリン酸化される分子を同定することおよび2リン酸化分子の発現ベクターおよび特異的なshRNAの発現ベクターを作成し、それらを発現した細胞株を作成することを予定していた。現在までに、FANCファミリーに関しては、その機能まで明らかにすることができた。また、リン酸化されることが明らかになったHMGAは、野生型だけでなく、非リン酸化型変異体の過剰発現細胞を作成することに成功している。また、現在、STAT5の非リン酸化型変異体に関しては、発現ベクターの構築を行っており、概ね計画通りに、研究が遂行できていると考えられる。今後は、定量的リン酸化プロテオーム解析により、野生型JAK2に比べて、JAK2変異体の下流で特異的にリン酸化された分子である核タンパク質HMGAや転写因子STAT5に着目し、その生理機能やリン酸化誘導機構について解析を行う。現在までに、JAK2変異体発現細胞において、HMGAは、転写因子c-Mycを介して発現が誘導されることを見出しており、JAK2変異体のシグナル経路では遺伝子の発現誘導とタンパク質の翻訳後修飾が複雑に機能している可能性が高いと考えられた。
KAKENHI-PROJECT-25460073
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4・5才児の身体表現力の発達
1目的4・5才児の継続した2年間の身体表現の指導において、4・5才児の身体表現力がどのように変化、発達したかを明らかにする。2方法(1)対象東京都内の私立N幼稚園4才児、5才児各2クラス(2)期間昭和62年4月平成元年3月(3)手順上記により、身体表現の指導を行ない、VTR録画、写真撮影を行なう。これらの観察記録とVTRによる動きの分析により明らかにする。3結果4・5才児の身体表現力の発達の概要は次の通りである。「動き」については、4才児の初めでは、題材の形や動きの大まかな特徴を、主に上下肢の単一の運動の反復でほぼ同様に表現していた。その後次第に多様化していき、5才児の終わり頃では、題材の色々な角度から、形態、質の変化、抽象的なものもとらえ、体幹から大きくダイナミックに全身で表す。「保育者や子どもとの関わり」は、保育者対子ども個人から子ども同士の関わりが密になり、友達との表現、更にはグル-プ表現もできるようになる。「表現体になりきって動き続ける」は、4才児の初めでは全般に12割の子どもは集中しきれずにいたが、次第に多くの子どもが表現に集中するようになり、5才児では、丁寧に気持ちを入れて表現したり、声を発して活発に動き続ける。すなわち、4才児では、題材からイメ-ジが次第に広がり、そのものになりきって表現できるようになり、身体表現を楽しんで行なえる土台ができたといえ、5才児ではその上に知的、情緒的、社会的発達と相まって、身体表現力の著しい発達がみられた。身体表現力を次の観点からみた. 1.動き.2.教師や子どもとの関わり. 3.表現体になりきって動き続ける.これらの観点から4才児の各指導毎に分析した結果を1年間通してみると,およそ次のように3期にまとめることができた.1期(4月夏期休暇前迄)身体表現活動に全員が集中できず,教師主導の元で,教師の言葉がけに従う形で動く.動きは,初めはほとんどの子どもが同じように表現するものであるが,指導により,少しづつ体幹も動き始め,動きの個性の兆しがみえ,子ども達もそのことに気づき始めている.この期の特徴は次の通り. (1)題材の形や動きの大まかな特徴を,体幹の動きの少い,左右対称の上肢のふりと下肢のステップで,誰もが同じように表現.少しづつ体幹動く.(2)身体での表現をしばしば忘れる.(3)個人で表現するのが主.多勢で一緒に動くことを喜び,友達との関わりを楽しむが,ふざけることがある.(4)教師の傍では比較的落ちついて表現するが,空間が広がると表現の持続が短く困難. 2期(9月冬期休暇前迄)題材の確かめのための教師と子どもとの言葉や動きでの応答が活発になり,一部流動的参加がいるものの,多くの子ども達が身体表現活動に集中し始め,友達と関わりながら働きを楽しみ,子ども間に動きの多様性がみられる.(1)題材の性質や内容の変化をとらえる.(2)体幹の動きが加わった全身での活発な動きが増え,空間を広く使い,のびのび動く.(3)単一の運動の反復であるが,子ども間では運動の種類も増える.(4)個人のみならず2人で工夫して動く.3期(1月4才児の終わり頃迄)題材から自由にイメージを広げ,全身的な屈曲した動きで個性的に表現する.(1)題材の細かな変化を体幹の自由自在な働きで表わす.(2)単一運動の反復が多いが,速さ,高低,場所の移動などで変化を表わす. (3)4, 5名までのグループ表現の兆しが,ポーズやその場での動きに現れる. 63年度は5才児の分析を行う.1目的4・5才児の継続した2年間の身体表現の指導において、4・5才児の身体表現力がどのように変化、発達したかを明らかにする。2方法(1)対象東京都内の私立N幼稚園4才児、5才児各2クラス(2)期間昭和62年4月平成元年3月(3)手順上記により、身体表現の指導を行ない、VTR録画、写真撮影を行なう。これらの観察記録とVTRによる動きの分析により明らかにする。3結果4・5才児の身体表現力の発達の概要は次の通りである。「動き」については、4才児の初めでは、題材の形や動きの大まかな特徴を、主に上下肢の単一の運動の反復でほぼ同様に表現していた。その後次第に多様化していき、5才児の終わり頃では、題材の色々な角度から、形態、質の変化、抽象的なものもとらえ、体幹から大きくダイナミックに全身で表す。「保育者や子どもとの関わり」は、保育者対子ども個人から子ども同士の関わりが密になり、友達との表現、更にはグル-プ表現もできるようになる。「表現体になりきって動き続ける」は、4才児の初めでは全般に12割の子どもは集中しきれずにいたが、次第に多くの子どもが表現に集中するようになり、5才児では、丁寧に気持ちを入れて表現したり、声を発して活発に動き続ける。すなわち、4才児では、題材からイメ-ジが次第に広がり、そのものになりきって表現できるようになり、身体表現を楽しんで行なえる土台ができたといえ、5才児ではその上に知的、情緒的、社会的発達と相まって、身体表現力の著しい発達がみられた。
KAKENHI-PROJECT-62580104
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4・5才児の身体表現力の発達
1目的5才児の身体表現の1年間の指導において、その身体表現力がどのように変化したかを明らかにする。2方法(1)観察対象東京都内の私立N幼稚園、5才児2クラス、57名(2)観察期間昭和63年4月昭和64年3月(3)手順およそ1ケ月に1回のペースで指導を行い、VTR収録し、指導後、反省会を行い記録した。記録の整理とVTRによる動きの分析から検討し明らかにする。3結果身体表現力の1年間の変化をII期に分け、およそ次のようにまとめた。I期(4.5月)(1)題材の細かな変化を体幹の動きとの関連で上下肢の微妙な動きで表わそうとしている。(2)「色々な方向に伸びる・縮む」の指導により、次第に体幹と上下肢が一体となった全身の大きな動きになりつつある。(3)教師に注目しながら部屋一杯に拡がり個人で動くが主である。II期(6月11月)(1)指導により、高低の変化に富んだ動的な一連の動きや、回転と跳躍などの一連の動きの反復がみられるようになり、より感じをとらえた個性的な表現となる。(2)空間を広く使い個人で動くが主であるが、動きの中で周りの友達と関わりながら動いたり、23人での表現を楽しむ。III期(13月)(1)題材の形、動き、性質など自分でとらえてすぐ活発に声も出しながら動く。(2)2種類の複合的運動の反復、2・3種類の一連の運動や連続した2種類の運動の反復などにより動きの空間が拡がり、リズミカルでダイナミックになり「より感じをとらえた1人1人の動き」の感が強くなる。1.目的4・5才児の身体表現の2年間の指導において、その身体表現力がどのように変化、発達したかを明らかにする。2.方法(1)観察対象東京都内の私立N幼稚園、5才児2クラス、57名(2)観察期間昭和62年4月平成元年3月(3)方法VTRによる動きの分析3.結果4・5才児の身体表現力の発達の概要は次の通りである。「動き」については、4才児の初めでは、題材の形や動きの大まかな特徴を、主に上下肢の単一の運動の反復でほぼ同様に表現していたのが次第に題材を色々な角度からとらえ、5才児の終わりでは、形態、質の変化、更には、抽象的なものもとらえ、体幹から大きくダイナミックに全身で表す。「保育者や子どもとの関わり」は、4才児前半では、保育者の言葉がけに従い個人で表現するであったが、次第に保育者と子どもとの応答が活発になり、更に動きの中で友達との関わりも増え、23名の友達との表現もみられる。又、5才児になると保育者の援助によりグル-プ表現もみられ、5才児終わり頃では、異なった動きの組み合わせや隊形の工夫もみられる。「表現体になりきって動き続ける」は、4才児の初めの頃は、全般に12割の子どもは集中できずにいたが、次第に多くの子どもが表現に集中するようになる。5才児では、細かな変化に気づき、気持ちを入れて丁寧に表現しようとし、更に声を発し活発に動き続ける。すなわち、4才児では、身体表現を楽しんで行なう土台ができたといえ、5才児では、その上に、知的、情緒的、社会的な発達と相まって身体表現力の著しい発達がみられたといえよう。
KAKENHI-PROJECT-62580104
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上オリーブ核の誕生日時と形質発現
1)神経発生学的研究:BrdUの免疫組織化学で、特定の胎生期に分裂発生したニューロンをラット成体で同定した。神経トレーサーである蛍光色素で標識された神経細胞と二重標識して観察する手法も我々が独自に開発した。外側上オリーブ核一下丘投射ニューロンのうち、交叉性投射ニューロンは発生時期が早く(胎生12-13日)、非交叉性投射ニューロンは発生時期が遅い(胎生14-16日)ことを世界ではじめて発見した。投射の側性(laterality)によってそのニューロン群の発生時期が異なるという仮説を、聴覚系では本研究ではじめて証明した。国際学会で発表(第25回北米神経科学協会年次総会,San Diego,1995年11月;第4回IBRO世界大会、京都、1995年7月)した。2)脳幹神経回路網の生後発達と脳の可塑性:内側上オリーブ核一下丘投射の発達は短い期間に成立するものではなく、それらのニューロンのなかには、生後発育中の様々な時期に軸索を下丘まで伸展していくものが混在していることが判明した。新生児期に一側下丘を実験的に剥離した場合の成長後の変化を調べた結果、逆行性の細胞死、異常な線維連絡の形成、投射標的の剥離に対する抵抗性の出現等の興味ある現象がおこることが証明された。原著論文2編にまとめ国際誌に公表した(Okoyama et al.,Hearing Research 1995a,b)。1)神経発生学的研究:BrdUの免疫組織化学で、特定の胎生期に分裂発生したニューロンをラット成体で同定した。神経トレーサーである蛍光色素で標識された神経細胞と二重標識して観察する手法も我々が独自に開発した。外側上オリーブ核一下丘投射ニューロンのうち、交叉性投射ニューロンは発生時期が早く(胎生12-13日)、非交叉性投射ニューロンは発生時期が遅い(胎生14-16日)ことを世界ではじめて発見した。投射の側性(laterality)によってそのニューロン群の発生時期が異なるという仮説を、聴覚系では本研究ではじめて証明した。国際学会で発表(第25回北米神経科学協会年次総会,San Diego,1995年11月;第4回IBRO世界大会、京都、1995年7月)した。2)脳幹神経回路網の生後発達と脳の可塑性:内側上オリーブ核一下丘投射の発達は短い期間に成立するものではなく、それらのニューロンのなかには、生後発育中の様々な時期に軸索を下丘まで伸展していくものが混在していることが判明した。新生児期に一側下丘を実験的に剥離した場合の成長後の変化を調べた結果、逆行性の細胞死、異常な線維連絡の形成、投射標的の剥離に対する抵抗性の出現等の興味ある現象がおこることが証明された。原著論文2編にまとめ国際誌に公表した(Okoyama et al.,Hearing Research 1995a,b)。
KAKENHI-PROJECT-07680817
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多項式計画問題とその拡張に対する効率的かつ頑健な解法に関する研究
多項式計画問題および対称錐上の多項式計画問題に対する半正定値計画緩和の研究を行った。特に多項式の疎性や等式条件を利用して、半正定値計画緩和の問題のサイズを劇的に小さくできることを示した。この手法を利用したソフトウェア、SparsePOPを開発し、公開した。SparsePOPにより、これまでは解けなかったような多数の変数を持つ多項式計画問題を解く事ができるようになった。多項式計画問題および対称錐上の多項式計画問題に対する半正定値計画緩和の研究を行った。特に多項式の疎性や等式条件を利用して、半正定値計画緩和の問題のサイズを劇的に小さくできることを示した。この手法を利用したソフトウェア、SparsePOPを開発し、公開した。SparsePOPにより、これまでは解けなかったような多数の変数を持つ多項式計画問題を解く事ができるようになった。多項式計画問題(POP)の大域的最適値を,半止定値計画問題(SDP)の列を解くことにより求める方法に関する研究である。一つの方向として,多項式半正定値計画(PSDP)に関する結果を得た。最初の論文は,通常の多項式計画における基本定理となっているPutinarの結果を,(PSDPよりも広いクラスである)多項式対称錐計画に対して拡張したものである。これにより,多項式対称錐計画に対してもSDPの列を解くことにより大域的最適解を求められる,という認識が確立した。ただし,POPの場合もそうだが,大域的最適解を求めるためには,一般に解くべきSDPは巨大になり,現在のSDPソルバーでは解けない場合も多い。それを克服する一手法として,POPが等式条件を含む場合に,それを利用してSDPのサイズを縮小し,かつ,緩和を強める工夫を提案した。それが二つ目の論文となっている。また,近年,多項式計画の疎性を用いてSDPのサイズを縮小する手法を提案しているが,同手法を用いたソラトウエア,SparsePOPの開発を東工大の小島研究室とともに継続して行なっている。これを用いて,POPを解く際のSDPの性質に関して,様々な知見を集めた。これらは次年度の研究計画の遂行において重要な役割を果たすものと考えられる。最初の成果であるSparsePOPは、多項式最適化問題に対する半正定値計画緩和のソフトウェアである。このソフトウェアは、公開されたフリーソフトウェアであり、今回の研究の基本となるツールである。半正定値計画問題の生成に関して、効率性、安定性について十分に検討されており、この分野の有力なソフトウェアとして認知されている。その重要性は、今年度、論文がACM TOMSに掲載されたことからも明らかであろう。つぎに、多項式計画問題に対する半正定値計画緩和に対して、内点法が数値的に不安定/不可思議な振る舞いを見せることを発見し、それに関して原因究明を行った。ここでは、必要な計算をするために、多倍長の計算を行わなくてはならないことを示した。この研究では、多倍長計算による半正定値計画のソルバー、SDPA-GMPが主導的な役割を果たした。結果はいくつか、内外の学会で発表し、また、論文は現在投稿中である。さらに次の段階として、「錐の面的削減」のテクニックを用いて、数値的に不安定な半正定値計画問題を安定な問題に帰着させることに関する研究を現在行っている。多項式計画問題に対する半正定値計画緩和問題は、数値的に不安定になりやすく、これを解くための内点法が不可思議な振る舞いを見せることが、前年までに発見されていた。このとき挙げられた例題に関して、「錐の面的削減」のテクニックを用いて、数値的に不安定だった半正定値計画問題を安定な問題に帰着させることが可能なことを明らがにした。「錐の面的削減」は、凸錐を次々と部分空間に射影していくことで、もともと内点許容解を持たない錐計画問題を、内点許容解を持つ別の錐計画問題に変換する技術である。これにより、「錐の面的削減」のテクニックが、半正定値計画問題の数値的安定性を増大させる事が示唆される。さらにこの「錐の面的削減」に関する研究を進め、一般の凸錐に対する面的削減のアルゴリズムを提案し、収束を証明するとともに、その特殊なバージョンがLuo, Sturm, Zhangらの「錐的拡大アプローチ」の双対となっていることを明らかにした。一般には、「錐的拡大アプローチ」に比べて「面的削減」の方が自由度が大きく、細かな制御が可能であることもわかった。また、「錐の面的削減」のテクニックを用いて、疎な多項式最適化問題に対して、変数の少ない半正定値緩和が可能なことを示した。これは、部分的には従来知られている技法と一致するが、さらに変数を削減できる可能性を示唆する。面的削減に関しては未だ研究中であるが、ここまでの結果はとりあえず論文にし、投稿中である。
KAKENHI-PROJECT-19560063
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消化管吸収性の改善を指向した天然機能性化合物の配糖体化
クチナシ、イチゴ、ダイズなどの植物から低分子化合物の水酸基または炭素原子に糖鎖を抱合する糖転移酵素を単離し、その機能を解析した。これによって、天然の生理活性化合物のたよ配糖体ライブラリーの拡大が可能になった。これらの配糖体の消化管での加水分解反応の受けやすさと消化管吸収性との関係を解析するために、ヒト及びラット消化管由来のlactose-phlorizin hydrolase(LPH)の組換酵素を用いて各種天然化合物由来の配糖体の加水分解特性を比較するために、LPH組換酵素の作製を試みた。配糖体合成に用いる糖転移酵素ライブラリーを拡張するためのcDNAクローニングを実施し、クチナシからアポカロチノイドを基質とするglucosyltransferaseとイリドイドを基質とするglucosyltransferaseを、ニチニチソウからイリドイドを基質とするglucosyltransferaseを得ることに成功した。また、センブリとイチゴからそれぞれセコイリドイドとフラノクマリンを基質とするglucosyltransferaseを得ることを目的に実験を行い、現在までにいくつかの候補クローンを得ており、これらの機能解析を実施中である。さらに、クチナシから得ているglucosyltransferaseとその上流の反応を組み合せることにより、キサントフィルからアポカロチノイド配糖体に至る反応を酵素合成する系の確立に向けた検討を実施し、現在までにキサントフィルの酸化的開裂反応産物から最終配糖体までの酵素合成に成功している。今後、最初の開裂反応を触媒する酵素をクローニングすることによって、非天然型アポカロチノイド配糖体の酵素合成が可能になるものと期待される。現在、これまでにクローニングした糖転移酵素を利用して各種の配糖体の酵素合成を遂行中である。植物機能性化合物のグルコース配糖体合成に用いるための糖転移酵素cDNAライブラリーの拡張に関しては、水上はダイズのESTライブラリーからflavanone C-glucosyltransferase活性を示す糖転移酵素cDNAクローン(UGT708D1)の機能的同定に成功した。これまで、C-glucosylation活性を示す糖転移酵素の単離例は非常に少なく、研究の基礎となる機能性化合物配糖体の幅を広げる上で重要な成果である。また、分担研究者の寺坂は、イチゴの特異的芳香成分として花托に存在している4-hydroxy-2,5-dimethyl-3(2H)- furanone (HDMF)に対して糖転移活性を有する配糖化酵素として、ESTなどのデータベース情報を利用してFaGT9を単離した。基本骨格としてフラン構造を有する化合物に対する糖転移酵素としては最初の単離例であり、この成果も供試する配糖体の構造の幅を拡大する上で重要である。小腸粘膜に存在する加水分解酵素であるLPH(lactose phloridin hydrolase)を単離して、その組換酵素を用いて各種機能性配糖体の加水分解能を比較することが次の研究ステップである。これまでにヒト小腸粘膜由来のcDNAライブラリーを購入し、またラットの小腸粘膜からcDNAライブラリーを作成して、データベース情報に基づいてそれぞれのcDNAを単離することはできている。現在、単離したcDNAを発現用ベクターに組み込む作業を実施中である。ラットおよびヒトの小腸由来のcDNAライブラリーからlactose-phlorizinhydrase遺伝子のcDNAを単離し、発現用ベクターpCI-neoに組み込んでHEK239細胞に導入した。形質転換した細胞から調製した粗酵素液にbeta-glucosidase活性があることを確認できたが、発現レベルが安定せず、現在形質転換法について検討中である。クチナシ、イチゴ、ダイズなどの植物から低分子化合物の水酸基または炭素原子に糖鎖を抱合する糖転移酵素を単離し、その機能を解析した。これによって、天然の生理活性化合物のたよ配糖体ライブラリーの拡大が可能になった。これらの配糖体の消化管での加水分解反応の受けやすさと消化管吸収性との関係を解析するために、ヒト及びラット消化管由来のlactose-phlorizin hydrolase(LPH)の組換酵素を用いて各種天然化合物由来の配糖体の加水分解特性を比較するために、LPH組換酵素の作製を試みた。機能性化合物の配糖体合成のための糖転移酵素のクローニングと機能解析は順調に進んでいるが、配糖体の加水分解性を調べるためのヒト小腸LPH(lactose phloridin hydrolase)の組換え酵素生産が予定より遅れている。薬用植物学、生薬学これまでに単離した糖転移酵素の組換酵素を用いて各種機能性化合物の配糖体を合成する。また咲く年度末に単離できたヒトおよびラット小腸粘膜由来のLPHの発現ベクターを構築して組換体を作成し、各種配糖体に対する基質特異性を比較検討する。本研究の推進には、種々の天然機能性物質を配糖化できる糖転移酵素をそろえることが前提として必要であるが、平成25年度の研究でこの部分が基本的に達成できている。研究代表者の所属の変更に伴い前年度未使用額が大きくなったために、今年度についてもなお未使用額が残っていることが主要な原因である。また、ヒトおよびラットの小腸粘膜由来LPHの発現ベクターの構築に至っていないことも、経費の支出が予想よりも低くなった一因である。研究は順調に進行しており、予定通り下記の計画に従って研究を推進する。これまでにクローニングした糖転移酵素の組み換えタンパク質を調製し、研究のターゲットとしているケルセチン、クルクミン、レスベラトロール、クロセチンの種々の位置にグルコースを抱合した配糖体を酵素合成する。
KAKENHI-PROJECT-25460127
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消化管吸収性の改善を指向した天然機能性化合物の配糖体化
ヒト小腸由来細胞からlactose-phlorizin hydrolase(LPH)のcDNAをクローニングする。組み換えLPHと酵素合成した各種配糖体を反応させ、LPHの基質特異性を明らかにする。並行して、各種配糖体の消化管吸収性を検討し、消化管吸収性とLPHによる加水分解の受けやすさの関係を明らかにする。LPH発現ベクターの構築、組換LPHの生産と精製、基質となる配糖体の大量酵素合成に積極的に投入するとともに、学会発表および論文発表の経費としても積極的に使用する計画である。糖転移酵素の遺伝子クローニングが順調に進行したため、消耗品費の使用が計画以下で済んだ。また、研究代表者が3月末で研究機関を移動したため、1月から3月にかけての学会等での出張が困難であったため、旅費の支出が計画を下回った。酵素合成した配糖体の精製のために、従来の予定になかったprepatarive HPLC法を導入し、そのためのpreparative columnの購入に当てるとともに、学会等での発表をより積極的におこなうための旅費支出の増額分に充当する。
KAKENHI-PROJECT-25460127
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義歯動揺量測定装置の開発-加速度とその変位量の関係の評価
全部床義歯は維持および支持を被圧変位性と可動性に富む口腔粘膜に依存しているため、機能時における義歯床の動揺・変位は避けることができない。しかし、義歯の動揺を最小に抑え維持・安定の向上を図ることは咀嚼・発音などの機能の回復、顎堤の保護の観点からも重要なことである。従って、機能時の義歯の動揺を定量的に把握し、それを直ちに臨床操作に反映できるような手法を開発することは意義のあることと考える。その目的を実現するために、小型かつ簡便な加速度センサを用いた義歯動揺量測定装置の開発を平成6年度より始めている。本年度は平成6年度の基礎実験で得たデータをもとに、義歯に加えられた加速度とその変位量との相関を調べその重回帰式を決定し、さらにその当てはまり具合を検定する事である。その結果、以下のことがわかった。1.加速度センサからの加速度波形の極性と変位方向との間に強い相関が認められた。2.加速度センサからの加速度波形の第1振幅と変位量との間に強い相関が認められた。3.加速度波形の減衰率と変位量との間に相関が認められた。4.人工粘膜が変化すると加速度波形の減衰率が変化する傾向が認められた。5.加速度波形の第1振幅とその減衰率とを説明変数に使って重回帰式を求めた。今後、追実験を行って重回帰式の当てはまり具合を検討して行く計画である。さらに次年度では3個の加速度センサからのデータより義歯の変位を測定していくプログラムを開発して行く計画である。全部床義歯は維持および支持を被圧変位性と可動性に富む口腔粘膜に依存しているため、機能時における義歯床の動揺・変位は避けることができない。しかし、義歯の動揺を最小に抑え維持・安定の向上を図ることは咀嚼・発音などの機能の回復、顎堤の保護の観点からも重要なことである。従って、機能時の義歯の動揺を定量的に把握し、それを直ちに臨床操作に反映できるような手法を開発することは意義のあることと考える。その目的を実現するために、小型かつ簡便な加速度センサを用いた義歯動揺量測定装置の開発を平成6年度より始めている。本年度は平成6年度の基礎実験で得たデータをもとに、義歯に加えられた加速度とその変位量との相関を調べその重回帰式を決定し、さらにその当てはまり具合を検定する事である。その結果、以下のことがわかった。1.加速度センサからの加速度波形の極性と変位方向との間に強い相関が認められた。2.加速度センサからの加速度波形の第1振幅と変位量との間に強い相関が認められた。3.加速度波形の減衰率と変位量との間に相関が認められた。4.人工粘膜が変化すると加速度波形の減衰率が変化する傾向が認められた。5.加速度波形の第1振幅とその減衰率とを説明変数に使って重回帰式を求めた。今後、追実験を行って重回帰式の当てはまり具合を検討して行く計画である。さらに次年度では3個の加速度センサからのデータより義歯の変位を測定していくプログラムを開発して行く計画である。
KAKENHI-PROJECT-07771831
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07771831
X線異常散乱法による原子価揺動状態の研究
回折法と分光法を組み合わせ同原子種で価数の異なるイオンを区別することを目的に、原子価揺動を起こす遷移金属・希土類金属化合物を異常分散法で調べた。結果として、結晶内イオン分布、原子価状態が変化する転移、電子的秩序状態等について新しい知見が得られた。吸収端近傍のXANES領域で観測される前吸収端構造やケミカルシフトから、遷移に対応した電子状態や酸化数の増加に伴う結合エネルギーの増加に関する知見が得られる。このようなある特定のエネルギーに注目し、電子状態の差をX線解折の手段で研究した。このとき、例えばFe^<2+>とFe^<3+>とでは、原子散乱因子の異常分散項fに差が生じ、散乱能(X線回折強度)の差から従来は不可能とされた価電子の差が識別できる。本研究では、観測吸収スペクトルから原子価ごとの異常分散項fを直接求めて「原子価差コントラスト法」を開発し、更に「原子価状態を探求する実験」を行なうことを目指した。原子価揺動状態では、電気抵抗・磁化率その他の物性に特有の異常がみられる。研究では最初にマグネタイトFe_3O_4を手掛け、Fe^<2+>とFe^<3+>とのホッピング伝導の部分凍結やフェルベェ転移以下での電子的秩序状態を求めた。更に遷移金属酸化物やRuを含む希土類金属化合物に研究対象を拡張した。電荷配列の秩序パターンが非常に複雑な場合、中性子回折や核磁気共鳴からの情報のみでイオン配列に伴う結晶構造を決定することは困難である。本研究により、価電子の差をX線では区別できないという一般概念が打破でき、しかも本手法を従来のX線構造解析法に容易に取り込むことができたと考えている。回折法と分光法を組み合わせ同原子種で価数の異なるイオンを区別することを目的に、原子価揺動を起こす遷移金属・希土類金属化合物を異常分散法で調べた。結果として、結晶内イオン分布、原子価状態が変化する転移、電子的秩序状態等について新しい知見が得られた。吸収端近傍のXANES領域で観測される前吸収端構造やケミカルシフトから、遷移に対応した電子状態や酸化数の増加に伴う結合エネルギーの増加に関する知見が得られる。このようなある特定のエネルギーに注目し、電子状態の差をX線解折の手段で研究した。このとき、例えばFe^<2+>とFe^<3+>とでは、原子散乱因子の異常分散項fに差が生じ、散乱能(X線回折強度)の差から従来は不可能とされた価電子の差が識別できる。本研究では、観測吸収スペクトルから原子価ごとの異常分散項fを直接求めて「原子価差コントラスト法」を開発し、更に「原子価状態を探求する実験」を行なうことを目指した。原子価揺動状態では、電気抵抗・磁化率その他の物性に特有の異常がみられる。研究では最初にマグネタイトFe_3O_4を手掛け、Fe^<2+>とFe^<3+>とのホッピング伝導の部分凍結やフェルベェ転移以下での電子的秩序状態を求めた。更に遷移金属酸化物やRuを含む希土類金属化合物に研究対象を拡張した。電荷配列の秩序パターンが非常に複雑な場合、中性子回折や核磁気共鳴からの情報のみでイオン配列に伴う結晶構造を決定することは困難である。本研究により、価電子の差をX線では区別できないという一般概念が打破でき、しかも本手法を従来のX線構造解析法に容易に取り込むことができたと考えている。Fe原子のK吸収端で観察されたケミカルシフトを基に、Fe^<2+>とFe^3イオンの正確なX線異常散乱因子を求めた。吸収データからその散乱因子を得るために観測値を理論式へ代入する新しい方法を開発した。波長1.7415ÅではX線散乱能で2.5という非常に大きな差でもって両イオンを区別できることがわかり、X線の回折散乱法へ適用を試みた。マグネタイト結晶のフェルベ-転移温度以上で観察される比熱異常領域に注目し、低温単結晶試料を放射光X線散漫散乱法で調べた。そして、X線では検出不可能と考えられていたファン散乱を観察することに成功した。その散漫散乱強度分布は中性子線データと類似しているが、伸長方向や非対称性において特徴的な差異がみられる。中性子が酸素変位を見るのに対し、本研究はFe^<2+>、Fe^<3+>イオンの直接観察を行なっている。結果から格子の歪みを伴う局所構造モデルを検討し、マグネタイトのホッピング伝導の部分的凍結や相転移前後での電子的秩序状態について考察した。X線でイオンを明瞭に識別でき原子価状態の解析が可能であることがわかったので、マグネタイトのフェルベ-転移点以下でのX線回折実験の研究をスタートさせた。単結晶-単結晶転移を起こさせ新ブラッグ反射を検知するために磁場発生付属装置を作製した。これで外場をかけた単結晶実験が可能になった。また、他の遷移金属元素や希土類元素に対し吸収端でのXANES吸収測定を行なった。実験的なX線異常散乱因子を求めることで、他の混合原子価化合物での原子価揺動状態の研究が行なえる。マグネタイト結晶は、約123Kのフェルヴェー転移温度でFe^<2+>・Fe^<3+>イオン間に凍結が起こり規則配列をとると言われている。この転移温度以上でも、比熱測定や中性子散乱測定からイオンの部分凍結による局所歪みの存在が報告されている。
KAKENHI-PROJECT-07805001
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X線異常散乱法による原子価揺動状態の研究
本研究では、放射光X線散漫散乱法で低温単結晶試料を調べ、X線では検出不可能と考えられていたホアン散乱を観察することに成功した。実験には、Fe原子のK吸収端XANES領域にある波長1.7415Åを選択した。我々が本研究で開発した原子価コントラスト法を用いれば、この波長で約2.5という非常に大きな散乱能の差でFe^<2+>とFe^<3+>イオンを区別していることになる。今回得られたホアン散乱強度分布は、基本的には中性子線データと類似している。しかし、伸長方向や非対称性において異なり、Fe^<2+>・Fe^<3+>イオンを直接観察した結果と考えると説明できる。中性子が酸素変位を間接的に見ているのと対照的である。更に、格子歪みを伴う局所構造モデルの検討から、マグネタイト・ホッピング伝導での電子的秩序状態について考察した。引き続き、マグネタイトのフェルベ-転移点以下でのX線回折実験を原子価コントラスト法でスタートさせた。単結晶-単結晶転移を起こさせ、1/2周期の位置にブラッグ反射強度を検出した。すでに結晶構造解析のための積分反射強度の収集を完了し、現在、規則配列を解析中である。Fe_3O_4は、Fe^<2+>イオンとFe^<3+>イオンとの速い電子交換で導電性(ホッピング伝導)を示すが、フェルヴェ転移(123K)以下では揺動が静止し電子的秩序状態になると考えられている。しかし低温での結晶構造については未解明な部分が多い。種々の結晶構造モデルが提案されてきているが、複雑な双晶を生成するため、観測強度データを完全に満足するモデルはまだ得られていない。そのため本研究では、今回開発した原子価コントラスト法を用い、Fe^<2+>イオンとFe^<3+>イオンとの間でX線散乱能に大きな差をつけることにより単結晶X線回折実験を行なった。今回初めて、102Kでマグネタイト結晶を単結晶-単結晶転移させることに成功し、半周期の位置に超過ブラッグ反射を観測した。さらに対称性・回折強度分布等の解析から、斜方晶系(空間群Cmcm)に属し、室温相の立方晶格子をa=2a_1+2a_2,b=-2a_1+2a_2,c=2a_3に変換する8倍格子の電荷秩序相であることが判明した。X線異常散乱因子が大きく異なるFeK吸収端近傍の2波長(1.7421Åと1.7488Å)の放射光X線を用い、積分反射強度を収集した。得られたX線回折強度のエネルギー依存性に着目し、規則配列を解析した。一方、室温での電子密度の動径分布解析から、Fe_3O_4のAサイトがBサイトより0.46価程度イオン的であるとの結果を得た。この結果から、BサイトではFe^<2+>イオンとFe^<3+>イオンとが混在(原子価揺動)していることが推察でき、X線回折法によるホッピング状態の間接的な確認となった。
KAKENHI-PROJECT-07805001
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無血清・無フィーダ培養系でのヒトiPS樹立と胚様体培養法を用いた顎骨・歯胚誘導
インテグレーションフリー・フィーダー細胞フリー・無血清条件にて、鎖骨頭蓋異形成症(CCD), Noonan、Von Recklinghousen病、基底細胞母斑症候群、Cawden症候群の患者歯髄細胞、末梢血単核球細胞及び疾患組織細胞より疾患特異的iPS細胞を樹立し長期間に継代培養が可能であった。これらiPS細胞は各種未分化マーカー遺伝子を発現し、iin vitro及びin vivoにおいて三胚葉への分化能を有していた。CCD及びNoonan由来iPSCによるテラトーマの軟骨組織は疾患症状に合致した軟骨基質が貧弱な組織像を示し、疾患特異的iPSは疾患研究に有用であることが示唆された。本年度においては、フィーダー細胞を用いずに無血清培地(hESF9)で、健常人歯髄細胞(DPC)、健常人末梢リンパ球(PBMC)及び頭蓋顎顔面骨・軟骨・歯胚形成異常を伴う鎖骨頭蓋異形成症(CCD)患者由来DPCおよびPBMC由来ヒトiPS細胞(iPSC)を樹立し、各細胞の特性解析を行った。DPC、PBMCはそれぞれRD6F及びRD6F+IL2で初代培養し、初期化遺伝子の導入は、ゲノムDNAへランダムな遺伝子挿入が起こらないセンダイウイルスベクター(SeVdp (KOSM)を用いて行った。DPCからのiPSCの樹立には細胞接着因子としてフィブロネクチンが最適であったが、PBMCにはラミニンが最適であった。各hiPSCではSeVdpの残存は認めず、完全に除去されていることが明らかとなった。マウス皮下への移植によるテラトーマ形成能を検討したところ、健常人由来iPSCでは3胚葉への分化を示し、その組織像は正常であった。しかしCCD-iPSC由来テラトーマも3胚葉への分化を示したものの、CCD-hiPSC由来テラトーマにおける軟骨組織は、軟骨基質が疎であり疾患の特徴を反映した組織像を認めた。疾患特異的iPS細胞(iPSC)は各種疾患の分子・細胞レベルでの解析を可能とし、病態解明および治療法の開発に貢献することが期待されています。顎顔面口腔領域に病変を生じる遺伝性疾患においては、その発症機構の解明や診断・治療法が十分に確立されておりません。そこで疾患特異的hiPSCを用いてこれら疾患研究をブレークスルーする必要が有ります。我々は、宿主染色体に遺伝子挿入がないセンダイウイルスベクター(SeVdp)を用いて、鎖骨頭蓋異形成症(以下CCD)及びNoonan syndrome(NS)等の遺伝性疾患患者由来細胞の初代培養時から完全無血清・フィーダー細胞フリーの培養系で特異的iPS細胞(iPSC)の樹立・長期維持に成功し、報告してきました。さらに、SCIDマウスを用いたテラトーマ形成にて分化多能性を検討した結果、これら疾患特異的iPSC由来テラトーマにおける軟骨組織は、健常人iPSC由来テラトーマの軟骨組織と比較し、CCD及びNSいずれにおいても、細胞が膨化し軟骨基質が疎な疾患病態を反映した組織像を示しておりました。そこで今回、これらiPSCより、無血清培養条件で軟骨分化誘導を行い、解析することで、疾患モデルとしての有用性を検討しました。誘導したiPSCをin vitroで3次元培養系を用いて4週間軟骨分化誘導を行ったところ、テラトーマで見られた軟骨組織と同様に、健常人の軟骨組織と比較し軟骨基質が疎な組織像を呈しました。以上の結果、これら疾患特異的iPSCは、疾患病態の一部をin vitro及びin vivoで再現可能であることが示された。血清や未知の成分、フィーダー細胞などの不確定要素を完全に排除した、再現性の高い本iPSC誘導・培養系は、増殖・分化を促進あるいは制御する既知あるいは未知の因子の同定や機能解析を可能とした。さらにこれら疾患モデルを用いることで、各種疾患の分子・細胞レベルでの病態解明および治療法開発が期待されると考えられます。インテグレーションフリー・フィーダー細胞フリー・無血清条件にて、鎖骨頭蓋異形成症(CCD), Noonan、Von Recklinghousen病、基底細胞母斑症候群、Cawden症候群の患者歯髄細胞、末梢血単核球細胞及び疾患組織細胞より疾患特異的iPS細胞を樹立し長期間に継代培養が可能であった。これらiPS細胞は各種未分化マーカー遺伝子を発現し、iin vitro及びin vivoにおいて三胚葉への分化能を有していた。CCD及びNoonan由来iPSCによるテラトーマの軟骨組織は疾患症状に合致した軟骨基質が貧弱な組織像を示し、疾患特異的iPSは疾患研究に有用であることが示唆された。以上のように、初年度の予定を順調に達成することができた。口腔外科学各種分化誘導因子を用いて歯胚細胞系への分化誘導法を検討するとともに、各分化誘導因子の最適濃度を探索し、効率的な分化誘導法の開発を検討する。さらに、CCDの原因遺伝子産物Runx2は軟骨細胞分化、歯骨細胞分化、歯の発生に重要な因子であるため、骨・軟骨細胞系列への分化誘導を行い、健常人由来iPS細胞と比較検討を行うことで、発症メカニズムの解明ならびに詳細な機能解析を行うことが可能であると考える。さらに、同様に顎骨や歯胚形成異常を伴う他の遺伝子疾患患者由来iPS細胞を樹立し同様の検討を行う。26年度に予定していた、旅費及び人件費の支出がなかったため使用額が生じた。今年度は研究計画を達成するため、特に大学院生の研究補助などの人件費を計上する。
KAKENHI-PROJECT-26670865
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26670865
癌ワクチン療法を目指したDendritic Cellを用いた免疫療法の研究
目的:これまでの我々のDCの機能解析を基盤として"nature adjuvant"としてのDCの機能を臨床応用へ進展させるものである。方法:Autologous Systemにて検討するために、Eps tein-Barr Virus(EBV)トランスフォーム芽球株(LCL)を健常ドナーの末梢単核球(PBMC)より樹立した。同ドナーのPBMCよりIL-4,GM-CSFを用い7日間培養しDCを誘導し、それぞれの抗原でパルス後、Moncyte-condition medium(MCM)を用いてDCを成熟化させstimulatorとした。同ドナーのPBMCをIL-2およびIL-7の存在下で、1)LCL lysate pulsed DC,2)Total RNA Pulsed DC,3)Unpulsed DC,4)Irradiated LCL,5)LCL lysate(without DC)でそれぞれ刺激しautologous特異的細胞傷害T細胞(CTL)の誘導を試みた。結果:^<51>Cr release assayにおいて、1)群は、3回のみの刺激にて自己LCLに対する特異的CTLの誘導が可能であった。そして、5回の刺激にて自己LCLに対する細胞傷害能は60%以上(E/T Ratio 25:1)に達したが、非自己LCLに対しては5%以下であった。一方、他の群では、自己LCLに対する特異的細胞傷害能は認められなかった。また、サイトカインrelease assayにおいても、1)群では、γ-IFNの著明な産生を認めた(3176pg/ml)。考察:以上より、Tumor lysate pulsed DCは腫瘍特異的CTLを誘導したと考えられた。これらのことより、Tumor lysate pulsed DCは癌免疫療法の新しいアプローチの一つと成り得る可能性が示唆された。目的:最近、専門的抗原提示細胞であるDendritic Cell(DC)を用いた癌ワクチン療法が脚光を浴びている。本研究は、DC療法を有効な治療法として確立するため、DCの細胞学的特性と腫瘍免疫における役割の解析をさらに進めるものである。方法:健常ドナーの全血より末梢単核球(PBMC)を分離後、2時間、37°Cでincubateしadhesion cellを採取し、IL-4とGM-CSFを用い7日間培養しDCの誘導を行った。また、Monocyte-Condition-Medium(MCM)を加え、さらに2日間培養し、MatureDCの誘導を行った。FACS analysisにて、誘導されたそれぞれのDCのphenotypeの解析を行い、それぞれのDCでリンパ球を刺激し、リンパ球増殖能をも検討した。結果:IL-4とGM-CSFを用い7日間培養した細胞は、T CellのマーカーであるCD3、B CellのマーカーであるCD20、MacrophageのマーカーであるCD14、NK CellのマーカーであるCD56はいずれもminimalであったが、co-stimulator moleculeであるCD40、CD54、CD80、CD86は、いずれも高発現し、MHC class IもMHC class IIも両方ともに高発現でありDCパターンを示した。MCMを加え、さらに2日間培養したMatureDCは、CD80はup-regulateし、MatureDCのマーカーであるCD83も高発現を示した。また、MatureDCでリンパ球を刺激すると、有意にリンパ球の増殖を認めた。結語:PBMCより、IL-4とGM-CSFを用いDCの誘導が可能であり、MCMを用いることによりMatureDCの誘導が可能であった。また、MatureDCは、より優れたstimulatorになりうる可能性が示唆された。目的:これまでの我々のDCの機能解析を基盤として"nature adjuvant"としてのDCの機能を臨床応用へ進展させるものである。方法:Autologous Systemにて検討するために、Eps tein-Barr Virus(EBV)トランスフォーム芽球株(LCL)を健常ドナーの末梢単核球(PBMC)より樹立した。同ドナーのPBMCよりIL-4,GM-CSFを用い7日間培養しDCを誘導し、それぞれの抗原でパルス後、Moncyte-condition medium(MCM)を用いてDCを成熟化させstimulatorとした。同ドナーのPBMCをIL-2およびIL-7の存在下で、1)LCL lysate pulsed DC,2)Total RNA Pulsed DC,3)Unpulsed DC,4)Irradiated LCL,5)LCL lysate(without DC)でそれぞれ刺激しautologous特異的細胞傷害T細胞(CTL)の誘導を試みた。結果:^<51>Cr release assayにおいて、1)群は、3回のみの刺激にて自己LCLに対する特異的CTLの誘導が可能であった。そして、5回の刺激にて自己LCLに対する細胞傷害能は60%以上(E/T Ratio 25:1)に達したが、非自己LCLに対しては5%以下であった。一方、他の群では、自己LCLに対する特異的細胞傷害能は認められなかった。また、サイトカインrelease assayにおいても、1)群では、γ-IFNの著明な産生を認めた(3176pg/ml)。考察:以上より、Tumor lysate pulsed DCは腫瘍特異的CTLを誘導したと考えられた。これらのことより、Tumor lysate pulsed DCは癌免疫療法の新しいアプローチの一つと成り得る可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-13770711
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13770711
手術侵襲の生体防御機構への影響と術後感染-サイトカイン・ネットワークを中心に-
手術侵襲によるサイトカイン・ネットワークの過剰反応と術後肺臓器障害の関連について、特に、食道癌手術患者を対象に肺胞洗浄液を用い、肺胞内でのIL-8産生と好中級活性化への影響と術後肺臓器傷害との関連を調べてきた。現在までの対象は、食道癌右開胸手術症例19例であり、測定項目は、肺胞洗浄液中IL-8値、エラスターゼ値、細胞成分好中球数(比率)、活性酵素産生能、肺臓器傷害の指標としてAaDO_2である。<結果>肺胞洗浄液中IL-8値の変動が2,000pg/ml以上に達する高値群と2,000pg/ml以内で推移する低値群に分け検討した。(1)高値群では低値群に比し、肺胞洗浄液中エラスターゼ値が術後5日目において有意に高値であった。(2)高値群では低値群に比し、肺胞洗浄液中好中球数が有意に多かった。(3)高値群では低値群に比し、肺胞洗浄液中細胞成分の活性酸素産生能が高い傾向にあった。(4)肺臓器傷害の指標としたAaDO_2は、高値群で低値群に比し有意に開大していた。以上により、食道癌の手術侵襲により肺胞でのIL-8産生が、好中球遊走を引き起こし、これによるエラスターゼ、活性酸素の産生亢進による肺臓器傷害を引き起こすことが示唆された。1.手術侵襲の単球サイトカイン産生への影響手術侵襲の末梢血単球におけるTNF-α、IL-1β、IL-6産生能への影響をしらべると、侵襲の大きい食道癌手術が術直後に最も強く産生能を亢進させ、侵襲の小さい胃癌手術、胆のう手術の産生能亢進は僅かであった。また、この亢進時期には、末梢血IL-6値およびエラスターゼ値の上昇がみられた。2.手術侵襲による単球サイトカイン過剰産生と肺臓器障害食道癌手術により、術直後に単球サイトカイン産生能の著明に亢進する例がみられることから、亢進群(術後1病日、TNF-α>400pg/ml、IL-1β>200pg/ml)と通常群に分けて、2群間の肺臓器障害発生との関連を検討した。その結果、亢進群では通常群に比し、術1病日の血清エラスターゼ値が有意に上昇し、また、術後5-7病日のA-aDO_2が有意に高いのが認められ、単球サイトカインの過剰産生が術直後における肺臓器障害に関与していることが示唆された。3.術前単球機能の術後肺炎発症への関与術後に単球サイトカイン産生能が上昇した群ではA-aDO_2が上昇し、ほとんどの例(6例中5例)で肺炎が発症した。そこで、肺炎発症群と非発症群に分け、術前単球機能を比較した。その結果、肺炎発症群では非発症群に比し、術前における単球の活性酸素産生能が有意に高く、また、TNF-α、IL-1β産生能も有意に亢進していることが示された。このような術前における単球機能の亢進の要因を検討すると、低栄養および慢性閉塞性肺疾患の存在が関与していることが判明した。本年度、手術侵襲によるサイトカイン・ネットワークの過剰反応と術後肺臓器障害の関連について、特に、食堂癌手術患者を対象に肺胞洗浄液を用い、肺胞内でのIL-8産生と好中球活性化への影響を術後肺臓器障害との関連を調べてきた。現在までの対象は食堂癌右開胸手術症例18例であり、測定項目は、肺胞洗浄液中IL-8値エラスターゼ値、細胞成分好中球数(比率)、活性酸素産生能、肺臓器障害の指標としてAaDO_2である。〈結果〉肺胞洗浄液中IL-8値の変動が2000pg/ml以上に達する高値群と2000pg/ml以内で推移する低値群に分け検討した。【.encircled1.】高値群では低値群に比し、肺胞洗浄液中エラスターゼ値が術後5日目において有意に高値であった。【.encircled2.】高値群では低値群に比し、肺胞洗浄液中好中球数が有意に多かった。【.encircled3.】高値群では低値群に比し、肺胞洗浄液中細胞成分の活性酸素産生能が高い傾向にあった。【.encircled4.】肺臓器障害の示標としたAaDO_2は、高値群で低値群に比し有意に開大していた。以上より食堂癌の手術侵襲により肺胞でのIL-8産生が、好中球道走をひきおこし、これによるエラスターゼ、活性酸素の産生亢進による肺臓器障害をひき起こすことが示唆された。手術侵襲によるサイトカイン・ネットワークの過剰反応と術後肺臓器障害の関連について、特に、食道癌手術患者を対象に肺胞洗浄液を用い、肺胞内でのIL-8産生と好中級活性化への影響と術後肺臓器傷害との関連を調べてきた。現在までの対象は、食道癌右開胸手術症例19例であり、測定項目は、肺胞洗浄液中IL-8値、エラスターゼ値、細胞成分好中球数(比率)、活性酵素産生能、肺臓器傷害の指標としてAaDO_2である。<結果>
KAKENHI-PROJECT-04454335
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04454335
手術侵襲の生体防御機構への影響と術後感染-サイトカイン・ネットワークを中心に-
肺胞洗浄液中IL-8値の変動が2,000pg/ml以上に達する高値群と2,000pg/ml以内で推移する低値群に分け検討した。(1)高値群では低値群に比し、肺胞洗浄液中エラスターゼ値が術後5日目において有意に高値であった。(2)高値群では低値群に比し、肺胞洗浄液中好中球数が有意に多かった。(3)高値群では低値群に比し、肺胞洗浄液中細胞成分の活性酸素産生能が高い傾向にあった。(4)肺臓器傷害の指標としたAaDO_2は、高値群で低値群に比し有意に開大していた。以上により、食道癌の手術侵襲により肺胞でのIL-8産生が、好中球遊走を引き起こし、これによるエラスターゼ、活性酸素の産生亢進による肺臓器傷害を引き起こすことが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-04454335
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共起語ネットワークを用いた記憶の神経回路モデルの構築と検証
複雑な意味を含む記憶がどのように脳内で表されるかは難しい問題である.本研究では大脳皮質に大規模言語コーパスに基づく単語共起ネットワークに類した神経構造があると仮定し,脳波計測実験および計算機シミュレーションを用いてその妥当性を検討した.結果では,同表現を仮定することで記憶関連脳波成分の抽出が可能で,また、海馬神経回路モデルでも文章列の記憶を説明できることを明らかにした。以上より,単語共起ネットワークは意味記憶の神経メカニズムの解明のための足がかりとなることを明らかにした.本研究は、脳内表現モデルとして大規模言語データベースに基づく単語共起ネットワークを導入し,長文読解時の記憶形成に関する連想記憶回路モデルの構築を行うことを目的とする。平成26年度は、共起語ネットワークの脳内表現への寄与を定量的に明らかにするため、8名の被験者から長文読解時(3000字×4編)の脳波及び視線の計測を行った。データ解析では、確率的言語モデルを用いて、被験者が読後に記述した長文の説明文と、読解した長文の各部分との相関を算出し、各部分を読解中の脳波パワーと比較した。結果では、眼球運動が起こる-4000ミリ秒の区間で、のちに想起され易い部分の読解中には、前頭部から頭頂部のシータ帯域(48Hz)の脳波パワーが増大すること、また、眼球運動とは独立に、頭皮上の広い部位において、アルファ帯域(913Hz)の脳波パワーが減少することが明らかになった。これらの結果は、これまでの単語や画像の記憶研究と同様に、長文読解においてもシータ帯域とアルファ帯域の脳波パワーは、のちの想起の予測できることを示す。しかし、クロスバリデーションを用いて、同計測データから各個人の被験者の想起を予測すると、8名中3名のみの場合でのみ有意な予測が得られたことから、被験者全体の傾向があるにせよ、記憶関連の脳波信号の強さには個人差があることがわかった。また、脳波シータと脳波アルファには個人の予測能力にばらつきがあり、個人毎の周波数特徴を用いると予測能力が向上することが期待される。以上より、単語共起ネットワークは脳波信号に含まれる記憶関連成分を検知するのに役立つことから、記憶形成に関する脳内表現モデルとしても有効に働くことが期待される。本研究は、脳内表現モデルとして大規模言語データベースに基づく単語共起ネットワークを導入し,長文読解時の記憶形成に関する連想記憶回路モデルの構築を行うことを目的とした。平成26年度は長文読解中の脳波計測実験を行い、共起語ネットワークおよび確率的言語モデルに基づく解析から、記憶関連の脳波成分がシータ帯域(48Hz)およびアルファ帯域(913Hz)に現れることを明らかにした。平成27年度は確率的言語モデルに基づく単語表現を海馬神経回路モデルの入力とした場合に、同表現が長文読解の記憶に寄与するかどうかを計算機シミュレーションにより調べた。モデルへの入力は、被験者実験で得られた眼球運動時系列を用いた。モデルではシータ位相歳差と呼ばれる時間圧縮メカニズムを導入し、約数百ミリ秒間隔で変化する単語情報を、シナプス可塑性を促すのに最適な時系列(数ミリ数十ミリの時間変化)に変換して、海馬連想記憶回路に記憶貯蔵した。結果として、長い文章列を記憶貯蔵するためには、逐次入力される単語特徴の他に、時間経緯を表す内因的な入力が必要であることがわかった。この内因的な入力を導入した場合には、数百ユニットからなる神経回路モデルにおいて、6分程度の単語列の記憶貯蔵および想起が可能になることを明らかにした。得られた神経回路では、時間経緯ユニットから単語特徴へ、また、頻度の高い単語特徴から低い単語特徴への結合が一方向的に強まることがわかった。これは、単語列のような複雑な構造を持った記憶から、秩序だった想起パターンを得るために必要な構造だと考えられる。以上の結果は、単語共起ネットワークが長文記憶の神経ダイナミクスを明らかにするための有効な神経表現モデルとなり得ることを示す。複雑な意味を含む記憶がどのように脳内で表されるかは難しい問題である.本研究では大脳皮質に大規模言語コーパスに基づく単語共起ネットワークに類した神経構造があると仮定し,脳波計測実験および計算機シミュレーションを用いてその妥当性を検討した.結果では,同表現を仮定することで記憶関連脳波成分の抽出が可能で,また、海馬神経回路モデルでも文章列の記憶を説明できることを明らかにした。以上より,単語共起ネットワークは意味記憶の神経メカニズムの解明のための足がかりとなることを明らかにした.本計画研究では、これまで報告されてきた単語や画像などの個別的な記憶のみならず、長文読解においても記憶関連の脳波信号を検出することが必須の要件だった。長文読解は、時間発展を伴い、かつ複雑な意味構造をもつため、関連脳波成分の検出は難しいと予期されたが、当初の計画どおり、平成26年度においてこれを解決した。長文読解時の記憶関連脳波の検出、および読解時の脳波信号に基づく想起予測に関する成果は、それぞれ国際学会で発表の予定で、学会での議論を受けてすぐに学術論文が投稿できるよう準備している。以上より、申請書に記載した研究の目的の達成度について、おおむね順調に進展していると考える。計算論的神経科学平成27年度は、申請書に記載したとおり、共起ネットワーク表現を介した入力パターンに対する連想記憶モデルを構築し、実験被験者の想起を予測する。
KAKENHI-PROJECT-26540069
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26540069
共起語ネットワークを用いた記憶の神経回路モデルの構築と検証
モデルは大脳皮質を表す入力層と、海馬を表す記憶層の2層より成る。被験者の読みの時系列に基づく入力層の活動を記憶層の連想記憶回路に貯蔵し、のち,モデルの想起パターンと被験者の想起を比較・解析する.脳波パワーの情報に加えて、読解中の記憶の時間発展、読み戻しなどの眼球運動のパターン、などが連想記憶回路に統合されることで、被験者の想起の予測能力の向上が期待でき、これにより共起ネットワークの脳内表現モデルとしての妥当性を示す。
KAKENHI-PROJECT-26540069
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26540069
人と機械が調和した交通社会実現のための運転支援技術の開発
一般道において今後主流となるレベル2の準自動運転技術では,従来,人が担ってきた車両速度制御や操舵制御を機械が担うようになる一方で,周辺監視の役割はこれまで通りドライバーが担う.本研究では,実走実験を通じ,機械が人のタスクを代替することが人の振る舞いにどのような影響を与えるのか明らかにすることを目指す.さらに,ウェアラブルコンピューティング技術を活用してドライバーの行動を常時計測・評価し,ドライバーが本来果たすべき周辺監視を怠るなど自動運転の負の影響の兆候が認められた際にはリアルタイムに情報介入を行うことで,人と機械が「もたれ合う」のではなく,人と機械が調和した安全運転支援を目指す.一般道において今後主流となるレベル2の準自動運転技術では,従来,人が担ってきた車両速度制御や操舵制御を機械が担うようになる一方で,周辺監視の役割はこれまで通りドライバーが担う.本研究では,実走実験を通じ,機械が人のタスクを代替することが人の振る舞いにどのような影響を与えるのか明らかにすることを目指す.さらに,ウェアラブルコンピューティング技術を活用してドライバーの行動を常時計測・評価し,ドライバーが本来果たすべき周辺監視を怠るなど自動運転の負の影響の兆候が認められた際にはリアルタイムに情報介入を行うことで,人と機械が「もたれ合う」のではなく,人と機械が調和した安全運転支援を目指す.
KAKENHI-PROJECT-19K12074
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K12074
不純物が結晶成長へ及ぼす効果-不純物が動くと何が変わるのか-
本研究課題では理論家と実験家で研究グループを形成し,結晶成長時の不純物の効果について研究している。本研究では理論的研究部分において少し進捗状況が遅れた。理論的研究については,初年度に開発した非SOS型ステップモデルを用いてシミュレーションを行い,不純物と吸着原子の両方の蒸発を取り入れた場合についてシミュレーションを行った。不純物と吸着原子の両方の蒸発を無視した場合と同様に,不純物と吸着原子の入射頻度を一定に保った条件では,低過飽和度条件でバンチングが起こることが分かった。また,低過飽和度付近においては,ステップの不純物の前進速度が非常に遅くなることがわかった。これは吸着原子の蒸発があることで起きることであることが分かった。低過飽和度条件では,バンチングが起きることで,結晶表面上の不純物量も高過飽和度時に比較して増加する。しかし,結晶に取り込まれる不純物の量は過飽和度の減少により一旦増加するものの,入射頻度が平衡入射頻度に近づくと再度減少し始める。これらは束のサイズ(何本のステップからなる束ができるか)を考慮すること説明できることが分かった。これらの結果については,Physical Review E誌に報告した。ただ,代表者がこれまで調べてきたバンチングとはことなり,ステップ束と単独ステップの衝突・離脱現象は起きない。ここまでは明らかにしたいと思ったか期間内では修了できなかったので,期間の延長を行い取り組むこととした。初年度にはまず,SOSモデルでステップの挙動における不純物の効果を調べ,その後に非SOSモデルを開発してシミュレーションをすることを考えていた。しかし,SOSモデルでの取り扱いが適切ではないのであきらめて,非SOSモデルのみで研究を進めている。この初年度の計画変更が全体としては遅れてしまった。本研究で構築したモデル,問題設定においては不純物により形成されるステップ束は強く束縛されたものであり,これまでに代表者が調べていたバンチングにおいてしばしば見られたステップ束と単独ステップの衝突や離脱はみられなかった。本研究においては,この理由までは明らかにしたいと考えており,期間を一年延長することとした。本研究で構築したモデル,問題設定においては不純物により形成されるステップ束は強く束縛されたものであり,これまでに代表者が調べていたバンチングにおいてしばしば見られたステップ束と単独ステップの衝突や離脱はみられなかった。このバンチングがモデルのどの要素により起きることなのかを明らかにすることは,実験との比較を行う上で非常に重要であると考える。本研究においては,この理由までは明らかにしたいと考えている。そこで本来は最終年度であるところ期間を一年延長し研究を継続することとした。現状では,今までのモデルで無視していた不純物の表面拡散が非常に重要ではないかと考えている。この点を考慮したモデルを構築してシミュレーションを行っている。本研究では,代表者の佐藤が理論およびシミュレーションによる研究を行い,分担者の鈴木が実験的な研究を行って,不純物による結晶成長過程への影響を調べる。今年度の実績は以下である。理論的研究については,申請時には過去に開発したプログラムの改良をして,表面拡散を経て原子がステップに取り込まれる場合のステップの挙動を調べる予定であった。しかし,過去に開発したプログラムでは,非常に過飽和度が低い場合に,不純物の効果が正確に記述できてないプログラムであることが判明した。そのため,計画を変更して,次年度行う予定であった,非SOS条件のステップを用いたプログラムの開発を行った。そのうえで,まずは不純物も入射原子もいったん結晶表面に吸着すると,その後は気相への再蒸発がなく場合で,不純物が不動である場合について調べた。不純物と原子の入射頻度の比を一定に保ったまま過飽和度を変化させると,過飽和度が小さいときに不純物によるステップ束の形成(バンチング)が起きることが明らかになった。この結果については,学習院大学計算機センター研究会,低温研での研究集会,および平成28年度の物理学会年会で報告した。現在は論文としてまとめている。また,本課題とは直接には関係がないが,間接的にする論文として1件を発表した。実験的には,ニワトリ卵白リゾチーム(HEWL)を用いて,溶液からの結晶成長時の不純物効果を実験的に調べた。特に,リゾチーム存在かでの結晶化させたグルコースイソメラーゼの結晶面上でのステップの前進速度について測定して,前進速度の変化が概形の変化を及ぼすことを明らかにした。この結果は,結晶成長国際会議(ICCGE18)および,学習院大学計算機センター研究会で発表した。本研究は理論的アプローチと実験的アプローチからなっている。実験的な研究についてはほぼ計画通りに進んでいるが,理論的な部分ではやや遅れている。そのため,全体の進捗状況はやや遅れているとした。遅れの原因は,計画段階で考えていたSOS模型の拡張では低過飽和度での不純物効果を十分に正確に調べることができないことが,プログラムの開発過程で分かったためである。そこで,次年度開発予定の非SOS模型についての開発を前倒しで行った。そのため,本年度は結晶表面上の不純物が(i)結晶表面で動かない場合,(ii)結晶表面を拡散する場合,(iii)環境相への離脱をする場合の3つの場合について調べる予定であったが,(i)の場合しか調べることができなかった。しかし,新たな知見(現在非公開)も得られたため,この遅れは本研究における致命的な遅れでない。
KAKENHI-PROJECT-16K05470
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K05470
不純物が結晶成長へ及ぼす効果-不純物が動くと何が変わるのか-
本研究課題では理論家と実験家で研究グループを形成し,結晶成長時の不純物の効果について研究している。今年度は実験グループでは,主として分担者の鈴木が行っている宇宙実験における試料の予備的な作成に関して本課題の予算を活用した。実験に関しては,予定通りに進んでいる。理論的研究については,昨年度開発した非SOS型ステップモデルを用いて,シミュレーションを行った。不純物と吸着原子の両方の蒸発を無視し,なおかつ,2つの入射頻度を一定に保つシミュレーションを行った。入射頻度が低いときにステップのバンチングが起きやすいことが分かった。また,バンチングが起きるとともに,結晶表面の不純物密度も上昇することが分かった。このバンチングの起源は,従来言われているステップのピニングの起源と本質的には同じである。考えている状況では不純物の密度がステップ前方で一定であるのに対して,吸着原子の密度が減ることによる起きることが明らかになった。これはステップの揺らぎの入射頻度依存性からも明らかになった。これらの結果についてはJ. Phys. Soc. Jpn誌に発表した。また,不純物と吸着原子の両方の蒸発を取り入れた場合についてもシミュレーションを行った。この結果については,現在論文にまとめて投稿中である。詳細については,投稿中のため割愛する。本研究自体は,初年度の計画が遅れているために全体としては遅れ気味であるが,今年度単年度でみると順調に進んでいる。初年度にはまず,SOSモデルでステップの挙動における不純物の効果を調べ,その後に非SOSモデルを開発してシミュレーションをすることを考えていた。しかし,SOSモデルでの取り扱いが適切ではないのであきらめて,非SOSモデルのみで研究を進めている。この初年度の計画変更が全体としては遅れを出している。しかし,本年度は,不純物と吸着原子の両方が蒸発しない場合と,不純物のみが蒸発する場合,および不純物と吸着原子の両方が蒸発する場合について調べることができたので,本年度だけに限定すると,計画通りに進んだ。本研究課題では理論家と実験家で研究グループを形成し,結晶成長時の不純物の効果について研究している。本研究では理論的研究部分において少し進捗状況が遅れた。理論的研究については,初年度に開発した非SOS型ステップモデルを用いてシミュレーションを行い,不純物と吸着原子の両方の蒸発を取り入れた場合についてシミュレーションを行った。不純物と吸着原子の両方の蒸発を無視した場合と同様に,不純物と吸着原子の入射頻度を一定に保った条件では,低過飽和度条件でバンチングが起こることが分かった。また,低過飽和度付近においては,ステップの不純物の前進速度が非常に遅くなることがわかった。これは吸着原子の蒸発があることで起きることであることが分かった。低過飽和度条件では,バンチングが起きることで,結晶表面上の不純物量も高過飽和度時に比較して増加する。しかし,結晶に取り込まれる不純物の量は過飽和度の減少により一旦増加するものの,入射頻度が平衡入射頻度に近づくと再度減少し始める。
KAKENHI-PROJECT-16K05470
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16・17世紀の浄土教絵画とそれに関わる説話・物語に関する研究
本研究では、室町時代から江戸時代前期に制作された縁起絵巻・掛幅絵の制作背景について検討し、これらの絵画を求めた民衆の生活と信仰の形態を明らかにすることを目的とする。本研究期間において調査し、論考をまとめた作品は「熊野の本地絵巻」(聞名寺蔵)、「鞆の浦観音堂縁起絵巻」、「玉ものまへ絵巻」(堀家蔵)、「花咲爺絵巻」(文教大学蔵)などの物語絵巻のほか、「異相本智光曼荼羅」(檀王法林寺蔵)、「当麻寺供養図」(西寿寺蔵)、「矢田地蔵縁起並地獄絵」(法薬寺蔵)などの掛幅絵がある。掛幅絵については、これまで調査を続けてきた浄土宗僧袋中(15521639)関連寺院に所蔵される絵画資料を中心に研究を進めた。本研究は、室町時代から江戸時代前期に制作された縁起絵巻・掛幅絵の制作背景について検討し、これらの絵画を求めた民衆の生活と信仰の実態を明らかにすることを目的とする。特に、これまで行ってきた檀王法林寺及び西寿寺所蔵の掛幅絵の調査・研究を継続しつつ、掛幅絵の背面にある結縁者名の整理・分類を進め、制作背景及びそれに付随して語り伝えられた説話や物語について検討し、民衆信仰の実態解明を目指す。檀王法林寺及び西寿寺は、室町時代から江戸時代前期に活躍した浄土宗僧袋中ゆかりの寺として知られている。本研究では、袋中に帰依した町衆への関心から、袋中が晩年を過ごした京都・奈良の寺院を中心に調査範囲を広げていく。今年度は、檀王法林寺蔵「涅槃図」及び旧軸木内蔵品の調査及び西寿寺蔵「二河白道図」の調査を中心に行った。前者の詳細は、前年度の「異相智光曼荼羅」の調査結果と併せて、近日掲載予定である(『アジア遊学』2014年)。なお「異相智光曼荼羅」については、今年度「洛中における袋中の活動と民衆」(『仏教文学』38号)の題目で掲載された。今年度発表に至らなかった西寿寺蔵「二河白道図」については、現在発表準備を進めている。「二河白道図」は浄土教絵画がのなかでも作例が比較的少ない。西寿寺所蔵のものは、今回新しい資料として紹介するものであり、他の二河白道図との比較を含め、その制作経緯を明らかにすることができる興味深い例として注目できる。本研究は、室町時代から江戸時代前期に制作された縁起絵巻・掛幅絵の制作背景について検討し、これらの絵画を求めた民衆の生活と信仰の形態を明らかにすることを目的とする。特に、これまで行ってきた檀王法林寺及び西寿寺所蔵の掛幅絵の調査・研究を継続しつつ、掛幅絵の背面にある結縁者名の整理と分類を進め、制作背景及びそれに付随して語り伝えられた説話や物語について検討し、民衆信仰の実態解明を目指す。今年度は、西寿寺所蔵「当麻寺供養図」の軸木から新たに確認できた内蔵品を調べ、その結果をまとめた論考を発表した(『アジア遊学』174号)。軸木からは袋中自筆の名号50枚と願文が確認できた。このほか檀王法林寺所蔵「八相涅槃図」の軸木からも内蔵品が確認されており、これらの内蔵品の発見により、檀信徒によりこれらの絵画が寺に奉納される以前、既に制作段階で袋中の関与があったことが明らかとなった。袋中に帰依する信仰集団がどのように形成されていったのか、またどのようにこれらの絵画が制作され、奉納されたのか、内蔵品から徐々に浮かびあがりつつある。このほか今年度発表したものとして、新出のお伽草子絵巻として堀家所蔵『玉ものまへ』全翻刻がある(『人文学部紀要』35号)。この絵巻は、江戸時代中期制作と推定できる絵巻である。本文と挿絵の検討により、現在所在不明の矢野氏旧蔵絵巻と極めて一致度が高く、筆跡も同筆と判断できる絵巻であることが判明した。堀家所蔵絵巻の出現によって、複数の『玉ものまへ』絵巻が同様に書写されていたことが具体的に明らかとなった。堀家所蔵絵巻は、矢野氏旧蔵絵巻の詳細を推察する手掛かりとなる貴重な絵巻であると位置づけられる。本研究は、室町時代から江戸時代前期に制作された縁起絵巻・掛幅絵の制作背景について検討し、これらの絵画を求めた民衆の生活と信仰の形態を明らかにすることを目的とする。特に、これまで行ってきた檀王法林寺及び西寿寺所蔵の掛幅絵の調査・研究を継続しつつ、掛幅絵の背面にある結縁者名の整理と分類を進め、制作背景及びそれに付随して語り伝えられた説話や物語について検討し、民衆信仰の実態解明を目指す。今年度は、新たに確認できた奈良県生駒市法薬寺に伝わる『矢田地蔵縁起並地獄絵』について調べ、その結果をまとめた論考を発表した(『文教大学国文』45号)。毎年、法薬寺の地蔵盆で公開されるこの掛幅絵は、従来、「欲参り」絵として知られていた金剛山寺所蔵の『和州矢田山地蔵菩薩毎月日記』(一幅)に類似した図様をもつ一本として貴重な伝本である。「欲参り」とは、毎月特定の日に金剛山寺への参詣を繰り返すことにより、生前の罪が消え、死後、地獄の苦しみから救われるという利益に基づく風習をいう。
KAKENHI-PROJECT-25770098
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16・17世紀の浄土教絵画とそれに関わる説話・物語に関する研究
このような「欲参り」の利益を語る際に効果的な役割を持っていたと考えられる「欲参り」絵であるが、現存するものは破損している点が多い。それに対して、法薬寺の一幅は、保存状態が欲、来迎の様などが細やかにかつ鮮明に描かれている。このほか今年度の調査として、『江戸寺院縁起絵巻』など新たな寺社縁起絵巻の調査を行ったほか、檀王法林寺の所蔵資料を含む、主夜神関連の資料についても調べを進めている。これらの調査結果についても、現在、論考をまとめているところである。今年度は、これまで取り組んできた檀王法林寺および袋中関連の資料に留まらず、広く様々な縁起絵巻や絵画資料の調査に取り組むことができた。当初の計画に加え、広がりを持たせながら、概ね順調に進展していると言える。本研究は、室町時代から江戸時代前期に制作された縁起絵巻・掛幅絵の制作背景について検討し、これらの絵画を求めた民衆の生活と信仰の形態を明らかにすることを目的とする。特に、これまで行ってきた檀王法林寺および西寿寺所蔵の掛幅絵の調査・研究を継続しつつ、掛幅絵の背面にある結縁者名の整理と分類を進め、制作背景及びそれに付随して語り伝えられた説話や物語について検討し、民衆信仰の実態解明を目指す。今年度は、産前産後および育児休職中であったため、主な研究活動、特に遠方での調査・研究を遂行することは不可能だった。しかしながら、前年度までに調査を済ませていた2点について、拙文をまとめ、研究成果を報告することができた。1点目は、文教大学文学部日本語日本文学科所蔵『花咲爺絵巻』についてである。当絵巻は、現在唯一確認されている、詞書を持つ『花咲爺』の絵巻であり、その価値と位置づけについて『文教大学国文』46号にまとめた。2点目は、すみだ郷土文化資料館所蔵『江戸寺院縁起絵巻』についてである。当絵巻は、『江戸名所記』を抽出し絵巻化している珍しい作例であり、拙文においてその内容を紹介した。今年度の主な成果は以上2点である。遠方での調査が難しかったため、主な調査対象とする寺院での積極的な調査・研究は不可能であったが、檀王法林寺および西寿寺所蔵の資料を含む調査・研究ついては、来年度以降進め、成文化していく予定である。本年度は、産前産後および育児休職年度であったため、主な研究活動を遂行することは不可能だったが、本研究課題については、研究期間の停止・延長手続きにより、平成29年度に繰り越して進めていく。本研究は、室町時代から江戸時代前期に制作された縁起絵巻・掛幅絵の制作背景について検討し、これらの絵画を求めた民衆の生活と信仰の形態を明らかにすることを目的とする。特に、これまで行ってきた檀王法林寺および西寿寺所蔵の掛幅絵の調査・研究を継続しつつ、掛幅絵の背面にある結縁者名の整理と分類を進め、制作背景及びそれに付随して語り伝えられた説話や物語について検討し、民衆信仰の実態解明を目指す。今年度の資料調査については、新たに鳥取県の個人所蔵の「二十五菩薩来迎図」が浄土宗僧袋中(15521639)由来のものであることがその裏書からわかり、現在調べをすすめている。このほか、和歌山県橋本市得生寺や奈良県宇陀市青蓮寺など、中将姫説話・伝承に関わる寺院に所蔵されている絵巻および掛幅絵の調査を行った。今後も適宜調査を継続しつつ、研究成果をまとめていく。今年度は、資料調査のほか、前年度までに調査を済ませていた資料ついて、『説話・伝承学』26号に「幽霊からもらった杓子と駒の角ー逆立ち幽霊譚の変奏ー」という題目でまとめることができた。論考で紹介した資料(個人蔵)は、寛文元年(1661)刊『因果物語』上ー7「下女死本妻ヲ取殺事付主人ノ子取殺事」で知られる逆立ち幽霊譚を想起させるものである。拙文では、この話が家の伝説として語り継がれてきた点に注目し、このような怪異譚が語れる場について検討した。現段階で調査中の諸資料についても、来年度以降、論考にまとめていく。
KAKENHI-PROJECT-25770098
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有機金属気相選択成長法による半導体ナノワイヤエレクトロニクスの創成
電子線描画法による微細パターン形成技術と有機金属気相成長法とを組み合わせて、化合物半導体ナノワイヤの選択成長技術を確立した。成長したガリウムヒ素、インジウムリン等の半導体ナノワイヤは、その結晶形態を電子顕微鏡で解析、光学特性をフォトルミネッセンスで解明すると共に、トランジスタ構造を作製して電気伝導特性の解析と評価、異種接合やp-n接合を作製してレーザ、発光ダイオード、太陽電池素子としての動作原理を確認する等、次世代ナノエレクトロニクスへの応用展開の可能性を見出した。有機金属気相選択成長法を用いて半導体ナノワイヤの形成技術を確立し、その成長機構、結晶構造の解明を行いつつ、ナノワイヤの電子物性・光物性・磁性に関する基礎特性を明らかにしナノワイヤを用いたトランジスタや光素子を試作することでナノワイヤのエレクトロニクス応用への可能性を探索する。具体的には、以下4つの分担研究課題を設けそれぞれの目標を達成する。(1)結晶成長・結晶工学ナノワイヤ成長機構、結晶構造相転移の解明(2)光物性・光デバイス光学物性把握と光素子への応用展開(3)電子物性・電子デバイス1次元的電気伝導の評価、トランジスタ試作(4)新材料系ナノワイヤ強磁性材料によるヘテロ接合ナノ構造形成電子線描画法による微細パターン形成技術と有機金属気相成長法とを組み合わせて、化合物半導体ナノワイヤの選択成長技術を確立した。成長したガリウムヒ素、インジウムリン等の半導体ナノワイヤは、その結晶形態を電子顕微鏡で解析、光学特性をフォトルミネッセンスで解明すると共に、トランジスタ構造を作製して電気伝導特性の解析と評価、異種接合やp-n接合を作製してレーザ、発光ダイオード、太陽電池素子としての動作原理を確認する等、次世代ナノエレクトロニクスへの応用展開の可能性を見出した。本研究では、有機金属気相選択成長を用いて半導体ナノワイヤの形成技術を確立し、半導体ナノワイヤの電子物性・光物性等の基礎特性を明らかにすると共に、電子デバイス・光デバイス応用の可能性を探ることで、「半導体ナノワイヤエレクトロニクス」の創成を目指している。本年度は次の4項目に対し、それぞれ具体的な研究成果が得られた。(1)結晶工学・結晶成長:GaAsナノワイヤの成長機構を検討し、結晶成長中に導入されるツインが、(111)の成長方向に対して6角柱構造が得られている可能性を見いだした。また、InAsワイヤーではこれまでに報告のない4H構造が得られていることを透過型電子顕微鏡観察より見いだした。さらに異種基板上にもナノワイヤの成長する条件を見いだした。(2)光物性・光デバイス:単一のヘテロ構造ナノワイヤの光学的物性を解明するため顕微フォトルミネッセンス測定技術を立ち上げてGaAs/InGaAsヘテロ構造からの発光特性を解明した。またInP/InAsマルチコアーシェルナノワイヤでは、極低温における時間分解フォトルミネッセンス測定より、均一な膜厚を持つInAsチューブ構造が出来ていることを確認した。(3)電子物性・電子デバイス:1次元電気伝導特性を解明するため、1本のナノワイヤにソース、ドレイン及びゲートの3端子素子の作製技術を確立し、InGaAsナノワイヤに対しては、バックゲート及びトップゲートによりFET動作を確認し、チャンネル内の電子の移動度を見積もった。(4)新材料系ナノワイヤ:GaAs上に強磁性材料であるMnAsの成長を試み、層状成長の生じる条件を明らかにした。また同時に選択成長も試み、GaAs基板上の6角形開口部にのみMnAsが成長する条件を見いだした。本研究では、有機金属気相選択成長を用いて半導体ナノワイヤの形成技術を確立し、その電子物性・光物性等の基礎特性を明らかにすると共に、電子デバイス・光デバイス応用への可能性を探ることで「半導体ナノワイヤエレクトロニクス」の創成を目指す。本年度は下記4項目に対し、それぞれ具体的な研究成果が得られた。1.結晶工学・結晶成長:電子顕微鏡観察によりGaAsナノワイヤの成長機構を詳細に解析した。その結果、直径が細くなるに従い回転双晶の密度が増大することが判明した。更に、Si基板上にもInAsナノワイヤが成長する条件を見出し、格子不整合系におけるナノワイヤ構造の設計と作製工程の許容範囲を拡大できた。2.光物性・光デバイス:フォトルミネッセンスの測定からInP,GaAs各ナノワイヤの内部を光りが伝搬する導波路効果、およびナノワイヤ両端面からの光出射におけるファブリーペロー干渉効果を確認し、光素子作製に向けた光学特性を把握できた。InPナノワイヤではウルツ鉱型の結晶構造に起因すると思われる発光スペクトルピークの長波長シフトも新たに見出された。3.電子物性・電子デバイス:1次元電気伝導特性を解析するため、InAsおよびInGaAs各1本のナノワイヤにソース、ドレイン及びゲートから成る平面型3端子素子作製技術を確立し、トランジスタ特性の測定と評価を行った。また、縦型素子作製のための埋め込み基本技術も確立した。4.新材料系ナノワイヤ:強磁性材料であるMnAsと非磁性材料であるGaAsとのヘテロ接合構造の成長を試み、絶縁膜パタン開口部内のGaAs面上にのみ選択成長する条件を見出した。成長したMnAsを含むナノ構造の磁気特性を磁気力顕微鏡により計測・評価する技術を確立した。有機金属気相選択成長を用いた半導体ナノワイヤの成長条件の探索、結晶構造解析、形成したナノワイヤの電気特性・光学特性・磁性に関する様々な測定評価と解析をおこなった。具体的な研究成果は以下の通りである。
KAKENHI-PROJECT-18002003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18002003
有機金属気相選択成長法による半導体ナノワイヤエレクトロニクスの創成
1.結晶工学・結晶成長: GaAs基板表面の原子配列構造とGaAs結晶成長部に発生する(111)結晶軸回りの回転双晶との関連性を解析し、直径が小さい結晶成長部ほど回転双晶の影響を強く受け四面体形からナノワイヤへと形状が変化しやすいことを明らかにした。2.光物性・光デバイス: GaAs/GaAsPコアシェル型ヘテロ接合ナノワイヤ1本を用いたフォトルミネッセンスの測定から、ナノワイヤへの入射励起光強度を増大するとレーザ発光することが確認できた。3.電子物性・電子デバイス:基板表面上に垂直に成長したInAsナノワイヤにソース、ドレイン及びゲートから成る縦型3端子素子作製工程の条件確立に着手した。特に、ナノワイヤ表面への保護膜材料探索と保護膜堆積方法を検討し、ハフニウム・アルミニウム酸化物(HfA10)を原子層の厚さで制御して堆積することで保護膜の絶縁性が大幅に改善できた。4.新材料系ナノワイヤ:強磁性材料であるMnAsナノ結晶を非磁性材料であるGaAs上へ選択成長する工程の条件探索において、AlGaAsをMnAsとGaAsの間に挟む三層構成とすることで、GaAsとMnAs間の強い原子移動反応を抑制できることを見出した。有機金属気相選択成長法を用いた半導体ナノワイヤ成長条件の探索と確立、結晶構造解析、形成したナノワイヤの電気特性・光学特性・磁性に関する様々な測定評価と解析を行った。具体的な研究成果は以下の通りである。1.結晶成長・結晶工学:(1)GaAsナノワイヤの透過電子顕微鏡分析から、成長初期には閃亜鉛鉱型結晶構造が現れ、成長が進行すると回転双晶の発生回数が増大した。回転双晶発生は温度、ヒ素圧に依存することがわかった。(2)GaAs,AlGaAs各ナノワイヤへのSiおよびZnドーピングを検討した。n型およびp型で1x10^<18>cm^<-3>付近から5x10^<18>cm^<-3>のレベルでの制御条件が確立できた。(3)GaAs/AlGaAsヘテロ接合ナノワイヤ形成過程でGaAs量子井戸構造をAlGaAs量子障壁で縦および横方向から挟み込む埋め込み成長技術を確立した。2.光物性・光デバイス:(1)p-n接合を有するGaAs/AlGaAsコアシェル型ナノワイヤ素子を作製し電流注入による発光を確認した。(2)InAsP量子ドットをInPで埋め込む構造を形成し、そのフォトルミネッセンス測定から、この構造が単一光子素子用光源として使用可能であることがわかった。3.電子物性・電子デバイス:(1)InAsナノワイヤの表面保護膜としてHfA10膜を用い、Hf:A1=4:1の混合比でInAs表面に成膜することでFET特性が向上した。(2)n型Si(111)基板に垂直に成長させたInAsナノワイヤにソース、ゲートおよびドレインを形成し3端子電極型FETを作製した。FETのソース抵抗低減には、InAs自体にソース電極を形成する構造が有効とわかった。(3)単電子素子向け縦・横ヘテロ接合ナノワイヤとして、GaAs/AlGaAs
KAKENHI-PROJECT-18002003
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待ち行列ネットワークの近似理論の展開と応用
(A)拡散過程筋似理論の展開と応用(1)再生過程に関する確率積分が伊藤積分に収束する条件を明らかにして、その結果を、到着や終了過程が再生過程であるような非マルコフモデルである、休暇をとる待ち行列システムの拡散過程近似へ応用し、近似過程が粘性をもつ反射壁ブラウン運動である事を示し、この事をネットワーク型待ち行列システムの費用評価の近似に応用した。(2)定数ドリフトを持つベッセル過程およびレビー過程の占有時間問題について、Papanikorau、山田俊雄等によって得られた従来の結果を拡張し、より大きなクラスに属する占有関数を扱うことを可能にした。またこれにより、近似過程として、セミマーチンゲールでない、ベッセル過程やレビー過程の局所時間の分数微分や積分がえられた。これらの結果を応用することにより、待ち行列システムにおいてコストや信頼性が加法的汎関数で表される場合にその近似値を得る事が可能になりシステムの性能評価のための一手法を得た。(B)大偏差理論の待ち行列システムへの応用(1)Ehrenfest型マルコフモデルについて初通過時間の分布の漸斤解析や特異摂動解析を行い、待ち行列システムにおいて一定の待ち行列長になるまでの時間分布の解析をおこなった。(2)Duffing型のLorenz方程式の確率的摂動に関する解析を行い、さらにブラウン運動のかわりにフラクタルなブラウン運動を使った方程式の解の解析を行い、これを待ち行列システムへの到着過程が長期にわたる依存関係を有する場合(例えばインターネットシステム等)のシステムを解析する手法の開発に応用した。(C)多層型待ち行列システムの安定性(1)待ち行列網によるSMP型システムの性能予測手法を開発し、実データに適用してその実用性を確かめることができた。(2)2層型待ち行列モデルについて、極限分布の近似値をえるための手法(近似等価流量法)を開発し、その実用性を実データを使う事により確かめた。(A)拡散過程筋似理論の展開と応用(1)再生過程に関する確率積分が伊藤積分に収束する条件を明らかにして、その結果を、到着や終了過程が再生過程であるような非マルコフモデルである、休暇をとる待ち行列システムの拡散過程近似へ応用し、近似過程が粘性をもつ反射壁ブラウン運動である事を示し、この事をネットワーク型待ち行列システムの費用評価の近似に応用した。(2)定数ドリフトを持つベッセル過程およびレビー過程の占有時間問題について、Papanikorau、山田俊雄等によって得られた従来の結果を拡張し、より大きなクラスに属する占有関数を扱うことを可能にした。またこれにより、近似過程として、セミマーチンゲールでない、ベッセル過程やレビー過程の局所時間の分数微分や積分がえられた。これらの結果を応用することにより、待ち行列システムにおいてコストや信頼性が加法的汎関数で表される場合にその近似値を得る事が可能になりシステムの性能評価のための一手法を得た。(B)大偏差理論の待ち行列システムへの応用(1)Ehrenfest型マルコフモデルについて初通過時間の分布の漸斤解析や特異摂動解析を行い、待ち行列システムにおいて一定の待ち行列長になるまでの時間分布の解析をおこなった。(2)Duffing型のLorenz方程式の確率的摂動に関する解析を行い、さらにブラウン運動のかわりにフラクタルなブラウン運動を使った方程式の解の解析を行い、これを待ち行列システムへの到着過程が長期にわたる依存関係を有する場合(例えばインターネットシステム等)のシステムを解析する手法の開発に応用した。(C)多層型待ち行列システムの安定性(1)待ち行列網によるSMP型システムの性能予測手法を開発し、実データに適用してその実用性を確かめることができた。(2)2層型待ち行列モデルについて、極限分布の近似値をえるための手法(近似等価流量法)を開発し、その実用性を実データを使う事により確かめた。(*)研究実績1.再生過程に基づく確率積分の収束理論を研究し、その成果を待ち行列システムの行列長に基づく汎関数の漸近的行動の解析に応用した。2.確率過程の占有時間問題について、その極限過程がベッセル過程の局所時間の分数微分となる場合についていくつかの成果を得ることができた。また、安定Levy過程にたいしても同様な結果を得て、これらの成果は、複合Poisson過程や待ち行列過程、出生死滅過程の占有時間問題の近似過程を得ることに応用された。(3)Ehrenfest型マルコフ過程について、初通過時間の分布の漸近解析や特異摂動解析を行った。(4)N-粒子系の線形確率微分方程式における特異摂動に関する研究。(5)待ち行列網モデルによるSMP型システムの性能予測手法を開発し、実データに適用してその実用性を確かめることが出来た。(6)2層型待ち行列網モデルについて、極限分布の近似値を得るための手法(近似等価流量法)を開発して、実データによる解析をおこなった。(I)研究実績(1)ベッセル過程の占有時間問題に関する研究と応用-常数をドリフトとして持つベッセル過程の占有時間の極限行動に関して、Papanikorauや山田俊雄等によって、ブラウン運動にたいして得られた結果を拡張し、占有関数の正則変動性に応じて極限過程が、ベッセル過程の、局所時間の分数積分、局所時間そのもの、分数微分、さらに、局所時間によって時間変更されたブラウン運動などになる条件を明らかにし適用される占有時間関数のクラスを拡張した。また、これらの結果をネットワークタイプの待ち行列システムの占有時間問題に応用して、システム性能評価の一つの手法を得た。
KAKENHI-PROJECT-11640138
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待ち行列ネットワークの近似理論の展開と応用
(2)Duffing型のロレンツ方程式の確率的摂動に関する解析を行い、また、フラクタルなブラウン運動の理論を用いて、待ち行列システムへの到着過程の依存関係を解析する手法を開発した。(3)2層型待ち行列網のマルコフモデルによる解析を行い、システム性能評価に応用される計算手法を開発。
KAKENHI-PROJECT-11640138
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アラビノガラクタンプロテイン(AGP)の食品機能性の解析
アラビノガラクタンプロテイン(AGP)は蔬菜類の細胞表層に多く存在する糖蛋白質であり、植物の成長、耐寒性、耐乾燥性、さらに花粉の接着にも関与していることが報告されている。一方、AGPは水溶性食物繊維に分類され、植物生理学的のみならず食品栄養学的にも注目されている。1.キャベツより単離したAGPを抗原として、常法に従い17個のモノクローナル抗体を取得した。これらはすべてAGPの糖部分を認識しているものと思われた。これらの抗体を用いたウエスタンブロッティングにより、キャベツ以外の蔬菜にもAGPは普遍的に存在していることが明らかとなった。2.17個のモノクローナル抗体のうち3つは通常では得られにくいIgEであった。そこでIgE産生に及ぼすAGPの影響を解析する目的で、モノクローナル抗体を用いたラットIgEの微量定量法を確立した。現在本法を用いてAGPの免疫原性、アジュバント活性を解析中である。3.ホウ素は植物の必須元素であり、ホウ酸の錯体として細胞壁に局在していることが報告されている。我々はAGPの調製にホウ酸緩衝液が有効であることにヒントを得て、AGPがホウ酸と錯体を形成しやすいことを明らかにし、ホウ素の貯蔵体としてのAGPの機能を示唆した。アラビノガラクタンプロテイン(AGP)は蔬菜類の細胞表層に多く存在する糖蛋白質であり、植物の成長、耐寒性、耐乾燥性、さらに花粉の接着にも関与していることが報告されている。一方、AGPは水溶性食物繊維に分類され、植物生理学的のみならず食品栄養学的にも注目されている。1.キャベツより単離したAGPを抗原として、常法に従い17個のモノクローナル抗体を取得した。これらはすべてAGPの糖部分を認識しているものと思われた。これらの抗体を用いたウエスタンブロッティングにより、キャベツ以外の蔬菜にもAGPは普遍的に存在していることが明らかとなった。2.17個のモノクローナル抗体のうち3つは通常では得られにくいIgEであった。そこでIgE産生に及ぼすAGPの影響を解析する目的で、モノクローナル抗体を用いたラットIgEの微量定量法を確立した。現在本法を用いてAGPの免疫原性、アジュバント活性を解析中である。3.ホウ素は植物の必須元素であり、ホウ酸の錯体として細胞壁に局在していることが報告されている。我々はAGPの調製にホウ酸緩衝液が有効であることにヒントを得て、AGPがホウ酸と錯体を形成しやすいことを明らかにし、ホウ素の貯蔵体としてのAGPの機能を示唆した。
KAKENHI-PROJECT-06660169
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43GHzVLBIネットの構築とVERAのためのVLBI電波源探査プロジェクト
VERAは高精度位置計測による銀河系の構造と力学の解明に重点を置く新構想のVLBI観測網である。2ビームアンテナシステムであるので、銀河系内のメーザー天体と系外の参照電波源を同時に観測して位置計測の大敵である大気の揺らぎの影響を除去できる。しかし、VERAが銀河系の全メーザー源の年周視差を求めるためには10μas台の高精度絶対位置計測が必要となる。この精度を達成するには目標天体と参照電波源がお互いに2°以内に存在しなければならない。目標天体の水メーザー源、SiOメーザー源は銀河面内に集中しており、銀河面内に数多くの参照VLBI電波源を見つけなければならない。しかしながらこれまで銀河面の43GHzVLBI電波源のサーベイは皆無である。我々は、この参照電波源探査のために、郵政省通信総合研究所鹿島宇宙センター内にある43mアンテナに冷却43GHz受信機を搭載し、銀河面内の低周波の電波源カタログに掲載されたソースをNRO45m鏡、VERAとVLBI観測し、VERAで観測可能なVLBI電波源のデータベース作りを目指す。このため大学院生たちと小型の冷却デュワーの設計、製作を行いHEMT受信機の冷却に成功し、更に、本研究費で購入した局部発信機を含む回路作りを行い34m鏡に搭載した。43GHz受信機の性能は大気込みで300Kとなり、初期の性能目標は達成された。しかし、天体追尾中にアンテナをEL方向に倒していくと強度が著しく減少していく現象が起こった。これまでの22GHz以下の周波数帯では無視してきたが、43GHzになると34m鏡のビームが細くなるため、副鏡の垂れによるポインチングずれがもろに効いてくる為である。この問題は昔から指摘されており4年前メーカーが副鏡の駆動機構に取り掛かったが成功せず、放置されてきた。当研究室のM2の森崎君がこの難問に果敢に取り組み、通総研のスタッフと協力して、完全ではないがアクチブな副鏡の制御に成功した。昨年3月からポインチング観測に取り掛かり、6月からはSiOメーザー源サーベイ観測に取り掛かっている。VLBI試験観測については昨年VERA鹿児島局と行ったが成功せず、再度昨年12月に再観測を行い、見事にフリンジが検出された。しかし、VERA鹿児島局が非常に弱く受かっており、現在調査中で、この問題が解決したらVERA局と鹿島局とで電波源サーベイを進めていく予定である。VERAの43GHz受信機感度は非常に悪く、上記の電波源サーベイのためには鹿島局の存在が極めて重要になっており、この科研費で進めた計画がVERAプロジェクト成功への重要なキーになってきていることを指摘したい。VERAは高精度位置計測による銀河系の構造と力学の解明に重点を置く新構想のVLBI観測網である。2ビームアンテナシステムであるので、銀河系内のメーザー天体と系外の参照電波源を同時に観測して位置計測の大敵である大気の揺らぎの影響を除去できる。しかし、VERAが銀河系の全メーザー源の年周視差を求めるためには10μas台の高精度絶対位置計測が必要となる。この精度を達成するには目標天体と参照電波源がお互いに2°以内に存在しなければならない。目標天体の水メーザー源、SiOメーザー源は銀河面内に集中しており、銀河面内に数多くの参照VLBI電波源を見つけなければならない。しかしながらこれまで銀河面の43GHzVLBI電波源のサーベイは皆無である。我々は、この参照電波源探査のために、郵政省通信総合研究所鹿島宇宙センター内にある43mアンテナに冷却43GHz受信機を搭載し、銀河面内の低周波の電波源カタログに掲載されたソースをNRO45m鏡、VERAとVLBI観測し、VERAで観測可能なVLBI電波源のデータベース作りを目指す。このため大学院生たちと小型の冷却デュワーの設計、製作を行いHEMT受信機の冷却に成功し、更に、本研究費で購入した局部発信機を含む回路作りを行い34m鏡に搭載した。43GHz受信機の性能は大気込みで300Kとなり、初期の性能目標は達成された。しかし、天体追尾中にアンテナをEL方向に倒していくと強度が著しく減少していく現象が起こった。これまでの22GHz以下の周波数帯では無視してきたが、43GHzになると34m鏡のビームが細くなるため、副鏡の垂れによるポインチングずれがもろに効いてくる為である。この問題は昔から指摘されており4年前メーカーが副鏡の駆動機構に取り掛かったが成功せず、放置されてきた。当研究室のM2の森崎君がこの難問に果敢に取り組み、通総研のスタッフと協力して、完全ではないがアクチブな副鏡の制御に成功した。昨年3月からポインチング観測に取り掛かり、6月からはSiOメーザー源サーベイ観測に取り掛かっている。VLBI試験観測については昨年VERA鹿児島局と行ったが成功せず、再度昨年12月に再観測を行い、見事にフリンジが検出された。しかし、VERA鹿児島局が非常に弱く受かっており、現在調査中で、この問題が解決したらVERA局と鹿島局とで電波源サーベイを進めていく予定である。VERAの43GHz受信機感度は非常に悪く、上記の電波源サーベイのためには鹿島局の存在が極めて重要になっており、この科研費で進めた計画がVERAプロジェクト成功への重要なキーになってきていることを指摘したい。
KAKENHI-PROJECT-12440053
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43GHzVLBIネットの構築とVERAのためのVLBI電波源探査プロジェクト
VERA計画は10μas台の高精度絶対位置計測を可能にする世界初のプロジェクトであり、その精度達成のためには目標天体と同時に観測するクェーサーなどの参照電波源の存在が不可欠である。我々はこの参照電波源サーベイのために、鹿島郵政省通信綜合研究所宇宙通信センター内にある34mアンテナに冷却43GHz受信機を搭載し、NRO45m鉉等とのVLBI観測を計画している。これによりVERAで観測可能なVLBI電波源のソースリース作りを行いたい。このため、大学院生達と冷却デュクーの設計を行い、超小型のデュクー作りが成功した。本研究費で購入した局部発振器を含む回路作りもこの2月に完成し、現在校正用の装置作りを進めており、3月15日には完成予定である。3月末には鹿島に赴き、34m鉉へこれらの装置を搭載する予定である。この仕事と並行して、AOS分光計作りにも従事している。現在34m鉉は一番高い周波数の装置か20GHz用であり、今回43GHz受信機が載ると、周波数か倍になり、ビーム巾が半分になり。分解能が上がるため、ポインティングをやり直さなければならず。分光計を用いて。SiOメーザー源を観測することにより行う。以上の仕事を3月4月中に終了させ、観測体制及び機能を確立したい。VERA計画は相対VLBI法を用いて10μas台の高精度絶対位置計測を可能にする世界初のプロジェクトであり、その精度達成のためには目標天体と同時に観測するクエーサー、系外銀河などの参照電波源の存在が不可欠である。我々は、この参照電波源探査のために、郵政省通信総合研究所鹿嶋宇宙通信センター内にある34mアンテナに冷却43GHz受信器を搭載し、NRO45m鏡等とのVLBI観測を計画している。これにより銀河面内の電波源カタログに掲載されたソースをVLBI観測し、VERAで観測可能なVLBI電波源のソース作りを行いたい。このため大学院生達と小型の冷却デュワーの設計を行い、製作し、HEMT受信機の冷却に成功し、更に、本研究費で購入した局部発信機を含む回路作りを終え、34mアンテナに搭載した。43GHz受信機の性能は大気込みで300Kとなり、初期の性能目標は達成された。しかし、天体追尾中にアンテナをEL方向に倒していくと強度が著しく減少していくことが判明した。副鏡が倒れるにつれ重力で垂れるためである。これまでの22GHz以下の周波数帯ではこの副鏡の垂れは無視できたのだが、43GHzになるとビームが細くなるため、副鏡の垂れがもろに効いてくる為である。副鏡の垂れを補正する制御が必須となる。しかしながら、4年前、34mの副鏡が落下する事件がおこり、34m鏡はアメリカ製であるが、修理を日本の会社に一任した。その際、ブラックボックスになっていた副鏡の駆動機構の一部改造も行われた。しかしその会社は結局自力では副鏡の駆動に成功せず放置されたままになっていた。この大問題が浮上し、難しさのためにあきらめかけたが、当研究室の大学院生がこの課題に果敢に取り組み、通総研のスタッフと協力して、完全ではないがアクチブな副鏡の制御に成功した。3月からポインチングの観測に取り掛かっており、器差ファイルが完成し次第SiOメーザー源のサーベイ観測にかかる予定である。その後、45m鏡、或いはVERA鹿児島局20m鏡などとのVLBI観測を進めたいと考えている。
KAKENHI-PROJECT-12440053
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12440053
層間架橋ミクロポーラス反応場を用いる触媒設計
1.ウロコ鉄鉱型構造を有するイオン交換性層状結晶Rb_xMn_xTi_<2-x>O_4をホスト層とする層間架橋を行った.層間に存在するRbイオンを側鎖の長さの異なる種々のアルキルアンモニウムイオンで交換して,層間を拡げた後,ケイ酸テトラエチルを反応させ,加熱処理して層間にシリカ架橋を築くことに成功した.2.得られた層間架橋体は600°Cまで500750m^2g^<-1>の高い比表面積を示し,ミクロポア多孔体に特徴的なLangmuir型吸着曲線を示した.また.吸脱着曲線にはほとんどヒステリシスがなく,細孔はゼオライトのように均質であることがわかった.3.種々の溶媒蒸気の吸着特性の比較から,シリカ架橋多孔体は疎水性を有すること,層間の細孔に分子ふるい機能があることがわかった.4.Rb_xMn_xTi_<2-x>O_4中のMn^<3+>はKMnO_4でMn^<4+>に酸化され,約90%のRbイオンを除いたホスト層を導くことがわかった.また.Mn^<3+>,Mn^<4+>の混合原子価を有する層状結晶についてもシリカによる層間架橋が可能なことを明らかにした.5.得られたシリカ架橋層状チタン酸塩ミクロ多孔体の光触媒特性を調べた.H_2OあるいはH_2O+CH_3OHと多孔体の懸濁液に高圧水銀灯(440W)で光照射すると水素が定常的に発生することがわかった.シリカ架橋層状チタン酸塩ミクロ多孔体は300400°C以上でアンモニアの酸素酸化に高い活性を示した.また,ほぼ100%の選択率で窒素が生成することを見出した.一方,層間架橋を施していない試料では反応は500°Cにおいてさえ進行せず,層間が触媒反応場として利用されていることがわかった.1.ウロコ鉄鉱型構造を有するイオン交換性層状結晶Rb_xMn_xTi_<2-x>O_4をホスト層とする層間架橋を行った.層間に存在するRbイオンを側鎖の長さの異なる種々のアルキルアンモニウムイオンで交換して,層間を拡げた後,ケイ酸テトラエチルを反応させ,加熱処理して層間にシリカ架橋を築くことに成功した.2.得られた層間架橋体は600°Cまで500750m^2g^<-1>の高い比表面積を示し,ミクロポア多孔体に特徴的なLangmuir型吸着曲線を示した.また.吸脱着曲線にはほとんどヒステリシスがなく,細孔はゼオライトのように均質であることがわかった.3.種々の溶媒蒸気の吸着特性の比較から,シリカ架橋多孔体は疎水性を有すること,層間の細孔に分子ふるい機能があることがわかった.4.Rb_xMn_xTi_<2-x>O_4中のMn^<3+>はKMnO_4でMn^<4+>に酸化され,約90%のRbイオンを除いたホスト層を導くことがわかった.また.Mn^<3+>,Mn^<4+>の混合原子価を有する層状結晶についてもシリカによる層間架橋が可能なことを明らかにした.5.得られたシリカ架橋層状チタン酸塩ミクロ多孔体の光触媒特性を調べた.H_2OあるいはH_2O+CH_3OHと多孔体の懸濁液に高圧水銀灯(440W)で光照射すると水素が定常的に発生することがわかった.シリカ架橋層状チタン酸塩ミクロ多孔体は300400°C以上でアンモニアの酸素酸化に高い活性を示した.また,ほぼ100%の選択率で窒素が生成することを見出した.一方,層間架橋を施していない試料では反応は500°Cにおいてさえ進行せず,層間が触媒反応場として利用されていることがわかった.
KAKENHI-PROJECT-07242253
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有機半導体膜による化学センシングの光制御と化学情報のマルチプレックス化
本研究の目的は、センサの受容特性を外部信号で制御し、化学物質情報を多重化させることである。そのために、光機能性を有する半導体膜を用い、その化学物質受容特性を外部から照射する光により制御する。光機能性有機膜は光起電力の変化により化学物質のセンシングが可能であり、特に電荷を有していない非電解質に対して受容能力が高い。化学物質の検出能力は膜の表面状態に依存する。有機半導体膜は光照射により、表面の電気的な性質が変化する。従って、水溶液中の物質との相互作用をコントロールでき、性質の異なる化学物質の検出が可能となる。このようにして、化学感覚において行われている、質的に異なる量が時間・空間的な同一点に、しかも非常に膨大な数が存在するような対象でも検出が可能となることが期待される。まず、照射する光強度を変化させることにより化学物質の応答性の変化を調べた。半導体内部の電荷分布が消失するのはフラットバンド状態であるが、光照射により生成されたキャリアにより表面に吸着している電荷を中和し、あるいはさらに強い電荷状態へと表面を改質させる。そのような状況で化学物質が光起電力に与える影響を調べた結果、中性の化学物質が中性表面状態において光起電力を変化させることが確かめられた.しかも,その応答感度は非常に高く,化学感覚情報計測に十分応用可能なセンサのトランスデューサとなりうることが分かった.この結果はトランスデューサからの情報のマルチプレックス化を可能とし、様々な化学物質を検出対象とする化学感覚情報が入手可能であることを示唆する.本研究の目的は、センサの受容特性を外部信号で制御し、化学物質情報を多重化させることである。そのために、光機能性を有する半導体膜を用い、その化学物質受容特性を外部から照射する光により制御する。光機能性有機膜は光起電力の変化により化学物質のセンシングが可能であり、特に電荷を有していない非電解質に対して受容能力が高い。化学物質の検出能力は膜の表面状態に依存する。有機半導体膜は光照射により、表面の電気的な性質が変化する。従って、水溶液中の物質との相互作用をコントロールでき、性質の異なる化学物質の検出が可能となる。このようにして、化学感覚において行われている、質的に異なる量が時間・空間的な同一点に、しかも非常に膨大な数が存在するような対象でも検出が可能となることが期待される。まず、照射する光強度を変化させることにより化学物質の応答性の変化を調べた。半導体内部の電荷分布が消失するのはフラットバンド状態であるが、光照射により生成されたキャリアにより表面に吸着している電荷を中和し、あるいはさらに強い電荷状態へと表面を改質させる。そのような状況で化学物質が光起電力に与える影響を調べた結果、中性の化学物質が中性表面状態において光起電力を変化させることが確かめられた.しかも,その応答感度は非常に高く,化学感覚情報計測に十分応用可能なセンサのトランスデューサとなりうることが分かった.この結果はトランスデューサからの情報のマルチプレックス化を可能とし、様々な化学物質を検出対象とする化学感覚情報が入手可能であることを示唆する.
KAKENHI-PROJECT-07750364
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位相空間における関数空間・測度論とその関連分野の研究
1.DashiellはProc.Amer.Moth.(1982)の中で、コンパクト空間で定義されたoーCauchy完備な連続関数全体を対称にして、Cー連続な測度が強〓ー連続ならばGrothendickーRossenthalの定理は拡張できることを示した。しかし、この問題は、(1)VekslerがAkand.Nauk.SSSR.(1969)に記述したRiesz空間の0-双線形〓関数の集合における弱コンパクト性と一様連続性との関連を順序の意味で特徴づける、ことから、Dashiellの理論はo対空間に含まれる〓ー連続線形〓関数の特徴づけを補足し、(2)強〓ー連続-Cauchy完備ーRiesz空間を対称に一般化できることを突き止めた。現在、投稿準備中である。2.1.に関連して、位相空間における疑連続写像または疑開写像について、その特性の一体化が可能であることを解いた。3.m次元ユ-クリット空間IR^m全体で定義された負曲率をもつ単連結なリ-マン多様体への調和写像は、ある種の非退化条件のもとで存在しないことを解明した。4.確率論の立場から、層状媒質中における波動方程式に対して、極限振幅の原理に関するある種の成果が得られた。5.関数論の立場から、有理関数を係数にもつある種の微分方程式は、如何なる有理型関数解も有理関数であることが知られているが、この定理の一般化につき研究を進めた結果、「如何なる代数型関数解も代数関数である」についての部分的解答が得られた。1.DashiellはProc.Amer.Moth.(1982)の中で、コンパクト空間で定義されたoーCauchy完備な連続関数全体を対称にして、Cー連続な測度が強〓ー連続ならばGrothendickーRossenthalの定理は拡張できることを示した。しかし、この問題は、(1)VekslerがAkand.Nauk.SSSR.(1969)に記述したRiesz空間の0-双線形〓関数の集合における弱コンパクト性と一様連続性との関連を順序の意味で特徴づける、ことから、Dashiellの理論はo対空間に含まれる〓ー連続線形〓関数の特徴づけを補足し、(2)強〓ー連続-Cauchy完備ーRiesz空間を対称に一般化できることを突き止めた。現在、投稿準備中である。2.1.に関連して、位相空間における疑連続写像または疑開写像について、その特性の一体化が可能であることを解いた。3.m次元ユ-クリット空間IR^m全体で定義された負曲率をもつ単連結なリ-マン多様体への調和写像は、ある種の非退化条件のもとで存在しないことを解明した。4.確率論の立場から、層状媒質中における波動方程式に対して、極限振幅の原理に関するある種の成果が得られた。5.関数論の立場から、有理関数を係数にもつある種の微分方程式は、如何なる有理型関数解も有理関数であることが知られているが、この定理の一般化につき研究を進めた結果、「如何なる代数型関数解も代数関数である」についての部分的解答が得られた。
KAKENHI-PROJECT-01540117
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01540117
1960-70年代アメリカ大衆文化テクストにおける歴史的構造性の計量的分析
我々は予型(type)としての1840年代を絶えず視野に入れながら、原形(anti-type)としての1950年代、60年代の文化・社会現象を考察してきた。この過程から、ある程度予想されたことながら、次の1970年代のアメリカが、やはりほぼ1世紀前の1850年代のアメリカといろいろな点で類似することを突き止めた。ニクソン(R.M.Nixon)のウォーター・ゲート事件で象徴的に幕を開けた70年代は、今日のアメリカの停滞、混乱の始まりと言えるが、同様にアメリカの1850年代は、楽天的で拡大主義的、そして愛国的な40年代から、奴隷制を巡って次第に地域対立を深め、南北戦争へと向かう、いわば大混乱の始まりであったと見ることができる。「アメリカ・ルネサンス(the American Renaissance)」と呼ばれる文芸上の一大豊作期が50年代前半だという事実も、腐敗の時代の始まりがしばしば文化爛熟期に当たるという定説と矛盾しない。アメリカの文化・社会現象は約1世紀を隔てて繰り返すという仮説は、1840年代と1950年代、60年代の比較検討によっておおよそ裏付けできたように思われるが、これをそれぞれもう10年づつ広げて追跡調査するのが、本研究の今後当面目指すところである。大きな歴史の流れとして両時代が強い類似性を示していることは容易に想像できるが、やはりこれも事細かに検証してゆく必要がある。またそうしてこそ、1840年代と1950年代、60年代との類似性の研究自体もより意義深くなると考える。これまでこの時代の特定の文学、たとえば詩人、小説家、劇作家などについては、しばしば研究が行われてきた。しかし、文学、映画、ジャーナリズムのすべてを視座に入れた研究は国内、国外を通じてまだない。我々は予型(type)としての1840年代を絶えず視野に入れながら、原形(anti-type)としての1950年代、60年代の文化・社会現象を考察してきた。この過程から、ある程度予想されたことながら、次の1970年代のアメリカが、やはりほぼ1世紀前の1850年代のアメリカといろいろな点で類似することを突き止めた。ニクソン(R.M.Nixon)のウォーター・ゲート事件で象徴的に幕を開けた70年代は、今日のアメリカの停滞、混乱の始まりと言えるが、同様にアメリカの1850年代は、楽天的で拡大主義的、そして愛国的な40年代から、奴隷制を巡って次第に地域対立を深め、南北戦争へと向かう、いわば大混乱の始まりであったと見ることができる。「アメリカ・ルネサンス(the American Renaissance)」と呼ばれる文芸上の一大豊作期が50年代前半だという事実も、腐敗の時代の始まりがしばしば文化爛熟期に当たるという定説と矛盾しない。アメリカの文化・社会現象は約1世紀を隔てて繰り返すという仮説は、1840年代と1950年代、60年代の比較検討によっておおよそ裏付けできたように思われるが、これをそれぞれもう10年づつ広げて追跡調査するのが、本研究の今後当面目指すところである。大きな歴史の流れとして両時代が強い類似性を示していることは容易に想像できるが、やはりこれも事細かに検証してゆく必要がある。またそうしてこそ、1840年代と1950年代、60年代との類似性の研究自体もより意義深くなると考える。これまでこの時代の特定の文学、たとえば詩人、小説家、劇作家などについては、しばしば研究が行われてきた。しかし、文学、映画、ジャーナリズムのすべてを視座に入れた研究は国内、国外を通じてまだない。
KAKENHI-PROJECT-08610477
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08610477
スクイズ運動下での摩擦力と表面損傷に対する粗さ形状の影響把握
自動車用金属ベルト/チェーン無段変速機は,伝達面の摩擦係数を高めることで燃費や伝達容量などのあらゆる性能が大きく向上する.伝達面の表面粗さを大きくすることで摩擦係数は高くなるが,同時に焼付きや異常摩耗などの損傷を引き起こしやすくなる.この摩擦係数と表面損傷に対し,スクイズと呼ばれる接触開始時の油膜形成現象が大きく影響する可能性が指摘されているが,詳細なメカニズムは解明されていない.そこでスクイズ挙動を再現する摩擦試験装置を用い,摩擦係数と表面強度に対する伝達面粗さの影響を明らかにし,高摩擦と高強度を両立する粗さ形状の最適化を図る.自動車用金属ベルト/チェーン無段変速機は,伝達面の摩擦係数を高めることで燃費や伝達容量などのあらゆる性能が大きく向上する.伝達面の表面粗さを大きくすることで摩擦係数は高くなるが,同時に焼付きや異常摩耗などの損傷を引き起こしやすくなる.この摩擦係数と表面損傷に対し,スクイズと呼ばれる接触開始時の油膜形成現象が大きく影響する可能性が指摘されているが,詳細なメカニズムは解明されていない.そこでスクイズ挙動を再現する摩擦試験装置を用い,摩擦係数と表面強度に対する伝達面粗さの影響を明らかにし,高摩擦と高強度を両立する粗さ形状の最適化を図る.
KAKENHI-PROJECT-19K04155
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K04155
ストレス反応の中枢性発現機構に関する研究
本年度は、Wistar系雄性ラットを対象とし、脳各部位のノルアドレナリン及びその主要代謝産物である3methoxy-4-hydroxyphenylethyleneglycol sulfate含量の蛍光法による定量法と脳内微小透析灌流法とを用いてストレス反応の中枢性発現機構に関する研究を行った。ラットをペントバルビタール麻酔下に脳定位固定装置に固定し、先端部が半透膜からなる透析用プローブを、扁桃核、視床下部、青斑核などに挿入し、その部の灌流を行った。試料は20分毎に採取し、得られた灌流液中のノルアドレナリン含量を電気化学検出器付の高速液体クロマトグラフィーにより定量した。プローブを青斑核に挿入し、灌流液からテトロドトキシンを応用したところ、青斑核のノルアドレナリンの基礎放出量は完全に抑制され、灌流液中のノルアドレナリンが神経伝達物質として放出されたものであることが明らかになった。さらにヨヒンビンの応用により、青斑核のノルアドレナリン放出が亢進し、青斑核のノルアドレナリン放出はalpha_2アドレナリン受容体により抑制性の調節を受けていることが示された。また、物理的要因をほとんど伴わない情動ストレスである恐怖条件づけにより、青斑核と扁桃核で同時にノルアドレナリン放出が亢進することが、脳内透析法により明らかになった。さらに、corticotropin-releasing factor(CRF)の拮抗薬であるalpha-helical CRF_<9-41>をあらかじめ脳室内投与しておくと、拘束ストレスによって生じるノルアドレナリンの放出亢進が、視床下部や扁桃核や青斑核部で減弱されることから、脳各部位のノルアドレナリン放出亢進を始めとした一連のストレス反応の引き金として、CRFが重要な役割を果たしていることが示唆された。今後は、この引き金機構に注目し、その詳細を明らかにしていく予定である。本年度は、Wistar系雄性ラットを対象とし、脳各部位のノルアドレナリン及びその主要代謝産物である3methoxy-4-hydroxyphenylethyleneglycol sulfate含量の蛍光法による定量法と脳内微小透析灌流法とを用いてストレス反応の中枢性発現機構に関する研究を行った。ラットをペントバルビタール麻酔下に脳定位固定装置に固定し、先端部が半透膜からなる透析用プローブを、扁桃核、視床下部、青斑核などに挿入し、その部の灌流を行った。試料は20分毎に採取し、得られた灌流液中のノルアドレナリン含量を電気化学検出器付の高速液体クロマトグラフィーにより定量した。プローブを青斑核に挿入し、灌流液からテトロドトキシンを応用したところ、青斑核のノルアドレナリンの基礎放出量は完全に抑制され、灌流液中のノルアドレナリンが神経伝達物質として放出されたものであることが明らかになった。さらにヨヒンビンの応用により、青斑核のノルアドレナリン放出が亢進し、青斑核のノルアドレナリン放出はalpha_2アドレナリン受容体により抑制性の調節を受けていることが示された。また、物理的要因をほとんど伴わない情動ストレスである恐怖条件づけにより、青斑核と扁桃核で同時にノルアドレナリン放出が亢進することが、脳内透析法により明らかになった。さらに、corticotropin-releasing factor(CRF)の拮抗薬であるalpha-helical CRF_<9-41>をあらかじめ脳室内投与しておくと、拘束ストレスによって生じるノルアドレナリンの放出亢進が、視床下部や扁桃核や青斑核部で減弱されることから、脳各部位のノルアドレナリン放出亢進を始めとした一連のストレス反応の引き金として、CRFが重要な役割を果たしていることが示唆された。今後は、この引き金機構に注目し、その詳細を明らかにしていく予定である。
KAKENHI-PROJECT-05680686
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05680686
消化器癌における潜在的構造異常の網羅的解析
構造異常は,発癌のドライバーとして機能する事が知られている。従来、一部がヒトゲノムリファレンスに一意にマッピングされない配列を含む構造異常は十分に検出されていなかった。従って、本研究はこれらの「潜在的構造異常」を網羅的に検出するアルゴリズムを作成し、消化器癌ゲノムデータを解析する事により、消化器癌における潜在的構造異常の全体像を明らかにする事を試みるものである。構造異常は,発癌のドライバーとして機能する事が知られている。従来、一部がヒトゲノムリファレンスに一意にマッピングされない配列を含む構造異常は十分に検出されていなかった。従って、本研究はこれらの「潜在的構造異常」を網羅的に検出するアルゴリズムを作成し、消化器癌ゲノムデータを解析する事により、消化器癌における潜在的構造異常の全体像を明らかにする事を試みるものである。
KAKENHI-PROJECT-19J21906
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木造戸建住宅の商品性の変遷と木質材料の使用に関する研究
1 1997年に実施したアンケート調査結果を分析し、一般消費者の住宅の構造・工法への関心、また森林や木材への関心の程度について考察した。このアンケート調査は、1993年および1996年に神奈川県に戸建住宅を建設した800世帯に対して調査票を郵送して行い、336票(有効回答42.0%)を回収した。2住宅建設の際に「複数の構造・工法を比較検討した」回答者が33%、「あらかじめ決めていたのでほかの構造・工法は検討しなかった」が34%、「構造・工法のことはあまり考えなかった」が21・%、「どんな構造・工法があるかよく知らなかった」が6%であった。「比較検討した」と『あらかじめ決めていた」をあわせると7割近くに達し、これらの回答者は住宅建設の際に構造・工法を意識していたと考えられる。3前項の結果より回答者を、構造・工法を「意識したグループ」と「考えなかったグループ」に区分し、実際に選択した構造・工法および選択した理由を比較した。その結果、木造在来工法を選択した比率は、前者で約0%、後者で約70%と有意な差が見られた。また選択した理由は、前者では耐震や耐火などの「機能」や「住みやすさ」が併せて60%以上、後者では「業者のすすめ」と「とくに理由はない」が併せて50%以上であった.4同様のグループ毎に、柱材、フローリング材についての知識をみたところ、「意識したグループ」のほうが総じて知識が高かった。しかし、わが国の森林についての知識には、有意な差はみられなかった.5以上の結果より、構造・工法について関心が高い消費者は、そうでない者より木造在来工法を選択する確率が低く、工法選択の際に機能や住みやすさを重視する者が多く、木材についての知識が高いが、森林についての知識には、とくに差はないといえる。本年度は年間数千戸から一万戸の木造軸組工法住宅を供給する大手住宅メーカーを対象とし,「住宅の商品性」の現状と使用木材との関連について調査・研究を行った。木造軸組工法住宅メーカー(以下,軸組メーカーと呼ぶ)らの住宅商品において「商品性」を表すものとして木質材料が重要な役割を果たす場面には,二通りある。一つは,ヒノキ材に代表される国産優良樹種の使用が強調された住宅であり,今一つは,構造用集成材に代表される工業化木材の使用が強調された住宅である。とくに,1996年から97年にかけて,後者が誕生し,前者との二極分化に向かいつつあることが明らかになった。軸組メーカーらは,住宅部品としての性能という点では,一般製材でも人工乾燥(KD)材であれば,構造用集成材と同時に評価している。とくにKDの効果が高いヒノキ材を使用した住宅商品は,高級木造住宅の象徴として,今後も存続するとみられる。ただし,KDの効果の低いスギ材使用の住宅商品は後退しており,代わって構造用集成材を使用した住宅商品が台頭している。ただし,これまでのところ,構造用集成材は「形状変化しない究極の乾燥材」程度の意味しかなかった。ところが,ごく最近では,構造用集成材ならではの特長を活かした住宅工法・商品が開発されつつある。例えば,仕口などの加工をせず軸組を金物で繋ぐ工法や,パネルと軸組を一体化して工場生産する工法などで,こうした工法の部品としては,KD材より構造用集成材のほうが有利性が高い。新工法は,プレハブ住宅等の工業化住宅に対抗し,生産の合理化を図る目的で開発された。今後住宅需要の減少が予想され,住宅メーカー間の競争が激化する局面において,構造用集成材という木質材料が,「生産の合理化された住宅」という木造住宅の新たな「商品性」を表すものとして登場してきた事実を示すものである。1 1997年に実施したアンケート調査結果を分析し、一般消費者の住宅の構造・工法への関心、また森林や木材への関心の程度について考察した。このアンケート調査は、1993年および1996年に神奈川県に戸建住宅を建設した800世帯に対して調査票を郵送して行い、336票(有効回答42.0%)を回収した。2住宅建設の際に「複数の構造・工法を比較検討した」回答者が33%、「あらかじめ決めていたのでほかの構造・工法は検討しなかった」が34%、「構造・工法のことはあまり考えなかった」が21・%、「どんな構造・工法があるかよく知らなかった」が6%であった。「比較検討した」と『あらかじめ決めていた」をあわせると7割近くに達し、これらの回答者は住宅建設の際に構造・工法を意識していたと考えられる。3前項の結果より回答者を、構造・工法を「意識したグループ」と「考えなかったグループ」に区分し、実際に選択した構造・工法および選択した理由を比較した。その結果、木造在来工法を選択した比率は、前者で約0%、後者で約70%と有意な差が見られた。また選択した理由は、前者では耐震や耐火などの「機能」や「住みやすさ」が併せて60%以上、後者では「業者のすすめ」と「とくに理由はない」が併せて50%以上であった.4同様のグループ毎に、柱材、フローリング材についての知識をみたところ、「意識したグループ」のほうが総じて知識が高かった。
KAKENHI-PROJECT-09760143
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09760143
木造戸建住宅の商品性の変遷と木質材料の使用に関する研究
しかし、わが国の森林についての知識には、有意な差はみられなかった.5以上の結果より、構造・工法について関心が高い消費者は、そうでない者より木造在来工法を選択する確率が低く、工法選択の際に機能や住みやすさを重視する者が多く、木材についての知識が高いが、森林についての知識には、とくに差はないといえる。
KAKENHI-PROJECT-09760143
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ASEAN域内経済協力の政治経済学
平成8年度には、「ASEAN域内経済協力の政治経済学」の一貫研究は、当初の課題を達成し、多くの成果を生み出した。第1に、博士学位論文「ASEAN域内経済協力の政治経済学」を、加筆・修正の上、単著として刊行することができた。単著は『ASEAN域内経済協力の政治経済学』(ミネルヴァ書房)として、平成9年2月に刊行された。この出版にあたっては、本科学研究費補助金(奨励研究A)に加えて、平成8年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)の交付をも受けることができた。第2に、きわめて最近のASEAN域内経済協力に関しても、前述単著の最終章として、新たに書き足して発表することができた。第3にASEAN域内経済協力とBBCスキーム(ASEANの自動車部品相互補完流通計画)についても「ASEAN域内経済協力と自動車部品相互補完計画-BBCスキームからAICOスキーム(ASEAN産業協力計画)へ-」として、発表した。これは、国際貿易投資研究所(ITI)のプロジェクト「アジアの地域統合」で行われている東京での研究会に参加した上で、報告書の1章として発表したものである。第4に、科学研究費補助金の支援により、統合理論の一層の研究、並びに経済理論分析の基礎となる一般的経済理論の研究も、地道に進められている。以上のように、平成8年度の科学研究費補助金の支援を受け、「ASEAN域内経済協力の政治経済学」の一貫研究は、単著の刊行を始め、着実に達成され、多くの成果を生んできている。平成8年度には、「ASEAN域内経済協力の政治経済学」の一貫研究は、当初の課題を達成し、多くの成果を生み出した。第1に、博士学位論文「ASEAN域内経済協力の政治経済学」を、加筆・修正の上、単著として刊行することができた。単著は『ASEAN域内経済協力の政治経済学』(ミネルヴァ書房)として、平成9年2月に刊行された。この出版にあたっては、本科学研究費補助金(奨励研究A)に加えて、平成8年度科学研究費補助金(研究成果公開促進費)の交付をも受けることができた。第2に、きわめて最近のASEAN域内経済協力に関しても、前述単著の最終章として、新たに書き足して発表することができた。第3にASEAN域内経済協力とBBCスキーム(ASEANの自動車部品相互補完流通計画)についても「ASEAN域内経済協力と自動車部品相互補完計画-BBCスキームからAICOスキーム(ASEAN産業協力計画)へ-」として、発表した。これは、国際貿易投資研究所(ITI)のプロジェクト「アジアの地域統合」で行われている東京での研究会に参加した上で、報告書の1章として発表したものである。第4に、科学研究費補助金の支援により、統合理論の一層の研究、並びに経済理論分析の基礎となる一般的経済理論の研究も、地道に進められている。以上のように、平成8年度の科学研究費補助金の支援を受け、「ASEAN域内経済協力の政治経済学」の一貫研究は、単著の刊行を始め、着実に達成され、多くの成果を生んできている。
KAKENHI-PROJECT-08730024
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水中に落下した高温金属液塊の挙動に関する研究
本研究の目的は蒸気爆発の前段階である粗混合から蒸気膜崩壊へと至る素過程において膨張する蒸気泡の内部の構造を観察することである。本年度は、中性子ラジオグラフィ法を利用して水中に落下させた高温金属液塊の挙動を可視化した。実験装置は、低融点合金を溶融させる加熱炉と、溶融金属を落下させて現象を起こさせる水槽よりなる。水槽は、高さ20cm、幅10cmであり、奥行きは5cm、3cm及び1cmの3種類のものを用いた。水槽には軽水を満たしたが、奥行き5cm及び3cmのものは中性子透過率を考慮し、重水を満たした。実験では、この重水あるいは軽水中に約500600°Cまで昇温したウッドメタル、鉛-ビスマス合金などを、1滴ずつあるいは連続して落下させた。そのときの様子は、中性子ビームを試験部の奥行き方向に透過させ、試験部後方にあるコンバータ上に中性子画像を投影させた。この投影像は毎秒500コマの高速度ビデオにて撮影した。この高速度ビデオには、マイクロチャンネルプレートを2枚備えゲインを上げたイメージインテンシファイアを取り付け画像増幅を行った。鉛-ビスマスを軽水中に落下させた実験では、初期の軽水の量と温度及び溶融金属の量をパラメータとして現象の観察を行った。この組み合わせでは、溶融金属と蒸気の部分は明るく、軽水の部分は暗く写った。これにより、溶融金属が水中を落下し冷えて固まる様子、蒸気泡の発生及び水面の揺動する様子が観察された。水温が飽和温度に近いときには、急激な蒸気発生により大量の水が吹き飛ばされる様子が観察された。ウッドメタルを重水中に落下させた実験では、比較的大量の重水中に少量のウッドメタルを落下させ、その挙動を観察した。この実験では、ウッドメタルが黒く、重水がグレイ、蒸気泡が明るく写った。これにより、溶融金属が水面に落下したとき、溶融金属の上方に蒸気ドームの形成が観察された。これらの画像を画像処理し、溶融金属、蒸気泡及び水の界面の識別ができ、粗混合状態の詳細構造の可視化の可能性が示された。本研究の目的は蒸気爆発の前段階である粗混合から蒸気膜崩壊へと至る素過程において膨張する蒸気泡の内部の構造を観察することである。本年度は、中性子ラジオグラフィ法を利用して水中に落下させた高温金属液塊の挙動を可視化した。実験装置は、低融点合金を溶融させる加熱炉と、溶融金属を落下させて現象を起こさせる水槽よりなる。水槽は、高さ20cm、幅10cmであり、奥行きは5cm、3cm及び1cmの3種類のものを用いた。水槽には軽水を満たしたが、奥行き5cm及び3cmのものは中性子透過率を考慮し、重水を満たした。実験では、この重水あるいは軽水中に約500600°Cまで昇温したウッドメタル、鉛-ビスマス合金などを、1滴ずつあるいは連続して落下させた。そのときの様子は、中性子ビームを試験部の奥行き方向に透過させ、試験部後方にあるコンバータ上に中性子画像を投影させた。この投影像は毎秒500コマの高速度ビデオにて撮影した。この高速度ビデオには、マイクロチャンネルプレートを2枚備えゲインを上げたイメージインテンシファイアを取り付け画像増幅を行った。鉛-ビスマスを軽水中に落下させた実験では、初期の軽水の量と温度及び溶融金属の量をパラメータとして現象の観察を行った。この組み合わせでは、溶融金属と蒸気の部分は明るく、軽水の部分は暗く写った。これにより、溶融金属が水中を落下し冷えて固まる様子、蒸気泡の発生及び水面の揺動する様子が観察された。水温が飽和温度に近いときには、急激な蒸気発生により大量の水が吹き飛ばされる様子が観察された。ウッドメタルを重水中に落下させた実験では、比較的大量の重水中に少量のウッドメタルを落下させ、その挙動を観察した。この実験では、ウッドメタルが黒く、重水がグレイ、蒸気泡が明るく写った。これにより、溶融金属が水面に落下したとき、溶融金属の上方に蒸気ドームの形成が観察された。これらの画像を画像処理し、溶融金属、蒸気泡及び水の界面の識別ができ、粗混合状態の詳細構造の可視化の可能性が示された。
KAKENHI-PROJECT-07226210
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07226210
水の波の数学解析
本研究では広い意味での水の波の現象を様々な要因の下で数学的に解析した。その要因とは、問題を考えている領域の形(有限の深さか、それとも深さ無限か)、空間次元は2次元か3次元か、あるいは表面張力、渦、粘性、圧縮性、熱伝導性等の影響を考慮するか否かといったものである。すでに非圧縮性粘性流体の場合の時間に関する局所解および大域解の存在定理が得られているが、今回新たに得られた主要な結果は粘性流体で圧縮性の影響をも考慮した場合と、非粘性流体で渦なしを仮定しない場合についての次の2つである。(1)空間次元3次元で深さ有限の場合に流体の表面張力、渦、粘性、圧縮性、熱伝導性の影響をすべて考慮した方程式系の時間に関する局所解、および大域解の一意存在が示された。またこの問題で表面張力の影響を無視した場合も同様の結果がえられることもわかった。この場合方程式が放物-双曲型になるため、非圧縮性の場合に放物型の問題として取り扱えたのと異なり工夫を必要とした。(2)空間2次元で深さ無限の場合に流体が非圧縮、非粘性だが渦なしは仮定しない方程式系の時間に関する局所可解性が示された。この場合、いわゆる古典的な水の波の問題とは流体が渦なしではないことを仮定とするという点においてのみが異なるが、従来の水の波の問題では調和関数の境界値を決める問題に帰着されたのに対して、今の場合内部でも流体の運動を決めなくてはならず、従来にない工夫が必要になった。以上の結果はいずれも出版準備中である。本研究では広い意味での水の波の現象を様々な要因の下で数学的に解析した。その要因とは、問題を考えている領域の形(有限の深さか、それとも深さ無限か)、空間次元は2次元か3次元か、あるいは表面張力、渦、粘性、圧縮性、熱伝導性等の影響を考慮するか否かといったものである。すでに非圧縮性粘性流体の場合の時間に関する局所解および大域解の存在定理が得られているが、今回新たに得られた主要な結果は粘性流体で圧縮性の影響をも考慮した場合と、非粘性流体で渦なしを仮定しない場合についての次の2つである。(1)空間次元3次元で深さ有限の場合に流体の表面張力、渦、粘性、圧縮性、熱伝導性の影響をすべて考慮した方程式系の時間に関する局所解、および大域解の一意存在が示された。またこの問題で表面張力の影響を無視した場合も同様の結果がえられることもわかった。この場合方程式が放物-双曲型になるため、非圧縮性の場合に放物型の問題として取り扱えたのと異なり工夫を必要とした。(2)空間2次元で深さ無限の場合に流体が非圧縮、非粘性だが渦なしは仮定しない方程式系の時間に関する局所可解性が示された。この場合、いわゆる古典的な水の波の問題とは流体が渦なしではないことを仮定とするという点においてのみが異なるが、従来の水の波の問題では調和関数の境界値を決める問題に帰着されたのに対して、今の場合内部でも流体の運動を決めなくてはならず、従来にない工夫が必要になった。以上の結果はいずれも出版準備中である。
KAKENHI-PROJECT-07740131
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07740131
キラルスメクチック相を示す主鎖型液晶高分子の開発とその強誘電及び反強誘電特性
本研究では、ビベンゾエイトをメソゲンとし、屈曲鎖部に種々の分枝メチレン鎖を有するBBーnポリエステルを合成し、それらの液晶相転移挙動及びスメクチック液晶の構造・物性を調べ、以下の諸点を明らかにした。(1)屈曲鎖アルキレン鎖の炭素数が偶数のBBーnはスメクチックA相を示す。この偶数系BBーnを用い、分枝メチル基の効果を調べた結果、分枝メチル基を非対称に一つ導入した場合には、スメクチックA相がスメクチックC相に、また二つ導入した場合には、ネマチック相に変換されることが明らかになった。いずれも、分枝メチル基の立体障害により誘起されたものであり、X線、NMR観測及び理論的考察からその具体的な誘起効果に解釈を加えた。(2) (1)の結果に基づき、光学活性2ーメチルブチレン鎖を屈曲鎖とするBBーnポリエステルにおいて、キラル・スメクチックC相を得ることに成功した。また同時に、自発分極の観測を通してこの液晶相が強誘電相であることも確認した。(3)屈曲鎖メチレン鎖の炭素数が奇数のBBーnは、メソゲンのチルト方位が隣接層間で反転する特異なスメクチックC_2液晶相を形成する。このスメクチックC_2相も、屈曲鎖を光学活性鎖(具体的には、1ーメチルプロピレン鎖)にすることで、キラル・スメクチックC_2相になることがわかった。さらに、このキラル・スメクチックC_2相は、前述したキラル・スメクチックC強誘電相とし異なり、反強誘電相であることが明らかにされた。本研究では、ビベンゾエイトをメソゲンとし、屈曲鎖部に種々の分枝メチレン鎖を有するBBーnポリエステルを合成し、それらの液晶相転移挙動及びスメクチック液晶の構造・物性を調べ、以下の諸点を明らかにした。(1)屈曲鎖アルキレン鎖の炭素数が偶数のBBーnはスメクチックA相を示す。この偶数系BBーnを用い、分枝メチル基の効果を調べた結果、分枝メチル基を非対称に一つ導入した場合には、スメクチックA相がスメクチックC相に、また二つ導入した場合には、ネマチック相に変換されることが明らかになった。いずれも、分枝メチル基の立体障害により誘起されたものであり、X線、NMR観測及び理論的考察からその具体的な誘起効果に解釈を加えた。(2) (1)の結果に基づき、光学活性2ーメチルブチレン鎖を屈曲鎖とするBBーnポリエステルにおいて、キラル・スメクチックC相を得ることに成功した。また同時に、自発分極の観測を通してこの液晶相が強誘電相であることも確認した。(3)屈曲鎖メチレン鎖の炭素数が奇数のBBーnは、メソゲンのチルト方位が隣接層間で反転する特異なスメクチックC_2液晶相を形成する。このスメクチックC_2相も、屈曲鎖を光学活性鎖(具体的には、1ーメチルプロピレン鎖)にすることで、キラル・スメクチックC_2相になることがわかった。さらに、このキラル・スメクチックC_2相は、前述したキラル・スメクチックC強誘電相とし異なり、反強誘電相であることが明らかにされた。
KAKENHI-PROJECT-03650717
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03650717
手指の動作認識に適した前腕部表面筋電図の解析
表面筋電図(SEMG)を利用し動作認識を高精度で実現するためには、統計的な識別手法の構築と、SEMG計測位置の選定2点が重要になる。従来の研究では、識別規則の研究が主流であったのに対し、私はSEMG計測位置に着目し研究したところ、動作認識に適したSEMG計測位置は個人毎に異なるとの結果を得た。一般的に電極位置などのSEMG計測条件は同一に設定されることが殆どであるが、個人毎に設定した方がより高精度の認識を達成できる可能性が示されたため、本研究では、動作認識に適したSEMGがどのような統計学的性質を有するのかについて調べた。動作認識に適するSEMGの統計的な傾向が判明すれば、システム利用の際におけるSEMGの安定的な導出訓練への利用が期待できることや、障害者など健常者とは異なる筋構造を有する使用者のSEMG計測位置を決定するための有用な指標となりうる可能性がある。実験は成人健常者14名に対し、認識対象として18の動作を設定した。SEMGは、前腕部に貼付した多チャネル電極を構成する96個の電極から4つの電極を利用し導出される。この4つの電極の配置位置はランダムに複数組決定され、配置位置毎のSEMGの特性と動作認識精度を調べた。被験者毎に決定された電極配置から導出されたSEMGの特徴量から変動係数を算出し、動作認識精度との関係を調べた結果、負の相関が示された。相関係数-0.77,P値0.0013(p<0.01)であり、SEMGのばらつきが小さい方が高精度の動作認識が期待できることが示唆された。また被験者間において、SEMG特徴量の基本的な統計量と動作認識精度には有意な傾向は認められなかったが、SEMG特徴量の認識対象動作毎の類似度について検討したところ、全ての被験者で高精度より低精度の場合に、設定した動作群間に高い類似性が認められた。表面筋電図(SEMG)を利用し動作認識を高精度で実現するためには、統計的な識別手法の構築と、SEMG計測位置の選定2点が重要になる。従来の研究では、識別規則の研究が主流であったのに対し、私はSEMG計測位置に着目し研究したところ、動作認識に適したSEMG計測位置は個人毎に異なるとの結果を得た。一般的に電極位置などのSEMG計測条件は同一に設定されることが殆どであるが、個人毎に設定した方がより高精度の認識を達成できる可能性が示されたため、本研究では、動作認識に適したSEMGがどのような統計学的性質を有するのかについて調べた。動作認識に適するSEMGの統計的な傾向が判明すれば、システム利用の際におけるSEMGの安定的な導出訓練への利用が期待できることや、障害者など健常者とは異なる筋構造を有する使用者のSEMG計測位置を決定するための有用な指標となりうる可能性がある。実験は成人健常者14名に対し、認識対象として18の動作を設定した。SEMGは、前腕部に貼付した多チャネル電極を構成する96個の電極から4つの電極を利用し導出される。この4つの電極の配置位置はランダムに複数組決定され、配置位置毎のSEMGの特性と動作認識精度を調べた。被験者毎に決定された電極配置から導出されたSEMGの特徴量から変動係数を算出し、動作認識精度との関係を調べた結果、負の相関が示された。相関係数-0.77,P値0.0013(p<0.01)であり、SEMGのばらつきが小さい方が高精度の動作認識が期待できることが示唆された。また被験者間において、SEMG特徴量の基本的な統計量と動作認識精度には有意な傾向は認められなかったが、SEMG特徴量の認識対象動作毎の類似度について検討したところ、全ての被験者で高精度より低精度の場合に、設定した動作群間に高い類似性が認められた。
KAKENHI-PROJECT-21920003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21920003
日本の科学技術を支える発想の力と緻密さを体感させる学習教材の開発
本研究では,日本の多岐にわたる独創的な技術を歴史的に俯瞰し,現代の科学技術を支える発想の力や緻密な仕事を体感させる教材を開発した。まず,日本の科学技術が世界に誇るものになった課程を学び,日本の科学技術を正しく理解させるために,技術史を概観させる題材を開発した。技術分野のガイダンスの内容として,短い時間で実践できるように「『ねじ』と私たちの生活」や「明かりの歴史」,「食料危機を乗り切る技術」を取り上げた。さらに以下の3点について,小単元で実践することが可能な題材を開発した。・狭小地で安全な食物を生み出す栽培技術地域の水田で実際に行われている農法をさまざまな観点から分析し,実際の稲穂を見ながら品種改良による収量の増加などを体感させるとともに、栽培技術の進歩と農業に携わる人々の独創的な工夫について学べる教材を開発した。また,植物工場などの題材から安全な食料と日本や世界が直面しようとしている食糧危機との関係について考えさせる題材を開発し実践した。・機械,電気,制御の融合による技術制御技術を単に情報技術と捉えるのではなく、生活を便利にすると共に安全な生活や自然環境に配慮した生活を送るために重要な技術であることを理解させるための題材を開発した。コンピュータから簡単に制御できるインターフェイスを用い,他の領域の学習とリンクして学ぶことができる題材を開発している。・世界をリードする環境技術環境保全に係わる技術について日本が世界をリードする立場にあることを具体的な例から学ぶ題材を開発した。新エネルギーに係わる技術を概観し,それらが普及した社会で起こる問題点について考えさせた。特にスマートグリッドの技術に焦点をあて,将来のエネルギー技術のあり方について議論させる授業などを通して,思考力・判断力・表現力を育成するために有用な題材を開発することができた。本研究では,日本の多岐にわたる独創的な技術を歴史的に俯瞰し,現代の科学技術を支える発想の力や緻密な仕事を体感させる教材を開発した。まず,日本の科学技術が世界に誇るものになった課程を学び,日本の科学技術を正しく理解させるために,技術史を概観させる題材を開発した。技術分野のガイダンスの内容として,短い時間で実践できるように「『ねじ』と私たちの生活」や「明かりの歴史」,「食料危機を乗り切る技術」を取り上げた。さらに以下の3点について,小単元で実践することが可能な題材を開発した。・狭小地で安全な食物を生み出す栽培技術地域の水田で実際に行われている農法をさまざまな観点から分析し,実際の稲穂を見ながら品種改良による収量の増加などを体感させるとともに、栽培技術の進歩と農業に携わる人々の独創的な工夫について学べる教材を開発した。また,植物工場などの題材から安全な食料と日本や世界が直面しようとしている食糧危機との関係について考えさせる題材を開発し実践した。・機械,電気,制御の融合による技術制御技術を単に情報技術と捉えるのではなく、生活を便利にすると共に安全な生活や自然環境に配慮した生活を送るために重要な技術であることを理解させるための題材を開発した。コンピュータから簡単に制御できるインターフェイスを用い,他の領域の学習とリンクして学ぶことができる題材を開発している。・世界をリードする環境技術環境保全に係わる技術について日本が世界をリードする立場にあることを具体的な例から学ぶ題材を開発した。新エネルギーに係わる技術を概観し,それらが普及した社会で起こる問題点について考えさせた。特にスマートグリッドの技術に焦点をあて,将来のエネルギー技術のあり方について議論させる授業などを通して,思考力・判断力・表現力を育成するために有用な題材を開発することができた。
KAKENHI-PROJECT-22935002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22935002
インタカレーティング化合物のガス吸収特性
インタカレーティング化合物として、合成Na型フッ素四ケイ素雲母ならびにそれに各種酸化物を化学修飾した架橋雲母、層状酸化物のNa_<0.9>Mo_2O_4、Na_2Ti_3O_7を取り上げ、それらの層間にガス種の吸収能が存在するかどうかを検討した。無処理のフッ素四ケイ素雲母は加熱によりH_2OとCO_2を放出し、それぞれの放出温度が130°Cと160°Cであり、両者を分離できる可能性を示した。Na型フッ素四ケイ素雲母の層間にアルミナを化学修飾した架橋雲母では、ガスの吸収処理を行った後NO、CO、CH_4の放出が認められた。さらにNO_2を吸収させた場合、加熱によってNOで放出する結果が得られた。しかし、この場合はNOを吸収したときとは放出温度に差があるので、両者の吸収状態は異なると考えられた。Na型フッ素四ケイ素雲母のジルコニアおよびクロミア架橋雲母についてもNOの放出、NO_2が吸収されNOによる放出が認められた。Na_<0.9>Mo_2O_4ではNOおよびNO_2の吸収があってNOガスとして放出されるが、この場合は両者とも250°C付近の同一温度であった。したがって、Na_<0.9>Mo_2O_4におけるNO_2ガスはNOとして吸収されるものと考えられる。この点は、ガス吸収体の赤外吸収スペクトルの測定から裏付けられた。Na_2Ti_3O_7ではNOとCOについてガス吸収能を示した。Na型フッ素四ケイ素雲母にNOガスを吸収させた試料では層間の広がりがX線回折から確認されたが、その他の試料ではX線回折結果からは確認されなかった。また、層間にNaが存在する化合物に対して、必ずしも酸性ガスが吸収されるわけではなく、塩基性点としての役割を確認することができなかった。現在まで行ったガス吸収実験の結果からでは、ガス種と化合物種との間の明確な関連性が導き出せず、更なる地道なデータの蓄積が必要との結論となった。対象材料として、構造内に空隙を持つ新規のゼオライトにまで広げることが必要と思われる。インタカレーティング化合物として、合成Na型フッ素四ケイ素雲母ならびにそれに各種酸化物を化学修飾した架橋雲母、層状酸化物のNa_<0.9>Mo_2O_4、Na_2Ti_3O_7を取り上げ、それらの層間にガス種の吸収能が存在するかどうかを検討した。無処理のフッ素四ケイ素雲母は加熱によりH_2OとCO_2を放出し、それぞれの放出温度が130°Cと160°Cであり、両者を分離できる可能性を示した。Na型フッ素四ケイ素雲母の層間にアルミナを化学修飾した架橋雲母では、ガスの吸収処理を行った後NO、CO、CH_4の放出が認められた。さらにNO_2を吸収させた場合、加熱によってNOで放出する結果が得られた。しかし、この場合はNOを吸収したときとは放出温度に差があるので、両者の吸収状態は異なると考えられた。Na型フッ素四ケイ素雲母のジルコニアおよびクロミア架橋雲母についてもNOの放出、NO_2が吸収されNOによる放出が認められた。Na_<0.9>Mo_2O_4ではNOおよびNO_2の吸収があってNOガスとして放出されるが、この場合は両者とも250°C付近の同一温度であった。したがって、Na_<0.9>Mo_2O_4におけるNO_2ガスはNOとして吸収されるものと考えられる。この点は、ガス吸収体の赤外吸収スペクトルの測定から裏付けられた。Na_2Ti_3O_7ではNOとCOについてガス吸収能を示した。Na型フッ素四ケイ素雲母にNOガスを吸収させた試料では層間の広がりがX線回折から確認されたが、その他の試料ではX線回折結果からは確認されなかった。また、層間にNaが存在する化合物に対して、必ずしも酸性ガスが吸収されるわけではなく、塩基性点としての役割を確認することができなかった。現在まで行ったガス吸収実験の結果からでは、ガス種と化合物種との間の明確な関連性が導き出せず、更なる地道なデータの蓄積が必要との結論となった。対象材料として、構造内に空隙を持つ新規のゼオライトにまで広げることが必要と思われる。インタカレーティング化合物として多くの物質を考えているが、本年度は天然のモンモリロナイト(クニピアF)、合成Na型フッ素四ケイ素雲母(市販品を精製)、層状化合物のMoO_3(実験室で合成)を取り上げた。吸収させるガスは、無極性のN_2、O_2、CO_2と有極性のCO、アルカリ性のNH_3、酸性ガスののNO、SO_2、Cl_2を選んだ。CO_2はドライアイスを利用し、他の有毒性ガスはアルゴンまたは窒素との混合ガスを使用した。ガスの吸収実験は、真空式デシケーターを用い、試料挿入後油回転真空ポンプで排気後、試験を行うガスを導入して約1気圧とし室温で20分間保持した。試料をデシケーターから取り出し、直ちに購入したTG-Mass装置により、加熱中に放出されるガス種の検出とその時の温度を調べた。TG-Massの測定では、H_2O(質量18)の検出時に同時にOH^-(質量17)も測定されるため、NH_3(質量17)の検出にはH_2OとOH^-との比を求めておき、その値との比較により行った。
KAKENHI-PROJECT-10450328
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10450328
インタカレーティング化合物のガス吸収特性
ガスの吸収実験を行う前の試料をTG-Massによって測定した結果、モンモリロナイトはH_2Oを、フッ素四ケイ素雲母はH_2OとCO_2を放出し、それらのガスを層間に吸収していたことが分かった。特にフッ素四ケイ素雲母では、H_2Oの放出温度が130°C付近、CO_2の放出温度が160°Cで両者を分離する可能性のあることが分かった。調製したままの試料のガス吸収実験では、今回調べた試料はいずれも新たにガスを吸収することが認められなかった。そのため、インタカレーティング化合物の層間を広げる効果の期待される水蒸気雰囲気でのガス吸収実験を行った。その結果、MoO_3については180°C付近でNH_3の放出があり、雰囲気の制御によってガスの吸収が可能であることが分かった。本年度はインタカレーティング化合物として、Na型フッ素4ケイ素雲母の層間にアルミナ及びジルコニアを化学修飾した架橋雲母を合成し、それらの調製物、200°C乾燥物、400°C焼成物について、各種ガスの吸収実験を行った。さらに、酸化モリブデン系の層状化合物ついてはNaMo_2O_4を合成し、同様のガス吸収実験を行った。使用したガスは有極性、無極性を考慮し、一般有毒ガスあるいは環境汚染ガスと考えられている中性のCO、酸性ガスのCO_2、NO、SO_2、Cl_2、アルカリ性のNH_3を選んで実験を行った。ガスの吸収実験には、今年度から新しく加熱可能なガラス製オートクレーブを使用した。真空引きした後吸収用ガスを導入して、室温、1気圧を標準として20分間保持して吸収させ、その後TG-Mass装置により、加熱中に放出されるガス種の検出とその時の温度を調べた。アルミナ及びジルコニアを化学修飾した架橋雲母では吸収実験後のTG-Mass測定において、両者ともNOとNH_3の放出が観測された。NOではアルミナ及びジルコニアを架橋することで放出温度が高温側に移行しており、より強い結合で吸着されたものと考えられる。架橋雲母の400°C焼成物では放出温度が高温から低温度まで広がり、吸着種にいくつかの種類があることが分かった。NH_3でもアルミナ及びジルコニアを架橋することによって放出温度が高温側に移行しており、より強い結合で吸着されるようになると考えられる。しかしNH_3の場合は400°C焼成物でガスの吸収能が消滅した。NaMo_2O_4では測定したガスの内、CO_2の放出が300°C付近に認められた。今年度はガス吸収用試料の調製に時間を要したので、来年度は専門家により調製された試料を使用してガスの吸収脱着実験を集中的に行い、それに基づいてガスの吸収機構の解明を行う。最終年度は、合成Na型フッ素四ケイ素雲母に各種酸化物を化学修飾した架橋雲母、層状酸化物のNa_<0.9>Mo_2O_4、Na_2Ti_3O_7を取り上げた。Na型フッ素四ケイ素雲母の層間にアルミナを化学修飾した架橋雲母ではガスの吸収処理を行った後NO、CO、CH_4の放出が認められた。さらにNO_2を吸収させた場合、加熱によってNOで放出する結果が得られた。しかし、この場合はNOを吸収したときとは放出温度に差があるので、両者の吸収状態は異なると考えられた。Na型フッ素四ケイ素雲母のジルコニアおよびクロミア架橋雲母についてもNOの放出、NO_2が吸収されNOによる放出が認められた。Na_<0.9>Mo_2O_4ではNOおよびNO_2の吸収があってNOガスとして放出されるが、この場合は両者とも250°C付近の同一温度であった。
KAKENHI-PROJECT-10450328
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10450328
双極性ニューロンによる神経回路網構築機構の解明―味覚伝導路をモデルとして―
本研究では、味覚伝導路中の味細胞・一次ニューロン・二次ニューロン間で、特に双極性一次ニューロンが有する、味覚認識可能にするための、回路網の構築機構を解明することを目的とした。まず特定の味覚伝導路を可視化・標識し、回路パターンを把握し、一次ニューロンを中心に、神経回路の構築素子と、構築素子が有する分子機能を解明しようと試みた。特定味覚伝導路を可視化する方法として、特定味覚受容体の転写調節領域下に味覚受容体-GFP cDNAとtWGA-DsRed cDNAを、IRES配列を挿んで連結した導入遺伝子にょり、トランスジェニックマウスを作製した。そして特定味覚受容体の発現(舌上での空間配置)パターン、特定味覚受容体を発現する味細胞とシナプスを形成する双極性一次ニューロンの神経支配様式、及び一次ニューロンの延髄弧束核への投射様式の可視化・解析を遂行した。本マウスにおいては特定の味覚受容体を発現する味細胞が味覚受容体-GFP融合タンパク質とtWGA-DsRed融合タンパク質を共発現する。したがって特定味覚受容体の舌上での発現パターンをGFPの蛍光により可視化し、特定の味覚受容体を発現する味細胞と神経回路網を形成するニューロンの走行を、共発現させた経細胞性トレーサー(WGA)の移行を検出することにより、可視化することが可能となる(tWGA-DsRedの局在をDsRedの蛍光により検出)。一種の苦味受容体について作製したトランスジェニックマウスにおいて、一次ニューロンの細胞体が存在する神経節、及び一次ニューロンが二次ニューロンとシナプスを形成する延髄弧束核での、経細胞性トレーサー(tWGA-DsRed)の空間的配置は、現在詳細な解析を継続しているが、一種の苦味受容体-GFPは喉頭・咽頭部の味蕾中の味細胞に発現し、舌の葉状乳頭・有郭乳頭・茸状乳頭には発現していないことから、上喉頭神経支配領域の味蕾中に限局して発現することが示唆された。味細胞特異的に発現する味覚受容レセプターに味物質が結合することにより、味覚識別が開始される。味覚受容レセプターの中で4080種類からなる苦味受容レセプターの遺伝子ファミリーがクローニングされたが、各味細胞がいかにして特定の味覚レセプターを選択発現し、さらに味覚識別を可能にするために、特定の双極性一次ニューロンとシナプスを形成するかは不明である。一次ニューロンが未分化の細胞に働きかけ、特定の味覚レセプターを発現するよう誘導するか(標的分化誘導)、味細胞が位置情報等をもとにレセプターを選択し発現した後、一次ニューロンが特定の味覚レセプターを発現している味細胞を認識し、シナプスを形成するか(標的選択)を明かにするため、まず特定レセプターの発現パターン、味細胞とシナプスを形成する中枢一次ニューロンの神経支配様式、及び一次ニューロンの延髄弧束核への投射様式を分子遺伝学的アプローチにより解析することを試みた。特定の味覚受容レセプター(mT2R5)の遺伝子座にtargeted mutagenesisを行うための(mT2R5をmT2R5-GFP=IRES=tWGAに改変)targetingvectorを作成した。このtargeted mutagenesisを行ったマウスでは、特定味覚レセプター(mT2R5-GFP)の発現パターンをGFPの蛍光により、またmT2R5を発現する味細胞と神経回路網を形成する双極性一次ニューロンの局在を味細胞から移行していくtWGAの検出により、可視化できる予定である。さらにBACライブラリーのスクリーニングにより、マウスの6番目の染色体上で、苦味受容レセプターファミリーがクラスターを形成している領域を含む、約200kbのBAC cloneを得、複数の苦味受容レセプター遺伝子座における上流配列の解析により、転写調節領域の候補を選出した。現在、苦味受容レセプターの発現調節を行う転写調節因子と、その発現における双極性一次ニューロン依存性を解明するため、研究を継続している。本研究では、味覚伝導路中の味細胞・一次ニューロン・二次ニューロン間で、特に双極性一次ニューロンが有する、味覚認識可能にするための、回路網の構築機構を解明することを目的とした。まず特定の味覚伝導路を可視化・標識し、回路パターンを把握し、一次ニューロンを中心に、神経回路の構築素子と、構築素子が有する分子機能を解明しようと試みた。特定味覚伝導路を可視化する方法として、特定味覚受容体の転写調節領域下に味覚受容体-GFP cDNAとtWGA-DsRed cDNAを、IRES配列を挿んで連結した導入遺伝子にょり、トランスジェニックマウスを作製した。そして特定味覚受容体の発現(舌上での空間配置)パターン、特定味覚受容体を発現する味細胞とシナプスを形成する双極性一次ニューロンの神経支配様式、及び一次ニューロンの延髄弧束核への投射様式の可視化・解析を遂行した。本マウスにおいては特定の味覚受容体を発現する味細胞が味覚受容体-GFP融合タンパク質とtWGA-DsRed融合タンパク質を共発現する。したがって特定味覚受容体の舌上での発現パターンをGFPの蛍光により可視化し、特定の味覚受容体を発現する味細胞と神経回路網を形成するニューロンの走行を、共発現させた経細胞性トレーサー(WGA)の移行を検出することにより、可視化することが可能となる(tWGA-DsRedの
KAKENHI-PROJECT-12050229
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12050229
双極性ニューロンによる神経回路網構築機構の解明―味覚伝導路をモデルとして―
局在をDsRedの蛍光により検出)。一種の苦味受容体について作製したトランスジェニックマウスにおいて、一次ニューロンの細胞体が存在する神経節、及び一次ニューロンが二次ニューロンとシナプスを形成する延髄弧束核での、経細胞性トレーサー(tWGA-DsRed)の空間的配置は、現在詳細な解析を継続しているが、一種の苦味受容体-GFPは喉頭・咽頭部の味蕾中の味細胞に発現し、舌の葉状乳頭・有郭乳頭・茸状乳頭には発現していないことから、上喉頭神経支配領域の味蕾中に限局して発現することが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-12050229
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12050229
励起光エネルギーに依存したPTFEに対する放射光照射効果
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むフルオロカーボン表面に対し、励起光のエネルギーを変化させて放射光照射効果を調べた。本研究では、放射光照射効果の詳細を明らかにしていくために、4重極質量分析器を用いた放射光照射時のフラグメント観測、放射光照射時の温度依存性の影響、PTFEと同様なCF2鎖を持つフルオロカーボン薄膜に対する放射光照射効果の3つの方法により、放射光照射効果を調べ、放射光照射後の表面における炭素とフッ素原子の結合に関する知見を得た。PTFE表面に対する放射光照射効果を明らかにしていくために、放射光照射時にどのようなフラグメントが観測できるのかは、PTFE表面に対する放射光照射効果を調べる上で重要な点であることから、まず、4重極質量分析器をチャンバーに設置し、質量分析器の立ち上げを行った。次に、エネルギーが70260 eVに単色化された放射光を用いて、PTFE表面に対する放射光照射時におけるフラグメントの観測を行い、質量数31, 50, 69のピークが増加することが示された。これらの質量数は、CF, CF2, CF3のフラグメントに対応すると考えられる。放射光の0次光を照射した場合、これらのピークに加えて、質量数81, 100, 119のピークが増加することが示された。これら増加した質量数のピークは、C2F3, C2F4, C2F5のフラグメントに対応すると考えられる。さらに、1253.6 eVのエネルギー持つX線を照射した場合におけるフラグメントの観測も行った。PTFE表面に対する放射光照射効果の詳細を明らかにしていくために、PTFEと同様なCF2鎖を持つフッ素含有自己組織化膜のX線照射効果を光電子分光スペクトル測定により評価した。C 1s内殻光電子スペクトルは、結合エネルギー293, 291, 286, 284.5 eVの4成分存在したが、X線の照射と共に、291 eVの成分が減少することが観測された。この成分は、CF2結合に対応しており、CF2鎖の結合がX線照射により、切断しやすいことを示している。このように、CF2鎖を持つフルオロカーボンは、X線照射により分解しやすく、照射損傷に十分注意を払う必要があることを明らかにした。PTFE表面に対する放射光照射効果を明らかにしていくために、放射光の照射量を調整できるシステム(放射光照射量調整システム・明昌機工製)の製作を行い、立ち上げを行った。その結果、放射光照射量の調整や実験に必要なビームライン調整に要する時間を短縮できるようになった。放射光照射量調整システムを用い、放射光照射時におけるフラグメントの観測を4重極質量分析器により行った。今年度は、放射光のエネルギー範囲を70から680 eVに拡大して、フラグメントの観測を行った。CF, CF2, CF3のフラグメントに対応する質量数3l, 50, 69のピークが観測された。また、1253.6 eVのエネルギー持つX線を照射した場合におけるフラグメントの観測も行った。現在、励起エネルギーに依存した照射効果について解析を行っている。PTFEを含むフルオロカーボン表面に対する放射光照射効果を明らかにしていくために、PTFEと同様なCF2鎖を持つフッ素含有自己組織化膜の放射光照射効果を光電子分光法により調べた。前年度は炭素およびフッ素1s電子の両方の電子を励起できるエネルギーであったが、今年度は炭素1s電子のみを励起できるエネルギーにおいて実験を行った。炭素1s内殻光電子スペクトルは、照射前に結合エネルギー293, 291, 286, 284.5 eVの4成分を観測したが、放射光の照射と共に、293, 291, 286 eVの3成分が急激に減少することを観測した。さらに、これらの成分が低結合エネルギー側にシフトすることも観測した。293, 291 eVの成分は、それぞれCF3, CF2結合に対応しており、炭素とフッ素の結合が放射光の照射により、切断されたことを示している。フッ素含有自己組織化膜に対する放射光照射の効果は、前年度の結果と良く似ており、今回用いたエネルギーでは基本的に差異はないことが示された。放射光照射時におけるPTFEの温度を室温から150°C以上に増加させた場合、急激にエッチング速度が増加することが知られており、これはPTFE内における分子の熱的な運動が関係していると考えられている。そのため、放射光照射時の温度制御を行うために加熱装置の製作・立ち上げを行い、放射光照射時の温度に依存した放射光照射効果を調べた。放射光照射時におけるPTFEの温度が室温から100°Cの場合、光電子分光により表面組成を調べた結果、炭素リッチな表面になっているが、照射時における温度が180°Cから240°Cにした場合、表面組成が炭素リッチな表面から回復してくることが分かった。それぞれの温度領域において、放射光照射量依存性を調べた。また、フラグメントの観測を4重極質量分析器により行い、CF, CF2, CF3のフラグメントに対応する質量数3l, 50, 69のピークが観測された。PTFEを含むフルオロカーボン表面に対する放射光照射効果の詳細を明らかにしていくために、PTFEと同様なCF2鎖を持つフッ素含有自己組織化膜の放射光照射効果を光電子分光法により調べた。前年度までは、炭素1s内殻光電子スペクトルの測定から、放射光の照射により炭素とフッ素の結合が切断されたことを示した。
KAKENHI-PROJECT-25420734
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励起光エネルギーに依存したPTFEに対する放射光照射効果
今年度は、炭素とフッ素の結合状態を調べるために、価電子帯領域の光電子分光実験を行った。価電子帯領域の光電子スペクトルにおいて、幾つかのピークが観測されたが、励起エネルギー依存性により観測された価電子帯領域の光電子スペクトルの軌道成分を明らかにした。以前に報告されている分子軌道計算と比較した結果、軌道のエネルギー準位に関して非常に良い一致を得た。価電子帯領域の光電子スペクトルから、放射光照射量依存性を観測するとフッ素由来のピーク強度が急激に減少することが示された。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むフルオロカーボン表面に対し、励起光のエネルギーを変化させて放射光照射効果を調べた。本研究では、放射光照射効果の詳細を明らかにしていくために、4重極質量分析器を用いた放射光照射時のフラグメント観測、放射光照射時の温度依存性の影響、PTFEと同様なCF2鎖を持つフルオロカーボン薄膜に対する放射光照射効果の3つの方法により、放射光照射効果を調べ、放射光照射後の表面における炭素とフッ素原子の結合に関する知見を得た。まずはじめに、放射光照射量調整システム・明昌機工製の製作を行い、立ち上げを行った。次に、単色化された放射光を用いて、PTFEを含むフルオロカーボン表面に対する放射光照射効果を調べた。(1)放射光エネルギーが70-260 eVのように炭素1s内殻準位の結合エネルギーより低エネルギーの励起光を用いた場合(2)放射光エネルギーが300-680 eVのように炭素1s内殻準位の結合エネルギーより高エネルギーであるが、フッ素1s内殻準位の結合エネルギーより低エネルギーを用いた場合(3)炭素やフッ素1s内殻準位の結合エネルギーより大きいエネルギーを持つ励起光を用いた場合の3つについて、励起光照射時におけるフラグメントの観測を行い、励起光エネルギーに依存した照射効果を調べた。加えて、PTFEと同様なCF2鎖を待つフッ素含有自己組織化膜に対し光電子分光法による評価を行った。前年度の実験と比較するために放射光の励起エネルギーを変えて照射効果を調べた。炭素1s内殻光電子スペクトルは、結合エネルギー293, 29l, 286, 284.5 eVの4成分存在したが、放射光の照射と共に、293, 291 eVの成分が減少することを観測した。これらの成分は、CF3, CF2結合成分に対応しており、CF2鎖の結合が放射光照射により、切断しやすいことを示している。放射光照射の効果は、前年度の結果と良く似ており、今回用いた励起エネルギーでは基本的に差異はないことが示された。これらの研究結果は、2件の国際学会で発表を行った。加えて、Applied Physics A論文誌へ投稿し、平成27年3月にオンラインで掲載されたことから、おおむね順調に進展している。放射光科学放射光照射時におけるPTFEの温度を室温から150°C以上に増加した場合、急激にエッチング速度が増加することが知られており、これはPTFE内における分子の熱的な運動が関係していると考えられている。平成27年度では、PTFEを含むフルオロカーボンに対し、放射光照射時における基板温度の効果を調べていく。そのため、今年度はじめに放射光照射時の温度制御を行うために加熱装置の製作・立ち上げを行い、放射光照射時の温度に依存した放射光照射効果を調べていく。
KAKENHI-PROJECT-25420734
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飛行動物まわりの流動特性と飛行機構におけるサイズ効果
現在地球上に棲息している動物は,地球の長い歴史に裏付けられた巧みな生命機構を有している.機械工学的観点からこれらの動物を眺めた場合,有機体である動物は極めて精密なメカニズムを有する優れた機械であると言える.当該研究は,飛行をおもな移動手段とする動物を取りあげ,比較的サイズの大きい鳥類から比較的サイズの小さい昆虫まで,形態学的な構造を調べ,翼や翅構造と揚力発生機構の関連性をサイズ変化を通じて究明することを目的としている.平成10年度の研究においては,幾種類かの昆虫および文鳥を取りあげ,動物の自由飛行時における翅や翼の運動の高速ダイナミック現象解析装置による3次元解析を行い,動物の飛行器官の変位や速度の時間変動を定量的に明らかにした.それらの解析により,ウシアブ,スズメバチ,文鳥の飛行特性が明らかとなった.また,双翅目昆虫の翅表面に観察される微毛状突起物の詳細な電子顕微鏡観察を行い,微毛状突起物の傾斜方向を丹念に調べ,昆虫の翅まわりのマイクロ・フローの方向を推察した.さらに,鳥類を代表して比較的飛行性能の優れているハトをとりあげ,ハトの羽の周波数特性を調べた.動電形振動試験機を使用し,ハトの翼を構成する初列風切り羽および次列風切り羽の低次曲げモードの固有振動数を決定した.その結果,ハトの風切り羽の固有振動数は,外側の羽ほど低い振動数となることを見い出し,また,羽の固有振動数の鳥類飛行における解釈を与えた.さらに,低次曲げ振動モードの固有振動数付近において,他の方向の曲げ振動モードとのカップリングの発生することも見い出した.現在,地球上に生息している生物は,無限とも言えるような長い時間と資源の裏付けのもとに,その組織,構成要素,機能を進化させてきた.このような生物の持つ優れた機能や機構を工学的な立場から究明することは,極めて意義深い,当該研究は,飛行をおもな移動手段とする動物を取りあげ,比較的サイズの大きい鳥類から比較的をサイズの小さい昆虫まで,形態学的な構造を調べ,翼や翅構造と揚力発生機構の関連性サイズ変化を通じて究明することを目的としている.平成9年度の研究においては,多くの種類の飛行昆虫について,それらの形態学的パラメータを精密に測定し,それらのパラメータとバレンシ数との関係を調べ,飛行昆虫がバレンシ数によって良く整理されることを示した.さらに,走査型電子顕微鏡を使用し,双翅目の昆虫を取りあげ,サイズの比較的大きいアブ,通常のハエ,比較的サイズの小さいショウジョウバエの翅表面の微視的観察を行い,これらに共通する微毛状突起物の構造を明らかにした.これらの構造は翅まわりのマイクロ・フローと関連しており,さらに調査研究が必要である.航空機と比較して飛行動物の羽根は極めて弾性的であるため,鳥類の翼を構成する羽根を取りあげて,低乱風洞を使用して,各羽の空力弾性特性を調べた.ハトの羽に対する様々な方向からの気流応答を調べた結果,羽軸強度には気流方向に対する異方性が認められた.鳥類の羽根に対しても電子顕微鏡観察を行い,羽構造と強度異方性の関連性について現在も研究を進めている.昆虫の自由飛行時における羽根の動きの高速度カメラによる3次元運動解析に関しては,アブとハチについてデータが得られた.従来昆虫の飛行は低レイノルズ数領域であると考えられていたが,R_e=10^310^4の比較的高いレイノルズ数での飛行であることが判明した.現在地球上に棲息している動物は,地球の長い歴史に裏付けられた巧みな生命機構を有している.機械工学的観点からこれらの動物を眺めた場合,有機体である動物は極めて精密なメカニズムを有する優れた機械であると言える.当該研究は,飛行をおもな移動手段とする動物を取りあげ,比較的サイズの大きい鳥類から比較的サイズの小さい昆虫まで,形態学的な構造を調べ,翼や翅構造と揚力発生機構の関連性をサイズ変化を通じて究明することを目的としている.平成10年度の研究においては,幾種類かの昆虫および文鳥を取りあげ,動物の自由飛行時における翅や翼の運動の高速ダイナミック現象解析装置による3次元解析を行い,動物の飛行器官の変位や速度の時間変動を定量的に明らかにした.それらの解析により,ウシアブ,スズメバチ,文鳥の飛行特性が明らかとなった.また,双翅目昆虫の翅表面に観察される微毛状突起物の詳細な電子顕微鏡観察を行い,微毛状突起物の傾斜方向を丹念に調べ,昆虫の翅まわりのマイクロ・フローの方向を推察した.さらに,鳥類を代表して比較的飛行性能の優れているハトをとりあげ,ハトの羽の周波数特性を調べた.動電形振動試験機を使用し,ハトの翼を構成する初列風切り羽および次列風切り羽の低次曲げモードの固有振動数を決定した.その結果,ハトの風切り羽の固有振動数は,外側の羽ほど低い振動数となることを見い出し,また,羽の固有振動数の鳥類飛行における解釈を与えた.さらに,低次曲げ振動モードの固有振動数付近において,他の方向の曲げ振動モードとのカップリングの発生することも見い出した.現在地球上に棲息している動物は,地球の長い歴史に裏付けられた巧みな生命機構をその体内に有している.機械工学的観点からこれらの動物の運動を眺めた場合,有機体である動物の運動は極めて精密なメカニズムを有する優れた機械であると言える.当該研究は,飛翔あるいは飛行をおもな移動手段とする動物を取りあげ,比較的サイズの大きい鳥類から比較的サイズの小さい昆虫まで,形態学的な構造を調べ,翼や翅構造と揚力発生機構の関連性をサイズ変化を通じて究明することを目的としている.
KAKENHI-PROJECT-09650205
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650205
飛行動物まわりの流動特性と飛行機構におけるサイズ効果
平成10年度の研究は平成9年度の研究に引き続き,幾種類かの小さいサイズの昆虫,および,鳥類では文鳥を取りあげ,はばたき動物の自由飛行時における翅や翼の運動の高速ダイナミック現象解析装置による3次元解析を行い,はばたき動物の飛行において重要な器官(翅や翼の各部)の変位や速度の時間変動を3次元座標系において,定量的に明らかにした.そのような解析によって,ウシアブ,スズメバチ,クロマルハナバチ,文鳥の羽ばたき飛行特性が明瞭となった.また,ハエやカなどの双翅目昆虫の翅表面に観察される微毛状突起物の詳細な電子顕微鏡観察を行い,微毛状突起物の傾斜方向を丹念に調べ,昆虫の翅まわりのマイクロ・フローの方向および微毛状構造物の機能を推察した.さらに,鳥類を代表して比較的飛行性能の優れているハトをとりあげ,ハトの羽の加振振動実験によって,周波数応答特性を調べ,ハトの飛行との関連性を明らかにした,すなわち,動電形振動試験機を使用し,ハトの飛行翼を構成する初列風切り羽および次列風切り羽の低次曲げモードの固有振動数を決定した.その結果,ハトの風切り羽の固有振動数は,外側の羽ほど低い振動数となることを見い出し,また,弾性羽の固有振動数の鳥類飛行における解釈を与えた.さらに,低次曲げ振動モードの固有振動数付近において,加振方向に対して直角方向の曲げ振動モードとのモード・カップリングの発生を見い出した.これらの知見は,当該研究の遂行によって初めて得られたものである.
KAKENHI-PROJECT-09650205
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二次元規則配列微小構造障壁による新規分子分別手法の確立
申請者はこれまで、脂質二分子膜内単一分子の拡散挙動を直接観察し数値解析を行うことにより、固体基板上に作製された金属ナノギャップにおける膜内分子の運動性を半定量的に評価する手法を確立した。さらに、ナノギャップ透過性が分子形状およびサイズに依存することを見出し、この透過性の差異を用いた新規分子分別機構構築の端緒を開いた。平成19年度においては、電子線リソグラフィーを用いて高度に形状およびサイズを数nmのスケールにて制御されたギャップを作製し、このギャップを通過する脂質二分子膜内単一色素標識分子の拡散挙動追跡に成功した。平成20年度においてはナノギャップにおける分子分別効果の機構明確化を目的として、個々の分子の軌跡より拡散係数および自発展開方位に対する分子移動速度を解析した。その結果、間隙幅100nm以下のナノギャップにおいて色素標識分子の透過性が特異的に大きく減少し、分子分別効果が発現することが明らかになった。このナノギャップにおいて単一分子に作用する分別効果の駆動力を算出した。算出された駆動力は従来の静電場を用いた分子分別機構における値と同程度であり、外部摂動を用いない本系においても、局所的な分子運動制御に基づいた高い分別効率が実現可能であることが示された。本成果は、単一分子レベルでの精妙な分子操作法への応用可能性を提示するのみならず、固体表面や細胞膜等における局所エネルギー印加による化学反応、エネルギー変換、物質認識・分別などの発現に対する理解および制御への礎となると期待される。電子線リソグラフィーを用いて、カバーグラス基板上に10,50,100,500nmの均一なナノギャップを有する金微粒子規則配列構造を作製した。この基板上を自発的に展開する脂質二分子膜内の単一分子の拡散を、全反射倒立顕微鏡(TIRFM)を用いて直接追跡することにより、微小場における特異的な分子拡散性について定量評価を行った。TIRFM観察の結果、自発展開する脂質二分子膜内に添加された蛍光標識脂質分子が、ナノギャップを通過して拡散することが明らかとなった。得られた分子の軌跡について平均二乗変位(MSD)を用いて数値解析を行った結果、ナノギャップ構造の無い基板上ではランダム拡散に従う脂質二分子膜内の分子拡散性が、ギャップサイズの減少に伴い低下することが明瞭に示された。さらに、ナノギャップ構造の無い基板上および100nm以上のナノギャップを有する基板上においては、脂質膜の展開方向に沿った分子拡散性が、展開方向と垂直な方向よりも大きいことが明らかとなった。一方、50nm以下のナノギャップ存在下においては自発展開方向に沿った分子拡散性が垂直方向よりも小さくなることが示された。これは、自発展開膜がナノギャップを通過する際に膜密度が特異的に増大し、異種分子である蛍光標識分子の透過性が減少したためであると考えられる。本研究はナノメートルスケールにて形状および配列を精密制御されたナノギャップにおける、脂質二分子膜内の特異的分子拡散について、単一分子追跡を用いて評価を行った最初の例である。得られた結果から、微小場における特異的分子拡散を用いた新規分子運動性制御の可能性が示唆された。申請者はこれまで、脂質二分子膜内単一分子の拡散挙動を直接観察し数値解析を行うことにより、固体基板上に作製された金属ナノギャップにおける膜内分子の運動性を半定量的に評価する手法を確立した。さらに、ナノギャップ透過性が分子形状およびサイズに依存することを見出し、この透過性の差異を用いた新規分子分別機構構築の端緒を開いた。平成19年度においては、電子線リソグラフィーを用いて高度に形状およびサイズを数nmのスケールにて制御されたギャップを作製し、このギャップを通過する脂質二分子膜内単一色素標識分子の拡散挙動追跡に成功した。平成20年度においてはナノギャップにおける分子分別効果の機構明確化を目的として、個々の分子の軌跡より拡散係数および自発展開方位に対する分子移動速度を解析した。その結果、間隙幅100nm以下のナノギャップにおいて色素標識分子の透過性が特異的に大きく減少し、分子分別効果が発現することが明らかになった。このナノギャップにおいて単一分子に作用する分別効果の駆動力を算出した。算出された駆動力は従来の静電場を用いた分子分別機構における値と同程度であり、外部摂動を用いない本系においても、局所的な分子運動制御に基づいた高い分別効率が実現可能であることが示された。本成果は、単一分子レベルでの精妙な分子操作法への応用可能性を提示するのみならず、固体表面や細胞膜等における局所エネルギー印加による化学反応、エネルギー変換、物質認識・分別などの発現に対する理解および制御への礎となると期待される。
KAKENHI-PROJECT-07J02322
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根域温度が作物群落の吸水・蒸散に及ぼす影響とアクアポリンの役割に関する研究
イネの吸水・蒸散に及ぼす根域温度の影響について調べ、それを合理的に説明するモデルを構築した。イネの通水機能と蒸散量は根域温度に依存して変化し、臨界温度(13.515°C)以下になると急激に低下する。これらのプロセスは、新たに構築した個体群落レベルの吸水・蒸散モデルで定量的に再現することができる。根域温度の低下にともなった根の通水機能の変化には、アクアポリンによる細胞レベルでの水透過活性の変化が関与していることがわかった。イネの吸水・蒸散に及ぼす根域温度の影響について調べ、それを合理的に説明するモデルを構築した。イネの通水機能と蒸散量は根域温度に依存して変化し、臨界温度(13.515°C)以下になると急激に低下する。これらのプロセスは、新たに構築した個体群落レベルの吸水・蒸散モデルで定量的に再現することができる。根域温度の低下にともなった根の通水機能の変化には、アクアポリンによる細胞レベルでの水透過活性の変化が関与していることがわかった。本研究では、根域の温度環境が植物の吸水-蒸散に及ぼす影響を実験的に明らかにし、これを合理的に再現するモデルを提案する。次にこの吸水-蒸散モデルを、すでに開発が完了している作物(イネ)の群落微気象モデルに組み入れる。さらに、根域温度に依存した根の吸水機能の変化に対するアクアポリンの貢献度を評価し、その役割を解明する。(1)吸水・蒸散に及ぼす根域温度の影響イネの吸水・蒸散量、気孔コンダクタンスおよび根域と植物体の水ポテンシャルをさまざまな根域温度、気象条件(温度、湿度、日射量など)で測定するための実験システムを立ち上げ、吸水・蒸散プロセスに及ぼす根域温度の影響を調べた。根域温度の低下にともない、蒸散量と植物体の水ポテンシャルが低下する様子が観察された。(2)根の通水コンダクタンスの根域温度依存性温度制御が可能なプレッシャーチャンバーを用いて、イネの根の通水コンダクタンスの根域温度依存性を測定した。本年度はシステムの構築と予備的な実験を実施し、根の温度に依存して通水コンダクタンスが変化することを確認できた。(3)根域温度に依存した吸水・蒸散量の変化に対するアクアポリンの貢献度アクアポリンによる水透過を阻害するHgCl_2をイネの根に添加し、吸水・蒸散に及ぼす影響を解析した。HgCl_2を添加後、根域温度25°Cと8°Cに対する蒸散量は同一レベルまで急激に低下し、還元試薬メルカプトエタノールの添加によってある程度まで回復した。これは低い根域温度条件における根の吸水機能の低下が、アクアポリン活性の低下によって生じている可能性を示唆している。アクアポリンの機能解析に有効な、細胞膜と液胞膜の水透過率の分離測定手法に関しても検討した。(4)根の吸水機能の変化を考慮した吸水・蒸散モデルの基本構造過去の研究のレビューなどに基づいて、根域温度に対する根の吸水機能の変化を考慮したイネの吸水・蒸散モデルの基本構造を決定した。本研究では、根域の温度環境が植物の吸水-蒸散に及ぼす影響を実験的明らかにし、これを合理的に再現するモデルを提案する。次にこの吸水-蒸散モデルを、すでに開発が完了している作物(イネ)の群落微気象モデルに組み入れる。さらに、根域温度に依存した根の吸水機能の変化に対するアクアポリンの貢献度を評価し、その役割を解明する。1.吸水・蒸散に及ぼす根域温度の影響イネの吸水・蒸散量、気孔コンダクタンスおよび植物体の水ポテンシャルを、さまざまな根域温度と気象条件(温度、湿度、日射量など)で測定し、イネの吸水・蒸散に及ぼす根域温度と気象条件の相互影響について調べた。蒸散量は根域温度の低下と共にゆるやかに減少し、臨界温度(13.515°C)以下では急速に減少した。湿度の低下は蒸散量の増加をもたらすが、気孔コンダクタンスは低湿条件ほど小さくなった。2.根の通水コンダクタンスの根域温度依存性温度制御が可能なプレッシャーチャンバーを用いて、イネの根の通水コンダクタンスLpの根域温度に対する依存性を測定した。Lpは根域温度の低下と共にゆるやかに低下し、臨界温度(15°C)以下では急速に低下した。3.根域温度に依存した吸水・蒸散量の変化に対するアクアポリンの貢献度他の研究プロジェクトで得られた成果も活用しつつ、根域温度の変化がアクアポリンの発現量や機能に及ぼす影響にもとづき、根域温度に依存した吸水・蒸散量の変化に対するアクアポリンの貢献度を評価した。その結果、1と2で示された臨界温度以上での吸水機能とLpの値は、アクアポリンによって維持されている可能性が示唆された。4.根域温度に対する根の吸水機能の変化を考慮した吸水・蒸散モデル1と2の結果に基づいて、根域温度に対する根の吸水機能を考慮したイネの吸水・蒸散モデルを構築した。本研究では、根域の温度環境が植物の吸水-蒸散に及ぼす影響を実験的に明らかにし、これを合理的に再現するモデルを提案する。次にこの吸水-蒸散モデルを、すでに開発が完了している作物(イネ)の群落微気象モデルに組み入れる。さらに、根域温度に依存した根の吸水機能の変化に対するアクアポリンの貢献度を評価し、その役割を解明する。
KAKENHI-PROJECT-18380151
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根域温度が作物群落の吸水・蒸散に及ぼす影響とアクアポリンの役割に関する研究
1.吸水・蒸散に及ぼす根域温度の影響イネの吸水・蒸散に及ぼす根域温度T_Rの長期的な影響を調べた。蒸散量はT_Rの低下により減少し、20日以内の期間では顕著な回復は見られなかった。長期的なT_Rの低下は、地下部への分配や根の形態も変化させ、それが蒸散量にも影響を与えていることがわかった。2.根の通水コンダクタンスの根域温度依存性イネの根の通水コンダクタンスLpの根域温度T_Rに対する依存性(短期応答)は、アレニウスの関係式で表すことができた。温度依存性の程度を表す活性化エネルギーEaはT_R>15°Cにおいて28kJ mol^<-1>となり、T_R<15°CではLpの急減に対応してEa=204kJ mol^<-1>に増大した。3.根域温度に依存した吸水・蒸散量の変化に対するアクアポリンの役割他の研究プロジェクトで得られた成果も活用し、根域温度T_Rに依存した吸水・蒸散量の変化に対するアクアポリンの貢献度を評価した。T_Rの短期的な変化に対しては、アクアポリン発現量に顕著な変化は見られず、アクアポリン機能の変化が根の通水性に影響を与えていることが推定された。T_Rの長期的な変化に対しては、アクアポリン発現量の変化が根の通水性に影響を与えている可能性が示唆された。4.根域温度に対する根の吸水機能の変化を考慮した吸水・蒸散モデルこれまでの実験結果に基づいて、根の吸水機能を考慮したイネの吸水・蒸散モデルを構築した。モデル計算に基づく感度実験から、根域温度の変化がイネ群落の吸水・蒸散に与える影響を評価した。
KAKENHI-PROJECT-18380151
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18380151
腫瘍内微小環境の能動的制御に基づく革新的DDSの開発とがん治療への展開
ナノキャリアに封入された抗がん剤は、enhanced permeability and retention effect (EPR効果)にしたがって腫瘍内に移行する事が知られている。しかし、このEPR効果を利用したナノキャリアによる抗がん剤デリバリーに限界があり、腫瘍内血管ネットワークに関連する腫瘍内微小環境の能動的な制御を行う事が重要である。経口型抗がん剤および抗がん剤封入ナノキャリアの低用量繰り返し投与が腫瘍内血管系に影響を与え、ナノキャリアの腫瘍への移行性および腫瘍内部での拡散性を改善する事を明らかにし、ナノキャリアの腫瘍移行性を亢進する新規な方法を提示する事ができた。ナノキャリアに封入された抗がん剤は、enhanced permeability and retention effect (EPR効果)にしたがって腫瘍内に移行する事が知られている。しかし、このEPR効果を利用したナノキャリアによる抗がん剤デリバリーに限界があり、腫瘍内血管ネットワークに関連する腫瘍内微小環境の能動的な制御を行う事が重要である。経口型抗がん剤および抗がん剤封入ナノキャリアの低用量繰り返し投与が腫瘍内血管系に影響を与え、ナノキャリアの腫瘍への移行性および腫瘍内部での拡散性を改善する事を明らかにし、ナノキャリアの腫瘍移行性を亢進する新規な方法を提示する事ができた。ナノキャリアの腫瘍への移行はEPR効果によることが知られているが、EPR効果を利用したナノキャリアによるデリバリーには限界があり、腫瘍への到達率を向上する戦略の構築が求められている。本課題では、経口型抗がん剤を低用量で繰り返し投与して腫瘍内微小環境を能動的にコントロールし、キャリアに封入した抗がん剤やsiRNAの薬効を最大に発揮させる方法論の構築をめざし、検討を行っている。平成24年度は、抗がん剤(オキサリプラチン;1-OHP)封入PEG修飾リポーム繰り返し投与時に腫瘍内で生ずる腫瘍内微小環境変化の誘導機構、生じた腫瘍内微小環境変化がEPR効果に与える影響、について詳細な検討を行りた。1-OH封入PEG修飾リポソーム投与後の腫瘍内の細胞死をTUNELL assayによって定量評価したところ、投与間隔が短いほど腫瘍内で細胞死が生じている事が明らかとなった。これは、EPR効果によって血管から漏出し、血管近傍に貯留された初回投与リポソームから放出された1-OHPによる細胞死が、次に投与されたリポソームの貯留スペースを拡大し、よりリポソームの貯留を促進し、これが繰り返される事によるものであると考えられた。血管近傍の細胞の死は、リポソームの貯留スペースの拡大だけではなく、増殖しているがん細胞による血管の圧迫も緩和する可能性があり、結果として併用投与される遊離型薬物の腫瘍移行性も高める可能性が高く、DDSを用いた今後の治療戦略を考えるうえで重要な知見が得られたものと考えている。ナノキャリアの腫瘍への移行はEPR効果によることが知られているが、EPR効果を利用したナノキャリアによるデリバリーには限界があり、腫瘍への到達率を向上する戦略の構築が求められている。本課題では、経口型抗がん剤を低用量で繰り返し投与して腫瘍内微小環境を能動的にコントロールし、キャリアに封入した抗がん剤の薬効を最大に発揮させる方法論の構築をめざし、検討を行っている。平成25年度においては、24年度に得られたオキサリプラチン封入PEGリポソームの短期間での繰り返し投与によっても腫瘍内の微小環境が大きく変化するという結果に基づき、経口型抗がん剤の併用による抗腫瘍効果亢進機構について検討を行った。その結果、オキサリプラチン封入PEGリポソームの薬理効果が腫瘍内における抗がん剤(5-FU)の血管透過性、組織浸潤性を高め良好な相加相乗効果を誘導していることを確認することができた。さらに、オキサリプラチン封入PEGリポソームの短期間での繰り返し投与によっても腫瘍内の微小環境が大きく変化し、後に投与したナノキャリアの腫瘍内移行性が向上するという結果に基づき、核酸を封入したナノキャリアを併用し、抗腫瘍効果の向上が見られるか検討を行った。その結果、核酸を封入したナノキャリア単独ではほとんど抗腫瘍効果が得られなかったの対して、オキサリプラチン封入PEGリポソームと併用した場合にオキサリプラチン封入PEGリポソーム単独の抗腫瘍効果よりも高い効果が得られた。本成果は、核酸を用いた新たな治療戦略となるものと期待している。平成2425年度の検討課題に関して継続して検討を行いつつ、腫瘍内微小環境の変化がナノキャリアに対するEPR効果に与える影響について検討を行った。抗がん剤封入ナノキャリアを繰り返し投与した結果、腫瘍内血管周囲で顕著なアポトーシス細胞の増加が観察され、これはナノキャリアの漏出部位と一致した。このようなアポトーシス細胞の増加は遊離型抗がん剤の繰り返し投与時には観察されておらず、DDS化抗がん剤を繰り返し投与することで、次に投与するナノキャリアの腫瘍移行性が亢進され、結果として高い抗がん剤のデリバリー効率と抗腫瘍効果が得られることを明らかにした。また、このような正の効果を得るためには、抗がん剤封入ナノキャリアを35日の投与間隔で繰り返し投与すべきであることも明らかとなった。一般的なDDS化抗がん剤は、非選択的な分布による副作用の発現を避ける目的で少なくとも3週間以上の休薬期間をあけることが推奨されている。本検討で示した最適レジメでは、臨床用量よりもずっと少ない投与量であっても十分な効果が得られており、臨床でも十分に使用可能なレジメである可能性が高い。また、抗がん剤封入ナノキャリアと別のナノキャリアを併用することで相乗的な制がん効果が得られることもあわせて明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-24390010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24390010
腫瘍内微小環境の能動的制御に基づく革新的DDSの開発とがん治療への展開
これは抗がん剤封入リポソームのEPR効果亢進効果によって別のナノキャリアが腫瘍組織内に移行しやすくなり、制がん効果をより発揮したためであると考えている。26年度が最終年度であるため、記入しない。薬剤学26年度が最終年度であるため、記入しない。当初の計画通り、抗がん剤を含むナノキャリア(PEG修飾リボソーム)投与時の腫瘍内微小環境の変化に関して、定量的、定性的な評価を進めることができているため。当初の計画通り、抗がん剤を含むナノキャリア(PEG修飾リポソーム)投与時の腫瘍内微小環境の変化を利用した新規性の高い治療戦略を提案できているため。26年度が最終年度であるため、記入しない。当初の研究計画に沿って、研究を効率的に進める。当初の研究計画に沿って研究を効率的に進める。26年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-24390010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24390010