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RNA合成も可能なDNAポリメラーゼ変異体の分離とその生化学的解析
DNAポリメラーゼはデオキシリボヌクレオチドを基質としてDNAを合成し、世代を超えた遺伝情報の伝搬に機能している。(DNA複製・修復)。一方RNAポリメラーゼはリボヌクレオチドを基質としてRNAを合成し、細胞内での遺伝子発現の手段となる(転写)。この二つの現象はセントラルドグマ上独立しているが、役者である両基質と両ポリメラーゼは酷似している。細胞がこの化学的に似通った、しかし生物学的に厳然と区別された作業を執行するためには、確実且つ効率的な両機構の識別機能の保証が前提となる。本研究ではDNAポリメラーゼを用いてこの識別機構を明らかにするため、Taqポリメラーゼ遺伝子を用いてリボヌクレオチドをデオキシリボヌクレオチドと同様に取り組む新規の変異体を同定、解析した。このうち一つ(A661E)は正しい塩基を野生型と全く同じ効率で取り込むにも関わらず、リボヌクレオチドを野生型の15倍の効率で取り組むことができた。さらに、この変異体は誤ったデオキシリボヌクレオチドについても全て10倍程度野生型より効率よく取り込み、フレームシフト型の複製エラー発生頻度も10倍程度高かった。A661E変異体を3次元立体モデルで解析してみると、置換したグルタミン酸が間接的にプライマーDNA3末端と相互作用していると推測された。この状態はDNAポリメラーゼがヌクレオチドを取り込む瞬間に野生型より安定な酵素・基質・DNA複合体を作るのに寄付すると考えられ、その結果リボヌクレオチドの取り込み向上をはじめとする誤ったDNA合成をひきおこすと結論した。今回の実験系によってDNA複製の効率と複製忠実度を分離することが可能になった。DNAポリメラーゼはデオキシリボヌクレオチドを基質としてDNAを合成し、世代を超えた遺伝情報の伝搬に機能している。(DNA複製・修復)。一方RNAポリメラーゼはリボヌクレオチドを基質としてRNAを合成し、細胞内での遺伝子発現の手段となる(転写)。この二つの現象はセントラルドグマ上独立しているが、役者である両基質と両ポリメラーゼは酷似している。細胞がこの化学的に似通った、しかし生物学的に厳然と区別された作業を執行するためには、確実且つ効率的な両機構の識別機能の保証が前提となる。本研究ではDNAポリメラーゼを用いてこの識別機構を明らかにするため、Taqポリメラーゼ遺伝子を用いてリボヌクレオチドをデオキシリボヌクレオチドと同様に取り組む新規の変異体を同定、解析した。このうち一つ(A661E)は正しい塩基を野生型と全く同じ効率で取り込むにも関わらず、リボヌクレオチドを野生型の15倍の効率で取り組むことができた。さらに、この変異体は誤ったデオキシリボヌクレオチドについても全て10倍程度野生型より効率よく取り込み、フレームシフト型の複製エラー発生頻度も10倍程度高かった。A661E変異体を3次元立体モデルで解析してみると、置換したグルタミン酸が間接的にプライマーDNA3末端と相互作用していると推測された。この状態はDNAポリメラーゼがヌクレオチドを取り込む瞬間に野生型より安定な酵素・基質・DNA複合体を作るのに寄付すると考えられ、その結果リボヌクレオチドの取り込み向上をはじめとする誤ったDNA合成をひきおこすと結論した。今回の実験系によってDNA複製の効率と複製忠実度を分離することが可能になった。DNAポリメラーゼはデオキシリボヌクレオチドを基質としてDNAを合成する。この過程は生物学的には世代を越えた遺伝情報の伝搬に機能している(DNA複製・修復)。一方RNAポリメラーゼはリボヌクレオチドを基質としてRNAを合成する。この過程は転写、もしくは転写に必要な核酸を合成するものであり、細胞内での遺伝子発現の手段である。この二つの現象はセントラルドグマ上独立した作業であるが、その役者である両基質と両ポリメラーゼは驚くほど似ている。すなわち、糖部の3'位の水酸基の有無以外は基本的に同じ基質ヌクレオチドが、1次構造から3次構造まで非常に類似性が高いポリメラーゼが誤りなく相互識別されている。細胞はどのような機構でこの化学的に似通った、しかし生物学的に厳然と区別された作業をとりおこなうことができるのであろうか?RNAウイルスの存在を考慮したとき、複製と転写は共通の機構から分化したことは明らかである。独立した機構が同時に核内で機能するためには、確実且つ効率的な両機構の識別機能の保証が前提となる。本研究ではDNAポリメラーゼを用いてこの基質分子選択機構を明らかにしていくことをゴールとしている。モデルとなるDNAポリメラーゼとしてTaqポリメラーゼを用い、遺伝子にランダムな変異をカセットミュータジェネシス法により導入した。遺伝的相補性を利用して、変異体ライブラリーの中から活性のあるポリメラーゼ変異体のみを得た。この2次ライブラリーの中からリボヌクレオチドをデオキシヌクレオチドと同様に取り込む新規の変異体を一つ同定して現在詳細な生化学的解析を行っている。DNAポリメラーゼはデオキシリボヌクレオチドを基質としてDNAを合成し、世代を越えた遺伝情報の伝搬に機能している(DNA複製・修復)。一方RNAポリメラーゼはリボヌクレオチドを基質としてRNAを合成し、細胞内での遺伝子発現の手段となる(転写)。この二つの現象はセントラルドグマ上独立しているが、役者である両基質と両ポリメラーゼは酷似している。細胞がこの化学的に似通った、しかし生物学的に厳然と区別された作業を執行するためには、確実且つ効率的な両機構の識別機能の保証が前提となる。
KAKENHI-PROJECT-10670117
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10670117
RNA合成も可能なDNAポリメラーゼ変異体の分離とその生化学的解析
本研究ではDNAポリメラーゼを用いてこの識別機構を明らかにするため、Taqポリメラーゼ遺伝子を用いてリボヌクレオチドをデオキシリボヌクレオチドと同様に取り込む新規の変異体を同定、解析した。このうち一つ(A661E)は正しい塩基を野生型と全く同じ効率で取り込むにも関わらず、リボヌクレオチドを野生型の15倍の効率で取り込むことができた。さらに、この変異体は誤ったデオキシリボヌクレオチドについても全て10倍程度野生型より効率よく取り込み、フレームシフト型の複製エラー発生頻度も10倍程度高かった。A661E変異体を3次元立体モデルで解析してみると、置換したグルタミン酸が間接的にプライマーDNA3'末端と相互作用していると推測された。この状態はDNAポリメラーゼがヌクレオチドを取り込む瞬間に野生型より安定な酵素・基質・DNA複合体を作るのに寄与すると考えられ、その結果リボヌクレオチドの取り込み向上をはじめとする誤ったDNA合成をひきおこすと結論した。今回の実験系によってDNA複製の効率と複製忠実度を分離することが可能になった。
KAKENHI-PROJECT-10670117
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10670117
第三アミン及びスルフィドを基盤分子とする1電子移動型不斉有機触媒の創製
本研究は、これまで殆ど例のない「一電子移動型不斉有機触媒」を開発することを主たる目的として実施したものである。種々検討した結果、ビアリールをもつ不斉芳香族第三級アミンを陽極酸化のメディエーターとして用いると、ベンジルエーテル誘導体の不斉酸化が進行することを見出した。また、関連事項として、光電子移動反応における光増感剤の基盤分子としての有用性が期待されるポルフィリン誘導体の高効率的な新規修飾反応及び光化学・電気化学物性の解明についても検討した。本研究は、陽極酸化反応において基質の一電子移動過程を媒介することが知られている芳香族第三級アミンなどにキラルなビアリール構造等を導入することにより「一電子移動型不斉有機触媒」を開発することを主な目的として実施するものである。この目的を達成するためには、「一電子移動型不斉有機触媒」の適切な分子設計に加え、電気化学的手法以外の電子移動ツールについても検討する必要がある。そこで、一昨年に続き、不斉芳香族第三級ビアリールアミンの構築、特に、スピロ構造により剛直化された軸不斉をもつ不斉芳香族第三級アミンの構築とその「一電子移動型不斉有機触媒」としての可能性を検討した。また、電気化学的以外の電子移動ツールとしてIr(bpy)3などの可視光型光増感剤を用いた光電子移動の可能性について検討した。これらの結果から、以下の新規な知見を得た。1.スピロ構造により剛直化された不斉ビアリール型芳香族第三級アミンを「一電子移動不斉有機触媒」として用い、ベンジルエーテル誘導体の陽極酸化を行った結果、30%ee程度の不斉を誘起できることを見出した。2. Ir(bpy)3などの可視光型光増感剤を電子移動ツールとして用いて、アルコールの酸化反応を検討した結果、この光化学反応系に芳香族第三級アミンを添加すると、高効率で対応するカルボニル化合物へ変換できることを見出し、芳香族第三級アミンが光電子移動反応においても一電子移動過程を媒介できることが明らかとなった。また、関連の事項として、光増感剤の基盤分子としての有用性が期待されるC6F5基などフッ素基を持つポルフィリン誘導体の高効率合成法についても検討し、Pd触媒存在下ハロゲン化ポルフィリンとビス(ポリフルオロフェニル)亜鉛反応剤とのカップリング反応を行うことにより目的のフッ素官能基をもつポルフィリンが短時間かつ高収率で得られることを明らかにした。本研究は、これまで殆ど例のない「一電子移動型不斉有機触媒」を開発することを主たる目的として実施したものである。種々検討した結果、ビアリールをもつ不斉芳香族第三級アミンを陽極酸化のメディエーターとして用いると、ベンジルエーテル誘導体の不斉酸化が進行することを見出した。また、関連事項として、光電子移動反応における光増感剤の基盤分子としての有用性が期待されるポルフィリン誘導体の高効率的な新規修飾反応及び光化学・電気化学物性の解明についても検討した。本研究は、陽極酸化反応において基質の一電子移動過程を媒介することが知られている芳香族第三級アミンや芳香族スルフィドにキラルなビアリール構造等を導入することにより「一電子移動型不斉有機触媒」を開発することを主たる目的として実施するものである。この目的を達成するためには、「一電子移動型不斉有機触媒」の不斉場をどのように構築するかということに加え、触媒としての安定性を確保することが重要である。そこで、昨年度は、ビアリール構造をもつ不斉芳香族第三級アミンを構築し、この化合物の「一電子移動型不斉有機触媒」としての可能性、及び電子移動触媒の安定性を向上させる要因を解明し、以下の新規な知見を得た。1.ビアリール構造をもつ不斉芳香族第三級アミンの短工程での構築法を確立した。2.ビアリール構造をもつ不斉芳香族第三級アミンをメディエーターとして用い、ベンジルエーテル誘導体の陽極酸化を行った結果、20%ee程度の不斉を誘起できることを見出し、「一電子移動型不斉有機触媒」という新概念確立の端緒を得た。3.芳香族第三級アミンの芳香環上にCF3やC6F5などのフッ素官能基を導入すると、電子移動触媒としての安定性を著しく向上できることが判った。また、関連の事項として、光増感剤の基盤分子となるポルフィリン誘導体の高効率的な合成法についても検討し、シリルメチル基を持つポルフィリンが有用な新規なポルフィリン合成素子として利用できることを明らかにした。本研究は、陽極酸化反応において基質の一電子移動過程を媒介することが知られている芳香族第三級アミンや芳香族スルフィドにキラルなビアリール構造等を導入することにより「一電子移動型不斉有機触媒」を開発することを主たる目的として実施するものである。この目的を達成するためには、「一電子移動型不斉有機触媒」の適切な分子設計・構築に加え、電気化学的手法以外の電子移動のツールについての検討も必要がある。そこで、ビアリールをもつ不斉芳香族第三級アミンの構築、特に、スピロ構造により剛直化された軸不斉をもつビアリール型不斉芳香族第三級アミンの構築とその「一電子移動型不斉有機触媒」としての可能性を検討した。また、電気化学的手法以外の電子移動のツールとしてIr(bpy)3などの可視光型光増感剤を用いた光電子移動の可能性について検討した。さらに、関連の事項として、光増感剤の基盤分子としての有用性が期待されるポルフィリン化合物の新規修飾反応の開発を試みた。
KAKENHI-PROJECT-24590031
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24590031
第三アミン及びスルフィドを基盤分子とする1電子移動型不斉有機触媒の創製
得られた知見の概略を以下に記す。(1)スピロビアリール型不斉芳香族第三級アミンを「一電子移動型不斉有機触媒」として用い、ナフチルヒドラゾンを陽極酸化またはIr(bpy)3などの可視光型光増感剤を用いて一電子酸化すると対応するビナフチルアミンを不斉収率が20%程度で与えることを見出した。(2)環周辺にエステルなどの反応性官能基をもつ無金属ポルフィリンは様々な機能性金属ポルフィリン分子の合成素子としての有用性が来される分子であるが、従来、このようなポルフィリン化合物を短工程で効率良く合成する方法は殆ど知られていなかった。これに対して、Pd触媒存在下ハロゲン化ポルフィリンとKnochelらにより開発された官能基許容性有機マグネシウム反応剤とのカップリング反応を行うと目的の反応性官能基をもつ無金属ポルフィリンが高収率で得られることを見出した。明治薬科大学薬品物理化学教室の研究成果の概要や論文タイトルなどを掲載している。化学系薬学(物理有機化学)当初の計画通り、ビアリール構造をもつ不斉芳香族第三級アミンが一電子移動を経由する不斉有機触媒として利用できることを見出し、「一電子移動型不斉有機触媒」という新概念確立の端緒を得た。また、関連事項として、ポルフィリンの高効率フッ素官能基導入反応を開発した。当初の計画通り、ビアリール構造をもつ不斉芳香族第三級アミンが一電子移動を経由する不斉有機触媒として利用できることを見出し、「一電子移動型不斉有機触媒」という新概念確立の端緒を得た。研究実績の項で述べたように、本研究で提案する「一電子移動型不斉有機触媒」がビアリール構造をもつ不斉芳香族第三級アミンを利用することで実現可能であることが判った。特に、ビアリール部分の剛直性を増大した不斉スピロ型芳香族第三級アミンを「一電子移動型不斉有機触媒」として用いると、不斉収率を向上できる可能性を見出した。そこで、今年度は不斉スピロ型芳香族第三級アミンへのフッ素官能基などの導入を行い、電気化学的な安定性と適度な酸化力を併せ持つより実用的な一電子移動型不斉有機触媒反応を開発する。また、昨年度は、芳香族第三級アミンがIr(bpy)3などの可視光型光増感剤を用いた光化学的一電子移動反応においてもメディエーターとして働き得ることを明らかにした。この方法は、電解装置などの特殊な装置を用いる必要がなく、多くの有機合成化学者にも利用しやすいという特徴を持つだけではなく、電解法とは異なり、芳香族第三級アミンの二量化が起りにくいという興味深い反応性を示すため、Ir(bpy)3以外の可視光型光増感剤についてさらに検討を加え、より実用的な一電子移動型不斉有機触媒反応を開発する。研究実績の項で述べたように、本研究で提案する「一電子移動型不斉有機触媒」がビアリール構造をもつ不斉芳香族第三級アミンを利用することで実現可能であることが判った。しかし、その不斉収率は現在のところ20%ee程度であり満足できるものではない。そこで、今年度は、ビアリール構造をもつ不斉芳香族第三級アミンの構造最適化を行うことにより、化学収率と不斉収率の向上を目指す。特に、ビアリール部分の剛直性を増大した不斉スピロ型芳香族第三級アミンの「一電子移動型不斉有機触媒」としての能力を解明し、より実用的な一電子移動型不斉有機触媒反応を開発する。受入れ利息が生じたため。次年度の物品費に組み込み、当初の予定通り、平成26年度研究計画を遂行する。次年度の物品費に組み込み、当初の予定通り
KAKENHI-PROJECT-24590031
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24590031
有機薄膜太陽電池の高効率化を指向した新規熱変換型有機半導体材料の開発
(1) BP誘導体を用いたOTFTの作製と移動度向上通常テトラベンゾポルフィリン(BP)は有機溶媒に対して不溶であることから,可溶性熱前駆体(CP)をスピンコートし,基板を加熱することでBP薄膜へと変換させOTFTを作製する.しかし,この手法ではBPの分子配向を制御できず、その正孔移動度(μ)も0.1 cm2/Vs程と低い.そこでBPの5,15位に置換基を導入した可溶性BP誘導体(TIPS-BP)を用いてディップコート法によりOTFTを作製したところ,規則的に分子を配列されることに成功し,μ= 1.1 cm2/Vsを達成した.この値はBPまたはその誘導体の最高値である.さらに移動度を向上させるため,シリル基のアルキル鎖を変化させた材料(A)を合成した.初期評価としてディップコート法によりOTFTを作製したところ,最高でμ= 2.8 cm2/Vs,平均でμ= 1.4 cm2/Vsと移動度をさらに向上させることに成功した.(2)高い開放電圧を示すBP誘導体の合成とOPVへの応用BPと一般的なn型材料であるPC61BMを用いたOPV素子の開放電圧(VOC)は0.6 V程であり,最新の10%を超える低分子系OPV材料のVOC(0.91.0 V)と比較して低い.これは,BPの高いHOMO準位(-4.9 eV)に起因している.そこで,BPのHOMO準位を低下させ,OPVのVOCを向上させることを目指し,BPの5,15位に強い電子求引基であるトリフルオロメチル基を導入したBP誘導体(CF3BP)の合成を行った.CF3BPはBPと比較してHOMO準位が0.4 eV低下していることが大気下光電子分光法から明らかとなった.そこで初期評価として,pn型OPV素子の作製・評価を行った結果,CF3BPを用いたOPV素子のVOCは0.96 Vと高い値を示した.今後,pin型OPV素子への応用を行うことで,高い変換効率が期待できる.翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。(1) BP誘導体を用いたOTFTの作製と移動度向上通常テトラベンゾポルフィリン(BP)は有機溶媒に対して不溶であることから,可溶性熱前駆体(CP)をスピンコートし,基板を加熱することでBP薄膜へと変換させOTFTを作製する.しかし,この手法ではBPの分子配向を制御できず、その正孔移動度(μ)も0.1 cm2/Vs程と低い.そこでBPの5,15位に置換基を導入した可溶性BP誘導体(TIPS-BP)を用いてディップコート法によりOTFTを作製したところ,規則的に分子を配列されることに成功し,μ= 1.1 cm2/Vsを達成した.この値はBPまたはその誘導体の最高値である.さらに移動度を向上させるため,シリル基のアルキル鎖を変化させた材料(A)を合成した.初期評価としてディップコート法によりOTFTを作製したところ,最高でμ= 2.8 cm2/Vs,平均でμ= 1.4 cm2/Vsと移動度をさらに向上させることに成功した.(2)高い開放電圧を示すBP誘導体の合成とOPVへの応用BPと一般的なn型材料であるPC61BMを用いたOPV素子の開放電圧(VOC)は0.6 V程であり,最新の10%を超える低分子系OPV材料のVOC(0.91.0 V)と比較して低い.これは,BPの高いHOMO準位(-4.9 eV)に起因している.そこで,BPのHOMO準位を低下させ,OPVのVOCを向上させることを目指し,BPの5,15位に強い電子求引基であるトリフルオロメチル基を導入したBP誘導体(CF3BP)の合成を行った.CF3BPはBPと比較してHOMO準位が0.4 eV低下していることが大気下光電子分光法から明らかとなった.そこで初期評価として,pn型OPV素子の作製・評価を行った結果,CF3BPを用いたOPV素子のVOCは0.96 Vと高い値を示した.今後,pin型OPV素子への応用を行うことで,高い変換効率が期待できる.翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16J04335
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J04335
ニューロン間で伝搬するマイクロRNAの同定とその機能に関する基礎的研究
microRNA (miRs)は様々な疾患の病態マーカーとしての可能性がある。本研究では脳特異的なmiRsの機能解析とそれがニューロン間でシグナルを伝達する可能性を検討した。BDNF刺激によりcortexから放出されるエクソソーム含有のmiRsを定量解析した結果、測定を試みたmiRs(miR1, 124a, 132、等)では全て検出限界以下の値を示したが、BDNF刺激後いくつかの種類のmiRsが検出された。一方、これまでほとんど報告のなかったグリア細胞においてはbFGFがmiR-134を増加させ、その反応を介してグルタミン酸回収能力を増強させるなどの作用を有することを論文報告した。microRNA (miRs)は様々な疾患の病態マーカーとしての可能性がある。本研究では脳特異的なmiRsの機能解析とそれがニューロン間でシグナルを伝達する可能性を検討した。BDNF刺激によりcortexから放出されるエクソソーム含有のmiRsを定量解析した結果、測定を試みたmiRs(miR1, 124a, 132、等)では全て検出限界以下の値を示したが、BDNF刺激後いくつかの種類のmiRsが検出された。一方、これまでほとんど報告のなかったグリア細胞においてはbFGFがmiR-134を増加させ、その反応を介してグルタミン酸回収能力を増強させるなどの作用を有することを論文報告した。最近、遺伝子をコードしない小さなmicroRNA(以下miRとする)の働きが注目されており、標的とする機能分子の遺伝子を認識してその発現を調節し、細胞に対して影響を及ぼすことで知られる。さらに、疾患特異的なmiRの発現のレベル変動が、病態マーカーとして有用である可能性が示唆され始めている。我々はこれまで、脳特異的なmiRの働きに着目し、神経栄養因子のひとつBDNFでmiR132などが誘導されてシナプス増加などに重要であることを報告している(Numakawa et al., Neurosci lett, 2011)。そこで、本研究では、これらmiRがエクソソームに充填されてニューロンから放出され、他のニューロンに吸収された後に機能を発揮する可能性を検討することにした。本年度では、主としてラット由来の培養大脳皮質ニューロンを用い、BDNF投与など種々の刺激を行い、細胞外に放出されるエクソソームを回収した。そして、その内容物の同定を試みた。また、エクソソームの膜蛋白質と考えられたCD63とGFPを融合させた蛋白質を培養ニューロンに発現させ、結果として細胞外エクソソーム量に違いが生じるかどうかなどの検討を行った。その結果、BDNFの刺激依存的にmiR-9など、いくつかのmiRにおいて細胞外放出量の増加傾向が観察された。同時に、神経ペプチドのひとつGLP-1で刺激を行ったところ、いくつかの内在性miRの発現が経時的に増加する傾向も観察された。外来性のCD63の発現は、ニューロンの細胞内に大きな小胞様に観察され、今後のモニター解析に有用である可能性が考えられた。本研究では、中枢ニューロンよりマイクロRNA(miR)が放出され、ニューロン間を伝搬する可能性を検証した。生後1-2日齢のラット脳より大脳皮質の初代培養ニューロンを作成し、血清培養を行った。その後、外来エクソソームの混入を除外するために、無血清培地(B27サプリメント)による培養維持を行った。その後、培地中に放出されたエクソソームを回収し、それに含有されるmiRの検出を試みた。BDNF(脳由来神経栄養因子)は、中枢ニューロンにおける神経伝達に重要な神経栄養因子であるが、このBDNF刺激によるエクソソーム分泌促進の可能性も検討した。ナノ粒子解析装置を用いたカウントにより、培養大脳皮質ニューロンから放出されるエクソソーム数への影響の解析を行った結果、BDNF添加による顕著な変化は観察されなかった。単離したエクソソームでは、miR-1, 9, 16, 124a, 134など、精神疾患などとの関連が報告されているmiRの有無を検討した。コントロールでは、これらのmiRの含有量は検出限界以下ではあったが、BDNF刺激後では、特異的なmiRが検出された(未発表)。これは、BDNFによるエクソソームの分泌効率や、エクソソームへのmiRの封入過程、または細胞内におけるmiRの産生増加などの可能性が考えられ、現在、検討中である。また、アストロサイトなどのグリア細胞でのmiRの動態はほとんど明らかではないが、我々は線維芽細胞増殖因子によるmiR-134の産生増加と、その機能におけるERKシグナルの重要性などに関する論文報告を行った(Numakawa et al., Biochem Biophys Res Commun. 2015,456:465-70.)。神経科学まず本年度は、培養大脳皮質ニューロンから検出可能な量のエクソソームが放出されていること、およびエクソソーム内に、miRが含まれており、それが定量可能かどうかの検討を行った。ラットの培養大脳皮質ニューロンの細胞外液よりエクソソームを回収する試みを、超遠心を利用する方法、および市販のエクソソーム分離試薬を用いた方法で実施し、いずれも十分なエクソソームが回収された。その後miRの抽出を行い、定量PCRにてmiRを検出したところ、miR-1, -9, -132などが確認できた。我々は既に、神経栄養因子
KAKENHI-PROJECT-25640019
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25640019
ニューロン間で伝搬するマイクロRNAの同定とその機能に関する基礎的研究
BDNFがグルタミン酸受容体などシナプス関連蛋白質を増加させる働きを持ち、それには細胞内のmiR-132の増加が関与することなどを報告している(Numakawa et al., Neurosci lett, 2011、ほか)。本年度の研究で見出された細胞外放出されたエクソソームにおける含有miRが、実際に別のニューロンに再吸収されるかどうかは今後確認する必要がある。そこで、伝搬エクソソームの可視化の為、エクソソームの表面での局在を想定したCD63蛋白質の導入を試み、蛍光顕微鏡下での観察に成功した。以上、大脳皮質ニューロンの培養条件、およびエクソソームの回収実験の基礎的条件を検討し、検出感度をあげる必要はあるが、細胞外へのエクソソームの放出とそれがmiRを含有していることを示唆するデータは得られてきているので、本年度の研究達成度は十分であると思われる。BDNF投与や脱分極刺激等によりニューロンの興奮を引き起こさせ、ニューロンの活動依存的なエクソソームの細胞外放出機構の存在の発見や、そのメカニズムを介して細胞外に運び出されるmiRの特定を試みる予定である。超遠心法などを用いた生化学的なエクソソームの放出の確認に加えて、可視化CD63をマーカーとした細胞内動態や、別のニューロンへの吸収の様子などをイメージング法にて解析する。さらに、刺激依存的に細胞外放出されるmiRの同定後では、その特定miRがニューロンに対していかなる働きかけをするのか、ターゲットしている遺伝子の探索までを目標とする。特定したmiRのエクソソームを介した伝搬により生じるニューロンの質的変化として、細胞の生存率およびシナプス機能への影響を網羅的に解析する。CD63が単なるマーカー分子として有用なのか、それともエクソソームの細胞外放出に影響を与える機能的な分子である可能性はないのか、の確認をする必要もある。BDNFなどの神経栄養因子には、特定のmiRを増加させてニューロン機能変化を引き起こす可能性があるが、その変化においてエクソソーム放出を利用している成分を究明する。BDNFによるシナプス機能の増強では、神経伝達物質放出が必要なステップであるが、同様な細胞間のコミュニケーションにおいてエクソソーム放出が介在する可能性の検討のために、刺激依存的なエクソソーム放出と内容miRの伝搬の詳細な検討が重要である。初年度では、培養した大脳皮質ニューロンを主として用い、細胞外液よりエクソソーム回収が可能かどうかの基礎的解析を行った。これには、様々な方法を用いたが、超遠心を用いる方法など、脳以外の組織を用いた研究では従来使用されている方法や、市販のエクソソーム分離試薬を用いた場合においても数種類のmiRの検出に成功した。今後において、培養ニューロンの成熟度の影響の検討、各エクソソーム分離法の最適化と選定、および重要と思われるmiRの特定など実験条件の確定後においても相当のランニングコストが生じると予想され、次年度での十分な実験費用が重要であると考えたため。エクソソームの分離試薬やmiR検出測定キットなど、通常行う実験に用いるための消耗品に相応の費用が必要である。また、CD63などのエクソソームマーカーを顕微鏡下で追跡するとともに、内在性蛋白質のノックダウンに用いるコンストラクト購入も予定する。
KAKENHI-PROJECT-25640019
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25640019
FMSにおける統合的スケジューリング問題の最適化に関する研究
本研究の目的は、FMS(flexible manufacturing system)において起きるスケジューリング問題を統合的にモデル化し、その最適解を求める手法を主として数理計画法に基づいて構築することである。典型的なFMSは、1台で多種の切削加工を自動的に行うマシニングセンタ、加工物の搬入、搬出、搬送を無人で行うAGV(automated guided vehicle)、ロボット及び素材、完成品の保管、入出カを自動的に行う立体自動倉庫からなる。特に、数台以下のマシニングセンタからなる小規模のFMSはFMC(flexible manufacturing cell),また、1台のロボットで搬入、搬出、搬送を行うFMSをロボテイクセルといわれる。本研究で得られた主な成果は以下の通りである。1, 2台のマシニングセンタとその中間に洗浄、乾燥などの作業を行うステーションが介在するFMCのスケジューリング問題に対して効率の良い厳密解法を開発した。2, 2台、または、3台のマシニングセンタがそれぞれ有限容量の仕掛かり用バッファを有するロボテイクセルのスケジューリング問題に対して従来より近似精度の高い近似解法を構築した。3,任意台数のマシニングセンタからなるFMSのスケジューリング問題に対して分枝限定法に基づく厳密解法を開発し、それが従来の厳密解法より1桁規模の大きい問題を解き得ることを数値実験により実証した。4,立体自動倉庫における入出力計画問題を新たに定式化し、その最適化のための近似解法をグラフ理論に基づいて構築した。また、数値実験によってその近似性能が優れていることを確かめた。5,処理時間などが確率変数で与えられるとき、スケジューリングを確率過程と見なすことができ、その最も基本的なマルコフ過程について若干の数学的性質を見出した。本研究の目的は、FMS(flexible manufacturing system)において起きるスケジューリング問題を統合的にモデル化し、その最適解を求める手法を主として数理計画法に基づいて構築することである。典型的なFMSは、1台で多種の切削加工を自動的に行うマシニングセンタ、加工物の搬入、搬出、搬送を無人で行うAGV(automated guided vehicle)、ロボット及び素材、完成品の保管、入出カを自動的に行う立体自動倉庫からなる。特に、数台以下のマシニングセンタからなる小規模のFMSはFMC(flexible manufacturing cell),また、1台のロボットで搬入、搬出、搬送を行うFMSをロボテイクセルといわれる。本研究で得られた主な成果は以下の通りである。1, 2台のマシニングセンタとその中間に洗浄、乾燥などの作業を行うステーションが介在するFMCのスケジューリング問題に対して効率の良い厳密解法を開発した。2, 2台、または、3台のマシニングセンタがそれぞれ有限容量の仕掛かり用バッファを有するロボテイクセルのスケジューリング問題に対して従来より近似精度の高い近似解法を構築した。3,任意台数のマシニングセンタからなるFMSのスケジューリング問題に対して分枝限定法に基づく厳密解法を開発し、それが従来の厳密解法より1桁規模の大きい問題を解き得ることを数値実験により実証した。4,立体自動倉庫における入出力計画問題を新たに定式化し、その最適化のための近似解法をグラフ理論に基づいて構築した。また、数値実験によってその近似性能が優れていることを確かめた。5,処理時間などが確率変数で与えられるとき、スケジューリングを確率過程と見なすことができ、その最も基本的なマルコフ過程について若干の数学的性質を見出した。FMSに代表される自動生産システムの特長はロボットやAGVなどによって柔軟な搬送の自動化を実現している点にある。他方、この様な搬送システムは搬送能力が小さく、生産効率のボトルネックとなり得る危険性を有している。このためスケジューリング理論の分野では効率的な多種少量生産実現のため、加工スケジュールと搬送スケジュールの統合的最適化が最近のトピックスとなっている。この意味で本研究プロジェクトの研究成果は世界的に見ても最先端に位置ずけられるものと思われる。すなわち、FMSスケジューリング問題の基本モデルである古典的フローショップスケジューリング問題に対し従来より1桁規模の大きい問題を解くことができる分枝限定法を開発し、その成果を国際学会誌に公表している。また、その手法が各種の自動生産システムのスケジューリング問題に対し、厳密解法としてのみならず、近似解法としても極めて有用であることを実証し、それらの成果を2つの国際会議及び1つの国内学会誌で公表すると共に、1つの国内英文学会誌で公表予定である。研究代表者はこれらの成果を含めた生産スケジューリングの現状と動向に関する見解を国内学会誌の展開記事として公表している。平成9年度は、前年度に引き続き、無人搬送車(AGV)やロボットが介在するFMS(自動生産システム)の最適スケジューリング問題を検討すると共に、生産前後のロジステイクスと深く関係する立体自動倉庫の運用計画に関する研究にも取り組み始めた。まず、古典的なフローショップスケジューリング問題に対して新たに開発した厳密解法アルゴリズムが極めて高い性能を有することが認められて、その報告書が国際学会の論文集に掲載された。このアルゴリズムは、ほんで研究の対象とするFMSにおいてAGVと加工機の統合的スケジューリング問題に拡張され、なお、高い性能を維持していることが確かめられた。この成果は国内の英文雑誌に発表された。以上は任意の規模のFMSを対象としたものであるが、これとは別に、2台あるいは3台の加工機からなる小規模のFMS,すなわち、FMCやロボテイクセルの統合的スケジューリング問題を検討した。
KAKENHI-PROJECT-08650463
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08650463
FMSにおける統合的スケジューリング問題の最適化に関する研究
まず、2台の加工機間に存在するバファーが有限である場合に対して、0バファーや無限バファーノアルゴリズムを巧みに併用した近似解法を提案し、その近似性能が極めて高いことを確かめた。さらに、これを3機会からなるシステムに拡張し、同様な性能が得られることを確かめた。これらの成果はいずれも国内の和文誌に掲載された。次に、2機械の間に洗浄、乾燥などの中間ステージが存在するシステムに対し、新たに効率よく厳密解を与えるアルゴリズムを発見した。この成果は日本機械学会100周年記念国際会議で発表された。この他、これまでの成果を含めた、この方面の内外の研究成果をまとめ、体系化の試みを行った。これらは、国内の雑誌やシンポジウムで報告された。本研究の最終年度である平成10年度では、FMSにおいてこれまで対象としてきた生産ラインへの素材の供給及び完成品の保管を自動的に行う立体自動倉庫の入出力計画の最適化行うことによって、統合的最適化の一方策を試みた。また、これまで検討してきた問題パラメータが既知の確定的問題を、パラメータの一部が確率変数である確率的問題に拡張することを試み、モデルとなるマルコフ過程の基礎的解析を行なった。立体自動倉庫における最適入出力問題においては、スタッカークレーンが1回の入出力で2個の入力品と2個の出力品を取り扱うとき、全ての入出力品を4個組に最適に分割する問題を取り上げ、2部グラフに基づいた近似解法を提案すると共に、その近似精度が従来法よりも優れていることを数値実験によって確かめた。マルコフ過程の基礎解析では、独立した2つの対称的マルコフ過程のスキュープロダクトを取り上げ、このDrichletフォームの陽形式の正則性について証明を行った。スケジューリング過程が近似的にマルコフ過程に従うとして、FMSにおける確率的スケジューリング問題の最適化が今後の課題であると思われる。
KAKENHI-PROJECT-08650463
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ICT(情報通信技術)を活用した障害児のための音楽療法
本研究は、発達障害児および身体障害児のために他者とのコミュニケーションおよび身体機能向上の促進を目的とした音楽療法のためのプログラムを開発することを目的としている。2018年度は、重度の身体障がい児を対象とした音楽療法において、バリアフリー電子楽器Cymis(Cyber Musical Instruments with Score)を適用したプロセスおよび成果を予備的な事例研究としてまとめ、The 5th International Conference of the International Association for Music and Medicine IAMMにおいて発表した。その中で、バリアフリー電子楽器Cymisを対象児の特性や、療法における個々の目的に応じて適用することによって、楽曲演奏を楽しみながら、手指の動きや発語の向上が促されたことが明らかになった。今後はさらに、複数で演奏するアンサンブルを楽しむことにより、他者とのコミュニケーションを促進できるようなプログラムを考案していく予定である。バリアフリー電子楽器Cymisをより幅広く楽しみながら演奏できる方法、すなわち新しいインターフェースの種類や使い方を検討することにより、複数名で演奏するアンサンブルをプログラムに取り入れるための準備が進み、さらに柔軟に実践研究に適用できる可能性を高めることができたことから、おおむね順調に進捗していると考える。複数名で演奏するアンサンブルが可能となるシステムの開発と楽譜データの作成、および音楽療法の実践におけるより良い適用方法について検討することが、今後の課題である。申請者らが開発したバリアフリー電子楽器Cymis(Cyber Musical Instrumentwith Score)、ならびに動作により操作するゲームデバイスKinect(Xbox One Kinectセンサー、マイクロソフト社)を適用したプログラムをさらに教育、臨床現場へ応用しやすいように改良し、対象を身体障害児まで拡大して身体の動きを記録、分析するプログラムにまで発展させる。平成29年度は、従来のCymisとKinectのシステムをより対象児のニーズに応じて使用できるように、小サイズのパソコンもしくはプロジェクターにより大画面に映像を映しながら演奏ができるように改良した。そのことにより、より柔軟に対象児に応じて適用し、音楽と画像を楽しむことが可能となった。順調にCymisとKinentを用いたシステムの改良が進展し、音楽療法において実践的に適用することにより実証的なデータが得られ、平成30年度に行われる国際学会への成果へとつながったことから、おおむね順調に進展していると考えられる。本研究は、発達障害児および身体障害児のために他者とのコミュニケーションおよび身体機能向上の促進を目的とした音楽療法のためのプログラムを開発することを目的としている。2018年度は、重度の身体障がい児を対象とした音楽療法において、バリアフリー電子楽器Cymis(Cyber Musical Instruments with Score)を適用したプロセスおよび成果を予備的な事例研究としてまとめ、The 5th International Conference of the International Association for Music and Medicine IAMMにおいて発表した。その中で、バリアフリー電子楽器Cymisを対象児の特性や、療法における個々の目的に応じて適用することによって、楽曲演奏を楽しみながら、手指の動きや発語の向上が促されたことが明らかになった。今後はさらに、複数で演奏するアンサンブルを楽しむことにより、他者とのコミュニケーションを促進できるようなプログラムを考案していく予定である。バリアフリー電子楽器Cymisをより幅広く楽しみながら演奏できる方法、すなわち新しいインターフェースの種類や使い方を検討することにより、複数名で演奏するアンサンブルをプログラムに取り入れるための準備が進み、さらに柔軟に実践研究に適用できる可能性を高めることができたことから、おおむね順調に進捗していると考える。Kinectが販売中止になったため、代替となる方法を考案する必要がある。また従来の個人による演奏グループによるアンサンブルを可能とするような演奏システムの開発、ならびに楽譜のデータ作成を進めることが当面の課題である。複数名で演奏するアンサンブルが可能となるシステムの開発と楽譜データの作成、および音楽療法の実践におけるより良い適用方法について検討することが、今後の課題である。使用予定だったKinect販売中止に伴う研究計画の修正にともない、物品の購入計画を変更した。また、29年度に予定していた学会発表を、30年度の国際学会へと持ち越すことにより、次年度使用額が生じた。2018年度はバリアフリー楽器Cymisで使用するインターフェースの開発、検討を中心として研究を進めたため、音楽療法の実践における協力やデータ解析に要する人件費および謝礼のための支出が生じなかった。
KAKENHI-PROJECT-17K04960
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自由貿易協定による日本と周辺諸国のサービス貿易への影響
平成15年度の研究目標は、本年度前半に収集・整理された統計データと前年度に構築したサービス貿易と自由貿易協定の理論モデルを応用して、本研究の目的である、日本の自由貿易協定締結による協定国および周辺アジア諸国とのサービス貿易への影響を計量分析し、その成果をまとめることであった。そこで、近年特に顕著に見られる同一産業での双方向貿易(産業内貿易)の分析を、日本のサービス貿易に関して行うことにテーマを絞った。これに関連して、日本と韓国の産業内貿易を研究するため、平成15年12月に韓国の対外経済製作研究院(KIEP)から客員研究員として招聘され、当研究院にて北東アジア地域における産業内貿易の動向に関するセミナーを行った。成果として、サービス貿易の中でも、これまで特に研究が希少であった「自然人の移動によるサービス提供(第4モード)」に焦点を当てた論文を作成した("Intra-IndustryTrade in Services : The Case of Japanese Mode4Trade")。この論文では、自由貿易協定によってパートナー国のサービス供給者(自然人及びその提供者)に優先的な国内市場アクセスを認めることが、日本とアジア諸国とのサービス産業内貿易に与える影響を、日本のデータを用いて計量分析を行った。この論文は、平成15年5月中にワーキング・ペーパーとして発表し、6月中に海外の学術誌に投稿する予定である。平成14年度の研究目標は、実証分析のためのデータ・資料を収集、整理することと、本研究の趣旨に沿ったサービス貿易の理論を構築することであった。平成15年度の研究目標は、本年度前半に収集・整理された統計データと前年度に構築したサービス貿易と自由貿易協定の理論モデルを応用して、本研究の目的である、日本の自由貿易協定締結による協定国および周辺アジア諸国とのサービス貿易への影響を計量分析し、その成果をまとめることであった。そこで、近年特に顕著に見られる同一産業での双方向貿易(産業内貿易)の分析を、日本のサービス貿易に関して行うことにテーマを絞った。これに関連して、日本と韓国の産業内貿易を研究するため、平成15年12月に韓国の対外経済製作研究院(KIEP)から客員研究員として招聘され、当研究院にて北東アジア地域における産業内貿易の動向に関するセミナーを行った。成果として、サービス貿易の中でも、これまで特に研究が希少であった「自然人の移動によるサービス提供(第4モード)」に焦点を当てた論文を作成した("Intra-IndustryTrade in Services : The Case of Japanese Mode4Trade")。この論文では、自由貿易協定によってパートナー国のサービス供給者(自然人及びその提供者)に優先的な国内市場アクセスを認めることが、日本とアジア諸国とのサービス産業内貿易に与える影響を、日本のデータを用いて計量分析を行った。この論文は、平成15年5月中にワーキング・ペーパーとして発表し、6月中に海外の学術誌に投稿する予定である。
KAKENHI-PROJECT-14730057
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液体シンチレータ中の放射性重炭素除去のための開発研究
液体シンチレータ中の^<14>C測定:カムランドの実験データを使いエネルギースペクトルを解析した結果、カムランド液体シンチレーター中の^<14>Cの量が^<14>C/^<12>C比で10^<-18>のレベルであることがわかった。また発光剤に含まれる^<14>Cについて東大原子力研究総合センターの加速器質量分析計(AMS)を使って調べたところ、^<14>C/^<12>C比が10^<-16>であったが、液体シンチレータ中の発光剤は重量比で500分の1なので、^<14>Cの大部分は液体成分からくることが判明した。^<14>Cは環境中に10^<-12>レベルの^<14>C/^<12>C比で広く存在し、AMSによる^<14>C/^<12>Cの感度は測定過程での環境からの汚染で決まると考えられている。液体成分の^<14>C/^<12>Cの測定には少なくとも10^<-18>の超高感度が必要なため、測定環境の清浄度の大幅な改善が今後の課題であることがわかった。蒸留試験:^<14>Cの除去においても周囲からの^<14>Cの侵入をいかに防ぐかが鍵である。現有の蒸留試験装置ではこれを満たす気密性を得るのは困難なため、カムランド実験室で建設中の蒸留純化装置を使い、純化前後の発光剤中の^<14>Cを調べることを計画した。しかしながら建設終了後の装置の調整と定常運転に多くの時間がかかり、合わせて蒸留後のサンプル取り出しに必要な環境整備ができなかった。その他の考察:現在行われているウラン濃縮法は巨大な装置と電力が必要であり、そのまま^<14>C分離に適用するのは現実的でない。同位体元素での原子核の質量の違いによる軌道電子のエネルギー準位_の違いを利用できれば、電磁波を用いてイオン化分離できる可能性がある。炭素では準位の違いは10^<-5>程度と考えられる。しかし実際は^<14>Cは多原子分子中に埋もれているため、多数の構成電子によるエネルギー準位は単原子に比べはるかに複雑であり、この見極めが今後の課題と考えられる。液体シンチレータ中の^<14>C測定:カムランドの実験データを使いエネルギースペクトルを解析した結果、カムランド液体シンチレーター中の^<14>Cの量が^<14>C/^<12>C比で10^<-18>のレベルであることがわかった。また発光剤に含まれる^<14>Cについて東大原子力研究総合センターの加速器質量分析計(AMS)を使って調べたところ、^<14>C/^<12>C比が10^<-16>であったが、液体シンチレータ中の発光剤は重量比で500分の1なので、^<14>Cの大部分は液体成分からくることが判明した。^<14>Cは環境中に10^<-12>レベルの^<14>C/^<12>C比で広く存在し、AMSによる^<14>C/^<12>Cの感度は測定過程での環境からの汚染で決まると考えられている。液体成分の^<14>C/^<12>Cの測定には少なくとも10^<-18>の超高感度が必要なため、測定環境の清浄度の大幅な改善が今後の課題であることがわかった。蒸留試験:^<14>Cの除去においても周囲からの^<14>Cの侵入をいかに防ぐかが鍵である。現有の蒸留試験装置ではこれを満たす気密性を得るのは困難なため、カムランド実験室で建設中の蒸留純化装置を使い、純化前後の発光剤中の^<14>Cを調べることを計画した。しかしながら建設終了後の装置の調整と定常運転に多くの時間がかかり、合わせて蒸留後のサンプル取り出しに必要な環境整備ができなかった。その他の考察:現在行われているウラン濃縮法は巨大な装置と電力が必要であり、そのまま^<14>C分離に適用するのは現実的でない。同位体元素での原子核の質量の違いによる軌道電子のエネルギー準位_の違いを利用できれば、電磁波を用いてイオン化分離できる可能性がある。炭素では準位の違いは10^<-5>程度と考えられる。しかし実際は^<14>Cは多原子分子中に埋もれているため、多数の構成電子によるエネルギー準位は単原子に比べはるかに複雑であり、この見極めが今後の課題と考えられる。
KAKENHI-PROJECT-18654039
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18654039
タンパク質の糖付加修飾・C-マンノシル化が関わる自然免疫系シグナル制御機構の解明
C-マンノシル(Man)化TSR由来ペプチドは自然免疫系シグナルの制御に関わる。本研究では、マクロファージ系細胞におけるC-Man化ペプチドの特異的結合分子を探索し、Hsc70を同定した。C-Man化ペプチドは高い親和性でHsc70と結合した。Hsc70によるTNF-α産生誘導シグナルはC-Man化ペプチドにより増強されることから、C-Man化ペプチドが関わるHsc70を介した自然免疫系シグナル機構の一端が明らかとなった。C-マンノシル(Man)化TSR由来ペプチドは自然免疫系シグナルの制御に関わる。本研究では、マクロファージ系細胞におけるC-Man化ペプチドの特異的結合分子を探索し、Hsc70を同定した。C-Man化ペプチドは高い親和性でHsc70と結合した。Hsc70によるTNF-α産生誘導シグナルはC-Man化ペプチドにより増強されることから、C-Man化ペプチドが関わるHsc70を介した自然免疫系シグナル機構の一端が明らかとなった。1研究の目的本研究では、我々が発見したC-マンノシル(C-Man)化ペプチドによるリポポリサッカライド(LPS)シグナルの増強制御の知見をもとに、マクロファージ細胞株における自然免疫系シグナル伝達に対するC-Man化ペプチドの作用機構を明らかにすることを目的とする。2研究実施内容これまでの研究で、化学合成したC-Man化ペプチド(最小必須構造C-Man-Trp-Ser-Pro)が、マクロファージ様細胞株RAW264.7において、LPSシグナル伝達経路を増強することを見出している。そこで、本年度は、C-Man化ペプチドが細胞に作用する分子機構を明らかにするべく、C-Man化ペプチドが作用する細胞表面の標的分子の同定を目指した。3研究結果C-Man化ペプチド特異的に結合するタンパク質の候補として、Heat Shock cognate protein70(Hsc70)を同定した。この結果は、特異抗体を用いたイムノブロット解析でも確認できた。今後、C-Man化ペプチドとHsc70の結合の自然免疫系シグナルにおける意義について、その細胞シグナルへの影響について生化学的な解析を進める予定である。1.研究の目的本研究は、我々が発見したC-マンノシル(C-Man)化ペプチドによるリポポリサッカライド(LPS)シグナルの増強制御の知見をもとに、マクロファージ細胞株における自然免疫系シグナル伝達に対するC-Man化ペプチドの作用機構を明らかにすることを目的とする。2.研究実施内容これまでの研究で、化学合成したC-Man化ペプチド(最小必須構造C-Man-Trp-Ser-Pro)が、マクロファージ様RAW264.7細胞において、LPSシグナル伝達経路を増強することを見出した。また、C-Man化ペプチドの結合分子としてHeat Shockcognate protein 70(Hsc70)を同定した。本年度は、C-Man化ペプチドとHsc70の結合分子機構の解明を目指した。C-Man-Trp-Ser-Pro-Trp-Cys-Biotinを含む蛍光標識プローブを作製し、精製Hsc70との相互作用について蛍光偏光度測定法により解析した。また、Hsc70のC-Man化ペプチド結合部位を調べるため、Hsc70のヌクレオチド結合領域と基質結合領域を含むそれぞれのドメインタンパク質を遺伝子組換えによる大腸菌発現系で発現させ、精製タンパク質を用いた結合実験を行った。3.研究結果Hsc70は、コントロールペプチドに比べ、C-Man化ペプチドに対して高い親和性で結合することが明らかとなった。その結合親和性はADPによる影響は受けず、ATP存在下で増強した。またHsc70とC-Man化ペプチドの結合は、ヌクレオチド結合領域よりむしろ、基質結合領域に高い親和性のあることがわかった。今後、C-Man化ペプチドとHsc70の結合の自然免疫シグナルにおける意義について、その細胞シグナルへの影響について生化学的な解析を進める予定である。1.研究の目的本研究は、我々が発見したC-マンノシル(C-Man)化ペプチドによるリポポリサッカライド(LPS)シグナルの増強制御の知見をもとに、マクロファージ細胞株における自然免疫系シグナル伝達に対するC-Man化ペプチドの作用機構を明らかにすることを目的とする。2.研究実施内容これまでの研究で、化学合成したC-Man化ペプチド(最小必須構造C-Man-Trp-Ser-Pro)が、マクロファージ様RAW264.7細胞において、LPSシグナル伝達経路を増強することを見出した。また、C-Man化ペプチドの結合分子としてHeat Shockcognate protein 70(Hsc70)を同定し、Hsc70のC-Man化ペプチドに対する結合性に関する解析を行った。本年度は、C-Man化ペプチドとHsc70の結合が自然免疫シグナルにおいて果たす意義を明らかにするため、その細胞シグナルへの影響について生化学的な解析を進めた。3.研究結果RAW264.7細胞に精製したHsc70を添加することにより、c-Jun Kinase(JNK)シグナル経路を介してTumor necrosis factor(TNF)-αの産生が促進した。このHsc70誘導性の細胞シグナルに対して、C-Man化ペプチドは、コントロールペプチドに比べてそのシグナルを増強し、TNF-αについてもさらに産生を促進した。シグナル阻害剤を用いた生化学的解析から、JNKの上流のMAPKKKであるTGF-βactivatedkinase(TAK)1の活性化が、Hsc70によるTNF-α産生に重要であること、そしてこのTAK1のリン酸化をC-Man化ペプチドが初期から促進することが明らかとなった。上記より、C-Man化ペプチドとHsc
KAKENHI-PROJECT-20570112
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20570112
タンパク質の糖付加修飾・C-マンノシル化が関わる自然免疫系シグナル制御機構の解明
70の結合が関わる、自然免疫シグナル経路の新たな制御機構の一端が明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-20570112
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男性ホルモンと競争選好
胎児期テストステロンの暴露量の指標である人差し指と薬指の長さの比率(2D : 4D比率)が競争的環境でのパフォーマンスに与える影響を、大相撲の力士の成績と経済実験から検証した。まず、相撲博物館所蔵の力士の手形データと「大相撲相撲名鑑」による現役時代の昇進、成績などの情報からデータベースを作成し、これらのデータから2D:4D比率と大相撲での昇進、勝率との関係を分析した結果、統計的に有意な負の相関が観察された。また、経済実験によって、男女間の競争選好の差と2D:4D比率の影響を分析した。暫定的な実証結果によれば、競争選好と2D:4D比率の間には有意な統計的関係は観測されなかった。胎児期テストステロンの暴露量の指標である人差し指と薬指の長さの比率(2D : 4D比率)が競争的環境でのパフォーマンスに与える影響を、大相撲の力士の成績と経済実験から検証した。まず、相撲博物館所蔵の力士の手形データと「大相撲相撲名鑑」による現役時代の昇進、成績などの情報からデータベースを作成し、これらのデータから2D:4D比率と大相撲での昇進、勝率との関係を分析した結果、統計的に有意な負の相関が観察された。また、経済実験によって、男女間の競争選好の差と2D:4D比率の影響を分析した。暫定的な実証結果によれば、競争選好と2D:4D比率の間には有意な統計的関係は観測されなかった。本研究の目的は、胎児期テストステロンの暴露量の指標である人差し指と薬指の長さの比率(2D:4D比率)が競争的環境でのパフォーマンスに与える影響を、大相撲の力士の成績と経済実験を用いて検証することである。2D:4D比率が小さいほど、胎児期のテストステロン暴露量が小さいという研究があり、2D:4D比率が小さいほど、いくつかのスポーツ競技ではパフォーマンスが高いこと、金融トレーダーでの成績がいいこと、金融業界への就職率が高いことなどの実証研究が知られている。本研究は、競争に対する嗜好の男女差が生物学的なものなのか否かを明らかにするための基礎的な研究であり、この影響が明らかになれば、男女雇用機会均等政策への示唆が得られる。平成22年度においては、相撲博物館所蔵の大相撲の力士の手形をデジタルカメラで撮影し、2D:4D比率を計測した。また、「大相撲力士名鑑」から力士の現役時代の昇進、成績、体重、身長などのデータを収集し、データベースを作成した。これらの情報を用いて、2D:4D比率と大相撲での昇進、勝率との関係を計量経済学的に分析した。その結果、2D:4D比率と大相撲における昇進、勝率との間に統計的に有意な負の相関が観察された。また、男女間の競争選好の差に関する経済実験も行い、2D:4D比率の影響を分析した。暫定的な実証結果によれば、競争選好と2D:4D比率の間には有意な統計的関係はない。本研究の目的は、胎児期テストステロンの暴露量の指標である人差し指と薬指の長さの比率(2D:4D比率)が競争的環境でのパフォーマンスに与える影響を、大相撲の力士の成績と経済実験を用いて検証することである。2D:4D比率が小さいほど、胎児期のテストステロン暴露量が小さいという研究があり、2D:4D比率が小さいほど、いくつかのスポーツ競技ではパフォーマンスが高いこと、金融トレーダーでの成績がいいこと、金融業界への就職率が高いことなどの実証研究が知られている。このうち、大相撲の力士については、引退した力士について、大相撲博物館に所蔵されている手形から2D:4D比を計測し、生涯最高位および幕内での生涯勝率との関係を計量経済学的に分析した。引退した力士にサンプルを限ったのは、現役の力士の場合には、将来の昇進の可能性があるため、成績の指標が正確ではなくなるからである。また、手形から計測した指の長さが正確なものかを確認するために、鮮明な手形が得られている現役力士9名について、指の長さを直接計測し、その相関が非常に高いことを確認した。これらのデータをもとに、身長、体重などの力士の属性をコントロールした上で、2D:4D比と、生涯最高位および幕内勝率の間に負の相関が存在することを確認した。一方、競争選好を計測する経済実験において、被験者の2D:4D比を計測し、両者の関係を統計的に分析したが、競争選好と2D:4D比の間には、統計的に有意な相関は観測されなかった。
KAKENHI-PROJECT-22653030
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22653030
アジア諸国に於ける高安動脈炎の比較研究
前年度に引続き.アジア諸国での高安動脈炎の病態および病因について.比較検討を続けて行った。各国間での高安動脈炎の初発症状.経過.死亡原因の違い.またこの疾患がアジアで多くみられることから,種族に特有な遺伝的要因の存在を考え.共同研究を進めている。1)高安動脈炎患者の年齢.男女比:調査した患者数は日本と韓国で数十名ずつ増え.日本150名.韓国141名となったが.その他の国では前年度とほぼ同数の患者で.中国533名.タイ49名.インド85名で比較検討した。14歳以上の平均年齢と最高年齢は.共に日本で一番高く.平均年齢約50歳.最高年齢79歳であり.インドで一番低く.平均年齢約30歳.最高年齢53歳であった。各国間でのこの違いは.高安動脈炎としての特徴ではなくおそらく.一般的な平均寿命の違いと推定された。また男女比は.前年度の報告時より患者数が増したので.若干違ってきたが同じような傾向がみられて.男性1に対して.女性は.日本24.0.韓国6.1.中国2.9.タイ1.89.インド1.59であった。やはり.日本では圧倒的に女性の患者が多く.他のアジア諸国では女性の比率が低く.また日本から遠い国ほど女性患者が少ない傾向が確かめられた。2)大動脈造影による血管病変部位:胸部大動脈およびその主幹枝だけの病変は.日本では大動脈造影を施行した96名中の65.7%にみられたのに対して.韓国では109名中の23.8%.インドでは50名中の8.0%であった。腹部大動脈のみの病変では.日本1.0%.韓国17.0%.インド32.0%であった。この病変部位の差が.初発症状が日本では.上肢の“脈なし"で発見され.大動脈弁閉鎖不全になる事が多いが.その他の国では高血圧症として発見されることが多いのを説明できると考えられた。3)HLA-Bw52:患者でのHLA-Bw52antigenの出現頻度は.各国でそれぞれの国の健常人と比較した結果.健常人:患者は日本では128名中16名(13%):98名中45名(46%).韓国では100名中6名(6%):59名中11名(19%).インドでは40名中11名(28%):50名中24名(48%)であった。いずれの国でも高安動脈炎では健常人に比べて.有意にHLA-Bw52antigenの出現頻度が高く.日本以外の国でも.本症の遺伝要因の存在が示唆された。4)合併症:高血圧症は.高安動脈炎患者で.日本は108例中43例(40%).韓国101例中97例(96%).インドは50例中46例(92%)であり.韓国とインドで日本と比較して有意に高頻度であった。逆に大動脈弁閉鎖不全では.同じ患者で.日本32例(30%).韓国7例(7%).インド2例(4%)で.日本で有意に高率であった。5)死因:調査中の本年度までの死亡患者は.日本で12名.韓国で7名.インドでは無しであった。日本では12名中.5例が突然死3例が心不全.2例が脳血管障害.その他が2例であった。韓国では7例中.4例が心不全.1例が脳血管障害.その他が2例であった。日本人の死亡患者では.HLA-Bw52を検索していなかった3人以外の8人は全員陽性であった。突然死と心不全による死亡患者の8人は全員.重症な大動脈弁閉鎖不全を合併していた。一方韓国では7名中3例のみがHLA-Bw52陽性で.大動脈弁閉鎖不全は全例に無く心不全および脳血管障害の死亡者全員に高血圧が認められた。両国ともに高安動脈炎患者の死因の多くは心臓死であるが.その基礎病変は日本では大動脈弁閉鎖不全であり.韓国では高血圧症であると考えられた。6)まとめ:高安動脈炎は1908年に初めて.日本で発表されて以来.多数の患者がみつけられているが.未だにその原因は.判明していない。またタイ等では.比較的最近にたってこの疾患に注目するようになった為に.まだ例数は少なく.断定はできないが.やはり東アジア全体で多く存在するようである。この共同研究では.高安動脈炎が各国共通に遺伝的要因が関与している事が示唆されたがまた一方で病変部位に違いがあり.この違いが何に由来するのか.これが遺伝的関与に更に微細な違いがあるのか.DNAレベルの検索も含めて.この研究を続け.更に発展していきたいと考えている。前年度に引続き.アジア諸国での高安動脈炎の病態および病因について.比較検討を続けて行った。各国間での高安動脈炎の初発症状.経過.死亡原因の違い.またこの疾患がアジアで多くみられることから,種族に特有な遺伝的要因の存在を考え.共同研究を進めている。
KAKENHI-PROJECT-03041031
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03041031
アジア諸国に於ける高安動脈炎の比較研究
1)高安動脈炎患者の年齢.男女比:調査した患者数は日本と韓国で数十名ずつ増え.日本150名.韓国141名となったが.その他の国では前年度とほぼ同数の患者で.中国533名.タイ49名.インド85名で比較検討した。14歳以上の平均年齢と最高年齢は.共に日本で一番高く.平均年齢約50歳.最高年齢79歳であり.インドで一番低く.平均年齢約30歳.最高年齢53歳であった。各国間でのこの違いは.高安動脈炎としての特徴ではなくおそらく.一般的な平均寿命の違いと推定された。また男女比は.前年度の報告時より患者数が増したので.若干違ってきたが同じような傾向がみられて.男性1に対して.女性は.日本24.0.韓国6.1.中国2.9.タイ1.89.インド1.59であった。やはり.日本では圧倒的に女性の患者が多く.他のアジア諸国では女性の比率が低く.また日本から遠い国ほど女性患者が少ない傾向が確かめられた。2)大動脈造影による血管病変部位:胸部大動脈およびその主幹枝だけの病変は.日本では大動脈造影を施行した96名中の65.7%にみられたのに対して.韓国では109名中の23.8%.インドでは50名中の8.0%であった。腹部大動脈のみの病変では.日本1.0%.韓国17.0%.インド32.0%であった。この病変部位の差が.初発症状が日本では.上肢の“脈なし"で発見され.大動脈弁閉鎖不全になる事が多いが.その他の国では高血圧症として発見されることが多いのを説明できると考えられた。3)HLA-Bw52:患者でのHLA-Bw52antigenの出現頻度は.各国でそれぞれの国の健常人と比較した結果.健常人:患者は日本では128名中16名(13%):98名中45名(46%).韓国では100名中6名(6%):59名中11名(19%).インドでは40名中11名(28%):50名中24名(48%)であった。いずれの国でも高安動脈炎では健常人に比べて.有意にHLA-Bw52antigenの出現頻度が高く.日本以外の国でも.本症の遺伝要因の存在が示唆された。4)合併症:高血圧症は.高安動脈炎患者で.日本は108例中43例(40%).韓国101例中97例(96%).インドは50例中46例(92%)であり.韓国とインドで日本と比較して有意に高頻度であった。逆に大動脈弁閉鎖不全では.同じ患者で.日本32例(30%).韓国7例(7%).インド2例(4%)で.日本で有意に高率であった。5)死因:調査中の本年度までの死亡患者は.日本で12名.韓国で7名.インドでは無しであった。日本では12名中.5例が突然死3例が心不全.2例が脳血管障害.その他が2例であった。韓国では7例中.4例が心不全.1例が脳血管障害.その他が2例であった。日本人の死亡患者では.HLA-Bw52を検索していなかった3人以外の8人は全員陽性であった。突然死と心不全による死亡患者の8人は全員.重症な大動脈弁閉鎖不全を合併していた。一方韓国では7名中3例のみがHLA-Bw52陽性で.大動脈弁閉鎖不全は全例に無く心不全および脳血管障害の死亡者全員に高血圧が認められた。両国ともに高安動脈炎患者の死因の多くは心臓死であるが.その基礎病変は日本では大動脈弁閉鎖不全であり.韓国では高血圧症であると考えられた。6)まとめ:高安動脈炎は1908年に初めて.日本で発表されて以来.多数の患者がみつけられているが.未だにその原因は.判明していない。またタイ等では.比較的最近にたってこの疾患に注目するようになった為に.まだ例数は少なく.断定はできないが.やはり東アジア全体で多く存在するようである。
KAKENHI-PROJECT-03041031
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03041031
米国・プエルトリコの行政職へのプエルトリコ人女性の任用とジェンダーをめぐる政治
各種団体との面接調査で、バイリンガル教育、保健衛生方面での青少年教育プログラムなどに女性たちコミュニティ活動リーダーらが活躍している実態が判明した。行政側は、地元で増加するヒスパニック人口に対応する必要性に迫られ、コミュニティ活動の経験豊かなプエルトリコ人を採用する経緯などが明らかになった。特に、プエルトリコがアメリカ領土として教育環境整備が歴史的に進行し、プエルトリコ人女性には教育水準が高い人が多く、それらの女性が教育や政治的経歴を買われて行政アドバイザーなどに任用されるケースが目立つ。米国およびプエルトリコにおいてマイノリティの立場にあるプエルトリコ人女性たちが、それぞれの社会において一定の権限を持つ行政ポストに任用されている状況を具体的に明らかにし、それぞれのケースが当該社会におけるジェンダーをめぐる政治の中でどう位置づけられるか分析することを通して、米国とプエルトリコの間、そしてそれぞれの社会の中に存在する植民地的状況とジェンダーの関係が、現在どのような状態にあるかを明らかにする。各種団体との面接調査で、バイリンガル教育、保健衛生方面での青少年教育プログラムなどに女性たちコミュニティ活動リーダーらが活躍している実態が判明した。行政側は、地元で増加するヒスパニック人口に対応する必要性に迫られ、コミュニティ活動の経験豊かなプエルトリコ人を採用する経緯などが明らかになった。特に、プエルトリコがアメリカ領土として教育環境整備が歴史的に進行し、プエルトリコ人女性には教育水準が高い人が多く、それらの女性が教育や政治的経歴を買われて行政アドバイザーなどに任用されるケースが目立つ。夏、春の授業休業期間を利用し、California州Orange County, Massachusetts州Springfield市、Holyoke市、Florida州Orlando市、Kissimmie市、現地調査を実施した。初年度であり、資料収集、面接調査対象者のリストアップ、連絡調整、予備的面接調査を実施した。オレンジカウンティでは、バイリンガル教育の教員組織長を務めたアナイダ氏に面接調査を行った。スプリングフィールドでは、ヒスパニック子弟の教育問題を解決するために教育庁のスタッフに採用されたプエルトリコ人女性らに現地のバイリンガル教育などの問題に関する面接調査を実施した。フロリダ州では、ヒスパニック住民との行政上のアドバイザーとして採用されたプエルトリコ人女性らに現地の様子および任用過程などに関して面接調査を行った。これらの予備調査の結果、行政側は、増加するヒスパニック人口に対応する必要性に迫られ、コミュニティ活動の経験豊かなプエルトリコ人を採用するなどの経過が観察された。特にプエルトリコ人女性には教育水準が高い人も多く、それらの女性が教育や政治的経歴を買われて行政アドバイザーなどに任用されるケースが目立つ。また、カリフォルニアでは、公民権運動が盛んになる以前に、人種隔離政策に反対した訴訟を起こしたメキシコ人、プエルトリコ人家族があり、その娘およびその経緯を学校教育に取り組む運動をしているメキシコ人女性とも面接調査をすることができた。アメリカ社会のなかで今後再認識されようとしている新たな事項に偶然にも遭遇することができ有意義であり、今後の研究の深化に役立てたい。夏、春の授業休業期間を利用し、California州Fremont, Massachusetts州Springfield市、Holyoke市の現地調査を実施した。サンフランシスコで青少年向け刑務所の行政を担当しているプエルトリコ人女性に現地での生活に関する面接調査実施した。また、60年代にプエルトリコからカリフォルニアに移住した女性たち、現在ニューヨークからカリフォルニア大学へ大学院進学し、プエルトリコ文化活動をしている女性たちから現地での活動の様子やアイデンティティの問題などに関して面接調査を行った。移住の歴史的側面と専門職らが近年になり移住増加が見られることなどが判明した。また、各種団体との面接調査で、ホリヨーク市やスプリングフィールド市では、保健衛生方面での青少年教育プログラムなどに女性たちコミュニティ活動リーダーらが活躍している実態が判明した。行政側は、増加するヒスパニック人口に対応する必要性に迫られ、コミュニティ活動の経験豊かなプエルトリコ人を採用するなどの経過が明らかになった。特にプエルトリコ人女性には教育水準が高い人も多く、それらの女性が教育や政治的経歴を買われて行政アドバイザーなどに任用されるケースが目立つ。夏、春の授業休業期間を利用し、Massachusetts州Lawrence,Boston,New Jersey州Jersey CityおよびPerth Amboy市の現地調査を実施した。ローレンスでは、増加するドミニカ共和国出身の移民グループとの共存がプエルトリコ系住民の課題として存在していた。プエルトリコ出身で教師をしていた女性が、現在教育団体、移民手続きの補助、相談などの非営利団体を立ち上げ運営していた。移民当初はプエルトリコ人を中心に相談ごとを解決していたが、昨今では、ドミニカ共和国からの移住者が多く、プエルトリコ人だけではなくドミニカ人などの他のラテン系の住民の種々の相談に応じている。市長選などにも立候補し、現在も現地の政治活動に参加しているとのことであった。行政と交渉して、放置された学校施設などを移住者の英語学習施設へと回収するなどして、行政とともに住民の問題解決に当たっていた。ローレンス・カレッジでラテン系住民の研究を行っているJorge Santiago教授によれば、プエルトリコ人はロ「レンスから近隣の町でプエルトリコ人住民が大半を占めるホリヨークやスプリングフィールドに逃げていっているとのことであったので、実際にはさまざまな問題が横たわっているようであるまた、ボストンにあるVilla Victoriaのプエルトリコ人居住区では中国系住民との共存が課題として浮上していた。低所得者層の大半が女性世帯主の家庭層であり、生活権の課題を女性たちが中心となって解決に向けて取り組んでいた。そのほか、パーサンボーイではアメリカ本土初のプエルトリコ人女性市長が誕生し選挙母体が女性団体であったことなどの経過について面接調査を実施した。New Jersey州ニューアーク市図書館New Ark Library Spanish Collectionにて、図書館が実施しているオーラルヒストリープロジェクトの資料を収集する。
KAKENHI-PROJECT-19510275
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米国・プエルトリコの行政職へのプエルトリコ人女性の任用とジェンダーをめぐる政治
現在、ニューアーク市はアフリカ系アメリカ人とプエルトリコ人を中心としてヒスパニック系が半々の状態である。古くからの工業地帯であり、工業の衰退時期にプエルトリコ人労働者がニューアーク市に居住し始めて現在に至る市民の歴史資料などを中心に収集した。同じくパターソン市でも資料収集および市学芸員から市の歴史などの説明を受ける。Great Fall of Passaicの近くで歴史地区に指定されている地域である。ニュージャージ州ではパターソンとカムデンが19世紀の工業地帯であり、そこへプエルトリコ人が移住した。パターソン市では、コルトの銃会社が初めて設立されたが、倒産してマサチューセッツに移って成功している。シルクシティと呼ばれ、シルク生産の世界の中心地として栄えた。商業上の潜水艦が初めて作られたところであり、大西洋横断のリンデンバーグの飛行機が作られたことでも有名である。もともとアフリカ系住民が多く黒人野球リーグの中心地であった。現在3割白人、3割黒人、3割ヒスパニックとなっている。プエルトリコ人は全体の14%であり、ドミニカ人も多く、ペルー人の移民が目立つ。ニューヨークでは、ニューヨーク市立大学、プエルトリコ研究所において、バイリンガル教育に関わる資料収集などを実施した。
KAKENHI-PROJECT-19510275
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スマートポリマーを用いるインテリジェント遺伝子デリバリーシステムの創製
体温付近で親水性疎水性変化する温度感受性ポリマーの複合化による温度感受性インテリジェント遺伝子デリバリーシステムの開発を試みた。本年は、高分子鎖が末端に疎水性部位をもつ温度感受性ブロック共重合体、(2-エトキシ)エトキシエチルビニルエーテル(EOEOVE)-オクタデシルビニルエーテル(ODVE)ブロック共重合体で修飾したカチオン性リポソームとプラスミドDNAによるリポプレックスの形成およびその遺伝子導入に及ぼす温度の影響について検討した。数平均分子量が6900、9300、および16700である3種類の共重合体で修飾したリポソームを調製した。このリポソーム上においてこれらの共重合体は、約36°Cでコンホメーション転移を示した。これらの共重合体で修飾したカチオン性リポソームのゼータ電位を測定したところ、35°C以下においては低い表面電位を示したが、35°Cと40°Cの間で急激に表面電位が増大することがわかった。このことは、35°C以下においては、高分子鎖によって正電荷を帯びた脂質膜表面が覆われ、その電荷がシールドされるが、高分子鎖が転移すると荷電表面が露出することを示している。共重合体修飾カチオン性リポソームとプラスミドDNAとの複合化について検討したところ、両者が複合化し、共重合体を含むリポプレックスが得られることがわかった。共重合体修飾リポプレックスによるCV1細胞へのルシフェラーゼ遺伝子の導入について調べたところ、32°Cに比べて、37°Cにおいて遺伝子導入活性が高まることがわかった。リポプレックス上の共重合体のコンホメーションの違いが、リポプレックスと細胞との相互作用に影響を与えているものと考えられた。温度によって遺伝子送達を制御できるインテリジェント遺伝子デリバリーシステムを開発することを目的として、40°C付近で親水性疎水性変化する温度感受性高分子で修飾したリポプレックスを設計した。このようなリポプレックスは体温においては、水和した高分子鎖によって正に帯電したリポプレックスの表面が覆われるため、細胞との相互作用が抑制されるが、40°C以上においては、高分子鎖が収縮するため、正に帯電したリポプレックス表面が露出し、細胞との相互作用が強まるものと考えられる。このようなリポプレックスを得るために、N-イソプロピルアクリルアミド共重合体を合成し、この高分子で修飾したカチオン性リポソームを調製した。このリポソームをプラスミドDNAとインキュベートすることによって、温度感受性リポプレックスの調製を試みた。共重合体修飾カチオン性リポソームとプラスミドDNAとの複合化は徐々に進行し、共重合体修飾リポプレックスが形成されることがわかった。また、この共重合体修飾リポプレックスの形成時に、リポソーム間の融合があまり起こらなかったことから、生成したリポプレックスは、温度感受性高分子修飾リポソームがプラスミドDNAに結合している構造をとっているものと考えられた。得られた温度感受性高分子修飾リポプレックスによるCV1細胞(アフリカミドリザル腎臓由来)へのルシフェラーゼ遺伝子の導入について調べたところ、未修飾リポプレックスに比べて、共重合体修飾リポプレックスは低い遺伝子導入活性を示した。しかし、この共重合体修飾リポプレックスは体温付近の35°Cに比べて、40°Cにおいて遺伝子導入活性を増大させることがわかった。今後、温度感受性高分子の分子量や構造を最適化することによって、遺伝子導入の精密な温度制御が可能なインテリジェントリポプレックスを構築する予定である。体温付近で親水性疎水性変化する温度感受性ポリマーの複合化による温度感受性インテリジェント遺伝子デリバリーシステムの開発を試みた。本年は、高分子鎖が末端に疎水性部位をもつ温度感受性ブロック共重合体、(2-エトキシ)エトキシエチルビニルエーテル(EOEOVE)-オクタデシルビニルエーテル(ODVE)ブロック共重合体で修飾したカチオン性リポソームとプラスミドDNAによるリポプレックスの形成およびその遺伝子導入に及ぼす温度の影響について検討した。数平均分子量が6900、9300、および16700である3種類の共重合体で修飾したリポソームを調製した。このリポソーム上においてこれらの共重合体は、約36°Cでコンホメーション転移を示した。これらの共重合体で修飾したカチオン性リポソームのゼータ電位を測定したところ、35°C以下においては低い表面電位を示したが、35°Cと40°Cの間で急激に表面電位が増大することがわかった。このことは、35°C以下においては、高分子鎖によって正電荷を帯びた脂質膜表面が覆われ、その電荷がシールドされるが、高分子鎖が転移すると荷電表面が露出することを示している。共重合体修飾カチオン性リポソームとプラスミドDNAとの複合化について検討したところ、両者が複合化し、共重合体を含むリポプレックスが得られることがわかった。共重合体修飾リポプレックスによるCV1細胞へのルシフェラーゼ遺伝子の導入について調べたところ、32°Cに比べて、37°Cにおいて遺伝子導入活性が高まることがわかった。リポプレックス上の共重合体のコンホメーションの違いが、リポプレックスと細胞との相互作用に影響を与えているものと考えられた。
KAKENHI-PROJECT-13022260
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13022260
不妊治療を受けているカップルの親密さを測定する尺度の開発
本研究は、不妊治療を受けているカップルの親密さを測定する尺度を開発することを目的として、(1)「不妊治療を受けているカップルの親密さを測定する尺度案」(以下尺度案と表記)を精錬する。(2)精錬された尺度案を実際に活用するための指針を提案する、の2つの目標を設定した。目標(1)を達成するための<尺度案精錬のための準備>として、尺度の妥当性を多面的に検証する方法及び実用化するための具体的手順を検討した。<尺度案精錬のための調査>は、研究協力に同意の得られたカップルを対象にインターネット調査法を用いて実施した。分析は593人を対象とし、「親密さ尺度案(57項目版)」の信頼性及び妥当性を確認後、I-T相関、主成分分析、因子分析を用いて質問項目数を減らしていった。その結果、「親密さ尺度(37項目版)」ができあがった。37項目版は、α係数が全体で0.96、【基本的信頼の実感】【性的満足感】【自己表出】【共に治療に取り組むこと】【悲しみの分かち合い】の5下位尺度においても、内的整合性による信頼性は支持された。妥当性は、基準関連妥当性、仮説検証法並びに因子分析法による構成概念妥当性が支持ざれた。検証的因子分析を行ったところ、GFI0.905、AGFI0.876、RMSEA0.066、AIC675.5であり、モデルの適合度は納得できるものであった。目標(2)を達成するために、これまでの分析結果と文献検討をもとに、「不妊治療を受けているカップルの親密さを測定する尺度」を活用するための指針案を作成した。得点に準じて、ホームページを介して回答者にフィードバックできるようなものである。この指針案の妥当性を検討するために、不妊看護のエキスパートと検討会を開催し、精錬した。また、ホームページに掲載するために、不妊治療を受けているカップルへの診断結果の示し方等についても検討した。本研究は、不妊治療を受けているカップルの親密さを測定する尺度を開発することを目的として、(1)「不妊治療を受けているカップルの親密さを測定する尺度案」(以下尺度案と表記)を精錬する。(2)精錬された尺度案を実際に活用するための指針を提案する、の2つの目標を設定した。目標(1)を達成するための<尺度案精錬のための準備>として、尺度の妥当性を多面的に検証する方法及び実用化するための具体的手順を検討した。<尺度案精錬のための調査>は、研究協力に同意の得られたカップルを対象にインターネット調査法を用いて実施した。分析は593人を対象とし、「親密さ尺度案(57項目版)」の信頼性及び妥当性を確認後、I-T相関、主成分分析、因子分析を用いて質問項目数を減らしていった。その結果、「親密さ尺度(37項目版)」ができあがった。37項目版は、α係数が全体で0.96、【基本的信頼の実感】【性的満足感】【自己表出】【共に治療に取り組むこと】【悲しみの分かち合い】の5下位尺度においても、内的整合性による信頼性は支持された。妥当性は、基準関連妥当性、仮説検証法並びに因子分析法による構成概念妥当性が支持ざれた。検証的因子分析を行ったところ、GFI0.905、AGFI0.876、RMSEA0.066、AIC675.5であり、モデルの適合度は納得できるものであった。目標(2)を達成するために、これまでの分析結果と文献検討をもとに、「不妊治療を受けているカップルの親密さを測定する尺度」を活用するための指針案を作成した。得点に準じて、ホームページを介して回答者にフィードバックできるようなものである。この指針案の妥当性を検討するために、不妊看護のエキスパートと検討会を開催し、精錬した。また、ホームページに掲載するために、不妊治療を受けているカップルへの診断結果の示し方等についても検討した。本研究は、不妊治療を受けているカップルの親密さを測定する尺度を開発することを目的として、(1)「不妊治療を受けているカップルの親密さを測定する尺度案」(以下尺度案と表記)を精錬する。(2)精錬された尺度案を実際に活用するための指針を提案する、の2つの目標を設定した。なお、平成17年度は目標(1)を達成するために、<尺度案精錬のための準備>及び<尺度案精錬のための調査>を行った。<尺度案精錬のための準備>として、尺度の妥当性を多面的に検証する方法及び実用化するための具体的手順について検討した。また、ヨーロッパ不妊学会では心理学研究者及び看護実践者と不妊治療を受けているカップルのアセスメントツールに関する情報交換を行った。一方、<尺度案精錬のための調査>は、研究協力に同意の得られたカップルを対象にインターネット調査法を用いて実施した。調査に先立ち、研究者個人所有の調査専用ホームページを開設した。開設にあたっては、ホームページ管理者及びユーザーの個人情報保護も含めたシステムセキュリティの確保、アクセス数を増やす方略の検討、アクセシビリティの保証、レンタルサーバーの契約など、専門家からコンサルテーションを受けた。
KAKENHI-PROJECT-17592264
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17592264
不妊治療を受けているカップルの親密さを測定する尺度の開発
その上で、研究協力者に回答結果及びそれに合わせたアドバイスがフィードバックできるシステムを持ったホームページの作成を業者に委託した。一方、研究協力者を募るため、「日本産婦人科学会」に体外受精実施施設として登録している医療施設及び自助グループへ研究協力依頼を行った。平成18年度も引き続き調査を行い、回収されたデータの分析をもとに尺度の信頼性及び妥当性の検討を行う予定である。さらに、その結果と文献検討をもとに、尺度の実用化へ向けてより簡便な尺度にすると共に、査定の基準値を設定する。さらに、尺度を実際に臨床活用するための指針を検討する予定である。本年度の"目標(1)「不妊治療を受けているカップルの親密さを測定する尺度案(57項目版)」を精錬する"を達成するために、平成17年度に引き続きインターネット調査を行った。調査期間中、専用サイトへのアクセス者の中で研究に協力してくれた593人を対象に分析した。「親密さ尺度案(57項目版)」の信頼性及び妥当性が支持されていることを確認後、「親密さ尺度案」の精錬を行った。文献検討並びに尺度開発の専門家の意見を交え、I-T相関、主成分分析、因子分析を用いて質問項目数を減らしていった結果、「親密さ尺度(37項目版)」ができあがった。37項目版は、α係数が全体で0.96、【基本的信頼の実感】【性的満足感】【自己表出】【共に治療に取り組むこと】【悲しみの分かち合い】の5下位尺度においては0.85から0.94の範囲であり、内的整合性による信頼性は支持された。妥当性についても、基準関連妥当性、仮説検証法並びに因子分析法による構成概念妥当性が支持された。検証的因子分析を行ったところ、GFI0.905、AGFI0.876、RMSEA0.066、AIC675.5であり、モデルの適合度は納得できるものであった。"目標(2)精錬された不妊治療を受けているカップルの親密さを測定する尺度を実際に活用するための試案を提案する"を達成するために、これまでの分析結果と文献検討をもとに、「不妊治療を受けているカップルの親密さを測定する尺度」を実際に活用するための指針案を作成した。合計得点並びにカテゴリー得点に準じて、ホームページを介して回答者にフィードバックできるようなものである。この指針案の妥当性を検討するために、不妊看護のエキスパートと検討会を開催し、精錬した。また、今後ホームページに掲載するために、不妊治療を受けているカップルへの診断結果の示し方等についても検討した。今後、作成した指針の普遍性を検討することと情報発信するために、来年度開催されるICM及び日本生殖看護学会で研究成果を公表する予定である。
KAKENHI-PROJECT-17592264
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17592264
肝胆膵領域の高精細異時相融合画像と簡易動画表示の研究
MD-CTでは、動脈系、門脈系、静脈系や各臓器をそれぞれ高精細三次元画像として作成した。PETのデータは病変の集積部の三次元画像の作成を行った。さらにMRCPで胆道膵管の三次元画像の作成を行い、これら画像をそれぞれ融合させて三次元的に表示することができた。すべての画像情報の表示が可能となり、ナビゲーションやシミュレーション画像としての使用がある程度可能であった。また3T MRIのデータでの三次元画像作成へも取り組んだ。最終的にこれらの画像をworkstation上で角度や方向を変えて表示し、病変部と周囲との関係を三次元的に最も詳細に表示可能な位置で、viewer表示することも可能となった。MD-CTでは、動脈系、門脈系、静脈系や各臓器をそれぞれ高精細三次元画像として作成した。PETのデータは病変の集積部の三次元画像の作成を行った。さらにMRCPで胆道膵管の三次元画像の作成を行い、これら画像をそれぞれ融合させて三次元的に表示することができた。すべての画像情報の表示が可能となり、ナビゲーションやシミュレーション画像としての使用がある程度可能であった。また3T MRIのデータでの三次元画像作成へも取り組んだ。最終的にこれらの画像をworkstation上で角度や方向を変えて表示し、病変部と周囲との関係を三次元的に最も詳細に表示可能な位置で、viewer表示することも可能となった。症例収集肝胆膵疾患で特に手術の適応と考えられる症例28例に対して、MDCTでの300-370mgI/m1濃度製剤を用いた造影を行い、早期動脈相、門脈優位相、静脈相の撮影のそれぞれのデータを0.63-1.25mmに再構成したデータを得た。さらにFDG-PETによるデータ収集もAllegro(ADAC社製)を用いて、transmisson time 23 sec/bed,emissiontime2min30sec/bedで行い、18例でデータを得た。また新にMRI画像のデータ、MRCP画像も融合画像の対象とし、12例にて撮像を行い再構成データを得た。高精細三次元画像と融合画像作成MDCTでの三次元画像とPETの三次元画像の融合画像作成のためのソフトを購入し、さらにこのソフトの応用でこれらにMRCPの三次元画像の融合も可能とした。MDCTでの経静脈性造影法で得られたデータからは、動脈系、門脈系、静脈系や各臓器をそれぞれ高精細三次元画像として作成した。さらにPETのデータもworkstationに転送し、病変の集積部の三次元画像の作成を行った。MRCPでは胆道膵管の三次元画像の作成を行った。各三次元画像を作成した後、これら画像をworkstation上で角度や方向を変えて表示し、病変部と周囲との関係を三次元的に最も表示可能な位置で、異時相融合画像の作成を試み、現時点ではまだ数例であるが、評価可能な融合画像の作成が行えている。この研究成果については、ESGAR(ヨーロッパ腹部放射線学会)で発表予定である。(1)症例収集:前年度に続き,有用と思われる肝胆膵領域症例を選択し,症例28例に対して,MDCTで早期動脈相,門脈優位相,静脈相の撮影のそれぞれのデータを0.63-1.25mmに再構成したデータを得た。さらにFDG-PETによるデータ収集も14例でデータを得た。またこのうち8例ではMRI画像のデータ,MRCP画像も融合画像の対象として再構成データを得た。(2)高精細三次元画像と融合画像作成:MDCTでの三次元画像とPETの三次元画像の融合画さらにMRCPの三次元画像の融合画像の作成も試みた。前年と同様にMDCTでは,動脈系,門脈系,静脈系や各臓器をそれぞれ高精細三次元画像として作成した。PETのデータは病変の集積部の三次元画像の作成を行った。今回はさらにMRCPで胆道膵管の三次元画像の作成を行った。これら画像をworkstation上で角度や方向を変えて表示し,病変部と周囲との関係を三次元的に最も表示可能な位置で,異時相融合画像の作成を試み,さらに評価可能な融合画像の作成を試みている。(3)簡易動画表示としてのvirtual 3D viewerも今回使用し,融合画像のdataから通常のPCで360°回転させて観察可能な表示systemへの応用が可能であった。この研究成果については,一部を2007年6月にESGAR(ヨーロッパ腹部放射線学会)で発表した。(1)症例収集:前年度に続き、有用と思われる肝胆膵領域症例を選択し、症例20例に対して、MDCTで早期動脈相、門脈優位相、静脈相の撮影のそれぞれのデータを0.63-1.25mmに再構成したデータで得た。さらにFDG-PETによるデータ収集も新たに8例でデータを得た。またこのうち5例ではMRI画像のデータ、MRCP画像も融合画像の対象として再構成データを得た。また今回はさらに新たに3T MRIの画像データの収集も12例で行った。(2)高精細三次元画像と融合画像作成:MDCTでの三次元画像とPETの三次元画像の融合画像さらにMRCPの三次元画像、さらに3T MRIから得られたデータもCTと同様に血管系の三次元画像の作成を試みた。前年と同様にMDCTでは、動脈系、門脈系、静脈系や各臓器をそれぞれ高精細三次元画像として作成した。PETのデータは病変の集積部の三次元画像の作成を行った。
KAKENHI-PROJECT-18591370
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18591370
肝胆膵領域の高精細異時相融合画像と簡易動画表示の研究
前回同様のMRCPで胆道膵管の三次元画像の作成も行ない、さらに今回3T MRIからの血管系の三次元画像も作成を試みた。これら画像、すなわちCT,MRI,MRCPの各々の三次元画像をworkstation上で角度や方向を変えて表示し、病変部と周囲との関係を三次元的に最も表示可能な位置で、異時相融合画像の作成を試みている。体部分の症例において、立体的評価に有用な画像の作成が行えた。(3)簡易動画表示としてのvirtual 3D viewerも今回使用し、融合画像のdataから通常のPCで360°回転させて観察可能な表示systemへの応用が可能であった。
KAKENHI-PROJECT-18591370
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波浪推進船の性能把握のための基礎研究
波浪推進装置の性能把握の為に1.2mの小型自走式波浪推進模型を設計、実海域で波浪のみでの走行に成功し、走行データの取得に成功した。走行の為に、GPSおよび磁気コンパスによる無人走行システムを構築すると共に、船体運動および翼に働く力を計測するためのデータロガーシステムを構築した。この無人走行及びデータロガーシステムはマイコンベースの制御装置で構築し、小型軽量化を計ると共に、その使用電力の低減を図った。その結果、走行に必要な制御用電力消費が押さえられ、模型甲板に設置する程度のソーラセルの発電量で、電力消費はまかなえる程度と成り、本システムは海洋観測の為の基礎的なプラットフォームとして、波力を用い無限の走行性能を有するものとなることがわかった。波浪推進装置の性能把握の為に1.2mの小型自走式波浪推進模型を設計、実海域で波浪のみでの走行に成功し、走行データの取得に成功した。走行の為に、GPSおよび磁気コンパスによる無人走行システムを構築すると共に、船体運動および翼に働く力を計測するためのデータロガーシステムを構築した。この無人走行及びデータロガーシステムはマイコンベースの制御装置で構築し、小型軽量化を計ると共に、その使用電力の低減を図った。その結果、走行に必要な制御用電力消費が押さえられ、模型甲板に設置する程度のソーラセルの発電量で、電力消費はまかなえる程度と成り、本システムは海洋観測の為の基礎的なプラットフォームとして、波力を用い無限の走行性能を有するものとなることがわかった。地球環境の問題からも、船舶にも自然エネルギーの利用の研究の必要性が強く求められている。ここで検討している波浪推進装置は、海洋の自然エネルギーのうち、今まで未利用であった波エネルギーを船舶の推進に利用するという新たな可能性をひらく物である。この装置は単純な水中翼部を船体前部に持ち、波力を船舶の推進力に直接変換する物であるとともに、波浪中の船体運動を小さくする減揺装置としての高い機能を有する。その性能は正面向波状態でも波漂流力に打ち勝ち、波に向かい進むことが可能であり、また本プロジエクトで開発している装置は波の全方向において船体の推進力を発生可能な装置である。また運動減少効果はPitch、Rollでは50%までの性能を発揮できる。本装置の実用化に向けての取り組みとして、2008年にはマーメイドIIを用い、ハワイ-日本までの7800Kmの波浪と波浪推進のみを利用して航海を行い、その実用性を示す事が出来た。しかし、その時には航海の安全優先という制約や、計測装置の不備があり、十分な船体運動や翼や船体強度に関するデータが蓄積されていない。ここではそれらを補い、将来の実用化に向けてのデータ蓄積のために、小型のAVとして自走実験を海上で行う事を考えている。この小型模型船はGPSを搭載し、自ら定められた航跡をたどり自動的に様々なデータを蓄積する機能を付与する。本年度はそのための小型波浪推進船の模型船の開発と制作、計測制御装置の開発および、解析システムの整備を行い、次年度の実海域走行の計測に備えた。波浪推進船の性能把握には、波浪推進船の波浪中の走行によるデータ蓄積が欠かせない。ここではそれを小型の模型において行い、コストと安全性を確保することを考えた。また走行には長時間の、実海域の走行を考えている。そのため、模型は洋上を走行する耐環境性能と信頼性を有する必要がある。これを確保することが重要であり、実験による試行繰り返すことが必要な信頼性を確保することとなる。本年度は模型波浪推進船への計測器搭載とそのシステム構築を主に行う。洋上でのハンドリングを考え、通常の寺僧模型よりもはるかに小型の模型船(船長1.2m)としてある。そのため、洋上で自律走行をし、計測を行うために必要な計測制御機器を搭載し、蓄電池を搭載し、かつ重量バランスと当細事の船の姿勢を取ることが最重要となる。その為には,小型軽量の計測制御装置の開発が必要であり、かつその全体システムの構築が必要となる。本年度はそのシステムの構築と、重量計測、搭載を行う。その結果、初期計画よりも模型船の船体重量のうち艤装品重量が多く、船のトリムが取りにくい事が判明した。この改良を施すとともに、2号艇に対しは軽量の艤装を用意した。また、波浪推進システム部分のボラード状態での水槽試験を行い、翼に働く力の計測を行う分力計システムの性能把握とその改良を行った。この実験を通じ、新たな波浪推進性能向上の鍵となる能動型波浪推進システムについての知見を得、一部システムの拡張と実験を行う。小型波浪推進船模型を製作し、それにGPSと方位センサーを用いた小型軽量で省エネルギー型の自律航法システムを構築、実海域波浪中の挙動を計測する小型データロガーシステムを開発する事に成功した。これを用い静岡県静岡市清水区の三保海岸で走行実験を行い、走行データを得た。この波浪推進船は小型で、実海域での所定航路点に向かい、波浪のみでの自律走行可能性を実海域走行で実証し、また小型模型ででも波浪中での耐航性能の高さを示した。実海域波浪中の自走走行は同時に、小型軽量、省エネルギーの無限の航続距離を備えた自律航法システムの開発成功を意味する。本実験より波浪推進装置を組み込んだ海洋観測プラットフォームは、波浪による力を利用して走行、波浪さえ有れば海面上で無限の航続距離を約束され、自律航法システムを有する海洋観測のための自走式計測システムのプロトタイプが完成したことを意味する。
KAKENHI-PROJECT-21360437
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21360437
波浪推進船の性能把握のための基礎研究
本システムでの走行より航法の必要電力消費が少なく、本模型船甲板上に展開できる面積の太陽電池で、本船の制御用の電源入力をまかなえる。これは走行航路制御も自然エネルギーでまかなえる。これは、福島沖の様な長時間に渡り、海洋環境調査のための無人長時間走行計測可能性を有するプラットフォームの完成を意味する。また、走行時に船体運動も小さくできる波浪推進装置の特性を有し、走行安全性を確保出来る。走行には逆に荒れた海域では有利となる特性を有する今までに無い形式の海洋観測プラットフォームの完成となる。このシステムの応用例は広く、海洋生態系、海洋環境調査、海洋資源探査等が考えられ、また津波センサーとして、大洋を常に走行観測する使用例も可能となる。本装置の大型化は容易で、大型化すれば海洋波のスペクトラムの高いエネルギー分布域を利用でき、波浪中での高速走行性能を容易に達成でき、また大型化は多数センサー搭載の可能性を意味する。
KAKENHI-PROJECT-21360437
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21360437
Lefschetz thimbleによる経路積分と複素作用系のシミュレーション法
これと並行して進めていた,カイラルゲージ理論(標準模型、SO(10)理論など)の格子定式化に関する研究に進展があった[1][2].また,フェルミオン数生成の非平衡過程の記述に必要な実時間相関関数を与えるSchwinger-Keldysh形式を,格子ゲージ理論に拡張する研究に進展があった[3][4].この格子Schwinger-Keldysh形式にLefschetz thimble法を適用するために, Lefschetz thimble structureの解析を進めた.この進展によって, 2次元U(1)および4次元SO(10)格子カイラルゲージ理論にLefschetz thimble法を適用する目処がたち,研究計画(4)への準備が整いつつある.並行して進めていた,カイラルゲージ理論(標準模型、SO(10)理論など)の格子定式化に関する研究に進展があった.また,フェルミオン数生成の非平衡過程の記述に必要な実時間相関関数を与えるSchwinger-Keldysh形式を格子ゲージ理論に拡張する研究に進展があった.これらの研究課題を優先的に進めたため,遅れが生じた.この進展によって, 2次元U(1)および4次元SO(10)格子カイラルゲージ理論にLefschetz thimble法を適用する目処がたち,研究計画(4)への準備が整いつつある.今後は,特に,新しい定式化による格子カイラルゲージ理論をターゲットとして,研究計画(1)格子ゲージ理論の経路積分の複素数拡張とLefschetz thimble structureの解析,研究計画(2) Lefschetz thimble上のハイブリッド・モンテカルロ法の改良;フェルミオン行列式を含む場合,および研究計画(4) 2次元SU(N)格子カイラルゲージ理論への適用,の研究を押し進めることが現実的になった.格子カイラルゲージ理論におけるフェルミオン数生成過程の解析を主要目標として,研究を推進する計画である.格子ゲージ理論の枠組みによる標準模型の構成に関する研究に進展があったため,それに関する研究課題を優先的に進めているため.この進展によって,研究目的(4) 2次元SU(N)格子カイラルゲージ理論への適用,への準備が整いつつある.平成28,29年度の研究計画のうち,(1)格子ゲージ理論の経路積分の複素数拡張とLefschetz thimble structureの解析,(2) Lefschetz thimble上のハイブリッド・モンテカルロ法の改良;フェルミオン行列式を含む場合,(3)有限密度-QCD (HDQCD)への適用に関連する課題に取り組んだ。これと並行して進めていた,カイラルゲージ理論(標準模型、SO(10)理論など)の格子定式化に関する研究に進展があった[1][2].そのため後者の課題を優先的に進めた.この進展によって,2次元U(1)および4次元SO(10)格子カイラルゲージ理論の定式化に目処がたち,研究計画(4) 2次元SU(N)格子カイラルゲージ理論への適用,への準備も整いつつある.カイラルゲージ理論(標準模型、SO(10)理論など)の格子定式化に関する研究に進展があり[1][2],それに関する研究課題を優先的に進めたため.しかし,この進展によって,2次元U(1)および4次元SO(10)格子カイラルゲージ理論の定式化に目処がたち,研究計画(4) 2次元SU(N)格子カイラルゲージ理論への適用,への準備が整いつつある.これと並行して進めていた,カイラルゲージ理論(標準模型、SO(10)理論など)の格子定式化に関する研究に進展があった[1][2].また,フェルミオン数生成の非平衡過程の記述に必要な実時間相関関数を与えるSchwinger-Keldysh形式を,格子ゲージ理論に拡張する研究に進展があった[3][4].この格子Schwinger-Keldysh形式にLefschetz thimble法を適用するために, Lefschetz thimble structureの解析を進めた.この進展によって, 2次元U(1)および4次元SO(10)格子カイラルゲージ理論にLefschetz thimble法を適用する目処がたち,研究計画(4)への準備が整いつつある.並行して進めていた,カイラルゲージ理論(標準模型、SO(10)理論など)の格子定式化に関する研究に進展があった.また,フェルミオン数生成の非平衡過程の記述に必要な実時間相関関数を与えるSchwinger-Keldysh形式を格子ゲージ理論に拡張する研究に進展があった.これらの研究課題を優先的に進めたため,遅れが生じた.この進展によって, 2次元U(1)および4次元SO(10)格子カイラルゲージ理論にLefschetz thimble法を適用する目処がたち,研究計画(4)への準備が整いつつある.平成25年27年度に行った,1次元Thirring模型におけるLefschetz thimble構造の解析からは,有限密度下の1次相転移が複数のthimbleの寄与によって得られる事が明らかになった[1][2].このような複数のthimbleの寄与を有効的に取り込むことができる方法として,contraction algorithmが提案されている[5].
KAKENHI-PROJECT-16K05313
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K05313
Lefschetz thimbleによる経路積分と複素作用系のシミュレーション法
この方法を検証し,格子ゲージ理論に適用するために必要な改良に取り組む.今後は,特に,新しい定式化による格子カイラルゲージ理論をターゲットとして,研究計画(1)格子ゲージ理論の経路積分の複素数拡張とLefschetz thimble structureの解析,研究計画(2) Lefschetz thimble上のハイブリッド・モンテカルロ法の改良;フェルミオン行列式を含む場合,および研究計画(4) 2次元SU(N)格子カイラルゲージ理論への適用,の研究を押し進めることが現実的になった.2次元U(1)/SU(N)格子カイラルゲージ理論の研究から推進する計画である.今後は,特に,新しい定式化による格子カイラルゲージ理論をターゲットとして,研究計画(1)格子ゲージ理論の経路積分の複素数拡張とLefschetz thimble structureの解析,研究計画(2) Lefschetz thimble上のハイブリッド・モンテカルロ法の改良;フェルミオン行列式を含む場合,および研究計画(4) 2次元SU(N)格子カイラルゲージ理論への適用,の研究を押し進めることが現実的になった.格子カイラルゲージ理論におけるフェルミオン数生成過程の解析を主要目標として,研究を推進する計画である.初年度の物品費(150万円)は,格子ゲージ理論のLefschetz thimble structureの解析やプログラム開発に用いるGPGPUワークステーションの新規購入のために計上したものであったが,本格的な使用が次年度以降になる見込みとなり,この新規購入を延期した.これが次年度使用額が生じた主要な理由である.(理由)初年度の物品費(150万円)は,格子ゲージ理論のLefschetz thimble structureの解析やプログラム開発に用いるGPGPUワークステーションの新規購入のために計上したものであったが,解析的な研究が先行して,本格的な使用が次年度以降になる見込みとなり,この新規購入を延期した.これが次年度使用額が生じた主要な理由である.(使用計画)未使用の物品費は,今年度の物品費と合わせて,格子ゲージ理論のLefschetz thimble structureの解析やプログラム開発に用いるGPGPUワークステーションの新規購入のために当てる計画である.(理由)初年度の物品費(150万円)は,格子ゲージ理論のLefschetz thimble structureの解析やプログラム開発に用いるGPGPUワークステーションの新規購入のために計上したものであったが,解析的な研究が先行して,本格的な使用が次年度以降になる見込みとなり,この新規購入を延期した.これが次年度使用額が生じた主要な理由である.(使用計画)未使用の物品費は,今年度の物品費と合わせて,格子ゲージ理論のLefschetz thimble structureの解析やプログラム開発に用いるGPGPUワークステーションの新規購入の費用と、一部、計算機使用料等に当てる計画である.未使用の物品費は,今年度の物品費と合わせて,格子ゲージ理論のLefschetz thimble structureの解析やプログラム開発に用いるGPGPUワークステーションの新規購入のために当てる計画である.
KAKENHI-PROJECT-16K05313
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K05313
二原子間に生ずる相互作用力とトンネル電流との普遍的関係性の検証
・原子間力顕微鏡,(AFM)で原子分解能を得るには、カンチレバーを共振周波数で振動させる周波数変調法が使われる。本研究では、カンチレバーを小さい振幅で振動させるほど、空間分解能と相互作用力測定のS/N比が向上することを理論計算で明らかにした。AFMを小振幅で動作させるためには、バネ定数が大きいカンチレバーを使う必要があるが、水晶カンチレバーをピエゾ電気で検出する従来の方式では、感度があまり上がらないことが知られている。そこで、水晶カンチレバーと光干渉方式変位検出型を組み合わせたAFMを開発し、実際に小振幅動作が可能であることを確かめた。これにより、原子分解能の像の取得に加えて、フォーススペクトロスコピーが高感度に行えることを実証した。・Pb/si(111)-(7x7)表面上のSi原子と置換原子であるPb原子の上でトンネル電流と相互作用力の同時測定を行った。実験には、金属コートされたSiカンチレバーを使用し、室温での熱ドリフトを補償して精密な実験を行った。その結果、Si,Pb両方の原子共に、トンネル電流と相互作用力が探針-試料間距離に対して指数関数的に増大することが明らかになった。また、トンネル電流と相互作用力の距離依存性の関係であるが、距離範囲によって依存性が変化し、過去の理論で予想されるよりも複雑なものとなった。一方、理論計算では、トンネル電流と相互作用力はほぼ、同じ減衰距離を持つ指数関数で書けることが分かった。・原子間力顕微鏡,(AFM)で原子分解能を得るには、カンチレバーを共振周波数で振動させる周波数変調法が使われる。本研究では、カンチレバーを小さい振幅で振動させるほど、空間分解能と相互作用力測定のS/N比が向上することを理論計算で明らかにした。AFMを小振幅で動作させるためには、バネ定数が大きいカンチレバーを使う必要があるが、水晶カンチレバーをピエゾ電気で検出する従来の方式では、感度があまり上がらないことが知られている。そこで、水晶カンチレバーと光干渉方式変位検出型を組み合わせたAFMを開発し、実際に小振幅動作が可能であることを確かめた。これにより、原子分解能の像の取得に加えて、フォーススペクトロスコピーが高感度に行えることを実証した。・Pb/si(111)-(7x7)表面上のSi原子と置換原子であるPb原子の上でトンネル電流と相互作用力の同時測定を行った。実験には、金属コートされたSiカンチレバーを使用し、室温での熱ドリフトを補償して精密な実験を行った。その結果、Si,Pb両方の原子共に、トンネル電流と相互作用力が探針-試料間距離に対して指数関数的に増大することが明らかになった。また、トンネル電流と相互作用力の距離依存性の関係であるが、距離範囲によって依存性が変化し、過去の理論で予想されるよりも複雑なものとなった。一方、理論計算では、トンネル電流と相互作用力はほぼ、同じ減衰距離を持つ指数関数で書けることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-22760028
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22760028
養菌性キクイムシが媒介する樹木萎凋病の発生リスクに影響する環境要因と系統的制約性
マレーシア国サバ州ロンミオにおいて2017年5、9、2018年1月に、採集を行った。採集場所は、北緯4度、標高約1600mに位置する天然林、二次林、オイルパームのプランテーションの3箇所に、エタノールを誘引剤、プロピレングリコールを保存剤として用いたトラップを各地点に3基設置した。また、現地の森林所有者が燃料用、開拓、集材のために伐採した樹木を購入して、割材することによりキクイムシ類を採集した。割材からは約50種、エタノールトラップでもほぼ同数のキクイムシ類が採集された。採集されたキクイムシ類は形態種にソーティングした後、元チェンマイ大学教授のRoger Beaver博士に同定を依頼した。約9割の形態種が同定済みである。エタノールトラップで採集された群集は、調査地間では二次林で最も多様性が高くなった。調査置換で類似度を調べると、天然林とオイルパームのプランテーション間の類似度が高く、植生よりも距離の影響が強く現れた。また、群衆組成に及ぼす影響は、試験地の影響よりも、回収日の影響が強く現れた。これらの結果は、熱帯においてもキクイムシ群集の時間的変動が大きいことを示唆していた。また、伐採木から採集されたキクイムシも、調査回の影響が強く表れ、熱帯において群衆の時間的変動が大きい同様の結果これらの結果は、熱帯においても温帯における季節にともなる種の置き換わりと同様に、種構成の変化が生じている可能性が示された。が示唆された。共生微生物の研究については、当初の予定よりも遅れている。次世代シーケンサーを用いたキクイムシのミトコンドリア全領域の解読、同じく次世代シーケンサーを用いた、キクイムシの共生微生物の解析を行うタイ国チェンマイにおいて2016年7月、インド国アルナチャル州で2016年11月に、採集を行った。タイでは、標高約1400mに位置するチェンマイ大学高地農場の森林内の2地点と、果樹園に接する林縁部2地点に、12の目(order)から選んだ各目異種の植物の太枝をベイトとして約8週間設置した。また、エタノールを誘引剤、プロピレングリコールを保存剤として用いたトラップを各地点に3基設置した。ベイト枝からは約60種、エタノールトラップでもほぼ同数のキクイムシ類が採集された。採集されたキクイムシ類は形態種にソーティングした後、元チェンマイ大学教授のRoger Beaver博士に同定を依頼した。約9割の形態種が同定済みである。これらのサンプルからDNAを抽出し、系統解析を行った。また、ベイトに使った樹種の系統距離とキクイムシ群集の関係を解析した。その結果、樹木の系統関係と群集の類似度には負の関係が見られたが、関係は有意ではなく、日本の冷温帯(秩父)で調査した結果よりも関係が弱かった。エタノールトラップとベイト間の重複率は約50%であった。この結果は、エタノールに誘引される種が約半数であること、ベイト枝によってキクイムシ群集の全容を知るためにはベイトとして使用する植物の分類群をより多様にする必要があることを示している。エタノールトラップで捕獲されたキクイムシ群集の季節変動と年変動をタイと日本で比較すると、タイの方が季節変動は小さいが年変動は大きかった。この結果は、タイの群集の方がより非平衡的であることを示しており、気温が高いことにより寄主植物の分解が早いことがその原因の一つではないかと考えられた。寄主植物ー昆虫間の解析については、当初の計画よりも進んでいる。一方で、共生微生物の研究については、当初の予定よりも遅れている。マレーシア国サバ州ロンミオにおいて2017年5、9、2018年1月に、採集を行った。採集場所は、北緯4度、標高約1600mに位置する天然林、二次林、オイルパームのプランテーションの3箇所に、エタノールを誘引剤、プロピレングリコールを保存剤として用いたトラップを各地点に3基設置した。また、現地の森林所有者が燃料用、開拓、集材のために伐採した樹木を購入して、割材することによりキクイムシ類を採集した。割材からは約50種、エタノールトラップでもほぼ同数のキクイムシ類が採集された。採集されたキクイムシ類は形態種にソーティングした後、元チェンマイ大学教授のRoger Beaver博士に同定を依頼した。約9割の形態種が同定済みである。エタノールトラップで採集された群集は、調査地間では二次林で最も多様性が高くなった。調査置換で類似度を調べると、天然林とオイルパームのプランテーション間の類似度が高く、植生よりも距離の影響が強く現れた。また、群衆組成に及ぼす影響は、試験地の影響よりも、回収日の影響が強く現れた。これらの結果は、熱帯においてもキクイムシ群集の時間的変動が大きいことを示唆していた。また、伐採木から採集されたキクイムシも、調査回の影響が強く表れ、熱帯において群衆の時間的変動が大きい同様の結果これらの結果は、熱帯においても温帯における季節にともなる種の置き換わりと同様に、種構成の変化が生じている可能性が示された。が示唆された。共生微生物の研究については、当初の予定よりも遅れている。植物と昆虫の系統関係解析は進んでいるが、今後、共生微生物を含めた3者間の群集構造解析を進める。
KAKENHI-PROJECT-16H02760
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H02760
養菌性キクイムシが媒介する樹木萎凋病の発生リスクに影響する環境要因と系統的制約性
共生微生物の群集解析には、次世代シーケンサーを用いたメタゲノム解析の手法を確立する必要があるため、H29年度予算で解析手法の確立をめざす。次世代シーケンサーを用いたキクイムシのミトコンドリア全領域の解読、同じく次世代シーケンサーを用いた、キクイムシの共生微生物の解析を行う
KAKENHI-PROJECT-16H02760
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H02760
内因性精神疾患に対する薬理遺伝学を用いた治療ストラテジーの開発
今年度は、最終年度として、次の研究を行った。治療ストラテジー開発のため、気分障害患者、統合失調症患者のDNAを用い、dopamine、serotoninなどの神経伝達系を中心に既知の約30の機能的多型(SNPs)の有無を、RT-PCR法でスクリーニングした。現在全sampleの約40%の解析のみ完了しており、結果の検討、ストラテジー提案には未だ至っていない。しかし、解析の過程で、以下の結果を得た。1.治療抵抗性統合失調症や抗精神病薬の副作用の有無がABCB1遺伝子のSNPs(C3435T、G2677A/T)と関連するかどうかを検討した結果、両SNPsともにTRS、副作用との関連は見いだせなかった。しかし抗精神病薬の最大投与量との相関は見いだした。結果は日本生物学的精神医学会で報告した。2.Circadian rhythmの生体内機構に最も関連があるとされるclock遺伝子のSNPs(T3111C)と、気分障害、統合失調症との関連を検討した。統合失調症と対照群との間で、遺伝型では有意傾向、アレル頻度では有意差が認められ、clock遺伝子の統合失調症への関与を示唆する所見と思われた。3.Serotonin cascadeのSNPsを調査した結果、気分障害のみ5HTTPRのlong alleleの遺伝子頻度が統合失調症群、対照群に比して有意に多かった。4.治療反応性と内因性精神障害のプロフィールとの相関を調査した。家族・遺伝歴の有無、罹病期間の長さが治療反応性と有意に相関していた。今後スクリーニング終了と共に、内因性各疾患の有無を応答変数、SNPsを説明変数としてlogistic regression modelを用いた多変量解析を行う。また有効薬剤、副作用出現の有無、全般改善度、TCIを応答変数とし、SNPsを説明変数とする重回帰分析を行う。得られたデータに基づき、治療ストラテジーを提案する予定である。今年度は、治療ストラテジー開発の準備段階として、以下の研究を行った。1)治療に用いる向精神薬選択基準の一つとなるTemperament and Character Inventory(TCI)を内因性精神疾患に施行し、疾患毎の特徴を抽出した。その結果内因性うつ病患者では、正常群に比して損害回避性尺度得点が有意に高く、新奇希求性尺度が有意に低いこと、また他の抑うつ状態を呈する疾患(適応障害、人格障害など)とは自己志向尺度、協調尺度の得点の違いで鑑別が可能となることが新たに本研究で見出された。一方統合失調症では、幻覚・妄想など陽性症状が強い群では自己超越尺度の得点が有意に高く、陰性症状が主体の群では損害回避性尺度の得点が高くなり、うつ病のプロフィールに類似することが新たに見出された。これらの結果は平成15年10月に開催された茨城精神科集団会、ならびに日本精神科診断学会において発表した。2)治療上問題となる副作用発現を定量的に検討するため、向精神薬全般に適応しうる副作用尺度として新たに向精神薬副作用評価面接(SEEP)を開発した。現在本尺度の妥当性、信頼性につき検討している。3)既知の遺伝子多型と治療効果や副作用発現などとの相関をみるため、内因性疾患患者群よりinformed consentを得て血液sampleを臨床データと同時に収集している。臨床データはデータベース化しており、現在までに内因性うつ病、統合失調症とも50例以上収集できている。血液サンプルの収集数は現時点では20-30例程度であり、さらに収集が必要である。次年度は相当数収集ができた時点で遺伝子解析を開始し、各種遺伝子多型と治療効果との相関を見ていく。4)TCI得点分布によって治療薬を選択する前向き研究を開始しているが、未だ症例数が少なく、結果の解釈には至っていない。今年度は、治療ストラテジー開発段階として、以下の研究を行った。1)向精神薬選択基準の一つとなるTemperament and Character Inventory (TCI)を内因性精神疾患に施行し、詳細な検討を行った。その結果、自己超越(ST)尺度が統合失調症の陽性症状に関連すること、自己志向(SD)尺度がうつ病のstate markerであることが確認された。さらに新奇希求性(NS)尺度低値、損害回避(HA)尺度高値が内因性精神障害の特徴として抽出された。NS、HAは各々ドーパミン、セロトニン系の機能に対応する尺度と想定されており、内因性精神障害に共通する生物学的基盤が推察された。また、TCIと認知機能検査を高齢者に施行したところ、低NS、高ST、ならびに認知機能とSD尺度との相関が見出され、TCIを精神疾患に施行する際には、認知機能や年齢の影響に留意する必要が新たに判明した。これらの結果は日本精神神経学会、日本精神科診断学会にて発表した。2)遺伝子多型と向精神薬の臨床効果との相関をみるため、内因性疾患患者群より血液sample、臨床データを同時に収集している。臨床データは現在までに内因性うつ病、統合失調症とも各々100例以上収集した。血液サンプルの収集数は現時点では両疾患各々50例程度である。遺伝子解析を開始したが、このうち、現在までにP糖鎖蛋白をコードするMulti Drug Resistant gene (MDR1)のC3435T多型と統合失調症の急性期抗精神病薬の投与量との関連が新たに見出されている。結果は今年の生物学的精神医学会で報告予定である。
KAKENHI-PROJECT-15790616
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内因性精神疾患に対する薬理遺伝学を用いた治療ストラテジーの開発
3)Clomipramine, fluvoxamine併用療法や、統合失調症の多剤投与例へのquetiapine置換療法など治療ストラテジー開発に寄与する症例報告を蓄積している。得られたデータから、治療ストラテジーを提案する。今年度は、最終年度として、次の研究を行った。治療ストラテジー開発のため、気分障害患者、統合失調症患者のDNAを用い、dopamine、serotoninなどの神経伝達系を中心に既知の約30の機能的多型(SNPs)の有無を、RT-PCR法でスクリーニングした。現在全sampleの約40%の解析のみ完了しており、結果の検討、ストラテジー提案には未だ至っていない。しかし、解析の過程で、以下の結果を得た。1.治療抵抗性統合失調症や抗精神病薬の副作用の有無がABCB1遺伝子のSNPs(C3435T、G2677A/T)と関連するかどうかを検討した結果、両SNPsともにTRS、副作用との関連は見いだせなかった。しかし抗精神病薬の最大投与量との相関は見いだした。結果は日本生物学的精神医学会で報告した。2.Circadian rhythmの生体内機構に最も関連があるとされるclock遺伝子のSNPs(T3111C)と、気分障害、統合失調症との関連を検討した。統合失調症と対照群との間で、遺伝型では有意傾向、アレル頻度では有意差が認められ、clock遺伝子の統合失調症への関与を示唆する所見と思われた。3.Serotonin cascadeのSNPsを調査した結果、気分障害のみ5HTTPRのlong alleleの遺伝子頻度が統合失調症群、対照群に比して有意に多かった。4.治療反応性と内因性精神障害のプロフィールとの相関を調査した。家族・遺伝歴の有無、罹病期間の長さが治療反応性と有意に相関していた。今後スクリーニング終了と共に、内因性各疾患の有無を応答変数、SNPsを説明変数としてlogistic regression modelを用いた多変量解析を行う。また有効薬剤、副作用出現の有無、全般改善度、TCIを応答変数とし、SNPsを説明変数とする重回帰分析を行う。得られたデータに基づき、治療ストラテジーを提案する予定である。
KAKENHI-PROJECT-15790616
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電子励起状態を経由する表面反応過程の電子刺激脱離法による研究
本研究の目的は固体表面上の吸着構造を設計し、化学結合の状態(配向、結合次数)に大きな摂動を与えた上で、電子励起を行うことにより結合を活性化して、新規反応を開拓することである。まず、発表論文にあるように、Cu(001)上にヘテロエピタキシャル成長したLiClの吸着サイトや構造、エネルギーを計算した。これらは、実験結果とよく一致した。次に、Mo(112)表面上の吸着酸素、吸着リンによる表面反応制御に関する研究を行った。これらの系は、特有の周期構造を複数示すことがわかった。特に、酸素に関しては、メタノールの選択的酸化(ホルムアルデヒド生成)に活性であることがわかっているが、これに関して、振動分光法を用いることで、酸素種の存在状態を明確にすることができた。メタノールの酸化過程について、同様に振動分光法で測定したところ、ホルムアルデヒド生成はきわめて早いために、中間体の同定はできなかった。リンに関しては、亜リン酸トリメチルを用いることによって、表面にリン原子をドープすることができた。そして、新たな周期構造が観測された。また、このようにして作成した表面においては、チオフェンの脱硫過程が起こり、ブタジエンが効率よく生成することがわかった。これらの結果は、表面上に、新たな反応場を作成することに成功したことを示している。これらの系にTP-ESDIAD/TOFsystemを適用することで、反応過程のリアルタイム観察および、電子励起状態を経由した反応過程発現が期待されるが、これについては、現在試行を行い、最適な実験条件を探索しているところである。本研究の目的は固体表面上の吸着構造を設計し,化学結合の状態(配向、結合次数)に大きな摂動を加えたうえで、電子励起を行うことにより、結合を活性化して、新規反応を開拓することである。そのためには、適切な系を選択することと、観測方法をオプティマイズすることが重要である.今年度の成果としては、論文発表に至ったものとして,Cu(100)表面上のLiとCOの共吸着によるCO伸縮振動数の大きい低波数シフトの観測である.清浄Cu(100)表面上のCO吸着はatopサイトであり、CO伸縮振動数は、気相の値から70cm-1低波数シフトした2070cm-1である。ところが、Liが共吸着すると、CO伸縮振動数が1200cm-1と870cm-1も低波数シフトすることを高分解能電子エネルギー損失分光法により見出した。この振動ピークは、取り込み角度依存性を測定すると、双極子活性なモードであり,CO結合方向は表面垂直方向に近いことがわかる.この系について、更に密度汎関数法によるシミュレーションを行い,吸着構造の最適化、並びに振動数の計算を行った.その結果,COとLiが両方とも4-fold hollowサイトに吸着した構造をとり、CO結合長が、気相の場合から13%伸長していること、実験値に近い1281cm-1のCO振動数が求められた.この系は、共吸着Liの電子的効果によりCO結合が著しく弱められていることを示しており,この系を、電子励起経由のCO結合解離反応、並びに、水素化(メタノール合成)の有望な対象となりうることが示された.更に、触媒的に重要な反応である,水素化過程の反応物である金属表面上の水素の存在状態に関する研究を行った.電子刺激脱離のプロトン脱離収率の温度依存性を測定することにより、Ru(001)上の吸着水素が、熱脱離をする前に,サブサーフェスサイトに移動していることを示唆する実験結果を得ているが、それと関連して,重水素を用いた昇温脱離測定、並びに、1,3-共役ジエンの水素化反応の研究を行っている.これらから、サブサーフェスサイトを経由する水素が、水素化反応において、重要な役割を果たすことがわかった.現在,対象となるジエン分子を種類を変えることにより反応機構を調べるための研究を行っている。また、TP-ESDIAD/TOF装置にパルスバルブを組み込み,パルス状吸着過程を電子刺激脱離観測するための装置改良を継続している.本研究の目的は固体表面上の吸着構造を設計し、化学結合の状態(配向、結合次数)に大きな摂動を与えた上で、電子励起を行うことにより結合を活性化して、新規反応を開拓することである。まず、発表論文にあるように、Cu(001)上にヘテロエピタキシャル成長したLiClの吸着サイトや構造、エネルギーを計算した。これらは、実験結果とよく一致した。次に、Mo(112)表面上の吸着酸素、吸着リンによる表面反応制御に関する研究を行った。これらの系は、特有の周期構造を複数示すことがわかった。特に、酸素に関しては、メタノールの選択的酸化(ホルムアルデヒド生成)に活性であることがわかっているが、これに関して、振動分光法を用いることで、酸素種の存在状態を明確にすることができた。メタノールの酸化過程について、同様に振動分光法で測定したところ、ホルムアルデヒド生成はきわめて早いために、中間体の同定はできなかった。リンに関しては、亜リン酸トリメチルを用いることによって、表面にリン原子をドープすることができた。そして、新たな周期構造が観測された。また、このようにして作成した表面においては、チオフェンの脱硫過程が起こり、ブタジエンが効率よく生成することがわかった。これらの結果は、表面上に、新たな反応場を作成することに成功したことを示している。これらの系にTP-ESDIAD/TOF
KAKENHI-PROJECT-12740313
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電子励起状態を経由する表面反応過程の電子刺激脱離法による研究
systemを適用することで、反応過程のリアルタイム観察および、電子励起状態を経由した反応過程発現が期待されるが、これについては、現在試行を行い、最適な実験条件を探索しているところである。
KAKENHI-PROJECT-12740313
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視覚系への電流刺激の効果の新しい解析方法に関する研究
1.はじめに眼への電流刺激により網膜細胞を刺激するという原理を用いた眼疾患検査手法の実現には、その刺激作用の情報、すなわち通電量と網膜各位置を流れる電流量との関係、通電用電極の装着位置あるいは透光体混濁など眼の状態が変化した場合の刺激電流の変容、眼周辺部の神経・筋系への副作用の有無、などの情報が必要である。本研究では、電流刺激時の眼付近の電流量を推定し、これを使用して上記の刺激作用について論じた。2.実施方法電流刺激時の眼付近の電流量の推定をおこなう解析システムを作成し、刺激作用を論じるに必要な計算結果を得た。計算結果および細胞の電気的特性に基づき、刺激作用について論じた。(1)解析システムは、大型計算機にパソコンを端末接続した構成とした。(2)数値計算アルゴリズムとして有限要素法を適用した。透光体混濁時の電気定数変更が可能な眼球モデルを作成した。(3)眼周辺部および網膜への刺激作用について論じた。(4)推定結果を整理した。すなわち、電流刺激分布を画像としてあらわした。(5)解析システムの改良余地および磁気刺激手法の刺激作用解析への応用可能性について検討した。3.得られた知見および今後への課題本研究によって、眼への電流刺激時における眼周辺部および網膜への刺激作用について考察することができた。電流刺激により透光体混濁時においても網膜刺激が可能であることがわかった。電流刺激の副作用すなわち刺激用電極付近の神経・筋系への刺激作用およびジュール熱発生作用については、網膜刺激のために設定する刺激電流値程度では問題とはならないと推定された。本研究で得られた成果は、磁気刺激手法への適用も可能である。今後、磁気刺激作用についての検討をすすめる計画である。1.はじめに眼への電流刺激により網膜細胞を刺激するという原理を用いた眼疾患検査手法の実現には、その刺激作用の情報、すなわち通電量と網膜各位置を流れる電流量との関係、通電用電極の装着位置あるいは透光体混濁など眼の状態が変化した場合の刺激電流の変容、眼周辺部の神経・筋系への副作用の有無、などの情報が必要である。本研究では、電流刺激時の眼付近の電流量を推定し、これを使用して上記の刺激作用について論じた。2.実施方法電流刺激時の眼付近の電流量の推定をおこなう解析システムを作成し、刺激作用を論じるに必要な計算結果を得た。計算結果および細胞の電気的特性に基づき、刺激作用について論じた。(1)解析システムは、大型計算機にパソコンを端末接続した構成とした。(2)数値計算アルゴリズムとして有限要素法を適用した。透光体混濁時の電気定数変更が可能な眼球モデルを作成した。(3)眼周辺部および網膜への刺激作用について論じた。(4)推定結果を整理した。すなわち、電流刺激分布を画像としてあらわした。(5)解析システムの改良余地および磁気刺激手法の刺激作用解析への応用可能性について検討した。3.得られた知見および今後への課題本研究によって、眼への電流刺激時における眼周辺部および網膜への刺激作用について考察することができた。電流刺激により透光体混濁時においても網膜刺激が可能であることがわかった。電流刺激の副作用すなわち刺激用電極付近の神経・筋系への刺激作用およびジュール熱発生作用については、網膜刺激のために設定する刺激電流値程度では問題とはならないと推定された。本研究で得られた成果は、磁気刺激手法への適用も可能である。今後、磁気刺激作用についての検討をすすめる計画である。
KAKENHI-PROJECT-06771552
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06771552
セルビア=クロアチア紛争の研究
本研究は、セルビアとクロアチアの対立の起源を探るため、ユ-ゴの近現代史を再検討した。セルビア人とクロアチア人は、同一の言語を話す民族であるが、別々の歴史・文化伝統をもつ。両者は第1次世界大戦中に統一国家の形成を合意した。しかし、国家形態を連邦制にするか中央集権制にするかで、両者は争ったが、セルビアの主張する中央集権制で決着した。これに不満なクロアチア人は自治権を要求し、「クロアチア問題」が起こった。その後、クロアチア自治州の形成(1939)が民族問題を解決するかのように見えたが、しかし枢軸諸国の占領で崩壊し、両民族の対立はいっそう深まった。戦時中、チト-が率いたパルチザンは、インターナショナリズムと民族同権の立場に立ち、支持を拡大して、ユ-ゴを解放した。戦後のユ-ゴは1.連邦制と2.社会主義3.一党制で構成されたが、セルビアは共和国に格下げになり、しかも2つの自治州を設定された。セルビア人はこれに不満とし、「セルビア問題」が起こった。1974年の憲法改正により、ユ-ゴ連邦を同権・同格の共和国・自治州の連合体に編成されたが、セルビア人の不満は一層高まった。チト-の死後、民族問題は表面化した。セルビアのミロシェビッチは覇権主義的行動をとり、民族主義を煽った。彼は自治州の自治権を事実上取り上げ、モンテネグロを支配においた。これにスロベニアが大きく反発した。東欧革命が波及し、1990年1月にユ-ゴ共産党は分裂した。1990年の自由選挙ではスロベニア・クロアチアで共産党が敗北した。しかし、セルビアでは旧共産党が圧勝した。そして国家形態をめぐる対立が再燃した。前者は国家連合を主張し、後者は連邦維持を主張したが、合意は得られなかった。1991年6月にスロベニアとクロアチアは独立宣言をし、戦争が勃発した。結論的にいって、ユ-ゴは民族問題の解決策としてできたが、そのために民族問題が起こった。しかしこの対立がなぜ悲惨な戦争に至ったのかは今後の研究課題である。本研究は、セルビアとクロアチアの対立の起源を探るため、ユ-ゴの近現代史を再検討した。セルビア人とクロアチア人は、同一の言語を話す民族であるが、別々の歴史・文化伝統をもつ。両者は第1次世界大戦中に統一国家の形成を合意した。しかし、国家形態を連邦制にするか中央集権制にするかで、両者は争ったが、セルビアの主張する中央集権制で決着した。これに不満なクロアチア人は自治権を要求し、「クロアチア問題」が起こった。その後、クロアチア自治州の形成(1939)が民族問題を解決するかのように見えたが、しかし枢軸諸国の占領で崩壊し、両民族の対立はいっそう深まった。戦時中、チト-が率いたパルチザンは、インターナショナリズムと民族同権の立場に立ち、支持を拡大して、ユ-ゴを解放した。戦後のユ-ゴは1.連邦制と2.社会主義3.一党制で構成されたが、セルビアは共和国に格下げになり、しかも2つの自治州を設定された。セルビア人はこれに不満とし、「セルビア問題」が起こった。1974年の憲法改正により、ユ-ゴ連邦を同権・同格の共和国・自治州の連合体に編成されたが、セルビア人の不満は一層高まった。チト-の死後、民族問題は表面化した。セルビアのミロシェビッチは覇権主義的行動をとり、民族主義を煽った。彼は自治州の自治権を事実上取り上げ、モンテネグロを支配においた。これにスロベニアが大きく反発した。東欧革命が波及し、1990年1月にユ-ゴ共産党は分裂した。1990年の自由選挙ではスロベニア・クロアチアで共産党が敗北した。しかし、セルビアでは旧共産党が圧勝した。そして国家形態をめぐる対立が再燃した。前者は国家連合を主張し、後者は連邦維持を主張したが、合意は得られなかった。1991年6月にスロベニアとクロアチアは独立宣言をし、戦争が勃発した。結論的にいって、ユ-ゴは民族問題の解決策としてできたが、そのために民族問題が起こった。しかしこの対立がなぜ悲惨な戦争に至ったのかは今後の研究課題である。
KAKENHI-PROJECT-08610182
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08610182
惑星チャンネル地形の形態学的研究
当初の研究計画に従い、惑星チャネル地形の形態に関する数理モデル、解析法について研究を進め、最後に火星のチャネル地形と地球の河川についての比較研究を行い、火星チャネルを形成した流体の特性についての制約条件を求めることを行った。特に本研究では当初の予定通り、チャネルの蛇行に注目し、蛇行を引き起こす水理学学的モデルを再検討し、惑星チャネル一般の問題として定式化した。この結果蛇行の波長、1とチャネルの幅、W(河幅)あるいは深さとは1=aWの関係にあることが判明した。この一次の関係式は実際に地球の河川で観測された事実と一致し、また本研究の結果、金星、火星のチャネル地形についても成り立っていることがわかった。これは惑星地形学としてはじめての発見であり、きわめて興味深い特徴であると思われる。また上式の比例係数、aは火星のチャネル地形と地球河川とはほぼ同じ値を取るのに対し、金星のチャネル地形では約10倍大きな値を取る。この事は火星チャネル地形が地球河川と同じように流水によって作られた事を示唆するものである。この比例係数は、aはチャネルを流れる流体のレイノルズ数、プラントル数の複雑な関数になっている。この関係式を使ってチャネル地形を作った流体の特性を原理的には明らかに出来ると思われるが、まだ本研究ではその段階にまで達しなかった。当初の研究計画に従い、惑星チャネル地形の形態に関する数理モデル、解析法について研究を進め、最後に火星のチャネル地形と地球の河川についての比較研究を行い、火星チャネルを形成した流体の特性についての制約条件を求めることを行った。特に本研究では当初の予定通り、チャネルの蛇行に注目し、蛇行を引き起こす水理学学的モデルを再検討し、惑星チャネル一般の問題として定式化した。この結果蛇行の波長、1とチャネルの幅、W(河幅)あるいは深さとは1=aWの関係にあることが判明した。この一次の関係式は実際に地球の河川で観測された事実と一致し、また本研究の結果、金星、火星のチャネル地形についても成り立っていることがわかった。これは惑星地形学としてはじめての発見であり、きわめて興味深い特徴であると思われる。また上式の比例係数、aは火星のチャネル地形と地球河川とはほぼ同じ値を取るのに対し、金星のチャネル地形では約10倍大きな値を取る。この事は火星チャネル地形が地球河川と同じように流水によって作られた事を示唆するものである。この比例係数は、aはチャネルを流れる流体のレイノルズ数、プラントル数の複雑な関数になっている。この関係式を使ってチャネル地形を作った流体の特性を原理的には明らかに出来ると思われるが、まだ本研究ではその段階にまで達しなかった。
KAKENHI-PROJECT-06832012
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06832012
新規歯科用局所麻酔薬の開発と無針注射器(シリジェット)への応用について
動物行動学的および免疫組織学的方法により、QX-314を痛覚感知ニューロンに送り込むためには、TRPV1を利用した方がよいことがわかった。また、その麻酔効果は侵害熱刺激に対してのみ有効であった。また、カプシエイト(辛くない唐辛子の成分)でもQX-314を痛覚感知ニューロンに送り込むことができることがわかった。このことは、カプサイシンに代わる薬剤として、カプシエイトが有効である可能性が明らかとなった。動物行動学的および免疫組織学的方法により、QX-314を痛覚感知ニューロンに送り込むためには、TRPV1を利用した方がよいことがわかった。また、その麻酔効果は侵害熱刺激に対してのみ有効であった。また、カプシエイト(辛くない唐辛子の成分)でもQX-314を痛覚感知ニューロンに送り込むことができることがわかった。このことは、カプサイシンに代わる薬剤として、カプシエイトが有効である可能性が明らかとなった。【目的】通常の局所麻酔薬は容易に細胞膜を通過し、痛覚以外にも作用し不快な痺れや麻痺が起こる。近年、Binshtokらは細胞膜を通過できない局所麻酔薬QX-314とカプサイシン(CAP:TRPV1アゴニスト)を用いて痛覚のみを選択的に抑制した。しかし、その方法にはCAP自身が痛みを引き起こすという問題が存在する。本研究の目的はCAPに代わる薬剤を見つけることである。本年度はTRPA1やTRPM8を用いてもQX-314による麻酔作用が現われるかどうかを検討した。【具体的内容】《動物行動学的方法》投与薬剤にTRPV1、TRPA1、TRPM8のアゴニストであるCAP、アリルイソチオシアネート、メンソール(MEN)を用いた。動物を4群に分け後ろ足の足底部にアゴニストとQX-314の混合液、アゴニスト単独、QX-314液単独および溶媒のみを投与した。侵害熱刺激は赤外線照射、機械的刺激はvon Freyフィラメントを用いて測定した。《電気生理学的方法》後根神経節の細胞を用いパッチクランプ法でナトリウムチャネルの電流を記録した。TRPV1陽性細胞およびTRPA1陽性細胞に混合液を15分間投与し、投与前後のナトリウムチャネルの電流を比較した。【意義と重要性】侵害熱刺激のTRPV1の実験群では、QX-314との混合液群に麻酔効果が見られた。また、混合液群とCAP単独群の間にも有意差が認められた。TRPM8の実験群では、混合液群とMAN単独群に麻酔効果が見られた。一方、TRPA1の実験群では麻酔効果が見られなかった。機械的刺激の実験群では全てに麻酔効果は見られなかった。電気生理学的方法では、TRPV1陽性細胞のみ電流が抑制された。以上のことから、QX-314を痛覚感知ニューロンに送り込むためには、TRPV1を利用した方がよいことがわかった。また、その麻酔効果は侵害熱刺激に対してのみ有効であった。【目的】通常の局所麻酔薬は容易に細胞膜を通過し、痛覚以外にも作用し不快な痺れや麻痺が起こる。近年、Binshtokらは細胞膜を通過できない局所麻酔薬QX-314とカプサイシン(CAP:TRPV1アゴニスト)を用いて痛覚のみを選択的に抑制した。しかし、その方法にはCAP自身が痛みを引き起こすという問題が存在する。本研究の目的はCAPに代わる薬剤を見つけることである。昨年度は、動物行動学的方法と電気生理学的方法により、QX-314を痛覚感知ニューロンに送り込むためには、TRPV1やTRPM8よりTRPV1を利用した方がよいことがわかった。そこで、今年度は、免疫組織学的方法を用いて、TRPV1、TRPA1およびTRPM8の効果を比較した。また、TRPV1のアゴニストであるカプシエイト(辛くない唐辛子の成分)を用いても効果があるかどうかを動物行動学的方法で検討した。【具体的内容】《免疫組織学的方法》ラットを4群に分け、それぞれ動物の後ろ足の足底部にCAPと蛍光QX-314の混合液、AITC(TRPA1のアゴニスト)と蛍光QX-314の混合液、メンソール(TRPM8のアゴニスト)と蛍光QX-314の混合液および蛍光QX-314単独液を投与し、2週間後に後根神経節の細胞を摘出し、蛍光QX-314が取り込まれているかを蛍光顕微鏡で確認した。《動物行動学的方法》投与薬剤にTRPV1のアゴニストであるカプシエイトを用いた。動物を4群に分け後ろ足の足底部にカプシエイトとQX-314の混合液、カプシエイト単独、QX-314液単独および溶媒のみを投与した。侵害熱刺激は赤外線照射用いて測定した。【意義と重要性】免疫組織学的方法の結果より、QX-314を痛覚感知ニューロンに送り込むためには、TRPV1やTRPM8よりTRPV1を利用した方がよいことがわかった。このことは、昨年度の動物行動学的方法と電気生理学的方法の結果を裏付けるものであった。従って、本研究ではTRPV1を利用することが結論づけられ、CAPに代わるTRPV1のアゴニストを探すことが目的となった。その候補として、CAPのような刺激がないカプシエイトを検討した。
KAKENHI-PROJECT-22592289
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22592289
新規歯科用局所麻酔薬の開発と無針注射器(シリジェット)への応用について
その結果、カプシエイトとQX-314との混合液群に麻酔効果が見られた。このことは、CAPに代わる薬剤として、カプシエイトが有効である可能性が明らかとなった。1.免疫組織学的手法による痛覚神経細胞内へのQX-314の取り込みの判定について1TRPV1の効果について:ラットの足底部に、カプサイシンとQX-314(蛍光色素標識)を同時に投与した。投与1ヶ月後、ラットの後根神経節(L4、L5、L6)を摘出した。摘出した神経節の凍結切片を作成し、蛍光顕微鏡で観察した。切片の神経細胞に蛍光色素が取り込まれているかを検証した。その結果、小型から中型の神経細胞に蛍光色素が取り込まれていた。2TRPA1およびTRPM8の効果について:切片の神経細胞に蛍光色素が取り込まれていなかった。2.動物の行動評価によるカプシエイトとQX-314およびアナンダミドとQX-314の併用投与の麻酔効果についてQX-314を効果的に痛覚神経に送り込むには、カプサイシンを利用することが良いことが分かった。しかし、カプサイシンにはそれ自身が痛みを引き起こすという欠点がある。そこで、本実験では辛くない唐辛子の成分であるカプシエイトおよびTRPV1の内因性リガンドであるアナンダミミドをカプサイシンの代わりに使用して、QX-314を痛覚神経に送り込めるかどうかを熱刺激を用いた動物行動学的手法を用いて検討した。その結果、カプシエイトでは投与後10分から5時間までの間、コントロール群に比べて麻酔効果が有意に見られた。一方、アナンドアミドでは、投与後1時間から3時間の間に麻酔効果が見られたが、カプシエイトに比較すると効果は少なかった。3.カプザゼピン(TRPV1の阻害剤)による麻酔作用の抑制効果についてQX-314を効果的に痛覚神経に送り込むには、TRPV1を利用することが良いことが分かった。そこで、TRPV1の阻害剤であるカプザセピンを事前に投与すると、カプサイシンとQX-314の併用投与による麻酔作用を阻害することができた。本研究の目的は、カプサイシンに代わる薬剤を探すことであり、その候補としてカプシエイトを見つけることができたから。24年度が最終年度であるため、記入しない。カプサイシンに代わる薬剤のもう1つの候補として、アナンダミド(内因性のTRPV1アゴニスト)がある。そのアナンダミドとカプシエイトの効果を比較することにより、どちらが、カプサイシンに代わる薬剤として有効であるかを決定する予定である。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22592289
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核-ミトコンドリア間コミュニケーションによる代謝相互作用の分子機構の解明
オルガネラ間の代謝連携のモデルとしてマウス腹腔マクロファージ分化系を用いて研究を行なってきた。安定同位体標識13C-グルコースを用いてCEーMSを用いたメタボローム解析を施行したところ、炎症性マクロファージではグルコースの取り込みが増加し、盛んに解糖系を活性化させ、13C-標識乳酸を産生する事が分かった。またその際、グルコースからの炭素源はTCAサイクルには流入しないことが分かった。しかしながら、標識されていない(12C-)TCAサイクル中間代謝産物量は対照群に比べ減少していないことから、炎症性マクロファージにおいてはTCAサイクルは解糖系と独立して制御されていることが示唆された。また、前年までの研究成果により、メチオニン代謝が解糖系酵素のメチル化修飾動態を変化させ、マクロファージの機能分化に作用することがわかったが、メチオニン-システイン代謝の律速酵素であるCBS(cystathionine beta-synthase)をノックダウンするとTCAサイクルやグルタミン代謝系中の酵素の発現量が低下することが判明した。逆にグルタミン代謝系の酵素であるGlud1(glutamate dehydrogenase1)ノックダウン細胞ではメチオニン代謝酵素の発現量が変化したことから、マクロファージにおけるエネルギー代謝制御ではグルコース代謝、メチオニン代謝、グルタミン代謝の三者が互いの代謝系を制御している可能性が示唆された。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。(1)分化状態によってエネルギー代謝様式が異なることがわかっている、マクロファージの分化実験をおこなった。炎症性マクロファージでは核内に限局した解糖系酵素群のアルギニンメチル化が認められ、解糖系が亢進するのと同時に、ミトコンドリアの断片化が認められた。それに対し、組織修復型マクロファージでは融合した長いミトコンドリアが観察され、TCA回路の代謝産物量が対照群と比較して増加していた。そこで、ミトコンドリア分裂因子Drp1に着目し、発現量を操作することで解糖系の代謝産物量を比較したところ、過剰発現株(断片化)では解糖系の亢進が認められたが、shRNAによる機能阻害株(融合化)では解糖系代謝産物量が軒並み低下することが明らかとなり、ミトコンドリアの形態が解糖系の活性化を規定する要因であることが示された。(2)細胞内のメチオニン代謝活性を低下させるため、メチオニンおよびコリンを欠乏させた培地中を用いたところ、解糖系酵素群のアルギニンメチル化レベルの低下を誘導することができた。興味深いことにメチオニン代謝変動がチューブリンの修飾動態に影響を与えることを見出した。この現象は含硫アミノ酸代謝酵素シスタチオニンβ合成酵素CBSおよびアルギニンメチル化酵素PRMT1のノックダウン株においても同様に観察された。このことから、チューブリンは従来報告されていない、メチオニン代謝を介した翻訳後修飾を受ける可能性が考えられる。また、細胞をCCCP処理し、ミトコンドリアの機能を低下させた場合、チューブリンの修飾が変化すると同時に解糖系酵素群のアルギニンメチル化を活性化することが明らかとなった。これらの実験結果から、ミトコンドリアの活性化状態がチューブリンの修飾動態を変化させ、アルギニンメチル化を介した解糖系を活性化するトリガーとなることが考えられる。これらの詳細な機構については来年度に行なう。オルガネラ間の代謝連携のモデルとしてマウス腹腔マクロファージ分化系を用いて研究を行なってきた。安定同位体標識13C-グルコースを用いてCEーMSを用いたメタボローム解析を施行したところ、炎症性マクロファージではグルコースの取り込みが増加し、盛んに解糖系を活性化させ、13C-標識乳酸を産生する事が分かった。またその際、グルコースからの炭素源はTCAサイクルには流入しないことが分かった。しかしながら、標識されていない(12C-)TCAサイクル中間代謝産物量は対照群に比べ減少していないことから、炎症性マクロファージにおいてはTCAサイクルは解糖系と独立して制御されていることが示唆された。また、前年までの研究成果により、メチオニン代謝が解糖系酵素のメチル化修飾動態を変化させ、マクロファージの機能分化に作用することがわかったが、メチオニン-システイン代謝の律速酵素であるCBS(cystathionine beta-synthase)をノックダウンするとTCAサイクルやグルタミン代謝系中の酵素の発現量が低下することが判明した。逆にグルタミン代謝系の酵素であるGlud1(glutamate dehydrogenase1)ノックダウン細胞ではメチオニン代謝酵素の発現量が変化したことから、マクロファージにおけるエネルギー代謝制御ではグルコース代謝、メチオニン代謝、グルタミン代謝の三者が互いの代謝系を制御している可能性が示唆された。今年度は主にミトコンドリアの形態制御と解糖系との関連を代謝解析技術を用いて解析した。その結果、がん細胞では細胞質でのメチオニン代謝制御が核内における解糖系酵素の修飾動態に影響し、エネルギー代謝制御に影響することが明らかになった。また、マクロファージ分化系を用いた予備実験ではミトコンドリア形態、チューブリン修飾動態、エネルギー代謝制御のクロストークが観察しやすい良好なモデルであることがわかり、各種解析ツールの構築もほぼ終了した。これらを用いることでオルガネラ間の代謝連携を人為的に制御し、最終年度での研究計画の遂行が支障なく行なえるものと考える。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-26117726
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核-ミトコンドリア間コミュニケーションによる代謝相互作用の分子機構の解明
解糖系酵素のメチル化修飾の有無が細胞全体のエネルギー代謝を制御する上で重要なファクターであることは今年度の研究で明らかになったが、その過程においてチューブリンの修飾動態がメチオニン代謝制御によっても変化し得ることを偶然発見した。来年度は、提案研究に加え、チューブリンの新規修飾の可能性を検討し、複数の修飾間によるクロストークについて詳細な検討を行なうことでオルガネラ間の代謝連携機構の解析を行なう。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-26117726
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酵素類似錯体を用いた生体内酵化反応における構造認識についての研究
本研究では、極めて多幼性に富む酸化酵素・チトクロムP-450の活性中心であるポルフィリン錯体の機能を再現すべく、ポルフィリン錯体と電子的及び構造的に類似した光学活性なサレン錯体あるいはテトラアザ錯体を用いてオレフィン類の酸化反応の検討を行ない、1)生体内の反応と同様に効率的な酸素酸化反応の開発、および2)高エナンチオ選択的エポキシ化反応を開発することができた。1.P-450のモデル錯体による酸素酸化反応の開発ポルフィリン錯体のモデル化合物について検討を行ったところ、ポルフィリンと等電子構造を持つテトラアザニッケル錯体がアルデヒドの存在下、分子状酸素(向山の条件)によるエポキシ化を円滑に触媒することを見いだした。ただこの反応ではシス-オレフィンからシス-およびトランス-エポキシドが得られること、またスチレン誘導体の酸化では少量だがベンズアルデヒドが生成することなどからラジカル機構の関与が示唆された。そこでこの反応の機構について詳細に検討を行なったところ、アシルペルオキシラジカルが活性種として関与することを明らかにすることができた。2.オキソ錯体に接近する基質の配向の研究P-450による酸化では活性部位のポルフィリン錯体がオキソ体に酸化され、その後基質の酸化を行なうことが明らかにされている。しかしオレフィンの酸化では、どの方向からオレフィンがオキソ体に接近するかが末だ明らかにされていない。そこで数多くの光学活性な(サレン)マンガン錯体を合成し、エポキシ化の立体化学を検討したとこむろ、シス-オレフィンではサレン錯体の面に沿って、またトランス-オレフィンでは斜上の方向からオキソ体に接近することが推測された。この仮説に基づいて新規サレン錯体を合成し、高エナンチオ選択的エポキシ化(最高96%ee)を達成することができた。本研究では、極めて多幼性に富む酸化酵素・チトクロムP-450の活性中心であるポルフィリン錯体の機能を再現すべく、ポルフィリン錯体と電子的及び構造的に類似した光学活性なサレン錯体あるいはテトラアザ錯体を用いてオレフィン類の酸化反応の検討を行ない、1)生体内の反応と同様に効率的な酸素酸化反応の開発、および2)高エナンチオ選択的エポキシ化反応を開発することができた。1.P-450のモデル錯体による酸素酸化反応の開発ポルフィリン錯体のモデル化合物について検討を行ったところ、ポルフィリンと等電子構造を持つテトラアザニッケル錯体がアルデヒドの存在下、分子状酸素(向山の条件)によるエポキシ化を円滑に触媒することを見いだした。ただこの反応ではシス-オレフィンからシス-およびトランス-エポキシドが得られること、またスチレン誘導体の酸化では少量だがベンズアルデヒドが生成することなどからラジカル機構の関与が示唆された。そこでこの反応の機構について詳細に検討を行なったところ、アシルペルオキシラジカルが活性種として関与することを明らかにすることができた。2.オキソ錯体に接近する基質の配向の研究P-450による酸化では活性部位のポルフィリン錯体がオキソ体に酸化され、その後基質の酸化を行なうことが明らかにされている。しかしオレフィンの酸化では、どの方向からオレフィンがオキソ体に接近するかが末だ明らかにされていない。そこで数多くの光学活性な(サレン)マンガン錯体を合成し、エポキシ化の立体化学を検討したとこむろ、シス-オレフィンではサレン錯体の面に沿って、またトランス-オレフィンでは斜上の方向からオキソ体に接近することが推測された。この仮説に基づいて新規サレン錯体を合成し、高エナンチオ選択的エポキシ化(最高96%ee)を達成することができた。
KAKENHI-PROJECT-04220230
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腎臓を模倣した膜晶析装置を用いた尿路結石の発生機構および抑制機構の解明
近年本邦では、食生活の変化などにより尿路結石の罹患率が上昇している。尿路結石を生体内で起こる晶析現象であると考えるなら、工学的な評価が可能となる。そこで本研究課題により、腎臓で行われる原尿の濃縮機構を実験室での逆浸透膜上に再現し、膜面上に結石を析出させて客観的で再現性のある定量解析を行うことを目的とする。研究の基盤となる装置については、攪拌型ウルトラホルダーを用い、膜にRO膜を応用した。原尿に模した試料液を窒素ガスにより加圧し、膜面上で濃縮させて結晶を析出することに成功した。また、加圧方式を変化することで、結晶の析出過程を制御し、結晶形状の違いを観察できた。次に、共存物質としてクエン酸の効果を確認した。クエン酸が尿路結石の生成を阻害することは医学的に確認されているが、その阻害機構はわかっていない。本研究により、クエン酸の存在により結晶形態の変化が起こり、その後の成長過程が変化することがわかった。これは、結晶自体の析出量には大きな影響を与えないが、形態の違いにより炎症機構への影響が大きいことを示すものであり、尿路結石の発生防止や再発予防に活かせる知見となった。また、マグネシウムイオンの影響も調べることができた。マグネシウムイオンの共存により尿路結石の原因物質であるシュウ酸カルシウムの水への溶解度が変化することが確認できた。この結果により、尿路結石の抑制効果を発現できるマグネシウムイオンの規定量を示すことができた。現在までに限外濾過装置を応用し、腎臓の集合管で起きる尿濃縮機構を再現することができた。また、結石の疎外作用を示すクエン酸やマグネシウムイオンに関し、その濃度効果について詳細に検討できた。このように、研究計画に従い、おおむね順調に進めてきたが、これらの研究成果を論文投稿や海外での学会発表を行いまとめる作業が残っている。より詳細に実験条件などを検討し、よりよいものに仕上げるため、研究機関を1年延長する。論文にまとめる際に、必要な補充実験を中心に行っていく。その際、再現性や定量性を重要視し、工学的な評価として耐えうるものに仕上げていく。また尿路結石の主な構成物質はシュウ酸カルシウムだが、一部尿酸を主にしたものも生じる。この尿酸に対してもシュウ酸カルシウムと同様の評価が可能であるため、各種濃縮状況による変化や、共存物質の影響を測定することも同時に進めていく。研究の基盤となる装置の検討および条件の探索を中心に進めた。はじめに、耐圧性樹脂セルにRO膜をセットし、窒素ボンベより加圧することでシュウ酸カルシウム溶液の濃縮を行い、RO膜上に結晶化させた。耐圧樹脂セルとして攪拌型ウルトラホルダー(ADVANTEC, UHP-62K)を用い、RO膜は、東レ(株)製の架橋全芳香族ポリアミド系膜(UTC-70U)を使用した。まず、RO平膜を円形(62 mm φ)に切り出し、ウルトラホルダーに取り付け、原尿に模して調製した試料溶液を200 mL供給し、37°Cの恒温容器内へ入れた。その後、窒素ボンベで加圧して既定濃縮度まで濃縮した。濃縮終了後、使用したRO膜を凍結乾燥し、その膜面上を顕微鏡で観察した。さらに、結晶粒径分布及び結晶個数密度を測定した。この実験を通じて、圧力や初期濃度と、膜面上の結晶の核化や成長挙動の相関を観察することができた。ここまでの膜晶析装置は回分装置であり、腎臓での濃縮を模した濃縮度まで濃縮し、得られる結晶の観察を行ったものである。しかし、さらに大きく結晶成長させる場合や、それに続く凝集形態の確認には、回分装置では観察が難しくなる可能性がある。そこで、リザーバーを用いた試料溶液の連続供給を可能とした実験系も検討した。装置の改良を進めることで、生体の様々な状況を再現できる実験系が構築できた。平均濃縮速度を算出すると、連続系の方が回分系より遅いことが分かり、その値から連続系の方がより生体の腎臓の濃縮を再現できていることが確認された。初年度に研究の基盤となる装置の検討および条件の探索をする目標については、計画通り到達できた。また、膜面上の結晶の観察や成長挙動については、当初予定よりも詳細に検討をすすめることができた。また、回分装置から連続装置に発展させる計画についても、予定通り進めることができた。一方で、陰圧で濾過を促進させる機構については目標まで到達せず、次年度以降に早期に確立させる必要がある。昨年度までに、装置の検討および条件の探索を終えた。今年度は、添加物の影響の検討を行った。クエン酸は、尿中に含まれている物質のひとつであり、生体内回路の中間物である。クエン酸は主にレモンなどの食物に含まれており、尿路結石の阻害作用を示すことが知られている。クエン酸によるシュウ酸カルシウム結晶の析出抑制は、キレート作用による阻害や、ク溶性によるシュウ酸カルシウム結晶の溶解度上昇などに起因することが予想された。ク溶性とは、クエン酸イオンを含む溶液に物質が溶解しやすくなる現象である。生体の腎臓を模したRO膜による濃縮装置を用い、シュウ酸カルシウムの結晶化に与えるクエン酸添加の影響を観察および、濃縮時のシュウ酸イオン濃度の時間変化に関する検討を行った。その結果、クエン酸イオン無添加系において、析出するシュウ酸カルシウム結晶は全て楔形であることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-16K14464
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腎臓を模倣した膜晶析装置を用いた尿路結石の発生機構および抑制機構の解明
また、クエン酸イオン添加系において、析出するシュウ酸カルシウム結晶は大粒径の八面体型と小粒径の卵円形の二種類が観察された。このとき、シュウ酸カルシウム結晶の核化開始点が遅延する現象も見られた。これらより、シュウ酸カルシウム結晶の結晶化が抑制される現象を再現できた。イオンクロマトグラフィーによるシュウ酸イオン濃度測定において、クエン酸イオン無添加系および一部のクエン酸イオン添加系で、シュウ酸イオン濃度の低下が観察された。クエン酸イオン添加量が多いほど、シュウ酸イオンの過飽和状態が維持され、クエン酸イオンの存在が、カルシウムイオンとシュウ酸イオンの結合を阻止する可能性を確認した。以上の結果より、シュウ酸カルシウム結晶の析出挙動に与えるクエン酸イオン添加の関連性を調べることができた。研究の基盤となる装置の検討および条件の探索は終了した。また、尿路結石の主たる成分であるシュウ酸カルシウムからなる結晶を膜面上に再現することができた。さらに、共存物質の影響を調べるため、クエン酸を添加した影響を見ることができた。一方で、共存物質としてクエン酸のみの検討で終わったため、その他の共存物質の影響も早期に観察する必要がある。近年本邦では、食生活の変化などにより尿路結石の罹患率が上昇している。尿路結石を生体内で起こる晶析現象であると考えるなら、工学的な評価が可能となる。そこで本研究課題により、腎臓で行われる原尿の濃縮機構を実験室での逆浸透膜上に再現し、膜面上に結石を析出させて客観的で再現性のある定量解析を行うことを目的とする。研究の基盤となる装置については、攪拌型ウルトラホルダーを用い、膜にRO膜を応用した。原尿に模した試料液を窒素ガスにより加圧し、膜面上で濃縮させて結晶を析出することに成功した。また、加圧方式を変化することで、結晶の析出過程を制御し、結晶形状の違いを観察できた。次に、共存物質としてクエン酸の効果を確認した。クエン酸が尿路結石の生成を阻害することは医学的に確認されているが、その阻害機構はわかっていない。本研究により、クエン酸の存在により結晶形態の変化が起こり、その後の成長過程が変化することがわかった。これは、結晶自体の析出量には大きな影響を与えないが、形態の違いにより炎症機構への影響が大きいことを示すものであり、尿路結石の発生防止や再発予防に活かせる知見となった。また、マグネシウムイオンの影響も調べることができた。マグネシウムイオンの共存により尿路結石の原因物質であるシュウ酸カルシウムの水への溶解度が変化することが確認できた。この結果により、尿路結石の抑制効果を発現できるマグネシウムイオンの規定量を示すことができた。現在までに限外濾過装置を応用し、腎臓の集合管で起きる尿濃縮機構を再現することができた。また、結石の疎外作用を示すクエン酸やマグネシウムイオンに関し、その濃度効果について詳細に検討できた。このように、研究計画に従い、おおむね順調に進めてきたが、これらの研究成果を論文投稿や海外での学会発表を行いまとめる作業が残っている。より詳細に実験条件などを検討し、よりよいものに仕上げるため、研究機関を1年延長する。はじめに、減圧式の膜濃縮晶析装置の確立を進める。
KAKENHI-PROJECT-16K14464
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K14464
肺癌に対するATK活性を応用した術前後および術中免疫化学療法に関する臨床研究
MUC-1分子は特定の腫瘍細胞上に高発現する膜貫通糖蛋白であり、重要な腫瘍抗原の1つと考えられている。本研究では、合成ペプチドを用いてのMUC-1特異的細胞傷害Tリンパ球(CTL)の誘導を試み、その特異性を解析し臨床応用の可能性について報告する。肺癌患者または健常人の末梢血単核球(PBMC)を合成ペプチドで刺激しIL-7存在下に培養を行った。さらに毎週ペプチドで刺激した放射線照射PBMCとIL-7、IL-2存在下に共培養しCTLを誘導した。4回の刺激で得られたCTLを用いて、そのMUC-1特異性を細胞傷害試験で解析した。解析結果は、CTLはMUC-1に特異的な細胞傷害を示した。すなわち、MLC、T47DのMUC-1高発現株に対して、強い細胞傷害活性がみられた。しかもその活性はNK活性に感受性を持つcold K562添加で抑制されなかった。また、MUC-1欠損株にほとんど細胞傷害活性を示さなかったのに対して、そのMUC-1遺伝子導入株に強い細胞傷害活性を示した。本方法で誘導したCTLを用いた養子免疫法の臨床応用を、2例の進行肺癌患者に行った。2例ともCTLの投与に伴い臨床症状の改善と、腫瘍マーカー(CEA)の低下を認めた。また、副作用は軽度の発熱を認めるのみで重篤なものは認めなかった。本方法は肺癌に対する養子免疫療法に有用であると考えられた。MUC-1分子は特定の腫瘍細胞上に高発現する膜貫通糖蛋白であり、重要な腫瘍抗原の1つと考えられている。本研究では、合成ペプチドを用いてのMUC-1特異的細胞傷害Tリンパ球(CTL)の誘導を試み、その特異性を解析し臨床応用の可能性について報告する。肺癌患者または健常人の末梢血単核球(PBMC)を合成ペプチドで刺激しIL-7存在下に培養を行った。さらに毎週ペプチドで刺激した放射線照射PBMCとIL-7、IL-2存在下に共培養しCTLを誘導した。4回の刺激で得られたCTLを用いて、そのMUC-1特異性を細胞傷害試験で解析した。解析結果は、CTLはMUC-1に特異的な細胞傷害を示した。すなわち、MLC、T47DのMUC-1高発現株に対して、強い細胞傷害活性がみられた。しかもその活性はNK活性に感受性を持つcold K562添加で抑制されなかった。また、MUC-1欠損株にほとんど細胞傷害活性を示さなかったのに対して、そのMUC-1遺伝子導入株に強い細胞傷害活性を示した。本方法で誘導したCTLを用いた養子免疫法の臨床応用を、2例の進行肺癌患者に行った。2例ともCTLの投与に伴い臨床症状の改善と、腫瘍マーカー(CEA)の低下を認めた。また、副作用は軽度の発熱を認めるのみで重篤なものは認めなかった。本方法は肺癌に対する養子免疫療法に有用であると考えられた。手術で採取した癌組織と術直前に採血したリンパ球を用いて、もっとも有効な免疫賦活剤を選択する目的で各種免疫賦活剤負荷時の自己リンパ球のATK活性・NK活性の測定を3例に行った。第1例は大腸癌の肺転移症例で、いずれの免疫賦活剤をリンパ球に投与した場合もATK活性は5%以下の低値であったが、NK活性はインターロイキン2投与時に10%以上の高値を示し、インターロイキン2の投与が臨床的にも有効であろうと推測された。第2例は原発性肺癌症例(扁平上皮癌)で、免疫賦活剤を投与しない状態でもATK活性は5%を軽度上回る陽性値を示し、予後良好が推測された。なお、本症例では各種免疫賦活剤を投与する実験は行えなかった。第3例は原発性肺癌症例(腺癌)で、OK-432投与時に、ATK活性・NK活性ともに軽度上昇を示し、OK-432の臨床での有効性が推測された。症例数はまだ少ないが、2例で有効な免疫賦活剤の選択が行い得たことにより、本方法の臨床への応用が可能であると考えられた。今後は、上記の検討を進めるとともに、腫瘍特異的キラーT細胞の誘導活性化に直接関与するリンホカイン、細胞表面分子あるいはシグナルパスウェイを調べるため、末梢血リンパ球および腫瘍内浸潤リンパ球と腫瘍細胞の共培養にIL-2、IL-6、IL12、TNFα、INFγ等のリンホカインを添加しその腫瘍細胞障害能の増強の有無を検討し、TCRαβ、CD3、CD4、CD8、CD80、CD86に対する抗体を添加しその抑制を試みる予定である。肺癌患者の補助免疫療法の有効性を高めることを目的として、術前にOK-432とUFTの投与と術中にOK-432肺胸膜下リンパ管注入を考案した。しかし術前の入院期間およびインフォームドコンセントの問題があり行い得なかった。切除肺癌細胞と末梢血リンパ球を用いて、各種免疫賦活剤負荷時のATK活性・NK活性を測定し、有効な免疫賦活剤の選択を行うこととした。8例の原発性肺腺癌での測定結果は、免疫賦活剤非負荷時のNK活性は3673%とすべてがすでに高値を示したのに対してATK活性は010%と低値であった。免疫賦活剤負荷時にはLAK活性の上昇はみられたもののATK活性の上昇は得られなかった。
KAKENHI-PROJECT-07671462
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07671462
肺癌に対するATK活性を応用した術前後および術中免疫化学療法に関する臨床研究
したがってすでにNK活性高値である症例にATK活性の上昇は得られず、本方法の臨床への応用は困難であると考えられた。そこ腫瘍特異的キラーT細胞を誘導する為に腫瘍抗原に着目した。MHC非拘束性で肺腺癌で90%発現しているMUC-1をはじめMUC-4、MHC拘束性であるMAGE-3の抗原エピトープのペプチドを合成し末梢血リンパ球をパルスし、現在腫瘍特異的キラーT細胞を誘導している。これらの腫瘍抗原を発現している腫瘍に対してそので細胞障害活性を測定するとともに、細胞障害に関与するサイトカイン・細胞表面分子あるいはシグナルパスウェイを調べる予定である。
KAKENHI-PROJECT-07671462
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07671462
希少糖生産酵素群の基質複合体のX線構造に基づく包括的な触媒反応機構の解明
天然に微量にしか存在しない「希少糖」の生産に関与する単糖異性化酵素について、X線結晶解析により基質複合体構造の決定、触媒反応機構の解明に関する研究を行った。L-リボースとL-リブロース間の異性化反応を触媒する、希少糖生産酵素Acinetobacter sp.由来L-リボースイソメラーゼ(L-RI)、Cellulomonas parahominis由来L-RIの構造を決定し、それぞれの野生型および変異酵素における複数の基質複合体構造から、L-RIの糖環開環機構を含めた触媒反応機構を提唱し、L-RIのホモ四量体構造は酵素の分子構造の安定性に関与し、酵素活性には不可欠であることを明らかにした。本研究は、天然に微量にしか存在しない「希少糖」の生産に関与する希少糖生産酵素について、これまで行ってきた基質複合体構造のX線結晶解析研究をさらに深化させるとともに、希少糖誘導体であるデオキシ希少糖生産に向けた構造情報の取得、および新規希少糖生産酵素の構造生物学的研究へと発展させていくことを目的としている。今年度は、当初の予定通りL-リボースとL-リブロース間の異性化を触媒する、新規希少糖生産酵素Acinetobacter sp.由来L-リボースイソメラーゼ(L-RI)の野生型および変異酵素の複数の基質複合体構造から糖環開環機構を含めた触媒反応機構を提唱した(論文投稿中)。L-リボースはL-ヌクレオシド類似体合成の前駆体、すなわち核酸の複製阻害剤として利用することができることから、抗菌剤や抗ウィルス剤、抗がん剤などの医薬品への利用が期待されている。L-リボースの生産への応用が期待されるL-RIの構造解析は、酵素改良のポイントを導き出す手段でもあり興味深い。また、希少糖生産酵素の詳細な触媒反応機構の理解を深めることを目指し、希少糖生産酵素の高分解能データを収集するための良質な結晶を得ることを目的に、第1期第6回JAXA宇宙実験で希少糖生産酵素であるL-ラムノースイソメラーゼ(L-RhI)とD-タガトース3-エピメラーゼ(D-TE)の結晶化実験に引続き、第2期第1回宇宙実験においてもL-RhIとD-TEに加えL-RIの結晶化実験に参加している。国際宇宙ステーション(ISS)を利用したJAXA宇宙実験の結晶化実験(第2期第1回宇宙実験)において、微小重力空間で成長した希少糖生産酵素Pseudomonas cichorii由来D-タガトース3-エピメラーゼ(D-TE)の変異酵素の結晶を用いて希少糖誘導体であるデオキシ希少糖、1-デオキシL-タガトースとの複合体構造(1.73Å分解能)を得ることができた。また、このD-TEの変異酵素を用いたX線結晶構造解析では、デオキシ希少糖や糖アルコールとの多数の複合体構造を決定し、デオキシ糖は活性部位において逆向きに結合できることや、疎水性環境の高い分子表面にも結合する可能性が高いことを示した。D-TEのデオキシ希少糖の認識機構ならびにデオキシ希少糖が阻害効果を示す可能性をもつことが明らかとなり、現在論文投稿の準備を行っている。本研究は、天然に微量にしか存在しない「希少糖」の生産に関与する希少糖生産酵素について、これまで行ってきた基質複合体構造のX線結晶解析研究をさらに深化させるとともに、希少糖誘導体であるデオキシ希少糖生産に向けた構造情報の取得、および新規希少糖生産酵素の構造生物学的研究を発展させていくことを目的に行った。最終年度は、昨年度得られた、希少糖生産酵素Pseudomonas cichorii由来D-タガトース3-エピメラーゼ(D-TE)の変異酵素とデオキシ希少糖や糖アルコールとの複合体構造、国際宇宙ステーション(ISS)を利用したJAXA宇宙実験の微小重力空間で成長したD-TEの変異酵素の結晶と1-デオキシL-タガトースとの複合体構造をまとめた論文投稿を行った。また、今年度参加したJAXA宇宙実験では、希少糖生産酵素Pseudomonas stutzeri由来L-ラムノースイソメラーゼ(L-RhI)の変異酵素の結晶が得られ、これまでの最高分解能を示すD-アロースとの複合体(1.35Å分解能)、1-デオキシD-プシコース、1-デオキシL-タガトース、6-デオキシL-タロースとの複合体構造も得られた。3年間を通して、L-リボースとL-リブロース間の異性化反応を触媒する、新規希少糖生産酵素Acinetobacter sp.由来L-リボースイソメラーゼ(L-RI)、Cellulomonas parahominis由来L-RIの構造決定を行い、それぞれ論文誌に報告することができた。野生型および変異酵素の複数の基質複合体構造から、L-RIの糖環開環機構を含めた触媒反応機構を提唱し、さらに、L-RIのホモ四量体構造は酵素の分子構造の安定性に関与し、酵素活性には不可欠であることを明らかにした。L-リボースは、抗菌剤や抗ウィルス剤、抗がん剤などの医薬品への利用が期待されていることから、L-リボースの生産への応用が期待されるL-RIの構造情報は、今後の酵素改良の指標にもなる。天然に微量にしか存在しない「希少糖」の生産に関与する単糖異性化酵素について、X線結晶解析により基質複合体構造の決定、触媒反応機構の解明に関する研究を行った。L-リボースとL-リブロース間の異性化反応を触媒する、希少糖生産酵素Acinetobacter sp.由来L-リボースイソメラーゼ(L-RI)、Cellulomonas parahominis由来L-
KAKENHI-PROJECT-25440028
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希少糖生産酵素群の基質複合体のX線構造に基づく包括的な触媒反応機構の解明
RIの構造を決定し、それぞれの野生型および変異酵素における複数の基質複合体構造から、L-RIの糖環開環機構を含めた触媒反応機構を提唱し、L-RIのホモ四量体構造は酵素の分子構造の安定性に関与し、酵素活性には不可欠であることを明らかにした。国際宇宙ステーション(ISS)を利用したJAXA宇宙実験の結晶化実験については、反応中間体における水素原子の電子密度が得られる超高分解能のデータ収集には至っていないが、微小重力空間で成長した希少糖生産酵素Pseudomonas cichorii由来D-タガトース3-エピメラーゼ(D-TE)の変異酵素の結晶を用いて希少糖誘導体であるデオキシ希少糖、1-デオキシL-タガトースとの複合体構造を得ることができた。その他にもデオキシ希少糖や糖アルコールとの多数の複合体構造解析が進んでいる。香川大学総合生命科学研究センター分子構造解析研究部門ホームページ構造生物科学、蛋白質工学おおむね当初の予定通り研究が進んでおり、デオキシ希少糖と希少糖生産酵素の複合体構造解析において、デオキシ糖の結合の特徴が示されたことから、この構造情報をもとにデオキシ糖に対してより効率的な基質認識ができるよう変異酵素の作成を行っていく。また、分子表面において開環したデオキシ糖が結合した構造も得られたことから、D-TEの糖の開環機構には基質結合部位に結合してから開環されるプロセスとは異なる機構があることも考えられる。D-TEの糖の開環機構の解明についても新たな変異酵素の構築も含めて検討していく。宇宙実験については、D-TEとデオキシ希少糖、1-デオキシL-タガトースとの複合体構造を得ることができたが、今年度も、第2期第3回宇宙実験の候補サンプルとなっており、引き続き、超高分解能のデータ収集を目指して研究を進めていく。Acinetobacter sp.由来L-リボースイソメラーゼ(L-RI)の触媒反応機構の解明については変異酵素を用いた基質との複合体のX線結晶構造解析を行うことにより、基質の糖環開環機構も含めてcis-ene diolの反応中間体を得ることを提唱することができ目的を達成している。宇宙空間での良質な結晶の作成実験の可能性を含め、反応中間体における水素原子の電子密度が得られる超高分解能のデータ収集を目指している研究は、目的を達成するデータは得られていないが、国際宇宙センター(ISS)を利用した第1期第6回JAXA宇宙実験の結晶化実験に参加し、若干ではあるが分解能が向上したデータも得られている。希少糖誘導体であるデオキシ希少糖生産に向けた構造情報の取得については少し立ち遅れているところがあるが、新規希少糖生産酵素Celulomonas sp.由来L-リボースイソメラーゼ(Ce L-RI)の結晶化および結晶構造解析にも希少糖研究センターとの共同研究により進めている。おおむね当初の予定通り研究が進んでいるので新規酵素の構造解析を含めこのまま研究を進めていく。デオキシ希少糖と希少糖生産酵素の複合体構造解析を集中して行い、デオキシ希少糖の認識機構・触媒反応機構を解明する。
KAKENHI-PROJECT-25440028
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社会経済構造の転換と21世紀の都市圏ビジョン
都市圏構造の変化については藤井、豊田、谷が、2006年9月の日本都市社会学会大会シンポジウム「都市社会の構造と変動-三大都市圏の社会・空間構造の再編-」の話題提供者として、藤井が「大都市圏における構造変化研究の動向と課題」、豊田が「社会階層分極化と都市の空間構造」、谷が「人口移動と通勤流動から見た大都市圏の変化」の各報告を行い、この科研の成果を含め学際的な議論を展開した。海外の都市圏については、藤井・山下・伊藤は、2005年8月の国際地理学会都市地理部会,「明日の都市をモニタリングする」において、合衆国アトランタにおける郊外都心形成やエッジレス化といった最近の分散的な郊外化動向の下でも、コンパクトシティ政策のすすめられるオーストラリア・メルボルンでも、生活行動に関してはほぼ同様の車による郊外間流動が展開しており、錯綜した流動が生み出す機能地域こそ、都市圏構造のひとつの基本となるという研究を報告し、メルボルン大が発行する電子ジャーナル、Applied GISに発表した。谷口と藤井は、米国におけるスマートグロースの展開事例に関しで「個性と都市構造に配慮した地方都市の市街地救命策」もまとめている。日本の都市圏に関しては、居住面については富田が中心都市と郊外におけるマンション居住者のアンケート調査結果の比較を報告し、香川が札幌のマンション開発の動向について人文地理に論文をまとめた。また古賀が、京都市におけるオフィス立地動向の報告し地理学評論にまとめている。また日本におけるコンパクトシティ政策の展開について、青森の事例を千葉がまとめ人文地理学会都市圏研究部会(2006年12月8日)で、また北陸都市の事例を研究協力者の松原が同部会(2005年10月1日)で報告した。こうした各分担者の研究の展開を相互に把握し、また議論するため、2006年11月10日(大阪)と、12月8日から10日にかけて研究会を開催し、これまでの研究総括を行い3月に報告書をまとめた。また、日本地理学会2007年秋季大会においてシンポジウムを行う。都市圏構造の変化については藤井、豊田、谷が、2006年9月の日本都市社会学会大会シンポジウム「都市社会の構造と変動-三大都市圏の社会・空間構造の再編-」の話題提供者として、藤井が「大都市圏における構造変化研究の動向と課題」、豊田が「社会階層分極化と都市の空間構造」、谷が「人口移動と通勤流動から見た大都市圏の変化」の各報告を行い、この科研の成果を含め学際的な議論を展開した。海外の都市圏については、藤井・山下・伊藤は、2005年8月の国際地理学会都市地理部会,「明日の都市をモニタリングする」において、合衆国アトランタにおける郊外都心形成やエッジレス化といった最近の分散的な郊外化動向の下でも、コンパクトシティ政策のすすめられるオーストラリア・メルボルンでも、生活行動に関してはほぼ同様の車による郊外間流動が展開しており、錯綜した流動が生み出す機能地域こそ、都市圏構造のひとつの基本となるという研究を報告し、メルボルン大が発行する電子ジャーナル、Applied GISに発表した。谷口と藤井は、米国におけるスマートグロースの展開事例に関しで「個性と都市構造に配慮した地方都市の市街地救命策」もまとめている。日本の都市圏に関しては、居住面については富田が中心都市と郊外におけるマンション居住者のアンケート調査結果の比較を報告し、香川が札幌のマンション開発の動向について人文地理に論文をまとめた。また古賀が、京都市におけるオフィス立地動向の報告し地理学評論にまとめている。また日本におけるコンパクトシティ政策の展開について、青森の事例を千葉がまとめ人文地理学会都市圏研究部会(2006年12月8日)で、また北陸都市の事例を研究協力者の松原が同部会(2005年10月1日)で報告した。こうした各分担者の研究の展開を相互に把握し、また議論するため、2006年11月10日(大阪)と、12月8日から10日にかけて研究会を開催し、これまでの研究総括を行い3月に報告書をまとめた。また、日本地理学会2007年秋季大会においてシンポジウムを行う。合衆国の都市圏と政策の動向については、以下の研究を行い発表した。藤井は、日本地域政策学会大会において、合衆国における郊外化とコンパクトシティ政策の動向に関する報告を行った。また、人文地理学会大会における特別研究発表でも、合衆国都市圏の動向を最新の統計データから分析し、政策の展開との関係、ならびにそれらをふまえての日本の大都市圏や郊外の動向の位置づけと地域構造論的な意味に関して研究発表を行った。また、藤塚も都市再生とジェントリフィケーション研究に関する国際的な動向の検討を行い、谷口ほかはRegional Environmental Capacity for Sustainable Growthと題して第6回のSymposium of the International Urban Planning and Environmet Association(KY,USA)において報告を行った。合衆国都市圏の動向に関しては他に石川が下記のGIS分析をまとめている。日本の都市圏に関しては、居住面について、富田が大阪市都心地区における新規マンション居住者の居住満足度を報告し、香川が那覇市における分譲マンション移住者の諸属性と都心立地型マンションの在り方について分析した。中心機能等に関しては、古賀による東京大都市圏の超高層ビルの立地展開、千葉が大店立地法の限界とその役割を仙台市郡山地区における事例で(日本都市学会大会)、山下宗利は中心市街地活性化と持続可能性について佐賀市を事例に研究報告した(日本地理学会春季大会シンポ「地方都市再生の指針」)。また職住を結ぶ生活行動に関しては谷は『郊外の郊外』における若年者の通勤行動-埼玉県上尾市居住者の事例を報告し、消費者購買行動や交通の変化に関する下記論文もまとまっている。さらに郊外の社会的な意味合いの変化に関しても下記の吉田の報告がある。
KAKENHI-PROJECT-16202022
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社会経済構造の転換と21世紀の都市圏ビジョン
合衆国の都市圏と政策の動向については、以下の研究を行い発表した。藤井は2005年8月の国際地理学会都市地理部会,「明日の都市をモニタリングする」において、合衆国アトランタにおける郊外都心形成やエッジレス化といった最近の分散的な郊外化動向の下でも、コンパクトシティ政策のすすめられるオーストラリアメルボルンでも、生活行動に関してはほぼ同様の車による郊外間流動が展開しており、錯綜した流動が生み出す機能地域こそ、都市圏構造のひとつの基本となるという報告を行った。山下博樹はカナダのバンクーバーのコンパクトシティ群を配置・整備し公共交通と結びつけた都市圏整備に関して2006年3月の日本地理学会大会と2005年5月の人文地理学会都市圏研究部会において報告を行った。谷口は、コンパクトシティの形成方法に関してまとめている。地方都市については、石丸が2005年11月の人文地理学会大会において、カナダ地方都市レジャイナにおける商業・サービス機能と都市構造について都心再生とのかかわりで考察し報告している。日本の都市圏に関しては、居住面について、富田が郊外におけるマンション居住者のアンケート調査を行い、香川がマンション開発の動向について2005年11月の人文地理学会大会において特別発表を行った。同学会では他に古賀が京都市におけるオフィス立地動向の報告し立命館文学593にまとめている。千葉は郊外住宅地開発の今日的課題について日本都市学会第52回大会で報告し、大規模小売店舗立地法の限界と存在意義について日本都市学会年報にまとめている。坪本は郊外における今後の生活行動分析で重要な高齢者の日常生活と地域交通について、宮澤仁編著『地域と福祉の分析法』にまとめた。また郊外の居住移動指向と生活行動については、藤井も兵庫県三田市におけるアンケート調査結果を市史研究さんだに、谷は、東京大都市圏における1990年代の通勤流動の変化と若年男性の就業行動について埼玉大学教育学部地理学研究報告にまとめている。吉田は郊外空間のジェンダー化について地理科学学会で報告し、空間に潜むジェンダー関係への着目についてまとめている。こうした各分担者の研究の展開を相互に把握し、また議論するため、2005年9月30日から10月2日にかけて3日間の研究会を開催し、その報告をもとに中間報告をまとめ配付した。都市圏構造の変化については藤井、豊田、谷が、2006年9月の日本都市社会学会大会シンポジウム「都市社会の構造と変動-三大都市圏の社会・空間構造の再編-」の話題提供者として、藤井が「大都市圏における構造変化研究の動向と課題」、豊田が「社会階層分極化と都市の空間構造」、谷が「人口移動と通勤流動から見た大都市圏の変化」の各報告を行い、この科研の成果を含め学際的な議論を展開した。
KAKENHI-PROJECT-16202022
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H粒子に関する実験研究
素粒子物理学に於ては量子色力学が大きい成功を収めた。これをうけて原子核研究に於てもクォ-ク自由度が本質的であるような現象を捜すことが中心的課題となっているが、今のところその確たる証拠はみつかっていない。この点で1977年Jaffeによって予想されたH粒子は非常に興味がある。これを構成する2コの∧粒子はクォ-クレベルのカラ-マグネティック相互作用によってはじめて強く結合すると考えられる為、もしH粒子が検出され、その質量が決定されればそれは原子核分野はもとより素粒子論に於ても画期的である。本研究の目的はブルックヘヴン国立研究所に新たに建設された大強度Kビ-ムラインを用いてE813,E836の2つのH粒子検証の為の実験を行うことが当初の目的であった。E813に於てはK^-を水素標的に導き、生成されたΞ^-粒子を隣接する重水素標的中で止め、Ξd→Hn反応によって反跳を受ける中性子の運動量を測定してHの生成を確認することが目的とされ、又E836に於ては^3He標的を用いてK^-He→dn K^+反応の反跳K^+のスペクトルから同じくHの生成を確認することが目的とされる。しかしながら米国に於ける国家予算削減の影響を受けて陽子加速期間がきわめて少くなったため、本計画の期間中には1991年46月にE813のデ-タ取得が行われるのがやっとであった。本計画の発足と同時に検出器のデザイン、高エネルギ-物理学研究所に於けるテスト実験等が開始された。ブルックヘヴンのビ-ムラインは1990年夏には完成し、又同じ頃スペクトロメ-タ・マグネットもインスト-ルされた。各チェンバ-類や日本側の担当するアエロジェル・チェレンコフ・カウンタ-,Timeーofーflightカウンタ-等の組み立ても行われ、1991年はじめにはスペクトロメ-タを構成するすべての検出器の組み立てが終りテストが行われ、所期のパ-フォ-マンスが得られることが確かめられた。水素・重水素の二重標的もうまく稼働した。又高エネルギ-物理学研究所で行われたE176のデ-タ解析の結果、K^-ビ-ムの当った標的から非常に多くの陽子の反跳があることがわかって急いで組み立てられたル-サイト・チェレンコフ・カウンタ-もほぼ準備がととのった。しかしながら1991年4月の実験開始後、ビ-ムセパレ-タの電圧がうまく上らないという事態が発生した。努力にもかかわらずセパレ-タ電圧600KVで実験を行わざるを得ず、この為ビ-ムの運動量を1.7GeV/cに下げてデ-タ取得を行った。この事故の結果としてデ-タの統計は予定の6%程に制限された。7月はじめ実験終了後ただちに結果の解析が開始された。11月迄に約1割のデ-タが解析され、この結果すべての検出器が予定通りに稼働したことが確認され、重水素標的中でのΞ^-粒子のストップが固定できることが確かめられた。このことは12月、下田で行われたハイパ-核に関するINS国際シンポジウムでBarnesによって報告された。現在デ-タのリダクションが順調に進行中である。しかし1991年のデ-タは統計が少いことと、E813の延長がPACで認められ、1992年5・6月に8週間の実験が予定されていることから、デ-タの公表はこの実験の結果を加えて発表される予定である。現在セパレ-タのコンディショニングは順調で、次の実験は1.8GeV/cで行うことができよう。これによるK^-の増加とセカンドレベルトリガ-の導入、トリガ-の改善によるデッドタイムの減少から今回は約170RのH事象が期待できる。(ここにRはΞ^-d原子からHが生成される分岐比である。)これにより仮にRが0.1程小さくても十分統計的に意味のあるデ-タがとれる予想で、現在実験の準備が着々進行中である。以上のような理由で本計画の終り迄には学術誌への公表が間に合わなかったが、1992年中にはデ-タ解析が進み結果が公表できるものと思われる。素粒子物理学に於ては量子色力学が大きい成功を収めた。これをうけて原子核研究に於てもクォ-ク自由度が本質的であるような現象を捜すことが中心的課題となっているが、今のところその確たる証拠はみつかっていない。この点で1977年Jaffeによって予想されたH粒子は非常に興味がある。これを構成する2コの∧粒子はクォ-クレベルのカラ-マグネティック相互作用によってはじめて強く結合すると考えられる為、もしH粒子が検出され、その質量が決定されればそれは原子核分野はもとより素粒子論に於ても画期的である。本研究の目的はブルックヘヴン国立研究所に新たに建設された大強度Kビ-ムラインを用いてE813,E836の2つのH粒子検証の為の実験を行うことが当初の目的であった。
KAKENHI-PROJECT-01044132
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H粒子に関する実験研究
E813に於てはK^-を水素標的に導き、生成されたΞ^-粒子を隣接する重水素標的中で止め、Ξd→Hn反応によって反跳を受ける中性子の運動量を測定してHの生成を確認することが目的とされ、又E836に於ては^3He標的を用いてK^-He→dn K^+反応の反跳K^+のスペクトルから同じくHの生成を確認することが目的とされる。しかしながら米国に於ける国家予算削減の影響を受けて陽子加速期間がきわめて少くなったため、本計画の期間中には1991年46月にE813のデ-タ取得が行われるのがやっとであった。本計画の発足と同時に検出器のデザイン、高エネルギ-物理学研究所に於けるテスト実験等が開始された。ブルックヘヴンのビ-ムラインは1990年夏には完成し、又同じ頃スペクトロメ-タ・マグネットもインスト-ルされた。各チェンバ-類や日本側の担当するアエロジェル・チェレンコフ・カウンタ-,Timeーofーflightカウンタ-等の組み立ても行われ、1991年はじめにはスペクトロメ-タを構成するすべての検出器の組み立てが終りテストが行われ、所期のパ-フォ-マンスが得られることが確かめられた。水素・重水素の二重標的もうまく稼働した。又高エネルギ-物理学研究所で行われたE176のデ-タ解析の結果、K^-ビ-ムの当った標的から非常に多くの陽子の反跳があることがわかって急いで組み立てられたル-サイト・チェレンコフ・カウンタ-もほぼ準備がととのった。しかしながら1991年4月の実験開始後、ビ-ムセパレ-タの電圧がうまく上らないという事態が発生した。努力にもかかわらずセパレ-タ電圧600KVで実験を行わざるを得ず、この為ビ-ムの運動量を1.7GeV/cに下げてデ-タ取得を行った。この事故の結果としてデ-タの統計は予定の6%程に制限された。7月はじめ実験終了後ただちに結果の解析が開始された。11月迄に約1割のデ-タが解析され、この結果すべての検出器が予定通りに稼働したことが確認され、重水素標的中でのΞ^-粒子のストップが固定できることが確かめられた。このことは12月、下田で行われたハイパ-核に関するINS国際シンポジウムでBarnesによって報告された。現在デ-タのリダクションが順調に進行中である。しかし1991年のデ-タは統計が少いことと、E813の延長がPACで認められ、1992年5・6月に8週間の実験が予定されていることから、デ-タの公表はこの実験の結果を加えて発表される予定である。現在セパレ-タのコンディショニングは順調で、次の実験は1.8GeV/cで行うことができよう。これによるK^-の増加とセカンドレベルトリガ-の導入、トリガ-の改善によるデッドタイムの減少から今回は約170RのH事象が期待できる。(ここにRはΞ^-d原子からHが生成される分岐比である。)これにより仮にRが0.1程小さくても十分統計的に意味のあるデ-タがとれる予想で、現在実験の準備が着々進行中である。以上のような理由で本計画の終り迄には学術誌への公表が間に合わなかったが、1992年中にはデ-タ解析が進み結果が公表できるものと思われる。本研究の目的はカウンタ-実験によりS=-2のダイバリオンであるH粒子の存在を験証し、又その質量を決定することにあるが、具体的にはBrookhaven国立研究所に於ける実験813及び836を遂行し、その結果の解析を行う。初回の実験の開始が諸搬の事情から遅れて1991年3月末と決定された為、それに向けてビ-ムライン、スペクトロメ-タ、諸検出器、標的、デ-タ取得システムの準備を行って来た。本報告を書いている時点でほぼすべての装置の設置が終り、テストを行っている最中である。日本側の主に担当している粒子同定系に於ては、fimeーofーflightカウンタ-についてはテストも終り、非常に良いパ-フォ-マンスが得られた為に、これについての論文を準備中である。又標的上、下流のアエロジェル・チェレンコフカウンタ-も良い成績を示している。
KAKENHI-PROJECT-01044132
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中国における日本語教師の教育実践と生活状況に関する調査研究
1.研究目的と経過(1)目的=日本側派遣日本語教師の中国における教育実践と生活状況を、(1)日本語教師、(2)日本語教師受け入れ大学、(3)日本語を学ぶ学生の3者に対するアンケート調査によって明らかにし、今後の日中教育交流のための基礎資料を得ること。(2)経過=(1)日本語教師に対するアンケート調査は、「交付申請書」の研究実施計画に従って進められ、基本的な集計・分析を終了。(2)日本語教師受け入れ大学および(3)日本語を学ぶ学生に対するアンケート調査は、中国側協力者である中国国家外国専家局の手続きミスで実施が大幅に遅れ、平成5年12月に調査票送付、現在回収中。2.調査結果の概要(1)日本語教師に対するアンケート調査(送付数45、回収数41、回収率91%)......a.属性:性別=男31、女10/平均年齢=55.7歳/職業=現職・退職の学校教師(全員)。b.赴任前の日本語教育訓練:短期(1カ月未満)の訓練を受けているが、全員が不十分と回答。c.授業実践:時間数=平均週16.8時間/担当クラス=平均3クラス/展開=基本的に会話中心/教材・資料=中国側が準備した基本教材の他は、教師自身の個人的な努力による。d.生活状況:住居=外国人教師用宿舎、平均49平米、バス・トイレ付き/食事=自炊・食堂完備/生活用品=宿舎備え付け。日用品は自弁/給与=平均月額800元、支出=平均月額1061.5元。e.中国への赴任動機(最多):過去の戦争への贖罪。f.日本政府への要望(最多):公的な日本語教師派遣事業の強化・拡充。(2)受け入れ大学へのアンケート調査......現在回収中。(3)中国人学生へのアンケート調査(現在回収中、研究代表者回収分11部のみ[参考])......a.日本語学習の動機(最多)=就職。b.日本語教師への評価=高い満足。c.日本政府への要望=短期日本語研修留学の機会の拡充。3.今後の予定中国側実施のアンケート調査回収後、当初の研究計画に基づき集計・分析。日本人教師に対しても、20名ほどの補充調査を予定。1.研究目的と経過(1)目的=日本側派遣日本語教師の中国における教育実践と生活状況を、(1)日本語教師、(2)日本語教師受け入れ大学、(3)日本語を学ぶ学生の3者に対するアンケート調査によって明らかにし、今後の日中教育交流のための基礎資料を得ること。(2)経過=(1)日本語教師に対するアンケート調査は、「交付申請書」の研究実施計画に従って進められ、基本的な集計・分析を終了。(2)日本語教師受け入れ大学および(3)日本語を学ぶ学生に対するアンケート調査は、中国側協力者である中国国家外国専家局の手続きミスで実施が大幅に遅れ、平成5年12月に調査票送付、現在回収中。2.調査結果の概要(1)日本語教師に対するアンケート調査(送付数45、回収数41、回収率91%)......a.属性:性別=男31、女10/平均年齢=55.7歳/職業=現職・退職の学校教師(全員)。b.赴任前の日本語教育訓練:短期(1カ月未満)の訓練を受けているが、全員が不十分と回答。c.授業実践:時間数=平均週16.8時間/担当クラス=平均3クラス/展開=基本的に会話中心/教材・資料=中国側が準備した基本教材の他は、教師自身の個人的な努力による。d.生活状況:住居=外国人教師用宿舎、平均49平米、バス・トイレ付き/食事=自炊・食堂完備/生活用品=宿舎備え付け。日用品は自弁/給与=平均月額800元、支出=平均月額1061.5元。e.中国への赴任動機(最多):過去の戦争への贖罪。f.日本政府への要望(最多):公的な日本語教師派遣事業の強化・拡充。(2)受け入れ大学へのアンケート調査......現在回収中。(3)中国人学生へのアンケート調査(現在回収中、研究代表者回収分11部のみ[参考])......a.日本語学習の動機(最多)=就職。b.日本語教師への評価=高い満足。c.日本政府への要望=短期日本語研修留学の機会の拡充。3.今後の予定中国側実施のアンケート調査回収後、当初の研究計画に基づき集計・分析。日本人教師に対しても、20名ほどの補充調査を予定。
KAKENHI-PROJECT-05710160
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05710160
深部集中加温を目的としたリエントラント型癌温熱治療装置の試作研究
有効な深部加温が可能な癌温熱治療用加温装置の開発を目指して研究を行った。リエントラント型空洞共振器を加温用アプリケータとして用いる独特の加温システムについて検討した。1.FD-TD法による理論解析を行い、本アプリケータのエネルギ分布の計算が行えるようになった。その結果、被加温体の導電率及び誘電率によって、加温特性が変化する事が判明した。2.直径190cm、高さ145cmの空胴共振器アプリケータを中心として、直径、高さ、リエントラントの大きさ等を変えて加温特性を推定したが、エネルギ分布が余り変化しないという結論がでた。3.前記理論結果に基づきリエントラント型空洞共振器を設計、作成し、その加温特性を測定検討した。4.加温に必要な大電力発生器を設計し、製作依頼し、仕様書に合致した装置が納入された。本実験では被加温物体によって共振周波数が変化するが、これに対応できる様に動作周波数が広帯域で、かつ大電力としてある。5.整合装置及び給電装置の見直しを行い、パルスモータ駆動が可能であるようにしマイコン制御を行った。6.良好な円柱状加温パターンを得るための条件を種々検討した。リエントラント部の直径を変えて測定した。また、リエントラントと被加温体の間に電界集中具を挿入すると良好な円柱状加温パターンが得られると共に、上に凸又は下に凸になる加温パターンが得られる事が発見された。この事は、従来不可能であった、腹部脂肪層や脊髄を避けて加温出来る可能性を示唆している重要な発見である。7.ファントムの電気定数を変えて加温特性を測定した。その結果、人体筋肉に近い定数のファントムが深部有効加温出来るか出来ないかぎりぎりの限界である事が判明し、実用化には更なる検討が必要である。有効な深部加温が可能な癌温熱治療用加温装置の開発を目指して研究を行った。リエントラント型空洞共振器を加温用アプリケータとして用いる独特の加温システムについて検討した。1.FD-TD法による理論解析を行い、本アプリケータのエネルギ分布の計算が行えるようになった。その結果、被加温体の導電率及び誘電率によって、加温特性が変化する事が判明した。2.直径190cm、高さ145cmの空胴共振器アプリケータを中心として、直径、高さ、リエントラントの大きさ等を変えて加温特性を推定したが、エネルギ分布が余り変化しないという結論がでた。3.前記理論結果に基づきリエントラント型空洞共振器を設計、作成し、その加温特性を測定検討した。4.加温に必要な大電力発生器を設計し、製作依頼し、仕様書に合致した装置が納入された。本実験では被加温物体によって共振周波数が変化するが、これに対応できる様に動作周波数が広帯域で、かつ大電力としてある。5.整合装置及び給電装置の見直しを行い、パルスモータ駆動が可能であるようにしマイコン制御を行った。6.良好な円柱状加温パターンを得るための条件を種々検討した。リエントラント部の直径を変えて測定した。また、リエントラントと被加温体の間に電界集中具を挿入すると良好な円柱状加温パターンが得られると共に、上に凸又は下に凸になる加温パターンが得られる事が発見された。この事は、従来不可能であった、腹部脂肪層や脊髄を避けて加温出来る可能性を示唆している重要な発見である。7.ファントムの電気定数を変えて加温特性を測定した。その結果、人体筋肉に近い定数のファントムが深部有効加温出来るか出来ないかぎりぎりの限界である事が判明し、実用化には更なる検討が必要である。有効な癌温熱治療用加温装置の開発を目指して研究を行った。1.直径190cm、高さ145cmの空胴共振器アプリケータを設計、作成し、その加温特性を測定検討した。2.大電力発生器を設計し、製作依頼し、仕様書に合致した装置が納入された。本実験では被加温物体によって共振周波数が変化するが、これに対応できるように動作周波数が広帯域でかつ大電力としてある。3.整合装置及び給電装置の設計製作を行い、給電に関し良好な特性を得る事が出来た。4.整合監視装置を完成し、ディジタル信号としてマイコンに取り込める様にした。励振用高周波電力による誤動作を無くした。5.空胴共振器の低部とリエントラント部の接触部を完全に半田付けする事によって、良好な円柱状加温パターンが得られる事を確認した。この事によって、当初計画した金メッキは不要となった。6.良好な円柱状加温パターンを得るための条件を種々検討した。リエントラント部の直径を変えて測定した。また、リエントラントと被加温体の間に電界集中具を挿入すると良好な円柱状加温パターンが得られると共に、上に凸又は下に凸になる加温パターンが得られる事が発見された。この事は、従来不可能であった、腹部脂肪層や脊髄を避けて加温出来る可能性を示唆している重要な発見である。7.ファントムの電気定数を変えて加温特性を測定した。その結果、人体筋肉に近い定数のファントムが有効に加温出来る事が判明し実用化の期待が高まった。
KAKENHI-PROJECT-04557048
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深部集中加温を目的としたリエントラント型癌温熱治療装置の試作研究
8.今後の工学的課題としては、操作の完全自動化を行い使用しやすくすると共に、計算機によるシミュレーションで、加温パターンが事前に予測出来る様にする事である。有効な深部加温が可能な癌温熱治療用加温装置の開発を目指して研究を行った。リエントラント型空洞共振器を加温用アプリケータとして用いる独特の加温システムについて検討した。1.FD-TD法による理論解析を行い、本アプリケータのエネルギ分布の計算が行えるようになった。その結果、被加温体の導電率及び誘電率によって、加温特性が変化する事が判明した。2.直径190cm、高さ145cmの空胴共振器アプリケータを中心として、直径、高さ、リエントラントの大きさ等を変えて加温特性を推定したが、エネルギ分布が余り変化しないという結論がでた。3.前記理論結果に基づきリエントラント型空洞共振器を設計、作成し、その加温特性を測定検討した。4.加温に必要な大電力発生器を設計し、製作依頼し、仕様書に合致した装置が納入された。本実験では被加温物体によって共振周波数が変化するが、これに対応できる様に動作周波数が広帯域で、かつ大電力としてある。5.整合装置及び給電装置の見直しを行い、パルスモータ駆動が可能であるようにしマイコン制御を行った。6.良好な円柱状加温パターンを得るための条件を種々検討した。リエントラント部の直径を変えて測定した。また、リエントラントと被加温体の間に電界集中具を挿入すると良好な円柱状加温パターンが得られると共に、上に凸又は下に凸になる加温パターンが得られる事が発見された。この事は、従来不可能であった、腹部脂肪層や脊髄を避けて加温出来る可能性を示唆している重要な発見である。7.ファントムの電気定数を変えて加温特性を測定した。その結果、人体筋肉に近い定数のファントムが深部有効加温出来るか出来ないかぎりぎりの限界である事が判明し、実用化には更なる検討が必要である。
KAKENHI-PROJECT-04557048
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胎児の栄養環境と代謝エピジェネティクス制御
カルシウム(Ca)の摂取不足がメタボリックシンドロームの一因と考えられている。ラットにおいて、低Ca食にすると11β-hydroxysteroid dehydrogenase-1が上昇してグルココルチコイドを活性化し、インスリン抵抗性を示すことを明らかにした。また子宮内環境が胎児のエピジェネティクスに影響することが知られている。母獣のCa欠乏は胎児にエピジェネティクス変化を与え、仔が将来メタボリックシンドローム発症の一因になることを報告した。胎児期に設定されたプログラムにミスマッチした母獣に授乳保育されることが、さらにメタボリックシンドローム発症の一因になることを明らかにした。【目的】「母獣のCa欠乏は胎児にエピジェネティクス変化を与え、仔が成獣となった段階でメタボリックシンドローム発症の一因になる」私共の実験結果をもとに、出産した母獣と授乳した母獣のCa欠乏が、仔の将来のインスリン抵抗性におよぼす影響について検討した。【方法】1)12週齢のWistar雌ラットを2群に分け、正常飼料(C)とCa欠乏飼料(D)で飼育し、正常飼料雄ラットを交配させ、出生した仔を4群に分け、21生日まで保育させた;DD, DC, CC, CD (はじめの文字が生んだ母獣、2番目の文字が哺乳の母獣)。離乳期からは正常飼料を与え、生後200日に、体重、血圧、脈拍を測定後、断頭で採血し肝臓を摘出した。肝臓からmRNAを抽出し、11β-HSD1のmRNA特異的プライマー対を用いてリアルタイムPCRを行った。分離凍結した血清で、後日アディポサイトカインとインスリン抵抗性の指標となる血液マーカーを測定した。【結果】1)出生時および生後21日の体重に各群で差は認めなかった。2)生後200日における4群の血圧、心拍数、血糖に有意差はなかったが、雌雄ともDCの体重は有意に重かった。3)低Ca母獣からの仔(DDとDC)は雄のみ、血清インスリンが高値で、HOMA-IRは有意に高かった。4)雄DDは11β-HSD1のmRNA発現は低かった。【結論】低Ca母獣からの雄仔は、インスリン抵抗性を獲得している。また生んだ母獣と異なるCa栄養状態の里親に授乳保育された仔は、出生と授乳が同じCa栄養状態の母獣に養育された仔に比べて、11β-HSD1の発現が亢進した。以上より、母獣のCa欠乏は胎児にエピジェネティクス変化を与え、胎児期に設定されたプログラムにミスマッチした母獣に授乳保育されることは、成獣の段階でメタボリックシンドローム発症の一因になると考えられる。カルシウム(Ca)の摂取不足がメタボリックシンドロームの一因と考えられている。ラットにおいて、低Ca食にすると11β-hydroxysteroid dehydrogenase-1が上昇してグルココルチコイドを活性化し、インスリン抵抗性を示すことを明らかにした。また子宮内環境が胎児のエピジェネティクスに影響することが知られている。母獣のCa欠乏は胎児にエピジェネティクス変化を与え、仔が将来メタボリックシンドローム発症の一因になることを報告した。胎児期に設定されたプログラムにミスマッチした母獣に授乳保育されることが、さらにメタボリックシンドローム発症の一因になることを明らかにした。カルシウム(Ca)欠乏がグルココルチコイド作用にどのような影響を及ぼすかを明らかにする目的で以下の検討を行った。【結果】2群の血圧に有意差はなかった。低Ca群でアディポネクチンが有意に低下した。低Ca群で11β-HSD1が上昇し、PEPCKのmRNAは対照に比べて有意に低下した。しかし、GR、PPARαと11β-HSD2のmRNAの発現には両群に差は認めなかった。【結論】低Ca食では11β-HSD1が上昇してグルココルチコイドを活性化し、メタボリックシンドロームの誘因となると考えられた。またインスリンが上昇することにより、糖新生の律速酵素であるPEPCKが低下して、代償性に糖新生を抑制していると思われた。以上より、Ca欠乏によるグルココルチコイド代謝の変化は、メタボリックシンドローム発症の重要な一因と考えられる。【目的】近年カルシウム(Ca)の摂取不足がメタボリックシンドロームの一因と考えられている。またグルココルチコイド作用の活性化がインスリン抵抗性やメタボリックシンドロームの病態に関与していることが示唆される。ラットにおいて「母獣のCa欠乏は胎児にエピジェネティクス変化を与え、仔が成獣となった段階でメタボリックシンドローム発症の一因になる」ことを報告した。出産した母獣と授乳した母獣のCa欠乏が、仔の将来のインスリン抵抗性におよぼす影響について検討した。【方法】1)12週齢のWistar雌ラットを2群に分け、正常飼料(C)とCa欠乏飼料(D)で飼育し、正常飼料雄ラットを交配させ、出生した仔を4群に分け、21生日まで保育させた;DD, DC, CC, CD (はじめの文字が生んだ母獣、2番目の文字が哺乳の母獣)。離乳期からは正常飼料を与え、生後200±10日に、体重、血圧、脈拍を測定後、断頭で採血し、肝臓11β-HSD1のmRNA発現量を測定した。【結果】1)出生時および生後21日の体重に各群で差は認めなかった。
KAKENHI-PROJECT-24591614
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24591614
胎児の栄養環境と代謝エピジェネティクス制御
2)生後200日における4群の血圧、心拍数、血糖に有意差はなかったが、雌雄ともDCの体重は有意に重かった。3)低Ca母獣からの仔(DDとDC)は雄のみ、血清インスリンが高値で、HOMA-IRは有意に高かった。4)雄DDは11β-HSD1のmRNA発現は低かった。【結論】低Ca母獣からの雄仔は、インスリン抵抗性を獲得している。また生んだ母獣と異なるCa栄養状態の里親に授乳保育された仔は、出生と授乳が同じCa栄養状態の母獣に養育された仔に比べて、11β-HSD1の発現が亢進した。以上より、母獣のCa欠乏は胎児にエピジェネティクス変化を与え、胎児期に設定されたプログラムにミスマッチした母獣に授乳保育されることは、成獣の段階でメタボリックシンドローム発症の一因になると考えられる。代謝内分泌低カルシウム栄養の母獣から出生した仔を、正常母獣を里親として生育する実験系を確立できた。本年度の実験により、たとえ胎児期にDNAのメチル化が変化しても、出生直後の環境により修正が可能かどうかを明らかにした。「胎児期に不足したカチオンを補充ないしは正常母獣に育てられることにより、将来のインスリン抵抗性がリセットされる」ことを明らかにした。カルシウム欠乏食によって、母ラットが実際にインスリン抵抗性を獲得し、肝臓におけるグルココルチコイドに関連する遺伝子の発現に影響するかをプレリミナリーな実験を実施した。母獣において、2週間という短期間であっても強度の低Ca食では11β-HSD1が上昇してグルココルチコイドを活性化し、メタボリックシンドロームの誘因となることが確認できた。ついで母獣から出生した仔(F1)について、グルココルチコイド関連遺伝子のエピジェネティック変化を検討する準備が整った。今後は、エピゲノムの変化と表現型に性差が観察されたが、その原因についてさらに検討する。また次世代(F1, F2)にわたってメチル化の変化が継代し、この表現型が引き継がれることを明らかにする。低栄養の母獣から出生した仔を、正常母獣を里親として生育し、オリジナルの母親に育てられた仔と里親に育てられた仔のメチル化を比較する。低カルシウム食を与えた母獣から生まれた仔ラットと、正常対照から生まれた仔ラットを生後1日から、お互いの親を入れ替えて里親に育てられる群と、そのままのオリジナルの母親に育てられる群の、計4群をつくり、さらに雄雌を区別して、生後100日まで育てる。体重、血圧を測定した後に屠殺して血清と肝臓を採取して凍結保存する。仔から採血した血液は、血清分離後保存し、後日コルチゾールやアディポサイトカインをELISA法で測定する。肝臓からDNAを抽出して、オリジナルの母親に育てられた仔と里親に育てられた仔のメチル化を比較する。さらに次世代(F1, F2)にわたってメチル化の変化が継代し、この表現型が引き継がれることを明らかにする。平成24年度のラットの研究をさらに遂行して、次世代(F1, F2)にわたってメチル化の変化と、表現型(血圧やインスリン抵抗性、脂肪の分布状況など)との関係を明らかにする。統計処理に必要な例数、胎児期低マグネシウム群、授乳期マグネシウム補充群、各対照群(少なくとも各群n=12)を集める。動物実験では妊娠中にたとえ低栄養であっても、母獣に葉酸やビタミンB群を投与すると、エピジェネティクス変化から仔の形質発現を変える報告がみられる。
KAKENHI-PROJECT-24591614
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微小液滴の形成、移動、混合等をおこなうマイクロシステムの研究
大規模なバイオアッセイを可能とする方法として、基板上にパターニングした電極に電圧を印可することによって、液滴にとじこめた試料を搬送する液体誘電泳動法に着目している。絶縁破壊することなく導電性試料(バイオ試料)を搬送するためには、印可電圧を抑える必要がある。また、非導電性溶液を搬送する場合には、280Vppの高い電圧を用いていたが、ジュール熱が発生してバイオ試料にダメージを与える可能性があった。そのため、デバイス作製プロセスを工夫して電極のサイズを小さくし、電極表面にコーティングする最適な誘電層を検討することで液体の接触角を下げ,液体駆動に必要な電圧を小さくする試みを行った。デバイスは、シリコンウエハ上にアルミニウムの電極をパターニングして作製し、誘電層には誘電率の高いテフロンを用いた。マイクロマシーニングにより、電極幅2マイクロメートルのデバイスを作製することができた。このデバイスを使って、一般的なDNA緩衝液であるTris-Borate-EDTAの液滴搬送が確認できた。この緩衝液の導電率は10mS/mであり、文献よりも10倍高い誘電率の液体を搬送できたことになる。また、誘電層の表面に、界面活性剤を塗布することにより、文献の1/3の電圧値である80Vppで液滴を搬送できることを示した。低電圧での液体搬送が可能になったことで、以下のように複数の利点が導かれた。既存の液体誘電泳動のデバイスでは、高電圧印可により絶縁破壊が生じやすく、溶液を搬送できる回数は1回または数回に限られていたが、本研究で最適化したデバイスでは、15回以上の駆動ができることを確認した。また、ジュール熱を抑えることができ、バイオ試料に与えるダメージを極小にすることが可能となった。プロジェクトの目的は、大規模なバイオアッセイのために液体誘電泳動を利用することによって、小さな水滴の中に含まれるバイオ試料を操作することにある。バイオ試料の操作とは、つまり細胞や分子が含まれる導電性溶媒を扱うということである。しかしながら、今まで液体誘電泳動(LDEP)を利用した方法は非導電性溶媒でしか行われていない。この動作原理は、まず2つの電極間に電場を発生させる。そして電圧と周波数をかけることによって力が支配的なエリア内に液体を引きつける方法である。溶媒が導電性である場合は電界が液中に侵入しがたいため、駆動に必要な十分な力を得ることができない。そこで本研究では、少数の液体に限定されていたこの方法を、多くの種類の液体を扱えるように拡張することで科学技術の進歩に資することを目指す。もし駆動電圧が十分な強度の高周波ならば、導電性の溶媒は非導電性の溶媒として考えることができる。以上の点と高電圧によるバイオ試料の破壊を防ぐ必要を考慮すると、液体と基板の間にかかる力が最小でバイオ試料を駆動できるようにしなければならない。電極の形状および使用される材料の厚さを様々に変更したいくつかのデバイスを作り、実験を行う。これらの結果を比較してまとめることで、一番良いデザインを決めることができる。さらに溶液と電極を絶縁する誘電層を、表面張力を抑えるように最適化する必要がある。最適化するとジュール加熱を最小限に抑えられ低電圧での駆動が可能になるだろう。その次のステップとして、低表面張力の実現のため最適化されたLDEPデバイスと、マイクロ流体システムとを組み合わせる。この組み合わせた実験系を用いる事で、バイオ反応の観察に適した多くの液体を扱えることになる。より実際的にするために、複数の水滴を混合するための電極群を備えたデバイスが望ましく、これは今後研究を進める。大規模なバイオアッセイを可能とする方法として、基板上にパターニングした電極に電圧を印可することによって、液滴にとじこめた試料を搬送する液体誘電泳動法に着目している。絶縁破壊することなく導電性試料(バイオ試料)を搬送するためには、印可電圧を抑える必要がある。また、非導電性溶液を搬送する場合には、280Vppの高い電圧を用いていたが、ジュール熱が発生してバイオ試料にダメージを与える可能性があった。そのため、デバイス作製プロセスを工夫して電極のサイズを小さくし、電極表面にコーティングする最適な誘電層を検討することで液体の接触角を下げ,液体駆動に必要な電圧を小さくする試みを行った。デバイスは、シリコンウエハ上にアルミニウムの電極をパターニングして作製し、誘電層には誘電率の高いテフロンを用いた。マイクロマシーニングにより、電極幅2マイクロメートルのデバイスを作製することができた。このデバイスを使って、一般的なDNA緩衝液であるTris-Borate-EDTAの液滴搬送が確認できた。この緩衝液の導電率は10mS/mであり、文献よりも10倍高い誘電率の液体を搬送できたことになる。また、誘電層の表面に、界面活性剤を塗布することにより、文献の1/3の電圧値である80Vppで液滴を搬送できることを示した。低電圧での液体搬送が可能になったことで、以下のように複数の利点が導かれた。既存の液体誘電泳動のデバイスでは、高電圧印可により絶縁破壊が生じやすく、溶液を搬送できる回数は1回または数回に限られていたが、本研究で最適化したデバイスでは、15回以上の駆動ができることを確認した。また、ジュール熱を抑えることができ、バイオ試料に与えるダメージを極小にすることが可能となった。
KAKENHI-PROJECT-09F09802
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09F09802
人工リーフ群の開口部幅算定方法と端部処理方法に関する研究
開口部を有する人工リーフ施工事例より、沖側で局所洗掘現象が発生する。ここは、強い戻り流れによる定常流成分と入射波による波動成分の2つが合成された場所であり、局所洗掘による溝造物の沈下等による効果の低下が懸念される為、適切な開口部の幅の設定が必要である。本研究は、人工リーフ群設置後の開口部周辺の地形変化量を予測して適切な開口幅と端部処理を提案する事を目的とし、以下の6項目についてまとめた。1)現地の地形変化と波浪諸元の特性の調査、2)拡張型の強非線形Boussinesq方程式を用いた水位と底面流速の時系列変化の算出、3)開口部幅と底面流速の関係、4)開口部幅と端部処理の決定、5)底面流速を定常流と波動成分に分離してせん断力評価モデルの提案、6)現地の再現性の検討、である。1)はある海岸の設置前後の深浅測量図と波浪データを用いて、侵食域の発生位置等と波浪出現状況を整理した。2)は水位と底面流速に関し、数値計算の再現性の検証を行った。砕波に関する渦動粘性係数のパラメータを修正する事で、砕波に伴う高周波成分の再現性は不十分であるもの、水位と開口部から沖に向かう戻り流れとリーフ端部における循環流は再現された。3)は開口部比を35とし周辺の底面流速を算出し、平均流速は開口部幅が狭い程速くなる事を示した。4)は、端部の形状を変化させた場合、法面勾配を緩くするより、平面的に形状を広げる方が底面流速を小さくする事を示した。さらに、漂砂量はリーフ付近での侵食域を再現した。沖側での侵食域は、開口比が大きくなると広範囲になり、リーフ付近での侵食域は、開口比に関係なく開口部付近で侵食が強くなっていた。5)は底面せん断力を定常流成分と非正弦的波動成分の合成として取り扱う計算ケースの漂砂モデルが最も再現性が良い事を示した。6)は季節別最多出現波向を修正し、最大有義波高の0.9倍で波の継続時間を考慮する事で、開口部沖側に発生していたすり鉢状の侵食場所と大きさを再現する事ができた。開口部を有する人工リーフ施工事例より、沖側で局所洗掘現象が発生する。ここは、強い戻り流れによる定常流成分と入射波による波動成分の2つが合成された場所であり、局所洗掘による溝造物の沈下等による効果の低下が懸念される為、適切な開口部の幅の設定が必要である。本研究は、人工リーフ群設置後の開口部周辺の地形変化量を予測して適切な開口幅と端部処理を提案する事を目的とし、以下の6項目についてまとめた。1)現地の地形変化と波浪諸元の特性の調査、2)拡張型の強非線形Boussinesq方程式を用いた水位と底面流速の時系列変化の算出、3)開口部幅と底面流速の関係、4)開口部幅と端部処理の決定、5)底面流速を定常流と波動成分に分離してせん断力評価モデルの提案、6)現地の再現性の検討、である。1)はある海岸の設置前後の深浅測量図と波浪データを用いて、侵食域の発生位置等と波浪出現状況を整理した。2)は水位と底面流速に関し、数値計算の再現性の検証を行った。砕波に関する渦動粘性係数のパラメータを修正する事で、砕波に伴う高周波成分の再現性は不十分であるもの、水位と開口部から沖に向かう戻り流れとリーフ端部における循環流は再現された。3)は開口部比を35とし周辺の底面流速を算出し、平均流速は開口部幅が狭い程速くなる事を示した。4)は、端部の形状を変化させた場合、法面勾配を緩くするより、平面的に形状を広げる方が底面流速を小さくする事を示した。さらに、漂砂量はリーフ付近での侵食域を再現した。沖側での侵食域は、開口比が大きくなると広範囲になり、リーフ付近での侵食域は、開口比に関係なく開口部付近で侵食が強くなっていた。5)は底面せん断力を定常流成分と非正弦的波動成分の合成として取り扱う計算ケースの漂砂モデルが最も再現性が良い事を示した。6)は季節別最多出現波向を修正し、最大有義波高の0.9倍で波の継続時間を考慮する事で、開口部沖側に発生していたすり鉢状の侵食場所と大きさを再現する事ができた。潜堤と人工リーフ施工事例の全国的調査結果より、開口部を有する人工リーフ群として用いた場合には、開口部の沖側で局所洗掘現象が発生している事が知られている。これは、開口部からの強い戻り流れによる定常流成分と沖からの入射波による波動成分の2つが合成された場所であり、局所洗掘による構造物の沈下等による効果の低下が懸念される為、適切な開口部の幅の設定が必要である。人工リーフ群設置後の開口部周辺の地形変化量を予測して適切な開口幅および端部処理を提案する事を目的として、本研究の検討項目を以下に列記する。
KAKENHI-PROJECT-15560449
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15560449
人工リーフ群の開口部幅算定方法と端部処理方法に関する研究
1)現地の地形変化および波浪諸元の特性の調査、2)拡張型の強非線形Boussinesq方程式を用いた開口部周辺の水位と底面流速の時系列変化の算出、3)開口部幅と底面流速(最大および平均流速)の関係、4)底面流速を定常流と波動成分に分離してそれぞれのせん断力評価モデルの提案、5)現地の再現性の検討、6)開口部幅と端部処理の決定、の6項目である。平成15年度は1-5)について検討した。1)は太平洋側海岸から1箇所、日本海側から2箇所を選び、設置前後に実施された深浅測量図と波浪データを用いて、侵食域の発生位置と大きさ等と観測期間中の波向の出現状況との相関を調べた。2)は水位と底面流速に関する水理模型実験による数値計算の再現性の検証を行った。砕波に関する渦動粘性係数のパラメータを修正する事で、砕波に伴う高周波成分の再現性は不十分であるもの、開口部から沖に向かう戻り流れとリーフ端部における循環流は再現され、波高および底面流速の時間変化をほぼ再現できた。3)は日本海側に設置された人工リーフ群における開口部幅を様々変化させてその周辺の底面流速を時系列変化で算出し、平均流速と最大流速と開口幅との関係を整理した。堤長と開口部幅の比を35に変化させて、開口部中央での底面流速を求めた結果、平均流速は開口部幅が狭い程ストークス式による質量輸送速度に近くなった、4)5)は、移動床実験を用いて地形変化計算と比較した。定常流のみの場合と分離した場合では、底面せん断力を定常流成分と非正弦的波動成分の合成として取り扱う計算ケースの漂砂モデルが最も再現性が良い事が確かめられた。5)は、1)で整理した水深と波浪を用い、年間最大有義波と季節別最多出現波向を修正して、開口部沖側に発生していたすり鉢状の侵食場所と大きさを再現する事ができた。開口部を有する人工リーフ施工事例より、沖側で局所洗掘現象が発生する。ここは、強い戻り流れによる定常流成分と入射波による波動成分の2つが合成された場所であり、局所洗掘による構造物の沈下等による効果の低下が懸念される為、適切な開口部の幅の設定が必要である。本研究は、人工リーフ群設置後の開口部周辺の地形変化量を予測して適切な開口幅と端部処理を提案する事を目的とし、以下の6項目についてまとめた。1)現地の地形変化と波浪諸元の特性の調査、2)拡張型の強非線形Boussinesq方程式を用いた水位と底面流速の時系列変化の算出、3)開口部幅と底面流速の関係、4)開口部幅と端部処理の決定、5)底面流速を定常流と波動成分に分離してせん断力評価モデルの提案、6)現地の再現性の検討、である。1)はある海岸の設置前後の深浅測量図と波浪データを用いて、侵食域の発生位置等と波浪出現状況を整理した。2)は水位と底面流速に関し、数値計算の再現性の検証を行った。砕波に関する渦動粘性係数のパラメータを修正する事で、砕波に伴う高周波成分の再現性は不十分であるもの、水位と開口部から沖に向かう戻り流れとリーフ端部における循環流は再現された。3)は開口部比を35とし周辺の底面流速を算出し、平均流速は開口部幅が狭い程速くなる事を示した。4)は、端部の形状を変化させた場合、法面勾配を緩くするより、平面的に形状を広げる方が底面流速を小さくする事を示した。さらに、漂砂量はリーフ付近での侵食域を再現した。沖側での侵食域は、開口比が大きくなると広範囲になり、リーフ付近での侵食域は、開口比に関係なく開口部付近で侵食が強くなっていた。5)は底面せん断力を定常流成分と非正弦的波動成分の合成として取り扱う計算ケースの漂砂モデルが最も再現性が良い事を示した。6)は季節別最多出現波向を修正し、最大有義波高の0.9倍で波の継続時間を考慮する事で、開口部沖側に発生していたすり鉢状の侵食場所と大きさを再現する事ができた。
KAKENHI-PROJECT-15560449
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X線観測による銀河団の構造と進化の研究
(1)銀河団の観測的研究X線天文衛星「あすか」とXMM-Newtonで観測された300個に及ぶ銀河団の画像スペクトル解析を行い、銀河団の構造と進化について大きな知見が得られた。2つのエネルギー帯域の強度比及び鉄輝線と連続成分の強度比の画像をもとに、X線スペクトル解析によってプラズマ温度及び重元素組成比の分布を求めた。その結果、Mpcの広がりで高温領域の存在する場合は併合合体により、数100kpcの低温領域の存在する銀河団は銀河群規模の落ち込みにより形成されることが明らかとなった。また、重元素組成比とプラズマ温度の分布が必ずしも一致しないという新たな問題が提起された。(2)硬X線望遠鏡の開発Pt/C多層膜スーパーミラーの量産体制を確立し、硬X線望遠鏡を完成させた。NASA/GSFCとの共同プロジェクト(InFOCμS)により世界初の硬X線撮像観測の気球実験に成功した。観測装置は無事回収され、2回目の実験を2003年9月に予定している。また、性能向上と製作の効率化を図るために、ガラスマンドレルに直接多層膜スーパーミラーを成膜し、薄板アルミ基板にレプリカを取る方式を確立した。さらに、撮像型検出器の開発を進め、独自に観測装置を製作できるレベルに達した。X線天文衛星「あすか」の観測によって得られた100個に及ぶ銀河団の画像スペクトルデータの解析によりその構造と進化の研究を行なった。X線表面輝度とプラズマ温度分布の解析により、これまで等温で、力学的に緩和していると考えられていた銀河団が併合合体の途上にあることを明らかにした。その温度は512keVとなり、衝撃波による加熱が大きな役割を果たしている。X線スペクトル中に顕著に現われる鉄輝線の共鳴散乱効果から、重元素の存在量が従来の値に比べて最大で2倍となり、その起源に新たな問題を提起した。ハッブル定数として、電波でスニヤエフ-ゼルドビッチ効果が観測されている遠方の銀河団(z=0.170.54)の観測をもとに、60+/-20km/sec/Mpcの値を導出した。また、高エネルギー領域の画像から非熱的放射をする点源の存在が明らかになってきた。高効率・広帯域・高分解能X線望遠鏡の開発を進めた。特に、硬X線領域で高い反射率を有する白金/炭素の多層膜スーパーミラーの最適設計と製作を行なった。その結果、このスーパーミラーを薄板レプリカ鏡に成膜することに成功し、世界で初めて硬X線望遠鏡を実現した。周期長5036Aと積層数26組で製作され、入射角0.3゚で2535keVにおいて30%の反射率が得られ、結像性能は4.5keVのX線とほぼ同等であった。これにより新たな観測の窓が開かれ、未知の天体の探索が可能となり、気球による銀河団の硬X線の撮像観測に向けて明るい見通しが得られた。また、110keVの分光素子として、ラミナー型多層膜回折格子を開発し、Cu-Kα(8keV)に対して20%を越える1次光の反射率と100以上の分解能を達成した。(1)銀河団の観測的研究X線天文衛星「あすか」とXMM-Newtonで観測された300個に及ぶ銀河団の画像スペクトル解析を行い、銀河団の構造と進化について大きな知見が得られた。2つのエネルギー帯域の強度比及び鉄輝線と連続成分の強度比の画像をもとに、X線スペクトル解析によってプラズマ温度及び重元素組成比の分布を求めた。その結果、Mpcの広がりで高温領域の存在する場合は併合合体により、数100kpcの低温領域の存在する銀河団は銀河群規模の落ち込みにより形成されることが明らかとなった。また、重元素組成比とプラズマ温度の分布が必ずしも一致しないという新たな問題が提起された。(2)硬X線望遠鏡の開発Pt/C多層膜スーパーミラーの量産体制を確立し、硬X線望遠鏡を完成させた。NASA/GSFCとの共同プロジェクト(InFOCμS)により世界初の硬X線撮像観測の気球実験に成功した。観測装置は無事回収され、2回目の実験を2003年9月に予定している。また、性能向上と製作の効率化を図るために、ガラスマンドレルに直接多層膜スーパーミラーを成膜し、薄板アルミ基板にレプリカを取る方式を確立した。さらに、撮像型検出器の開発を進め、独自に観測装置を製作できるレベルに達した。X線天文衛星「あすか」によって観測された銀河団の画像スペクトルデータの解析をもとに、その構造と進化の研究を進めている。数十個の銀河からなる銀河群では、プラズマ温度は1keV前後になるが、O、Ne、Fe-L、Mg、SiのHe-likeとH-likeイオンの輝線の強度を説明できない。銀河団を宇宙赤方偏移0.1を境に近傍と遠方に分け、スペクトル解析をすると進化の様子が見えてきた。かみのけ座銀河団の不均一な温度分布は併合合体の問題を解く手がかりとなった。中心部における冷却流の存在する銀河団では、周辺から中心に向かって温度が減少し、重元素の存在量が増加していることが顕著にみられ、共鳴散乱効果とともに再結合プラズマからのX線放射を考慮することが必要になってきた。同様な問題は、遠方の銀河団A665で鉄のKβ輝線が異常に強いことにも現われており、これまでに言われている重元素の存在量を再検討することが必要である。
KAKENHI-PROJECT-07102007
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X線観測による銀河団の構造と進化の研究
鉄輝線のKαとKβの強度比及び表面輝度分布をもとに共鳴散乱による光学的深さを産出し、宇宙の大きさ・年令を決めるハッブル定数を決定することを試みているがまだ結論が出ていない。X線望遠鏡の開発には大きな進展がみられた。超精密非球面加工法によって製作された回転放物面・双曲面のウオルターI型金属鏡では結像性能10秒角以下の値が得られた。円筒内面スパッタリング装置を用いて、Pt/C多層膜スーパーミラーを製作し、特性X線により反射率の測定をしたところ、目標とする性能が達成されていることが明らかになった。1998年度の気球実験を目指して、硬X線望遠鏡の設計を進めている。今年度購入を予定したX線分光器、X線CCDカメラ、X線ビームエキスパンダーは納入され、性能評価の精密化と効率化が図られている。得られた研究成果は四つの国際会議で発表された。1.「あすか」衛星の観測による銀河団の研究近傍から遠方までの50個ほどの銀河団について、統一的手法による画像とすべくとる解析をもとに、個々の銀河団の構造に依存したプラズマ温度、重元素組成比等の導出を進めている。中心部では冷却流の存在の有無によって重元素の組成比は大きく変化するが,周辺部では0.20.3の間にあり、構造に依存していないことが明らかになった。これは、銀河団内高温ガスの起源と銀河団の進化を解明する上で重要な観測結果である。また、銀河群では、そのスペクトルは1keV程度の2つの温度成分からなり、重元素組成比は大きく変化変していることが明らかになった。これは銀河内の超新星の爆発の仕方に大きく依存していると考えられる。ほどの研究の主要な課題であるハップル定数は、電波でスニャエフ-ゼルドビッチ効果が観測されている遠方の銀河団(z=0.170.54)の観測をもとにに導出され、68+/-22km/sec/Mpcの値を得た。これは、宇宙の大きさの1/2の距離にある天体を用いた初めての試みであり、宇宙の構造と進化を知る上で重要な結果である。2.広帯域・高効率・高分解能X線望遠鏡の開発円筒内面スパッタリング装置による多層膜スーパーミラーの製作と特性X線によるその性能評価は順調に進めらており、すでに、2640keVのエネルギー領域において30%を越える反射率を達成した。1999年に予定されている気球搭載硬X線望遠鏡に用いるレプリカミラーへの成膜も行い、マスク機構の採用により全面にわたって2%程度で均一な多層膜が可能になってきた。Pt/C多層膜では、1組の厚さが25A、積層数60組でも高い反射率が得られ、界面粗さ3Aが達成された。超高精度三次元測定機も納入され、超精密加工による非球面鏡面基板の詳しい形状評価が進められている。1.「あすか」衛星の観測による銀河団の研究銀河団の構造に伴うスペクトルの変化を明らかにするために、X線の表面輝度が1/2となる半径を境界として中心部と周辺部に分割した。その結果、中心集中度の高い銀河団では、中心部でプラズマ温度が低く、重元素組成比が大きくなるが、周辺部で重元素の組成比が大きくなる銀河団が見つかってきた。これは、銀河団が併合合体の途上にあり、熱力学的平衡状態に達していないか、あるいは鉄輝線の共鳴散乱効果によるものと解釈できる。後者の考え方で鉄輝線の精密解析をしたところ、ニッケルの組成比が宇宙組成より大きくなっている可能性がでてきた。これは高温ガスの起源と銀河団の進化を解明する上で重要な観測結果である。
KAKENHI-PROJECT-07102007
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多品質電気エネルギーを柔軟に輸送するための開放型ネットワークに関する研究
規制緩和時代において、多用な品質の電力を柔軟に輸送するために、電力ネットワークの複雑な管理と運転の検討を進めてきた。IPP参入について、生態系を模擬した電力産業の動態モデルを検討した。(豊田)自然エネルギーで発電した品質の劣る電力の輸送について、太陽光発電とSMESを直流で連係するシステムを例にあげ、最適運用と周波数変動抑制をシミュレーションと模擬実験により分析した。(大澤)規制緩和後の定態安定度オンライン監視のために,系統の固有値を階層分散的に評価する手法を開発し,パワエレ機器が導入された将来系統においても開発手法が有効であることを確認した。(横山)開放型電力ネットワークにおけるパケット電力制御のための、電力貯蔵装置の自律的充放電動作を検討した。また、電力フローパターンを調製する電源間の協力的な制御方式を提案した。(斉藤)GPSのタイミングパレス情報を用いた高調波発生源同定の研究と、ロバスト制御理論を実系統の発電機制御に適用した場合の制御操作量制約問題の研究を行った。(岩本)電力の流れを動的に制御し、その送電能力を高めることを目的にして、パワエル機器を応用した電力潮流制御による安定度向上と利用効率改善の保々を提案した。(三谷)信頼性と停電コストを組み入れたファジ-理論による計画決定手法、北海道の一般需要家を対象にした停電コストの推定とその設備計画への適用例について研究した。あわせて、PV-SMESシステム導入の経済性を評価した。(山城)IPPの需要地近接性評価に応用できる地点別供給コストの算定手法を開発した。限界費用原理にもとづく託送料金モデルを用い、ノ-ダルプライシングによる託送料金を設定することで、系統運用制約を考慮した電力託送が可能であることを示した。(浅野)規制緩和時代において、多用な品質の電力を柔軟に輸送するために、電力ネットワークの複雑な管理と運転の検討を進めてきた。IPP参入について、生態系を模擬した電力産業の動態モデルを検討した。(豊田)自然エネルギーで発電した品質の劣る電力の輸送について、太陽光発電とSMESを直流で連係するシステムを例にあげ、最適運用と周波数変動抑制をシミュレーションと模擬実験により分析した。(大澤)規制緩和後の定態安定度オンライン監視のために,系統の固有値を階層分散的に評価する手法を開発し,パワエレ機器が導入された将来系統においても開発手法が有効であることを確認した。(横山)開放型電力ネットワークにおけるパケット電力制御のための、電力貯蔵装置の自律的充放電動作を検討した。また、電力フローパターンを調製する電源間の協力的な制御方式を提案した。(斉藤)GPSのタイミングパレス情報を用いた高調波発生源同定の研究と、ロバスト制御理論を実系統の発電機制御に適用した場合の制御操作量制約問題の研究を行った。(岩本)電力の流れを動的に制御し、その送電能力を高めることを目的にして、パワエル機器を応用した電力潮流制御による安定度向上と利用効率改善の保々を提案した。(三谷)信頼性と停電コストを組み入れたファジ-理論による計画決定手法、北海道の一般需要家を対象にした停電コストの推定とその設備計画への適用例について研究した。あわせて、PV-SMESシステム導入の経済性を評価した。(山城)IPPの需要地近接性評価に応用できる地点別供給コストの算定手法を開発した。限界費用原理にもとづく託送料金モデルを用い、ノ-ダルプライシングによる託送料金を設定することで、系統運用制約を考慮した電力託送が可能であることを示した。(浅野)本研究の目的は、分散型電源・大規模電源の電力発生における特徴を生かしつつ、消費者の多様化した要求を満たすような電力ネットワークの構造、運用、制御を工学的に実現するという視点から基本的に検討することにある。今年度は、4回の研究会議を開催し、分担課題について研究成果の討論及び情報交換を行いながら研究の進展を図った。1.開放型ネットワークが持つべき機能の分析(豊田、大澤):小規模電源の余剰電力と消費者の要求のギャップを解消するため、超電導エネルギー貯蔵の応用について、風力デイ-ゼル連系発電システムを対象に検討を行った。2.開放型ネットワークを実現する手段(横山、斎藤):電力システムを柔軟に制御するための手段として、サイリスタ制御直列コンデンサの制御を適切に行うことによって、安定性と送電能力が向上することが分かった。3.開放型ネットワークの安定な運用と在来電力システムとの調和(岩本、三谷):多地点の瞬時値の同時計測を利用した系統パラメータ推定や電圧安定性電圧安定性解析、多種多様な電源と制御装置の導入による非線形動特性現象を検討した4.開放型ネットワークの導入効果の評価(山城、浅野):分散型電源が電力系統の任意地点に連系したときの潮流変化と送電容量コスト分担を求める手法や、電力系統へのPV-SMESシステムの導入効果に関する多面的評価手法などを開発した。昨年度に引き続き、将来の電気エネルギーを供給システムにおける多様な電源の電力発生における特徴を生かしつつ、消費者の多様化した要求を満たすような開放型電力ネットワークを工学的に実現するための研究を行い、次のような成果を得た。日本の電気事業の現状を分析し、将来のIPP参入について、生態系を模擬した電力産業の動態モデルを検討した。(豊田)電力系統安定化のため発電所内情報を利用した厳密線形化による方式を検討するとともに、超電導エネルギー貯蔵の開放型ネットワークへの応用について、風力ディーゼル連係発電システムを対象に検討を行った。(大澤)
KAKENHI-PROJECT-07305010
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多品質電気エネルギーを柔軟に輸送するための開放型ネットワークに関する研究
サイリスタ制御直列コンデンサを部分系統間の連係送電線に接続し、部分系統間を非干渉化する動的制御を行うことによって、ローカルモードの評価とグローバルモードの評価が正しく行えることが分かった。(横山)開放型電力ネットワークにおける自律分散的電力流通を実現する機構の基礎検討を行った。(斎藤)GPS応用による高速等価外部系統のパラメータ同定の研究と発電機のロバスト制御に関して、実用上重要である出力フィードバック形式の手法を研究した。(岩本)半導体制御型移相器と超伝導エネルギー貯蔵を組み合わせた装置を提案し、電力系統の潮流制御機能と系統安定化制御機能について詳細な検討を行い、その有効性を確認した。(三谷)1992-1994年の間、北海道内9地点で行った一般需要家を対象とした停電コストの調査結果と海外における停電コストとの比較およびその送電拡充計画への導入意義と適用例について検討した。(山城)卸供給事業者(IPP)の需要地近接性評価に応用できる地点別供給コストの算定手法と、送電設備制約や送電損失を配慮した限界費用原理にもとづく託送料金モデルを開発した。あわせて混雑費用を考慮した託送料金により、系統運用制約内の電力託送が可能であることを示した。(浅野)規制緩和時代において、多様な品質の電力を柔軟に輸送するために、電力ネットワークの複雑な管理と運転の検討を進めてきた。IPP参入について、生態系を模擬した電力産業の動態モデルを検討した。(豊田)自然エネルギーで発電した品質の劣る電力の輸送について、太陽光発電とSMESを直流で連系するシステムを例にあげ、最適運用と周波数変動抑制をシミュレーションと模擬実験により分析した。(大澤)規制緩和後の定態安定度オンライン監視のために,系統の固有値を階層分散的に評価する手法を開発し、パワエレ機器が導入された将来系統においても開発手法が有効であることを確認した。(横山)開放型電力ネットワークにおけるパケット電力制御のための、電力貯蔵装置の自律的充放電動作を検討した。また、電力フローパターンを調整する電源間の協力的な制御方式を提案した。(斎藤)GPSのタイミングパルス情報を用いた高調波発生源同定の研究と、ロバスト制御理論を実系統の発電機制御に適用した場合の制御操作量制約問題の研究を行った。(岩本)電力の流れを動的に制御し、その送電能力を高めることを目的にして、パワエレ機器を応用した電力潮流制御による安定度向上と利用効率改善の方法を提案した。(三谷)信頼性と停電コストを組み入れたファジ-理論による計画決定手法、北海道の一般需要家を対象にした停電コストの推定とその設備計画への適用例について研究した。あわせて、PV-SMESシステム導入の経済性を評価した。(山城)IPPの需要地
KAKENHI-PROJECT-07305010
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局所冷却が心血管疾患に及ぼす影響を検討し疾患増悪の予防策を考える
(目的)冬期の家事動作における心血管疾患患者への影響を検討するため,対象を中高齢女性とし局所冷却部位をそれぞれ手,足部,背部に実施した.評価には自律神経への影響を検討するため心電図周波数解析を行った.深部と表在温度への影響も検討するため深部,表在温度の測定も実施した.(対象と方法)対象は心疾患のない女性10名であった.平均年齢57.6歳,身長157.0cm,体重51.6kg,体脂肪率28.9%であった.室温26°Cで安楽な座位をとり十分な休息をとった後,安静5分,対象部位の冷却5分,その後再び5分間の安静を実施した.対象部位の冷却はそれぞれ1日1部位とし,右手,右足部は5°Cにした冷水に5分入れる,背部は-20°Cに冷却したアイスパックにタオルを1枚巻き肩甲骨周囲に5分当てた.心電図の周波数解析にはCNS社製Task-Force monitorを使用した.交感神経の指標にはLF/HFを,副交感神経の指標にはHFを使用した.表在温度の測定にはプリアーシステムジャパンFLIR13を使用し中指遠位,中趾遠位の表面温度を測定した.深部温度の測定には外耳道温度計DBTL2を使用した.(結果)5分の冷却で右中指遠位は9.4±1.6°Cまで,右中趾遠位は9.1±1.6°Cまで低下した.背部は30.3±1.0°Cまで低下した.右手冷却時の安静時LF/HFは1.0±0.9,HFは51.8±20.4であったが冷却によりLF/HFは1.4±1.6,HFは45.0±19.6に変化した.右足部冷却時の安静時LF/HFは1.7±1.5,HFは47.8±15.2であったが冷却によりLF/HFは2.5±2.5,HFは40.2±19.5に変化した.背部冷却時の安静時LF/HFは1.7±1.4,HFは48.1±23.2であったが冷却によりLF/HFは1.7±1.3,HFは44.8±20.7に変化した.外耳道温度計による深部温度はどの部位の冷却によっても変化は認めなかった.(考察)手,足部冷却ではLF/HF成分の増加とHF成分の抑制を認め,足部により大きな反応が確認できた.冬期間の足部冷却は交感神経をより興奮させる要因があり,心不全患者には注意が必要であり防寒対策が必要であると考えられた.(目的)冬期の家事動作における心血管疾患患者への影響を検討するため,対象を中高齢女性とし局所冷却部位をそれぞれ手,足部,背部に実施した.評価には自律神経への影響を検討するため心電図周波数解析を行った.深部と表在温度への影響も検討するため深部,表在温度の測定も実施した.(対象と方法)対象は心疾患のない女性10名であった.平均年齢57.6歳,身長157.0cm,体重51.6kg,体脂肪率28.9%であった.室温26°Cで安楽な座位をとり十分な休息をとった後,安静5分,対象部位の冷却5分,その後再び5分間の安静を実施した.対象部位の冷却はそれぞれ1日1部位とし,右手,右足部は5°Cにした冷水に5分入れる,背部は-20°Cに冷却したアイスパックにタオルを1枚巻き肩甲骨周囲に5分当てた.心電図の周波数解析にはCNS社製Task-Force monitorを使用した.交感神経の指標にはLF/HFを,副交感神経の指標にはHFを使用した.表在温度の測定にはプリアーシステムジャパンFLIR13を使用し中指遠位,中趾遠位の表面温度を測定した.深部温度の測定には外耳道温度計DBTL2を使用した.(結果)5分の冷却で右中指遠位は9.4±1.6°Cまで,右中趾遠位は9.1±1.6°Cまで低下した.背部は30.3±1.0°Cまで低下した.右手冷却時の安静時LF/HFは1.0±0.9,HFは51.8±20.4であったが冷却によりLF/HFは1.4±1.6,HFは45.0±19.6に変化した.右足部冷却時の安静時LF/HFは1.7±1.5,HFは47.8±15.2であったが冷却によりLF/HFは2.5±2.5,HFは40.2±19.5に変化した.背部冷却時の安静時LF/HFは1.7±1.4,HFは48.1±23.2であったが冷却によりLF/HFは1.7±1.3,HFは44.8±20.7に変化した.外耳道温度計による深部温度はどの部位の冷却によっても変化は認めなかった.(考察)手,足部冷却ではLF/HF成分の増加とHF成分の抑制を認め,足部により大きな反応が確認できた.冬期間の足部冷却は交感神経をより興奮させる要因があり,心不全患者には注意が必要であり防寒対策が必要であると考えられた.
KAKENHI-PROJECT-23935009
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23935009
操作者の筋活動量解析による身体性を考慮した手術支援ロボットの開発
本研究では,操作者の筋活動に最も負担が低い手術支援ロボットの構造を設計した.手術支援ロボットは人間の身体とは異なる構造・形態をしているため,「身体性の違い」により,運動軌道が冗長になったり,可動域限界で余計な力が生じたりする.そのような問題を解決するために,仮想環境で再現した手術支援ロボットを動かしている操作者の動作をモーションキャプチャで計測し,筋活動モデルと照合して,どこの筋肉にどの程度負荷がかっているのかを明らかにした.ハプティックな反力を術者に返す手術支援シミュレーションを開発した.シミュレーションは2つのハプティックデバイスを用いて両手で操作し,針を臓器面の特定のポイントに刺入し,そしてまた別のポイントから刺出するタスクを想定している.この針をかけるタスクは,手術の多様な手技の中でも特に難しいものの1つとして挙げられるために選択した.これまでの手術支援シミュレーションは,視覚的な変化のみに留まり,動力学的な反力を返すことがされていなかった.そのため,臓器面へのマニピュレータの透過など,操作者が意識しなければ操作の複雑さを無視できてしまうシステムであった.そのため,手術支援シミュレーションに動力学的な反力を操作者に返し,あたかも臓器などにマニピュレータが触れているまたは衝突しているかのような感覚で操作を可能とする.シミュレーションのベースとなる動力学を新調し,反力を返すメカニズムについても独自に開発した.マニピュレータについてもより寸法や系を実際に近い形に更新し,より多様な構造で試験できるように開発した.開発したシミュレーションを用いて試験的に筋活動量を計測できることを確認した.計測の際には,モーションキャプチャシステムおよび筋電計を用いて,シミュレーションを操作中の術者がどのように筋活動量を発揮しているのかを計測した.マニピュレータの構造や軌道によっては冗長な操作となり,筋活動に負担が生じていることが明らかになった.筋活動量の計測方法の構築だけに留まらず,ハプティックな反力を返すシミュレーションとして新たに開発した.これにより,より臨床に近い環境でロボットの設計および評価ができるようになったため.独自に開発した手術支援ロボットシミュレーションを用いて,操作者の筋活動量をモーションキャプチャシステムおよび筋電計から計測した.シミュレーションでは,2つのハプティックデバイスを用いて,左右2本のマニピュレータを操作する.実験タスクでは,針をマニピュレータで把持して,臓器に針をかけるなどの巧緻動作が求められる.モーションキャプチャシステムは主に上肢の動きを計測した.手先や前腕,上腕,肩関節や背骨などが3次元位置の計測対象である.計測した結果,マニピュレータの構造や軌道に応じて,操作者の筋活動に負荷がかかることがわかった.また,筋活動の負荷のかかり方や軌道の冗長性には試行毎および被験者毎にバラツキがあり,統計的な手法により筋活動量を解析する手法の構築が求められた.統計的手法を用いて筋活動量のバラツキを解析し,マニピュレータの構造の最適化を施した.マニピュレータは捻り動作時に必要な手首部の構造や,マニピュレータの長さや太さ,内視鏡とマニピュレータの配置関係などが設計対象である.まず施したのは同一被験者における試行毎の筋活動量のバラツキに対する最適化である.次に,複数の被験者が複数の試行毎に生じた筋活動量のバラツキに対応した最適化を実施した.これらの最適解から,マニピュレータの構造と上述の操作者の軌道や冗長性との関連性を明らかにした.また,筋活動に最も負担の少ない手術支援ロボットの構造を明らかにした.本研究では,操作者の筋活動に最も負担が低い手術支援ロボットの構造を設計した.手術支援ロボットは人間の身体とは異なる構造・形態をしているため,「身体性の違い」により,運動軌道が冗長になったり,可動域限界で余計な力が生じたりする.そのような問題を解決するために,仮想環境で再現した手術支援ロボットを動かしている操作者の動作をモーションキャプチャで計測し,筋活動モデルと照合して,どこの筋肉にどの程度負荷がかっているのかを明らかにした.新たなシステムの構築により,筋活動量の計測が可能となった.このシステムを用いて筋活動量の計測を繰り返し,手術支援ロボットの構造最適化を実施する.29年度が最終年度であるため、記入しない。医用システム29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16H07265
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H07265
レーザーによる原子炉計測制御法の基礎研究
(1)レーザーを用いた中性子計測法核励起レーザーの原理を用いた中性子検出法として、当初計画していたのはHe-Neガス系であるが、このガス系については、封入可能Heガス圧が数十Torr程度と低く、^3He(n、p)t反応を用いて核反応により、ポンピングすることは困難であることが判明した。そこで、2年目よりHe-Ne-Arガス系を用いることとした。このガス系については、Heガス圧を3気程度にまで高くすることができるので、中性子による^3He(n、p)t反応を通じたポンピングが容易と考えられたからである。この3成分ガス系については、原子炉による中性子照射実験を「弥生炉」(東大・原子力工学研究施設)と「JRR-4」(日本原子力研究所)にて実施した。また、この3成分ガス系のポンピングプロセスについて、シミュレーション計算を実施し、ガスの組み合わせについて最適化を行なうと共に、実験で求められた発光スペクトルとの比較検討を進め、現在のところ、5×10^<13>n/cm^2.sec以上の中性子束でレーザー発振する予定と結論している。(2)レーザーを用いた原子炉制御法^3Heガスの核スピンをレーザーにより整列させることにより、^3Heガスの中性子吸収断面積を半減させる方法により、新しい原子炉制御棒を作る可能性につき検討した。その結果、795nmのレーザーでRbを偏極し、スピン変換により^3He核スピン偏極が実際に可能であることがわかった。また、La系レーザーによる^3Heガスの直接スピン偏極法についても検討した。(3)原子炉計測・制御系の設計以上の2つの手法を用いて、計測・制御系の設計を行なった。(1)レーザーを用いた中性子計測法核励起レーザーの原理を用いた中性子検出法として、当初計画していたのはHe-Neガス系であるが、このガス系については、封入可能Heガス圧が数十Torr程度と低く、^3He(n、p)t反応を用いて核反応により、ポンピングすることは困難であることが判明した。そこで、2年目よりHe-Ne-Arガス系を用いることとした。このガス系については、Heガス圧を3気程度にまで高くすることができるので、中性子による^3He(n、p)t反応を通じたポンピングが容易と考えられたからである。この3成分ガス系については、原子炉による中性子照射実験を「弥生炉」(東大・原子力工学研究施設)と「JRR-4」(日本原子力研究所)にて実施した。また、この3成分ガス系のポンピングプロセスについて、シミュレーション計算を実施し、ガスの組み合わせについて最適化を行なうと共に、実験で求められた発光スペクトルとの比較検討を進め、現在のところ、5×10^<13>n/cm^2.sec以上の中性子束でレーザー発振する予定と結論している。(2)レーザーを用いた原子炉制御法^3Heガスの核スピンをレーザーにより整列させることにより、^3Heガスの中性子吸収断面積を半減させる方法により、新しい原子炉制御棒を作る可能性につき検討した。その結果、795nmのレーザーでRbを偏極し、スピン変換により^3He核スピン偏極が実際に可能であることがわかった。また、La系レーザーによる^3Heガスの直接スピン偏極法についても検討した。(3)原子炉計測・制御系の設計以上の2つの手法を用いて、計測・制御系の設計を行なった。本研究の目的は、レーザーを用いた新しい中性子計測法と原子炉制御法の原理を実験的に確認することである。具体的には、(1)中性子照射により、He-Neレーザー光の発生あるいは光増幅の可能性を示し、次に(2)レーザー光によりHe-3核のスピン整列させることにより、He-3核の中性子吸収断面積を減少させることが可能であることの実証である。本研究は3年計画の予定であるが、初年度の成果は次の通りである。(1)He-3-Neガスセル(7:1、300Torr)を試作し、東大高速中性子源炉弥生により、熱中性子束を10^710^<10>n/cm_2・sec照射した。このガスセルに、外部からHe-Neレーザー光(波長632.8mm)を通過させ、そのレーザー光のガスセルによる増幅率を測定した。その結果、10^<10>n/cm^2・secのとき、58%の光増幅が可能であることを確認した。ただし、原子炉弥生の性能上、これ以上の熱中性子照射は困難であり、今後は別の研究炉における実験を検討する予定である。(2)レーザー光によるHe-3原子核のスピン整列法については、2つの方法が可能であることがわかった。1つはHe-3-Rbガスセルに795nmのレーザー光を照射するものであり、もう1つは、He-3の2^3S_Iの励起状態に、1.08μmのレーザーを照射するものである。前者については、高エネルギー研でも進行中であり、偏極率80%を実現しているので、今後、共同研究にて最適化の研究を進める予定である。特に、本年度はHe-3核スピンによる中性子スピン偏極の能性について、モンテカルロ計算にてHe-3ガスセルの最適配置を検討し、原子炉内均質配置にて98%以上の中性子スピン偏極率を得ることがわかった。この研究成果は、日本原子力学会秋の大会(1992年10月、名大、G-25)および原子力国際先端シンポジウム(1993年3年、水戸)において発表した。当初想定していた
KAKENHI-PROJECT-04402052
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レーザーによる原子炉計測制御法の基礎研究
2成分ガス系(^3He+Ne)は、ガス圧が数十mmHg以下でのみレーザー発振可能のため、中性子による核励起レーザーとして不適格と判断した。そして、3成分ガス系(2成分ガス+水素またはアルゴンガス封入)について、ガス圧力を変えた4種のガスセル(純石英ガラス製)を作成し、東大の原子炉「弥生」による照射を実施した。その結果、(1)3成分ガス系について、熱中性子束を約1.5×10^<-9>n/cm^2・sec照射し、目的とする585.3nmのNeガス3P_1→3S_2遷移の発光を確認した。これは水素ガスやアルゴンガスがNeの2S準位の寿命を短縮していることによるものである。(2)水素ガス系では、585.3nm以外は観察されないが、アルゴンガス系では585.3nm以外にアルゴン自身の中性子による発光が確認された。(3)これらの3成分ガス系について、レーザー発振モデルに基づいた解析を実施した結果、約10^<11>n/cm^2・secの熱中性子照射により核励起レーザー発振の可能性が示された。2.^3He核スピン整列法についてレーザー照射による^3He-Rb系の^3He核スピン整列法については、実現可能性が明らかになり、この応用として原子炉内中性子スピン偏極法を考案し発表した。また、ランタン系レーザーをHe-3準安定状態に照射し、^3He核のスピン整列する方法につき、放電励起法による実験を実施し、結果を解析中である。平成5年度に、^3He-Ne-H_2の3成分ガス系につき、中性子照射実験を実施した。平成6年度は、そのシミュレーション解析より、^3HeNe-Arの3ガス系も核励起レーザーの可能性が高いことがわかり、このガス系について東大、弥生炉における中性子照射実験を実施し、Neガスの3p→3s遷移に伴う585.2nm発光を確認した。また、3p及び3sの微細構造に伴う703.2nmの発光やAr原子の発光も確認された。この結果に対応するシミュレーション計算を実施し、本実験結果との比較検討を試みるとともに、核励起レーザー発振に至る中性子束しきい値の推定を行ない、ガス組織を最適化することにより、約5×10^<13>n/cm^2・secであることがわかった。2.レーザーによる^3Heスピン整列法について従来、検討していた^3He-Rb系では、封入可能な^3Heガス圧が少ないので、^3Heガスの直接ポンピング方式を1083nmのLNAレーザーで行なう方式の基礎研究に基づき、可能なシステムの設計を進めた。3.とりまとめ以上の新しい方式を基に、光伝達系としての光ファイバーを含め、原子炉出力計測系、原子炉制御系の工学的システムの設計案をまとめた。また、この設計に対し、今後の検討課題をまとめて、報告書として準備中である。
KAKENHI-PROJECT-04402052
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重症慢性関節リウマチ骨髄中に認めた悪性腫瘍特異糖鎖膜抗原保有の異常骨髄球系細胞 その分化誘導と機能異常の分子遺伝学的解明
慢性関節リウマチ(RA)腸骨骨髄での浮遊細胞構成の異常はTリンパ球と骨髄球系細胞とに認められた。RA骨髄中では末梢血に比べて活性型(HLA-DR陽性)T細胞の比率が有意に高くしかも絶対数では健常人の約3倍にのぼった。末梢血ではRAと健常人との間に有意差がないことよりRA骨髄で造られた多数の活性化T細胞は健常人の3倍以上の速さでターンオーバーしていることが示唆され、RAの免疫亢進の重要な機序の一つと考えられた。もう一つの異常は骨髄球系細胞に認められた。特に重症RA患者の腸骨骨髄では骨髄球系細胞の絶対数が明らかに増加していた。悪性腫瘍特異糖鎖膜抗原保有の異常骨髄球系細胞は正常骨髄球系細胞とマクロファージ特異な膜抗原であるCD14を用いることにより判別できることが明らかとなった。そして腸骨骨髄中でCD15(+)CD14(-)の一見正常な膜抗原を有する骨髄球よりCD15(+)CD14(+)の異常な骨髄球が分化し、IL-1、GM-CSFがこの分化を促進し、T細胞が抑制することが示された。健常人においては、末梢である脛骨骨端部骨髄中に骨髄球は集積していない。重症RAではこの部に膜抗原異常な骨髄球系細胞が集積していること、またこの部位の多型核白血球は極めて高単位のIL-1を含んでおり組織破壊に重要な役割を果たしうることが明らかとなった。これらの異常な細胞中には正常の条件で培養維持できないものがあり、in vivoの病巣で維持するには特殊な機序が必要となる。上記の様な異常な細胞を維持増殖させる得る機能をもつ間葉系細胞(ナ-ス細胞)がRA滑膜からも骨髄からも樹立された。病巣を形成する間葉系細胞とそこに浸潤する細胞により構成される腸骨骨髄でのサイトカインの上昇は全身性の滑膜増悪と一致して認めらた。腸骨骨髄でのIL-1β,IL-6,IL-8,GM-CSFの上昇に追随して末梢血中のサイトカイン上昇が認められた。慢性関節リウマチ(RA)腸骨骨髄での浮遊細胞構成の異常はTリンパ球と骨髄球系細胞とに認められた。RA骨髄中では末梢血に比べて活性型(HLA-DR陽性)T細胞の比率が有意に高くしかも絶対数では健常人の約3倍にのぼった。末梢血ではRAと健常人との間に有意差がないことよりRA骨髄で造られた多数の活性化T細胞は健常人の3倍以上の速さでターンオーバーしていることが示唆され、RAの免疫亢進の重要な機序の一つと考えられた。もう一つの異常は骨髄球系細胞に認められた。特に重症RA患者の腸骨骨髄では骨髄球系細胞の絶対数が明らかに増加していた。悪性腫瘍特異糖鎖膜抗原保有の異常骨髄球系細胞は正常骨髄球系細胞とマクロファージ特異な膜抗原であるCD14を用いることにより判別できることが明らかとなった。そして腸骨骨髄中でCD15(+)CD14(-)の一見正常な膜抗原を有する骨髄球よりCD15(+)CD14(+)の異常な骨髄球が分化し、IL-1、GM-CSFがこの分化を促進し、T細胞が抑制することが示された。健常人においては、末梢である脛骨骨端部骨髄中に骨髄球は集積していない。重症RAではこの部に膜抗原異常な骨髄球系細胞が集積していること、またこの部位の多型核白血球は極めて高単位のIL-1を含んでおり組織破壊に重要な役割を果たしうることが明らかとなった。これらの異常な細胞中には正常の条件で培養維持できないものがあり、in vivoの病巣で維持するには特殊な機序が必要となる。上記の様な異常な細胞を維持増殖させる得る機能をもつ間葉系細胞(ナ-ス細胞)がRA滑膜からも骨髄からも樹立された。病巣を形成する間葉系細胞とそこに浸潤する細胞により構成される腸骨骨髄でのサイトカインの上昇は全身性の滑膜増悪と一致して認めらた。腸骨骨髄でのIL-1β,IL-6,IL-8,GM-CSFの上昇に追随して末梢血中のサイトカイン上昇が認められた。今までRA病巣の研究対象としては滑膜に的を絞られて骨髄という考え方は無かったが、我々は手がかりの無い重症慢性関節リウマチ(RA)の原因究明の目的で罹患関節部骨髄を調べ、破壊の強い重症RAの骨髄内に、異常な骨髄球系細胞を見いだし、この骨髄球系細胞が悪性腫瘍特異糖鎖膜抗原を保有する(Ochi et al.1988)ことを明らかにした。他の関節疾患でも関節部骨髄中に骨髄球を認めることなは無く、極めて顕著な変化であった。当初は異常な骨髄球系細胞は罹患関節部の骨髄に於て分化集積するのが重症RAの特徴と考えられていたが、この異常な骨髄球系細胞は腸骨に代表される全身性の造血系の骨髄に最大のプールがあり、ここでは一見正常の骨髄球から異常な骨髄球系細胞が盛んに分化する(Tomita et al.1994)ことがわかった。この骨髄球系細胞はin vitroでは通常培養困難であるが、重症な慢性関節リウマチ患者においては特異な接着分子とリガンドの存在のもとに関節部骨髄にホ-ミングして関節破壊に関与していると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-06454429
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06454429
重症慢性関節リウマチ骨髄中に認めた悪性腫瘍特異糖鎖膜抗原保有の異常骨髄球系細胞 その分化誘導と機能異常の分子遺伝学的解明
最近、我々のグループは異常な骨髄球系細胞の維持、増殖を支持する間葉系細胞の樹立(Sakata et al.in submitting)に成功した。現在、重症RAの発症の最大の鍵である、異常な骨髄球系細胞の発生を支持する間葉系細胞との相互作用をレセプター、接着分子、活性因子などに関わる遺伝子レベルより解明をすすめている。慢性関節リウマチ(RA)腸骨骨髄での浮遊細胞構成の異常はTリンパ球と骨髄球系細胞とに認められた。RA骨髄中では末消血に比べて活性型(HLA-DR陽性)T細胞の比率が有意に高くしかも絶対数では健常人の約3倍にのぼった。末消血ではRAと健常人との間に有意差がないことよりRA骨髄で造られた多数の活性化T細胞は健常人の3倍以上の速さでターンオーバーしていることが示唆され、RAの免疫亢進の重要な機序の一つと考えられた。もう一つの異常は骨髄球系細胞に認められた。特に重症RA患者の腸骨骨髄では骨髄球系細胞の絶対数が明らかに増加していた。悪性腫瘍特異糖鎖膜抗原保有の異常骨髄球系細胞は正常骨髄球系細胞とマクロファージ特異な膜抗原であるCD14を用いることにより判別できることが明らかとなった。そして腸骨骨髄中でCD15(+)CD14(-)の一見正常な膜抗原を有する骨髄球よりCD15(+)CD14(+)の異常な骨髄球が分化し、IL-1、GM-CSFがこの分化を促進し、T細胞が抑制することが示された。健常人においては、末梢である脛骨骨端部骨髄中に骨髄球は集積していない。重症RAではこの部に膜抗原異常な骨髄球系細胞が集積していること、またこの部位の多型核白血球は極めて高単位のIL-1を含んでおり組織破壊に重要な役割を果たしうることが明らかとなった。これらの異常な細胞中には正常の条件で培養維持できないものがあり、in vivoの病巣で維持するには特殊な機序が必要となる。上記の様な異常な細胞を維持増殖させる得る機能をもつ間葉系細胞(ナ-ス細胞)がRA滑膜からも骨髄からも樹立された。病巣を形成する間葉系細胞とそこに浸潤する細胞により構成される腸骨骨髄でのサイトカインの上昇は全身性の滑膜増悪と一致して認めらた。腸骨骨髄でのIL-1β,IL-6,IL-8,GM-CSFの上昇に追随して末梢血中のサイトカイン上昇が認められた。
KAKENHI-PROJECT-06454429
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水-有機溶媒混合系におけるイオン溶媒分子間およびイオン間相互作用の研究
メタノール(MeOH),エタノール(EtOG),プロパノール(PrOH),ジメチルスルホキシド(DMSO), N, N-ニジメチルアセトアミド(DMA),炭酸プロピレン(P, C),アセトニトリル(AN)等の有機溶媒および水-有機溶媒混合系中で,次の1.および2.について研究した.1.Ni^<2+>イオンの溶媒和。上記の種々の溶媒中でNi^<2+>の第一位圏における溶媒分子の配列を有機溶媒分子の^<13>CNMR縦緩和時間の測定にり推論し、水との混合溶媒中で、Ni^<2+>の選択的溶媒和を研究した。水-アルコ-ル系では、全溶媒組成範囲にわたって水が、水-DMSO系ではDMSO10025mol%までDMSOが選択的に溶媒和していることがわかった。Ni^<2+^<イオンの溶媒和圏に対しClO-1_4イオンやm-ベンゼンスルホン酸イオンは直接配位しないが、Cl^<->、NO_3^->、SO_42->は溶媒和圏の溶媒分子を一部置き換えていることを示した。2.Al^<3+>とSO_4^<2->およびSCN^-との錯形成, ^<27>AlNMRスペクトルの研究により, (1)水-有機混合溶媒系でのAl^<3+>とSO_4^<2->との錯形成反応の平衡と速度, (2)K_3Al(SCN)_6, Al(SCN)_3, KCl_<3-n>(SCN)_n(n=13)の純有機溶媒中での溶媒分子-SCN混合配位子錯体について研究した. (1)では有機溶媒が加わることは, (AlSO_4)^+の生成に有利に働き,またその生成速度を水溶液に比べて遅くすることがわかった. (2)ではAl^<3+>の第一溶媒和圏の6個のサイトを争って溶媒分子とSCN^-が配位する様相が明らかになった.特にDMSO溶液中では, Al(SCN)_n(DMSO)_<6-n>^<(3-n)+>(N=06)の7個の化学種に対して^<27>AlNMRスペクトルを帰属することが出来る.またSCN^-と競走する溶媒分子の配位能を定性的に見積ることが出来る.その順序は, PC, AN, DMA, ErOH, DMSOの順に大きくなっており,さらに定量的な研究を計画している.メタノール(MeOH),エタノール(EtOG),プロパノール(PrOH),ジメチルスルホキシド(DMSO), N, N-ニジメチルアセトアミド(DMA),炭酸プロピレン(P, C),アセトニトリル(AN)等の有機溶媒および水-有機溶媒混合系中で,次の1.および2.について研究した.1.Ni^<2+>イオンの溶媒和。上記の種々の溶媒中でNi^<2+>の第一位圏における溶媒分子の配列を有機溶媒分子の^<13>CNMR縦緩和時間の測定にり推論し、水との混合溶媒中で、Ni^<2+>の選択的溶媒和を研究した。水-アルコ-ル系では、全溶媒組成範囲にわたって水が、水-DMSO系ではDMSO10025mol%までDMSOが選択的に溶媒和していることがわかった。Ni^<2+^<イオンの溶媒和圏に対しClO-1_4イオンやm-ベンゼンスルホン酸イオンは直接配位しないが、Cl^<->、NO_3^->、SO_42->は溶媒和圏の溶媒分子を一部置き換えていることを示した。2.Al^<3+>とSO_4^<2->およびSCN^-との錯形成, ^<27>AlNMRスペクトルの研究により, (1)水-有機混合溶媒系でのAl^<3+>とSO_4^<2->との錯形成反応の平衡と速度, (2)K_3Al(SCN)_6, Al(SCN)_3, KCl_<3-n>(SCN)_n(n=13)の純有機溶媒中での溶媒分子-SCN混合配位子錯体について研究した. (1)では有機溶媒が加わることは, (AlSO_4)^+の生成に有利に働き,またその生成速度を水溶液に比べて遅くすることがわかった. (2)ではAl^<3+>の第一溶媒和圏の6個のサイトを争って溶媒分子とSCN^-が配位する様相が明らかになった.特にDMSO溶液中では, Al(SCN)_n(DMSO)_<6-n>^<(3-n)+>(N=06)の7個の化学種に対して^<27>AlNMRスペクトルを帰属することが出来る.またSCN^-と競走する溶媒分子の配位能を定性的に見積ることが出来る.その順序は, PC, AN, DMA, ErOH, DMSOの順に大きくなっており,さらに定量的な研究を計画している.
KAKENHI-PROJECT-62540459
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詩形成の現代性-フランス19世紀における散文詩の展開
本年度は、昨年度までのマラルメの散文詩に関する研究を継続しつつ、それをボードレールの散文詩と比較することで、研究領域を19世紀の中盤にまで広げてゆくことに努力した。まず、日本フランス語フランス文学会の学会誌に掲載した論文は、前年度に行った学会発表(「マラルメの『詩』」)をもとに、フランス語で発表した論文である。マラルメの作品に関して、散文詩に限らず考察し、マラルメが「詩」という言葉で指していたものの射程を明らかにした。一般的にマラルメの散文詩とみなされるのは13篇に限られてきたが、そのような規定の根拠は薄弱であること、マラルメが試みた散文での詩作は、むしろロマン主義的な観点、すなわち詩人の使命に関する議論のうちに、その意義が明らかされるべきことを示した。次に、論文「女をさらす-マラルメとボードレール散文詩」では、マラルメの作品とそれに先行するボードレールの作品からそれぞれ二つづつ選び、比較検討することを方法的骨格にしている。ボードレールの創始した近代散文詩を出発点としたマラルメが、次第にその規定から逸脱し、独自の散文を作り出すことで読者との交流を模索する様子を明らかにした。また、日本フランス語フランス文学会秋季大会での発表は、マラルメの散文中、例外的な長さを誇る作品『ヴィリエ・ド・リラダン』を取り上げ、そこに現れるマラルメの死生観を検討した論文である。当時としては非常にラディカルな無神論に立つマラルメが、それでもなお残るべき文学的遺産と考えていたものは何か、検討した上で、文学による生の救済の可能性がマラルメの独特の散文によって素描されてゆく過程を明らかにした。本年度は当初の予定を変更して、来年度行う予定であったマラルメの散文詩に関する研究から行うこととした。19世紀後半において散文詩という形式が成立してゆく過程を展望に収めるには、その始まりであるボードレールからアプローチすると同時に、そこで提起された問題が後世によってどのように解釈されるのか、そのいわば到達点からも考察する必要があるとおもわれたためである。少年時代のロマン主義的詩経験から出発したマラルメという詩人は、その寡少な作品において多様な形式を往還することで、世紀終盤、独自の詩風を打ち立てるに至る。その複雑な歩みを鑑みるとき、マラルメの散文詩だけを対象としていては視野狭窄に陥り、問題の重要性をとり逃してしまうだろう。むしろ、散文詩の歴史はマラルメの生涯とちょうど重なる半世紀間の文学全体の歴史、さらにはフランスの社会文化全般の歴史と平行して展開した現象として描き出されるべきであろう。そこで、本年度の前半は、マラルメの詩業に関する主要な研究書を渉猟することに費やされた。その成果の一部を、日本フランス語フランス文学会2006年度秋季大会において「詩と不毛性-ユゴー、マラルメ、ボードレール」という題で発表した。同題の論文を同学会機関誌に投稿しており、現在審査中である。また、本年度後半は、マラルメとその散文作品発表の媒体となったジャーナリズムとのかかわりを集中的に考察し、30ページほどの論文に纏めた。この論文は現在発表媒体を探しているところである。先年度にマラルメの研究を繰り上げて行ったため、今年度はその成果を発展させつつボードレールに関する研究へと移行しようと試みた。その際に、マラルメの作品分析から得た知見をもとに、ボードレールが行った近代散文詩の試みが後の世代からどのように理解され、またどのように引き継がれてゆくのか、明らかにしようとした。その成果は、9月に日本フランス語フランス文学会の学会誌に寄稿された「詩と不毛性-マラルメ・ユゴー・ボードレール」という論文に結実した。また、11月に日本フランス語フランス文学会の秋期大会で行った口頭発表(「マラルメの詩-自然と人問」)では、マラルメという詩人の散文作品の特異性と「散文詩」というジャンルを確定することの困難について発表をおこなった。散文詩の問題は単なる形式的な議論に収まらず、フランスのロマン主義文学が「詩」という営為に託した理想を広く捉えた中に定位されるべきことが明らかなった。この発表をまとめて、現在同学会の学会誌に投稿、審査中である。また、もう一本、マラルメとボードレールの散文詩を比較する論文「女をさらす-マラルメとボードレール散文詩」を執筆し終えている。この論文では二人の詩人からそれぞれ2篇の散文詩を取り上げ、そこで女性を巡るテーマと縁日というトポスがいかに展開してゆくのか、明らかにした。その際、個々の文学的形象・モチーフに関する分析から歩を進め、「現代生活の描写」というボードレール散文詩の中心命題を、マラルメが継承してゆく様相をとらえることを中心に議論した。この論文に関しては、掲載する媒体を現在探しているところである。本年度は、昨年度までのマラルメの散文詩に関する研究を継続しつつ、それをボードレールの散文詩と比較することで、研究領域を19世紀の中盤にまで広げてゆくことに努力した。まず、日本フランス語フランス文学会の学会誌に掲載した論文は、前年度に行った学会発表(「マラルメの『詩』」)をもとに、フランス語で発表した論文である。マラルメの作品に関して、散文詩に限らず考察し、マラルメが「詩」という言葉で指していたものの射程を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-06J10081
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J10081
詩形成の現代性-フランス19世紀における散文詩の展開
一般的にマラルメの散文詩とみなされるのは13篇に限られてきたが、そのような規定の根拠は薄弱であること、マラルメが試みた散文での詩作は、むしろロマン主義的な観点、すなわち詩人の使命に関する議論のうちに、その意義が明らかされるべきことを示した。次に、論文「女をさらす-マラルメとボードレール散文詩」では、マラルメの作品とそれに先行するボードレールの作品からそれぞれ二つづつ選び、比較検討することを方法的骨格にしている。ボードレールの創始した近代散文詩を出発点としたマラルメが、次第にその規定から逸脱し、独自の散文を作り出すことで読者との交流を模索する様子を明らかにした。また、日本フランス語フランス文学会秋季大会での発表は、マラルメの散文中、例外的な長さを誇る作品『ヴィリエ・ド・リラダン』を取り上げ、そこに現れるマラルメの死生観を検討した論文である。当時としては非常にラディカルな無神論に立つマラルメが、それでもなお残るべき文学的遺産と考えていたものは何か、検討した上で、文学による生の救済の可能性がマラルメの独特の散文によって素描されてゆく過程を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-06J10081
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大陸地殻成長率の推定-ジルコンの年代とハフニウム同位体を用いた手法の開発
これまでに行ってきたジルコン鉱物の局所Hf同位体分析法の開発に関する研究成果をまとめ,国際学術雑誌『Chemical Geology』にて発表した.さらに,この開発した分析手法をミシシッピー川河口の川砂中のジルコン約400粒に適用することにより,大陸地殻成長において古い大陸地殻の再溶融による若い大陸地殻形成(リワーキング)が非常に重要であることを示した.また,このリワーキングの効果を定量的に補正することにより,ミシシッピー川流域において,初生的な大陸地殻の成長が太古代初期には開始していたこと,そして20億年前から13億年前にかけて急激に進んだことを明らかにした.この大陸地殻成長史に関する研究成果については,国内学会『地球化学会』にて発表し,さらに,国際学術雑誌『Geology』においても掲載された.川砂ジルコンの研究を進める一方で,大陸地殻の初期成長史をより詳しく理解するために,これまでに確認されている世界最古(約40億年前)の岩石が存在するカナダアカスタ麻岩体中の岩石について,ジルコンの局所U-Pb年代測定及び局所Hf同位体分析を行った.その結果,世界最古と考えられていた岩石が,より古い(約42億年前)の大陸地殻の再溶融(リワーキング)により形成されたことを,明らかにした.このことは,40億年前以前から,大陸地殻成長が普遍的に開始していたこと,そして,そのような古い大陸地殻が今現在確認されない理由の一つとして,リワーキングが重要な原因となっていることを示唆する.この新たな初期大陸地殻成長に関する研究成果については,国際学会『Goldschmidt conference』にて発表し,さらに,国際学術雑誌『Geology』にも投稿し,受理された.1.『Simultaneous determinations of U-Pb age and REE abundances for zirconsusing ArE Excimer laser ablation-ICPMS』が、Geocemical Journalに受理された。この研究により、ジルコンの高精度かつ迅速な年代、希土類元素同時測定が可能になった。この手法を、これまでに地質調査を行ってきたカナダ、アカスタ片麻岩体の試料に応用することにより、これまで世界最古と思われていた岩石よりもさらに古い岩石が存在することが示された。この成果は、2003年の13^<th> Annual VM Goldschmidt Conference(倉敷)にて発表した。2.今年度を通して、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析計を用いたジルコンのHf局所同位体分析法の開発を行った。その結果32μmの局所領域から高精度なHf同位体を得ることが可能になった。この成果についても、2003年の13^<th> Annual VM Goldschmidt Conference(倉敷)にて発表した。さらに、この手法をアカスタ片麻岩体の試料に応用することにより、太古代初期において古い地殻のリサイクルが頻繁におこっていた可能性を示した。この成果については、2003年のAmerican Geophysical union,2003 Fall Meeting,(サンフランシスコ)にて発表した。3.川砂中のジルコンの試料採取をアジア大陸の主要な河川について行った。これまでに行ってきたジルコン鉱物の局所Hf同位体分析法の開発に関する研究成果をまとめ,国際学術雑誌『Chemical Geology』にて発表した.さらに,この開発した分析手法をミシシッピー川河口の川砂中のジルコン約400粒に適用することにより,大陸地殻成長において古い大陸地殻の再溶融による若い大陸地殻形成(リワーキング)が非常に重要であることを示した.また,このリワーキングの効果を定量的に補正することにより,ミシシッピー川流域において,初生的な大陸地殻の成長が太古代初期には開始していたこと,そして20億年前から13億年前にかけて急激に進んだことを明らかにした.この大陸地殻成長史に関する研究成果については,国内学会『地球化学会』にて発表し,さらに,国際学術雑誌『Geology』においても掲載された.川砂ジルコンの研究を進める一方で,大陸地殻の初期成長史をより詳しく理解するために,これまでに確認されている世界最古(約40億年前)の岩石が存在するカナダアカスタ麻岩体中の岩石について,ジルコンの局所U-Pb年代測定及び局所Hf同位体分析を行った.その結果,世界最古と考えられていた岩石が,より古い(約42億年前)の大陸地殻の再溶融(リワーキング)により形成されたことを,明らかにした.このことは,40億年前以前から,大陸地殻成長が普遍的に開始していたこと,そして,そのような古い大陸地殻が今現在確認されない理由の一つとして,リワーキングが重要な原因となっていることを示唆する.この新たな初期大陸地殻成長に関する研究成果については,国際学会『Goldschmidt conference』にて発表し,さらに,国際学術雑誌『Geology』にも投稿し,受理された.
KAKENHI-PROJECT-03J03499
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勤労者における糖尿病発症に関するリスクスコアの開発と血中栄養成分の解明
糖尿病ハイリスク者の同定及び早期介入に役立つ簡便で精度の高いリスク予測ツールとして、8社の職域健康診断データを統合した大規模データベースにもとづき、3年間における糖尿病発症を予測するリスクスコアを開発し、その妥当性を検証した。侵襲モデル、非侵襲モデルとも良好な予測能を示した。血液を保管している職域集団について、コホート内症例対照研究の手法にて、血中の栄養成分との関連を調べた。脂肪酸組成及びフェリチンが糖尿病リスクに関連していることが明らかになった。本研究の目的は、科学的根拠に基づく糖尿病予防対策の推進に資するため、大規模職域集団において、ハイリスク者の同定及び早期介入に役立つ簡便で精度の高いリスク予測ツールを開発すること、また、糖尿病に予防的な食事要因を解明することである。1)糖尿病リスクスコアの開発と評価:職域多施設研究に参加している11施設より、2008年から2012年の5年間分の職域健康診断データの提供を受け、縦断解析が可能な統合データベースを作成した。このデータを用い、糖尿病の有病率を性・年齢別、リスク要因別に算出した。また、侵襲データを含む場合と含まない場合の2通りの糖尿病リスクスコアを作成し、その妥当性を検証する解析手法を確立した。2)糖尿病と血中栄養成分に関する前向き研究: 2008年の健康診断時に残余血清の提供を受けた約6000名の職域集団について、2012年までの5年分の健康診断データを整理した。コホート解析が可能なデータベースを作成、追跡期間中の糖尿病発症を同定する解析プログラムを作成した。肥満や運動習慣など糖尿病リスク要因と糖尿病発症との関連を分析した。3)糖代謝異常と栄養成分に関する断面研究:関東地方のある企業において健康診断時に栄養疫学調査を実施し、食生活調査のほか研究用採血を行った。従業員約1000名から研究参加について同意を得た。すでに調査を終えている他の施設のデータと併せ、約2000名の栄養疫学データを構築した。凍結保存血清中のインスリンとフェリチンの濃度を測定した。糖尿病リスクスコア開発については、職域多施設研究から得られる大規模縦断データを用いて、血液検査データを含まない非侵襲的な情報に基づくリスクモデルと、血液検査データを含めた侵襲的なリスクモデルにもとづく3年後の発症予測スコアを開発し、ROC分析などによりスコアの妥当性を検証した。職域定期健康診断の成績を用いて糖尿病の発症リスクを推計する簡便なツールである。リスクスコア開発の過程とその検証結果を論文にまとめ、国際学術雑誌に投稿した。職域血清コホート集団における糖尿病リスクにかかわる栄養成分に関する検討については、当該集団におけるベースライン(2008年)以降5年間分の定期健康診断データを収集し、これらを統合したデータベースを作成した。そのデータベースを用いて、糖尿病の新規発症者を同定し、次いで発症1例について性・年齢・採血時期をマッチさせた対照2例を無作為に選定した。当初計画で予定していた脂肪酸分画測定はラボの体制が整わず年度内に開始できなかったが、凍結血清を保存している冷凍庫からの当該サンプルの効率的な取り出し方法を検討するなど、栄養成分測定の事前準備を進めた。脂肪酸および鉄と糖尿病のリスクに関する前向き研究論文を収集した。平成27年度に実施予定の栄養疫学調査(追跡調査)の準備のため、事業所や健康診断業者との調整を進めた。当該年度に血清コホート集団における脂肪酸組成の測定を半数程度実施する予定であったが、測定を予定していた研究室での測定員確保が困難となり、他の研究室も当ってみたものの実施可能な施設はなかったため、脂肪酸組成分析は平成27年度に延期して実施することとした。なお、糖尿病リスクスコア開発と栄養疫学調査は当初の計画通りに終了した。本研究の目的は、科学的根拠に基づく糖尿病予防対策の推進に資するため、大規模職域集団においてハイリスク者の同定及び早期介入に役立つ簡便で精度の高いリスク予測ツールを開発すること、また、糖尿病に予防的な食事要因を解明することである。1)糖尿病リスクスコア開発と評価:職域多施設研究に参加した企業から得た定期健康診断の大規模縦断データを用いて、血液検査データを含まない非侵襲的な情報に基づくリスクモデルと、血液検査データを含めた侵襲的なリスクモデルにもとづく3年後の発症予測スコアを開発し、ROC分析などによりスコアの妥当性を検証した論文を国際学術誌に発表した。職域・地域でのこのスコアの活用を推進するため、Web上に健康診断成績を入力すると、3年後の糖尿病発症確率を自動計算するシステムを開発し、研究部のホームページで公開した。研究参加施設に結果を換言するとともに、問い合わせがあった数社に情報提供した。2)糖尿病と血中栄養成分に関する前向き研究:職域血清コホートにおいて追跡調査により把握された糖尿病例とその対照者例について、ベースライン時に凍結保存していた血清中の脂肪酸分画及びフェリチン濃度を測定した。予備解析において、フェリチン値が高い群では糖尿病のリスクが統計学的に有意に上昇していた。ただし、ベースライン時の肝機能や血糖値を調整すると有意な関連は消失した。脂肪酸分画の測定結果をデータベースに追加し、統計解析の準備を整えるとともに、論文の執筆をすすめた。3)糖代謝異常と栄養成分に関する研究: 3年前に栄養疫学調査を行った事業所で追跡調査を実施し、食生活などの生活習慣を自記式質問紙で調べた。提供を受けた血液サンプルを用いて、インスリン濃度のほか、糖尿病との関連が示唆されるマグネシウムなどの栄養成分を測定した。
KAKENHI-PROJECT-25293146
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勤労者における糖尿病発症に関するリスクスコアの開発と血中栄養成分の解明
糖尿病ハイリスク者の同定及び早期介入に役立つ簡便で精度の高いリスク予測ツールとして、8社の職域健康診断データを統合した大規模データベースにもとづき、3年間における糖尿病発症を予測するリスクスコアを開発し、その妥当性を検証した。侵襲モデル、非侵襲モデルとも良好な予測能を示した。血液を保管している職域集団について、コホート内症例対照研究の手法にて、血中の栄養成分との関連を調べた。脂肪酸組成及びフェリチンが糖尿病リスクに関連していることが明らかになった。血清コホート集団における脂肪酸分析は、平成27年度に延期して実施する。測定施設は当初の予定どおり九州大学農学研究員栄養化学研究室とする。ただし、当初計画では佐藤准教授を研究協力者としていたのを、研究分担者としたうえで、測定技術員雇用のため相応の分担研究費を配分し、測定環境を整える。27年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の柱となる3つの疫学調査のいずれもが、参加施設の協力を得て、調査資料の収集が順調に進んでいる。特に職域多施設大規模疫学データベースの構築が円滑に進み、当初、2年目に行うことを予定していたリスクスコア開発の解析手法の確立と予備的検討まで進めることができた。当該年度に血清コホート集団における脂肪酸組成の測定を半数程度実施する予定であったが、測定を予定していた研究室での測定員確保が困難となり、他の研究室も当ってみたものの実施可能な施設はなかったため、脂肪酸組成分析は平成27年度に延期して実施することとした。27年度が最終年度であるため、記入しない。血清コホート集団における脂肪酸分析は、平成27年度に延期して実施する。測定施設は当初の予定どおり九州大学農学研究員栄養化学研究室とする。ただし、当初計画では佐藤准教授を研究協力者としていたのを、研究分担者としたうえで、測定技術員雇用のため相応の分担研究費を配分し、測定環境を整える。27年度が最終年度であるため、記入しない。今後もおおむね当初の計画に沿って進める。リスクスコア開発については、3年後及び5年後の2つのスコアを開発する。血中栄養成分に関する脂肪酸分析については、当初考えていた研究機関での測定が難しいことが判明したため、別の研究機関の研究者に測定を依頼し、了解を得た。2015年春に、2012年に栄養疫学調査した職域集団において3年目調査を実施し、栄養成分と糖尿病発症との縦断的関連を調べる予定である。27年度が最終年度であるため、記入しない。研究初年度に予定していた海外出張が年度末から新年度に渡ったため、その旅費を初年度ではなく2年目の研究費から支出することとしたため。また、調査の進捗状況や保存検体の有効活用を考慮し、栄養成分などに関する検体測定の一部を見直し、翌年度以降に行うこととしたため。海外出張費(終了)に充てる。また、断面調査やコホート内症例対照用に保存している血清検体を用いて脂肪酸組成及びフェリチンなどの栄養要因の分析を進める。また2015年4月に予定している追跡調査の準備のため、調査票の印刷や調査用の物品を購入する。
KAKENHI-PROJECT-25293146
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動脈硬化壁に蓄積する過酸化リポタンパク質認識モノクロナル抗体の開発
我々はヒト動脈硬化巣のホモジェネートを抗原としてマウス(BALB/c)を感作し、酸化リポタンパク質を認識するモノクロナル抗体産性株FOHla/DLH3株を分離することに成功した。本モノクロナル抗体は、免疫染色によりヒト冠状動脈内膜肥厚部に局在する泡沫細胞を認識することが明らかになった。しかも、本抗体が認識する抗原決定部位は過酸化ホスファチジルコリンとペプチドの複合体の可能性が高い。さらに、合成リン脂質1-palmitoyl-2-linoleoylphosphatidylcholineを酸化しFoHla/DLH3抗体が認識する抗原物質純相、逆相のシリカゲルHPLCにて分離後、質量分析により構造解析を行なった結果、エピトープの一つは9CHO-PCであることが明らかになった。9CHO-PCを標準物質として、DLH3抗体と抗アポB抗体のサンドイッチ法による血中過酸化LDL微量測定法を確立した。その結果、虚欠性心疾患患者血清の過酸化LDL値は正常値より高いとの知見が得られた。これらの事実は、動脈硬化巣に過酸化脂質、具体的には9CHO-PCがペプチドと結合して局在していることをはじめて明らかにしたばかりではなく、本研究により血中過酸化脂質の定量化に成功し、過酸化脂質から見た新しい診断薬の開発が期待される。我々はヒト動脈硬化巣のホモジェネートを抗原としてマウス(BALB/c)を感作し、酸化リポタンパク質を認識するモノクロナル抗体産性株FOHla/DLH3株を分離することに成功した。本モノクロナル抗体は、免疫染色によりヒト冠状動脈内膜肥厚部に局在する泡沫細胞を認識することが明らかになった。しかも、本抗体が認識する抗原決定部位は過酸化ホスファチジルコリンとペプチドの複合体の可能性が高い。さらに、合成リン脂質1-palmitoyl-2-linoleoylphosphatidylcholineを酸化しFoHla/DLH3抗体が認識する抗原物質純相、逆相のシリカゲルHPLCにて分離後、質量分析により構造解析を行なった結果、エピトープの一つは9CHO-PCであることが明らかになった。9CHO-PCを標準物質として、DLH3抗体と抗アポB抗体のサンドイッチ法による血中過酸化LDL微量測定法を確立した。その結果、虚欠性心疾患患者血清の過酸化LDL値は正常値より高いとの知見が得られた。これらの事実は、動脈硬化巣に過酸化脂質、具体的には9CHO-PCがペプチドと結合して局在していることをはじめて明らかにしたばかりではなく、本研究により血中過酸化脂質の定量化に成功し、過酸化脂質から見た新しい診断薬の開発が期待される。動脈硬化壁内膜肥厚部に局在する泡沫細胞にコレステロール・エステルが蓄積していることはよく知られている。しかも、過酸化リポタンパク質はこの泡沫化形成に重要な役割を果たしていると考えられている。最近、我々はヒ動脈硬化巣のホモジェネートを抗原としてマウス(BALB/c)を感作し、過酸化リポタンパク質を認識するモノクロナル抗体産生株8株を分離した。そのうち1つ、FOHla/DLH3株が産生するモノクロナル抗体は、酸化LDLに対して強い反応性を示す一方、未処理LDL、アセチルLDL、マロンジアルデヒドLDLとは反応しない。また、免疫染色によりヒト冠状動脈内膜肥厚部に局在する泡沫細胞を認識することが明らかになった。しかも、本抗体が認識する抗原決定部位は過酸化ホスファチジルコリンとペプチドの複合体の可能性が高い(J.Biol.CHem.269,15274-15279(1994)に報告)。これらの知見は、これまで動脈硬化巣に蓄積していることが示唆されてきた過酸化リポタンパク質の本体に一歩近づいたと考えている。動脈硬化壁内膜肥厚部に局在する泡沫細胞化形成に、過酸化リポタンパク質が重要な役割を果たしていると考えられている。我々はヒト動脈硬化巣のホモジェネートを抗原としてマウス(BALB/c)を感作し、過酸化リポタンパク質を認識するモノクロナル抗体産生株(FOHIa/DLH3株)を分離した。本モノクロナル抗体は、酸化LDLに対して強い,反応性を示す一方、未処理LDL、アセチルLDL、マロンジアルデヒドLDLとは反応しない。また、免疫染色によりヒト冠状動脈内膜肥厚部に局在する泡沫細胞を認識することが明らかになった。しかも、本抗体が認識する抗原決定部位は過酸化ホスファチジルコリンとペプチドの複合体の可能性が高い。これらの知見は、これまで動脈硬化巣に蓄積していることが示唆されてきた過酸化リポタンパク質の本体に一歩近づいたと考えている。我々はヒト動脈硬化巣のホモジェネートを抗原としてマウス(BALB/c)を感作し、酸化リポタンパク質を認識するモノクロナル抗体産性株FOHla/DLH3株を分離することに成功した。本モノクロナル抗体は、免疫染色によりヒト冠状動脈内膜肥厚部に局在する泡沫細胞を認識することが明らかになった。しかも、本抗体が認識する抗原決定部位は過酸化ホスファチジルコリンとペプチドの複合体の可能性が高い。さらに、合成リン脂質l-palmitoyl-2-linoleoylphosphatidylcholineを酸化しFoHla/DLH3抗体が認識する抗原物質純相、逆相のシリカゲルHPLCにて分離後、質量分析により構造解析を行なった結果、エピトープの一つは9CHO-PCであることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-06454602
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06454602
動脈硬化壁に蓄積する過酸化リポタンパク質認識モノクロナル抗体の開発
9CHO-PCを標準物質として、DLH3抗体と抗アポB抗体のサンドイッチ法による地中過酸化LDL微量測定法を確立した。その結果、虚欠性心疾患患者血清の過酸化LDL値は正常値より高いとの知見が得られた。これらの事実は、動脈硬化巣に過酸化脂質、具体的には9CHO-PCがペプチドと結合して局在していることをはじめて明らかにしたばかりではなく、本研究により血中過酸化脂質の定量化に成功し、過酸化脂質から見た新しい診断薬の開発が期待される。
KAKENHI-PROJECT-06454602
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非行少年のための更生保護施設に関する研究
日本に存在する未成年のためのすべての更生保護施設をそれぞれ複数回にわたったて訪問し、施設長をはじめとする職員への聞き取り調査を行い、アメリカ合衆国の施設について調べるとともに、スウェーデンにおけるわが国の更生保護施設に該当する施設を訪問し、関係職員へのインタビューを行った。その過程で発見されたのは、わが国において少年犯罪が社会的注目を集めている現状から考えるとまったく予期に反することであるが、過剰収容といっても過言ではない少年院とは対照的に、更生保護施設は収容少年の不足に悩まされている実情であった。特に女子少年の施設では深刻である。これらのなかには、近年において経営の観点が重視され定員の充足が課題となるなかで、成人が収容されるようになった施設もあり、現在大きな岐路に立っていることが詳らかになった。非行少年の処遇においてしばしば福祉的アプローチとして注目されてきたスウェーデンにおいて、わが国の少年のための更生保護施設に該当する施設は、男女の混合施設でより開放性が高いことが異なる。移民の子女が多いのも特徴の一つであり、国際化の進むわが国でも将来対応を迫られる問題となる可能性がある。ただし、スウェーデンにおいては矯正施設との連携はかならずしも良好とはいえず、夜間、休日の体勢は脆弱といわざるをえない面を持っている。少年のための更生保護施設が有効に活用され、成果を生み出していくためには、現在SSTなどのプログラムに意欲的な取り組みが行われているが、さらなるプログラムの工夫、少年の保護観察のありかたの再考、さらに家庭裁判所における補導委託先としての利用などが今後の課題と考えられることが判明した。日本に存在する未成年のためのすべての更生保護施設をそれぞれ複数回にわたったて訪問し、施設長をはじめとする職員への聞き取り調査を行い、アメリカ合衆国の施設について調べるとともに、スウェーデンにおけるわが国の更生保護施設に該当する施設を訪問し、関係職員へのインタビューを行った。その過程で発見されたのは、わが国において少年犯罪が社会的注目を集めている現状から考えるとまったく予期に反することであるが、過剰収容といっても過言ではない少年院とは対照的に、更生保護施設は収容少年の不足に悩まされている実情であった。特に女子少年の施設では深刻である。これらのなかには、近年において経営の観点が重視され定員の充足が課題となるなかで、成人が収容されるようになった施設もあり、現在大きな岐路に立っていることが詳らかになった。非行少年の処遇においてしばしば福祉的アプローチとして注目されてきたスウェーデンにおいて、わが国の少年のための更生保護施設に該当する施設は、男女の混合施設でより開放性が高いことが異なる。移民の子女が多いのも特徴の一つであり、国際化の進むわが国でも将来対応を迫られる問題となる可能性がある。ただし、スウェーデンにおいては矯正施設との連携はかならずしも良好とはいえず、夜間、休日の体勢は脆弱といわざるをえない面を持っている。少年のための更生保護施設が有効に活用され、成果を生み出していくためには、現在SSTなどのプログラムに意欲的な取り組みが行われているが、さらなるプログラムの工夫、少年の保護観察のありかたの再考、さらに家庭裁判所における補導委託先としての利用などが今後の課題と考えられることが判明した。少年が犯罪や非行をして家庭裁判所で少年審判が開かれ試験観察となった際に、あるいは終局処分として保護観察となった際や少年院送致となり仮退院後の保護観察となった際に、自宅へ帰して保護観察を行った場合に親子関係の縺れなどからむしろ好ましくない結果がもたらされると思われるようなケースでは更生施設が利用される。この更生保護施設の将来の展望を把握するのが本研究の大きな目的である。本年度は、男女それぞれの少年を受け入れている更生保護施設を訪問して施設長らにインタビュー調査を行った。その結果、更生保護施設は少人数で運営されているため、後継者が実質的に世襲されるような場合、保護観察官のOBが施設の長になる場合、地方自治体の退職者がなる場合などによって、その特徴と処遇が異なるため、これに基づいて類型化して施設と処遇について検討すべきことが判明した。次に、非行少年に対する処遇の前提として少年犯罪の状況、少年犯罪者、非行少年への取り組みについてアメリカ社会問題学会で報告し、さらに、わが国の少年非行とそれへの対策ならびに処遇の現状についてまとめ、英語版の小冊子を作成して海外で調査を行うにあたって協力が得られやすい準備を整えた。しかしながら、アメリカ合衆国の元少年裁判所の裁判官などにインタビュー調査を行った結果、アメリカ合衆国の少年犯罪対策はリハビリテーションに主眼を置かないものに変化しており、今後の調査の方向としては、むしろ国内の状況についてより詳しく検討したほうが好ましい成果の展望がもたらされる可能性が高いとの予測がもたらされた。日本に存在する未成年のための更生保護施設のすべてをそれぞれ2回以上訪問し、職員への聞き取り調査を行った。またスウェーデンにおけるわが国の更生保護施設に該当する施設を訪問し、関係職員へのインタビューを行った。その過程で発見されたのは、わが国において少年犯罪が社会的注目を集めている現状から考えるとまったく予期に反することであるが、過剰収容状態にある少年院とは対照的に、更生保護施設は収容少年の不足に悩まされている実情であった。特に少年院(仮)退院少年の数が大きく異なる女子少年の施設では深刻であった。これらのなかには、とりわけ近年において経営の観点が重視され定員の充足が求められるなかで、少年ばかりではなく成人が収容されるようになった施設もある。
KAKENHI-PROJECT-14591005
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14591005
非行少年のための更生保護施設に関する研究
少年のための更生保護施設が少年と成人との混合施設となるのかあるいは設立の趣旨が尊重されるのか、現在大きな岐路に立たされていることが詳らかになった。非行少年の処遇においてしばしば福祉的アプローチとして注目されてきたスウェーデンにおいて、わが国の少年のための更生保護施設に該当する施設は、男女の混合施設でより開放性が高いことが異なる。移民の子女が多いのも特徴の一つであり、国際化の進むわが国でも将来対応を迫られる問題となる可能性がある。ただし、スウェーデンにおいては矯正施設との連携はかならずしも良好とはいえず、夜間、休日の体勢は脆弱といわざるをえない面を持っている。少年のための更生保護施設が有効に活用され、成果を生み出していくためには、プログラム面での工夫、少年の保護観察のありかた、とりわけ終了のしかた、さらに家庭裁判所における補導委託における利用などが今後の課題と考えられることが判明した。
KAKENHI-PROJECT-14591005
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14591005
マイクロマンガンノジュールの成因による分別: 古海洋環境復元を目指して
マンガン団塊の形成メカニズムを探るため、北太平洋の海底堆積物中の微小な団塊(マイクロマンガンノジュール、径: <1 mm)に注目した。内部構造観察の結果、マイクロマンガンノジュールの内部には低密度の核が存在し、そこから外側に向かって同心円状に鉄・マンガン酸化物層が成長していた。また元素分析の結果、このマイクロマンガンノジュールはマンガン濃度が相対的に高く、やや還元的な環境で形成されたことが示唆された。マンガン団塊は水深1000 m以深の海底に普遍的に存在する化学堆積岩である。成長速度が100万年に数mmと非常に遅いことから、非常に長い期間の海洋の環境変動を記録しており、古環境指標として注目されている。ただし通常の大きな団塊(径: >1 cm)は、密度的に不安定なはずの遠洋性堆積物の上に産出することが多く、その形成メカニズムは不明瞭である。本研究では堆積物の内部に埋没している微小な団塊(マイクロマンガンノジュール、径: <1 mm)に注目した。その形成メカニズムの解明と大きな団塊との比較、ひいては当時の海洋環境の復元を目的とした。本研究にあたっては、北太平洋の海底堆積物試料を利用した。本年度は、まずこの堆積物試料全体に対して、X線回折装置を利用した鉱物組成分析や、レーザー粒度分布測定器を利用した粒度分析など、基礎的な分析を実施した。そして重液分離や水簸処理などを使って、この試料からマイクロマンガンノジュールを一個ずつ回収する手法を確立した。回収したマイクロマンガンノジュールに対して、電子顕微鏡にて観察を行ったところ、マイクロマンガンノジュールの表面に数μmほどの小さな粒子状構造が存在していることが明らかになった。また、マイクロマンガンノジュールを樹脂に埋め込み、研磨薄片を作成することで、その内部の構造を確認した。その結果、やや不明瞭ではあるものの、内部に核のような構造を確認することができた。以上の成果については、国内の研究集会において、学会発表を行った。また関連研究として、北太平洋におけるマンガン鉱床の調査航海に参加した。当初の研究計画では、上記の研磨薄片作成に加えて、マイクロフォーカスX線CTスキャナによる内部構造および密度変化の観測を行う予定であった。ただし機器の不具合により、解像度の良い像を得られなかったため、半年間研究期間を延長し、平成29年度の実施事項とした。水深1000 m以深の深海底に普遍的に存在する化学堆積岩、「マンガン団塊」(径: >1 cm)の形成メカニズムを理解するために、本研究では微小な団塊(マイクロマンガンノジュール、径: <1 mm)に注目した。本研究の目的は、マイクロマンガンノジュールの内部構造観察や元素分析を行うことで、それが形成した海洋環境を特定すること。そして、その結果を通常の大きな団塊と対比し、古環境復元につなげることである。昨年度実施した研磨薄片の観察に加え、本年度はマイクロフォーカスX線CTスキャナを利用して、マイクロマンガンノジュールの内部構造および密度変化の観測を実施した。その結果、マイクロマンガンノジュールの内部には低密度の核が存在し、そこから外側に向かって同心円状に鉄・マンガン酸化物層が成長していることが明らかになった。この構造は、通常の大きな団塊と酷似している。一方、堆積物の採取深度によって、マイクロマンガンノジュールの回収数や内部構造などに、大きな違いを見出すことはできなかった。併せて一部の試料に対して、エネルギー分散形X線分析や蛍光X線分析による元素分析を実施した。鉄と比較してマンガンの濃度が高い傾向が見られたことから、この試料はやや還元的な海洋環境で形成されたことが示唆された。以上の成果については、国内の研究集会において、学会発表を行った。また関連研究として、マンガン団塊から溶出する重金属に関する研究を実施し、国際誌に共著論文を発表した。マンガン団塊の形成メカニズムを探るため、北太平洋の海底堆積物中の微小な団塊(マイクロマンガンノジュール、径: <1 mm)に注目した。内部構造観察の結果、マイクロマンガンノジュールの内部には低密度の核が存在し、そこから外側に向かって同心円状に鉄・マンガン酸化物層が成長していた。また元素分析の結果、このマイクロマンガンノジュールはマンガン濃度が相対的に高く、やや還元的な環境で形成されたことが示唆された。マイクロフォーカスX線CTスキャナによる分析を迅速に実施し、先の研磨薄片による観察結果と対比を行う。また元素分析を行うことで、マイクロマンガンノジュールが形成した海洋環境を特定する。29年度が最終年度であるため、記入しない。生物地球化学29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16H07029
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大気中でのエアロゾル表面解析を実現するイオン顕微分光法の開発
本研究では、微細試料から生じる荷電粒子励起発光(IL)の高分解能な分光分析法の実現を目的として、イオン誘起発光顕微分光(ILUMIS)分析システムを開発した。本分析システムをマイクロPIXE分析装置と併用することで、大気中に置かれたエアロゾル試料の化学組成と元素組成の同時分析を可能とした。次いで、大気中から捕集されたエアロゾル実試料の分析に本分析システムを応用した。粒子表面に存在する微量な有機・無機化合物に対応するILの分光スペクトルとイメージが得られた。本研究開発により、目的とするエアロゾル個別粒子の化学組成の詳細分析が、大気取出しプロトンマイクロビームをプローブとして可能となった。大気中微粒子(エアロゾル)表面の化合物分布の可視化を目的として、イオンマイクロビーム誘起発光顕微分光分析(ILUMIS)装置の開発を行った。計画最終年度である今年度は、特定化合物や大気中微粒子を利用した標準試料や、実大気から捕集された微粒子試料を利用した分析装置の応用を図った。昨年度までに開発された顕微分光光学系と多波長同時分光装置を用いることで、数マイクロメートル程度のエアロゾル試料から発生するイオン誘起発光(IL)を分光分析可能とした。エアロゾルから発生するILは、同時分析を行ったPIXE法の測定対象である特性X線と同程度の時間で分析可能であることも実験的に確認された。また、微粒子中の化合物の混合状態により、エアロゾルから取得されるILスペクトル中には複数の異なるピークが混在することが確認された。このようなILスペクトルを解析するために、既存の発光データベースとデータ解析ソフトウェアを組み合わせることで専用のデータ解析手法を開発した。一連の研究開発により、微小試料からの微弱なイオン誘起発光(IL)について、ピーク分離を行いながら分光分析・イメージングすることが可能となった。分離された各ILピークの発光波長に対応付けを行うことで、粒子中に含まれる化合物の同定が可能となった。一部の微粒子表面からは, NADHやリボフラビンといった特定の有機物に固有の波長を持つILが局在することが観測された。これらの有機物は、微粒子中に微生物が存在した痕跡を示す代表的な化合物であることから、本実験結果はエアロゾル表面において有機物が固着した事実を示唆する可能性がある。本成果について、イオンビームを用いた分析技術に関する国際会議IBA2013に於いて発表した。本研究では、微細試料から生じる荷電粒子励起発光(IL)の高分解能な分光分析法の実現を目的として、イオン誘起発光顕微分光(ILUMIS)分析システムを開発した。本分析システムをマイクロPIXE分析装置と併用することで、大気中に置かれたエアロゾル試料の化学組成と元素組成の同時分析を可能とした。次いで、大気中から捕集されたエアロゾル実試料の分析に本分析システムを応用した。粒子表面に存在する微量な有機・無機化合物に対応するILの分光スペクトルとイメージが得られた。本研究開発により、目的とするエアロゾル個別粒子の化学組成の詳細分析が、大気取出しプロトンマイクロビームをプローブとして可能となった。個別のエアロゾル表面の化学的性質を非破壊的に分析・イメージングすることを目的として、イオンマイクロビーム誘起発光顕微分光分析(ILUMIS)装置の開発を行っている。計画初年度である今年度は、目的とする顕微分光装置の主要要素である顕微集光系と多波長同時分光装置を開発した。まず、近接両凸レンズを試料近傍の真空容器内部に配置して、イオンマイクロビームと焦点を共有する顕微集光系を開発した。この光学系で集光されたイオン誘起発光を光子レベルで分光するために、高分解能グレーティング素子を備えた多波長同時分光装置の開発も行った。顕微集光系と多波長同時分光装置の同時開発により、数個程度の光子であっても、イオン誘起発光を分光分析・イメージングすることが可能となった。既知の化合物により構成された標準試料を利用し、開発した分析装置の波長校正を予め行った。次いで、大気中微粒子の分析を試みた。粒子中の化合物に対応した発光が個別粒子から計測される中で、一部の大気中微粒子からは、元素組成分布が均一な領域であっても、特定の有機物に固有の波長を持つILが局在することが観測された。これらの有機物は、微粒子中に微生物が存在した痕跡を示す代表的な化合物であることから、本実験結果はエアロゾル表面において有機物が固着した事実を示唆する可能性がある。これらの成果は、イオンマイクロビームに関する国際会議ICNMTA2012及びPIXEに関する国際会議PIXE2013に於いて発表した。年度中期で参加した国際会議ICNMTA2012では、当該研究に対して、予想よりも多くの反響を得ることができた。この時に受けたアドバイスを元に光学装置の設計を修正し、予定していた顕微集光系と多波長同時分光装置を節約した予算で開発することができた。この顕微集光系に更に独自に盛り込んだアイディアが功を奏し、計画よりも高い感度と分解能を達成することができた。このアイディアと得られた成果について、年度末にブラジルで開催された国際会議PIXE2013において口頭発表した。この発表に対する反響は予想よりも大きく、同会議において座長を務めた研究者から、将来の国際会議への招待を受けるなど、高い評価が得られた。これらの成果を大切にしながら、次年度の研究開発につなげたい。
KAKENHI-PROJECT-24710097
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大気中でのエアロゾル表面解析を実現するイオン顕微分光法の開発
本年度は、計画通り主要な装置の開発までを達成することができた。次年度は、本装置で得られたデータを利用して、信号処理に必要なソフトウェアの開発を進める予定である。他方で、金沢大学や産業技術総合研究所など国内の環境科学分野の研究者とも、本研究で得られた実験結果について議論することができた。特に、一部の大気中微粒子試料から得られた微生物痕跡に特有の発光は、エアロゾル表面の有機物固着を示すことが確かであれば、エアロゾル研究において非常に大きな意義を持つ。金沢大学の研究者とこの点についてより議論を深め、データを検証してゆくことで、実際のバイオエアロゾルの挙動解明に本手法がどの程度有効であるかを実証する。本年度予算の繰り越しが生じたのは、物品費として計上した小型分光装置の購入の際に計画より大幅に経費を節減できたことが主要な原因である。一方、研究成果が順調に得られたため、国際会議での発表を年度末に追加した。この際、必要な経費をやや過大に評価したため、研究費の繰り越しが生じた。これらの繰越額を利用して、当初予定していた信号処理系およびデータ解析ソフトウェアに必要な備品に追加の設備投資を行い、より効果的な実験の実施と有意義なデータ獲得に努める。
KAKENHI-PROJECT-24710097
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高分解能スペクトルと偏光特性を利用した大気気体遠隔測定手法の開発
1.地球からの近赤外太陽反射光を宇宙から観測し、大気中の気体量を遠隔測定する問題において、偏光を利用して浮遊粒子による散乱光の影響を除去するいくつかの方法を開発し。近赤外1.6μの太陽反射光を0.2cm^<-1>程度の高分解FTS(フーリエ変換型分光器)で偏光2成分について観測すること想定し、偏光を利用する場合、利用しない場合についてリトリーバルのシミュレーションを行い、前者はCO_2の遠隔測定誤差が0.5%程度減少することなどが示された。2.衛星搭載FTSによる観測においては、同じ場所を観測するため走査鏡が一定方向を見るように制御するが、これがわずかに震動し、視野内輝度が測定中変動する。この影響を実際の衛星観測画像センサによる実データを使ってシミュレーションし、CO_2測定に大きな誤差を生ずることを明らかにした。これを補正するため、分光器の測定帯域外に現われる偽のスペクトルを使って、元の観測データを補正する方法を開発した。これによって、誤差が大幅に縮小されることが計算で示された。3.地球の公転や自転運動、衛星の運航、大気の風などによって、高分解スペクトル観測において引き起こされるドップラー変位の大きさと影響を調べた。また、数秒間の観測時間中の光路差やドップラー変位の変化率についても調べた。4.地上に設置した高分解FTSによる太陽直達光観測から大気圏外太陽スペクトルのフラウンホーファー線を導出するプログラム開発を行った。またフラウンホーファー線の経時変化を調べた。5高分解FTSを使った太陽直達光観測による二酸化炭素のリトリーバル解析を開始した。直接測定との比較によって相対精度は二酸化炭素濃度の0.2%より良いことが分かった。1.地球からの近赤外太陽反射光を宇宙から観測し、大気中の気体量を遠隔測定する問題において、偏光を利用して浮遊粒子による散乱光の影響を除去するいくつかの方法を開発し。近赤外1.6μの太陽反射光を0.2cm^<-1>程度の高分解FTS(フーリエ変換型分光器)で偏光2成分について観測すること想定し、偏光を利用する場合、利用しない場合についてリトリーバルのシミュレーションを行い、前者はCO_2の遠隔測定誤差が0.5%程度減少することなどが示された。2.衛星搭載FTSによる観測においては、同じ場所を観測するため走査鏡が一定方向を見るように制御するが、これがわずかに震動し、視野内輝度が測定中変動する。この影響を実際の衛星観測画像センサによる実データを使ってシミュレーションし、CO_2測定に大きな誤差を生ずることを明らかにした。これを補正するため、分光器の測定帯域外に現われる偽のスペクトルを使って、元の観測データを補正する方法を開発した。これによって、誤差が大幅に縮小されることが計算で示された。3.地球の公転や自転運動、衛星の運航、大気の風などによって、高分解スペクトル観測において引き起こされるドップラー変位の大きさと影響を調べた。また、数秒間の観測時間中の光路差やドップラー変位の変化率についても調べた。4.地上に設置した高分解FTSによる太陽直達光観測から大気圏外太陽スペクトルのフラウンホーファー線を導出するプログラム開発を行った。またフラウンホーファー線の経時変化を調べた。5高分解FTSを使った太陽直達光観測による二酸化炭素のリトリーバル解析を開始した。直接測定との比較によって相対精度は二酸化炭素濃度の0.2%より良いことが分かった。(1)2成分の偏光に分けて観測された放射スペクトルを、いくつかの基底関数で近似展開し、雲やエアロゾルの影響を取り除き、CO_2の量を推定するプログラム開発を行い、精度等について評価した。(2)視野内でちらつく海上波による散乱光の変動や、衛星の移動中に起こるセンサーの震動等が観測スペクトルに及ぼす影響についてシミュレーション及びヘリコプターや高所からの観測によって調査し、これらが非常に大きな誤差を生む可能性があることを示した。(3)雲やエアロゾル及び地表アルベドが空間的に不均質に分布している系に適用できるような、3次元放射伝達モデルをモンテカルロの手法によって開発し、平行平板大気に対する放射モデルと比較し良好な結果を得た。(4)散乱過程を含む大気地表系放射伝達は膨大な計算量を要する。そこでここでは、モノクロマテイック放射を基準関数で展開近似するという新しい手法によって超高速計算を行う方法を開発し、その精度等について評価した。(5)本研究者が開発してきた多チャネル衛星データを圧縮する技術を使い、衛星データを数個の仮想チャネルに圧縮したものを全球CO_2発生・吸収源の逆推定計算の入力データとした場合と、リトリーバルによって得られる気柱量を入力データとした場合について、後者のデータ精度を様々に変えながら、逆推定精度を比較した。(6)シミュレーションに使用した吸収線パラメータや装置関数が現実的なものでなければならない。これらの妥当性を評価するために、高分解能フーリエ分光計により太陽直達光に吸収される大気微量成分のスペクトルの高精度観測を行った。更に、観測スペクトルのリトリーバル解析を開始した。予備的解析を行い、定性的な検討を行った。1.衛星におけるフーリエ変換型分光器による観測においては、同じ場所を観測するため走査鏡が一定方向を見るように制御するが、これがかならずしも完壁ではなく微少な震動を起し、これによって視野内輝度が測定中変動する。
KAKENHI-PROJECT-17510016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17510016
高分解能スペクトルと偏光特性を利用した大気気体遠隔測定手法の開発
この影響を実際の地球表面に衛星搭載画像センサ(ASTAR)による地表反射率の実観測データを使ってシミュレーションし、CO_2測定に大きな誤差を生ずる場所が全球に渡って多く分布していることを明らかにした。2.これを補正するため、マイクロ波など低周波の領域に現われる偽のスペクトルを使って、元の観測データを補正する方法を開発した。これによって、誤差が大幅に縮小されることがシミュレーションで示された。3.地球の公転や自転運動、衛星の運航、大気の風などによって引き起こされるドップラー変位が高分解スペクトルに及ぼす影響を調べた。また、数秒間の観測時間中の光路差やドップラー変位の変化率についても調べた。4.地上に設置した高分解フーリエ変換型分光器による太陽直達光観測から大気圏外太陽スペクトルのフラウンホーファー線を導出するプログラム開発を行った。また、実際の太陽直達光観測に適用しその有効性を評価した。5.高分解フーリエ変換型分光器により太陽直達光に吸収される二酸化炭素のスペクトルの高精度観測を行い、観測スペクトルのリトリーバル解析を開始した。航空機直接測定との比較を行った。また、典型的な夏及び冬の天候の朝から夕方までの観測データの解析を行い、その結果と気象研鉄塔の直接測定と比較を行い、同様傾向が見いだされた。更に、本観測データのリトリーバル解析の相対精度は二酸化炭素濃度の0.2%より良いことが分かった。
KAKENHI-PROJECT-17510016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17510016
銀河団超高温ガスの探査
銀河団の進化の解明を目指して、「すざく」衛星の広帯域X線分光データの解析を行った。複数の銀河団において、天体同士の衝突合体に伴って作られた超高温のガスの存在を確認した。一方、高エネルギー粒子からの非熱的硬X線放射は検出されず、従来よりも厳密な制限を得ることに成功した。さらに、準静水圧平衡の条件のもとで放射冷却下にある銀河団ガスの密度分布を計算し、観測との比較を示した。銀河団の進化の解明を目指して、「すざく」衛星の広帯域X線分光データの解析を行った。複数の銀河団において、天体同士の衝突合体に伴って作られた超高温のガスの存在を確認した。一方、高エネルギー粒子からの非熱的硬X線放射は検出されず、従来よりも厳密な制限を得ることに成功した。さらに、準静水圧平衡の条件のもとで放射冷却下にある銀河団ガスの密度分布を計算し、観測との比較を示した。本研究は、宇宙最大の天体である銀河団に注目し、X線とスニヤエフ-ゼルドヴィッチ効果の観測から銀河団のダイナミックな進化を解明することを目的としている。本年度は、主に「すざく」衛星で取得した高温銀河団のデータ解析から、銀河団同士の激しい衝突に伴って生成されると予想される超高温成分の探査を行った。まず、アーベルカタログの銀河団のうち最もガス温度が高いA2163銀河団について「すざく」の広帯域X線スペクトルを解析した。それにより、高い有意性で硬X線放射を検出することに初めて成功した。この放射の起源を調べるため、ニュートン衛星のX線データとの比較も行ったところ、温度が約14keVの熱的モデルにより観測された広帯域X線スペクトルをよく再現できることがわかった。一方、過去にRXJ1347銀河団において確認したような超高温成分は特にみられなかった。また過去にはRXTE衛星からA2163の非熱的硬X線放射の報告がなされたが、不定性が大きいという問題があった。今回、より感度の高い「すざく」衛星を用いて、非熱的放射は有意ではないことを確認した。その非熱的硬X線フラックスの上限値を電波強度と比べることでこの銀河団の平均磁場にも制限をつけた。以上のようにA2163において超高温ガスや非熱的放射が顕著でないことは、銀河団の衝突合体とガス加熱のプロセスを理解するうえで新しい手がかりを与える。この成果について、天文学会で口頭発表を行った。次に、衝突によるショック構造が顕著な1E0657銀河団について、「すざく」およびチャンドラ衛星のX線データ解析から超高温ガスの兆候を見いだした。そこで高温領域を特定し、放射の性質を明らかにするため、より詳細な解析を進めている。以上に加え、将来のASTRO-Hミッションに向けた硬X線撮像や詳細分光の観測シミュレーションを行った。これを通じて、銀河団における超高温成分まで含めた温度マッピングや衝突合体に伴うガス運動の観測可能性について検討を進めた。本研究は、宇宙最大の天体である銀河団に注目し、X線とスニヤエフーゼルドヴィッチ効果の観測から銀河団のダイナミックな進化を解明することを目的としている。本年度は主に、「すざく」衛星で取得した銀河団1EO657のデータ解析から、銀河団同士の激しい衝突に伴って生成されると予想される超高温成分の探査を行った。まず、「すざく」の広帯域X線スペクトルを解析から、硬X線放射を検出することに成功した。この放射の起源を調べるため、複数のモデルを仮定してフィッティングを行ったところ、約13keVの一温度モデル、あるいは約7keVと約17keVの放射を足し合わせた二温度モデルで広帯域X線スペクトルをよく再現できることを示した。この結果はチャンドラ衛星の高空間分解能データから構築した二次元温度分布とも矛盾しない。従って、1EO657銀河団には、衝突現象によって生成したと考えられる超高温成分が存在することが「すざく」のスペクトルデータから確認できた。一方、Swift衛星からこの天体が非熱的硬X線放射をもつことが報告されたが、不定性が大きいという問題があった。今回、より感度の高い「すざく」衛星を用いて、非熱的放射は有意ではないことがわかった。その非熱的硬X線フラックスの上限値を電波強度と比べることでこの銀河団の平均磁場にも制限をつけた。以上の成果について、学会発表を行った。また、高温銀河団A2163の「すざく」衛星による観測結果について国際会議で口頭発表した。ここまでの私の研究は、銀河団の硬X線放射の起源を突き止めるためには、従来のような単純な放射モデルでは不十分であり、超高温成分までも含めた熱的放射の詳細なモデル化が不可欠であることを示している。このことは銀河団ガスの物理状態や進化の理解において重要なインパクトをもたらす。本研究は、宇宙最大の天体である銀河団に注目し、X線や他波長の観測から銀河団のダイナミックな進化を解明することを目的としている。今年度は、国際天文学連合の依頼をうけ、銀河団のX線分光観測の基礎と最新の研究成果について招待レビュー論文を執筆した。この論文は国内外の誰もがアクセスできるオンラインジャーナルとして公開された。また、これまでに「すざく」衛星の広帯域X線観測に基づいて銀河団からの硬X線放射の起源を詳細に検討したところ、そのほとんどが熱的放射で説明でき、有意な非熱的硬X線放射はないことがわかった。
KAKENHI-PROJECT-22740124
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22740124
銀河団超高温ガスの探査
この超高温ガス・非熱的ガス探査の結果について、国際会議で招待講演を行った。次に、最大離角をもつ多重クエーサーSDSSJ1029について、Chandra衛星のX線データから重力レンズ銀河団の性質を調べた。ガス分布は不規則でかつ温度が高いことから衝突銀河団であると考えられる一方、銀河団中心領域では静水圧平衡を仮定した銀河団質量はレンズ質量と一致することがわかった。これらの結果について査読つき論文を出版した。加えて、銀河団に含まれるガスの密度分布に注目した研究も行った。銀河団は形成から十分時間が経過すると、ガスは重力ポテンシャルに緩和し、中心では放射冷却によって温度が下がるためクールコアを形成する。従来の理論では冷却が加速的に進むため宇宙年齢のうちにガスが冷え切ってしまい、観測と矛盾するという問題があった。そこで、準静水圧平衡の条件のもとで計算したクールコアのガス密度分布と観測結果との比較を進めた。その結果、密度・圧力・エントロピーの観測結果を説明できることやX線表面輝度分布が二重βモデルでよく再現できることを示した。この成果を国際会議で発表した。複数の銀河団についてX線観測データの解析を行い、超高温ガスの探査を進めることができた。すでに超高温ガスの存在を確認できた天体もある。一方で、電波SZ効果の観測データ分析の点で当初の計画からやや遅れている。24年度が最終年度であるため、記入しない。ここまでの研究から、硬X線スペクトルデータから銀河団の超高温ガスの存在を確認するためには、従来のような単純な放射モデルではなく、多温度モデルに基づいた詳細な解析が不可欠であることが分かった。そこで今後、サンプル数を増やす工夫として、電波SZ効果については文献値を参照することとし、「すざく」衛星で取得した広帯域X線データの解析とChandra衛星による二次元温度分布の構築を重点的に進める。これにより、系統的な超高温ガス探査を実現する。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22740124
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のれんの有用性に関する実証研究~日米欧比較を通じて~
本年度においては、これまでの成果を集約した形で最終的な報告書を取りまとめる段階であった。のれんの会計処理を巡る状況を調査し、その上でケース分析を通じて企業の実態を調査した。その結果を要約すると、(1)海外の大手企業(GE)において、巨額の「のれん」減損が発生するなど、のれんの巨額減損のケースが欧米において目立ち始めた。(2)一方で、日本のIFRS適用企業において今のところ、大幅なのれん減損は確認されていない。日本のIFRS適用企業の多くの企業は、企業価値(株価ベースでの)を伸ばすことに苦戦しており、M&A(企業結合)による成果を出せていないのではないか、減損の先送りをしているのではないか、という疑問が残る。こうした状況の中、2018年にIASBがのれんの会計処理の見直し(定期償却を行う方向に舵を切る)という事を印象付ける報道がなされたが、現在のところ、のれんを定期償却を行うという方向性にはなく、この点については、日本の報道各社のミスリィーディングといえる。のれんの減損タイミングについての問題は、「企業内の内部統制(ガバナンス)の問題」「監査の問題」「会計基準の問題」に集約される。この問題のアプローチの仕方として、内部統制の問題である、もしくは監査の問題である、と考え、減損の厳格化を求める方向性に既にあると考えられる。とするならば、今後、問われるのは、内部統制上の問題(「のれん」関連情報のディスクロージャーのあり方を含む)、監査の問題、さらに監査人と監督官庁(日本でいえば、金融庁、アメリカで言えばSEC)の対応が問われることになってくるであろう。少なくともこの数年以内に、のれんの定期償却が行われる、という状況にはなりえないと考えられる。積みあがってくるのれんへの対応について、日本のIFRS適用企業は、なぜ減損しないのか、という事について適正な説明が必要になる。平成27年度においては、日米欧のデータを用いて、非償却・減損アプローチにおける「のれん」の実態を検証した。具体的には、ダウ・ジョーンズ工業株30種平均(Dow)、FTSE100種総合株価指数(FTSE)、日経平均株価225社(日経平均)のうち、2015年10月末時点で時価総額が上位30社を分析対象とし、データは2006年以降(9年分)のアニュアルリポートを用いた。分析の結果、企業が巨額の減損を計上しているケースは、業績の極端な悪化、株価の低迷、もしくは買収企業の不正会計の発覚といった事態が生じた場合であった。業績が比較的好調の中で、個別のレポーティング・ユニットの業績不振を理由に、巨額の減損を計上したのはMicrosoftだけであった。減損の判断は、各レポーティング・ユニットあるいは資金生成単位で行われなければならない。しかしながら、自社の業績が全体的に上昇している状況において、企業経営者は「のれん」の減損の必要がないと判定している可能性がある。平成27年度においては、「のれん」の減損状況について大まかな調査を行うことが出来た。また、当初の研究計画で予想されている通り、『のれんの計上額増加は、企業経営者の意図的な減損損失の回避によるものではないか』ということが限定された範囲ではあるが、実証されたと考えている。平成28年度においては平成27年度に行った「のれん」の減損実態に関して引き続き調査を行った。「のれん」は現在の会計基準設定における議論の中で、ホットイッシューであり、研究も盛んにおこなわれている分野である。平成28年度、注力したのは前回検証した海外比較の分析の見直しと新規ケースの分析である。ソフトバンクがARM社を買収するなど、わが国におけるM&Aの件数および金額は増加傾向にある。一方で、東芝の事例でも分かるように、M&A後に予想していたシナジー効果が発現できず、のれんを減損させてしまうケースも多くみられるようになった。平成28年度においては、いくつかの新規事例を通じて、「のれん」減損実態の調査を行い、論文、書籍にまとめた。論文(海外プロシーディングス)としては、the 1st international conference of Economics, Business and Accountingのカンファレス内で報告し、今後の研究改善について、Macquarie大学のChris Patelから、ケースではなくデータをより多く集めて実証分析することの必要性、検証方法の明確化、先行研究との差分の明確化などの指摘を受けた。また書籍については、「M&Aの会計戦略」というタイトルで執筆しており(現在校正中)、この中では新規のケースを取り上げるとともに、企業経営の観点から見て「のれん」の管理を如何にすべきかについて論じた。現時点で次のフェーズに進むための情報は集めており、本年度はそれをまとめて行きたいと考えている。2017年度においては、M&Aの中でも、やや特殊な金融機関のM&Aについて検証していくための準備を行った。一般事業会社との比較は困難であるものの、金融機関の合併は金融システム、すなわち経済システムに与える影響も大きく、この点を踏まえた上でM&Aの研究を行う必要があると考えた。M&Aの実態について、生命保険業を中心としたケーススタディにより明らかにした。直近では、我が国の生命保険会社が海外事業展開を拡大する際の手段としてM&Aを盛んに行うようになってきた。
KAKENHI-PROJECT-15K03776
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K03776
のれんの有用性に関する実証研究~日米欧比較を通じて~
M&Aの財務リスクをコントロールするためにはM&Aを成功に導いていく必要があり、そのためには組織を統合するプロセスに慎重な対応が求められることを過去のケースに基づき明らかにした。また金融機関はよく知られているように、ソルベンシー規制、バーゼル規制などの国際的に準拠しなければならない基準値がある。こうした基準値が企業経営の意思決定にも少なからず影響をもたらしていると考えられる。例えば、国内における損害保険会社、銀行において一時期合併が相次いだのは、資本規制に対応する意味合いもあったと推察される。この研究の成果としては、金融規制の基準値(資本規制)の水準が、金融機関が受け入れ可能な形で設定されていることが多く、その水準について明確な説明がなされていないことが多いことを明らかにした。金融機関の健全性の妥当性については定量的な手段だけでなく、定性的な情報も重要になっており、自己評価に関する報告書(ORSAレポート)や、金融機関が自らリスク選好および許容量を決めるリスクアペタイトフレームワークなどが金融規制の潮流となりつつある。こうした流れの中で、金融機関がどのように説明責任を果たしていくかが問われる時代になりつつある。今回の研究では金融機関のM&Aの詳細分析にまで至らなかった。また欧米との具体的な数値データとの比較ができなかった点で、遅れている。本年度においては、これまでの成果を集約した形で最終的な報告書を取りまとめる段階であった。のれんの会計処理を巡る状況を調査し、その上でケース分析を通じて企業の実態を調査した。その結果を要約すると、(1)海外の大手企業(GE)において、巨額の「のれん」減損が発生するなど、のれんの巨額減損のケースが欧米において目立ち始めた。(2)一方で、日本のIFRS適用企業において今のところ、大幅なのれん減損は確認されていない。日本のIFRS適用企業の多くの企業は、企業価値(株価ベースでの)を伸ばすことに苦戦しており、M&A(企業結合)による成果を出せていないのではないか、減損の先送りをしているのではないか、という疑問が残る。こうした状況の中、2018年にIASBがのれんの会計処理の見直し(定期償却を行う方向に舵を切る)という事を印象付ける報道がなされたが、現在のところ、のれんを定期償却を行うという方向性にはなく、この点については、日本の報道各社のミスリィーディングといえる。のれんの減損タイミングについての問題は、「企業内の内部統制(ガバナンス)の問題」「監査の問題」「会計基準の問題」に集約される。この問題のアプローチの仕方として、内部統制の問題である、もしくは監査の問題である、と考え、減損の厳格化を求める方向性に既にあると考えられる。とするならば、今後、問われるのは、内部統制上の問題(「のれん」関連情報のディスクロージャーのあり方を含む)、監査の問題、さらに監査人と監督官庁(日本でいえば、金融庁、アメリカで言えばSEC)の対応が問われることになってくるであろう。少なくともこの数年以内に、のれんの定期償却が行われる、という状況にはなりえないと考えられる。積みあがってくるのれんへの対応について、日本のIFRS適用企業は、なぜ減損しないのか、という事について適正な説明が必要になる。今後は、減損回避を行っていることが疑われる企業のセグメントの業績について検証し、さらに企業の減損行動が、国の規制当局によって変わりうるのかどうかを検証する予定である。
KAKENHI-PROJECT-15K03776
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グリシン開裂酵素系の構造と機能に関する研究
鶏T蛋白質の部分アミノ酸配列に対応する3種類の合成オリゴヌクレオチドをプロ-ブとして、鶏肝cDNAλgt11ライブラリ-をスクリ-ニングし、全プロ-ブに陽性の7つのクロ-ンを得た。いずれもT蛋白質のクロ-ンで、最長のインサ-トを持つクロ-ン(CT5C)はT蛋白質のC末側214残基をコ-ドする領域と、3'非翻訳領域、poly(A^+)鎖を含んでいた。全長のクロ-ンを得るため、T蛋白質のN末端付近のアミノ酸配列に対応する合成オリゴヌクレオチドをプロ-ブとした同じライブラリ-の再スクリ-ニング及びCT5CcDNAをプロ-ブとした別の鶏肝cDNAλgt11ライブラリ-のスクリ-ニングを行ったが、後者でより短い多数のクロ-ンが得られたのみで、全長のものは得られなかった。CT5CcDNAをプロ-ブとして牛肝cDNAλgt10ライブラリ-をスクリ-ニングし、インサ-ト長の異なる20個のクロ-ン得た。このうち約2kbp(BT5A),1.5kbp(BT2)及び1.2kbp(BT11A)のインサ-トを持つクロ-ンを選んでシ-クエンスすると、得られたアミノ酸配列は鶏T蛋白質の対応する領域との相同性が82%と高く、これらのクロ-ンがT蛋白質のものと同定された。BT5Aは開始コドンを含む1191bpの翻訳領域(アミノ酸397残基をコ-ド)に続いて704bpの3'非翻訳領域とpoly(A^+)鎖を有していた。成熟型牛T蛋白質のN末端アミノ酸配列は現在分析中であるが、鶏T蛋白質と相同部位を並べると、約20残基の延長ペプチドを持つと予想された。この部位はミトコンドリア蛋白質延長ペプチドに見られる特性を有していた。牛T蛋白質のN末及びC末は塩基性アミノ酸に富み、他に塩基性アミノ酸のクラスタ-がいくつか見られた。これらの部位は酸性蛋白質であるH蛋白質との相互作用部位の候補となりうる。葉酸結合部位の共通配列としてthymidilate synthaseで同定されているアミノ酸配列は牛T蛋白質には見い出せなかった。鶏T蛋白質の部分アミノ酸配列に対応する3種類の合成オリゴヌクレオチドをプロ-ブとして、鶏肝cDNAλgt11ライブラリ-をスクリ-ニングし、全プロ-ブに陽性の7つのクロ-ンを得た。いずれもT蛋白質のクロ-ンで、最長のインサ-トを持つクロ-ン(CT5C)はT蛋白質のC末側214残基をコ-ドする領域と、3'非翻訳領域、poly(A^+)鎖を含んでいた。全長のクロ-ンを得るため、T蛋白質のN末端付近のアミノ酸配列に対応する合成オリゴヌクレオチドをプロ-ブとした同じライブラリ-の再スクリ-ニング及びCT5CcDNAをプロ-ブとした別の鶏肝cDNAλgt11ライブラリ-のスクリ-ニングを行ったが、後者でより短い多数のクロ-ンが得られたのみで、全長のものは得られなかった。CT5CcDNAをプロ-ブとして牛肝cDNAλgt10ライブラリ-をスクリ-ニングし、インサ-ト長の異なる20個のクロ-ン得た。このうち約2kbp(BT5A),1.5kbp(BT2)及び1.2kbp(BT11A)のインサ-トを持つクロ-ンを選んでシ-クエンスすると、得られたアミノ酸配列は鶏T蛋白質の対応する領域との相同性が82%と高く、これらのクロ-ンがT蛋白質のものと同定された。BT5Aは開始コドンを含む1191bpの翻訳領域(アミノ酸397残基をコ-ド)に続いて704bpの3'非翻訳領域とpoly(A^+)鎖を有していた。成熟型牛T蛋白質のN末端アミノ酸配列は現在分析中であるが、鶏T蛋白質と相同部位を並べると、約20残基の延長ペプチドを持つと予想された。この部位はミトコンドリア蛋白質延長ペプチドに見られる特性を有していた。牛T蛋白質のN末及びC末は塩基性アミノ酸に富み、他に塩基性アミノ酸のクラスタ-がいくつか見られた。これらの部位は酸性蛋白質であるH蛋白質との相互作用部位の候補となりうる。葉酸結合部位の共通配列としてthymidilate synthaseで同定されているアミノ酸配列は牛T蛋白質には見い出せなかった。
KAKENHI-PROJECT-01570137
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地球環境計測に適した高出力中赤外マルチパルスレーザの研究
レーザを用いたリモートセンシング技術であるライダー技術を用いて、より広範囲にわたり多種多様な気象データを高精度で観測するためには、目に優しい高出力レーザ発振技術、多波長化技術、高度な波長制御技術が必要とされる。本研究では、目に優しく高出力な2ミクロン帯中赤外マルチパルスレーザの発振波長を、高精度かつ長期的に制御する技術を確立して、マルチ気象データ(風、水蒸気、温度、大気微量成分等)を広範囲で観測可能な、パワフルなリモートセンシング技術の実現を目指す。レーザを用いたリモートセンシング技術であるライダー技術を用いて、より広範囲にわたり多種多様な気象データを高精度で観測するためには、目に優しい高出力レーザ発振技術、多波長化技術、高度な波長制御技術が必要とされる。本研究では、目に優しく高出力な2ミクロン帯中赤外マルチパルスレーザの発振波長を、高精度かつ長期的に制御する技術を確立して、マルチ気象データ(風、水蒸気、温度、大気微量成分等)を広範囲で観測可能な、パワフルなリモートセンシング技術の実現を目指す。
KAKENHI-PROJECT-19K15471
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物体の分かりやすい説明表現のための絵描き歌自動生成に関する研究
写真に写っている物体を分かりやすい表現で説明することを目指したアプリケーションとして,本研究では物体認識技術を応用した絵描き歌自動生成システムの技術開発に取り組んでいる.未知の物体を言語で表現するとき,人はよりイメージしやすい物体を用いて「○○のような」「××を△△に乗せたような」といった比喩的表現を生成する.これを機械が実現するためには,物体の外観特徴を抽象的にとらえた上で他の物体との類似性を上位レベルで評価する必要があり,人工知能の本質的な課題といえる.物体を絵描き歌のような抽象化された表現で表すとき,あるまとまりを持ったパーツの集合体として物体を領域分割する必要がある.そこで今年度は,昨年度に引き続き深層学習を用いて画像を教師無しセグメンテーションする手法を開発した.提案手法は画像ピクセルのグルーピングを行うタスクを通して,畳み込みニューラルネットワークはランダムな重みからより良いパラメータへと自己学習する.本手法は教師無し学習のみならず,一部の画像領域のラベルを指定するだけで画像全体をセグメンテーションするユーザインタラクティブな使用が可能であり,良く知られる従来手法グラフカットを適用した場合よりも性能が高いことを実験で確認した.また,本手法を用いて画像内の顕著なパターンを学習し,顕著性の高い物体の領域を検出するタスクに応用して知見をまとめ,信号処理のトップ国際会議ICASSP'2019に論文採択された.画像セグメンテーションはカラー画像に加え距離画像等の多種類のセンサ情報を統合することでより高い精度が得られる.このようなマルチモーダル画像を用いた深層学習アプローチについて知見をまとめ,Elsevier出版の書籍"Multimodal Scene Understanding 1st Edition"の第2章に寄稿した(2019年8月刊行予定).写真に写っている物体を分かりやすい表現で説明することを目指したアプリケーションとして,本研究では物体認識技術を応用した絵描き歌自動生成システムの技術開発に取り組んでいる.未知の物体を言語で表現するとき,人はよりイメージしやすい物体を用いて「○○のような」「××を△△に乗せたような」といった比喩的表現を生成する.これを機械が実現するためには,物体の外観特徴を抽象的にとらえた上で他の物体との類似性を上位レベルで評価する必要があり,人工知能の本質的な課題といえる.このような課題を達成するための物体認識技術は,ある特定の既知物体をデータベースに登録して後に照合できる機能(特定物体認識)だけでなく,未知の物体であっても,それが何のカテゴリであるかを推定できる機能(一般物体認識)が要求される.さらに,絵描き歌の素材として様々な物体を認識するためには,各物体カテゴリを代表するような一つの決まった姿勢のみを学習するのでは不十分であり,あらゆる回転姿勢の物体をさまざまな方向から観測して認識できるように学習する必要がある.そこで,今年度は,回転台を用いた撮影およびインターネット上で収集した三次元物体のCADモデルのレンダリングを用いて,物体を様々な方向から見たマルチビュー画像を学習し,物体のカテゴリと姿勢を同時に認識する手法を開発した.本研究は深層学習を用いており,物体の姿勢の教師信号を人間が与えることなく,自動的に獲得できる点が新しい.提案手法は,三次元物体検索の国際的コンペティションSHREC'17にて,二部門で世界第一位の性能を記録した.さらに,画像全体から個々の物体に喩えるための領域を自動抽出するために,画像セグメンテーション手法の開発を進めた.人による教師データ作成を必要としない教師なし学習の新たな手法を提案し,複数の既存手法との比較実験を行った.絵描き歌自動生成システムにおいて最も重要な要素技術である物体認識技術,および画像領域抽出技術の開発において,大きな進捗があった.よって,本課題は順調に進展していると判断する.第一に,回転台を用いた撮影およびインターネット上で収集した三次元物体のCADモデルのレンダリングを用いて,物体を様々な方向から見たマルチビュー画像を学習し,物体のカテゴリと姿勢を同時に認識する手法を開発した.本課題で必要となる物体認識技術は,ある特定の既知物体をデータベースに登録して後に照合できる機能(特定物体認識)だけでなく,未知の物体であっても,それが何のカテゴリであるかを推定できる機能(一般物体認識)が要求される.さらに,絵描き歌の素材として様々な物体を認識するためには,各物体カテゴリを代表するような一つの決まった姿勢のみを学習するのでは不十分であり,あらゆる回転姿勢の物体をさまざまな方向から観測して認識できるように学習する必要がある.本研究は深層学習を用いており,物体の姿勢の教師信号を人間が与えることなく,自動的に獲得できる点が新しい.提案手法は,三次元物体検索の国際的コンペティションSHREC17にて,二部門で世界第一位の性能を記録している.第二に,画像全体から個々の物体に喩えるための領域を自動抽出するために,画像セグメンテーション手法の開発を進めた.画像セグメンテーション手法は自動運転を目的とした車載カメラ画像認識分野で特に発展しているが,車,道路等といった特定の物体の領域を切り分ける車載カメラ画像認識とは異なり,本研究課題は認識対象が限定されていない.そこで,対象を限定せず,人による教師データ作成を必要としない深層学習ベースの教師なし学習手法を新たに提案した.画像セグメンテーションおよび物体領域抽出に関する複数の既存手法との比較実験を行い,提案手法の有効性を確かめた.写真に写っている物体を分かりやすい表現で説明することを目指したアプリケーションとして,本研究では物体認識技術を応用した絵描き歌自動生成システムの技術開発に取り組んでいる.未知の物体を言語で表現するとき,人はよりイメージしやすい物体を用いて「○○のような」「××を△△に乗せたような」といった比喩的表現を生成する.
KAKENHI-PROJECT-16K12455
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K12455
物体の分かりやすい説明表現のための絵描き歌自動生成に関する研究
これを機械が実現するためには,物体の外観特徴を抽象的にとらえた上で他の物体との類似性を上位レベルで評価する必要があり,人工知能の本質的な課題といえる.物体を絵描き歌のような抽象化された表現で表すとき,あるまとまりを持ったパーツの集合体として物体を領域分割する必要がある.そこで,今年度は,深層学習を用いて画像をセグメンテーションする手法を開発した.深層学習を用いた画像セグメンテーションの研究例は多く存在するが,そのほとんどが教師あり学習である.深層ニューラルネットワークの教師あり学習を行うためには膨大な学習データが必要であり,人手のアノテーションコストが大きい.また,学習データに存在するカテゴリの物体以外はセグメンテーションができないという問題がある.そこで,本研究では完全教師無しで画像のセグメンテーションを行うアルゴリズムを開発した.提案手法は畳み込みニューラルネットワークを用いるが,事前学習等の学習を一切必要としない.セグメンテーション対象のテスト画像が入力されると,画像ピクセルのグルーピングを行うタスクを通して,畳み込みニューラルネットワークはランダムな重みからより良いパラメータへと自己学習する.画像セグメンテーションのベンチマークデータセットBSDS500において,提案手法は従来手法を上回る性能を示した.本研究成果は信号処理のトップ国際会議ICASSP'2018に論文採択された.絵描き歌自動生成システムにおいて特に重要な要素技術である画像領域抽出(セグメンテーション)技術の開発において,大きな進捗があった.よって,本課題は順調に進展していると判断する.画像全体から個々の物体に喩えるための領域を自動抽出するために,画像セグメンテーション手法の開発を進めた.深層学習を用いた画像セグメンテーションの研究例は多く存在するが,そのほとんどが教師あり学習である.深層ニューラルネットワークの教師あり学習を行うためには膨大な学習データが必要であり,人手のアノテーションコストが大きい.さらに,画像セグメンテーション手法は自動運転を目的とした車載カメラ画像認識分野で特に発展しているが,車,道路等といった特定の物体の領域を切り分ける車載カメラ画像認識とは異なり,本研究課題は認識対象が限定されていない.そこで,対象を限定せず,人による教師データ作成を必要としない深層学習ベースの教師なし学習手法を新たに提案した.画像セグメンテーションのデファクトスタンダードなベンチマークデータセットBSDS500において,グラフベースセグメンテーション等の著名な従来手法を上回る性能を示した.これは大変重要な知見である.また,本研究成果は信号処理のトップ国際会議ICASSP'2018に論文採択されており,国際的に高く評価されているといえる.写真に写っている物体を分かりやすい表現で説明することを目指したアプリケーションとして,本研究では物体認識技術を応用した絵描き歌自動生成システムの技術開発に取り組んでいる.
KAKENHI-PROJECT-16K12455
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K12455
空調システムの状態予測とそれに基づく最適運転・制御に関する研究
1)空気調和における状態予測に基づく最適制御の方法に関して、状態予測に従った最適な機器の運転と、参照値を予測しつつ行うフォルト検知の2つの視点から考察を行った。2)各種予測手法による負荷予測に対し、4つの手法について系統的な検討を行った。まず、カルマンフィルターを用いて負荷予測を行い、ある程度の精度が得られることを示した。しかし、より精度を上げるには、翌日の天気等に関する何らかの情報が必要であることが判った。そこで、これらを考慮したものとして、天気予報の翌日最低気温を用いたピーク暖房負荷(立ち上がり負荷)の予測を行い、このような簡便な方法によっても、対象を限定すればある程度の予測が行えることを示した。最後に、重回帰モデル、可能性線形回帰モデルを用いた予測を行い、簡便な線形モデルによっても熱負荷のマクロ予測が可能であるとの見通しが得られた。実際には発熱条件の不規則な変動などによって予測精度は低下するはずであり、それを踏まえた上で誤差に対する当日の修正方法にも言及する必要があることを考察した。3)ビル最適化の文脈のなかでフォルト検知を位置づけ、エネルギー消費量の参照値の予測に基づくトップダウン形式の検知手法について提案を行った。そして、具体的には発見的自己組織化モデルを用いて参照値を予測し、実際の性能が参照値を有意にはずれたときにフォルトが検出できることを実データを用いた検討から確認し、本手法の有効性を示した。4)ソーラシステムを対象に負荷予測に基づく運転制御の効果を検討した。ここでは、建物の期間熱負荷が予測できた場合、これに基づいて長期蓄熱槽への熱の投入のタイミングを制御した場合のシステム性能を検討し、これによりシステムCOPを向上させることができることを示した。1)空気調和における状態予測に基づく最適制御の方法に関して、状態予測に従った最適な機器の運転と、参照値を予測しつつ行うフォルト検知の2つの視点から考察を行った。2)各種予測手法による負荷予測に対し、4つの手法について系統的な検討を行った。まず、カルマンフィルターを用いて負荷予測を行い、ある程度の精度が得られることを示した。しかし、より精度を上げるには、翌日の天気等に関する何らかの情報が必要であることが判った。そこで、これらを考慮したものとして、天気予報の翌日最低気温を用いたピーク暖房負荷(立ち上がり負荷)の予測を行い、このような簡便な方法によっても、対象を限定すればある程度の予測が行えることを示した。最後に、重回帰モデル、可能性線形回帰モデルを用いた予測を行い、簡便な線形モデルによっても熱負荷のマクロ予測が可能であるとの見通しが得られた。実際には発熱条件の不規則な変動などによって予測精度は低下するはずであり、それを踏まえた上で誤差に対する当日の修正方法にも言及する必要があることを考察した。3)ビル最適化の文脈のなかでフォルト検知を位置づけ、エネルギー消費量の参照値の予測に基づくトップダウン形式の検知手法について提案を行った。そして、具体的には発見的自己組織化モデルを用いて参照値を予測し、実際の性能が参照値を有意にはずれたときにフォルトが検出できることを実データを用いた検討から確認し、本手法の有効性を示した。4)ソーラシステムを対象に負荷予測に基づく運転制御の効果を検討した。ここでは、建物の期間熱負荷が予測できた場合、これに基づいて長期蓄熱槽への熱の投入のタイミングを制御した場合のシステム性能を検討し、これによりシステムCOPを向上させることができることを示した。
KAKENHI-PROJECT-05650563
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05650563
シグマ共役系シリコンクラスターおよびポリシランの量子物性
本研究では、ナノメートルサイズのシグマ共役系化合物であるシリコンクラスターおよび次元構造の制御されたポリシランのサイズに依存した量子物性を明らかにするために研究を行った。特に、原子数が制御された高分子やオリゴマーであるポリシラン、オリゴシランさらにはシリコン微粒子を作成しその光学応答を研究した。シリコン骨格構造が、結晶とアモルファスの2種類の試料を用いて、光学特性が構造によりどのように変化するか研究した。サイト選択励起分光で得られたスペクトルの微細構造は、シリコンクラスターや微粒子の内部構造のフォノン特性を反映した発光スペクトルになった。シリコン系ナノ構造の可視発光特性は、内部構造の結晶性に非常に敏感であった。可視発光の起源が、キャリアの量子閉込め効果に起因するものなのかまたは構造的乱れによるキャリア局在に起因するのかを、試料の内部構造と表面構造を制御することにより明確にした。さらに、ゾルーゲル法によりポリシランやオリゴシランを無機ガラス中に埋め込んだハイブリッド薄膜を作製し、その光学特性を研究した。ポリシラン薄膜やハイブリッド薄膜は、紫外線照射により光電特性が変化するが、ハイブリッド薄膜を用いた作成した光・電子機能素子は有機ポリシランのみによる素子により長寿命になった。さらに、ハイブリッド薄膜ではガラスマトリックス中に有機ポリシランを分散させるため、有機ポリシラン鎖間距離を大きくでき鎖間のエネルギー移動を抑制することが可能であることを発光の偏光依存性の測定から明らかにした。本研究では、ナノメートルサイズのシグマ共役系化合物であるシリコンクラスターおよび次元構造の制御されたポリシランのサイズに依存した量子物性を明らかにするために研究を行った。特に、原子数が制御された高分子やオリゴマーであるポリシラン、オリゴシランさらにはシリコン微粒子を作成しその光学応答を研究した。シリコン骨格構造が、結晶とアモルファスの2種類の試料を用いて、光学特性が構造によりどのように変化するか研究した。サイト選択励起分光で得られたスペクトルの微細構造は、シリコンクラスターや微粒子の内部構造のフォノン特性を反映した発光スペクトルになった。シリコン系ナノ構造の可視発光特性は、内部構造の結晶性に非常に敏感であった。可視発光の起源が、キャリアの量子閉込め効果に起因するものなのかまたは構造的乱れによるキャリア局在に起因するのかを、試料の内部構造と表面構造を制御することにより明確にした。さらに、ゾルーゲル法によりポリシランやオリゴシランを無機ガラス中に埋め込んだハイブリッド薄膜を作製し、その光学特性を研究した。ポリシラン薄膜やハイブリッド薄膜は、紫外線照射により光電特性が変化するが、ハイブリッド薄膜を用いた作成した光・電子機能素子は有機ポリシランのみによる素子により長寿命になった。さらに、ハイブリッド薄膜ではガラスマトリックス中に有機ポリシランを分散させるため、有機ポリシラン鎖間距離を大きくでき鎖間のエネルギー移動を抑制することが可能であることを発光の偏光依存性の測定から明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-11120231
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11120231
医薬品による環境汚染の実態と太陽光等の環境因子による毒性・蓄積性変動の調査
本研究では、先ず近年環境汚染が懸念されはじめた医薬品の日本の河川における汚染実態を調査し、生活雑排水や簡易浄化槽処理水が流入する二級河川で一級河川より高濃度で検出されることを明らかとした。さらに、医薬品は環境中での動態が調査されておらず、環境中における代謝分解などの受けやすさ、代謝分解物の毒性変動などは不明である。本研究では、化学物質の分解代謝にかかわる環境因子として紫外線による医薬品分解とその生物毒性変動を調査し、毒性が発現する医薬品があることを明らかにした。本研究では、先ず近年環境汚染が懸念されはじめた医薬品の日本の河川における汚染実態を調査し、生活雑排水や簡易浄化槽処理水が流入する二級河川で一級河川より高濃度で検出されることを明らかとした。さらに、医薬品は環境中での動態が調査されておらず、環境中における代謝分解などの受けやすさ、代謝分解物の毒性変動などは不明である。本研究では、化学物質の分解代謝にかかわる環境因子として紫外線による医薬品分解とその生物毒性変動を調査し、毒性が発現する医薬品があることを明らかにした。本研究は、近年環境汚染が懸念されはじめた医薬品に関して、環境動態、リスク評価を調査することを目的としている。微量でも生理活性が強い医薬品は環境中での動態が調べられていない。そのため、環境中における代謝分解などの受けやすさ、代謝分解物の毒性変動などは不明である。本研究では、化学物質の分解代謝にかかわると考えられる環境因子として、太陽光、微生物、土壌成分などによる影響を検討している。本年度は、環境因子として紫外線の影響を調べた。紫外線として302nm,254nmの波長を用いて、アセトアミノフェン、カルバマゼピン、フェニトイン、ジクロフェナック、アマンタジン等の医薬品水溶液の分解を調べた。その結果、各波長で分解されるもの、分解を受けないもとと違いが見いだされた。特に、ジクロフェナックは両波長で短時間で分解され、多くの分解生成物が産生していることをみいだした。また、分解時間、分解生成物め数も医薬品により相違した。発光性微生物を用いるMicrotox試験で各医薬品および紫外線照射後の毒性発現を調べたところ、アセトアミノフェン、フェニトインなどで毒性の増強がみられ、またジクロフェナックでは多少の毒性低下が認められた。来年度は、分解物の同定、ミジンコ遊泳阻害試験をはじめ、その他の毒性試験を行う予定である。本研究は、近年環境汚染が懸念されはじめた医薬品に関して、環境因子による変動、環境動態、リスク評価を調査することを目的としている。微量でも生理活性が強い医薬品は環境中での動態が調べられていない。そのため、環境中における代謝分解などの受けやすさ、代謝分解物の毒性変動などは不明である。本研究では、化学物質の分解代謝にかかわると考えられる環境因子として、太陽光、微生物、土壌成分などによる影響を検討している。本年度昨年度に引き続き、環境因子として紫外線の影響を調べた。紫外線として302nm,254nmの波長を用いて、アセトアミノフェン、カルバマゼピン、フェニトイン、ジクロフェナック、アマンタジン等の医薬品水溶液の分解を調べた。その結果、各波長で分解されるもの、分解を受けないもとと違いが見いだされた。特に、ジクロフェナックは両波長で短時間で分解され、多くの分解生成物が産生していることをみいだした。また、分解時間、分解生成物の数も医薬品により相違した。発光性微生物を用いるMicrotox試験で各医薬品および紫外線照射後の毒性発現を調べたところ、アセトアミノフェン、フェニトインなどで毒性の増強がみられた。本年度は、これら紫外線によって生成する物質同定を行い、フェニトインからべンゾフェノンが先制していることを見出した。ベンゾフェノンは毒性が高く、この生成が毒性増加の一因と考えられる。次年度は、さらなる光生成物の同定と、環境中での検出も行う予定である。本研究は、近年環境汚染が懸念されはじめた医薬品に関して、環境因子による変動、環境動態、リスク評価を調査することを目的としている。微量でも生理活性が強い医薬品は環境中での動態が調べられていない。そのため、環境中における代謝分解などの受けやすさ、代謝分解物の毒性変動などは不明である。本研究では、化学物質の分解代謝にかかわると考えられる環境因子として、太陽光、微生物、土壌成分などによる影響を検討している。環境因子として紫外線の影響を調べている。紫外線として地上に届くUVA, UVB、そして下水処理後の殺菌用に使用されているUVCの波長で起きる医薬品類の分解とそれに伴って生成する分解物の毒性について調べた。本年度は医薬品を増やしアセトアミノフェン、カルバマゼピン、フェニトイン、ジクロフェナック、アマンタジンの他、ファモチジン、スルファメタゾール、アンチピリン、レボフロキサシン等の医薬品水溶液の分解を調べた。その結果、UVA, B, Cで分解されるもの、分解を受けないものがあり、異なることが明らかとなった。また、分解時間、分解生成物の数も医薬品により相違した。発光性微生物を用いるMicrotox試験で各医薬品および紫外線照射後の毒性発現を調べたところ、多くの医薬品で毒性の増強、発現が認められた。また、変異原性発現をAmes試験で調べれているが、まだ発現が認められた医薬品はない。今後、医薬品類を増やし検証していく必要があると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-20590122
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20590122
重金属の溶出を防ぐ無機固化体の合成と粉砕効果
主原料として、産業副産物となる土壌(沖縄赤土や浚渫土)、高炉スラグ(CaO含有)を用い、それにセッコウ、生石灰、硫酸アルミニウムなどの試薬を添加。遊星型ボールミルで乾式混合粉砕(メカノケミカル処理)を行い、成形・加水養生して固化体を作製する。主に固化体中のエトリンガイト生成に注目し、固化体の強度(圧縮強度)やアルカリ溶出に及ぼす粉砕効果について検討する。さらに、原料にカドミウムや鉛試薬を微量添加し、重金属イオン溶出制御に及ぼす粉砕効果について検討した。(浚渫土の場合)1)原料の粉砕処理(メカノケミカル処理)は固化体の強度発現に有効である。2)原料の仮焼を行ってみたが、固化体強度は改善されない。よって、原料は仮焼せずに、メカノケミカル処理を利用し、高強度な固化体を得ることが重要と言える。(沖縄赤土の場合)1)硫酸アルミニウムの配合量を変化させることで、固化体のアルカリ溶出量(pH)を変えることができる。2)重金属のカドミウムの溶出制御効果については、高アルカリ性下ではエトリンガイトの生成も多く、固化体強度が上昇しカドミウムの溶出は抑えられた。一方、低アルカリ性下(中性)ではカドミウムが溶出しやすくなるが、粉砕処理後に作製した固化体ではカドミウムの溶出量が大きく抑えられた。3)鉛の溶出制御効果については、低アルカリ性下(中性)では鉛は溶出しにくく、高アルカリ性下では溶出しやすくなる。しかし、粉砕処理を施した固化体では鉛の溶出量が大きく抑えられた。主原料として、産業副産物となる土壌(沖縄赤土や浚渫土)、高炉スラグ(CaO含有)を用い、それにセッコウ、生石灰、硫酸アルミニウムなどの試薬を添加。遊星型ボールミルで乾式混合粉砕(メカノケミカル処理)を行い、成形・加水養生して固化体を作製する。主に固化体中のエトリンガイト生成に注目し、固化体の強度(圧縮強度)やアルカリ溶出に及ぼす粉砕効果について検討する。さらに、原料にカドミウムや鉛試薬を微量添加し、重金属イオン溶出制御に及ぼす粉砕効果について検討した。(浚渫土の場合)1)原料の粉砕処理(メカノケミカル処理)は固化体の強度発現に有効である。2)原料の仮焼を行ってみたが、固化体強度は改善されない。よって、原料は仮焼せずに、メカノケミカル処理を利用し、高強度な固化体を得ることが重要と言える。(沖縄赤土の場合)1)硫酸アルミニウムの配合量を変化させることで、固化体のアルカリ溶出量(pH)を変えることができる。2)重金属のカドミウムの溶出制御効果については、高アルカリ性下ではエトリンガイトの生成も多く、固化体強度が上昇しカドミウムの溶出は抑えられた。一方、低アルカリ性下(中性)ではカドミウムが溶出しやすくなるが、粉砕処理後に作製した固化体ではカドミウムの溶出量が大きく抑えられた。3)鉛の溶出制御効果については、低アルカリ性下(中性)では鉛は溶出しにくく、高アルカリ性下では溶出しやすくなる。しかし、粉砕処理を施した固化体では鉛の溶出量が大きく抑えられた。本研究では、主にエトリンガイト生成系での水和固化反応に着目し、原料として産業副産物となる土壌(沖縄県赤土や浚渫土)、高炉スラグ(CaO含有)を用い、それに酸化カルシウム、硫酸カルシウム等の試薬を添加、遊星型ボールミル粉砕機を用いて乾式混合粉砕(メカノケミカル処理)を行い、固化体特性(強度やアルカリ溶出性)に及ぼす粉砕効果について検討した。さらにカドミウム試薬を微量添加し、同様な固化実験を行い、重金属イオンの溶出抑制効果について検討を行った。今年度は主原料として沖縄県の赤土および高炉スラグを用いて実験し、以下のような結論を得る。1.スラグ配合量、エトリンガイト生成、固化体強度の関係(1)スラグの配合量の増加によって、ある程度の圧縮強度が得られる。(2)スラグはアルカリ溶出にほとんど影響せず、エトリンガイト生成にも影響しない。(3)エトリンガイトはアルカリ性条件下で生成するが、エトリンガイトが生成していても必ずしも高強度は得られない。高強度化には粉砕処理が必要である。(4)固化体の圧縮強度およびアルカリ溶出(pH)は、生石灰と硫酸アルミニウムの配合量の兼ね合いによってほぼ決まる。2.エトリンガイト生成と重金属溶出制御効果に及ぼす粉砕効果についての検討(1)粉砕処理(遊星型ボールミル粉砕)は固化体の強度発現に有効である。(2)粉砕処理を施した固化体では、エトリンガイトの生成とpHの増加により、重金属(Cd)溶出制御効果を持つ。主原料として、産業副産物となる土壌(沖縄赤土や浚渫土)、高炉スラグ(CaO含有)を用い、それにセッコウ、生石灰、硫酸アルミニウムなどの試薬を添加。遊星型ボールミルで乾式混合粉砕(メカノケミカル処理)を行い、成形・加水養生して固化体を作製する。主に固化体中のエトリンガイト生成に注目し、固化体の強度(圧縮強度)やアルカリ溶出に及ぼす粉砕効果について検討する。
KAKENHI-PROJECT-15510079
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15510079
重金属の溶出を防ぐ無機固化体の合成と粉砕効果
さらに、原料にカドミウムや鉛試薬を微量添加し、重金属イオン溶出制御に及ぼす粉砕効果について検討した。(浚渫土の場合)1)原料の粉砕処理(メカノケミカル処理)は固化体の強度発現に有効である。2)原料の仮焼を行ってみたが、固化体強度は改善されない。よって、原料は仮焼せずに、メカノケミカル処理を利用し、高強度な固化体を得ることが重要と言える。(沖縄赤土の場合)1)硫酸アルミニウムの配合量を変化させることで、固化体のアルカリ溶出量(pH)を変えることができる。2)重金属のカドミウムの溶出制御効果については、高アルカリ性下ではエトリンガイトの生成も多く、固化体強度が上昇しカドミウムの溶出は抑えられた。一方、低アルカリ性下(中性)ではカドミウムが溶出しやすくなるが、粉砕処理後に作製した固化体ではカドミウムの溶出量が大きく抑えられた。3)鉛の溶出制御効果については、低アルカリ性下(中性)では鉛は溶出しにくく、高アルカリ性下では溶出しやすくなる。しかし、粉砕処理を施した固化体では鉛の溶出量が大きく抑えられた。
KAKENHI-PROJECT-15510079
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15510079
遺伝子発現特性に基づくカンキツ自家不和合性遺伝子の単離
カンキツ自家不和合性遺伝子の単利を目的として蕾の発育段階の違いでサブトラクションを行い、花柱特異性によりcitT209を単利した。機能推定の結果、citT209はCu/Zn SODであると推定された。一方、カンキツの蕾にCuSO4処理することによって自家不和合性が打破される可能性を示した。更に、CuSO4により抗酸化酵素であるCu/Zn SOD遺伝子の発現量が高まることが明らかとなり、更に活性酸素が花粉の発芽および花粉管伸長を抑制することも明らかとなった。蕾へのCuSO4処理により、Cu/Zn SOD遺伝子の発現量が増大し、活性酸素の除去によって不和合性の打破効果が得られるものと推察された。本研究の最終目標は、カンキツ類の自家不和合性関連遺伝子を単離し、カンキツの自家不和合性機構の解明に資するとともに、既存品種のS遺伝子型を決定することである。昨年度作成したたカンキツの蕾の発育に伴って発現量が増大する遺伝子ライブラリー(サブトラクションライブラリー)から222クローンについて、DNAデータベース(EST、BLAST)検索を行ったところ、花器官特異的に発現している5つの遺伝子候補(citT015, citT134, citT169, citT194, citT209)を得た。そこで、これらの候補遺伝子について各花器官(花柱、子房、葯、花糸、花弁、がく)における発現解析を行ったところ、citT209のみが花柱特異的であることが明らかとなった。citT209はCu/Znスーパーオキシドジスムターゼであると推定された。これまでの我々の調査から蕾への硫酸銅あるいは硫酸亜鉛処理によって自家不和合性が打破される可能性を示しており、CuやZnを介した自家不和合性のメカニズムの存在が示唆された。本遺伝子が自己と非自己の認識に関わっているかどうかは不明であることから、機能解析と併せて各カンキツ類のS遺伝子型との対応、多型の有無等について、今後検討する予定である。また、本年度、花粉の液体培地での培養法を改良し、機能解析のためのアッセイ系も確立した。カンキツの自家不和合性関連遺伝子の単利を目的として、遺伝子発現特性(発現時期・組織特異性)を利用して、サブトラクションスクリーニングを実施した。平成24年度までに222クローンの候補遺伝子をスクリーニングし、citT015, citT134, citT169, citT194, citT209の5つを単離した。これらのうち各花器官(花柱、子房、葯、花糸、花弁、がく)における発現解析から、citT209のみが花柱特異的であることを明らかとなった。さらにBlastXによる機能推定により、citT209はCu/Znスーパーオキシドディズムターゼ(Cu/Zn SOD)であることが示唆された。Cu/Zn SODはCuやZnを活性の中心にもつ抗酸化酵素である。また平成24年度までの実験で、カンキツの蕾にCuSO4を噴霧処理することによって、自家不和合性を打破できる可能性を示した。そこで平成25年度はCuSO4噴霧処理がCu/Zn SOD遺伝子の発現に及ぼす影響をリアルタイムPCRによって調査するとともに、花粉管伸長に及ぼす活性酸素とSODの影響についても調査した。その結果、蕾へのCuSO4処理によってCu/Zn SODの発現量が高まること、一方、活性酸素が花粉の発芽および花粉管伸長を抑制することを明らかした。テッポウユリにおいて、自家受粉区で他家受粉区よりもSOD活性が高まることが報告されている(手塚, 1995)。カンキツにおいても活性酸素が花粉管伸長を阻害している可能性があり、Cu/Zn SODの発現量の増大により活性酸素が一部除去されることで不和合性の打破効果が得られるものと考えられた。本研究ではカンキツ自家不和合性あの自他の認識に関わる遺伝子の単離には至らなかったが、自家不和合性あるいは花粉管伸長には何らかの形で抗酸化メカニズムが関与することが示唆された。カンキツ自家不和合性遺伝子の単利を目的として蕾の発育段階の違いでサブトラクションを行い、花柱特異性によりcitT209を単利した。機能推定の結果、citT209はCu/Zn SODであると推定された。一方、カンキツの蕾にCuSO4処理することによって自家不和合性が打破される可能性を示した。更に、CuSO4により抗酸化酵素であるCu/Zn SOD遺伝子の発現量が高まることが明らかとなり、更に活性酸素が花粉の発芽および花粉管伸長を抑制することも明らかとなった。蕾へのCuSO4処理により、Cu/Zn SOD遺伝子の発現量が増大し、活性酸素の除去によって不和合性の打破効果が得られるものと推察された。本研究の最終目標は、カンキツ類の自家不和合性関連遺伝子を単離し、カンキツの自家不和合性機構の解明に資するとともに、既存品種のS遺伝子型を決定することである。その上で、平成23年度には、当初の予定通り、カンキツの蕾の発育に伴って発現量が増大する遺伝子ライブラリーを作成した。このライブラリーは遺伝子レベルでの引き算(サブトラクション)により作成した。現在、このcDNAライブラリーの塩基配列の網羅的解析を進めており、DNAデータベース(EST等)の検索によって機能推定・発現組織の推定を行いS遺伝子候補になり得るかどうかのフィルタリングを行っている。
KAKENHI-PROJECT-23658033
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23658033