{"text": "本節では、細胞に関する学説と細胞に関する基本構造について学びます。\n※細胞に関する学説の人物は正式名称で押さえておきましょう。\n細胞は、1665年、イギリスのロバート・フックによって発見されました。\n彼は、自作の顕微鏡を用いて、軽くて弾力のあるコルクの薄片を観察したところ、\n多数の中空の構造があることを知りました。それを修道院の小部屋(cell、セル)にみたて、細胞(cell)と呼びました。\n彼が観察したのは、死んだ植物細胞の細胞壁(さいぼうへき、cell wall)でしたが、\nその後、1674年、オランダのアントニ・ファン・レーウェンフックにより初めて生きた細菌の細胞が観察されました。\n19世紀に入ると、細胞と生命活動の関連性が気付かれ始めました。\nまず1838年、ドイツのマティアス・ヤコブ・シュライデンが植物について、\n翌1839年、ドイツのテオドール・シュワンが動物について、\n「全ての生物は細胞から成り立つ」という細胞説(cell theory)を提唱しました。\nさらに後、ドイツのルードルフ・ルートヴィヒ・カール・フィルヒョウの「全ての細胞は他の細胞に由来する」という考えにより、細胞説は浸透していきました。\n細胞の大きさはそのほとんどがあまり肉眼では見えません。顕微鏡の発達によって観察出来る分解能が高まり、細胞の内部構造が徐々に明らかになっていきました。\n細胞は生物の種類や体の部位によって様々な大きさで存在しています。\n以下に顕微鏡の分解能と細胞などの大きさを挙げます。\n[2]\n生物の細胞には、核をもたない原核細胞と、核をもつ真核細胞とがあります。\n細胞の見た目や働きは様々ですが、基本的な機能や構造は同じです。\n細胞は核(かく、nucleus)と細胞質(さいぼうしつ、cytoplasm)、それらを囲む細胞膜(さいぼうまく、cell membrane)からなります。細胞膜に包まれた内部の物質のうちから核を除いた部分のことを細胞質といいます。\nまた、核と細胞質を合わせて原形質(げんけいしつ、protoplasm)とも呼びます。つまり、細胞膜に包まれた内部の物質のことを原形質といいます。よって原形質には核も含まれます。\n細胞質には、核を始めとして、ミトコンドリアなど、様々な機能と構造をもつ小さな器官があり、これらを細胞小器官(さいぼうしょうきかん、organelle)と呼びます。\n細胞小器官同士の間は、水・タンパク質などで満たされており、これを細胞質基質(さいぼうしつ きしつ、cytoplasmic matrix)と呼びます。この細胞質基質には、酵素などのタンパク質やアミノ酸、グルコースなどが含まれています。\n細胞膜は動物にしかありません。動物細胞内部を守るためにあります。\n細胞壁は植物にしかありません。植物細胞内部を守るためにあります。\n核は、1つの細胞が普通1つもっており、核の表面には核膜(かくまく、nuclear membrane)、核の内部に染色体(chromosome)があります。\n「染色体」という名前の由来は酢酸カーミンや酢酸オルセイン液などで染色出来る現象からです。\n「染色体」の間を核液(nuclear sap)が満たしています。\n染色体は、DNAとタンパク質からなります。\nアメーバを核を含む部分と核を含まない部分とに切り分けると、核を含む部分は生き続けて増殖しますが、アメーバは切り分けたその部分に核がなかったらやがて死んでしまいます。\nこのように核は細胞の生存と増殖に必要です。核の性質を確かめる実験として、カサノリの接木実験が行われることがあります[3]。\nカサノリは、単細胞生物ですが、複雑な形態をもっています。そのため、細胞生物学や形態形成の研究において、モデル生物として利用されます。[4]。\nカサノリは核が仮根にあり、傘や柄を切除しても仮根から再び植物体を再生させることが出来るため、形態形成の実験に用いるにも都合がいいとされています[5]。\nカサノリの接木実験から、カサノリの核にはかさの形を決めるはたらきがあることがわかります。\nミトコンドリア(mitochondria)は動物と植物の細胞に存在し、長さ1μm~数μm、幅0.5μm程度の粒状の細胞小器官で、化学反応によって酸素を消費して有機物を分解しエネルギーを得る呼吸(respiration)を行います。\n葉緑体(chloroplast)は植物の細胞に存在し、直径5~10μm、厚さ2~3μmの凸レンズ形の器官で、光エネルギーを使って水と二酸化炭素から炭水化物を合成する光合成(photosynthesis)を行います。\nまた、葉緑体はクロロフィル(chlorophyll)という緑色の色素を含んでいます。葉緑体は、ミトコンドリアと同じように独自のDNAを持っています。\n液胞(えきほう、vacuole)は主に植物細胞にみられ、物質を貯蔵したり浸透圧を調節したりします。\n一重の液胞膜で包まれ、内部を細胞液(cell sap)が満たしています。\n一部の植物細胞はアントシアン(anthocyan)と呼ばれる色素を含みます。\n大腸菌などの細菌類や、ユレモなどのシアノバクテリア(ラン藻類)の細胞は、核を持ちません。\nこれらの生物の細胞も染色体とそれに含まれるDNAはもっていますが、それを包む核膜をもっていないので、核がありません。\nこのような、核のない細胞のことを原核細胞(prokaryotic cell)と呼びます。原核細胞は、真核細胞よりも小さいです。\nまた、原核細胞で出来た生物を原核生物(prokaryote)と呼びます。\nシアノバクテリアは、ミトコンドリアと葉緑体を持たない原核生物ですが、光合成を行います。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1_%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%85%B1%E9%80%9A%E3%81%AE%E5%8D%98%E4%BD%8D%EF%BC%88%E7%B4%B0%E8%83%9E%EF%BC%89"} {"text": "本節では、単細胞生物と多細胞生物の用語の意味と代表的な動物名を押さえましょう。\nアメーバ、ミドリムシ、ゾウリムシなど、個体が単一の細胞からできている生物は単細胞生物(unicellular organism)と呼ばれます。 例えばゾウリムシは、一つの細胞で、繊毛を使って泳いだり、細胞口を使って食べたり、食胞を使って消化したりしています。\n単細胞生物に対して、形や働きの異なる多くの細胞からなる生物は多細胞生物(multicellular organism)と呼ばれます。多細胞生物において、藻類や腔腸動物は、種子植物や脊椎動物に比べると簡単な構造を持っています。 例えばヒドラは、8種類約10万個の細胞からなる多細胞生物で、刺細胞で攻撃したり、腺細胞で消化液を分泌したり、消化細胞で消化を行ったりしています。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1_%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E5%80%8B%E4%BD%93%E3%81%AE%E6%88%90%E3%82%8A%E7%AB%8B%E3%81%A1%E3%81%A8%E5%A4%9A%E6%A7%98%E6%80%A7"} {"text": "高等学校生物 > 生物I > 細胞とエネルギー \n呼吸や消化など、生体内で行われる化学反応をまとめて代謝(たいしゃ、metabolism)という。\n細胞内でのエネルギーのやりとりには、仲立ちとしてATP( アデノシン三リン酸(あでのしん さんりんさん)、adenosine triphosphate)が用いられる。\nATPの構造は、ADP(アデノシン二リン酸)という物質にリン酸が結合した構造である。\nADPにリン酸を結合させる際、エネルギーが必要になる。結合によって合成されたATPは安定であり、エネルギーを蓄えることができる。そして異化によってATPのリン酸結合が切れてADPとリン酸に分解される際に、エネルギーを放出する。\n呼吸など異化(いか)の際に、ADPとリン酸からATPを合成している(「異化」については、のちの節で後述する。)。\nATPは、アデノシンという物質に、直列に3つのリン酸がついている。ATPでのリン酸どうしの結合のことを高エネルギーリン酸結合といい、リン酸間の結合が切れるときにエネルギーを放出する。\nしばしば、ATPは「エネルギーの通貨」に例えられる。\nアデノシンの構造は、アデニンという塩基にリボースという糖が結合したものである。\n分解されたADPは、再利用され、呼吸(こきゅう、respiration)によって再びATPに合成されることが可能である。\nATPのエネルギーの利用先は、生体物質の合成のほかにも、筋肉の収縮や、ホタルの発光などにも、ATPのエネルギーは用いられている。\n代謝のうち、複雑な物質を分化してエネルギーを取り出すことを異化(いか、catabolism)という。呼吸は異化であり、有機物を分解して水と炭素にしている。\nいっぽう、代謝のうち、合成する反応のことを同化(どうか、anabolism)という。同化の目的は、たとえばエネルギーを蓄えたり、あるいは体を構成する物質を生産するために行われる。例として、光合成における糖の合成は、同化である。\nふつう同化では、簡単な構造の物質を材料に、複雑な構造の物質が作られる。エネルギーが同化をするために必要である。したがって反応に用いたエネルギの一部は、合成した物質に吸収されている。\n同化によって合成物に吸収されたエネルギーを取り出して使うには、呼吸などの異化を行って分解する必要がある。\n植物のように、外界から水H2Oや二酸化炭素CO2などの無機物および、光などのエネルギーだけを取り入れて、生存できる生物を独立栄養生物(どくりつえいようせいぶつ、autotroph)という。\n植物は、光合成によって無機物を炭酸同化できるので、独立栄養生物である。\n一方、ウシなどの草食動物のように植物など他の独立栄養生物を食す必要のある生物や、ライオンやトラなどの肉食動物のように草食動物を食べる必要があったりと、ともかく他の独立栄養生物を直接的・間接的に食す必要のある生物を従属栄養生物(じゅうぞくえいようせいぶつ、heterotroph)という。いわゆる動物は、肉食動物も草食動物も、ともに、多くの動物は従属栄養生物である。\n従属栄養生物も炭酸同化や窒素同化などの同化を行っているが、それら従属栄養生物の行う同化のもとになる材料の物質は、有機物であって無機物でない。\nデンプン(starch)の分解には、硫酸水溶液などの強酸中で100℃以上の高温で分解するという方法がある。しかし、だ液(saliva)は常温付近でデンプンを分解してマルトース(maltose、麦芽糖のこと)に変える。\n特定の化学反応を促進し、自身は反応の前後で変化しない物質を触媒(しょくばい、catalyst)という。\n生物の細胞内や細胞外で触媒として作用し、生物現象を維持している物質を酵素(こうそ、enzyme)と呼ぶ。酵素はすべて有機物であり、酵素の本体はタンパク質である。先ほど説明した、だ液にも、アミラーゼ(amylase)という酵素がふくまれている。\nさて、例えば、過酸化水素水(H2O2)に二酸化マンガン(MnO2)を加えると、二酸化マンガンが触媒として作用し、水(H2O)と酸素(O2)が発生するが、\n同様に、過酸化水素水に肝臓の細胞を加えると水と酸素が発生するのだが、この理由は細胞内に含まれるカタラーゼ(catalase)と呼ばれる酵素が触媒として作用して、過酸化水素を分解して水と酸素が発生するからである。\n細胞外で働く酵素もある。\n体外から摂取したデンプン(starch)やタンパク質(protein)は、そのままでは大きすぎて小腸の細胞に吸収できないため、\n各消化器官から分泌される消化酵素によって、吸収しやすくなるように分解される。\nデンプン(starch)は、唾液(だえき、saliva)に含まれるアミラーゼ(amylase)によって、マルトース(maltose)に分解される。\nタンパク質(protein)は、胃液に含まれるペプシン(pepsin)によってペプトン(peptone)に、すい臓から分泌されるトリプシン(trypsin)によってさらに小さなアミノ酸(amino acids)に分解される。トリプシンはpH8付近が最適pH(optimum pH)である。\nヒトが持っている酵素の種類は数千種類といわれている。\n酵素が作用する相手の物質のことを基質(きしつ)という。酵素はそれぞれ反応する相手の物質が決まっており、これを基質特異性という。二酸化マンガンや白金などの無機物質では、基質特異性は見られない。基質特異性の正体は、酵素を構成しているタンパク質の立体構造によるものである。酵素の各部のうち、その酵素が基質と結合する部位のことを活性部位あるいは活性中心という。酵素は活性部位で基質と結合する。\n酵素は、酵素-基質複合体(こうそ-きしつ ふくごうたい)をつくって、基質に触媒としての働きをする。\nこのように酵素は細胞内や細胞外で作用することにより、生命現象を維持している。\n多くの酵素は、常温の付近で働く。\nまた、70℃程度以上の湯などで高温で熱してしまった酵素は、触媒の働きを失ってしまう。高温で働きを失った酵素を低温に冷ましても、もう触媒の働きは戻らない。このように、酵素が触媒の働きを失ってしまい戻らないことを失活(しっかつ)という。\nこれは、酵素のタンパク質が高温によって乱され、タンパク質の構造が崩れてしまったからである。酵素に限らず、タマゴや肉なども、高温で熱してしまうと、冷ましても常温にしても、もう働きは復活しない。この理由も、タマゴや肉のタンパク質が崩れてしまったからである。このようにタンパク質が熱で変わってしまうことを熱変性(ねつへんせい)という。\n酵素が良く働く温度は、35℃~40℃くらいである場合が多い。酵素がもっとも良く温度のことを最適温度という。最適温度は酵素の種類ごとに違う。常温付近で、やや高めの温度が最適温度である。\nいっぽう酸化マンガンなどの無機触媒では高温のほど反応速度が強く、無機触媒では最適温度は見られない。\n酵素は、特定のpH(ペーハー、ピーエイチ)で良く働く。このpHのことを最適pHという。\nたとえば、だ液にふくまれる酵素アミラーゼの最適pHは7付近である。だ液のpHは7である。胃液で働くペプシンの最適pHは2である。(ペプシンは、タンパク質を分解する酵素。) このように、酵素の最適pHは、その酵素が多く含まれる器官のpHに近い場合が多い。\nすい液にふくまれる酵素リパーゼの最適pHは9であり、すい液のpHもややアルカリ性である。(リパーゼは脂肪を分解する酵素。)\n実験として酵素濃度を一定にして、温度を一定にして、基質濃度を変えて実験すると、つぎのような結果が得られる。\n・基質濃度が低いとき、基質濃度に比例して反応速度が増える。\n・基質濃度が高い場合、酵素の数以上に基質があっても酵素-基質複合体ができすに効果がないので、基質濃度が低いときは、あまり反応速度は変わらず、反応速度はしだいに一定値になる。\nそのほか、活性部位に基質以外の物質が結合すると、基質が酵素に結合できなくなる場合がある。阻害物質が酵素の活性物質をめぐって基質と競争していると見なして、このような現象のことを競争的阻害という。\n阻害物質が活性物質以外の場所に結合しても、その結果、活性部位の構造が変わってしまう場合があり、そのため酵素-基質の結合を阻害する場合もある。このような、活性部位以外への阻害物質の結合による阻害を、非競争的阻害という。\nある種の酵素には、基質以外にも他の物質が必要な場合もある。このような酵素に協力している物質が有機物の場合で、その有機物が酵素に結合する場合、その有機物のことを補酵素(ほこうそ)という。補酵素は一般に低分子(=分子の大きさが小さい)であり、また酵素と分離しやすい。そのため半透膜(セロハンなど)を使って、補酵素を分離することができる。また、熱に対して、補酵素は、比較的、強い。\n補酵素の代表的な例として、呼吸に関わる脱水素酵素の補酵素NAD+がある。脱水素酵素は、基質から水素を取り除く。NADとは「ニコチン・アミドアデニン・ジヌクレオチド」のこと。\n脱水素酵素とNADは別の物質である。脱水素酵素とのNADという両方の物質があることで、NADが水素を受容できるようになるって、NADに水素水が結合しNADHに変わる。\n酵素に協力している物質が金属または金属イオンなどで、有機物で無い場合もある。\n(執筆準備中)\n植物は光エネルギーにより、水と二酸化炭素から、グルコースを合成している。\nこれを光合成(photosynthesis)と呼ぶ。\n光合成では、光合成の途中で光のエネルギーを使ってADPからATPを合成するが、光合成の後半の段階で植物はATPを分解してADPにして、植物はATPのエネルギーを使ってデンプンなどの有機物を合成している。\n光合成を、化学式っぽく、まとめると、下記のようになる。\nなお、光合成では一時的に葉緑体にデンプンが蓄えられるが、その後、デンプンがスクロース(ショ糖)などに分解されて維管束を通って、植物の各部位に運ばれ(「転流」という)、その各部位で消費されたり、またはデンプンに合成されて貯蔵されたりする。\n葉緑体の内部の構造には、チラコイドという膜状の構造と、ストロマという無色の基質の構造がある。\nチラコイドにある色素が光エネルギーを吸収する。この吸収のとき、特定の波長の光を吸収している。赤や青の光が葉緑体に吸収される。緑色の光は吸収しない。吸収しなかった波長の光は反射される。植物の緑色は、反射した光の色であり、光合成には使用していない光である。\n吸収した光エネルギーで、ATPの合成やNADPHの合成を行っている(「NAD」とは「ニコチン アデニン ジヌクレオチド」のことである。)。\n次の(1)~(3)の反応がチラコイドで行われる。 (4)の反応がストロマで行われる。\n(1):  光化学反応\n光エネルギの吸収は、色素のクロロフィルで吸収する。クロロフィルは活性化し、活性クロロフィルになる。クロロフィルの存在する場所は、チラコイドの膜である。\nこの反応には、光が当然に必要である。温度の影響をほとんど受けない。\n(2):  水の分解とNADPHの生成\n1の反応に伴って、活性クロロフィルから電子が飛び出す。水が分解され、酸素が発生するとともに、できた水素Hが、さらに水素イオンH+と電子e- に分解される。発生された酸素O2は、以降の反応では利用せず、このため酸素O2が排出される。\nこの反応でのHの分解から発生したe- は、チラコイドの膜上で伝達され、最終的にHとともにNADP+という物質にe- は結合し、NADPHが生成する。\n(3):  ATPの合成\n2の反応に伴って、ADPがリン酸化されATPが合成される。\n(4):  二酸化炭素の固定\nストロマで、(3)の反応で作られたATPのエネルギーも利用して、いくつもの過程を経て、植物が気孔などを使って細胞外から取り入れた二酸化炭素から、有機物(グルコース C6H12O6 )を合成する。\n生成された物質の一部が同じ物質のもどる反応経路になっており、カルビン・ベンソン回路という。\nこのカルビン・ベンソン回路の過程で、(3)の反応で作られたATPを用いている。\nこのカルビン・ベンソン回路の反応は、温度の影響を受ける。\n(※ 光合成について、くわしくは生物IIで説明する。)\nそもそも「『呼吸』とは何か?、という問題があるが、検定教科書によって説明が違うので、呼吸とは何かについては、説明を後回しにしたい。\nそれよりも重要なこととして、\nわれわれ人間の呼吸では、エネルギー源として、おもにグルコース(C6H12O6)などの炭水化物を分解することにより、生命活動に必要なエネルギーを取り出している。このグルコースの分解反応で酸素が必要なため、人間は呼吸で酸素を取り入れている。呼吸によるグルコースの分解で、グルコースに蓄えられていたエネルギーを取り出しており、さまざまな生態活動のエネルギーになっている。\n木材などの燃焼と、生物の呼吸は、酸素を使用する点と、エネルギーが放出される点では似ているが、しかし燃焼が急激に熱と光を放出してすぐに終わってしまうのに比べて、呼吸では段階的に分解することでエネルギーを取り出してATPにエネルギーを蓄えるという点で、燃焼と呼吸には違いがある。\nなお、呼吸におけるグルコースのように、呼吸につかわれてエネルギーを取り出す元になっている物質を「呼吸基質」(こきゅう きしつ)という(※ 啓林館の教科書で「呼吸基質」の紹介が見られるが、他社の教科書で見られず、あまり重要視されて無い用語である。)。\n人間や魚類の呼吸は、細胞での酸素を用いる呼吸のためであり、このときの細胞での酸素を吸って二酸化炭素をはきだす行為を呼吸(こきゅう)という。\n細胞での呼吸によるグルコースの分解は、おもにミトコンドリアで行われている。\nそのため、ミトコンドリアを持たない微生物では、呼吸の仕組みが、人間や魚類などとは違っている。\n細菌やカビなどの一部の微生物には 、必ずしも酸素を使わなくてもグルコースなどの炭水化物を分解できる生物がいる。酵母菌や乳酸菌は、そのような菌である。酵母菌によるアルコール発酵や乳酸菌による乳酸発酵などの発酵は、これらの菌が生存のために栄養から必要なエネルギーを得るために化学反応を行った結果であり、酵母菌や乳酸菌の発酵では酸素を用いていない。\nこのような、酸素を使わないでグルコースなどの有機物を分解する活動は、発酵という。\n酵母菌(こうぼきん)が、ワインなどのエタノールを作る醸造(じょうぞう)の反応も、発酵である。酵母菌は、グルコースを分解して、エタノールとともにATPを合成して,また二酸化炭素を排出している。ちなみに、パンを膨らませるイースト菌も、じつは酵母菌の一種である(※ 数研出版の教科書で「パンを膨らませる」「酵母」という言い方をしている)。(※ パンが膨らむのは、二酸化炭素によるもの。)\n化学式ぽく整理すると、係数を省略すればアルコール発酵の式は\nのようになる。\n酵母菌は、酸素がある状況下では呼吸を行うが、酸素が無い状況下で、グルコースのある状況では酵母菌は発酵を行い、発酵の結果、エタノールとともにATPを合成する。\nまた、乳酸菌(にゅうさんきん)が、チーズやヨーグルトなどを作る反応も、発酵である。乳酸菌も、グルコースを分解してチーズなどを作るとともに、ATPを合成している。\n化学式ぽく整理すると、係数を省略すれば、乳酸発酵の式は\nのようになる。\n酵母菌も乳酸菌も、発酵の結果としてATPを合成している。\nなお、酸素の無い環境のことを「嫌気」(けんき)または「嫌気的」(けんきてき)などという。いっぽう、酸素のある環境のことを「好気」(こうき)または「好気的」という。(センター試験などに出題されている。)\n「嫌気」という言い方を使うなら、アルコール発酵は、グルコースなどの有機物が嫌気的な条件のもとでアルコールに分解されることが発酵である、と言える。\n乳酸菌については、乳酸発酵は嫌気の状況下でも好気の状況下でも行われる。(※ 乳酸菌の好気での行動がそれほど重要か? と思うかもしれないが、2017年センター試験『生物』の追試験に出題されている。)\n呼吸と比べると、発酵では、同じ量のグルコースを分解した際に得られるATPの量が発酵では少なく、発酵では得られるATPの量が(呼吸で得られるATPの量の)約20分の1の量である。\n※ 専門『生物』科目で細かいことを習う。\n酵母菌(こうぼきん)のアルコール発酵での化学反応式は、まずグルコースC6H12O6からピルビン酸C3H4O3に分解される。この、グルコースからピルビン酸を得る過程を解糖系(かいとうけい、glycolysis)という。解糖系でATPが2分子つくられる。そしてピルビン酸が、無酸素の状態では酵素デカルボキシラーゼによってアセトアルデヒドCH3CHOによって分解され、そのアセトアルデヒドがNADHという物質によってエタノールC2H5OHへと変えられる。\nまとめると、アルコール発酵の反応式は、次の式である。\nグルコース1分子あたりATPが2分子できる。アルコール発酵のATPは解糖系に由来しており、それ以降はATPを産生してない。\n解糖系による、グルコースからピルビン酸ができる反応は、嫌気生物に限らず、ほとんどすべての生物の呼吸で行われている。(※ そのため、ピルビン酸は呼吸の学習における重要物質である。)\n乳酸発酵(にゅうさんはっこう)では、まずグルコースC6H12O6が解糖系によって、ピルビン酸へと分解され、このときATPが2分子できる。そしてピルビン酸がNADHによって乳酸:C3H6O3に変えられる。\n酢酸菌(さくさんきん)は、 酸素O2を用いて、エタノールを酢酸CH3COOH に変える。\n酢酸発酵では酸素を用いるため、一般的な無酸素の発酵とは区別して、酸化発酵とよぶ。\n酢酸発酵のとき、酢酸のほかに水ができる。\n呼吸は細胞質基質とミトコンドリアで起こる。とくにミトコンドリアを中心に、呼吸によって多くのATPが合成される。\n1分子のグルコースが、2分子のピルビン酸(C3H4O3)にまで分解される。この反応は細胞質基質で行われる。酵素を必要としない。ATPを2分子、生成する。反応の途中でATPを2分子消費するが、4分子のATPを生成するので、差し引き2分子のATPを生成する。\nグルコースは、まずATP2分子によってリン酸化されフルクトース二リン酸(C6化合物)になる。\nフルクトース二リン酸が二分して、グリセルアルデヒドリン酸(C3化合物)の二分子ができる。\nグリセルアルデヒドリン酸が、いくつかの反応を経て、ピルビン酸になる。この間の反応で、電子e-とプロトンH+が生じて、補酵素NADに渡されNADHになる。ここで生じたNADHはミトコンドリアに入り、あとの電子伝達系で利用される。また、ATPが4分子できる。よって、差し引きグルコース1分子につき、2分子ATPが、解糖系で生じる。\nピルビン酸が、ミトコンドリア内に入り、ミトコンドリアのマトリックスという内膜にある酵素で、ピルビン酸がコエンザイムA(CoA)と結合してアセチルCoA(活性酢酸)というC2化合物になり、段階的に分解される。二酸化炭素が、ピルビン酸がアセチルCoAになる際に生じる。\nアセチルCoA以降の反応図は回路上であって、回路のはじめにクエン酸(citric acid)が生じることから、クエン酸回路(Citric acid cycle)という。\nと変化していく。(「C6」とはC6化合物のこと。C5とはC5化合物のこと。C4も同様にC4化合物のこと。)\nこのクエン酸回路の過程でATPが2分子できる。また、電子が放出される。\nC2化合物のアセチルCoAがC6化合物のクエン酸に変化する際、クエン際回路の最後のオキサロ酢酸(C4化合物)と化合するので、炭素の収支が合う。クエン酸回路では、脱炭酸酵素や脱水素酵素の働きで、クエン酸は変化していく。\nクエン酸回路で、コハク酸(succinate)からフマル酸になる際に発生する水素は、補酵素FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)が受け取り、FADH2になる。\nコハク酸以外での脱水素反応では、NADが水素を受け取っている。(「NAD」とは「ニコチン アデニン ジヌクレオチド」のことである。)\nミトコンドリアの内膜にシトクロム(cytochrome)というタンパク質がいくつもあり、このシトクロムは電子を受け渡しできる。解糖系やクエン酸回路で生じたNADHやFADH2から、電子e-と水素イオンH+が分離し、電子はシトクロムに渡される。そしてシトクロムどうしで電子を受け渡す。このとき、H+が、いったんマトリックスから膜間にくみ出され、それから水素イオンの濃度勾配に従ってATP合成酵素を通ってマトリックス側に戻る。このH+がATP合成酵素を通る際のエネルギーを利用して、ADPからATPが生成される。最終的に生成するATPの数は、グルコース1分子あたりATPを最大で34分子を生じる(生物種によって生成数が異なる)。\nこれらの反応ではNADHなどが酸化される反応が元になってATPを生成しているので、一連の反応を酸化的リン酸化(oxidative phosphorylation)という。シトクロムのことをチトクロームともいう。\n電子e-は、最終的に酸素原子に渡され、酸化酵素の働きで水素イオンと反応し水になる。この水の生成反応のときの反応エネルギーを用いて、マトリックスの水素が膜間へと運ばれており、さきほど述べたようにATPが合成されている。\n呼吸でのATPの収支は、グルコース1分子あたり解糖系で2分子のATP、クエン酸回路で2分子ATP、電子伝達系で最大34分子ATPであり、合計で最大38分子のATPになる。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%90%86%E7%A7%91_%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E7%B4%B0%E8%83%9E%E3%81%A8%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC"} {"text": "DNA(デオキシリボ核酸、英: deoxyribonucleic acid)の構造は、ヌクレオチド (nucleotide) と呼ばれる構成単位をもち、ヌクレオチドはリン酸と糖と塩基の化合物である。ヌクレオチドの糖はデオキシリボース(deoxyribose) である。DNAでは、ヌクレオチドがいくつも結合して、二重らせん構造をつくっている。\n塩基には4種類あり、アデニン(adenin)、チミン(thymine)、シトシン(cytosine)、グアニン(guanine)という4種類の塩基である。ヌクレオチド一個に、4種の塩基のうち、どれか一個が、ふくまれる。\n生殖細胞では、減数分裂で染色体が半分になることから、遺伝子の正体とは、どうやら染色体に含まれている物質であろう、という事がモーガンなどの1913年ごろのショウジョウバエの遺伝の研究によって、突き止められていた。\n遺伝子に含まれる物質にはタンパク質や核酸(かくさん)など、さまざまな物質がある。どの物質こそが遺伝子の正体なのかを突き止める必要があった。核酸の発見は、1869年ごろ、スイスの生化学者ミーシャーによって、膿(うみ)から取り出した細胞の核に、リン酸をふくんだ物質があることが発見され、この物質はタンパク質とは異なることが調べられた。ミーシャ-の発見したのが核酸である。この当時では、まだ核酸が遺伝子の正体だとは考えられていなかった。なお、膿は、白血球を多く含む。\n1949年、オーストリアのエルヴィン・シャルガフは、\nいろいろな生物の持つDNAを抽出して調べ、どの生物でもアデニン(A)とチミン(T)とは量が等しく1:1であり、グアニン(G)とシトシン(C)とは量が等しく1:1であることを発見した。\nこのことから、シャルガフは、アデニンはチミンと結合する性質があり、グアニンはシトシンと結合する性質があると考えた。\nDNAの、このような、アデニン(A)とチミン(T)とが等量で結合する性質があること、グアニンとシトシンも等量で結合する性質があることを、まとめて、相補性(そうほせい)という。\n1953年、アメリカのジェームズ・ワトソンとイギリスのフランシス・クリックは、\nシャルガフの塩基組成の研究や、イギリスのモーリス・ウィルキンスのX線回折の研究をもとにして、研究を行った。そしてワトソンとクリックは、DNAが二重らせん構造であることを発見した。\nこれによると、2本のヌクレオチド鎖が、アデニンとチミン、グアニンとシトシンで対合し、柱状になり、それがらせん状にねじれている。\nゲノム(genome)とは、ある生物のもつ遺伝情報のすべてのことである。(※ 高校教科書では、遺伝情報としてゲノムを定義している。高校以外の教科書では、別の定義をしていることもあるので、気をつけること。)\nゲノムのすべてが遺伝子なのではなく、ゲノムの一部が遺伝子である。ヒトのDNAには塩基対が約3億個ある。しかし、そのうち遺伝子として働く部分は、約2万2千個しかない。\nヒトのゲノムを解読しようというヒトゲノムプロジェクトは、2003年に解読が完了した。ヒトゲノム解読により、ヒトの遺伝子の全体が明らかとなった。\n現在では、ヒト以外のゲノムの解読も進み、ゲノム研究が食品や医療などに応用されている。\n1869年、スイスのフリードリッヒ・ミーシェルは、\n細胞核内の物質を発見しヌクレイン(nuclein)と呼んだ。\n当時は、遺伝子の本体はタンパク質であると考えられていたが、\n今日では、ヌクレインはDNAと呼ばれ、遺伝子の本体であることが明らかになっている。\n1928年イギリスのフレデリック・グリフィスは、\n肺炎双球菌とネズミを用いて実験を行った。\n肺炎双球菌には、被膜を持っていて病原性のあるS(smooth)型菌と、被膜が無く病原性のないR(rough)型菌の2種類がある。\n被膜の有無と病原性の有無の、どちらも遺伝形質である。\n通常の菌の分裂増殖では、S型とR型との違いという遺伝形質は変わらない。\nグリフィスの実験結果は次の通り。\nこれはR型菌の形質が、加熱殺菌したS型菌に含まれる物質によって、S型菌の形質へ変化したためであり、\nこれを形質転換(transformation: nuclein)と呼ぶ。\n1943年ころ、カナダのオズワルド・アベリーは、グリフィスの実験での形質転換を起こした物質が何かを特定するため、タンパク質分解酵素とDNA分解酵素を用いて、S型菌・R型菌の実験を行った。\n実験結果\nこれによって、R型菌の形質転換を起こしたのはDNAであることがわかった。\n細菌に寄生するウイルスのことをバクテリオファージまたは単にファージという。\n1952年、アメリカのアルフレッド・ハーシーとマーサ・チェイスは、\nT2ファージというファージの一種のウイルスを用いて実験を行った。\nT2ファージは細菌に寄生して増殖するウイルスであるバクテリオファージの一種であり、\nほぼタンパク質とDNAからできている。T2ファージの頭部の中にDNAが含まれる。それ以外の外殻(がいかく)はタンパク質で出来ている。\n彼らは、放射性同位体の35S(硫黄の放射性同位体)および32P(リンの放射性同位体)を目印として用い、硫黄をふくむタンパク質には35Sで目印をつけ、32PでDNAに目印をつけた。DNAは P(リン)をふくむがS(硫黄)をふくまない。彼らの実際の実験では、タンパク質に目印をつけた実験と、DNAに目印をつけた実験とは、それぞれ別に行った。\n実験では、それらの放射性同位体をもつT2ファージを大腸菌に感染させ、さらにミキサーで撹拌し、遠心分離器で大腸菌の沈殿と、上澄みに分けた。\n大腸菌からは、32Pが多く検出され、あまり35Sは検出されなかった。このことからT2ファージのDNAが大腸菌に進入したと結論付けた。また、上澄みからはT2ファージのタンパク質が確認された。つまり上澄みはT2ファージの外殻をふくんでいる。\nさらに、この大腸菌からは、20~30分後、子ファージが出てきた。子ファージには35Sは検出されなかった。\nこれによって、DNAが遺伝物質であることが証明された。\n\n染色体の構造については、ヒストンと言う球状のタンパク質が幾つもあり、そのヒストンに繊維状のDNAが巻きつくような形で、染色体が出来ている。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%90%86%E7%A7%91_%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E9%81%BA%E4%BC%9D%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%81%A8DNA"} {"text": "細胞分裂には、通常の細胞分裂である体細胞分裂(たいさいぼう ぶんれつ)と、生殖細胞をつくる減数分裂(げんすう ぶんれつ)がある。まず、体細胞分裂について説明する。\nDNA分子は、デオキシリボースとリン酸という2つの主要な構成要素からなります。リン酸はリン酸基(H2PO4^-)として存在し、これがDNA鎖のリン残基と結合している形で構成されます。リン酸基は弱酸性を示し、水溶液中でH^+イオンを放出することができます。そのため、DNA分子は酸性の性質を持っています。\npHは水溶液の酸性またはアルカリ性を示す指標です。pH 7を中性とし、それより低い値は酸性、それより高い値はアルカリ性を示します。DNAのリン酸基のために、DNA溶液のpHは通常、酸性または中性の範囲にあります。\nただし、DNA分子が細胞内や体液中などの生体環境で存在する場合、周囲の環境や相互作用によってpHが変化することもあります。また、DNAは他の物質と相互作用して様々な形態や機能を持つことがあります。そのため、DNAの酸性性質は単純な観点からのみ評価されるものではありません。\n細胞分裂の周期は、間期(かんき)と分裂期(ぶんれつき、M期)からなる。(M期のMはMitosis。) DNAは間期に複製され2倍になっている。\n間期にDNAが複製されている。\n間期はG1期、S期、G2期からなる。\nG1期は合成準備期。\nS期は合成期。\nG2期は分裂準備期。\n細胞分裂の過程は、まず最初に、核分裂がおこる。つづいて細胞質分裂がおこる。\nM期は前期、中期、後期、終期に分けられる。\n前期にあらわれる染色体は、核内に分散していた染色体が凝縮したもの。\n分裂期に染色体が等分されるとともに、DNAも等分される。よって、分裂後の最終的な染色体数およびDNA数は、もとの細胞と同じである。\n一般に、分裂前のもとの細胞を母細胞(ぼさいぼう、ははさいぼう)という。分裂後の細胞を娘細胞(むすめさいぼう、じょうさいぼう)という。\n以上のような、細胞分裂の分裂の周期のことを細胞周期という。\n2本鎖DNAの塩基どうしの結合が、一部分、ほどける。そして、部分的に1本鎖になったDNAが2本ぶんできる。\n1本鎖のそれぞれが鋳型となって複製が始まる。それぞれの一本鎖の塩基に対応するヌクレオチドが結合して(AとT、GとCが結合)、相補的な塩基の対が出切る。そして塩基対どうしの新しい鎖のほうのヌクレオチドは、酵素のDNAポリメラーゼなどの働きによって、となりあったヌクレオチドのリン酸と糖が結合して、次々と連結していって新しい鎖ができ、よって2本鎖のDNAになる。複製前のDNAのもう一方のほうの一本鎖も同様に複製されて2本鎖になる。こうして、複製前のDNAのそれぞれの一本鎖が2本鎖のDNAになり、複製後はDNAが2個になる。\nこのような複製のしくみを半保存的複製(はんほぞんてき ふくせい)といい、アメリカのメセルソンとスタールによって1958年ごろに大腸菌と窒素の同位元素(通常の14Nと、同位元素の15N)を用いた実験で証明された。\nDNA分子は、デオキシリボースとリン酸という2つの主要な構成要素からなります。リン酸はリン酸基(H2PO4^-)として存在し、これがDNA鎖のリン残基と結合している形で構成されます。リン酸基は弱酸性を示し、水溶液中でH^+イオンを放出することができます。そのため、DNA分子は酸性の性質を持っています。\npHは水溶液の酸性またはアルカリ性を示す指標です。pH 7を中性とし、それより低い値は酸性、それより高い値はアルカリ性を示します。DNAのリン酸基のために、DNA溶液のpHは通常、酸性または中性の範囲にあります。\nただし、DNA分子が細胞内や体液中などの生体環境で存在する場合、周囲の環境や相互作用によってpHが変化することもあります。また、DNAは他の物質と相互作用して様々な形態や機能を持つことがあります。そのため、DNAの酸性性質は単純な観点からのみ評価されるものではありません。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%90%86%E7%A7%91_%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E9%81%BA%E4%BC%9D%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%81%AE%E5%88%86%E9%85%8D"} {"text": "DNAの情報をもとに最終的にタンパク質が合成される過程では、けっして直接的にDNAがタンパク質を作るのではない。\nまず、DNAの情報をもとにRNA(ribonucleic acid, リボ核酸)という1本鎖の物質に写し取られる(この段階を「転写」(てんしゃ)という)。\nまた、けっして、いきなりタンパク質を合成するのではない。まずアミノ酸を合成する。アミノ酸を合成するために、アミノ酸配列をRNAに書き込んでいる(この段階を「翻訳」(ほんやく)という)。\nDNAの塩基情報がRNAに写し取られ、そのRNAの情報をもとにタンパク質が合成される。RNAは1本鎖である。\nRNAの基本構造は、 塩基+糖+リン酸 からなるヌクレオチドである。RNAの塩基も4種類であるが、しかしDNAとはRNAは塩基と糖の種類が違う。\nRNAでは、DNAのアデニン(A)に結びつくのは、RNAのウラシル(U)であり、RNAはT(チミン)を持たない。(ウラシル、英:uracil)\nつまり、RNAの塩基は、アデニン、ウラシル、グアニン、シトシンの4種類である。\nまた、RNAの糖はリボース(英:ribose)である。\nRNAポリメラーゼの働きによって転写される。\nRNAの種類は、働きによって、メッセンジャーRNAとトランスファーRNAとリボソームRNAの3種類に分けられる。\n\nまず、DNAの塩基情報を写し取ることで合成されるRNAをメッセンジャーRNA(略記:mRNA)という。\n真核生物の場合、核内で、DNAの一部が二本にほどけて、そのうちの一本の情報がRNAに相補塩基として写し取られる。\nなお原核生物の場合、そもそも核膜が無いので、原形質の中で同様にDNAがほどけて、RNAに情報が写し取られる。\nまた、このようにDNAの情報がRNAに写し取られることを転写(てんしゃ、transcription)という。\nmRNAの塩基3個の配列が、1つのアミノ酸を指定している。この塩基3個の配列をコドン(codon)という。コドンは、すでに解読されており、この解読結果の表を「遺伝暗号表」(いでんあんごうひょう)といい、mRNAの配列で定義されている。ほとんどの生物で、遺伝暗号は共通であり、原核生物か真核生物かは問わない。\nこのように、mRNAの塩基配列にもとづいてアミノ酸が合成される過程を翻訳(ほんやく、translation)という。\n塩基3つの組をトリプレットという。DNAの塩基は4種類あるので、トリプレットは4×4×4=64種類ある。天然のアミノ酸は20種類であり、じゅうぶんにトリプレットで指定できる。もし塩基2つでアミノ酸を指定する仕組みだとすると、4×4=16となってしまい、アミノ酸の20種類には不足してしまう。\nUUU (Phe/F)フェニルアラニン\nUUC (Phe/F)フェニルアラニン\nUUA (Leu/L)ロイシン\nUUG (Leu/L)ロイシン\nUCU (Ser/S)セリン\nUCC (Ser/S)セリン\nUCA (Ser/S)セリン\nUCG (Ser/S)セリン\nUAU (Tyr/Y)チロシン\nUAC (Tyr/Y)チロシン\nUAA Ochre (終止)\nUAG Amber (終止)\nUGU (Cys/C)システイン\nUGC (Cys/C)システイン\nUGA Opal (終止)\nUGG (Trp/W)トリプトファン\nCUU (Leu/L)ロイシン\nCUC (Leu/L)ロイシン\nCUA (Leu/L)ロイシン\nCUG (Leu/L)ロイシン\nCCU (Pro/P)プロリン\nCCC (Pro/P)プロリン\nCCA (Pro/P)プロリン\nCCG (Pro/P)プロリン\nCAU (His/H)ヒスチジン\nCAC (His/H)ヒスチジン\nCAA (Gln/Q)グルタミン\nCAG (Gln/Q)グルタミン\nCGU (Arg/R)アルギニン\nCGC (Arg/R)アルギニン\nCGA (Arg/R)アルギニン\nCGG (Arg/R)アルギニン\nAUU (Ile/I)イソロイシン\nAUC (Ile/I)イソロイシン\nAUA (Ile/I)イソロイシン, (開始)\nAUG (Met/M)メチオニン, 開始[1]\nACU (Thr/T)スレオニン\nACC (Thr/T)スレオニン\nACA (Thr/T)スレオニン\nACG (Thr/T)スレオニン\nAAU (Asn/N)アスパラギン\nAAC (Asn/N)アスパラギン\nAAA (Lys/K)リシン\nAAG (Lys/K)リシン\nAGU (Ser/S)セリン\nAGC (Ser/S)セリン\nAGA (Arg/R)アルギニン\nAGG (Arg/R)アルギニン\nGUU (Val/V)バリン\nGUC (Val/V)バリン\nGUA (Val/V)バリン\nGUG (Val/V)バリン, (開始)\nGCU (Ala/A)アラニン\nGCC (Ala/A)アラニン\nGCA (Ala/A)アラニン\nGCG (Ala/A)アラニン\nGAU (Asp/D)アスパラギン酸\nGAC (Asp/D)アスパラギン酸\nGAA (Glu/E)グルタミン酸\nGAG (Glu/E)グルタミン酸\nGGU (Gly/G)グリシン\nGGC (Gly/G)グリシン\nGGA (Gly/G)グリシン\nGGG (Gly/G)グリシン\n遺伝情報は、原則としてDNA→RNA→アミノ酸→タンパク質というふうに一方向に写されていき、その逆方向は無い。この原則をセントラルドグマ(英: central dogma)という。\nメッセンジャーRNA(mRNA)は、DNAの情報を写し取るためのRNAである。また、真核生物の場合、mRNAはリボソ-ム内へ移動し、そこでトランスファーRNAを正しくならべるための鋳型(いがた)としての役割を持つ。\nトランスファーRNA(tRNA)は、リボソ-ムまでアミノ酸を運ぶためのRNAである。なので、アミノ酸がトランスファーRNAに結合している。\n後述するが、mRNAの塩基3個ぶんの並びによってアミノ酸が決定される。なので、この塩基3つぶんの情報しか、トランスファーRNAは情報をふくまず、タンパク質を構成する多くものアミノ酸の並びについての情報はふくんでいない。\nアミノ酸を正しく配列するためには、真核生物の場合、メッセンジャーRNAが必要である。\nタンパク質の合成はリボソーム(ribosome)で行われ、トランスファーRNAの運んできたアミノ酸からタンパク質をつくる合成がリボソームで行われる。リボソームのもつRNAは、mRNAとは別の系統であり、DNAにもとづく別系統のRNAをリボソ-ムが持っているので、リボソームRNA(rRNA)という。\n真核生物の場合、メッセンジャーRNAが核膜孔から出てきてリボソ-ムへ移動し、トランスファーRNAを正しく並べることで、結果的にアミノ酸を正しく並べる。\nこのように真核生物では、リボソーム内で、メッセンジャーRNAとトランスファーRNAが再会することになる。\nこのように、リボソ-ムで合成されるタンパク質でのアミノ酸の並びの決定方法は、おもにメッセンジャーRNAの配列にもとづくのであり、いっぽうリボソームRNAの配列は直接にはアミノ酸の並びの決定には関わっていない。\nトランスファーRNA(tRNA)は、リボソ-ムまでアミノ酸を運ぶためのRNAである。なので、アミノ酸がトランスファーRNAに結合している。\nトランスファーRNAには、mRNAのコドンの3塩基(トリプレット)と相補的に結合する3塩基をもち、トランスファーRNAのその3塩基の部分をアンチコドン(anticodon)という。\nトランスファーRNAに、どの種類のアミノ酸が結合するかは、RNAのアンチコドンの配列によって異なる。\n一本の、メッセンジャーRNAに対し、トランスファーRNAはいくつも作られる。なぜならトランスファーRNAのアンチコドンは、メッセンジャーRNAのたったの3つぶんの配列にしか相当しないからである。\nメッセンジャーRNAの塩基配列をもとに、トランスファーRNAのアンチコドンが決定される。メッセンジャーRNAのコドンとトランスファーRNAのコドンは、お互いに相補的であるので、配列が違うので注意。遺伝暗号表などはメッセンジャーRNAのコドンを基準としており、アンチコドンは基準にしてない。\nさて、トランスファーRNAのアミノ酸の種類は、トランスファーRNAのアンチコドンの塩基配列にもとづいており、トランスファーRNAのアンチコドンの塩基配列の決定は、メッセンジャーRNAの塩基配列のコドンにもとづいておるから、最終的に(トランスファーRNAに結合している)アミノ酸の種類の決定はメッセンジャーRNAにもとづく事になる。\nタンパク質の合成はリボソーム(ribosome)で行われ、トランスファーRNAの運んできたアミノ酸からタンパク質をつくる合成がリボソームで行われる。リボソームも、独自のRNAを持っているのでリボソームRNA(rRNA)という。\n真核生物の場合、メッセンジャーRNA(mRNA)が核から外に出てきて、トランスファーRNA(tRNA)とmRNAがリボソームで出会って、ポリペプチドをつくる。\nリボソームに移動したmRNAの塩基配列に、tRNAのアンチコドンが結合する事によって、いくつもあるtRNAの並びが正しく並ぶ。\nこのようにアミノ酸の配列を決めているのはmRNAであり、けっしてリボソームRNAの配列はアミノ酸の配列決定には関わっていない。\nまた、リボソームへ移動するRNAは、けっしてトランスファーRNAだけでない。メッセンジャーRNAも、リボソームへと移動している。\nさて、リボソ-ムで、tRNAからアミノ酸を切り離す作業が行われる。\nそしてリボソームで、アミノ酸をペプチド結合でつなぎ合わせてポリペプチド鎖をつくり、そのポリペプチド鎖が折りたたまれてタンパク質になる。\nアミノ酸を切り離されたtRNAは、mRNAからも離れ、tRNAはふたたびアミノ酸を運ぶために再利用される。\nこのように、リボソ-ムで合成されるタンパク質でのアミノ酸の並びの決定方法は、おもにメッセンジャーRNAの配列にもとづくのであり、いっぽうリボソームRNAの配列は直接にはアミノ酸の並びの決定には関わっていない。\nmRNAへの転写が行われると、転写の終わりを待たずに、転写中に、ただちにリボソームがmRNAに直接に取りつき、そこでタンパク質の合成が行われる。\n(図を追加。)\n真核生物では、DNAからRNAへの転写時に、核の中で、いったん全ての配列が転写され、そのあとに配列のいくつが除去されて、残った部分がつなぎあわされてmRNAが出来上がる。\nRNAの転写直後の、まだ何も除去されてない状態を mRNA前駆体 という。除去される部分に相当するDNA領域をイントロン(intron)という。mRNA前駆体からイントロンが取り除かれて、残って使われる部分に相当するDNA領域をエキソン(exon)という。エキソンに相当する部分どうしのRNAが繋がる。よってエキソンの領域が、タンパク質のアミノ酸配列を決めることになる。\nこのようなイントロン除去の過程をスプライシング(splicing)という。スプライシングは核の中で起きる。\nmRNAは、転写直後のRNAから、こうしてイントロンに相当する配列が除去されてエキソンに相当する配列どうしが繋がった物である。\nスプライシングが完了してmRNAになってから、mRNAは核膜孔を通って核の外へと出て行き、リボソームでのタンパク質合成に協力をする。\nある遺伝子の配列から、2種類以上のmRNAが作られる場合がある。これは、mRNA前駆体は共通だが、スプライシングの過程で、エキソン対応領域が除去される場合もあり、どのエキソンを除去するかの違いによって、最終的に出来上がるmRNAが変わってくるからである。また、いくつかのイントロン対応領域が除去されずに残る場合もある。エキソンどうしが繋がるときに、となりどうしのエキソンではなく、離れたエキソンと繋がる場合もある。\nこうして、数種類のmRNAが作られる。これを選択的スプライシング(alternative splicing)という。\nこうして少数の遺伝子から、選択的スプライシングによって多種類のmRNAが作られ、多種類のアミノ酸配列が出来て、多種類のタンパク質が作られる。\n原核生物の場合は、一般に、転写で出来た配列が、そのままmRNAになる。よって原核生物ではスプライシングは起こらず、したがってイントロンを原核生物は持たない場合が普通である。\nRNAは上述のようにタンパク質の合成に必要なので、(ウイルスなどの生物かどうか不明な物体を例外として除けば)全ての生物がRNAを持っている、と考えられている。(※ 2016年センター試験『生物基礎』追試験の赤本(教学社)の見解)\n母が赤ちゃんを出産したときに、すでに赤ちゃんが死亡していることを死産という。\nまた、出産前に、赤ちゃんが死亡することを流産という。\n死産や流産の原因はたいてい、赤ちゃんの遺伝子(DNA)の異常による先天異常だと考えられている。\n統計的に、もしも赤ちゃんが死亡せずに生きて生まれた場合における新生児の先天異常率は、統計では約2%と言われる[2]が、しかしこの「2%」はあくまで生きて生まれた赤ちゃんだけを対象にしているので、流産も含めると、実際にはその何倍もの重大な遺伝子異常をもって出産される赤ちゃんがいたのだろう、と一般的に考えられている。\n動物のメス(雌)の体には、もし赤ちゃんに重大な遺伝子疾患のある場合に、妊娠を継続させずに流産させるという自然のメカニズムが、メスの生体にそなわっているらしい[3]、と一般的に考えらている。\n先天障害のうち、ダウン症という症状は、遺伝子の異常によるものである。(※ 検定教科書の範囲外だが、参考書で数研チャート式などに書いてある)\n「男」や「女」といった生物学的な性別も、遺伝子によって決まる。\nヒトの場合、染色体のひとつに性染色体というのがあり、その性染色体が健常男性ならXYである。健常女子なら性染色体はXXである。\nしかし、まれに先天的な遺伝子異常で、XXYやXYYなどの人間が生まれてくる場合がある。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%90%86%E7%A7%91_%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E9%81%BA%E4%BC%9D%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%81%A8%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%AF%E8%B3%AA%E3%81%AE%E5%90%88%E6%88%90"} {"text": "生物が、外部環境(external milieu)が変化しても、その内部環境(ないぶかんきょう、internal milieu)(別名:体内環境)を一定に保とうとする働きを恒常性(こうじょうせい、homeostasis)(ホメオスタシス)という。\nヒトの体温が平常では37℃付近なのもホメオスタシスの一例である。恒常性には、温度、浸透圧、養分、酸素などを一定に保とうとする働きがある。\n多細胞の動物の内部環境では、細胞は血液や組織液などの体液(body fluid)で満たされている。\n体液には、血管を流れる血液(blood)、細胞間を満たす組織液(interstitial fluid)、リンパ管を流れるリンパ液(lymph)がある。\nヒトの成人の場合、体重の約60%は水分である。(※ 東京書籍の教科書で紹介。)\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%90%86%E7%A7%91_%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E4%BD%93%E6%B6%B2"} {"text": "血液の成分には、液体成分である血しょう(けっしょう, plasma、血漿)と、有形成分である赤血球(erythrocyte)・白血球(leucocyte)・血小板(platelet)の血球(blood cell)がある。\n血球には、酸素を運ぶ赤血球(erythrocyte)、体内に侵入した細菌・異物を排除する白血球(leucocyte)、血液を凝固させ止血する血小板(platelet)がある。有形成分が作られる場所については、ヒトの成人の場合、骨の内部にある骨髄(こつずい、bone marrow)で血液の有形成分が作られる。\n血液が全身の細胞へ酸素や栄養分を送ることで、細胞は活動することができる。\n血液の重さの約55%は血しょうの重さである。血しょうの主成分は水(約90%)であり、それに少量のタンパク質(約7%)やグルコース・タンパク質・脂質・無機塩類などが混ざっている。血しょうのタンパク質は、アルブミン(albumin)やグロブリン(globulin)などのタンパク質である。\n組織液は、血しょうが毛細血管(もうさいけっかん、capillary)から染み出たものである。組織液の大部分は再び血管にもどる。\n赤血球の形は、直径が約8μmの円盤状であり、中央がくぼんでいる。赤血球には核が無い。ヒトの成人の場合、血液1mm3あたりの個数は、男子は500万個/mm3、女子は450万個/mm3。ヒトの赤血球の寿命は約120日である。古くなった赤血球は肝臓や ひ臓 で壊される。骨髄で赤血球は作られる。\n赤血球にはヘモグロビン(hemoglobin)(化学式:Hb と表記)という赤い色素タンパク質が多量に含まれている。このへモグロビンが肺で酸素O2と結合して酸素を運搬する役目を持ち、全身に酸素を運んでいる。ヘモグロビンは鉄(Fe)をふくんでいる。\nヘモグロビンは、酸素濃度が高いと、酸素と結合して酸素ヘモグロビン(HbO2)となる。\nまた、酸素濃度が低いと、酸素と分離しヘモグロビンに戻る。\nこのようにして、酸素濃度の高い肺で酸素を受け取り、\n酸素濃度の低い組織へ酸素を運ぶ。\n植物では、(そもそも植物に赤血球はないし、)植物はヘモグロビンを持ってない。(※ 検定教科書には無いが、センター試験にこういう選択肢が出る。2017年の生物基礎の本試験。)\nイカなど、いくつかの動物では、銅 Cu をふくむタンパク質のヘモシアニン (Hemocyanin)が血液を介して酸素を運ぶ役目をしている動物もいる。ヘモシアニンをふくむ動物の血液は青い。この青色は銅イオンの色である。イカの青い筋は、このヘモシアニンの色である。(※ 参考文献: 文英堂『理解しやすい生物I・II』、2004年版、205ページ) ヘモシアニンをふくむ動物には、イカ・タコや貝などの軟体動物、エビ・カニなどの甲殻類に見られる。これらの動物(イカ、タコ、エビ、カニ)は、血しょう中にヘモシアニンを含んでいる。 人間の血液は、ヘモシアニンをふくまない。\nミミズと脊椎動物には、他にも共通点があり、ミミズも脊椎動物も、毛細血管をもつ(閉鎖血管系)。(※ 第一学習社の検定教科書 p.149 に記述アリ)\nいっぽう、昆虫とエビは毛細血管を持たない(開放血管系)。\nただし、下記のように相違点もある。\n脊椎動物のヘモグロビンの場所は一般に赤血球であるが、しかしミミズのヘモグロビンの場所は血しょうである。\n\n酸素ヘモグロビンを多くふくみ酸素濃度の高い血液を動脈血(arterial blood)と呼ぶ。\nヘモグロビンを多くふくみ酸素濃度の低い血液を静脈血(venous blood)と呼ぶ。\n白血球はヘモグロビンを持たない。白血球は核を持つ。リンパ球やマクロファージは白血球である。体内に侵入した細菌・異物を排除することに白血球は関わる。\n血しょうの一部は組織へしみだして組織液になり、栄養分を供給し老廃物を受け取る。\n組織液の大部分は血管へ戻り血液となり、一部はリンパ管へ入りリンパ液となる。\nリンパ液はリンパ管を通り、鎖骨下静脈で血液と合流する。\n血小板は血液の凝固に関わる。血小板は2μm~5μmほどであり、核を持たない。\n血管などが傷つくと、まず傷口に血小板が集まる。そして繊維状のタンパク質であるフィブリンがいくつも生成し、フィブリンどうしと赤血球などの血球とが絡んで血ぺい(けっぺい)ができる。血ぺいが傷口をふさぐ。このような一連の反応を血液凝固反応という。\n採血した血液を放置した場合でも、血ぺいが生じて、血ぺいが沈殿する。このときの上澄み液を血清(けっせい、serum)という。血清の色は、やや黄色がかっている。なお、注射した血清は数日すると抗体が無くなってしまい(※ チャート式生物)、また免疫記憶も生じないので(※ 東京書籍の生物基礎の教科書)、予防には役立たない。\n傷口からトロンボプラスチンが出る。これが他の凝固因子や血しょう中のカルシウムイオンCa2+とともに、プロトロンビンというタンパク質に作用して、プロトロンビンがトロンビンという酵素になる。\nトロンビンは、血しょうに溶けているフィブリノーゲンに作用して、フィブリノーゲンを繊維状のフィブリンに変える。このフィブリンが血球を絡めて血ぺい(けっぺい)をつくる。\n血友病(けつゆうびょう)という出血しても止血が始まらない病気は、血液凝固に何らかの不具合があってフィブリンをつくれなくて起きる病気である。\n血液は、心臓(heart)によって全身へ送られる。\nヒトの心臓は、右心房(right atrium)、右心室(right ventricle)、左心房(Left atrium)、左心室(Left ventricle)の4部分に分かれていて、2心房2心室である。ほ乳類の心臓は2心房2心室である。\n心筋(cardiac muscle)という筋肉でできている。\n弁によって血液の逆流を防いでいる。心臓のリズムは、右心房の上部にある洞房結節(どうぼうけっせつ)という特殊な筋肉の出す電気刺激によって作られる。\n全身から送られた血液は、大静脈(vena cava)をとおり、右心房・右心室をとおり、肺動脈(pulmonary artery)をとおり肺へと送られる。\n肺で酸素を受け取った血液は、肺静脈(pulmonary vein)をとおり、左心房・左心室をとおり、大動脈(aorta)をとおり全身へ送られる。\n肺動脈・肺・肺静脈を通る血液の流れを肺循環(pulmonary circulation)と呼び、\n大動脈・全身・大静脈を通る血液の流れを体循環(Systemic circulation)と呼ぶ。\nバッタなど昆虫やエビなど無脊椎動物(invertebrate)の血管系は、毛細血管をもたない開放血管系(かいほうけっかんけい、open blood-vascular system)である。いっぽう、魚類(pisces)・ほ乳類(mammalia)など脊椎動物(vertebrate)は毛細血管(capillary)をもち、閉鎖血管系(へいさけっかんけい、closed blood-vascular system)である。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%90%86%E7%A7%91_%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E8%A1%80%E6%B6%B2%E3%81%A8%E3%81%9D%E3%81%AE%E5%BE%AA%E7%92%B0"} {"text": "肝臓(かんぞう、liver)は腹部の右上に位置する最も大きな臓器であり、ヒトの成人では1kg以上の重さがあり、約1200g~2000gである。肝小葉(かんしょうよう)という基本単位が約50万個、集まって、肝臓が出来ている。心臓から出た血液の約4分の1は、肝臓に入る。\n肝臓の働きは、栄養分の貯蔵や分解、有害な物質の解毒、不要な物質を胆汁(たんじゅう、bile)として捨てる、などを行っている。\n肝臓には肝動脈と肝静脈のほかに、腸からの静脈の血管である肝門脈(かんもんみゃく)が肝臓を通っている。\n腸で吸収されたグルコースやアミノ酸などの栄養が肝門脈の中を流れる血液に含まれている。\nグルコースの一部は肝臓でグリコーゲンへと合成され貯蔵される。グリコーゲンは必要に応じてグルコースに分解されて、エネルギー源として消費される。このようにして、血液中のグルコースの量や濃度(血糖値、血糖量)が、一定に保たれる。\n肝臓では血しょうの主なタンパク質のアルブミン(albumin)を合成しており、また血しょう中の血液凝固に関するタンパク質であるフィブリノーゲンも肝臓で合成している。\nタンパク質の合成にはアンモニアなど有害な物質が生成するが、肝臓はアンモニアを毒性の低い尿素(にょうそ)に変えている。尿素は腎臓(じんぞう)に集められ、膀胱(ぼうこう)を経て、尿道から体外へと排出される。\n哺乳類や両生類では、アンモニアを尿素に変えてから排出する。なお、魚類は生成したアンモニアを直接、外部に放出している。まわりに水が多いため、アンモニアを直接排出しても害が少ないため、と考えられてる。鳥類やハ虫類では、尿素ではなく尿酸を合成しており、尿酸を排出する。鳥類とハ虫類とも、陸で生まれて、かたい卵で生まれる動物である。\n\nそのほか有害な物質の解毒の例としては、アルコールを分解したりしている。\n胆汁は肝臓で作られており、胆汁は胆管(bile duct)を通り、胆のう(gallbladder)へ貯蔵され、十二指腸(duodenum)へ分泌される。\n胆汁は脂肪を消化吸収しやすくする。胆汁に消化酵素は含まれていない。胆汁は脂肪を小さな粒に変える。このように脂肪を小さな粒に変えることを乳化(にゅうか)という。\n古くなった赤血球を破壊する。ヒトの胆汁中に含まれる色素のピリルビンは、古くなって破壊した赤血球に含まれていたヘモグロビンに由来している。便(大便)とともに、ピリルビンは排出される。\n合成・分解など様々な化学反応が行われるため、反応熱が発生し、体温の維持にも役立っている。\nヒトなどの高等な動物の場合、腎臓(kidney)は左右一対で背側に位置し、\n腎動脈(Renal artery)、腎静脈(renal vein)、輸尿管(ureter)が伸びている。\n血液は腎動脈・腎臓・腎静脈を通り、\n腎臓は血液中の不要な成分をろ過し尿として輸尿管・膀胱(ぼうこう、bladder)・尿道(にょうどう、urethra)を通り排出する。\n腎臓にはネフロン(nephron)と呼ばれる構造上の単位があり、\nネフロンは腎小体(じんしょうたい、renal corpuscle、マルピーギ小体)と細尿管(さいにょうかん、尿細管、腎細管, renal tubule)からなり、\n片方の腎臓あたり、ネフロンは約100万個ある。\n腎小体は、毛細血管が球状に密集している糸球体(しきゅうたい、glomerulus)と、それを囲むボーマンのう(Bowman's capsule)からなる。\n\nタンパク質以外の血漿は糸球体からボーマンのうに ろ過 されて 原尿(げんにょう、primary urine)となり、\n原尿は細尿管で、水の再吸収と、グルコースや無機塩類などの必要な成分が再吸収される。(「再吸収」も用語) グルコースは、健康なら、すべて(100%)吸収される。これらの再吸収は、ATPのエネルギーを用いた能動輸送である。\nグルコ-ス以外の、水や無機塩類の再吸収率は、体の状況に応じて再吸収率が調節されている。原則的に、血液の塩類濃度を一定に保とうとする方向に、水や塩類の再吸収率は調節されている。この再吸収率の調整の際、ホルモンが関わっている。\n原尿は集合管(しゅうごうかん、collecting duct)を通り、ここで水分が再吸収される。ナトリウムイオンは、腎細管でほとんどが再吸収される。その結果、原尿のナトリウム濃度は低い。\nそして原尿から水分が吸収されたことで、残された尿素などの老廃物や再吸収されなかったものが濃縮して尿(にょう、urine)となり、体外へ尿として排出される。なお尿素は肝臓で作られる。\nボーマンのう で こし出される原尿は、ヒトの成人男性では1日あたり約170Lもあるが、その大部分は再吸収されるので、最終的に対外に尿として排出される液量は1L~2Lほどになる。99%ほど濃縮されたことになる。\nヒトの原尿に、タンパク質は含まれない。(※ 2013年センター生物I本試験に出題。)\nヒトの原尿にアミノ酸は含まれる(※ 東京書籍の検定教科書で確認)。\n細尿管で再吸収される成分は、主に水とグルコースと無機塩類とアミノ酸など。グルコースはすべて再吸収される。\n\n※ 海水魚と淡水魚の体液の話題が、啓林館『生物基礎』と第一学習社『生物基礎』とで共通している話題である。\n淡水魚と海水魚で、尿の生成のしくみが違う。なお淡水(たんすい)とは、川や湖のように、塩分をあまり含まない水のことである。海水は、淡水ではない。\n海水と淡水では塩類濃度が違うので、尿の生成のしくみも違っていると考えられている。\n海水魚では、体液の塩類濃度が海水よりも低いのが一般である(体液が低張液、海水が高張液)。そのため、浸透によって水分が海水に取られてしまう傾向にある。なので海水魚は対策として、体内の水分を確保するため、まず海水を飲んで塩ごと水分を補給し、そして、えら から塩分を排出することで、体内の水分を確保している。\n海水魚の尿は、体液と塩類濃度が同じくらいの尿を、少量、排出する。なお、腎臓で尿を生成している。\n淡水魚の場合、もし体内に水が侵入してしまうと、体内の塩分が失われてしまうので、なので淡水魚は、体内の塩分を失わせないために、淡水魚は水をほとんど飲まない。淡水魚の えら は、塩分を吸収しやすい特殊な作りになっている。\n淡水魚の尿は、体液よりも塩類濃度のうすい尿を、多量、排出する。なお、腎臓で尿を生成している。\n水分の補給は、海水だけを飲むのだが、余分な塩分を排出する塩類腺(えんるいせん)を持ち、塩類腺から、塩分のたかい液体を排出している。腺の場所はウミガメの場合、目のところに腺があるので、陸上で観察すると、あたかも涙を流しているように見える。\nアホウドリなどの海鳥は、鼻のところに塩類腺(えんるいせん)を持つ。\n多くの無脊椎動物では、海に暮らす動物の場合でも、いっぽう川に暮らす動物の場合でも、あまり塩類濃度の調節機構が発達していない。\n例外的に、いくつかの生物では発達している。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%90%86%E7%A7%91_%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E5%86%85%E8%87%93%E3%81%A8%E4%BD%93%E5%86%85%E7%92%B0%E5%A2%83"} {"text": "ホルモン分泌で中心的な役割をしている器官は、間脳にある視床下部(ししょうかぶ、hypothalamus)と、視床下部の下にある脳下垂体である。\n脳下垂体には前葉と後葉がある。\n間脳の視床下部には、ホルモンを分泌する神経細胞があり、これを神経分泌細胞(しんけい ぶんぴつ さいぼう、neurosecretory cell)という。また、このように神経がホルモンを分泌することを神経分泌(しんけい ぶんぴつ)という。この間脳の神経分泌細胞により、脳下垂体の血管中にホルモンが分泌される。この神経分泌のホルモンは、脳下垂体のホルモンを調節するための放出ホルモン(releasing hormone)または放出抑制ホルモン(inhibiting hormone)である。\n視床下部から伸びている神経分泌細胞が、脳下垂体に作用して、脳下垂体のホルモン分泌を調節している。\n脳下垂体の前葉と後葉とで、分泌される血管の位置が違う。\n脳下垂体前葉では、視床下部にある血管に分泌し、その血管が前葉まで続いて脳下垂体に作用している。前葉からは成長ホルモン(growth hormone)などが分泌される。\nいっぽう、脳下垂体後葉では、視床下部からつながる神経伝達細胞が後葉まで続いており、後葉中の血管に、神経伝達細胞が直接、ホルモンを分泌している。\n後葉からは、水分調節に関わるバソプレシンというホルモンが分泌され、バソプレシンによって腎臓での集合管における水の再吸収などが促進される。\nヒトなどの場合、血液中の塩分濃度が低いと、Naの再吸収がホルモンによって促進される。このホルモンは鉱質コルチコイド(mineral corticoid)という。腎細管でほとんどのナトリウムが再吸収される。鉱質コルチコイドは副腎皮質から分泌されている。\n水の再吸収については、脳下垂体からバソプレシン(vasopressin)というホルモンが分泌されることによって、腎臓(じんぞう)の集合管での水の再吸収が促進される。\n塩類の過剰な摂取などで、血液中の塩類濃度が上昇して体液の浸透圧が上がったときにも、バソプレシンによって水の再吸収が促進され、塩類濃度を下げさせる。水が吸収された結果、尿の液量は少なくなり、尿は濃くなる。\n\nのどの近くにある甲状腺(こうじょうせん、thyroid gland)からはチロキシン(thyroxine)が分泌される。\nチロキシンは代謝を活性化するホルモンであり、酸素の消費やグルコースの消費が、活発になる。\n視床下部は、チロキシンの濃度を、つぎのような仕組みで調節している。\nチロキシンによって、視床下部や脳下垂体による甲状腺刺激が抑制されるという仕組みである。\n視床下部や脳下垂体は、チロキシンが多くなりすぎないように、チロキシンによってホルモンを抑制する。チロキシンによって視床下部は甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンを抑制する。また、チロキシンによって、脳下垂体は甲状腺刺激ホルモンを抑制する。こうして、チロキシン自身が最終的に、甲状腺からのチロキシン分泌を抑制するように働きかける。\n逆にチロキシンが少なくなると、視床下部や脳下垂体が、甲状腺刺激ホルモンを通して甲状腺にチロキシンを増やすように働きかける。\nチロキシンを受け取った細胞では代謝が活発になる。\nこのように、最終産物(この場合はチロキシン)が、前の段階(この場合は視床下部や脳下垂体)に働きかけることをフィードバック(feedback)という。\nフィードバックは生物学に限らず、多くの分野で見られる現象だが、とりあえず生物学を例に説明する。\nフィードッバックが前の段階を抑制する場合、負のフィードバック(negative feedback)という。ふつう、ホルモンは負のフィードバックによって、濃度などが一定の範囲内に近づくように調節されている。\n腎臓での水の再吸収に関わるバソプレシンも、負のフィードバックによって一定に保たれる。この結果、バソプレシンが人体の水分調節のためのホルモンとして働くことになる。\nいっぽう、フィードバックによって、前の段階が促進される場合を正のフィードバックという。電子機械などで見られる現象で、たとえば音声マイクとスピーカーのハウリング現象(マイクをスピーカーに近づけたときの、うるさい現象。※ うるさいので実験しないように。)などが、正のフィードバックにあたる。\nハウリングの起きる仕組みは、マイクから入力された音が、スピーカーから出て、そのスピーカーから出た音をマイクがひろってしまうので、さらにスピーカーから音が出るので、音が大きくなり、その大きくなった音をふたたびマイクがひろってしまうので、さらにスピ-カーから、もっと大きな音が出てしまい、そしてさらに・・・という、とてもうるさい現象である。\n魚類の浸透圧の調節は、えら・腸・腎臓などで行われ、\n淡水魚と海水魚の場合でその働きは異なっている。\n淡水魚の場合、水分が体内に侵入するため、\nえらや腸で無機塩類を吸収し、\n腎臓で体液より低張の尿を大量に排出する。\n海水魚の場合、水分が体外に出るため、\n海水を大量に呑み込み腸で吸収し、\n腎臓で体液と等張の尿を少量排出する。\nまた、えらから無機塩類を排出する。\n哺乳類の浸透圧の調節は、腎臓で行われる。\nまた、腎臓の働きは、間脳視床下部・脳下垂体後葉や副腎皮質(ふくじんひしつ、adrenal medulla)によって調節されている。\n水分の摂取などで、低浸透圧になった場合、副腎皮質が働く。\n副腎皮質からは鉱質コルチコイド(mineral corticoid)が分泌される。\n鉱質コルチコイドは腎臓の細尿管から無機塩類の再吸収を促進する働きがある。\n水分の不足などで、高浸透圧になった場合、\n間脳視床下部、脳下垂体後葉が働く。\n脳下垂体後葉からはバソプレシン(vasopressin)が分泌される。\nバソプレシンは腎臓の細尿管から水分の再吸収を促進する働きがある。\n血液中に含まれるグルコースを血糖(けっとう、blood glucose)という。\n健康なヒトの場合の血糖の含有量は一定の範囲に保たれ、空腹時で血液100mLあたり、ほぼ100mgという濃度である。(※ 検定教科書に普通に書いてある・)\n\n※ 検定教科書にも、「血糖」の内容は「グルコース」だと、書いてある。(啓林館や東京書籍の検定教科書などに「グルコース」だと書いてある。)\nグルコースは細胞の活動に必要な糖である。\nなお、グリコーゲンは、グルコースを貯蔵しやすく体内で変えたものであり、(※ 東京書籍、啓林館)化学構造としてはグルコースが数万個も結合した構造になっている(※ 数研出版の検定教科書版(チャート式ではない))。(なお動物だけでなく植物でもグリコーゲンで貯蔵される。) 動物の場合、肝臓や筋肉で、グリコーゲンとして貯蔵されている(※ 啓林館)。肝臓では、グリコーゲンの合成および分解が行われている。\n血糖値が低すぎたり高すぎたりすると様々な症状を引き起こすため、\nホルモンと自律神経によって一定に保たれている。\n糖は脳のエネルギー源なので、もし血糖濃度が下がりすぎてしまい、おおむね70mg/100mL以下になると(低血糖)、計算力の低下などの症状が表れ始め、60mg/mL以下になると意識障害や けいれん などの危険がある。(※ 第一学習社、東京書籍の教科書が本文で記述。なお東京書籍は60mg/100mLの数字を採用。第一学習社が70mg/mLを採用。)\n食事などで炭水化物や糖質を取ると、一時的に血糖値が上昇する。逆に、急激な運動の後などでは下がっている。\n血糖値が60mg以下(血液100mLあたり)だと、意識喪失や けいれん などが起き、危険である。運動などによって低血糖になると、間脳の視床下部が働く。\nさて、血糖の調節に関わる器官は、すい臓および視床下部である。\n視床下部は、交感神経によって、すい臓と副腎髄質を働かせる。\nグリコーゲンが、つぎの仕組みで分解されることで、グリコーゲンからグルコースが取り出され、グルコース濃度を上げる仕組みである。\nすい臓のランゲルハンス島のα細胞からはグルカゴン(glucagon)が分泌され、\n副腎髄質(ふくじんひしつ、adrenal medulla)からはアドレナリン(adrenaline)が分泌される。\nグルカゴンやアドレナリンは、グリコーゲンをグルコースへ分解させる働きがある。\nまた、視床下部は放出ホルモンで脳下垂体前葉を働かせ、脳下垂体前葉は副腎皮質刺激ホルモンで副腎皮質を働かせ、副腎皮質からアドレナリンが分泌される。\nまた、副腎皮質が分泌する糖質コルチコイド(glucocorticoid)が、タンパク質を分解させて、その分解された元タンパク質を材料としてグルコースを合成させる。糖質コルチコイドは、タンパク質をグルコースへ分解させる働きがある。\nアドレナリンやグルカゴンが、肝臓や筋肉に働きかけ、貯蔵されているグリコーゲンの分解を促進する(肝臓や筋肉にはグリコーゲンが蓄えられている。)。\nこれらの反応の結果、血糖値が上昇する。\n食事などによって高血糖になると、すい臓のランゲルハンス島のβ細胞が、血糖値の上昇を感知し、β細胞がインスリン(insulin) を分泌する。\nインスリンは、グルコースをグリコーゲンへ合成させたり、\nグルコースを細胞へ吸収・分解させたりする働きがある。\nこのインスリンが、細胞でのグルコースを用いた呼吸を促進したり、肝臓でのグリコーゲンの合成を促進するので、結果的にグルコースの消費が促進されるので、グルコースの濃度が下がり、グルコース濃度が通常の濃度に近づくという仕組みである。\nまた、間脳の視床下部でも血糖値の上昇は感知され、副交感神経の刺激を通じて、すい臓にインスリンの分泌をうながし、すい臓のランゲルハンス島β細胞がインスリンを分泌する。\nいっぽう、病気により血液100mL中の血糖値が常に200mg(「200mg/100mL」のように書く)を越えると、糖尿病(とうにょうびょう、diabetes mellitus)という病気だと判断される。[2]\n(※ 200mgの数値は高校の範囲外だが、実は東京書籍の検定教科書で200mgの数字が本文中にある。糖尿病については高校理科の範囲内、東京書籍や[3]、第一学習社など。) 健康な人では、血糖値はおおむね100~150mgの範囲内であり、空腹時は100前後だが食事などによって150mg/mL近くに上昇する(※ 第一学習社および実教出版の『生物基礎』の検定教科書に図表で記載あり)。\n糖尿病とは、すい臓からインスリンが、うまくは分泌されなくなってしまった病気である。インスリンが細胞と結合すると、グルコースを消費させる。しかし、インスリン分泌がうまくいかないと、この消費がなくなってしまい、その結果、グルコースが余る。\nその結果、原尿にグルコースが高濃度で含まれるので細尿管でのグルコース吸収が間に合わず、尿中に高濃度のグルコースが含まれて排出される。\n(もし健康なヒトなら、原尿のグルコースは、ほぼ100%再吸収されるため、尿中には高濃度のグルコースは排出されない。にもかかわらず高濃度のグルコースを含む尿が排出されるという事は、つまり病気に掛かっている事になる。)\n高血糖が長く続くと、欠陥が変性して血流が低下してしまい、その結果、眼や腎臓などの、さまざまな器官で障害を起こす。糖尿病には、このような各器官での合併症があるため、危険な病気である。\n糖尿病は、尿に糖が含まれる事自体は、あまり危険視されておらず、目が腎臓などに障害の出ることが危険視されている(※ 数研出版の見解)。\n糖尿病の分類は、大きくは二つの種類に分けられる。\nまず、インスリンを分泌する細胞そのものが破壊されていて分泌できない場合のI型糖尿病がある。若くして発症することが多い。\nもう一つは、I型とは別のなんらかの原因で、インスリンの分泌量が低下したり、インスリンに細胞が反応しなくなる場合であり、これをII型糖尿病という。肥満や喫煙・運動不足などの生活習慣病などによる糖尿病で、II型糖尿病が多く見られている。\n日本の糖尿病患者の多くはII型である。\n糖尿病の治療には、I型・II型とも、インスリンの投与が行われる。患者は、食後などに毎回、自分でインスリンを注射しなければならない。\nII型の生活習慣が原因と考えられる場合、食事の見直しや、適度な運動なども、治療に必要になる。\n糖尿病の症状として頻尿(ひんにょう)がある[4](※ 高校の範囲内)。\nこの原因は、原尿の浸透圧が血糖によって上昇したことにより、細尿管での水分の再吸収が減るためだと考えられてる[5](※ 高校の範囲外)。\nまた、頻尿などにより水分が低下するため、のどの渇きが起きる。\n血糖濃度をあげるホルモンの種類は多く仕組みも複雑である。しかし、血糖値を下げるホルモンはインスリンのみしか今のところ知られておらず、また仕組みも単純である。この事から、動物は、飢餓に適応して、血糖値の調節の機構を進化させてきたと考えられている。飽食の時代よりも、飢餓の時代のほうが、圧倒的に多かったのだろうと考えられている。\n\n変温動物は、体温調節が不完全で、体温は外部環境によって変化する。\n一方、恒温動物では、体温は、外部環境によらず、一定に保たれている。ヒトの場合、健康なら、体温は約37℃に保たれる。\n体温の調節は、ホルモンや自律神経が行っている。体温調節の中枢のある場所は、間脳の視床下部にある。\n寒さによって体温が低下すると、間脳の視床下部が働く。\n視床下部は、交感神経やホルモンによって、肝臓や筋肉の代謝を促進し、発熱量を増加させる。\nまた、交感神経によって皮膚の血管や立毛筋を縮小させ、熱放散を減少させる。また、骨格筋をふるわせることで、熱を産生する。\nまた、チロキシンやアドレナリンなどが分泌され、肝臓での物質の分解を促進して熱を産生する。\n暑さによって体温が上昇すると、間脳の視床下部が働く。\n視床下部は、交感神経によって、\n皮膚血管を拡張し、汗腺から発汗させ、熱放散を増加させる。\nまた、副交感神経によって、肝臓での物質の分解が抑制され、熱の産生を抑える。\nヒトの 「のどぼとけ」 の、すぐ下には、甲状腺という器官がある。この甲状腺は、甲状腺ホルモンというホルモンを分泌している器官である。ホルモンとは、体内のいろいろな働きを調節するための分泌物(ぶんぴぶつ)である。くわしくは、中学の保健体育で習うか、または高校生物で習う。\nさて、甲状腺ホルモンの主成分はヨウ素である。ヨウ素は、ワカメやコンブなどの海ソウに多く含まれている。\nさて、通常のヨウ素には放射能(ほうしゃのう)が無く、安全である。だが、原子力発電などの原子核分裂では、放射性のある様々な原子が作られる。その中に放射性のある特別なヨウ素も作られる場合がある。\n原子力発電などの事故などへの対策として、原子力発電所などの近隣地区に ヨウ素剤(ようそ ざい) が配布される理由は、この放射能のある特別なヨウ素が甲状腺に集まらないようにするためである。\n体内に吸収されたヨウ素は、甲状腺に集まる性質がある。なので、あらかじめ、普通のヨウ素を摂取しておけば、放射性のある特別なヨウ素を吸収しづらくなるのである。もしくは、仮に吸収してしまっても、通常のヨウ素によって、放射性のあるヨウ素が、うすめられる。\nなお、甲状腺ホルモンの働きは、体内での、さまざまな化学反応を促進(そくしん)する働きがある。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%90%86%E7%A7%91_%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E4%BD%93%E5%86%85%E7%92%B0%E5%A2%83%E3%81%AE%E8%AA%BF%E7%AF%80"} {"text": "人体各部の組織液の一部は毛細血管に戻らず、毛細リンパ管に入り、リンパ管で合流して、リンパ液になる。リンパ管は流れ着く先は、最終的には、静脈に合流する。リンパ管には逆流を防ぐための弁が、ところどころにある。リンパ管のところどころに、球状にふくらんだリンパ節がある。\nリンパ液にふくまれるリンパ球(lymphocyte)は白血球の一種であり、マクロファージとともにリンパ球は異物を攻撃して、細菌などを排除する。\nリンパ球はリンパ節で増殖する。\n外部環境から生体を守るために、異物の侵入を阻止したり、侵入した異物を白血球などが除去したりする仕組みを生体防御(せいたいぼうぎょ)と呼ぶ。\n生体防御には、免疫、血液凝固、炎症などがある。\n私たち生物の体は栄養豊富なので、もし生体防御の仕組みが無いと、あっという間に病原菌などが繁殖し、私たちは死んでしまう。そうならないのは、生体防御の仕組みが私たちを守っているからである。\n生体が異物を非自己と認識して、その異物を排除する仕組みを免疫(めんえき、immunity)と呼ぶ。\n免疫は、病原体や毒素を排除する働きを持つ。\n免疫には、白血球の食作用などの先天的に生まれつき備わっている自然免疫(innate immunity)と、いっぽう、リンパ球などが抗原抗体反応によって異物の情報を記憶して排除するという後天的に獲得される獲得免疫(acquired immunity)がある(中学の保健体育で予習しているのも、このリンパ球による抗原抗体反応)。\nなお、「RIG-I様レセプター」(リグアイようレセプター)という受容体が、専門書ではよくトル様レセプターと一緒に語られるが、しかし無セキツイ動物からはRIG-I様レセプターは発見されていない[1][2]。このようなことから、RIG-I様レセプターは進化の歴史において、獲得免疫の進化とともにRIG-I様レセプターが備わっていったと思われている。\n(※ 備考、暗記は不要: )これ以外にも、免疫の機構について一説には、上記とは別の第三・第四の弱めの免疫の機構のある可能性を主張する学説もあるが、まだ未解明のことが多く、不明点も多い。\n一説では、リンパ球による抗原抗体反応のほかにも、マクロファージなどの食細胞や樹状細胞などが弱めだが獲得免疫のような能力を獲得(?)する現象が起きる可能性もあるという学説があるが、未解明であり、正しいか間違ってるかも不明瞭であろう。(※ 学説は、正しいとは限らない。世界的な学会論文誌に掲載されてるからといって真実とは限らない。大学教科書に書いてあっても、真実とは限らない。)\n(※ 注意喚起: ) ネットには免疫についてのデマが各所にあり(2020年現在)、「大学の医学教育では第三の免疫機構が常識」(×)みたいなデマがあるので、気をつけよ。念のため専門書の医学書で確認し、医学書院『標準免疫学 第3版』(2016年2月1日 第3版 第2刷)で確認したが、人体レベルでの免疫の機構は今のところ大学医学部の教育でも「自然免疫」と「獲得免疫」の2通りだけである。\nなお「集団免疫」という医学用語があるが、これはある国や共同体などの住民たちの予防接種などによる獲得免疫によって、感染拡大の速度が遅くなるという統計の知られている事などを言っている。なので、「集団免疫」はべつに「獲得免疫」を否定するのものではない。\n解明されている事実としては、マクロファージや樹状細胞などがMHC分子によってリンパ球のT細胞にどう情報伝達するかなども解明されてきているが(MHCは高校でも習う)、けっして、これは獲得免疫を否定する結果ではない。(おそらく、デマの何割かは、これを混同している。なぜなら世間には、高校教科書レベルの基礎知識もないのに先端医療を評論したがる人も多いのである。)\nとりあえず確実な事として、高校の教科書でも習う、「リンパ球に獲得免疫の能力がある」という事は確実なので、高校生はまず、確実な定説から勉強しよう。\n自然免疫は、好中球(neutrophil)、マクロファージ(単球)、樹状細胞(dendritic cell)、リンパ球といった白血球(leukocyte)が、病原体などの異物を食べる現象である食作用(Phagocytosis)で行われる。食べられた異物は、分解されて排除される。\n好中球は自然免疫で、異物を食べて、除去する。攻撃した相手とともに死んでしまう細胞である。そのため寿命は短い。\nケガをしたときに傷口にできる膿は、好中球が死んだものである。\n自然免疫で異物を食べる。あとで説明する獲得免疫に、異物の情報をつたえる。\n近年、マクロファージや好中球などは、ある程度は異物の種類を認識している事が分かった。マクロファージや好中球や好中球などの細胞膜表面にはトル様受容体(TLR)という受容体がある。\nトル様受容体には、いくつかの種類があり、反応できる異物の種類が、トル受容体の種類ごとに、ある程度、(反応できる異物の種類が)限られている。\nあるトル様受容体(TLR9)は、ウイルスのDNAやRNAを認識する。また他のあるトル様受容体(TLR2)は、細胞膜や細胞壁の成分を認識する。\n(※ 読者への注意: TLR9などの具体的な番号は覚えなくてよい。ウィキブックス編集者が査読しやすいように補記してあるだけである。)\nべん毛タンパク質を認識するトル様受容体(TLR5)もある。\n\n出血したときは、血小板などの働きによってフィブリン(fibrin)と呼ばれる繊維状のタンパク質が合成され、\nフィブリンが血球と絡み合って血餅(けっぺい, clot)となり止血する。\nだ液(saliva)は弱酸性、胃液は強酸性などのように、外界と接する体液は、中性ではない体液によって、雑菌の繁殖を防いでいる。\nまた、ヒトの場合、皮膚は弱酸性である(※ 2016年センター『生物基礎』に出た)。これら酸性の環境によって、雑菌の繁殖を防いでいると思われる。\n獲得免疫には、後述する「体液性免疫」(たいえきせい めんえき、humoral immunity)と「細胞性免疫」(さいぼうせい めんえき、cell-mediated immunity)がある。\n免疫グロブリンは、血液などの体液中に含まれている。\n体液性免疫は、リンパ球の一部であるB細胞が、免疫グロブリンといわれる抗体(こうたい、antibody)を作り、(体液性免疫を)行う。抗体は免疫グロブリン(immunoglobulin、Igと略記)というタンパク質で構成されている。\nいっぽう、病原体などの異物に対して抗体が作られた時、その異物を抗原(こうげん、antigen)と呼ぶ。\n抗原と抗体が反応することを抗原抗体反応(antigen-antibody reaction)と呼ぶ。\n病原体などの抗原は、抗体と結合することで、毒性が低下し、また凝集するので、(リンパ球以外の)白血球による食作用を受けやすくなる。\n※ なお、この文でいう「食作用」とは要するに、リンパ球以外の白血球が、細菌などを食べてしまうこと。抗体の結合した細菌などを、「白血球が食べる」的な意味。\n免疫グロブリンによる免疫は、体液中の抗体による免疫なので、体液性免疫という。\n免疫グロブリンはY字型をしたタンパク質である。\n免疫グロブリンの構造は、H鎖とL鎖といわれる2種類のポリペプチドが2個ずつ結合した構造になっている。図のように、免疫グロブリンは、合計4本のポリペプチドから構成されている。\nH鎖とL鎖の先端部には可変部(かへんぶ、variable region)という抗体ごとに(免疫グロブリンの可変部の)アミノ酸配列の変わる部分があり、この部分(可変部)が特定の抗原と結合する。そして免疫グロブリンの可変部が抗原と結合することにより、免疫機能は抗原を認識して、一連の免疫反応をする。可変部の配列によって、認識する抗原の構造が異なる。\n1種類の抗原に対応する抗体は1種類だけであるが、しかし上述のように可変部が変わりうるので、多種多様な抗原に対応できる仕組みになっている。\n免疫グロブリンの構造において、可変部以外のほかの部分は定常部(ていじょうぶ、constant region)という。\nまた、H鎖同士、H鎖とL鎖はジスルフィド(S-S)結合でつながっている。\nそもそも免疫グロブリンはB細胞で産生される。免疫グロブリンの可変部の遺伝子も、元はと言えばB細胞の遺伝子が断片的に選択されて組み合わさったものである。このような遺伝子配列の組み合わせによって、配列のパターンが膨大に増えて何百万とおりにもなるので、このような仕組みによって多種多様な病原体(抗原)に対応している。\nより細かく言うと、下記のような順序で、産生される。\n樹状細胞などの食作用によって分解された断片が、抗原として提示される(抗原提示)。そして、その抗原が、ヘルパーT細胞(ヘルパーティーさいぼう、helper T cell)によって認識される。\n抗原を認識したヘルパーT細胞は活性化し、B細胞(ビーさいぼう)の増殖を促進する。\n増殖したB細胞が、抗体産生細胞(こうたい さんせいさいぼう)へと分化する。\nそして抗体産生細胞が、抗体として免疫グロブリンを産生する。\nこの抗体が、抗原と特異的に結合する(抗原抗体反応)。\n抗原抗体反応によって、抗体と結合された抗原は毒性が弱まり、またマクロファージによって認識されやすくなり、マクロファージの食作用によって抗原が分解されるようになる。\nヒトの遺伝子は数万種類であるといわれているが(※ 参考文献: 東京書籍の教科書、平成24検定版)、しかし抗体の種類はそれを膨大に上回り、抗体は数百万種類ていどにも対応する。\nその仕組みは、B細胞の遺伝子から、選択的に抗体の遺伝子が選ばれるという仕組みになっている。この辺の抗体の種類の計算の仕組みは、1970年代ごろに日本人の生物学者の利根川進などによって研究されており、1987年には利根川進(とねがわ すすむ)はこの業績でノーベル医学・生理学賞を受賞した。\n\n輸血は、血液型が同じ型どうしで輸血するの通常である。\n赤血球表面に、抗原にあたる凝集原(ぎょうしゅうげん)AまたはBがある。なお、凝集原の正体は糖鎖である。\n血清中に、抗体にあたる凝集素のαまたはβがある。この抗体は、病気の有無に関わらず、生まれつき持っている抗体である。\n凝集原と凝集素との組み合わせによって、4つの型に分類される。\nAとαが共存すると凝集する。\nBとβが共存すると凝集する。\nたとえばA型の血をB型のヒトに輸血すると、赤血球が凝集してしまうので、輸血するのは危険である。\nA型の糖鎖は、H型糖鎖という糖鎖の末端にNアセチルガラクトースアミン(GalNa)が結合している。\nB型は、H型糖鎖という糖鎖の末端にガラクトース(Gal)が結合している。\nAB型は、この両方の糖鎖が細胞膜にある。O型の糖鎖はH型糖鎖そのものだけである。\n抗原提示されたヘルパーT細胞は、キラーT細胞(killer T cell)とよばれるT細胞を増殖させる。\nキラーT細胞は、ウイルスに感染された自己の細胞を攻撃するが、移植細胞や がん細胞 も攻撃することもある。\n細胞性免疫は、キラーT細胞が、抗原を直接攻撃して行う。\n臓器移植や皮膚移植などで別の個体の臓器や皮膚などを移植すると、たとえ同種の個体からの移植でも、普通、定着しないで脱落する。これを拒絶反応という。これは細胞性免疫によって異物として移植臓器が認識され、キラーT細胞によって攻撃されたためである。\n細胞膜の表面には、MHC(主要組織適合性複合体、Major Histocompatibility Complex)というタンパク質がある。臓器移植で拒絶反応が起きる場合は、MHCが異なる場合であり、キラーT細胞が移植臓器を攻撃しているのである。\nMHCは個人ごとに異なるので、普通、他人とは一致しない。\nT細胞は、相手方細胞の表面にあるMHCを認識している。つまりMHCの違いによって、ヘルパーT細胞が自己と非自己を認識する。そしてヘルパーT細胞が非自己の物質が侵入したことを感知して、キラーT細胞を活性化させる。\nなお、ヒトでは、ヒトの白血球の細胞表面にあるヒト白血球型抗原(HLA、Human Leukocyte Antigen)がMHCとして機能する。血縁関係の無い他人どうしで、HLAが一致する確率は、ほとんど無い。同じ親から生まれた兄弟間で、HLAの一致は4分の1の確率である。移植手術の際、これらの免疫を抑制する必要があり、免疫抑制のために、あるカビから精製した「シクロスポリン」(ciclosporin)という名前の薬剤が、よく免疫抑制剤(めんえきよくせいざい)として使われる。(※ シクロスポリンはいちおう、高校の教科書で紹介されている。)[10] [11]\n臓器移植など移植手術での拒絶反応が起きる際の理由も、MHC(ヒトの場合はHLA)が異なって、T細胞が移植片を非自己と認識するからである(※ 参考文献: 第一学習社『高等学校生物』、24年検定版、26年発行、58ページ)、と考えられている。\nなおシクロスポリンは、T細胞によるサイトカイン(※ この「サイトカイン」とは細胞性免疫の情報伝達に関わる物質の一種であり、キラーT細胞などの他の免疫細胞を活性化させる役割を持っている)の産生を阻害することにより、細胞性免疫の作用を抑制している。(※ サイトカインは高校の範囲内)\n※ MHCの話題のコラムが2つありますが、長いので分割したからです。\nMHCの主な働きとして、移植などにおける自他の区別のほかにも、もう一つ別の働きがあり、それはT細胞に抗原ペプチドを情報伝達する役割がある。\n(※ 検定教科書にあまり無い話題)B細胞は、単独で抗原と結合する事ができる。一方、T細胞は単独では結合できない(というのが定説である)[13]。\nMHCをもつ一般の細胞は、病原体や非自己の有機物が入ってきたとき、それを分解して得られたタンパク質をMHCの上に乗せる。MHCに非自己のタンパク質が乗ったとき、T細胞側の受容体が、MHC と MHCの乗ったタンパク質 を抗原として認識する。\nT細胞は、MHCによって、病原菌などの抗原を分解したペプチド(小分子のタンパク質)分子がMHC分子の溝にハマって細胞外に露出しており、T細胞はそうしてMHCに提示された「抗原ペプチド」を認識する仕組みにより、T細胞が抗原を認識する事が分かっている。\nさて、MHCには主に2種類あり、クラスIとクラスIIに分類される(※ 数研出版の教科書で図中でのみ紹介)。\nMHCクラスIは、ほとんどすべての有核細胞に存在する。\nいっぽう、KHCクラスIIは、マクロファージ や 樹状細胞 や B細胞 や 胸腺上皮細胞 などに存在している。どうやらMHCクラスIIは、主に抗原提示細胞に存在していると思われている(と、どこかの検定教科書が言っているらしい)。\n発達中のT細胞は胸腺で発達するが、胸腺皮質上皮細胞にはもMHCがあるのだが、なんと胸腺皮質上皮細胞のMHCクラスIと反応するT細胞はキラーT細胞になり、胸腺上皮のMHCクラスIIと反応するT細胞がヘルパーT細胞になる[15][16]という事まで、現在では解明されている。\n上述のように、T細胞には、MHCを認識する受容体がある。なお、T細胞には、さらに多くの種類の受容体があり、MHCを認識する受容体以外にも、異なる機能をもった受容体が、いくつもある。\nT細胞に存在する、抗原を認識する受容体のことをT細胞受容体(TCR)という。(※ いちおう、東京書籍と第一学習社の高校教科書にTCRの紹介があるが、他社の教科書には見られない。 \n\n輸血のための血液を集める際、実は放射線を輸血バッグに照射してで輸血のT細胞などを殺している[17]。\n\n高校の検定教科書(東書、第一)では、主に「MHCを認識する種類の受容体。」の意味で使われている。\n\n結核菌のタンパク質を投与して、結核菌に対しての免疫記憶があるかどうかを検査するのがツベルクリン反応検査である。\n結核菌への免疫があれば、炎症が起こり、赤く腫れる。この反応は細胞性免疫であり、ヘルパーT細胞やマクロファージの働きによるものである。\nツベルクリン反応をされて、赤く腫れる場合が陽性である。いっぽう、赤く腫れない場合が陰性である。\n陰性のヒトは免疫が無いので、結核に感染する可能性があり、そのため免疫を獲得させるために弱毒化した結核菌が投与される。\nBCGとは、この弱毒化した結核菌のことである。(つまり、結核のワクチンが、BCGワクチンである。なお「ツベルクリン」とは、ワクチンではなく、(「ツベルクリン」とは)結核診断のための(結核由来タンパク質を注射するなどの)検査方法[18]のことである。)\n免疫細胞では、インターロイキン(interleukin)というタンパク質が、主に情報伝達物質として働いている。インターロイキンには、多くの種類がある。\nインターロイキンのうち、いくつかの種類のものについては、ヘルパーT細胞からインターロイキンが放出されており、免疫に関する情報伝達をしている。\n体液性免疫では、ヘルパーT細胞から(ある種類の)インターロイキンが放出されて、B細胞に情報が伝わっている。こうしてB細胞は抗体産生細胞に変化する。\n細胞性免疫では、ヘルパーT細胞が(ある種類の)インターロイキンを放出し、キラーT細胞やマクロファージなどに情報が伝わる。\nなお、名前の似ている「インターフェロン」という物質があるが、これはウイルスに感染した細胞から放出され、周囲の未感染細胞にウイルスの増殖を抑える物質を作らせる。(※ チャート式生物(平成26年版)の範囲。)\nマクロファージや樹状細胞も、病原体などを分解して、そのタンパク質断片を(マクロファージや樹状細胞の)細胞表面で抗原提示をして、ヘルパーT細胞を活性化する、・・・と考えられている。(※ 検定教科書では、MHCかどうかは、触れられてない。)\n(※ まだ新しい分野でもあり、未解明のことも多く、高校生は、この分野には、あまり深入りしないほうが安全だろう。)\nT細胞やB細胞の一部は攻撃に参加せず、記憶細胞として残り、抗原の記憶を維持する。そのため、もし同じ抗原が侵入しても、1回目の免疫反応よりも、すばやく認識でき、すばやくT細胞やB細胞などを増殖・分化できる。\nこのため、すぐに、より強い、免疫が発揮できる。\nこれを免疫記憶(immunological memory)と呼ぶ。\n一度かかった感染病には、再びは、かかりにくくなる。\nこれはリンパ球の一部が免疫記憶として病原体の情報を記憶しているためである。\n免疫記憶は予防接種としても利用されている。\n免疫は、個体が未熟なときから存在する。成熟の課程で、リンパ球(T細胞)は、いったん多くの種類が作られ、あらゆる抗原に対応するので、自己の細胞も抗原と認識してしまうリンパ球もできる。いったん自分自身に免疫が働かないように、しかし、自己と反応したリンパ球は死んでいくので、個体の成熟の課程で、自己を排除しようとする不適切なリンパ球は取り除かれる。そして最終的に、自己とは反応しないリンパ球のみが、生き残る。\nこうして、成熟の課程で、自己に対しての免疫が抑制される仕組みを免疫寛容(めんえき かんよう)という。\n免疫寛容について、下記のことが分かっている。\nまず、そもそも、T細胞もB細胞も、おおもとの原料となる細胞は、骨髄でつくられる。つまりリンパ球はすべて骨髄で作られる(※ 2015年センター試験の専門『生物』本試験でこういう問い方をしている)。\n骨髄で作られた未成熟T細胞は、血流にのって胸腺まで運ばれ、胸腺でT細胞として分化・増殖する。\n膨大なT細胞が作られる際、いったん、あらゆる抗原に対応できるようにT細胞がつくられるので、作られたT細胞のなかには自己の細胞を抗原として認識してしまうものも存在している。\nしかし、分化・成熟の過程で、自己を攻撃してしまうT細胞があれば、その(自己を攻撃する)T細胞は胸腺で取り除かれる。\nこのようにして、免疫寛容が達成される。\nこのように、T細胞は胸腺に由来する。いっぽう、B細胞は胸腺には由来していない、と考えられている(※ B細胞の由来については検定教科書には明記されてないが、センター試験がこの見解。2016年生物基礎の追試験)。\n殺しておいた病原体、あるいは無毒化や弱毒化させておいた病原体などをワクチンという。このワクチンを、人間に接種すると、もとの病気に対しての抗体と免疫記憶を作らせることができるので、病気の予防になる。こうしてワクチンを接種して病気を予防することを予防接種という。\nワクチン療法の元祖は、18世紀なかばの医師ジェンナーによる、牛痘(ぎゅうとう)を利用した、天然痘(てんねんとう)の予防である。\n天然痘は、死亡率が高く、ある世紀では、ヨーロッパ全土で100年間あたり6000万人もの人が死亡したとも言われている。天然痘はウイルスであることが、現在では知られている。\n牛痘は牛に感染するが、人間にも感染する。人間に感染した場合、天然痘よりも症状は比較的軽い。\n当事のヨーロッパで牛痘に感染した人は、天然痘には感染しにくい事が知られており、また牛痘に感染した人は天然痘に感染しても症状が軽い事が知られていた。このような話をジェンナーも聞いたようであり、牛の乳搾りをしていた農夫の女から聞いたらしい。\nジェンナーは、牛痘に感染した牛の膿を人間に接種することで、天然痘を予防する方法を開発した。\nさらに19世紀末にパスツールがワクチンの手法を改良し、天然痘のワクチンを改良するとともに、狂犬病のワクチンなどを開発していった。\n狂犬病はウイルスである。\n現在では、天然痘のDNAおよび牛痘のDNAの解析がされており、天然痘と牛痘とは塩基配列が似ていることが分かっている。\n1980年、世界保健機関(WHO)は、天然痘の根絶宣言を出した。\n現在ではインフルエンザの予防にもワクチンが用いられている。インフルエンザには多くの型があり、年によって、流行している型がさまざまである。流行している型とは他の型のワクチンを接種しても、効果が無いのが普通である。\nインフルエンザの感染は、鳥やブタやウマなどにも感染するのであり、けっしてヒトだけに感染するのではない。\nインフルエンザはウイルスであり、細菌ではない。\nインフルエンザのワクチンは、ニワトリの卵(鶏卵)の中で、インフルエンザウイルスを培養させた後、これを薬品処理して無毒化したものをワクチンとしている。このように薬品などで病原体を殺してあるワクチンを不活化ワクチンという。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンである。いっぽう、結核の予防に用いられるBCGワクチンは、生きた弱毒結核菌である。BCGのように生きたワクチンを生ワクチンという。\n1918年に世界的に流行したスペイン風邪も、インフルエンザである。\nインフルエンザは変異しやすく、ブタなどに感染したインフルエンザが変異して、人間にも感染するようになる場合もある。\nウマやウサギなどの動物に、弱毒化した病原体や、弱毒化した毒素などを投与し、その抗体を作らせる。その動物の血液の中には、抗体が多量に含まれることになる。\n血液を採取し、そして血球やフィブリンなどを分離し、血清を回収すると、その血清の中に抗体が含まれている。\nマムシやハブなどの毒ヘビにかまれた場合の治療として、これらのヘビ毒に対応した血清の注射が用いられている。このように血清をもちいた治療法を血清療法(けっせいりょうほう)という。血清療法は、免疫記憶は作らないので、予防には役立たない。予防ではなく治療のために血清療法を行う。\nヘビ毒以外には、破傷風(はしょうふう)やジフテリアなどの治療にも血清が用いられる。\n血清療法は、1890年ごろ、北里柴三郎が開発した。\n(未記述)\n抗原抗体反応が過剰に起こることをアレルギー(allergy)と呼ぶ。スギ花粉などが原因で起きる花粉症もアレルギーの一つである。\nアレルギーを引き起こす抗原をアレルゲン(allergen)と呼ぶ。\nアレルギーのよって、じんましんが起きるきともある。\nヒトによっては卵やソバやピーナッツなどの食品もアレルゲンになりうる。、\nダニやホコリなどもアレルゲンになりうる。\n抗原抗体反応によって、呼吸困難や血圧低下などの強い症状が起きる場合もあり、または全身に炎症などの症状が現れたりする場合もあり、このような現象をアナフィラキシーという。\n(つまり、アレルギー反応によって、呼吸困難や血圧低下などの強い症状が起きる場合や、または全身に炎症などの症状が現れたりする場合もあり、このような現象をアナフィラキシーという。)\nハチ毒で、まれにアナフィラキシーが起きる場合がある。ペニシリンなどの薬剤でもアナフィラキシーが起きる場合がある。\n※ 「アナフィラキシー・ショック」(anaphylactic shock)と書いても、正しい。(※ 東京書籍の検定教科書『生物基礎』平成23年検定版、124ページでは「アナフィラキシーショック」の用語で紹介している。)\n※ 「アナフィラキシー」の結果が、血圧低下なのか、それとも炎症なのかの説明が、検定教科書でもハッキリしていない。東京書籍の教科書では、全身の炎症を「アナフィラキシーショック」の症状として説明している。だが実教出版では、血圧低下や呼吸困難を、「アナフィラキシー」の結果としているし、「アナフィラキシーショック」とはアナフィラキシーの重症化した症状だと(実教出版は)説明している。\nエイズ(後天性免疫不全症候群、AIDS)の原因であるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)というウイルスは、ヘルパーT細胞に感染して、ヘルパーT細胞を破壊する。ヘルパーT細胞は免疫をつかさどる細胞である。そのため、エイズ患者の免疫機能が壊れ、さまざまな病原体に感染しやすくなってしまう。エイズ患者ではヘルパーT細胞が壊れているため、B細胞が抗体をつくることが出来ない。\nふつうのヒトでは発病しない弱毒の病原体でも、エイズ患者では免疫機能が無いため発症することもあり、このことを日和見感染(ひよりみ かんせん、opportunistic infection)という。\nHIVとは Human Immunodeficiency Virus の略。\nAIDSとは Acquired Immune Deficiency Syndrome の略。\nHIVの遺伝子は変化をしやすく、そのため抗体を作成しても、遺伝子が変化しているので効果が無く、ワクチンが効かない。開発されているエイズ治療薬は、ウイルスの増加を抑えるだけである。\nよって、予防が大事である。\n自己の組織や器官に対して、免疫が働いてしまい、その結果、病気が起きることを自己免疫疾患という。\n関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、重症筋無力症(myasthenia gravis)は自己免疫疾患である。I型糖尿病も自己免疫疾患である。\nヒトの汗や鼻水や涙にはリゾチームという酵素があり、リゾチームは細菌の細胞壁を破壊する。[20]\n「T細胞」のTの語源は胸腺(Thymus)である。\n「B細胞」の語源は、ニワトリなど鳥類にあるファブリキウス嚢(Bursa of Fabricus)である。研究の当初、まずニワトリのファブリキウス嚢が、ニワトリでは抗体産生に必要なことがわかった。また、ファブリキウス嚢を失ったニワトリは、抗体産生をしないことも分かった。\nのちに、哺乳類では骨髄(Bone Marrow)でB細胞がつくられることが分かったが、偶然、Boneも頭文字がBであったので、名前を変える必要は無かったので、現代でもそのままB細胞と呼ばれている。\nなお、動物実験で、ニワトリの(ファブリキウス嚢ではなく)胸腺を摘出した場合、この胸腺なしニワトリに(他の個体の皮膚を)皮膚移植をすれば他の個体の皮膚が定着する。\nあるいは遺伝的に胸腺の無いヌードマウスなど、胸腺の無い個体の場合、拒絶反応が起きない。(第一学習社の「生物基礎」教科書で、遺伝的に胸腺の無いヌードマウスの皮膚移植を紹介。)\n\nT細胞やB細胞とは別に、さらに「ナチュラルキラー細胞」(NK細胞)というのがリンパ球に含まれており、1970年代にナチュラルキラー細胞が発見されたが、まだよく解明されていない。\nキラーT細胞などとの違いとしては、(ナチュラルキラー細胞でない単なる)T細胞なら別の免疫細胞によって抗原提示されてからT細胞が攻撃する。\n(※ 実教および東京書籍の教科書にある記述)移植手術の際に、もし、家族でも何でもない他人の皮膚を移植すると脱落する拒絶反応が起きるのも、T細胞のほかNK細胞が移植片を攻撃するからである(という実教出版および東京書籍の見解)。\n一方でナチュラルキラー細胞は、どうやら、なんの抗原提示を受けなくても、病原体感染細胞やガン細胞などを(ナチュラルキラー細胞が)攻撃するように観察されているので、「生まれつきの殺し屋」みたいな意味で、このような名前がついている。\nこのためか分類上では、ナチュラルキラー細胞は自然免疫の細胞であると分類されている[22]。だが、論文などでは、ナチュラルキラー細胞が場合によっては獲得免疫に似た免疫記憶の性質を持つ場合もあるとも報告されており[23]、まだ未解明であり、よく分かってない。\n(※ なお、現在では、ナチュラルキラー細胞の働きを抑制する受容体なども相手先の体内の細胞側に発見されており(抑制性NKレセプター[24])、NK細胞が本当に生まれつきナチュラルに殺す細胞かどうかは、検討の余地がある。)\nとりあえず確実なこととして、T細胞やB細胞のほかに、ナチュラルキラー細胞というの発見されているのは事実である。\nナチュラルキラー細胞は、おそらくアポトーシスとも関連があるだろうとも見られている[25]。\nこの他、キラーT細胞もアポトーシスに関連しているとされる[26]。\nなお、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)というものも、発見されている。\nNKT細胞とT細胞の違いとして、(一般の)T細胞やB細胞は糖タンパク質を抗原として認識するが、一方でナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)は糖脂質を抗原として認識する[27]という、抗原の違いがあり、興味をもたれている[28]。\n(NKTでなく)ナチュラルキラ-細胞(NK細胞)は、MHCクラスI分子を持たない細胞(ミッシングセルフ細胞)を攻撃することが知られている。(どうやら、ガン細胞や病原体感染細胞などの異常細胞を攻撃するための仕組みであろう、と考えられている。)\n実際、遺伝子操作されたマウスなどの動物実験などにより、ナチュラルキラー細胞を欠損したマウスでは、ガン発生率が確実に上昇している事が確認されている[29]。\nまた、試験管内の実験でも、NK細胞がガン細胞を殺傷する事が確認されている[30]。\nNK細胞の抑制性レセプターとは、このMHCクラスI分子と、NK細胞との結合部分のことであろう、と考えられている。\n動物実験によると、NKT細胞(ナチュラルキラーT細胞)を欠損したマウスは、病原体を除いた特殊環境(SPF環境)で飼育しないかぎり、乳幼児期にすべて死に絶えてしまう[31]。\nNK細胞はガンを殺傷するが、NKT細胞もガンを殺傷することが動物実験により分かっている。ある動物実験(マウス実験)では、化学発がん性物質メチルコナントレンをマウスに注射して人為的にマウスをガン化させようとする実験を試したところ、NKT欠損マウスは、NKTのあるマウよりも3~5倍も発ガン率が高かったという報告がある[32]。\n\n\n検定教科書には、あまり無い用語なのだが、入試過去問などでMHCについて、「MHC分子」および「MHC遺伝子」という用語がある。(※ 旺文社の標準問題精講あたりで発見。実は実教出版の検定教科書『生物基礎』に「MHC分子」だけ用語がある。)\nこの用語はどういう意味かと言うと、「MHC分子」とは、MHCの機能の受容体などに相当する、細胞膜表面のタンパク質のことである。\n検定教科書や参考書のイラストなどで、細胞膜の表面にある受容体のようなものによく(※ 正確には、受容体ではなく、MHCの結合相手のT細胞受容体に結合する「リガンド」(※ 大学生物学の用語なので暗記は不要)だが)、単に「MHC」と明記してあるが、「MHC分子」とはその受容体っぽいものの事である。つまり、教科書イラストにある「MHC」が「MHC分子」の事である。\n数研出版『生物基礎』の教科書では、「MHC抗原」と言ってる部分が、実教出版のいう「MHC分子」のことである。なお、東京書籍『生物』(専門生物)では、「MHCタンパク質」と言ってる部分でもある。\nつまり、公式っぽくイコール記号で表せば\nとなる。\n「分子」と言っても、けっして化学のH2O分子とかCO2分子のような意味ではない。\nなお、第一学習社(教科書会社のひとつ)の専門『生物』の検定教科書では、単に「MHC」の3文字だけでMHC分子の事として言っているので、高校教育用語としては「MHC」だけでMHC分子の事を呼んでも正しい(でないと、教科書検定に、第一学習社の教科書が通らない)。\nいっぽう、「MHC遺伝子」とは、MHC分子を作らせる遺伝子のこと。\n歴史的には、「MHC」は用語の意味が微妙に変わっていき、もともとの「MHC」の意味は今で言う「MHC遺伝子」の意味だったのだが、しかし、次第に研究が進んだり普及するうちに、「MHC」だけだと読み手に混乱を起こすので、日本では意味に応じて「MHC分子」または「MHC遺伝子」などと使い分けるようになっている。\n細胞膜のMHCのタンパク質部分の呼び名は英語が MHC molecule という言い方が主流なので、それを直訳すると「MHC分子」になるのだが(大学教科書でも「MHC分子」と表現している教材が多い)、しかしハッキリ言って、「分子」という表現は(少なくとも日本では、)やや誤解を招きやすい。(だから日本の高校教科書では、「MHC抗原」とか「MHCタンパク質」とか、いくつかの出版社がそういう言い方にしているのだろう。\nなお、グーグル検索すると、 MHC antigen (直訳すると MHC 抗原)という表現も少々、出てくる。\nさて、専門書だと、遺伝子のほうを単に「MHC」でゴリ押ししている書籍もあるが、しかし高校生むけの教材なら、遺伝子のほうを表すなら「MHC遺伝子」と説明するほうが合理的だろう。(だから旺文社の参考書でも「MHC遺伝子」表記になっているわけだ。)\n\n近年、分子生物学の分野で「RNA干渉」という現象が知られており、一説ではそれが免疫と関連あるのでは?という仮説も提唱されている。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%90%86%E7%A7%91_%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E5%85%8D%E7%96%AB"} {"text": "また、脳または脊髄である中枢神経と、それ以外の一般の神経である末梢神経の違いも中学で習っている。\n神経には、体内環境の維持に働いている末梢神経があり、自律神経系(じりつしんけいけい、autonomic nervous system)という。\n自律神経系には、交感神経(こうかんしんけい、sympathetic nerve)と副交感神経(ふくこうかんしんけい、parasympathetic nerve)がある。交感神経と副交感神経は対抗的に働くことが多い。()\n交感神経と副交感神経は、下記のように、働きが異なり、片方の神経が促進の働きならもう一方の神経は抑制のように、互いに反対の働きをしている。このようなことを、交感神経と副交感神経とは「拮抗」(きっこう)している、という。\n自律神経が交感神経と副交感神経とで拮抗しあっている理由は、バランスをとるためだというのが定説である(※ 東京書籍の見解)。\n(※ 専門生物の範囲 :)ヒトの脳神経は12対であり、脊髄神経は31対である。\nこのように、自律神経系は、意思とは無関係に、体内を調節している。\nまた、一部の例外を除き、同じ器官に交感神経と副交感神経の両方の神経がつながっている場合が多い。\n一般に、走る・おどろく などの活動的な状態になったときに働くのが交感神経である。\n敵があらわれた場合の闘争や(敵に教われるなどの)生きのびるための逃走などの生命の危機のために活動または緊張しなければならない際に(※ 東京書籍の教科書)、交感神経が活発になり、エネルギーを消費する方向に向かう(※ 数研の見解)。\n一般に、リラックスしたときに働いているのが副交感神経である。\n食事や休息の際に、副交感神経が活発になり、エネルギーを貯蔵する方向に向かう(※ 数研の見解)。\n交感神経は、すべて脊髄から出ている。\n一方、副交感神経は、ほとんどが中脳または延髄から出ているが(特に延髄から出ている副交感神経が多い)、しかし例外的に、ぼうこうの副交感神経は脊髄末端から出ている。\n心臓の拍動は延髄と自律神経によって調節されている。\n運動などによって酸素が消費され、二酸化炭素濃度が高くなると、\n延髄は交感神経を働かせ、\n交感神経の末端からノルアドレナリン(noradrenaline)が放出され、\n心臓の拍動数が増加する。\n逆に安静時に酸素の消費量が減り、二酸化炭素濃度が低くなると、\n延髄は副交感神経を働かせ、\n副交感神経の末端からアセチルコリン(acetylcholine)が放出され、\n心臓の拍動数が減少する。\n心臓の拍動の調節の実験には、\nオットー・レーヴィのカエルの心臓を用いた実験がある。\nレーヴィは2つのカエルの心臓を取り出してつなぎ、リンガー液を循環させる装置を作った。\n片方の心臓からのびる迷走神経(副交感神経)を刺激すると、その心臓の拍動数が減少し、\nしばらくして、もう片方の心臓の拍動数も減少した。\nこれにより、迷走神経のシナプスから化学物質が分泌され、\n心臓の拍動数を制御していることが明らかとなった。\nその化学物質は、今日ではアセチルコリンであることが分かっている。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%90%86%E7%A7%91_%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E4%BD%93%E5%86%85%E7%92%B0%E5%A2%83%E3%81%AE%E8%AA%BF%E7%AF%80"} {"text": "適応では、生物のもつ形態や生理的機能などの性質が、その環境のもとで生活していく上で都合よく出来ており、結果的に生物の生存や繁殖に役立っています。\n寒冷で雪の多い地域に生育する樹木には、温暖な地域に生育する近縁な種に比べて背丈が低く、柔軟な茎をもつものがあります。この形態は、樹木の上に雪が積もっても折れにくいという特徴があります。また、砂漠のように乾燥した地域に生育する植物には、根を非常に長く伸ばし、地中深くの水分を吸収しているものもあります。環境への適応を反映した形態を生活形といいます。\n生活形には様々なものがあります。種子が発芽してから1年以内に結実して枯死する植物を一年生植物、地下部などに養分を貯蔵しながら1年をこえて生育する植物を多年生植物といいます。\n木本は、普通は、2m程度より低い低木と、低木より高い亜高木や高木に分けられます。また、木本は、冬季や乾季に葉を落とすかどうかで常緑樹と落葉樹に分けられます。広葉樹と針葉樹にも分けられます。\n多くの植物は生育に不適切な冬季や乾季には成長を止め、休眠芽を作ります。休眠芽は、ある一定期間、発芽しない芽で、低温や乾燥に強い特徴を持ちます。クリステン・ラウンケルは、休眠芽の位置の違いによって植物の生活形を分類しました。熱帯では地上植物が、寒帯では半地中植物が、乾燥する砂漠では一年生植物がよく実ります。\n植物の光合成について、単位時間あたりの植物の二酸化炭素の吸収量を光合成速度、放出量を呼吸速度といいます。ある光の強さのもとでは、呼吸速度と光合成速度がつり合い、見かけ上、二酸化炭素を放出も吸収もしない状態になります。この時の光の強さを光補償点といいます。\n光が十分な強さになると、それ以上、光を強くしても、光合成速度は光の強さに関係なく一定になります。この時の光の強さを光飽和点といいます。また、この一定になった時の光合成速度を最大光合成速度といいます。\n植物の光の利用の仕方は、植物の種類によって異なります。草原や耕地など、日当たりのよい環境でよく生育する植物を陽生植物といいます。陽生植物の性質をもつ樹木を陽樹といいます。陽樹には、ヤシャブシ、クロマツなどがあります。陽樹の芽生えや幼木は、日陰では光合成による物質生産を十分に行えず、病原菌に感染したり昆虫などに食べられたりして、よく枯死します。\n一方、森林の中など、日陰の環境に生育する植物を陰生植物といいます。芽生えや幼木の耐陰性が高く、ある程度成長すると、明るいほど成長がよくなります。このような陰生植物の性質をもつ樹木を陰樹といいます。陰樹には、タブノキ、アラカシなどがあります。遷移が進むにつれて目陰の環境が多くなり、陽樹が育ちにくくなるため、遷移が進むにつれて陰樹がよく実ります。そのため、陰樹は、極相に達した森林を構成する樹種によくみられます。\n遷移の進行を促す環境要因の1つが地表に届く光の量です。草原の明るい環境では、陽樹は陰樹に比べて葉の光合成速度(葉の単位面積あたりの二酸化炭素の吸収速度)が大きく成長も速くなります。樹木は、草本に比べてより高く成長するため、草本は樹木の陰になります。そのため、草原の植生の次に陽樹林の植生によく遷移します。陽樹林が出来ると、地表に届く光が少なくなるので、陽樹の芽生えは生育しにくくなります。しかし、陽樹林に陰樹が侵入した場合、陰樹の芽生えは生育出来るので、陽樹が枯死すると陰樹を主とした森林に遷移していきます。\n1本の植物体でも、日当たりのよい場所と悪い場所では、葉の特徴が異なります。日当たりのよい場所にある葉を陽葉といい、厚くて葉の面積が狭くなります。一方、日当たりの悪い場所にある葉を陰葉といい、薄くて葉の面積が広くなります。陽葉は陰葉より、葉の面積あたりの最大光合成速度が速くなります。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1_%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E6%A4%8D%E7%89%A9%E3%81%A8%E7%92%B0%E5%A2%83%E3%81%AE%E9%96%A2%E3%82%8F%E3%82%8A"} {"text": "地球上には様々な植物が生育しています。ある場所に生育している植物の集まりを植生といいます。また、植生を外から見た時の様相を相観といい、植生の中で、個体数が多く、背丈が高くて葉や枝の広がりが大きい種を優占種といいます。一般に相観は優占種によって特徴づけられます。\n森林は、草原や荒原に比べて植生が占める空間が大きく、構造も複雑です。\nよく発達した森林の内部を観察すると、林冠と呼ばれる森林の最上部から、林床と呼ばれる地面に近い場所まで、様々な高さの樹木や草木による階層構造をみられます。森林の階層構造は、上層部から順に高木層、亜高木層、低木層、草本層、コケ植物などが生える地表層といった構造になっています。森林内の環境も多様です。森林の植生は、草原や荒原に比べて階層構造が複雑なので、多くの動物の生活場所にもなります。森林内の光環境は、1日の時刻や季節、天気によっても変化します。\n植物は、土壌中の水や栄養分を吸収して成長します。そのため、土壌は、植物が生活する上で重要な環境要因です。土壌は、岩石が風化して出来た砂などに、落葉・落枝や生物の遺体が分解されて出来た有機物が混じり合って出来ています。落葉・落枝の分解は、ミミズ、ヤスデ、トビムシ、ダニ、ダンゴムシなどの土壌動物や細菌、キノコなどの菌類などの分解者のはたらきによって起こります。つまり、土壌の形成には、分解者が大きく関わっています。\nよく発達した森林の土壌は、層状になっています。地表に近い最上層には落葉・落枝で覆われており、これを落葉層といいます。その下には落葉・落枝が分解されて出来た黒褐色の有機物(腐植質)と風化した岩石が混じった層(腐植土層)がみられます。その下には風化した岩石の層、さらにその下には風化を受けていない岩石(母岩)の層があります。\n風化した細かい岩石と腐植がまとまった粒状の構造を団粒構造といいます。\n団粒構造は保水力が高く、隙間が多いので通気性に優れています。根は、団粒構造の発達した、有機物に富む層でよく成長します。これは、水や養分の吸収が容易に行える上に、根の呼吸にも都合がよいためです。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1_%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E6%A7%98%E3%80%85%E3%81%AA%E6%A4%8D%E7%94%9F"} {"text": "本節は、地学の視点から植生の分布に関する影響をみてみましょう。\n※バイオームの図は各生物基礎教科書や問題集ごとに違いますので、あまり深追いしすぎないようにしましょう。\n日中の同じ時刻に気温を観測しても、赤道付近や北極・南極、低山・高山で大きな差があります。また、同じ地域で1年を通して気温や降水量を測定すると、周期的な変化(季節)が見られる地域もあります。このような地球の気候変動は、どのようにして起こったのでしょうか。\n地球規模の気候は、主にその地域の年平均気温と年降水量によって表されます。気温は、主に日差しによって決まります。地球は球状をしているため、緯度が高くなるにつれて日差しは減少します。赤道から北極・南極に向かうにつれて、年間平均気温は下がっていきます。また、地軸がわずかに傾いているため、日差しに季節変化が生まれます。さらに、地球の大気循環や親潮・黒潮などの海流も、日本で観測される気温や降水量に大きな影響を与えています。山や海などの地形が変わっても、同じ地域の気候は複雑に変化します。\nこのように、気候によって植生の分布が制限されるだけではなく、そこに生息する動物の分布にも大きな影響を与えているといえます。\n上記の話に関連しますが、近年、気候変動による影響が全世界で発生しています。\n例えば、ヨーロッパやインドの猛烈熱波やアメリカや日本の台風・ハリケーンの威力強化とかです。\nこのうち、日本では令和元年房総半島台風、令和元年東日本台風が有名です。\n陸上を上空から眺めると、森林が延々と続く風景や、果てしなく草原が広がる風景を目にします。地球上には様々な環境があり、それぞれの環境に適応した植物で構成された植生が成立しています。ここでは陸上の植物が、どのように分布しているかをみていきましょう。\n森林や草原のような植生の外観を相観といいます。ある気候の地域には、最終的にその気候に合った植物が、優占種として生育します。優占種は、その場所の環境に適応した形態をもつので、同じような環境のもとでは、同じような相観をもつ植生が成立します。例えば、カナダやシベリアなどの亜寒帯地域には、それぞれ種類は異なりますが、どの地域でも針葉樹が優占するため、相観はよく似てきました。また、生育している植物の種類や状態に応じて、特有の動物が生息しています。\n陸上では一般に生産者〔植物〕を基準に、その地域に生息する動物や微生物などの全ての生物のまとまりをバイオーム(生物群系)といいます。植物の生育は、気温と降水量の影響を強く受けるため、陸上には、地理的な気候区分とほぼ一致する特徴ある相観をもったバイオームが成立しています。\n陸上のバイオームの基準は植生なので、バイオームの分布と気候との関係は、植生を中心に研究されています。陸上のバイオームは、その地域の年平均気温と年降水量に大きく影響を受けます。陸上のバイオームを森林・草原・荒原に分類し、年平均気温と年降水量の関係について見ると次の通りです。\n年平均気温がマイナス5度以上の地域や年降水量の多い地域に森林が見られます。熱帯や亜熱帯では、熱帯多雨林、亜熱帯多雨林、雨緑樹林が見られます。温帯では、照葉樹林、硬葉樹林、夏緑樹林が見られます。亜寒帯(冷帯)では、針葉樹林が見られます。\n温暖でも、年降水量が少ない地域では、森林が成立せず、イネの仲間を主とした草原となります。草原のバイオームには、年平均気温の高い順からサバンナとステップがあります。熱帯の乾季の長い地域にはサバンナが見られます。温帯の雨の少ない地域にはステップが見られます。\n年降水量が極端に少ない地域や年平均気温が極端に低い地域では植物が育たず、岩や砂が目立つ荒原となります。年平均降水量が200mm以下の地域には砂漠が見られます。年平均気温がマイナス5度以下の寒冷な地域では降水量に関係なくツンドラが見られます。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1_%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E5%9C%B0%E7%90%83%E4%B8%8A%E3%81%AE%E6%A4%8D%E7%94%9F%E5%88%86%E5%B8%83"} {"text": "本節では、国内外のバイオームとその分布について扱います。\nまたなお、グラフでの各植生の各領域の温度範囲や降水量範囲の広さや値は、教科書ごとに若干、異なります。なので、あまり細かな数値を覚えても無価値です。\n日本では、その地域の気温によって、植生が決まります。\nよって、その地域の気温の積算値をもとにした指数によって、植生が説明出来ます。\n植物の生育がうまくできる下限の値を5℃と考え、よって月平均気温からマイナス5℃をした値を各月もとめ、さらにその各月の値を足し合わせた積算値を、暖かさの指数といいます。\nWIが15〜45は、トドマツなどの針葉樹が分布し、亜寒帯に相当し、北海道の北東部などです。\n45〜85は、ミズナラなどの夏緑樹林が分布し、冷温帯に相当し、東北地方などです。\n85〜180は、スタジイなどの照葉樹林が分布し、温暖帯に相当します。\n180〜240は、沖縄県や鹿児島などで見られ、亜熱帯多雨林が分布し、亜熱帯に相当します。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1_%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E6%A7%98%E3%80%85%E3%81%AA%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%A0"} {"text": "※ この解説は、 旧生物ⅠB、旧生物Ⅱ、中学校理科のWikibooks を敬体に直したものです。そのため、現在の高校や大学受験では、不適切な可能性があります。\n生物の内容が全範囲 完成次第、適切な内容に書き換えようと思います。(作成者より)\n本章では、生物基礎・生物両方とも共通する内容となります。\n動物性プランクトンは、エサとして、植物性プランクトンを食べています。\n具体的に言うと、ミジンコやゾウリムシなどの動物性プランクトンは、ケイソウやアオミドロなどの植物性プランクトンを食べます。\nそして、動物性プランクトンも、メダカなどの小さな魚に食べられます。\nメダカなどの小さな魚も、さらに大きな魚に、エサとして食べられます。\nというふうに、より大型の生き物などに食べられていきます。\n生きてる間は食べられずに寿命を迎えて死んだ生物も、微生物などにエサとして食べられていきます。\nこのように、生き物同士が、「食べる・食べられる」 の関係を通じて関わり合っていることを 食物連鎖(しょくもつれんさ、food chain) といいます。食べる側を捕食者(ほしょくしゃ、predator)といい、食べられる側を被食者(ひしょくしゃ)といいます。ミジンコとメダカの関係で言えば、メダカが捕食者、ミジンコが被食者です。捕食者も、さらに上位の捕食者によって食べられて、捕食者から被食者へとなる場合もよくあります。このように、捕食者-被食者の関係は、立場によって変わる相対的なものです。\n実際には、捕食者が1種類の生物だけを食べることはまれで、2種類以上のさまざまな種類の生物を食べます。食べられる側も、2種類以上の捕食者によって食べられます。このため、食物連鎖は、けっして1本道のつながりではなく、網状のつながりになっており、この食物連鎖の網状のつながりを食物網(しょくもつもう、food web)といいます。\n食物連鎖は、なにも水中の生き物だけでなく、陸上の生き物にも当てはまる考え方です。\n植物など、光合成を行って有機物を合成する生物のことを 生産者(せいさんしゃ、producer) と言います。動物のように、別の生物を食べる生き物を 消費者(しょうひしゃ、consumer) といいます。消費者は、生産者の合成した有機物を、直接もしくは間接に摂取していると見なす。\n動物は、他の動物もしくは植物を食べているので、動物は全て消費者です。肉食動物(carnivore)も草食動物(herbivore)も、どちらとも消費者です。\n消費者のうち、草食動物のように、生産者を直接に食べる生物を一次消費者(primary consumer)といいます。その一次消費者を食べる肉食動物を二次消費者(secondary consumer)といいます。二次消費者を食べる動物を三次消費者といいます。さらに三次消費者を食べる生物を四次消費者といいます。\nなお、二次消費者を食べる三次消費者が一次消費者を食べるような場合もあります。このように、実際には、必ずしも直接に1段階下位の生物を食べるとは限りません。\nいっぽう、菌類(きんるい)や細菌類(さいきんるい)のように、(落ち葉や 動物の死がい や 動物の糞尿(ふんにょう)などの)動植物の遺体や排泄物などの有機物を分解して無機物にする生物を分解者(ぶんかいしゃ、decomposer)と言います。\n菌類とは、いわゆるカビやキノコのことです。シイタケやマツタケは菌類です。アオカビやクロカビは菌類です。\n細菌類とは、例えば、大腸菌(だいちょうきん)、乳酸菌(にゅうさんきん)、納豆菌(なっとうきん)などが菌類です。\n分解によって、有機物は、二酸化炭素や水や窒素化合物などへと分解されます。さまざまな分解者によって有機物は分解されていき、最終的には無機物へと変わる。\nこれら、菌類や細菌類は、普通は、葉緑体を持っていないので、光合成によって栄養を作ることが出来ません。\n菌類は葉緑体を持っていないため、菌類は植物には、含めません。細菌類も、同様に、植物に含めません。\n菌類の栄養の取り方は、カビ・キノコともに、菌糸をのばして、落ち葉や動物の死骸などから、養分を吸収しています。\n一般的に、長期的に見れば、一次消費者の個体数は、生産者よりも少ありません。なぜなら、一次消費者が一時的に生産者よりも増えても、食べ物の植物が足りずに一次消費者は死んでしまうからです。同様に、二次消費者の個体数は、一次消費者よりも少ありません。\nなので、本ページの図のように、生産者の個体数と一次消費者・二次消費者・三次消費者・ … の個体数を積み上げていくと、三角形のピラミッド型の図になります。このような個体数を生産者・一次消費者・二次消費者・ … と積み上げた図を個体数ピラミッドといいます。\n同様に、生物量について、積み上げた図を生物量ピラミッド といいます。\n個体数ピラミッドや生物量ピラミッドをまとめて、生態ピラミッドといいます。\nこれらのピラミッドのように、生態系を構成する生物を、生産者を底辺として、一次消費者・二次消費者・ … と食物連鎖の段階によって段階的に分けることができ、これを栄養段階(えいよう だんかい)といいます。\n栄養は、おおむね、\nというふうに、移動していきます。そして、消費者も一生の最期には死ぬから、死んで分解されるので、栄養は分解者へと移動します。\n栄養素として食べられる物質も、このように循環していきます。\n\n物質は、生物どうしでは上記の食物連鎖のように循環をしますが、しかしエネルギーは循環せず、最終的には地球外(宇宙空間)に熱エネルギーなどとして出て行きます(※ 東京書籍、数研出版、実教出版、啓林館の見解)。 (※ 第一学習社の教科書を紛失したので、第一は分かりません。)\n生物の利用するエネルギーのおおもとは、ほとんどが太陽からの光エネルギーですので、光エネルギーが光合成などによって有機物に変えられるなどして化学エネルギーとして変換され、消費などによって熱エネルギーとして排出さて、その熱エネルギーが宇宙に放出されている、というような出来事になっています。\nつまり、エネルギーは生態系の中を循環はしていません。\nこのようなことから、検定教科書では「エネルギーは生態系の外に放出される」とか「エネルギーは生態系外に出ていく」などのように説明しています。\nある生態系の一定面積内において、一定期間において生産者が光合成した有機物の総量を総生産量(そう せいさんりょう)といいます。生産者である植物は、自身の生産した有機物の一部を、自身の呼吸で消費しています。呼吸によって使われた有機物の量を呼吸量といいます。\n総生産量から呼吸量を差し引いた量を、純生産量(じゅん せいさんりょう)といいます。\n純生産量の一部は、落ち葉となって枯れ落ちたり( 枯死量、(「こしりょう」) )、あるいは一時消費者によって捕食されたりする( 被食量、(「ひしょくりょう」) )ので、生産者の成長に使える量は、純生産量よりも低くなります。\n純生産量から、枯死量と被食量を差し引いた量を、成長量(せいちょうりょう)といいます。\n植物が成長に使える有機物の総量が、成長量です。\n消費者である動物は、食べた有機物の一部を、消化・吸収せずに排泄します。食べた有機物の総量を摂食量(せっしょくりょう)といいます。消化吸収せずに排出したぶんの量を、不消化排出量(ふしょうか はいしゅつりょう)といいます。\n消費者の同化量は、摂食量から不消化排出量を差し引いた量ですので、次の式になります。\nさらに、ある動物の群れを、集団全体で見ると、その群れの一部の個体は、食物連鎖で、より上位の個体によって捕食されます。なので、群れの成長に使える有機物の総量から、被食量を差し引かねば、なりません。さらに、動物には寿命があり、かならずいつかは死滅します。死滅するぶんの量が死滅量です。\nこれらを考慮すると、消費者の成長量は、次の式になります。\nある環境において、生産者の被食量は、一次消費者の摂食量と等しい。\n同様に、一時消費者の被食量は、二次消費者の摂食量と等しい。\n食物連鎖で生物間を移動する物質は栄養素だけではなく、生命には望ましくない有害物も、食物連鎖を移動していきます。\n例えば、かつて農薬として使用されていたDDTは、自然界では分解されにくく、脂肪に蓄積しやすく、そのため食物連鎖を通じて高次の消費者へも取り込まれ、動物に害をおよばしました。\n生物内で分解・排出できない物質は、体内に蓄積しやすいという特徴があります。さらに、その生物を食べる消費者の体には、もっと多く蓄積しやすい。このため、生態ピラミッドで上位の生物ほど、高濃度で、その物質が存在しているという現象が起き、この現象を生物濃縮(せいぶつ のうしゅく、biological concentration)といいます。\n毒性のある物質で、生物濃縮を起こす物質によって、高次の消費者を死亡させたり、高次の消費者の生命が脅かされた事例が過去に起きましました。\n生物濃縮を起こす、危険物質は、DDTのほか、PCB(ポリ塩化ビフェニル)や有機水銀などです。\n現在、アメリカおよび日本などでは、DDTの使用は禁止されています。\n何らかの理由で、生産量ピラミッド中での、ある生物の個体数の比率が変わっても、時間が経てば、もとどおりに近づいていきます。\nそのため、次第に、元通りに近づいていきます。\n他の場合も考えてみましょう。\nつりあいの状態から、なんらかの理由で、肉食動物が増えた場合も考えよう。仮に、この状態を「(肉食動物=増)」と書くとしましょう。\nこのように、食物連鎖を通じて、個体数の比率は調節されています。\n(※ 画像を募集中。カナダでの、オオヤマネコ(捕食者)とカンジキウサギ(被食者)の個体数のグラフなどを作成してください。)\n環境破壊や森林伐採などで、ある地域で、大規模に森林が破壊されてしまうと、生産量ピラミッドの最下段の生産者が減ってしまうので、上の段の消費者の動物も、その地域では生きられなくなってしまう。\n人工的な環境破壊のほかにも、火山の噴火、山くずれ、洪水などの自然災害で、生物の量が大幅に減る場合もあります。\n現在の日本に生息している ブラックバスの一種(オオクチバス) や アメリカザリガニ やブルーギル などは、もともとの生息環境は外国ですが、人間の活動によって日本国内に持ち込まれ、日本に定着した生物です。このような外部から、ある生態系に持ち込まれた生物を、外来生物(がいらい せいぶつ)といいます。\nある生態系に、遠く離れた別の場所から持ち込まれた外来生物が入ってきてしまうと、(天敵がいない等の理由で外来生物が大繁殖しやすく、その結果、)持ち込まれた先の場所の生態系の安定が崩れます。なぜなら、その外来生物の天敵となる生物が、まだ、持ち込まれた先の場所には、いないからです。\nこのため、外来生物を持ち込まれた場所では、外来生物が増えてしまい、従来の生物で捕食対象などになった生物は減少していく場合が多くあります。\nその結果、外来生物によって(捕食対象などになった)従来の生物が単に減るだけでなく、絶滅ちかくにまで従来の生物が大幅に激減する場合もあります。(※ 検定教科書ではここまで書いていませんが、共通テストでここまでの知識を要求します。)\n外来生物の例として、オオクチバス(ブラックバスの一種) や ブルーギル という肉食の魚の例があり、これら肉食の外来生物の魚が在来の魚の稚魚を食べてしまうので、在来の魚の個体数が減少してしまうという問題も起きています。\n一説では、湖沼によっては、オオクチバスやブル-ギルなどの繁殖した湖沼にて従来の魚が激減しているという(※ 数研出版の教科書がその見解)。\n社会制度としては、上述のように外来生物が従来の生物に多大な悪影響を及ぼしかねないので、日本では法律で外来生物の持込みが規制されています。生態系を乱す恐れの特に高い生物種を「特定外来生物」に指定して、飼育や栽培・輸入などを規制したり、他にも日本政府は生物多様性条約の批准を受けて日本国内で『生物多様性国家戦略』などの構想を打ち立てたりしています。\n植物でも、セイタカアワダチソウ や セイヨウタンポポ などの外来生物があります。\n沖縄のマングース(ジャワマングース)も外来生物で、ハブの捕獲の目的で沖縄へと持ち込まれた。しかし、ハブ以外の生物も捕食してしまい、オキナワの固有種のアマミノクロウサギやヤンバルクイナなどを、マングースが捕食してしまうという問題が起こりました。また、ハブは夜行性で、そのためマングースとは行動時間が一致せず、ハブ捕獲の効果も低いことが分かりました。\n現在、環境省は、対策として、沖縄でマングースを捕獲しています。\n日本の外来生物には、これらのほか、アライグマ、カミツキガメ、ウシガエル、セイヨウオオマルハナバチなどが外来生物です。\n台風や山火事、土砂崩れや噴火など、環境に変化を与える現象を 攪乱(かくらん、かく乱) といいます。\nたとえば、台風で、熱帯のサンゴ礁が傷付くのも攪乱です。\n種の多様性について、いちばん多様性を多くする攪乱の規模は、攪乱が中程度の場合で、この理論を 中規模攪乱説(ちゅうきぼ かくらんせつ) といいます。\nたとえば熱帯のサンゴ礁では、中規模の台風が起きた方が、サンゴの種の多様性が高まることが知られています。オーストラリアのヘロン島でのサンゴ礁の調査で、このような中規模攪乱説どおりの事例が知られています。\nたとえば右の図のような地域の場合、30%くらいの被度で、もっとも種数が多くなります。\n攪乱が強すぎると、攪乱に強い種しか生き残れありません。\n攪乱が弱すぎると、通常時の競争に強い種しか、生き残れありません。\n人間が森林を伐採したりするなどの、人為的なことも攪乱です。\n森林の場合、攪乱がないと、陰樹ばかりになります。攪乱が起きて、噴火などで、いったん樹木が焼き払われると、そのあとの地には、まず陽樹が生えてくるようになります。\n里山(さとやま)など、人里ちかくの森林では、かつては人々が林業などで木材として森林資源を利用してたので、かく乱が適度に行われていました。ですが、最近では林業の後継者不足や経営難などで放置される森林も増えており、そのため木材として伐採されなくなり、攪乱されなくなったので、種の多様性が低下していると主張する者もいます。種の多様性確保のため、適度に木材などの森林資源を理容すべきだと主張する者もおり、日本国での小中高の公教育での検定教科書なども、そのような立場に立っています。\n持続可能な社会のためには、持続可能な生態系が必要です。人間が食べる動植物は、生態系があるからこそ生存できるのです。もし、動植物がいなくなれば、人間にとっても食べ物が無くなり、人間も滅ぶ。生態系の維持のためには、根本的な対策は、人間が、資源の消費や森林伐採された土地の利用などに基づいた現代の文明を見直して、消費を控え、持続可能な文明へと変えていく必要があるのかもしれありません。そのためには我慢をする事が今後の人類には必要で、今後はおそらく現代のような放漫な消費ができなくなり、かつて住宅地や工業用地などとして開発された土地のいくつかを農地や雑木林などにも戻す必要もあるかもしれありません。現時点で存在している里山を維持するだけでは、すでに宅地化などの開発によって消失した里山は、復活しないのです。\nまた国によっては人口も減らす必要もあり、おそらく今後は人間が不便も感じることもあるでしょう。\n学校教科書は、政治的に中立でなければならないので、具体的な環境対策には踏み込めありません。しかし、自然環境は、そのような人間の都合になどには、合わせてくれないのです。たとえば日本ではニホンオオカミや野生トキなど日本の固有種の動物のいくつかが絶滅しましたが、けっして自然環境は、日本人に合わせて、ニホンオオカミなどの生物の絶滅のスピードを緩めてなんて、くれなかったのです。日本の政治家や学校などが、「日本は素晴らしい国」だと言っても、日本での動植物の生態の歴史の観点から見れば、日本国および日本人は、ニホンオオカミや野生トキなどを絶滅させた環境破壊を行ったという、不名誉な実績のある国および国民なのです。人間の学生が「環境問題や環境の生物学について、勉強しよう」などと考えている間にも、人類が生態系に負荷を与える活動を続けていくかぎり、生物種は絶滅に近づいていくのです。\n商人や、一部の政治家や有権者にとっては、人間が資源を消費をするほうが商人が売買をしやすく、そのため税収も増えるので、彼らには都合が良い。しかし、そのような人間中心の都合に、生態系は合わせてくれありません。\n乱獲や農薬の乱用によって、絶滅したり激減した生物種も、世界の自然界には、事例が多くなっています。\n自然界だけが日本人の都合になんて合わせてくれないどころか、人間社会の内部ですら、日本以外の外国は、日本国の都合になんて合わせてくれません。例えば、魚などの海洋資源の漁獲の規制のありかたについての問題は、魚は各国の領海や沿岸を移動するため、漁獲資源は世界的な感心後とで、諸国が自国の立場を主張するので、たとえ他国の立場も尊重することはあっても、けっして他国の立場には従わありません。だから世界各国の主権国家は、日本国の命令には従わないので、仮に日本が自国の漁獲を伝統文化などと主張しても、外国からすれば、「日本の文化」などと主張するだけでは根拠不十分として、それだけでは日本国の主張には従ってくれません。また、ヨーロッパの国では、環境問題が国を越えて影響を与えることもあり、環境問題は国際問題として取り組むべきだと、考えられています。\nさらに、実は農地などの里山ですら人間が利用しやすいように環境を改変した人工的な環境で、決して本来の自然環境ではなく、農地などは人間にとって不要な森林を「開墾」(かいこん)などといって森林伐採するなどして環境破壊されたあとの状況なのです。(農業が森林伐採を伴うことは、検定教科書でも説明されています。[1])よく書籍などでは、途上国での焼畑(やきはた)農法が環境破壊として問題視されますが、何も農業による環境破壊は、焼畑に限った話ではないのです。水田も、森林伐採をした結果の場所なのです。ただし、アスファルトやコンクリートなどで舗装したりするのと比べれば、農地などの里山のほうが生態系への負荷が少なく、里山のほうがアスファルト舗装よりかは種の多様性が大きくてマシである、ということです。\nまた、ひとまとめに「農地」と言っても、現代の農法は、江戸時代などの古くからの農法とは異なり、現代では農業に化学肥料や農薬などを用いる場合が多く、暖房や照明なども用いる場合があり、現代の農法の多くは石油資源などの消費に頼った農法です。現代の食生活は、現代の農法を前提としており、その農法は、資源の消費を前提としています。いつの日か、人類は、食生活を見直す必要があるのかもしれません。\n\n絶滅のおそれのある生物種を絶滅不安種(ぜつめつきぐしゅ、an endangered species [2])といいます。絶滅不安種のリストをレッドリストといい、それらをまとめた本をレッドデータブックといいます。\n世界各国の政府や環境団体などは、絶滅を防ぐための取り組みとして、レッドデータブックをまとめています。日本では、環境省によりレッドデータブックが作成されています。\n動植物への乱獲などによる絶滅を防ぐため、絶滅不安種の取引を規制する条約としてワシントン条約などがあります。\n干潟は、渡り鳥の生息地になっていたり、貝などの生息地になっています。現在では、干潟は自然保護の観点から、環境保護をされています。だが昔は、干潟はたんなるドロの多い場所と考えられており、そのため、干拓や埋立て工事などによって、多くの干潟が消失しました。\nかつて冷蔵庫などの冷媒として利用されていたフロンガスという物質が原因で、オゾン層が破壊され減少していることが1980年代に分かりました。\nオゾン層は紫外線を吸収する性質があるので、オゾン層が破壊されると、地上にふりそそぐ紫外線が増え、生物が被害を受ける。\n大気中で二酸化炭素の濃度が上がると、地球の気温が上昇すると考えられています。大気中の二酸化炭素には、赤外線を吸収する性質があるので、その結果、熱を吸収する働きがあります。なので、二酸化炭素が増えると、地上の熱が宇宙に逃れず地球の周囲に閉じ込められるので、地上の気温が上がる、と考えられています。これが、温暖化の原因と考えられています。また、大気中の二酸化炭素が、熱を閉じ込める作用のことを 温室効果(おんしつ こうか) と言います。二酸化炭素など、熱を閉じ込める温室効果のある気体のことを温室効果ガスと言います。\n地球温暖化(ちきゅう おんだんか) の主な原因は、石油などの化石燃料(かせき ねんりょう)の大量使用によって、排気にふくまれる二酸化炭素(にさんかたんそ)により、空気中の二酸化炭素が増加したためと考えられています。他にも、森林伐採などによって光合成によって固定される炭素の総量が低下した結果も含まれる、という考えもあります。\nもし、温暖化が進行して、南極の大陸上の氷や氷河の氷が溶ければ、海面上昇します。低地が水没します。海抜の低いツバル、モルディブ、キリバスの国は、海水面が上がれば、国土の多くが水没してしまう恐れがあります。\nなお、北極の氷が溶けても、もともと北極海に浮かんでいる氷が水に変わるだけなので、海面は上昇しありません。\nまた、温暖化によって、熱帯で生息していた蚊の分布域が広がることが心配されています。マラリアを媒介する蚊のハマダラカの生息域が広がる恐れが有る。\n酸性雨の原因は、化石燃料の排気にふくまれる窒素酸化物などの物質が、雨の酸性化の原因と考えられています。酸性雨により、森林が枯れたり、湖や川の魚が死んだりする場合もあります。\n耕作や工業用地化や住宅地化を目的にした森林伐採などで、世界的に森林面積が減少しています。森林の減少により光合成量が減るので、温暖化の原因にもなっていると考えられています。また、動物の生息域が減るので、生態系の保護の観点からも、森林破壊が問題です。\nなお、温暖化の化石燃料以外の他の原因として、森林伐採などによる森林の減少によって、植物の光合成による二酸化炭素の吸収量が減ったのも理由の一つでは、という説もあります。\nまた、過度の森林伐採などにより、土壌の保水性が失われたために、その土地で植物が育たなくなる砂漠化(さばくか)も起きています。\n植物プランクトンによる光合成量と消費量のつりあう水深のことを補償深度(ほしょう しんど)といいます。\n補償深度は、外洋で水深100メートルまでに存在しています。\n湖の水質で窒素やリンなどの濃度の高くなると、硝酸塩やリンは植物プランクトンにとっての栄養でもあるので、植物プランクトンにとっての栄養に富んだ湖になるので、そのような窒素やリンの濃度の高い湖の事を富栄養湖(ふえいよう こ)といいます。生活排水や農業廃水などに含まれるリンや窒素(ちっそ)化合物などの成分の流入によって、富栄養湖になっている場合もあります。\nまた、湖や海などが、そのように窒素やリンなどの濃度の高い水質になる事を富栄養化(ふ えいようか, entrophication)といいます。\n一方、窒素やリンなどの濃度の低い湖のことは「貧栄養湖」(ひん えいようこ)という(※ 数研の教科書で紹介)。\n検定教科書によっては「窒素」ではなく「硝酸塩」(しょうさんえん)と書いてある場合もあるが(たとえば啓林館)、これは硝酸は窒素化合物だからです。(※ 高校の『化学基礎』や『専門化学』などで硝酸を習う。)\nここでいう「塩」は、けっして塩化ナトリウムのことではありません。そうではなく、「陽イオンと陰イオンとの化合物」というような意味での「塩」です。\n「硝酸塩」と書く場合は、「リン」のほうも「リン酸塩」と書いたほうがバランスが取れるでしょう。(実際、啓林館の教科書はそうです。)\nつまり、上記の富栄養湖の記述を「硝酸塩」および「リン酸塩」を使って言い換えると、下記のような言い回しになります。\nのような記述になろでしょう。\nさらに、これら硝酸塩やリン酸塩をまとめて、「栄養塩」もしくは「栄養塩類」という事もあります。「栄養塩」という語句を使って上記文を言い換えれば、\nのような記述にでも、なるでしょう。\nなお、「栄養塩」という用語は、けっしてプランクトン限定ではなく、一般の樹木や草などの植物の生育に必要な硝酸塩やリン酸塩などのことも「栄養塩」という(※ 数研の検定教科書『生物基礎』でも、植物の遷移の単元でそういう用語を使っている)。\n\nさて、「栄養」と聞くと、よさそうに聞こえるが、これはプランクトンにとっての栄養という意味ですので、水中の水草や魚などにとっては、プランクトンの増大が害になっている場合もあります。\nなぜなら、プランクトンにより日照がさえぎられるので(植物プランクトンは光の届く水面近くにいるので)、湖の底にある水草は光合成をできなくなります。\n自然界の河川や海水にも、栄養が溶けており、それらは水中の生物の生存にも必要な場合もあるし、プランクトンが少なすぎても、それを食べる魚介類が増えない(※ 数研の見解 )。また、微生物がそれら水中の窒素やリンを消費するなどして、ある程度の範囲内なら窒素やリンなどは自然に分解消費されていく(自然浄化)\nしかし栄養が過剰になりすぎると、プランクトンの大量発生などにより水系の生態系のバランスが崩れ、水草の現象や魚介類の大量死などの原因にもなります。過去には、過剰に富栄養化した湖や沿岸などで、魚介類の大量死が発見される場合もありました。(※ 数研の『生物基礎』に記述あり。)\n赤潮(あかしお、red tide)という海水面の赤くなる現象の原因も、水質の富栄養化です。(※ 数研の『生物基礎』に記述あり。)\nなお、淡水では、富栄養化により(赤潮ではなく)水面の青緑色になる「水の華」(みずのはな)が発生する(「アオコ」ともいう)。\nなお、プランクトンとは、水中を浮遊する微生物の総称で、そのうち光合成をするものが植物プランクトンとして分類されています。水中の、光合成しない浮遊微生物は動物プランクトンに分類されます。\n(※ 範囲外、資料集などに記載あり) \nアオコの植物プランクトンは、シアノバクテリア類です。(たぶん暗記は不要。市販の受験問題集でも、ここまで問われていない(※ 旺文社の入試標準問題精講で確認)。)\nなお、「シアノバクテリア」という品種名ではなく、ミクロキスティスなどの品種名で、そのミクロキスティスがシアノバクテリア類に含まれるという事(※ 数研の資料集『生物図録』229ページにそう書いてある)。\n(赤潮のプランクトンの名称については、資料集などに記載がありません。)\n赤潮で、色が赤く見える原因は、その赤潮を起こすプランクトンの色がわずかに赤いからで、そのプランクトンが大量発生しているから赤く見えるという仕組みです。[3]。\n※ つまり、決して、塩化ナトリウムの化学変化などで赤いわけではないようであるという事を、wikibooksでは言いたいです。\n※ 入試には出ませんが、河川では水が流れてしまうので、プランクトンも流れてしまうためか、アオコは発生しないのが通常です(※ 教科書では、いちいち説明されていませんが、丸暗記をしないで済ませるために、こんくらい分析しましょう)。\nまた、赤潮の発生しやすい場所は、沿岸部や内海です。検定教科書でも、「内海」だと明記しているものもある(数研出版など)。つまり、外洋では、赤潮は発生しづらい(※ 教科書では、いちいち説明されていない)。\nおそらくですが、沿岸から遠いと、栄養塩が陸地から流れてこなかったり、もしくは栄養塩が滞留しづらいからでしょう。(※ 丸暗記せず、分析して理解するようにしましょう。)\n\n有機物による水質の汚染の具合を定量的に測定するための指標として、BODおよびCODというのがあります。\nBODは、生物学的酸素要求量というもので、その水の単位量あたりの有機物を分解するのに、水中の微生物が必要とする酸素量が、どの程度かというものです。\n一方、CODは、化学的酸素要求量というもので、その水の有機物を酸化剤で酸化分解するのに必要な、化学計算に換算した際の酸素量のことをいいます。\nBODおよびCODは、数値が大きいほど、有機物による汚染がひどい事を表します。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%90%86%E7%A7%91_%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E7%94%9F%E6%85%8B%E7%B3%BB"} {"text": "地球は約46億年前に誕生しました。太陽系の誕生初期に生まれた多くの微惑星が衝突・合体して誕生しました。地球の表面は非常に熱いマグマで覆われていたため、生命環境は出来ておりません。その後、隕石の衝突が少なくなり、表面が冷えてくると、大気中に含まれていた水蒸気が雨となり、海が形成されました。この海こそが、生命が誕生した鍵を握っていたと考えられています。\n生命は、海が形成され、地球の環境も安定した約40億年前頃に誕生したと考えられています。紫外線の雨が降った陸地ではなく、深海で生命が誕生したという有力な説があります。\n当時の地球の様子は、現在の地球の様子とは大きく違っています。生命が誕生した経緯について述べましょう。\n生命は生物からしか生まれません。しかし、約40億年から38億年前の地球上で、少なくとも1回は、無生物から生物が発生したと考えられます。\n生物はタンパク質や核酸などの多くの有機物から構成されています。誕生時の地球にはこれらの有機物は含まれていませんでした。無機物や簡単な有機物から新たな有機物を作るようになって、生命が誕生したと考えられています。この仕組みの解明をスタンリー・ミラーが証明しています。\n隕石や彗星中には、宇宙で作られた有機物が含まれています。彗星が地球からそれたり、隕石が衝突し、宇宙から地球に有機物が持ち込まれたかもしれません。海底には、硫化水素やメタン・水素などを含む350度以上の熱水が噴出する熱水噴出孔があります。このような場所で、有機物を作り出したかもしれません。その周辺では、高い水圧がかかっており、簡単な有機物を作り出しています。さらにタンパク質や核酸など、生物を構成するのに必要な物質を作り出しました。このような準備段階を化学進化といいます。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1_%E7%94%9F%E7%89%A9/%E7%94%9F%E5%91%BD%E3%81%AE%E8%B5%B7%E6%BA%90"} {"text": "進化を証明する証拠は何でしょうか?\n本節では、それを見ていきましょう。中学の地学分野、高校の地学教科書+αの内容が入っています。\n基本的に年代が古いほど、地層の重なりは下になります。また、地層は、それが置かれた場所や当時の気候を物語っています。そこで見つかった化石から、生物がどのような姿をしていたか、当時の環境がどのような状況だったかがわかります。\nヨーロッパでは、化石は大昔に生きていた動物の遺骸ではなく、鉱物の中に作られた天然の物質だと考えられていました。日本では、象の臼歯や骨の化石を竜の歯や骨だと思い込んで、竜歯・竜骨と呼んでいました。化石が大昔に生きていた生物として知られるようになると、同じ種類の化石を持つ異なる地層は、同じ時代の地層として比較出来るようになりました。地質時代は、こうした研究の積み重ねによって、相対的な時代(相対年代)に分けられています。古生代の三葉虫やフズリナ(有孔虫)、中生代のアンモナイトなどは、様々な場所で発見され、同じ年代の地層でしばしば見られる化石の代表例です。このような化石を示準化石といいます。\n一方、古生代の示準化石の一つとなっているクサリサンゴは、温暖で浅い海に生息し、サンゴ礁を築いていました。示相化石とは、当時の環境がどのような様子だったのかを示す化石です。\n草原が広くなるにつれて、ウマの仲間は成長し、進化しました。最初の馬はヒラコテリウムと呼ばれ、犬くらいの大きさで指が4本ありました。森の中で葉っぱを食べていました。草原が広がるにつれて、草原を走り、草を食べる馬が進化しました。メソヒップスは葉っぱを食べていましたが、指を3本に減らして草原を走るのに慣れました。メリキップスは指が3本になりましたが、体が大きくなり、草も木の葉も食べるようになりました。プリオヒップスは指が1本しかなく、植物しか食べませんでした。草は硬く、珪酸が含まれているため、歯が磨り減ります。馬が肉を食べなくなったのは、すり減っても使える長い歯が出来たからです。約500万年前、北アメリカに現在のウマ属(エクウス)が出現しました。\nアンモナイトなどのように化石がたくさんあるグループでは、化石が見つかった地層を年代順に比較すると、化石の形が時代とともに変化している様子がわかります。環境の変化に伴い、現在の北アメリカにいた馬の仲間は大きくなり、肢の指が増え、歯の大きさや形も変化していきました。化石に見られるこうした変化は、進化の有力な根拠につながります。\nたとえ連続的な変化ではなくても、グループの中間に位置する種類の化石は、生命がどのように進化してきたかを知る手がかりになります。ジュラ紀後期に発見された始祖鳥の化石は、爬虫類と鳥類の間を結ぶ存在ですが、現生鳥類の先祖ではありません。\n従来、鳥はトカゲから進化した説がありました。しかし最近では、鳥は小型の恐竜から進化した説が有力です。この証拠が、中国で発見された羽毛の生えた恐竜です。\n羽毛恐竜アンキオルニスは、始祖鳥よりも古い1億5100万年前から1億6100万年前に生きていました。羽毛恐竜は、まず保温や体のバランスを保つために羽毛を使い、その後、空を飛ぶために羽毛を使ったと考えられています。\n生きた化石とは、過去の特徴を今に伝える生物です。シーラカンスは中生代白亜紀に生息していた動物です。カブトガニは古生代から生息していますが、中生代からあまり変化していません。古生代から生息しているオウムガイはアンモナイトと関係があります。中生代のイチョウや新生代のメタセコイアも生きた化石です。生きた化石は、絶滅した生物種の環境や生活様式を物語っています。\n生痕化石\n生痕化石とは、生物が残した生活の跡を示す化石です。\n巣穴、足跡、糞、病気や骨折の跡まで、その生物の生活状況を表しています。したがって、生痕化石から進化を裏付けます。\n化石と生物、生物同士の形を比較すると、進化の仕組みが見えてきます。\n生物はそれぞれ変化してきました。生物は、生き続けるために、そして繫殖出来るように、形態や生活様式を変えます。これが適応です。形態や生活様式が変わるにつれて、全ての生物は共通の祖先から進化してきました。例えば、海豚は水中を速く泳ぐために尾鰭を発達させました。\nあるグループが時間とともにどのように発生してきたかを見れば、その共通の祖先を見つけやすくなります。例えば、脊椎動物の発生初期には、魚の鰓のような部分があります。これは、脊椎動物が魚から進化したからだと考えられます。脊椎動物の中でも、爬虫類、鳥類、哺乳類の胚に胚膜があるのは、全て同じ祖先から誕生した証拠です。\n見た目は違っても、動物の種類によって、多くの器官の基本的な仕組みは同じです。両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類の前足や節足動物の足がその代表的な例です。哺乳類の中には、前脚に翼や鰭、腕などを持つ種類もありますが、それでも骨格はほとんど同じです。これらの前肢は全て同じ場所から生えています。相同器官とは、見た目も働きも全く違うのに、同じ場所から生まれたと考えられる器官を指します。相同器官には、私達の祖先が共有した仕組みに遡れる歴史があります。\n一方、昆虫の翅と鳥の翼は、空を飛ぶという同じはたらき(機能)を持っていますが、発生の仕方や見た目、どこから来たかという観点では、同じ器官とは言えません。相似器官とは、見た目も働きも他の器官とそっくりなのに、違う場所から来た器官を指します。\n鯨や蛇にはもう後ろ足がありませんが、祖先の後ろ足の骨はまだ残っています。痕跡器官とは、このようにもう役目を終えた器官をいいます。痕跡器官は、進化がどのように起こったかを解明するのにも役立ちます。犬歯、虫垂、耳を動かす筋肉、尾骨などは、全て痕跡器官の代表例です。\n白亜紀末期に恐竜が大量絶滅した後、生き残った哺乳類は、恐竜が抜けた穴を埋めるかのような姿になりました。違う環境に適応するために、1つの系統が多くの異なる系統に分かれます。これを適応放散といいます。また、適応放散では、1つの系統が多くの異なる生態的地位(ニッチ)に生息する様々な生物に分かれます。有袋類と真獣類は、哺乳類の主な種類です。有袋類とは、育児嚢とも呼ばれる袋を持つ動物です。胎盤を持つ哺乳類は真獣類といいます。真獣類がほとんどいなかったオーストラリアでは、有袋類が様々な環境に適応放散しました。\n当初、オーストラリアには真獣類はあまり生息せず、有袋類が多く生息していました。これらの有袋類は、様々な場所に住み、様々な生活様式を持っていました。それらの動物は柔軟で、動き回っていました。真獣類は、オーストラリア以外の場所でも進化しました。この真獣類とオーストラリアの有袋類を並べてみると、同じような場所に住み、同じような生活をしている動物は、よく似ています。\nこの有袋類の中には、他の大陸で適応放散した真獣類とよく似ている動物もいます。これは、似たような生活様式だからです。例えば、フクロオオカミとオオカミは共に群れで生活し、フクロモモンガとモモンガも群れで生活しています。収斂とは、異なる系統の生物が同じような環境に同じような方法で適応していく過程をいいます。鮫、魚竜、海豚が外見上似ているのは、いずれも海で生活し、素早く泳ぐために進化したからです。\n脊椎動物は窒素を含む分子を取り込み、それを利用して、代謝物を排出します。生息環境に応じて、様々な種類の窒素代謝物が排出されます。アンモニアは、水中で生活する魚や両生類の幼虫が排出します。陸上で暮らす両生類の成体からは尿素が、爬虫類や鳥類からは尿酸が排出されます。\n卵の中の鶏胚が出す窒素代謝物を見ると、最初はアンモニアを多く排出し、次に尿素を多く排出し、最後に尿酸を多く排出しています。窒素代謝物の排出から見ると、鶏胚は魚類、両生類、爬虫類から鳥類への進化した過程の繰り返しと言えるかもしれません。\n細胞は全ての生物に備わっています。さらに詳しく見ていくと、蛋白質は生物にとって最も基本的な物質です。そして、DNAがある塩基の並び方によって、蛋白質を作るアミノ酸の並び方を決めます。つまり、全ての生物は共通の祖先から生まれてきました。\n蛋白質とDNAがあるアミノ酸の並び方を比較すると、生物同士の関係を分子レベルで研究出来るようになりました。様々な生物のアミノ酸やDNAの並び方は、同じ祖先から生まれたからこそ、似ています。アミノ酸と塩基の並び方が違う場合、共通祖先からの分岐がかなり前に起こったと考えられます。アミノ酸と塩基の並び方がどれだけ違うかに基づいた系統樹と生物の形がどれだけ違うかに基づいた系統樹は、ほぼ同じです。\n私達の目の前であっという間に起こる変化に関して、祖先が生まれた段階から時間をかけて変化した繰り返しに過ぎません。このような説をエルンスト・ヘッケルの「反復説」といいます。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1_%E7%94%9F%E7%89%A9/%E9%80%B2%E5%8C%96%E3%81%AE%E8%A8%BC%E6%8B%A0"} {"text": "自然界では、周りの環境に合わせて変化する個体の方が、繁殖期まで生き延びて、自分と同じ形質を持つか、より多くの子孫を残す確率が高まります。「適応度が高い」とは、このような個体をいいます。適応度は、ある生物個体が産んだ子の中で、繁殖期までに生き残った子孫の数で表します。ある生物集団にある遺伝的変異の中から、その生物の生存と繁殖に役立つ個体が選ばれ、受け継がれます。これが自然選択という考え方です。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1_%E7%94%9F%E7%89%A9/%E9%80%B2%E5%8C%96%E3%81%AE%E8%A6%81%E5%9B%A0"} {"text": "眼の覚え方:眼はカメラに例えてみましょう。それぞれがカメラのどこになるかは本文を読めば分かると思います。\n脊椎動物の視覚器(眼)は、視神経細胞(視細胞)という光を感じる細胞が1層に並んだ網膜を持っていて、物の形や色を見分けられます。哺乳類の網膜では、全ての視神経繊維が1か所に束状に集まっていて、網膜を内側から外側に向かって貫いて脳へと向かっている所があります。そこは視細胞が欠けているので、光刺激を受容出来ない部分(盲斑)となります。\n視細胞は、形の違いからやや尖った錐体細胞と棒状の桿体細胞の2つに区別出来ます。ともに外節部と呼ばれる部分に光を吸収する色素(青錐体細胞、緑錐体細胞、赤錐体細胞)が多く含まれています。それぞれよく吸収する光の波長が異なっていて、特定の範囲の波長に最も反応する色素をもっています。どの細胞が強く刺激されたかという情報が大脳に伝わって、そこで私達は初めて色の違い(色覚)を認識出来ます。桿体細胞は、錐体細胞に比べると非常に弱い光も吸収して反応するという特徴がありますが、色の区別には使われません。\n例えば、緑錐体細胞は緑色光を強く吸収し、その光に強く反応します。3種類の錐体細胞が同じように反応すると白いと感じます。緑と赤の錐体細胞が同じように反応すれば黄色いと感じます。\n網膜上では、それぞれの視細胞が均一に分布しているのではなく、黄斑と呼ばれる視野の中心に相当する部分に錐体細胞が非常に多く、黄斑周辺部には桿体細胞が多く分布しています。視野の中心ほど、細かな形を識別でき、色の違いも見分けやすいのは、このような錐体細胞の密度が高いからです。\n桿体細胞にはロドプシンという光を感じる物質があります。これは、オプシンというタンパク質にレチナールという物質が結合したもので、オプシンが光を吸収すると、レチナールの形がかわってオプシンから離れます。これが引き金となり、桿体細胞が興奮します。錐体細胞にもロドプシンによく似た物質があります。\n暗順応では、明るい所から急に暗い所に入ると、最初は真っ暗で何も見えませんが、しばらくすると次第に見えるようになります。これに対して、明順応では、暗い所から明るい所に出ると、最初はまぶしくて何も見えませんが、しばらくすると次第に見えるようになります。\nこのような光の強さの変化に対する調節は、主に網膜の視細胞によるものです。強い光から弱い光に変化する時の暗順応では、光に対する視細胞の感度が増加し、明順応では視細胞の感度が減少し、正常に見えるようになります。その結果、錐体細胞より桿体細胞の方が、視細胞の感度も変化しやすくなります。\n外界の明暗が変化すると、ヒトの眼は瞳孔(ひとみ)の大きさを変えて眼に入る光の量を調節します。網膜に到達する光の量は、虹彩により調節されています。虹彩は急激な光の強さの変化にも対応出来るようになっています。瞳孔は直径約1.3~10mmぐらいの範囲で変わり、60倍ほどの範囲で周りの明るさの調節が出来ます。\n遠くのものを見る時も、近くのものを見る時も、眼が網膜の上に像が結ばれるように調節します。この現象を遠近調節といいます。ヒトは水晶体を取り巻いている毛様筋を収縮させて水晶体の厚さを変え、遠近調節をしています。普通ヒトの眼は、水晶体の周辺部にある毛様筋(毛様体の筋肉)が収縮しない状態では、6.5m以上の遠方にある物体にピントが合うようになっています。それより近い距離の物体を見る時は、毛様筋の収縮によって水晶体の厚みを調節し、網膜上に物体の像を結ぶように調節しています。\n左右の視細胞からの神経は交差して、大脳の視覚野に伝わります。これを「視交叉」といいます。人間の眼では、両眼の内側半分からの神経だけが交差しています。人間の眼では、眼の内側半分の神経だけが交差しており、眼の外側半分の神経は交差せずにそのまま大脳に入ります。つまり、右側で見たもの(両眼の網膜の左半分に映るもの)は左の視覚野に、左側で見たもの(両眼の網膜の右半分に映るもの)は右の視覚野に送られます。\nこのような結果になるのは、人間が立体映像を見れるのと関係があります。同じものを両眼で見た時、右と左の網膜に映る像が少し違います。例えば、顔の前にある人差し指を左右の眼で見ると、指は背景に対して違う場所にあるように見えます。大脳は、左右の眼からの情報を比較し、距離感や立体感に変えています。そのため、左の視覚野は右の視覚野の情報をまとめ、右半球は左の視覚野の情報に対して同じ処理を行います。右視野からの情報は全て、左視覚野にとって処理しやすくなります。\nなお、魚や鳥では、左右の視神経が全て交叉しています。これを「全交叉」といいます。魚や鳥の眼は頭の横にあり、右眼と左眼では見えるものが全く違います。左右の眼が同じものを見ているわけではありませんので、「半交叉」は必要ありません。\n空気の振動は、聴覚器官(耳)によって音として受容されます。動物の中でも、聴覚が特に発達しているのは、脊椎動物や昆虫です。また、猫、犬、海豚、蝙蝠などの聴覚器は、ヒトの耳には聞こえない超音波を受容出来ます。例えば、海豚は世間一般では賢い動物で有名です。なぜなら、超音波でヒトのようにコミュニケーションをとっているからです。\n※高等学校生物の教科書では、ヒト以外の耳について詳しく解説されていません。\nこういった事情から、ヒトの聴覚器官(耳)の構造と音の受け入れ方法について学習していくようになります。\nヒトの耳は、外耳、中耳、内耳の3つの部分からなります。外耳は、音を集めて中耳へと導く働きをします。外耳に入ってきた空気の振動は、まず鼓膜を振動させます。鼓膜の振動は中耳の耳小骨によって増幅され、内耳の渦巻き管に伝えられます。渦巻管はリンパ液で満たされており、リンパ液が振動すると、基底膜が振動します。このように、音の感覚細胞は内耳の渦巻き管に存在しています。\n音が内耳のリンパ液の振動として伝わると、それに反応してコルチ器官(コルチ器)の基底膜が上下に小さく振動します。その結果、感覚細胞(聴細胞)の毛が動かされ、聴細胞が刺激を受けます。この情報が聴神経から大脳の聴覚の中枢(聴覚野)へと伝えられ、私達は音という感覚として受け入れられるようになります。\n耳は聴覚器官だけではなく、平衡覚の感覚器官ともいえます。内耳には、前庭(前庭器官)と半規管と呼ばれる2つの平衡感覚器があります。\n前庭には、感覚毛をもった感覚細胞があり、その上に炭酸カルシウムで出来た平衡石(耳石)がのっています。体が傾くと平衡石が動いて感覚細胞を刺激するので、体の傾きを感じれます。\n一方、半規管の中にも、感覚毛をもった感覚細胞があります。体が回転を始めたり止めたりすると、半規管の中のリンパ液が回転に対してバランスを取るために回転と反対方向に流されます。その流れによって、感覚毛の束が変形し、感覚細胞が興奮します。3つの半規管は互いに交わっているので、それぞれ別々の方向の回転運動を感知出来ます。\n空気の振動(音波)の周期が短く、1秒間の振動数が多い(周波数が高い)場合、高音として感じます。逆に、振動数が少ない(周波数が低い)場合、私達は低音として感じます。私達は、これらの音をどのような仕組みで聞き分けているのでしょうか。高音の振動は渦巻管の入り口に近い部分の基底膜を、低音の振動は先端の方にある基底膜を振動させます。\nその結果、音の高低の違いによって異なった場所の基底膜が振動し、それぞれ異なる聴細胞が刺激されて電気信号が発生します。この信号は、異なる聴神経の経路を使って聴覚野の異なる部分へと伝わるので、そこで初めて音の高低の違いを認知出来ます。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1_%E7%94%9F%E7%89%A9/%E5%88%BA%E6%BF%80%E3%81%AE%E5%8F%97%E5%AE%B9"} {"text": "受容器と効果器の間にあるのが神経系です。受容器で受け取った刺激は、そのまま筋肉のような効果器へ送られるわけではありません。様々な刺激からの情報をまとめて初めて、いつ、どこから、どのような刺激が来たのかがわかり、それにどう反応すればいいのかが分かります。複雑な体の構造を持つ動物では、各器官が連携して働く必要があり、神経系はそのための役割を果たしています。神経系が発達した動物には、神経細胞の集まり(神経節)と、さらに大きな神経細胞の集まり(脳)があります。脳と神経節は、中枢神経系といわれ、情報処理の中心的な役割を果たしています。\n脊椎動物の神経系には、中枢神経系と末梢神経系があります。脳と脊髄をまとめて、中枢神経系といいます。これらは、神経管から作られます。神経管の前半分は脳になるために成長し、後半分は脊髄になるために成長します。大脳・間脳・中脳・小脳・延髄をまとめて、脳といいます。\n 体性神経系と自律神経系をまとめて、末梢神経系といいます。体性神経系は、感覚神経系と運動神経系で成り立っています。感覚神経系は末梢から中枢神経系に情報を送り、運動神経系は中枢神経系から筋肉に指令を送り、筋肉を動かす働きをします。交感神経と副交感神経をまとめて、自律神経系といいます。自律神経系は、様々な器官や血管に存在し、あらゆる活動を調整するのに役立っています。\nクラゲやイソギンチャクなどの刺胞動物は、散在神経系が見られます。散在神経系では、神経繊維が網の目のようにつながっていますが、中枢神経系はありません。\nプラナリアをはじめとする扁形動物では、頭に脳があります。\nミミズやハゼなどの環形動物、ハチやバタエビなどの節足動物では、脳は体の前部にあり、神経節は前部から後部へ走っています。2本の大きな神経がそれぞれの神経節をつないでいます。\n扁形動物やより高度な動物群では、神経系は中枢神経系と末梢神経系に分かれています。このような神経系を集中神経系といいます。\n脊椎動物の脳を比べると、大脳の割合が段階的に大きくなっており、鳥類は小脳が発達しているため、上手く空を飛べます。また、それぞれのグループには他にも特徴があります。\n中枢神経系の中でも、ニューロンの細胞体や神経線維は、全て正しい位置にあります。人間の脳では、大脳が大きな面積を占めていて、脳の機能のほとんどがここに集中しています。脳には、左半球と右半球があります。灰白質とは、大脳の外層の名称を指し、大脳皮質と呼ばれています。ここにはニューロンの細胞体が集まっています。大脳の内側(大脳髄質)には、多くの神経繊維が通っています。神経繊維が白く見えるので白質と呼ばれます。\n大脳新皮質は、人間の大脳皮質の中で最も発達しており、最も大きい部分です。新皮質、古皮質、原始皮質から出来ています。視覚や聴覚などの受容体からの情報を処理する感覚野、随意運動(意志に基づく行動)を制御する運動野、記憶、思考、言語などの高度な精神活動に関係した連合野が発達しています。大脳には、嗅覚の中枢(嗅球)・記憶形成・学習・空間認識などに役立つ海馬、欲求や本能などに関係する扁桃体などがあります。これらをまとめて大脳辺縁系といいます。新皮質とは異なる大脳辺縁系は、古皮質や原皮質といわれています。両生類や爬虫類の大脳にも見られます。\n体の平衡を保つ中枢があります。また、自分で上手に体を動かす方法(随意運動)を身につけられます。そのため、小脳に障害があると、上手く動けず、複雑な動きもしにくくなります。\n間脳・中脳・延髄が脳幹を作っています。視床と視床下部は、間脳の一部です。視床下部は、自律神経系の中枢です。体の器官の働きを制御しています。また、体温、水分、血糖値、血圧なども調節しています。視床下部は、脳下垂体とつながっています。中脳は、体の姿勢を維持すると共に、目の動きや瞳孔の大きさを制御しています。延髄は、呼吸や消化器・循環器系の働きなど、生命維持に重要な働きをする中枢です。\nニューロンの働きによって、大脳皮質の様々な部位が異なる働きをします。大脳の機能局在とは、脳がどのように設定されているかを示す言葉です。以前は、脳に損傷を受けた人がどのような特定の行動が出来なくなったのかを調べて、大脳の各部分が何をしているのかを解明しようとしていました。しかし近年、機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging)や陽電子放射断層撮影法(positron emission tomography)を用いた研究から、脳が実際にどのように働いているかが分かるようになりました。これは脳機能マッピングと呼ばれていますが、脳の機能がどこにどのように広がっているのかが、最近分かってきたばかりです。\n脊髄は脊椎骨の真ん中を通る円柱状の形をしています。大脳とは違って、外側(周辺部)は白質、内側(中心部)は灰白質です。脊髄神経は左右から出入りしています。腹側の神経は腹根で、ほとんどが運動神経の軸索の束で出来ています。背中側の神経は背根で、ほとんどが感覚神経の軸索の束から出来ています。このように、脊髄は体の一部が脳と連絡を取るための手段なので、反射が起こる場所でもあります。\n皮膚の触覚や圧覚が刺激に反応すると、感覚神経の軸索(白質)が脊髄に情報を送ります。軸索は、脊髄神経をつなぐ神経(介在ニューロン)に情報を送ります。介在ニューロンの軸索は延髄を右から左へ通り、さらに上へ上がって視床に興奮を伝えます。興奮は、左脳の皮膚感覚中枢にも送られます。大脳皮質で処理された情報は、大脳皮質の運動中枢に送られ、さらに手の運動が起こる脊髄の細胞体(灰白質)を持つ運動神経に送られます。\n目の前にボールが飛んでくれば思わず目を閉じてしまうし、熱いものに手が触れればそれを引き離します。反射とは、外からの刺激に対して無意識に起こる素早い反応をいいます。反射は、変えられない固定された反応です。しかし、非常に素早く起こるため、私達の安全を守り、意識せずに体の働きを調整するのに役立っています。反射の際には、受容体→感覚神経→反射中枢→運動神経→効果器を通して情報が送られます。反射弓とは、この反射を制御する神経細胞の連鎖をいいます。反射中枢は主に脊髄、延髄、中脳にあります。つまり、反射は大脳皮質が関与せずに起こります。したがって、反射は何も考えずに素早く起こるので、危険な状況などに対処しやすくなります。\n膝蓋腱反射と屈筋反射は、脊髄が関与する反射です。膝の腱が当たると、その刺激は膝の伸筋にある筋紡錘に送られます。ここで、刺激は脊髄にあるたった1つのシナプスを通して、筋肉の運動神経に送られます。そのため、素早い反応が期待出来ます。目に光を当てた時に瞳孔を小さくする反射(瞳孔反射)は中脳から来て、虹彩に行きます。自律神経系にも、反射の一部としてゆっくりとした反応があります。自律神経系は、気温の変化、塩分濃度、血糖値などの変化を拾っています。効果器としては、主に内分泌器官、内臓、血管の平滑筋を調節しています。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1_%E7%94%9F%E7%89%A9/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%B3%BB"} {"text": "外界に作用する器官、細胞、細胞小器官を効果器といいます。動物は刺激に応じて様々な反応を示します。その時、効果器が働きます。刺激に対する通常の反応は運動ですが、筋肉、繊毛、鞭毛などはそのための効果器です。電気や光を出す特殊な効果器を持っている動物もいます。また、色素胞や分泌腺も効果器です。\n筋肉は体の中で最も重い組織で、質量の約40%を占めています。\n脊椎動物の筋肉には、横紋筋と平滑筋の2種類があります。横紋筋は顕微鏡で見た時に見えます。横紋筋は大きくなったり小さくなったりするのが早く、大きな力を出すのが特徴です。骨格筋も心臓の筋肉(心筋)も横紋筋です。骨格筋は骨に付いていて、体を動かしたり正しい位置に保ったりしています。平滑筋は、体内の血管や臓器にある筋肉です。\n神経筋標本は、カエルのように骨格筋に運動神経がつながっている実験用動物から採取します。カエルのふくらはぎの筋肉(腓腹筋)に座骨神経を貼り付けて作った神経筋標本を使って、神経を1回電気刺激すると、0.1秒で筋肉が収縮・弛緩します。これが単収縮です。単収縮が終わる前に次の電気刺激を与えると、単収縮が重なり、収縮が大きくなります。刺激の頻度がある一定以上になると、強い収縮が長時間続くようになります。これを強収縮といいます。強収縮は、健康な骨格筋で起こる種類の筋収縮です。これは、活動電位が運動神経を1秒間に10回以上伝わっているために起こります。収縮の量が時間とともにどのように変化するかを示す曲線を収縮曲線といいます。刺激があまり起こらない時は、不完全強縮を示します。そのため、単収縮が重なり合ったギザギザの収縮曲線になります。頻度が高くなると、完全強縮を示し、大きく滑らかに収縮する曲線になります。\n筋組織を作っているのは筋細胞という長い細胞で、筋繊維とも呼ばれます。骨格筋の筋細胞は、多くの細胞が集まってできており、それぞれの細胞には数百個の核があります。筋細胞は、細胞の長軸に沿って筋原繊維がずらりと並んでいます。筋原線維はサルコメア(筋節)で出来ています。両端はZ膜で仕切られ、サルコメアは長軸方向に何度もつながっています。サルコメアの真ん中の少し暗く見える部分を暗帯、Z膜に近い部分は明るく見えるので明帯といいます。ミオシンフィラメントとアクチンフィラメントは、サルコメアの筋原線維の長軸に沿って規則正しく並んでいます。ミオシンフィラメントはミオシン分子の束がたくさん集まって出来ており、ミオシン分子の頭がたくさん飛び出しています。\n横紋筋が収縮すると、明帯と呼ばれる明るい色の部分の長さだけが変化し、サルコメアの幅は小さくなります。明帯にはアクチンフィラメントがあり、暗帯にはミオシンフィラメントがあります。筋肉は、ミオシンとアクチンが連携して、収縮します。ミオシン分子の頭にATPが付着していない時は、頭はアクチンフィラメントに傾いた状態で付着しています。ATPがミオシン分子の頭部に結合していると、頭部はアクチンから離れます。ADPが頭部から放出されると同時に、頭部は再び傾きます。このため、頭部はアクチンフィラメントから離れます。この動きによって、アクチンフィラメントはサルコメアの中央部に向かって移動します。この動きを何度も繰り返すと、サルコメアの長さが短くなり、筋肉が収縮します。サルコメアが短くなっても、ミオシンフィラメントもアクチンフィラメントも長さは変わりません。アクチンフィラメントがミオシンフィラメントの間をすり抜けると、筋肉は収縮します。このような仕組みを滑り説といいます。なお、ミオシンは、筋肉を収縮させたり弛緩させたりするので、モータータンパク質と呼ばれています。\n筋肉も神経系の力を借りて動かしています。骨の中にある筋肉は運動神経によって調節され、好きな時に収縮出来ます。このような筋肉を随意筋といいます。その他、平滑筋や心臓のように、自律神経系が働き方を調節している場合もあります。脊髄からの興奮が運動神経細胞を伝わって軸索末端に達すると、シナプス小胞からアセチルコリンという神経伝達物質がシナプス間隙に放出されます。アセチルコリンが筋繊維のリガンド依存性イオンチャネルに結合すると、チャネルが開き、ナトリウムイオンが流れ込みます。その結果、神経細胞と同じように筋繊維に活動電位が発生します。\n筋小胞体は、筋繊維の筋原線維を包む袋のような構造をしています。筋繊維の膜が興奮すると、膜から内側に伸びているT字管から筋小胞体に興奮が送られます。そして、筋小胞体に蓄えられていたカルシウムイオンが放出されます。トロポニンとトロポミオシンは、アクチンフィラメントに付着するタンパク質です。カルシウムイオンが少なくなると、ミオシン頭部がアクチンに付着しなくなるため、筋肉が弛緩します。筋小胞体からのカルシウムイオンがトロポニンに結合すると、トロポミオシンの形が変化します。これにより、ミオシン頭部がアクチンに結合し、筋肉が収縮します。\n 筋細胞は、ATPがADPになる時に収縮します。これが筋細胞のエネルギーになります。筋細胞はATPをあまり持っていないので、グリコーゲンという形でエネルギーを蓄えています。呼吸と解糖によってグリコーゲンが分解され、ATPが作られます。また、筋細胞はクレアチンリン酸の形でエネルギーを蓄えており、激しい運動でATPが必要になった時に、ADPからATPを作るために使われます。また、ATPは、安静時にエネルギーを貯え、クレアチンリン酸を作り直すためにも使われます。\n動物が外界のものに反応するのは、筋肉だけではありません。\n微細な生物や精子は、繊毛や鞭毛を使って泳いでいます。筋肉は細胞全体を収縮させて動きます。一方、繊毛や鞭毛は、細胞の表面に生えている小さな動く毛です。水を動かすために、この毛が動きます。1つの細胞にはたくさんの繊毛があり、細胞が泳ぐ時に、波打つように動きます。海に住む動物の幼生はよく繊毛を使って泳ぎます。長い繊毛は鞭毛といいます。\n汗腺、乳腺、唾腺などの効果器は、刺激に反応して物質を送り出す動物の部分です。これらの腺は、その中の細胞が分泌した物質が管状の排出管を通って外に出るため、外分泌腺と呼ばれます。甲状腺は内分泌腺の一種なので、排出管を通さずに血液中にホルモンを送り込みます。中枢神経系からの自律神経やホルモンは、多くの腺組織を制御しています。\nメダカの体の色は、背景の明るさによって変化します。色素胞とは、鱗粉の中に色素の子実体をたくさん持っている細胞です。色素胞が色を変えるのは、細胞の中の子実体が移動するためです。子実体が細胞全体にあると色がついたように見えますが、細胞の真ん中に集まると透明になります。\nホタルの腹部には光を放つ器官があります。種によって決められた時間に相手が光を放つと、自分も光を放ち、他の雌雄に話しかけます。\nデンキウナギやシビレエイは、電気を使って身の安全を確保したり、餌を捕まえたりしています。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1_%E7%94%9F%E7%89%A9/%E5%8A%B9%E6%9E%9C%E5%99%A8"} {"text": "これから、2回に分けて動物の行動について解説していきます。\nまずは、行動の全体像から説明して、それから習得的行動の中身を解説します。\nその受容器によって、周囲の環境から多くの情報を取り込んでいます。受け取った情報は神経を通して送られ、中枢神経系で処理されます。そして、処理された情報は、効果器に送られます。このため、環境に応じて反応が起こります。\n動物が生きていくために、あるいは赤ちゃんを産むために必要な動きを取る場合を行動と呼びます。行動には、生得的行動と学習行動の2種類があります。生得的行動は遺伝子によって決まり、学習行動は経験によってのみ育まれます。学習行動には、推理力や洞察力といったものも含まれ、これらは知能に基づきます。\n動物を見ていると、いろいろな行動をしている様子がうかがえます。これを「なぜ動物はそのような行動をとるのか」という視点から考えてみましょう。行動には、仕組み[1]・発達・機能・進化という4つの見方があります。仕組みとは、神経系などが連携して行動を起こす様子を表す言葉です。発達とは、生まれてから大人になるまでの変化、生まれてから行動が終わるまでの変化、行動がどのように形成されるかを意味します。機能とは、その行動が動物の生活の中でどのような役割を果たしているかという意味です。進化とは、祖先の行動から現在の行動まで、時間の経過とともに行動が変化していく様子をいいます。\n動物が何かを見たり聞いたりした時に、いつも同じ行動をとる場合を鍵刺激(信号刺激)といいます。\nこれを取る代表的な生物は、トゲウオとセグロカモメです。順番に解説していきます。\nトゲウオはイトヨ、ハリヨなどの総称で、春になると腹が赤くなり、川や池の底にある植物を集めて巣を作ります。同じ種類の雄は、他の種類の雄を攻撃して追い払うという性質があります。同じ大きさの模型を使った実験では、底が赤く塗られていれば、形が大雑把でも雄は激しく攻撃してきました。例え非常によく出来た模型でも、腹が赤く塗られていなければ攻撃してきません。雄の神経系は腹部の赤色を取り込んで、攻撃的な行動を取るようになりました。腹部の赤色は、攻撃的な行動を取らせる最大の原因です。\nある行動が、相手の次の行動の重要なきっかけとなり、行動の連鎖が始まり、複雑な行動をとる場合もあります。お腹を膨らませた雌のトゲウオが巣に近づくと、雄は求愛の意味を込めて「ジグザグダンス」と呼ばれるダンスをします。雌のお腹が膨らんでいるのがこの行動をさせる主な理由です。\n雌は雄がジグザグダンスを見ると、背筋を伸ばして雄の求愛に応えます。そして、雄は雌を巣に連れて行き、口先で巣の中を案内します。それを見た雌が巣の中に入ると、雄は口の先で雌の尾をつつきます。そうすると雌は卵を離し、雄は巣の中に入って卵に精子をかけます。雄は卵のある巣に傷があれば直し、卵に十分な酸素が行き渡るように鰭で水を動かして、受精卵の面倒を見ます。\nセグロカモメの雛は、親鳥の黄色い嘴の先に赤い点があるのを見ると、赤い斑をつついて、親鳥に半分消化された魚を餌として吐き出してもらおうとします。この行動の鍵となる刺激は、外界の情報からもたらされ、中枢神経系の解発機構によって、嘴をつつく動作のパターンが引き起こされると考えられています。かつて本能とは、決められた動作パターンに基づいて自然に行われる行動を指す言葉でした。しかし、これらの行動は必ずしも完全に自然なものではありません。また、「本能」という言葉は分野によって意味が異なるため、動物行動学の分野では使われなくなりました。この餌ねだり行動は、習得的行動とも呼ばれ、孵化時にはありませんが、経験によって学習されます。\n動物は、光や温度、湿度などが自分に合った場所に移動したり、食べ物や異性を探そうとしたりします。定位とは、環境中の何かに反応し、一定の方向に移動する過程をいいます。定位には、刺激に向かって走るような単純な動作から、鳥が長距離を移動するような複雑な動作まであります。\n走性とは、光や匂い(化学物質)、音波などの刺激に反応して動いたり、感覚器官の働きで刺激と反対方向に動いたりする動物の行動をいいます。刺激に向かって動くのが正の走性、刺激から遠ざかるのが負の走性です。刺激の種類によって、光走性・化学走性・音波走性などといいます。\n体の両側に感覚器官を持つ動物は、左右の刺激の強さを比較しながら、どちらに動くべきかを考えます。プラナリアの単眼視細胞は、開口部がそれぞれ前方と左右に向いており、片側から来た光はどちらかの単眼にしか入らないようになっています。プラナリアには負の光走性があり、脳は2つの単眼からの光刺激による活動電位の周波数を比較して、両方の単眼で周波数が同じになるように体の向きを変え、光刺激が弱くなるようにしています。\nカイコガの雄は、雌と交尾したい時、雌が出す匂いに引き寄せられます。この場合、刺激は化学物質なので、刺激源に向かう動きを正の化学走性といいます。カイコガなどの動物は、それぞれの情報をやりとりするために、様々な化学物質を体の外側に付着させています。フェロモンとは、体内から放出される化学物質をいい、仲間に決まった行動をさせる効果を持ちます。フェロモンには、異性を引き寄せる性フェロモン、仲間を集める集合フェロモン、敵が襲ってきたら仲間に知らせる警報フェロモン、餌の場所を仲間に知らせる道標フェロモンなど、様々な種類があります。昆虫では多くの例がありますが、哺乳類でも見られます。カイコガの雄は、雌からのフェロモンの匂いを嗅ぐと、羽ばたきながらフェロモンの元を探します。しかし、自然界では、風があると匂い物質が塊になって広がり、しかもその広がり方が刻々と変化します。そのため、匂いのする場所に真っ直ぐ移動出来ません。\nカイコガの雄は、交尾の準備が整うとフェロモン刺激の方向へ直進歩行するようになります。フェロモン刺激がなくなると、カイコガは小さなターンから次第に大きくなるジグザグターンを繰り返し,回転歩行に移行します。再びフェロモン刺激に反応したカイコガは、直進歩行→ジグザグターン→回転歩行をして、フェロモンの発生源にたどり着きます。\n多くの昆虫は触角で匂いを感じ取ります。カイコガの雄は、櫛のような触角を持ち、腹側に枝分かれしています。触角の側枝は、毛状感覚子と呼ばれる長く突き出た構造で覆われており、多くの小孔が開いています。雄の毛状感覚器には嗅細胞があり、同種の雌からのフェロモンにのみ強く反応します。\n領域では、嗅覚細胞がフェロモンに関する情報をやり取りしています。この情報は他の感覚情報と組み合わされて処理されて、フェロモンの発生源探索行動がこれらの領域に指令されます。この指令は、脳から胸神経節へ、左右の神経節を縦断する介在ニューロンという神経細胞から送られます。胸神経節には、ジグザグ運動から回転歩行へと体を動かす神経回路があります。フェロモン刺激は、この神経回路に行動指令を送る介在ニューロンの興奮を交互に起こしたり止めたりしています。フェロモン刺激を受け付けなくなった時点の興奮状態は、次のフェロモン刺激を受け付けるまで維持されます。この介在ニューロンが、ジグザグターンや回転歩行などの定型的運動パターンを引き起こすと考えられています。一方、直進歩行は、別の介在ニューロンの指令によって起こると考えられています。\nヒキガエルはコオロギなどの昆虫を捕まえて食べようと、素早く舌を伸ばしています。しかし、虫はヒキガエルの舌が来ると気流の変化で分かるので、違う方向へ逃げようとします。舌の動きで気流を作り、ヒキガエルの舌より先に昆虫に到達させます。これで昆虫は逃げられます。気流を感知する感覚器は、コオロギの腹部の先端から左右に長く突き出た尾状葉にあります。尾葉にはたくさんの感覚毛があります。毛が倒れると、毛の根元にある感覚神経が興奮します。毛はそれぞれ違う方向に倒れやすいので、どこから風が吹いても、感覚毛のどれかが反応します。風速が速い時は長い感覚毛が倒れやすく、風速が変わると短い感覚毛が倒れやすくなります。\n感覚毛は、腹部末端神経節に情報を送ります。そこの神経細胞は感覚情報を組み合わせて、風の向きや強さを判断します。その情報は、巨大な介在神経を構成する太い軸索によって、すぐに胸部神経節に送られます。そこから手足の運動神経に信号が送られます。しかし、気流の変化に反応するだけでは、自然の風の変化にも逃げてしまいます。カエルの舌が向かって素早く動くと、気流の速度に大きな変化が生まれます。そのような時にしか反応しないのはこのためです。感覚毛には、流速のセンサーである長い感覚毛と、気流の速さの変化のセンサーである短い感覚毛の両方が存在します。神経系はこれらの情報をもとに、逃げるのかどうか、どの方向に逃げるのかを判断しています。流速センサーは気流変化センサーよりも感度が高いので、まず空気の流れが近づいているのを感じ取って準備をし、気流速度が変化した時に、ヒキガエルの舌が急に近づいてくるので逃げようとします。\n夜間の蝙蝠は超音波を出し、反射波から昆虫などの形や距離、方向、速度などを判断しています。水中で生活し、暗かったり濁っていたりしていてよく見えなくても魚を捕まえる海豚も、この方法を利用しています。\n夜間に飛ぶ蛾の中には、蛾を食べる蝙蝠が出す超音波を聞き分けられる個体もいます。蝙蝠は反射波を聞かなければ蛾を見つけられないので、蛾は蝙蝠より先に蝙蝠の存在を確認出来ます。蛾は超音波を浴びると、羽をたたんで下に潜ります。そのため、蝙蝠は蛾の行き先を予測しにくくなります。\n雛を持つ雌の鶏は、聴覚的かぎ刺激にでしか救いません。何度も目の前で襲われていても、雛が「悲鳴」をあげるまで救いません。弱くて鳴けない雛は、「無視」されて、踏みつけてしまう場合もあります。逆に、雛の悲鳴をレコーダーで記録しておけば、襲われていなくても救う場合もあります。また、蝙蝠や海豚の超音波を利用する定位は、反響定位(エコーロケーション)ともいわれます。エコーは、反響やこだまと同じ意味です。\n蜜蜂は、蜜や花粉を求めて約100キロ平方メートルの範囲を移動します。採餌蜂は良い場所を見つけると、巣箱に戻り、特別なダンスをします。餌場が50メートルから100メートル離れている場合、他の蜂に知らせるために円形ダンスをします。餌場の位置(方向と距離)が遠い場合、尻振りダンス(8の字ダンス)を踊って他の蜂に知らせます。\n尻振りダンス(8の字ダンス)は、腹部を左右に動かして音を出す尻振り走行と羽を振って音を出し、体の周りを半周しながら元の位置に戻ってくる走行があります。尻振りダンスでは、直進する方向が餌場の方向を示しています。また、尻振り走行の時間は、餌場までの距離を示しています。屋外の水平面では、尾の振り方で餌場の方向を示します。ところが、暗い巣箱の中の垂直な巣板では、太陽の方向が垂直な巣板の上がり方に置き換わります。つまり、太陽に対する餌場への角度は、尻振り走行の真上と真下の方向(鉛直方向)と太陽間の角度になります。採餌蜂の行動に追従する蜂(追従蜂)は、尻振りダンス(8の字ダンス)による気流の振動や蜂についた花の匂いに気づき、餌場への行き方を教えてくれます。\n蜜蜂の触角には、気流の振動や花の匂いを感知する受容体があります。この受容体からの情報は、触角の神経によって脳の介在ニューロンへと伝えられます。脳の介在神経細胞は、気流の振動の刺激と匂いの刺激との相互作用によって、暗い巣の中でも情報を得られるような仕組みになっています。この情報をさらに脳内の神経回路で処理すると、追跡蜂の尻振りダンスの情報が読み取れると考えられています。\n蜜蜂は、1匹の女王蜂と数千から数万匹の雌の働き蜂、数百匹の雄の働き蜂からなる集団で暮らす社会性昆虫です。このように、働き蜂は年をとると、蜜蜂の群れを維持するために手分けして働くようになります。一般に、孵化したばかりの働きバチは幼虫の世話をします。そして、大きくなって記憶力や学習能力が高まると、巣を出て周りの景色や目印を覚えたり、食事の場所を探したり、蜜や花粉を巣に運んだりします。餌場が良かったら、尻振りダンス(8の字ダンス)をします。餌を探しに出かける働き蜂には、採餌を制御する遺伝子が多く存在しています。この遺伝子を変化させると、若い働き蜂が餌を探しに出かけるようになります。この変化が正常なら、環境が変わったり、蜜蜂が成長したりした時に起こるようにプログラムされていると思われます。\n季節が変わると、場所によって様々な花が咲きます。その時、よい餌場が簡単に見つかるとは限りません。また、花蜜の量や質も時期や時間を通して変化します。蜜蜂は、数千から数万匹の群れを養うために必要な大量の蜜を手に入れるため、尻振りダンスで仲間に知らせます。巣箱の南北に餌場を設置して、低濃度のスクロース水溶液と高濃度のスクロース水溶液をそれぞれ入れました。昼に、餌場に来た採餌蜂の数を数えました。その後、北と南の餌場の濃度を入れ替えると、高濃度のスクロース水溶液の餌場に行く採餌蜂が増えました。つまり、尻振りダンスは環境の変化に素早く対応するので、より多くの採餌蜂をよい餌場に集めて、生存と繁殖をしやすくしていると考えられます。\n蜜蜂とその近縁種には、マルハナバチ類、ハリナシバチ類、シタバチ類、蜜蜂類の4種類がいます。彼らの共通の祖先は、採餌蜂が採餌行動を促すフェロモンを分泌して翅や胸部を動かしながら、良い餌場を見つけては巣に戻るという原始的なダンスを覚えたと考えられています。そして、蜜蜂類と共通の祖先を持つマルハナバチ類の仲間は、胸部振動の長さと回数で餌場の質を示す招集ダンスを手に入れました。ハリナシバチの中には、フェロモンを使って蜂に餌場を知らせる種類もいます。このフェロモンは、採餌蜂も引き寄せてしまいます。また、蜜蜂類は尻振り走行の方向で餌場の方向を示し、尻振り走行の長さで餌場までの距離を示す尻振りダンス(8の字ダンス)を身につけたと考えられています。\n太陽は東から昇り、西に沈みます。日中に移動する鳥達は、太陽の位置を利用して、目的地までどの方向に飛べばよいか考えます。このように、太陽コンパスでは、太陽がどこにあるかで進路を決めています。太陽の位置は一日中変化しているので、鳥は時間帯によって太陽の向きを調整しながら、どの方向に移動すればよいかを考えています。これは、生物時計(体内時計)と呼ばれる仕組みで実現しています。一方、夜間に移動する鳥は、北極星とその周りの星で出来た星座コンパスを使って、方向を決めています。また、空が曇って太陽や星が見えない時、駒鳥や鳩は地磁気コンパスとも呼ばれる地磁気分布パターンを使って自分のいる場所を確認していると考えられています。\n飛び立つ時期になると、籠の中のホシムクドリは一定方向に羽ばたきます。そこで、鳥達が旅立つ時に、同じ間隔に並んでいる6つの窓から日光が入るような檻に入れました。しかし、それぞれの窓には鏡がついていて、鏡の向きで檻に入ってくる光の向きを変えられます。鏡によって太陽の光の向きが変わると、ホシムクドリは頭の向きを変えて、羽ばたきます。このように太陽コンパスは移動の方向を把握するために使われています。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1_%E7%94%9F%E7%89%A9/%E7%94%9F%E5%BE%97%E7%9A%84%E8%A1%8C%E5%8B%95"} {"text": "動物の行動の2回目の講義は学習についてです。\n学習とは、動物が生まれた時から受けている刺激に反応して、行動を変化させたり、新しい行動を行ったりする様子をいいます。一般に、神経系が発達している動物ほど、早く学習出来ます。\nアメフラシは背中にある水管を鰓に沿わせて呼吸し、海水を出し入れしています。アメフラシの鰓に触れると、鰓引っ込め反射が起こります。この時、鰓と水管が収縮し、体内に引き戻されます。水管への接触刺激は鰓の引っ込め反射を起こすには弱く、何度も刺激を与えると鰓が引っ込められなくなります。このような単純な学習を慣れといいます。このままでは、接触刺激(脱慣れ)により鰓が再び出てきてしまいます。しかし、その刺激が長く繰り返されると、数日〜数週間処置しなくても鰓が元に戻らなくなります。これを長期の慣れといいます。\nアメフラシの鰓引っ込め反射に関して、水管感覚ニューロン・シナプス・運動ニューロンが接続しています。水管感覚ニューロンの軸索末端に活動電位が送られると、電位依存性カルシウムチャネルが開きます。この時、カルシウムイオンが流入し、シナプス小胞の神経伝達物質がシナプス間隙に放出されます。この反応を何度も繰り返すと、シナプス小胞やカルシウムチャネルが少なくなり、神経伝達物質の放出も少なくなります。さらに、運動ニューロンのシナプス後電位は小さくなります。そのため、反応が起こりにくくなります。これを短期の慣れといいます。長期の慣れでは、シナプス小胞の開口領域が狭くなります。そのため、シナプス小胞の量やカルシウムチャネルの不活性化が回復しても、反応しにくくなります。このように、生得的と思われていた多くの反射神経が、学習によって柔軟に変化する場合もあります。また、学習は、すでにあったシナプスの伝達効率が変化する場合でも起こります。\nアメフラシの尾部に電気を流すと、痛覚刺激として、通常は鰓の引き込み反射を起こさないような水管への弱い刺激でも敏感に反応するようになります。鋭敏化とは、この過程の名称です。この場合、何度も何度も刺激を与えると、鋭敏化が長く続きます。この場合、鋭敏化は水管感覚ニューロンの軸索末端と介在ニューロンの軸索末端がつながって起こります。これにより、反応が強くなったり、速くなったりします。介在ニューロンからの神経伝達物質が水管感覚ニューロンの軸索末端の受容体につながると、カリウムチャネルが消極的になり、カリウムイオンの流出が減少し、電位依存性カルシウムチャネルからカルシウムイオンの流入が増加します。これにより、活動電位の持続時間が長くなります。その結果、シナプス小胞がより多く開き、神経伝達物質がより多く放出されるようになり、運動ニューロンの興奮性シナプス後電位が上昇し、興奮しやすくなります。また、介在ニューロンが繰り返し作用すると、遺伝子発現により、水管感覚ニューロンの軸索末端が枝分かれするようになります。したがって、カリウムチャネルが遮断されなくなった場合でも、より反応しやすくなります。\n空腹の犬は、肉片を見ると、唾液を流します。無条件刺激とは、訓練しなくても自然にある行動を起こさせる重要な刺激をいいます。\n唾液分泌とは全く関係のない行動しか起こせない場合もあります。例えば、犬に肉片を与え、同時に何度もブザー音を立てると、ブザー音だけで唾液が出やすくなります。このブザー音が条件刺激といい、古典的条件付けとは、無条件刺激と条件刺激の組み合わせから学習していく過程です。音だけで唾液分泌が起こるのは、聴覚の中枢と唾液分泌の中枢とが何らかの関係を持っているからです。\nレバーを押すと餌が出てくる装置のついた箱に、お腹を空かせた鼠を入れると、最初は偶然にレバーが押されます。その後、もっと餌をもらおうと箱の中の色々な部分を触ると、レバーを押せば餌が出てくると学習し、どんどんレバーを押すようになります。これは、オペラント条件付けと呼ばれます。鼠は、鍵となる刺激がなくても勝手に行動して、自分の行動と報酬を結びつけて学習します。レバーを押して毎回電気ショックを受けると、レバーを押す回数が減ります。これもオペラント条件付けの1つです。\n鼠など学習能力の高い動物は、環境の中にある物の位置を記憶出来ます。例えば、迷路の最初に鼠を置き、最後に餌を置くと、鼠は行き止まりに何度もぶつかり、餌にたどり着けなくなります。しかし、鼠はこれを何度も繰り返しているうちに、餌の場所と行き方を覚えてしまいます。そうすると、行き止まりが少なくなり、早く餌にたどり着けるようになります。試行錯誤とは、失敗を何度も繰り返しながら修正していく学習方法です。\n動物の問題解決能力は、迂回実験で研究されています。この実験では、動物が見たり嗅いだり出来る餌に、障壁があるためにすぐには近づけません。餌を手に入れる前に、餌から遠ざかる(迂回する)必要があります。チンパンジーは、この実験を最初から正しく行える唯一の動物です。鼠や犬、アライグマは何度か失敗して迂回路を覚えます。チンパンジーのように最初から迂回する場合、どうなるかを知っていて、その通りに行動するという意味です。つまり、大脳が発達した動物は、感覚器からの情報を、すでに解決した類似の問題と比較しながら、状況を判断して、初めて見る問題をどう解決するか考えます。これを知能行動といいます。\nチンパンジーは折れた木の枝などを拾ってきて、長くしたり強くしたりして、シロアリの巣穴に突き刺してシロアリを捕まえます。チンパンジーは、手では届かないシロアリの巣に、棒や小枝を使って近づきます。また、チンパンジーは枝を使って、穴の開いた容器に入った果物を穴に押し込んだり、引っ張り出したりして、食べます。チンパンジーは、シロアリを食べるための道具を作るために材料を探し、使えるので、とても賢いです。\n宮崎県幸島で、子猿の雌が日本猿の群れに芋の洗い方を教え、今では群れ全員が芋の洗い方をしています。長野県地獄谷の日本猿の群れは外で水浴びをしています。しかし、地獄谷の日本猿は、汚れたジャガイモを洗いません。これが、同じ行動をとる動物の集団を指す動物の文化という言葉の意味です。\n雁や鴨は、孵化後すぐに巣を出て、親と一緒に暮らし、親は雁や鴨を保護しながら世話をします。孵化後数日間は感受期(臨界期)と呼ばれ、雁や鴨は目にした動くものを親と見分けられます。この強い記憶は刷り込み(インプリンティング)と呼ばれ、生後一定期間で行われます。自然の環境では、感受期に雛は血の繋がった親にしか近づかないので、誤って他の親を追いかけてしまう心配はありません。親の近くにいれば、雛は保護や世話を受けられるので、生きられる可能性が高まります。でも、試しに玩具を動かしてみるなど、親以外にも印象を残したりもします。刷り込みは生得的行動か習得的行動のどちらなのでしょうか?刷り込みは、生まれた後、子供が親を認識し、記憶するために学ぶ必要があるため、完全な生得的行動ではありません。しかし、刷り込みは生得的行動なので、脳は親を認識し記憶出来るように発達します。つまり、刷り込みは完全な習得的行動でもありません。刷り込みのように、遺伝と環境が一緒になって生まれる行動は、簡単に生得的行動と習得的行動のどちらにも分けられません。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1_%E7%94%9F%E7%89%A9/%E5%AD%A6%E7%BF%92"} {"text": "花の各部分は、植物ごとに色や形、数が違っても、花のつくりは同じです。花は同心円状に配置されており、4つの領域に分かれています。外側から見て、これらの領域は領域1から領域4と呼ばれます。萼片は領域1、花弁は領域2、雄蕊は領域3、雌蕊は領域4で作られています。ヘチマの花のような雄花と雌花には、その雌蕊と雄蕊の痕跡が残っています。この組み合わせを模式図にしたのが花式図です。花器官とは、このような花の4つの部分を指します。\n植物の種類ごとに一定の条件を満たすと、それまで葉を作っていた頂端分裂組織から、花器官が違って見えるようになります。葉から花までの違いを変えるには、器官を決定する複数の遺伝子のはたらきに由来します。シロイヌナズナやキンギョソウでは、ある遺伝子が機能を失うと、花の形が変わるホメオティック突然変異を起こすそうです。このように、A、B、Cの遺伝子は、花の器官がどのように作られるかを制御しています。また、今回の調査結果、A、B、Cの遺伝子からつくられる蛋白質は、花器官の成長に必要な異なる遺伝子の転写を制御するはたらきをもっていました。ABCモデルとは、花器官が時間とともに成長して、変化する様子を表した分子構造モデルです。A、B、Cは次のようにはたらくと考えられています。\nAクラス遺伝子は領域1と2、Bクラス遺伝子は領域2と3、Cクラス遺伝子は領域3と4ではたらきます。一番外側の領域1では、Aクラス遺伝子のみがはたらき、萼片の形が違って見えます。その内側の領域2では、Aクラス遺伝子とBクラス遺伝子がはたらき、花弁の形が違って見えます。さらにその内側の領域3では、Bクラス遺伝子とCクラス遺伝子がはたらき、雄蕊の形が違って見えます。そして、最も内側の領域4では、Cクラス遺伝子のみがはたらき、雌蕊の形が違って見えます。\nまた、Aクラス遺伝子とCクラス遺伝子は、お互いのはたらきを抑制します。言い換えると、次の事実がいえます。萼片(領域1)と花弁(領域2)では、Aクラス遺伝子がCクラス遺伝子のはたらきを抑制しています。一方、雄蕊(領域3)と雌蕊(領域4)では、Cクラス遺伝子がAクラス遺伝子のはたらきを抑制しています。したがって、Aクラス遺伝子が働かなくなると、外側の領域1、領域2でもCクラス遺伝子が働き、花全体でCクラス遺伝子がはたらきます。このため、萼片や花弁は変化せず、最も外側の領域1が雌蕊、その内側の領域2が雄蕊になります。一方、Cクラス遺伝子がはたらかなくなると、Aクラス遺伝子も領域3、領域4ではたらくようになります。その結果、雄蕊ではなく花弁が領域3で作られ、雌蕊ではなく萼片が領域4で作られます。Cクラス遺伝子は頂点の細胞分裂を止めるはたらきも持っているので、Cクラス遺伝子を持たない突然変異体はこのはたらきを失い、細胞分裂は進み、萼片と花弁は離れ続けるので、萼片と花弁が増えます。Bクラス遺伝子が機能を失うと、領域2の花弁は萼片に、領域3の雄蕊は雌蕊に変化します。また、A、B、Cの3クラスの遺伝子の機能が全て失われると、花器官は変化しないで、代わりに葉が成長します。\n動物の器官形成では、区分けごとに異なるボックス遺伝子が働き、個性的な仕組みが作られています。これは、花の形が変わるABCモデルのような仕組みです。実は、動物のボックス遺伝子と同じように、各クラスの遺伝子に何をしたらよいかを指示する調節遺伝子です。花を作るA、B、Cクラスの遺伝子に備わる転写因子にはDNA結合領域(MADSボックス)があります。調整遺伝子から作られる調整蛋白質の種類とその組み合わせによって調節されています。細胞の分化の方向は、動物でも植物でも同じ仕組みです。\nシロイヌナズナは、北半球の温帯に生育するアブラナ科の植物です。結構地味で特別な特徴がありませんが、ショウジョウバエのように遺伝子研究に利用されているのは、次のような理由からです。\n遺伝学や分子生物学の研究材料として注目されたのは、各ゲノムあたりのDNA量が極めて少なかったからです。このうち、シロイヌナズナは、初めて全ゲノムが解読された植物です。これは2000年末に解読されました。このように研究基盤が整えられたので、現在、植物科学のあらゆる分野でシロイヌナズナを使った研究が行われています。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1_%E7%94%9F%E7%89%A9/%E6%A4%8D%E7%89%A9%E3%81%AE%E7%94%9F%E6%AE%96%E3%81%A8%E7%99%BA%E7%94%9F"} {"text": "頂端分裂組織で分裂した細胞が分化を始めると、茎や根などになります。オーキシンとサイトカイニンは、植物細胞の分化に重要な役割を果たしています。\nまず、それぞれのホルモンが組織培養でどのような働きをするのかを見てみましょう。植物の小片を切り取って、オーキシンやサイトカイニンを多く含む培地で培養すると、カルスと呼ばれる未分化な細胞の塊として成長する傾向があります。脱分化とは、分化した臓器や組織が、その組織を分化させた特徴を消失する過程をいいます。オーキシンやサイトカイニンの量によって、カルスは茎や根に分化します。一般に、オーキシンの量が少なく、サイトカイニンの量が多いと、茎や葉が分化します。根は、オーキシンの量が多く、サイトカイニンの量が少ない時に分化します。この2つのホルモンの量を調節すると、植物の体の一部から全く新しい植物を育てられます。このように、全能性[1]とは、1つの細胞が分化すると、あらゆる種類の細胞を作れるという性質です[2]。\nまた、オーキシンは、根が様々な方法で分化するのを助けますが、これは挿し木でも見れます。茎などの植物の一部をオーキシン溶液につけると、不定根と呼ばれる根が出来ます。不定根とは、茎や葉のような根ではない部分から生える根をいいます。オーキシンは、園芸で不定根を作るために使われます。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1_%E7%94%9F%E7%89%A9/%E7%99%BA%E8%8A%BD%E3%81%A8%E6%88%90%E9%95%B7"} {"text": "\nある地域に住む同種の個体(indvidual)の群れを個体群(こたいぐん、population)といいます。ゾウの群れでもウマの群れでも、ハエの群れでも、同種の個体の群れでさえあれば、個体群といいます。\nショウジョウバエの雄と雌とのつがいを、エサの足りた飼育ビンなどの中で飼育すると、初めは個体数が急激に増加します。\nもし、エサが限りなく豊富にあり、居住空間も広ければ、どんどん増えていくことになります。しかし、実際には、エサには限りがあります。\nある環境において、個体数の密度が高まると、食べ物の不足や、居住空間の減少、排出物の増加などによって、生活空間が悪化します。その結果、生まれてくる子が減ったり、あるいは生存競争が激しくなって死亡率が増えるなどして、個体数の増加が抑えられます。そのため、個体数の時間についてのグラフを書くと、図のようにS字型になります。このグラフのように、個体群における個体数の推移を描いたグラフを個体群の成長曲線(せいちょうきょくせん、growth curve)といいます。\n動物でも植物でも、このような現象が見られます。\nある環境においての、個体数の最大数を環境収容力(かんきょう しゅうようりょく、carrying capacity)といいます。\nまた、密度によって、個体の成長や発育などが変化することを密度効果(みつど こうか、density effect)といいます。\n植物でも密度効果はあります。\nダイズでは、種をまいたときの密度に関わらず最終的な単位面積あたりの総重量が、ほぼ同じ値になります。\nこれを最終収量一定の法則(さいしゅうしゅうりょう いってい の ほうそく、law of constant final yield)といいます。\nトノサマバッタでは、幼虫時の密度で、成虫になったときの様子が変わる。\n幼虫時に密度が低いと、成虫は孤独相(こどくそう、solitarious phase)になります。子には遺伝しありません。\n孤独相\nいっぽう、幼虫時に密度が高いと、成虫は群生相(ぐんせいそう)になります。子には遺伝しありません。\n群生相\n移動能力の高さは、新しい環境を探すためのものです。\nこのように、個体群密度によって、同じ種の形態や行動に違いが出ることを相変異(そうへんい)といいます。アブラムシやヨトウガでも相変異が見られます。\n動物の、ある個体群で、個体の生存数を数表にしたものを生命表(せいめいひょう、life table)といい、生命表の内容をグラフにしたものを生存曲線(survival curve)といいます。\n種によって生存曲線は違い、主に3つの型に分かれます。\n晩死型と早死型と平均型という3つです。\n晩死型は、死期が寿命の近くです。早死型は、生まれてから、すぐに死ぬ個体が多くあります。平均型は、時期によらず死亡率が、ほぼ一定です。\n魚類など、産卵数の多い生物は、子育てをせず、そのため早死型が多くあります。\nいっぽう、大型の哺乳類は、晩死型です。\n鳥類・爬虫類などは平均型です。\n\nハチ、アリ、シロアリなどでは、同種の個体が密集して生活し、コロニーとよばれる群れを形成しています。これらの昆虫(ハチ、アリ、シロアリ)は、社会性昆虫と呼ばれます。\nシロアリの場合、産卵を行う個体は、ふつうは1匹に限られます。その産卵を行うアリが、女王アリです。\n女王アリ以外のメスは不妊です。\n女王以外のアリには、ワーカーや兵アリがいます。\nワーカーとは、いわゆる「はたらきアリ」のことで、食物の運搬や幼虫の世話などの仕事をする個体のことです。\nシロアリのワーカーや兵アリには生殖能力が無い。\nハチも同様に、女王バチやワーカーがいます。ハチでも、産卵を行うのは女王ハチのみで、ワーカーや兵ハチには生殖能力が無い。\n(ほうかつ てきおうど)\nニワトリやニホンザルやオオカミなどで、よく見られます。\nニワトリの場合、何羽かを檻(おり)の中で買うと、つつきあいをして順位が決まる。順位の高いほうが、つつく。順位のひくいほうが、つつかれます。\nニホンザルの場合、順位の高い個体のほうが、順位の低い個体の尻の上に乗っかり、これをマウンティングといいます。\nある種の個体群について、必要とする資源の特徴や、活動時間などのように、生態系の中で占めている地位を生態的地位(ニッチ、niche)といいます。\n異種の個体群のニッチが似ている場合、ニッチを奪い合って競争が起きる場合が多いので、そのようなニッチの似ている異種個体群が共存するのは難しい。\nたとえばゾウリムシ(P.caudatum)とヒメゾウリムシ(P.aurelia)は、ともに細菌を食物とするためニッチが似ており、よって共存は難しい。\nいっぽう、タカとフクロウは、食べ物が似ていますが、活動時間が違うため、自然界なら共存は可能です。\nゾウリムシとヒメゾウリムシのように、異種がニッチを奪い合って競争することを種間競走(しゅかん きょうそう、interspecific competition)といいます。\nヒメゾウリムシのほうが体が小く、そのため、少ない食料でもヒメゾウリムシは有利です。なので、ヒメゾウリムシとゾウリムシを、たとえば狭い容器などに入れて競走させると、ゾウリムシが競争にやぶれて減少し、やがてゾウリムシは絶滅するという場合が多くあります。\nこのように、異種が競争して、どちらかが絶滅することを競走的排除(きょうそうてき はいじょ、competitive exclusion)といいます。\nニッチが異なっていれば、同じ場所であっても、異種の個体群が共存できる場合があります。\nたとえばミドリゾウリムシとゾウリムシは、ニッチが微妙に異なっており、そのため共存しやすい。ミドリゾウリムシは光合成でエネルギーを生産出来ます。\n縄張り(テリトリー)\nシジュウカラは一夫一妻制。\nアリとアブラムシ\nサメとコバンザメ\n寄生者、宿主(しゅくしゅ)\n寒冷地ほど、体が大型化。\nホッキョクグマ(大きい)と、ツキノワグマ(小さい )との関係など。\n寒冷地の動物は、耳などの突起物が小型です。寒冷地であるほど、突起物が小型化しています。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1_%E7%94%9F%E7%89%A9/%E5%80%8B%E4%BD%93%E7%BE%A4%E3%81%A8%E7%94%9F%E7%89%A9%E7%BE%A4%E9%9B%86"} {"text": "※ この解説は、 旧生物ⅠB、旧生物Ⅱ、中学校理科のWikibooks を敬体に直したものです。そのため、現在の高校や大学受験では、不適切な可能性があります。\n生物の内容が全範囲 完成次第、適切な内容に書き換えようと思います。(作成者より)\n本章では、生物基礎・生物両方とも共通する内容となります。\n動物性プランクトンは、エサとして、植物性プランクトンを食べています。\n具体的に言うと、ミジンコやゾウリムシなどの動物性プランクトンは、ケイソウやアオミドロなどの植物性プランクトンを食べます。\nそして、動物性プランクトンも、メダカなどの小さな魚に食べられます。\nメダカなどの小さな魚も、さらに大きな魚に、エサとして食べられます。\nというふうに、より大型の生き物などに食べられていきます。\n生きてる間は食べられずに寿命を迎えて死んだ生物も、微生物などにエサとして食べられていきます。\nこのように、生き物同士が、「食べる・食べられる」 の関係を通じて関わり合っていることを 食物連鎖(しょくもつれんさ、food chain) といいます。食べる側を捕食者(ほしょくしゃ、predator)といい、食べられる側を被食者(ひしょくしゃ)といいます。ミジンコとメダカの関係で言えば、メダカが捕食者、ミジンコが被食者です。捕食者も、さらに上位の捕食者によって食べられて、捕食者から被食者へとなる場合もよくあります。このように、捕食者-被食者の関係は、立場によって変わる相対的なものです。\n実際には、捕食者が1種類の生物だけを食べることはまれで、2種類以上のさまざまな種類の生物を食べます。食べられる側も、2種類以上の捕食者によって食べられます。このため、食物連鎖は、けっして1本道のつながりではなく、網状のつながりになっており、この食物連鎖の網状のつながりを食物網(しょくもつもう、food web)といいます。\n食物連鎖は、なにも水中の生き物だけでなく、陸上の生き物にも当てはまる考え方です。\n植物など、光合成を行って有機物を合成する生物のことを 生産者(せいさんしゃ、producer) と言います。動物のように、別の生物を食べる生き物を 消費者(しょうひしゃ、consumer) といいます。消費者は、生産者の合成した有機物を、直接もしくは間接に摂取していると見なす。\n動物は、他の動物もしくは植物を食べているので、動物は全て消費者です。肉食動物(carnivore)も草食動物(herbivore)も、どちらとも消費者です。\n消費者のうち、草食動物のように、生産者を直接に食べる生物を一次消費者(primary consumer)といいます。その一次消費者を食べる肉食動物を二次消費者(secondary consumer)といいます。二次消費者を食べる動物を三次消費者といいます。さらに三次消費者を食べる生物を四次消費者といいます。\nなお、二次消費者を食べる三次消費者が一次消費者を食べるような場合もあります。このように、実際には、必ずしも直接に1段階下位の生物を食べるとは限りません。\nいっぽう、菌類(きんるい)や細菌類(さいきんるい)のように、(落ち葉や 動物の死がい や 動物の糞尿(ふんにょう)などの)動植物の遺体や排泄物などの有機物を分解して無機物にする生物を分解者(ぶんかいしゃ、decomposer)と言います。\n菌類とは、いわゆるカビやキノコのことです。シイタケやマツタケは菌類です。アオカビやクロカビは菌類です。\n細菌類とは、例えば、大腸菌(だいちょうきん)、乳酸菌(にゅうさんきん)、納豆菌(なっとうきん)などが菌類です。\n分解によって、有機物は、二酸化炭素や水や窒素化合物などへと分解されます。さまざまな分解者によって有機物は分解されていき、最終的には無機物へと変わる。\nこれら、菌類や細菌類は、普通は、葉緑体を持っていないので、光合成によって栄養を作ることが出来ません。\n菌類は葉緑体を持っていないため、菌類は植物には、含めません。細菌類も、同様に、植物に含めません。\n菌類の栄養の取り方は、カビ・キノコともに、菌糸をのばして、落ち葉や動物の死骸などから、養分を吸収しています。\n一般的に、長期的に見れば、一次消費者の個体数は、生産者よりも少ありません。なぜなら、一次消費者が一時的に生産者よりも増えても、食べ物の植物が足りずに一次消費者は死んでしまうからです。同様に、二次消費者の個体数は、一次消費者よりも少ありません。\nなので、本ページの図のように、生産者の個体数と一次消費者・二次消費者・三次消費者・ … の個体数を積み上げていくと、三角形のピラミッド型の図になります。このような個体数を生産者・一次消費者・二次消費者・ … と積み上げた図を個体数ピラミッドといいます。\n同様に、生物量について、積み上げた図を生物量ピラミッド といいます。\n個体数ピラミッドや生物量ピラミッドをまとめて、生態ピラミッドといいます。\nこれらのピラミッドのように、生態系を構成する生物を、生産者を底辺として、一次消費者・二次消費者・ … と食物連鎖の段階によって段階的に分けることができ、これを栄養段階(えいよう だんかい)といいます。\n栄養は、おおむね、\nというふうに、移動していきます。そして、消費者も一生の最期には死ぬから、死んで分解されるので、栄養は分解者へと移動します。\n栄養素として食べられる物質も、このように循環していきます。\n\n物質は、生物どうしでは上記の食物連鎖のように循環をしますが、しかしエネルギーは循環せず、最終的には地球外(宇宙空間)に熱エネルギーなどとして出て行きます(※ 東京書籍、数研出版、実教出版、啓林館の見解)。 (※ 第一学習社の教科書を紛失したので、第一は分かりません。)\n生物の利用するエネルギーのおおもとは、ほとんどが太陽からの光エネルギーですので、光エネルギーが光合成などによって有機物に変えられるなどして化学エネルギーとして変換され、消費などによって熱エネルギーとして排出さて、その熱エネルギーが宇宙に放出されている、というような出来事になっています。\nつまり、エネルギーは生態系の中を循環はしていません。\nこのようなことから、検定教科書では「エネルギーは生態系の外に放出される」とか「エネルギーは生態系外に出ていく」などのように説明しています。\nある生態系の一定面積内において、一定期間において生産者が光合成した有機物の総量を総生産量(そう せいさんりょう)といいます。生産者である植物は、自身の生産した有機物の一部を、自身の呼吸で消費しています。呼吸によって使われた有機物の量を呼吸量といいます。\n総生産量から呼吸量を差し引いた量を、純生産量(じゅん せいさんりょう)といいます。\n純生産量の一部は、落ち葉となって枯れ落ちたり( 枯死量、(「こしりょう」) )、あるいは一時消費者によって捕食されたりする( 被食量、(「ひしょくりょう」) )ので、生産者の成長に使える量は、純生産量よりも低くなります。\n純生産量から、枯死量と被食量を差し引いた量を、成長量(せいちょうりょう)といいます。\n植物が成長に使える有機物の総量が、成長量です。\n消費者である動物は、食べた有機物の一部を、消化・吸収せずに排泄します。食べた有機物の総量を摂食量(せっしょくりょう)といいます。消化吸収せずに排出したぶんの量を、不消化排出量(ふしょうか はいしゅつりょう)といいます。\n消費者の同化量は、摂食量から不消化排出量を差し引いた量ですので、次の式になります。\nさらに、ある動物の群れを、集団全体で見ると、その群れの一部の個体は、食物連鎖で、より上位の個体によって捕食されます。なので、群れの成長に使える有機物の総量から、被食量を差し引かねば、なりません。さらに、動物には寿命があり、かならずいつかは死滅します。死滅するぶんの量が死滅量です。\nこれらを考慮すると、消費者の成長量は、次の式になります。\nある環境において、生産者の被食量は、一次消費者の摂食量と等しい。\n同様に、一時消費者の被食量は、二次消費者の摂食量と等しい。\n食物連鎖で生物間を移動する物質は栄養素だけではなく、生命には望ましくない有害物も、食物連鎖を移動していきます。\n例えば、かつて農薬として使用されていたDDTは、自然界では分解されにくく、脂肪に蓄積しやすく、そのため食物連鎖を通じて高次の消費者へも取り込まれ、動物に害をおよばしました。\n生物内で分解・排出できない物質は、体内に蓄積しやすいという特徴があります。さらに、その生物を食べる消費者の体には、もっと多く蓄積しやすい。このため、生態ピラミッドで上位の生物ほど、高濃度で、その物質が存在しているという現象が起き、この現象を生物濃縮(せいぶつ のうしゅく、biological concentration)といいます。\n毒性のある物質で、生物濃縮を起こす物質によって、高次の消費者を死亡させたり、高次の消費者の生命が脅かされた事例が過去に起きましました。\n生物濃縮を起こす、危険物質は、DDTのほか、PCB(ポリ塩化ビフェニル)や有機水銀などです。\n現在、アメリカおよび日本などでは、DDTの使用は禁止されています。\n何らかの理由で、生産量ピラミッド中での、ある生物の個体数の比率が変わっても、時間が経てば、もとどおりに近づいていきます。\nそのため、次第に、元通りに近づいていきます。\n他の場合も考えてみましょう。\nつりあいの状態から、なんらかの理由で、肉食動物が増えた場合も考えよう。仮に、この状態を「(肉食動物=増)」と書くとしましょう。\nこのように、食物連鎖を通じて、個体数の比率は調節されています。\n(※ 画像を募集中。カナダでの、オオヤマネコ(捕食者)とカンジキウサギ(被食者)の個体数のグラフなどを作成してください。)\n環境破壊や森林伐採などで、ある地域で、大規模に森林が破壊されてしまうと、生産量ピラミッドの最下段の生産者が減ってしまうので、上の段の消費者の動物も、その地域では生きられなくなってしまう。\n人工的な環境破壊のほかにも、火山の噴火、山くずれ、洪水などの自然災害で、生物の量が大幅に減る場合もあります。\n現在の日本に生息している ブラックバスの一種(オオクチバス) や アメリカザリガニ やブルーギル などは、もともとの生息環境は外国ですが、人間の活動によって日本国内に持ち込まれ、日本に定着した生物です。このような外部から、ある生態系に持ち込まれた生物を、外来生物(がいらい せいぶつ)といいます。\nある生態系に、遠く離れた別の場所から持ち込まれた外来生物が入ってきてしまうと、(天敵がいない等の理由で外来生物が大繁殖しやすく、その結果、)持ち込まれた先の場所の生態系の安定が崩れます。なぜなら、その外来生物の天敵となる生物が、まだ、持ち込まれた先の場所には、いないからです。\nこのため、外来生物を持ち込まれた場所では、外来生物が増えてしまい、従来の生物で捕食対象などになった生物は減少していく場合が多くあります。\nその結果、外来生物によって(捕食対象などになった)従来の生物が単に減るだけでなく、絶滅ちかくにまで従来の生物が大幅に激減する場合もあります。(※ 検定教科書ではここまで書いていませんが、共通テストでここまでの知識を要求します。)\n外来生物の例として、オオクチバス(ブラックバスの一種) や ブルーギル という肉食の魚の例があり、これら肉食の外来生物の魚が在来の魚の稚魚を食べてしまうので、在来の魚の個体数が減少してしまうという問題も起きています。\n一説では、湖沼によっては、オオクチバスやブル-ギルなどの繁殖した湖沼にて従来の魚が激減しているという(※ 数研出版の教科書がその見解)。\n社会制度としては、上述のように外来生物が従来の生物に多大な悪影響を及ぼしかねないので、日本では法律で外来生物の持込みが規制されています。生態系を乱す恐れの特に高い生物種を「特定外来生物」に指定して、飼育や栽培・輸入などを規制したり、他にも日本政府は生物多様性条約の批准を受けて日本国内で『生物多様性国家戦略』などの構想を打ち立てたりしています。\n植物でも、セイタカアワダチソウ や セイヨウタンポポ などの外来生物があります。\n沖縄のマングース(ジャワマングース)も外来生物で、ハブの捕獲の目的で沖縄へと持ち込まれた。しかし、ハブ以外の生物も捕食してしまい、オキナワの固有種のアマミノクロウサギやヤンバルクイナなどを、マングースが捕食してしまうという問題が起こりました。また、ハブは夜行性で、そのためマングースとは行動時間が一致せず、ハブ捕獲の効果も低いことが分かりました。\n現在、環境省は、対策として、沖縄でマングースを捕獲しています。\n日本の外来生物には、これらのほか、アライグマ、カミツキガメ、ウシガエル、セイヨウオオマルハナバチなどが外来生物です。\n台風や山火事、土砂崩れや噴火など、環境に変化を与える現象を 攪乱(かくらん、かく乱) といいます。\nたとえば、台風で、熱帯のサンゴ礁が傷付くのも攪乱です。\n種の多様性について、いちばん多様性を多くする攪乱の規模は、攪乱が中程度の場合で、この理論を 中規模攪乱説(ちゅうきぼ かくらんせつ) といいます。\nたとえば熱帯のサンゴ礁では、中規模の台風が起きた方が、サンゴの種の多様性が高まることが知られています。オーストラリアのヘロン島でのサンゴ礁の調査で、このような中規模攪乱説どおりの事例が知られています。\nたとえば右の図のような地域の場合、30%くらいの被度で、もっとも種数が多くなります。\n攪乱が強すぎると、攪乱に強い種しか生き残れありません。\n攪乱が弱すぎると、通常時の競争に強い種しか、生き残れありません。\n人間が森林を伐採したりするなどの、人為的なことも攪乱です。\n森林の場合、攪乱がないと、陰樹ばかりになります。攪乱が起きて、噴火などで、いったん樹木が焼き払われると、そのあとの地には、まず陽樹が生えてくるようになります。\n里山(さとやま)など、人里ちかくの森林では、かつては人々が林業などで木材として森林資源を利用してたので、かく乱が適度に行われていました。ですが、最近では林業の後継者不足や経営難などで放置される森林も増えており、そのため木材として伐採されなくなり、攪乱されなくなったので、種の多様性が低下していると主張する者もいます。種の多様性確保のため、適度に木材などの森林資源を理容すべきだと主張する者もおり、日本国での小中高の公教育での検定教科書なども、そのような立場に立っています。\n持続可能な社会のためには、持続可能な生態系が必要です。人間が食べる動植物は、生態系があるからこそ生存できるのです。もし、動植物がいなくなれば、人間にとっても食べ物が無くなり、人間も滅ぶ。生態系の維持のためには、根本的な対策は、人間が、資源の消費や森林伐採された土地の利用などに基づいた現代の文明を見直して、消費を控え、持続可能な文明へと変えていく必要があるのかもしれありません。そのためには我慢をする事が今後の人類には必要で、今後はおそらく現代のような放漫な消費ができなくなり、かつて住宅地や工業用地などとして開発された土地のいくつかを農地や雑木林などにも戻す必要もあるかもしれありません。現時点で存在している里山を維持するだけでは、すでに宅地化などの開発によって消失した里山は、復活しないのです。\nまた国によっては人口も減らす必要もあり、おそらく今後は人間が不便も感じることもあるでしょう。\n学校教科書は、政治的に中立でなければならないので、具体的な環境対策には踏み込めありません。しかし、自然環境は、そのような人間の都合になどには、合わせてくれないのです。たとえば日本ではニホンオオカミや野生トキなど日本の固有種の動物のいくつかが絶滅しましたが、けっして自然環境は、日本人に合わせて、ニホンオオカミなどの生物の絶滅のスピードを緩めてなんて、くれなかったのです。日本の政治家や学校などが、「日本は素晴らしい国」だと言っても、日本での動植物の生態の歴史の観点から見れば、日本国および日本人は、ニホンオオカミや野生トキなどを絶滅させた環境破壊を行ったという、不名誉な実績のある国および国民なのです。人間の学生が「環境問題や環境の生物学について、勉強しよう」などと考えている間にも、人類が生態系に負荷を与える活動を続けていくかぎり、生物種は絶滅に近づいていくのです。\n商人や、一部の政治家や有権者にとっては、人間が資源を消費をするほうが商人が売買をしやすく、そのため税収も増えるので、彼らには都合が良い。しかし、そのような人間中心の都合に、生態系は合わせてくれありません。\n乱獲や農薬の乱用によって、絶滅したり激減した生物種も、世界の自然界には、事例が多くなっています。\n自然界だけが日本人の都合になんて合わせてくれないどころか、人間社会の内部ですら、日本以外の外国は、日本国の都合になんて合わせてくれません。例えば、魚などの海洋資源の漁獲の規制のありかたについての問題は、魚は各国の領海や沿岸を移動するため、漁獲資源は世界的な感心後とで、諸国が自国の立場を主張するので、たとえ他国の立場も尊重することはあっても、けっして他国の立場には従わありません。だから世界各国の主権国家は、日本国の命令には従わないので、仮に日本が自国の漁獲を伝統文化などと主張しても、外国からすれば、「日本の文化」などと主張するだけでは根拠不十分として、それだけでは日本国の主張には従ってくれません。また、ヨーロッパの国では、環境問題が国を越えて影響を与えることもあり、環境問題は国際問題として取り組むべきだと、考えられています。\nさらに、実は農地などの里山ですら人間が利用しやすいように環境を改変した人工的な環境で、決して本来の自然環境ではなく、農地などは人間にとって不要な森林を「開墾」(かいこん)などといって森林伐採するなどして環境破壊されたあとの状況なのです。(農業が森林伐採を伴うことは、検定教科書でも説明されています。[1])よく書籍などでは、途上国での焼畑(やきはた)農法が環境破壊として問題視されますが、何も農業による環境破壊は、焼畑に限った話ではないのです。水田も、森林伐採をした結果の場所なのです。ただし、アスファルトやコンクリートなどで舗装したりするのと比べれば、農地などの里山のほうが生態系への負荷が少なく、里山のほうがアスファルト舗装よりかは種の多様性が大きくてマシである、ということです。\nまた、ひとまとめに「農地」と言っても、現代の農法は、江戸時代などの古くからの農法とは異なり、現代では農業に化学肥料や農薬などを用いる場合が多く、暖房や照明なども用いる場合があり、現代の農法の多くは石油資源などの消費に頼った農法です。現代の食生活は、現代の農法を前提としており、その農法は、資源の消費を前提としています。いつの日か、人類は、食生活を見直す必要があるのかもしれません。\n\n絶滅のおそれのある生物種を絶滅不安種(ぜつめつきぐしゅ、an endangered species [2])といいます。絶滅不安種のリストをレッドリストといい、それらをまとめた本をレッドデータブックといいます。\n世界各国の政府や環境団体などは、絶滅を防ぐための取り組みとして、レッドデータブックをまとめています。日本では、環境省によりレッドデータブックが作成されています。\n動植物への乱獲などによる絶滅を防ぐため、絶滅不安種の取引を規制する条約としてワシントン条約などがあります。\n干潟は、渡り鳥の生息地になっていたり、貝などの生息地になっています。現在では、干潟は自然保護の観点から、環境保護をされています。だが昔は、干潟はたんなるドロの多い場所と考えられており、そのため、干拓や埋立て工事などによって、多くの干潟が消失しました。\nかつて冷蔵庫などの冷媒として利用されていたフロンガスという物質が原因で、オゾン層が破壊され減少していることが1980年代に分かりました。\nオゾン層は紫外線を吸収する性質があるので、オゾン層が破壊されると、地上にふりそそぐ紫外線が増え、生物が被害を受ける。\n大気中で二酸化炭素の濃度が上がると、地球の気温が上昇すると考えられています。大気中の二酸化炭素には、赤外線を吸収する性質があるので、その結果、熱を吸収する働きがあります。なので、二酸化炭素が増えると、地上の熱が宇宙に逃れず地球の周囲に閉じ込められるので、地上の気温が上がる、と考えられています。これが、温暖化の原因と考えられています。また、大気中の二酸化炭素が、熱を閉じ込める作用のことを 温室効果(おんしつ こうか) と言います。二酸化炭素など、熱を閉じ込める温室効果のある気体のことを温室効果ガスと言います。\n地球温暖化(ちきゅう おんだんか) の主な原因は、石油などの化石燃料(かせき ねんりょう)の大量使用によって、排気にふくまれる二酸化炭素(にさんかたんそ)により、空気中の二酸化炭素が増加したためと考えられています。他にも、森林伐採などによって光合成によって固定される炭素の総量が低下した結果も含まれる、という考えもあります。\nもし、温暖化が進行して、南極の大陸上の氷や氷河の氷が溶ければ、海面上昇します。低地が水没します。海抜の低いツバル、モルディブ、キリバスの国は、海水面が上がれば、国土の多くが水没してしまう恐れがあります。\nなお、北極の氷が溶けても、もともと北極海に浮かんでいる氷が水に変わるだけなので、海面は上昇しありません。\nまた、温暖化によって、熱帯で生息していた蚊の分布域が広がることが心配されています。マラリアを媒介する蚊のハマダラカの生息域が広がる恐れが有る。\n酸性雨の原因は、化石燃料の排気にふくまれる窒素酸化物などの物質が、雨の酸性化の原因と考えられています。酸性雨により、森林が枯れたり、湖や川の魚が死んだりする場合もあります。\n耕作や工業用地化や住宅地化を目的にした森林伐採などで、世界的に森林面積が減少しています。森林の減少により光合成量が減るので、温暖化の原因にもなっていると考えられています。また、動物の生息域が減るので、生態系の保護の観点からも、森林破壊が問題です。\nなお、温暖化の化石燃料以外の他の原因として、森林伐採などによる森林の減少によって、植物の光合成による二酸化炭素の吸収量が減ったのも理由の一つでは、という説もあります。\nまた、過度の森林伐採などにより、土壌の保水性が失われたために、その土地で植物が育たなくなる砂漠化(さばくか)も起きています。\n植物プランクトンによる光合成量と消費量のつりあう水深のことを補償深度(ほしょう しんど)といいます。\n補償深度は、外洋で水深100メートルまでに存在しています。\n湖の水質で窒素やリンなどの濃度の高くなると、硝酸塩やリンは植物プランクトンにとっての栄養でもあるので、植物プランクトンにとっての栄養に富んだ湖になるので、そのような窒素やリンの濃度の高い湖の事を富栄養湖(ふえいよう こ)といいます。生活排水や農業廃水などに含まれるリンや窒素(ちっそ)化合物などの成分の流入によって、富栄養湖になっている場合もあります。\nまた、湖や海などが、そのように窒素やリンなどの濃度の高い水質になる事を富栄養化(ふ えいようか, entrophication)といいます。\n一方、窒素やリンなどの濃度の低い湖のことは「貧栄養湖」(ひん えいようこ)という(※ 数研の教科書で紹介)。\n検定教科書によっては「窒素」ではなく「硝酸塩」(しょうさんえん)と書いてある場合もあるが(たとえば啓林館)、これは硝酸は窒素化合物だからです。(※ 高校の『化学基礎』や『専門化学』などで硝酸を習う。)\nここでいう「塩」は、けっして塩化ナトリウムのことではありません。そうではなく、「陽イオンと陰イオンとの化合物」というような意味での「塩」です。\n「硝酸塩」と書く場合は、「リン」のほうも「リン酸塩」と書いたほうがバランスが取れるでしょう。(実際、啓林館の教科書はそうです。)\nつまり、上記の富栄養湖の記述を「硝酸塩」および「リン酸塩」を使って言い換えると、下記のような言い回しになります。\nのような記述になろでしょう。\nさらに、これら硝酸塩やリン酸塩をまとめて、「栄養塩」もしくは「栄養塩類」という事もあります。「栄養塩」という語句を使って上記文を言い換えれば、\nのような記述にでも、なるでしょう。\nなお、「栄養塩」という用語は、けっしてプランクトン限定ではなく、一般の樹木や草などの植物の生育に必要な硝酸塩やリン酸塩などのことも「栄養塩」という(※ 数研の検定教科書『生物基礎』でも、植物の遷移の単元でそういう用語を使っている)。\n\nさて、「栄養」と聞くと、よさそうに聞こえるが、これはプランクトンにとっての栄養という意味ですので、水中の水草や魚などにとっては、プランクトンの増大が害になっている場合もあります。\nなぜなら、プランクトンにより日照がさえぎられるので(植物プランクトンは光の届く水面近くにいるので)、湖の底にある水草は光合成をできなくなります。\n自然界の河川や海水にも、栄養が溶けており、それらは水中の生物の生存にも必要な場合もあるし、プランクトンが少なすぎても、それを食べる魚介類が増えない(※ 数研の見解 )。また、微生物がそれら水中の窒素やリンを消費するなどして、ある程度の範囲内なら窒素やリンなどは自然に分解消費されていく(自然浄化)\nしかし栄養が過剰になりすぎると、プランクトンの大量発生などにより水系の生態系のバランスが崩れ、水草の現象や魚介類の大量死などの原因にもなります。過去には、過剰に富栄養化した湖や沿岸などで、魚介類の大量死が発見される場合もありました。(※ 数研の『生物基礎』に記述あり。)\n赤潮(あかしお、red tide)という海水面の赤くなる現象の原因も、水質の富栄養化です。(※ 数研の『生物基礎』に記述あり。)\nなお、淡水では、富栄養化により(赤潮ではなく)水面の青緑色になる「水の華」(みずのはな)が発生する(「アオコ」ともいう)。\nなお、プランクトンとは、水中を浮遊する微生物の総称で、そのうち光合成をするものが植物プランクトンとして分類されています。水中の、光合成しない浮遊微生物は動物プランクトンに分類されます。\n(※ 範囲外、資料集などに記載あり) \nアオコの植物プランクトンは、シアノバクテリア類です。(たぶん暗記は不要。市販の受験問題集でも、ここまで問われていない(※ 旺文社の入試標準問題精講で確認)。)\nなお、「シアノバクテリア」という品種名ではなく、ミクロキスティスなどの品種名で、そのミクロキスティスがシアノバクテリア類に含まれるという事(※ 数研の資料集『生物図録』229ページにそう書いてある)。\n(赤潮のプランクトンの名称については、資料集などに記載がありません。)\n赤潮で、色が赤く見える原因は、その赤潮を起こすプランクトンの色がわずかに赤いからで、そのプランクトンが大量発生しているから赤く見えるという仕組みです。[3]。\n※ つまり、決して、塩化ナトリウムの化学変化などで赤いわけではないようであるという事を、wikibooksでは言いたいです。\n※ 入試には出ませんが、河川では水が流れてしまうので、プランクトンも流れてしまうためか、アオコは発生しないのが通常です(※ 教科書では、いちいち説明されていませんが、丸暗記をしないで済ませるために、こんくらい分析しましょう)。\nまた、赤潮の発生しやすい場所は、沿岸部や内海です。検定教科書でも、「内海」だと明記しているものもある(数研出版など)。つまり、外洋では、赤潮は発生しづらい(※ 教科書では、いちいち説明されていない)。\nおそらくですが、沿岸から遠いと、栄養塩が陸地から流れてこなかったり、もしくは栄養塩が滞留しづらいからでしょう。(※ 丸暗記せず、分析して理解するようにしましょう。)\n\n有機物による水質の汚染の具合を定量的に測定するための指標として、BODおよびCODというのがあります。\nBODは、生物学的酸素要求量というもので、その水の単位量あたりの有機物を分解するのに、水中の微生物が必要とする酸素量が、どの程度かというものです。\n一方、CODは、化学的酸素要求量というもので、その水の有機物を酸化剤で酸化分解するのに必要な、化学計算に換算した際の酸素量のことをいいます。\nBODおよびCODは、数値が大きいほど、有機物による汚染がひどい事を表します。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1_%E7%94%9F%E7%89%A9/%E7%94%9F%E6%85%8B%E7%B3%BB"} {"text": "高等学校生物 > 生物I > 細胞 \n地球にいる生物の種類は、名前の付けられている種が175万種ほどである。\nその全ての生物は細胞(さいぼう)から成り立っており、\n細胞は生物の機能上・構造上の基本単位である。\n例えばヒトの体は200種類以上60兆個の細胞からできているといわれている。\nその細胞は消化管なら食べ物の消化吸収をする細胞があり、\n骨なら骨を作り出す細胞がある。\nこのページでは、\n細胞の基本的な機能と構造、\n細胞が体細胞分裂(somatic mitosis)によって分化していくこと、\n細胞が個体を作っていること、\nなどを扱う。\n細胞の大きさはそのほとんどが肉眼では見えないほど小さい。\n顕微鏡の発達によって観察できる分解能が高まり、\n細胞の内部構造が徐々に明らかになっていった。\n細胞は生物の種類やからだの部位によってさまざまな大きさで存在している。\n以下に顕微鏡の分解能と細胞などの大きさを挙げる。\n※分解能(接近した2点を見分けることのできる最小距離)\n細胞の見た目や働きはさまざまに異なるが、基本的な機能や構造は同じである。\n細胞は核(かく、nucleus)と細胞質(さいぼうしつ、cytoplasm)、それらを囲む細胞膜(さいぼうまく、cell membrane)からなる。細胞膜に包まれた内部の物質のうちから核を除いた部分のことを細胞質という。\nまた、核と細胞質を合わせて原形質(げんけいしつ、protoplasm)とも呼ぶ。つまり、細胞膜に包まれた内部の物質のことを原形質という。\n細胞質には、核を始めとして、ミトコンドリアなど、さまざまな機能と構造をもつ小さな器官があり、これらを細胞小器官(さいぼうしょうきかん、organelle)と呼ぶ。\n細胞小器官どうしの間は、水・タンパク質などで満たされており、これを細胞質基質(さいぼうしつ きしつ、cytoplasmic matrix)と呼ぶ。この細胞質基質には、酵素などのタンパク質やアミノ酸、グルコースなどが含まれている。\n核は、1つの細胞がふつう1つもっており、内部に染色体(chromosome)がある。\n染色体は、DNAとタンパク質からなる。\nDNAが遺伝子の情報を持っている。\n細胞分裂(cell division)の際にDNAは複製され、新しい細胞に分配される。\n顕微鏡で核を観察する場合は、酢酸カーミンや酢酸オルセイン液などの色素で、染色体を赤色に染色できる。\nそもそも、この染色現象こそが「染色体」という名前の由来である。\n核は、1~数個の核小体(nucleolus)を含み、その間を核液(nuclear sap)が満たしている。\n核の表面には核膜(かくまく、nuclear membrane)がある。\n核膜は、二重の薄い膜でできており、核膜孔(かくまくこう、nuclear pore)と呼ばれる多数の孔があり、核への物質の出入りに関わっている。\nDNAが遺伝子の本体であるが、染色体はDNAを含んでおり、核が染色体を含んでいるため、核が遺伝に深く関わっているのである。\n基本的には1つの細胞が1つの核をもつが、\n例外として、たとえばヒトの赤血球のように核をもたない細胞もあり、\nまたヒトの骨格筋の筋細胞のように1つの細胞が複数の核をもつものもある。\n核は細胞小器官の働きを制御しており、そのため細胞の生存や増殖に必要なものである。\nなので、赤血球のように核を失った細胞は長く生き続けることはできず、分裂することができない。\n核の中にあるDNAが、このような、細胞小器官の制御を行っている。\nアメーバをガラス板で核がある片(へん)と、核がない片とに切断すると、核がある片は増殖でき、核がない片は死ぬ。(アメーバの切断実験1)\nアメーバの核をガラス管で吸い取り、核と細胞質とに分けると、両方とも死ぬ。(アメーバの切断実験2)\nこのように核は細胞の生存や増殖に必要である。\n\n生物の細胞には、核をもたない原核細胞と、核をもつ真核細胞とがある。\n大腸菌などの細菌類や、ユレモなどのシアノバクテリア(ラン藻類)の細胞は、核を持たない。\nこれらの生物の細胞も染色体とそれに含まれるDNAはもっているが、それを包む核膜をもっていないので、核がない。\nこのような、核のない細胞のことを原核細胞(prokaryotic cell)と呼ぶ。\nまた、原核細胞でできた生物を原核生物(prokaryote)と呼ぶ。\n原核細胞の染色体とそれに含まれるDNAは細胞質基質の中にある。\n原核細胞は、ミトコンドリアや葉緑体などを持たない。\n原核細胞は、真核細胞よりも小さく内部構造も単純である。\nシアノバクテリアは、ミトコンドリアと葉緑体を持たない原核生物であるが、光合成を行う。\nこれに対して、染色体が核膜に包まれている細胞を真核細胞(eukaryotic cell)と呼ぶ。\nまた、真核細胞でできた生物を真核生物(eukaryote)と呼ぶ。\nほぼすべての真核生物では真核細胞にミトコンドリアが見られる。\nまた、植物の場合、真核細胞に葉緑体も見られる。\nミトコンドリアおよび葉緑体は、独自のDNAを持ち、それを含む細胞の核のDNAとは遺伝情報が異なる。\nこのため、おそらくミトコンドリアおよび葉緑体は、\n実はもともと、その受け入れ先の細胞とは別の生物だったが、\n受け入れ先の細胞に入り込み共生するようになったのだろう、と思われている。\nそして、ミトコンドリアまたは葉緑体を取り込んだ結果、生物界に真核細胞が出てきたものだと思われてる。\n細胞がミトコンドリアまたは葉緑体を取り込む前は、その細胞は原核細胞だったのだろうと思われている。このような説を、細胞内共生説または単に共生説という。\nミトコンドリア(mitochondria)は動物と植物の細胞に存在し、\n長さ1μm~数μm、幅0.5μm程度の粒状の細胞小器官であり\n化学反応によって酸素を消費して有機物を分解しエネルギーを得る呼吸(respiration)を行う。\nミトコンドリアの形は球形または円筒形の構造体で、\n外側にある外膜と内側にあるひだ状の内膜との2重膜をもつ。\n内膜がひだ状になった部分をクリステ(cristae)、内膜に囲まれた空間を満たす液体をマトリックス(matrix)と呼ぶ。\n呼吸に関わる酵素がクリステとマトリックスにふくまれており、この酵素で有機物を分解する。\nミトコンドリアの内膜でATPという物質を合成する。\n原核生物も呼吸を行うが、しかし原核細胞の呼吸は、けっしてミトコンドリアによるものではない。\n(※ 教科書の範囲外:)観察時のミトコンドリアの染色は、ヤヌスグリーンによって緑色に染色できる。\n葉緑体(chloroplast)は植物の細胞に存在し、直径5~10μm、厚さ2~3μmの凸レンズ形の器官であり、\n光エネルギーを使って水と二酸化炭素から炭水化物を合成する光合成(photosynthesis)を行う。\n葉緑体にはチラコイド(thylakoid)と呼ばれる扁平(へんぺい)な袋状の構造体があり、\nチラコイドが積み重なってグラナ(grana)と呼ばれるまとまりを作っており、\n一部の細長く延びたチラコイドが複数のグラナ間を結んでいる。\nその間をストロマ(stroma)と呼ばれる液体が満たしている。\nさらに、その周りを内膜と外膜の2重膜が囲んでいる。\nまた、葉緑体はクロロフィル(chlorophyll)という緑色の色素をふくんでいる。\n正確に言うと、クロロフィルは緑色の光を反射して、ほかの色の光を吸収する色素である。\nこのクロロフィルの反射特性のため、植物は緑色に見える。\nチラコイドの膜が、クロロフィルなどの色素をふくんでおり、これによって光エネルギーを吸収している。\nそして、ストロマにある酵素の働きによって、光合成の有機物合成を行っている。\n葉緑体は、ストロマに独自のDNAを持っている。\n\n液胞(えきほう、vacuole)は主に植物細胞にみられ、物質を貯蔵したり浸透圧を調節したりする。\n一重の液胞膜で包まれ、内部を細胞液(cell sap)が満たしている。\n一部の植物細胞はアントシアン(anthocyan)と呼ばれる赤・青・紫色の色素を含む。\n細胞膜は細胞質の外側にある厚さ5nm~10nm程度の薄い膜である。主にリン脂質とタンパク質で構成される典型的な生体膜であり、細胞への物質の出入りの調節を行う。リン脂質には水に溶けやすい親水性の部分と、水に溶けにくい疎水性の部分があり、疎水性の部分を内側に向かい合った、二重膜(にじゅうまく、bilayer)になっている。\n「水と油」という言葉が、仲の悪いことの表現として用いられるように、水と油は溶け合わない。\nこのように細胞膜が外部に対して疎水性(そすいせい)の部分だけを出してるため、細胞膜は疎水的(そすいてき)である。そのため、細胞膜は、水に溶けない。このため、細胞膜によって、細胞がまわりから仕切られ、それぞれの細胞が溶け合わないようになっている。\n細胞膜のところどころにタンパク質が分布しており、この(細胞膜にある)タンパク質が、細胞への物質の出入りの調節に関わっている。細胞膜は、特定の物質のみを透過という性質があり、この性質のことを選択的透過性(せんたくてき とうかせい)という。(啓林、数研の専門「生物」に『選択的透過性』の用語あり。)\nスクロース溶液などに対しては、細胞膜は半透性 (※「細胞への物質の出入り」を参照) に近い性質を示す。\n細胞膜には、ところどころにイオンチャネル(ion channel)があり、ナトリウムNa+、カリウムK+など特定のイオンのみを選択的に通過させる。(※ 生物IIでイオンチャネルを習うので、ついでに太字。)\nまた、細胞のところどころには受容体(じゅようたい、receptor)があり、特定の物質からの刺激を受け取る。受容体の種類ごとに受け取れる物質の種類が違い、そのため受け取れる刺激の種類がちがう。受容体の材質はタンパク質である。\nまた、細胞膜上のタンパク質に、オリゴ糖などの多糖類で出来ている糖鎖(とうさ、sugar chain)が付いている場合もあり、細胞どうしの識別(しきべつ)などの情報交換や、細胞どうしの結合などに役立っている。なお、ヒトのABO式血液型の違いは、赤血球の細胞膜の糖鎖の違いによるものである。\n細胞が異物を消化吸収する食作用(しょくさよう)の際にも、細胞膜が関わっており、異物に細胞膜が取り付くことで、異物を包んで取り込む。食作用のことを飲食作用とも言ったり、エンドサイトーシスともいう。マクロファージやアメーバなどの食作用は、このような細胞膜の働きによるものである。\n細胞壁(さいぼうへき、cell wall)は植物細胞や菌類や原核生物に見られ、細胞膜の外側で細胞を守る固い膜であり、形を保つ働きを持つ。動物細胞には見られない。\n細胞壁は、セルロースを主成分としており、セルロースとペクチンなどの炭水化物によってなりたつ全透性 (※「細胞への物質の出入り」を参照) の構造である。\n細胞は、1665年、イギリスのロバート・フックによって発見された。\n彼は、自作の顕微鏡を用いて、軽くて弾力のあるコルクの薄片を観察したところ、\n多数の中空の構造があることを知った。それを修道院の小部屋(cell、セル)にみたて、細胞(cell)と呼んだ。\n彼が観察したのは、死んだ植物細胞の細胞壁(さいぼうへき、cell wall)であったが、\nその後、1674年、オランダのレーウェンフックによりはじめて生きた細菌の細胞が観察された。\n19世紀に入ると、細胞と生命活動の関連性が気付かれたはじめた。\nまず1838年、ドイツのシュライデンが植物について、\n翌1839年、ドイツのシュワンが動物について、\n「全ての生物は細胞から成り立つ」という細胞説(cell theory)を提唱した。\nさらに後、ドイツのウィルヒョーの「全ての細胞は他の細胞に由来する」という考えにより、細胞説は浸透していった。\n\nレーウェンフックが細胞を発見しても、当時の生物学の業界では、しばらく、微生物の発生については、親なしに無生物から自然に微生物が発生するだろうという自然発生説が信じられていた。\nしかし19世紀にフランスの生化学者パスツールが、図のようなS字状に口の曲ったフラスコ(一般に「白鳥の首フラスコ」という)を使った実験で自然発生説が間違っている事を証明した。\nたとえば、\nつまり、仮説「密閉したガラス容器内に、密閉の直前までに煮沸した栄養物を、密閉後に数日も放置しても、虫は発生しない」という仮説を検証するには、比較のためには、たとえば下記の仮説\nこのような、否定されるべき仮説を簡単に否定するための実験方法のひとつとして対照実験があり、たとえば、下記のような、もとの実験から条件を1つか2つなど、ごく少数だけ条件を変えてみて、実験をすればいい。\nのように、追加の実験をする必要がある。\nこういう実験の手法が対象実験である。\nこのパスツールの実験がよく、対照実験の例として啓蒙書などで紹介されるが、しかし対照実験とは、なにもこの実験だけに限ったことではない。\n\n「対照実験」。\n細胞質基質には、一見すると液体以外に何も無いように見えるが、実は繊維状の構造がある。この細胞質基質に存在している繊維状の構造を細胞骨格(さいぼう こっかく、cytoskeleton)という。\n細胞骨格には、微小管(びしょうかん、microtubule)、中間径フィラメント(intermadiate filament)、アクチンフィラメント(actin filament)の3種類がある。\nこの細胞骨格によって、細胞小器官は固定されている。\nまた、細胞小器官や液胞などが細胞内で運動して原形質が流動しているように見える理由は、細胞骨格が動いて細胞小器官などを運んでいるためであることが近年に分かった。\n(※ 以降、生物II、専門生物の範囲:)\n微小管は、チューブリンという球状のタンパク質から出来ており、微小管全体としては管状になっており中空の管であり、微小管の直径は約 25nm ほどである。なお、微小管のチューブリンは2種類から構成されており、αチューブリンとβチューブリンからなる。図のように一般にαチューブリンとβチューブリンは、となりあっている。\nアクチンフィラメントは、直径が約7nmの繊維であり、アクチンという球状のタンパク質がつらなって構成されている。特に筋肉に、アクチンフィラメントが多く含まれている。筋肉以外の一般の細胞にもアクチンフィラメントは含まれている。\nアクチンフィラメントによって細胞の動く仕組みは、筋繊維が動く仕組みと、ほぼ同じである。\nアクチンフィラメントは別名で「マイクロフィラメント」とも言う(※ 数研出版)。\nアクチンに結合しやすいタンパク質としてミオシンがあり、筋組織ではミオシンも多く見られる。\nだが、動物の筋肉だけでなく、(植物細胞などの)原形質流動でも、特殊な観察法によって、アクチンとミオシンが観察される。(※ 啓林館の専門『生物』、15ページ。第一学習社、専門『生物』、53ページ)原形質流動の際、細胞小器官に結合したミオシンがアクチンフィラメントに沿って動く事が分かっている。\nまた、そのミオシンの動くエネルギー源はATPである。\nこのため、ミオシンが「モータータンパク質」というものに分類されている。\n(※ 筋肉については、くわしくは、生物IIで勉強する。)\n微小管の上を移動するダイニンとキネシンというタンパク質も、それぞれ、モータータンパク質として分類される。つまり、ダイニンはモータータンパク質である。キネシンはモータータンパク質である。微生物の鞭毛(べんもう)や精子の鞭毛など、鞭毛の屈曲を起こしているのが、このダイニンとキネシンによる働きである(※ 東京書籍、数研)。ダイニンとキネシンも、ATPのエネルギーを利用することで、モータータンパク質として働いている。\n\n細胞小器官において、小さすぎて光学顕微鏡では見られないが、電子顕微鏡でなら見られる構造が、いくつか存在している。\nゴルジ体や中心体は、小さすぎるため、光学顕微鏡では見られないが、電子顕微鏡で見ることができる。\nゴルジ体(Golgi body)は酵素やホルモンなどの分泌に関与するほか、細胞内で利用されるタンパク質の修飾を行う。\n一重膜の平らな袋状の層がいくつか重なった構造をしている。\n中心体(centrosome)は主に動物細胞にみられ、べん毛や繊毛を形成したり、細胞分裂の際の紡錘体形成の起点となる。\n微小管という管状の構造体が3つ集まり、それが環状に9つ集まり中心小体を作り、\nその中心小体が2つL字直交して中心体を作る。\nインフルエンザなどのような「ウイルス」という種類の物が存在する。ウイルスは生物と非生物との中間的な存在である。ほとんどのウイルスは0.3μm以下の大きさであり、大腸菌 (約3μm)などの細菌の大きさと比べて、とても小さい。ウイルスは、タンパク質の殻と、その殻につつまれた核酸をもつ構造で、細胞を持っていない。ウイルスは遺伝物質として核酸をもち、単独では増殖できない。ウイルスの増殖は、他の生物の生きた細胞の中に侵入して、その細胞の中にある物質を利用して行う。死んだ細胞(例:加熱処理などした細胞)の中では、ウイルスは増殖できない。\nウイルス自体は歴史的には、次のように発見された。(科目『科学と人間生活』の範囲)\nまず素焼きの陶器の板を使って水を濾過すると、この陶板には細菌よりも微笑な穴が空いているので、細菌のふくまれた水を流すと、細菌を除いて水だけを通過させて濾過できる発見をした。この濾過器により、赤痢菌などの病原菌も濾過できる事が発見された。しかし、タバコモザイク病の病原体は、水といっしょにこの陶板を通過する事がロシアの科学者イワノフスキーにより1980年代に発見された。\nこの事から、細菌よりも微小な存在が信じられるようになった。\nその後、1930年代にドイツの科学者ルスカなどによって発明された電子顕微鏡の発達により、細菌を映像的に観察できるようになった。\nまた、1930年代、アメリカの科学者スタンレーがタバコモザイクウイルスの結晶化に成功している。\n細胞質基質は、細胞小器官の間を満たし、水・タンパク質などが含まれ、様々な化学反応が行われている。\nオオカナダモの葉の細胞を観察すると、細胞質基質の中を顆粒が流動しており、これを原形質流動(げんけいしつりゅうどう、protoplasmic streaming、細胞質流動)と呼ぶ。原形質流動は生きている細胞でのみ見られる。\n細胞は、その中に水や栄養分を取り入れ使わないと生きていけない。\n以下では細胞への物質の出入りについて扱う。\n台所で野菜を刻んで塩をかけると、水が出てきて野菜がしんなりする。また、ナメクジに塩をかけると縮んでゆくという話を聞いたり、実際に見たこともあるだろう。実は、この二つは同じ現象である。\n一定以下の大きさの分子のみを透過させる性質を半透性(はんとうせい、semipermeability)と呼ぶ。\nまた、半透性を示す膜を半透膜(はんとうまく、semipermeable membrane)と呼ぶ。溶質であっても、一定以上の大きさなら、半透膜は通さない。細胞膜は半透膜の性質をもっている。セロハン膜も半透膜である。溶媒が水の場合は、半透膜は水分子を通す。一般に、ショ糖は細胞膜を通らないのが普通である。尿素やグリセリンは細胞膜を通るのが普通。\nそれに対して、分子の大小によらず全て透過させる性質を全透性(ぜんとうせい、non-selective permeability)と呼ぶ。\nまた、全透性を示す膜を'全透膜(ぜんとうまく、permiable membrane)と呼ぶ。ろ紙は全透膜である。植物の細胞壁は全透膜である。細胞膜と細胞壁を間違えないように。細胞膜は動物・植物の両方にあり、半透膜である。細胞壁は植物にしかない。\n濃度の異なる水溶液をあわせると、物質が高い濃度から低い濃度の溶液へ移動し、濃度が均一になる現象を拡散(かくさん、diffusion)と呼ぶ。\n半透膜をはさんで濃度の低い溶液と濃度の高い溶液を接触させると、拡散によって、溶媒の水は移動し、半透膜を通って濃度の低い方から高い方へと水は移動する。この現象を浸透(しんとう、osmosis)と呼ぶ。両液の濃度が同じになるまで、溶媒の水が膜を通って移動する。大きさの大きい溶質は半透膜を通れないので、かわりに大きさの小さい分子である水分子が移動するのである。\n説明の簡単化のため、溶質分子は大きく、半透膜を通れない場合であるとした。\n浸透のさい、濃度の低い溶液から濃度の高い溶液へ溶媒を移動させるように働く圧力を浸透圧(しんとうあつ、osmotic pressure)と呼ぶ。溶液の濃度の差が大きいほど、浸透圧は大きい。\n浸透圧を式で表せば、浸透圧をP(単位[Pa]パスカルなど)、濃度差をC(単位[mol/L]など)とすると(「mol」とは「モル」で分子数の単位で、6.02×1023個)、式は\nである。\n※ 生物Iの範囲を超えるが、より詳しくは、温度をT〔K〕として(「K」とはケルビンという、温度の単位)、気体定数(きたいていすう)という比例係数をRとして、\n(「ファントホッフの式」という。)\nである。R=0.082 (L・気圧)/(K・mol)。\n(物理や化学などで「気体の状態方程式」 PV = nRT というのを習う。ケルビンとは、絶対零度マイナス273℃を0Kとした絶対温度のことである。このことからも分かるように、読者は高校物理や高校化学も勉強しなければならなない。)\n元の水溶液の水面の高さが同じだった場合、半透膜による接触では浸透にとって片方の水が増えたぶん、そしてもう片方の水が減ったぶん、水面の高さに違いが生じるので、つまり水位差が生じるので、その水位差から浸透圧の大きさを測れる。水面の高さを同じにするためには、外部からおもりを加えないといけない。そのおもりの重力による力の大きさ、あるいはそのおもりの力を圧力に換算したものが、浸透圧の大きさである。このときの、おもりの力に相当する圧力で、浸透圧を測れる。\n半透膜でなく、膜なしで、そのまま濃度のある水溶液が接触した場合は、水位差は生じない。\n細胞を溶液に浸したとき、細胞への水の出入りが生じる。もし濃度が均衡し、細胞の体積が変化しないならば、その溶液を等張液(とうちょうえき、isotonic solution)と呼ぶ。\nそれに対し、細胞から水が出ていき脱水して、細胞の体積が減少するような溶液を高張液(こうちょうえき、Hypertonic solution)と呼び、\n逆に、細胞へ水が入っていき、細胞の体積が増加するような溶液を低張液(ていちょうえき、hypotonic solution)と呼ぶ。\nヒトの赤血球は、0.9%(=9g/L)の食塩水と等張である。「0.9%」の「%」とは質量パーセントである。\n植物細胞では細胞膜のまわりを全透性の細胞壁が囲んでいる。\n細胞が水を吸収する力のことを「吸水力」といい、その圧力のことを吸水圧(きゅうすいあつ)という。吸水圧の式は、\nである。\n多くの植物細胞は通常時、やや高張である。そのため、通常時でも植物細胞では原形質が膨張しており、細胞壁からの膨圧が生じている。\n細胞壁から細胞質が離れる直前・直後のことを限界原形質分離という。そのときの外液の溶液濃度のことを限界濃度という。\nなお、原形質および原形質から内側の部分のことをプロトプラストという。プロトプラストが細胞壁から離れてしまう現象のことが、原形質分離のことである。\n細胞膜は、特定の物質のみを透過させている。このような性質を選択的透過性(せんたくてき とうかせい、Selective permeability)と呼ぶ。細胞膜に存在する輸送タンパク質が、どの物質を通過させて、どの物質を通過させないかの選択を行っている。\n輸送タンパク質には、どういう種類があるかというと、後述する「チャネル」や「ポンプ」がある。\nさて、選択的透過性には、濃度勾配に従って拡散により物質を透過させる受動輸送(じゅどうゆそう、passive transport)と、\nいっぽう、濃度勾配に逆らって物質を透過させる能動輸送(のうどうゆそう、active transport)という、2種類の輸送がある。\n能動輸送の例としては、後述するナトリウムポンプなどがある。なお、ナトリウムポンプによってイオンが輸送されるとき、ATPのエネルギーを消費する。このように、能動輸送では、なにかのエネルギーを消費する。\nいっぽう、(能動輸送ではなく)受動輸送の例としては、後述する、イオンチャネルによる受動輸送などがある。\n多細胞生物では、ほとんどの細胞で、どの細胞も、細胞の内外のナトリウム濃度を比べてみると、細胞内のナトリウム濃度は低く、細胞外のナトリウム濃度は高い。\nこれはつまり、細胞の働きによって、ナトリウムが排出されているからである。\nまた、多細胞動物では、すべての細胞で、どの細胞も、細胞内外のカリウム濃度を比べてみると、細胞内のカリウム濃度が高く、細胞外のカリウム濃度が低い。\nこれはつまり、細胞の働きによって、カリウムが排出されているからである。\n細胞膜にあるATP分解酵素(ナトリウム-カリウム ATPアーゼ)という酵素が、細胞内に入りこんだナトリウムを細胞外に排出して、いっぽう、細胞外液からカリウムを細胞内に取り込んでいるのである。なお、この酵素(ナトリウム-カリウム ATPアーゼ)は、細胞膜を貫通している。\n※ 検定教科書によっては、「ナトリウム-カリウム ATPアーゼ」のことを「Na+-K+ ATPアーゼ」とも記述している。\nでは、どういう原理なのか。説明のため、まず、細胞内のナトリウムを放出する前の状態だとしよう。(仮にこの状態を「状態1」としよう)\nこのナトリウム-カリウム ATPアーゼは、細胞内のNaが結合すると、このとき別のATPのエネルギーが放出されて、ATPからADPになり、このエネルギーをこの酵素(ナトリウム-カリウム ATPアーゼ)が使って、この酵素(ナトリウム-カリウム ATPアーゼ)の立体構造が変わり、その結果、ナトリウムを細胞外に放出してしまう。(仮にこのナトリウム放出後の状態を「状態2」としよう)\n次に、細胞外のカリウムが結合すると、また立体構造が変わり、その結果、カリウムを細胞内に取り込む。(仮にこのカリウム取り込み後の状態を「状態3」としよう)\nそしてまた、酵素は、最初の状態にもどる。(つまり、状態1に戻る。ただし、ATPは消耗してADPになったままである。)\n結果的に、この酵素(ナトリウム-カリウム ATPアーゼ)は、ATPのエネルギーを消耗する事により、ナトリウムを細胞外に放出し、カリウムを細胞内に取り込んでいる。\nこのような仕組みを、ナトリウムポンプという。\nまた、この輸送は、エネルギーを使って、それぞれのイオンの濃度差にさからって輸送するので、このような輸送を能動輸送という。\nそして、このナトリウムポンプの結果、ナトリウムイオンは細胞外(血しょう など)で濃度が高く、(血しょう などと比較して)カリウムイオンは細胞内で濃度が高くなる。(※ 啓林の専門生物の教科書に、比較対象として「血しょう」と書かれている。)\nたとえばヒトの赤血球では、能動輸送によって、外液(血しょう)よりも赤血球内のカリウムイオンK+濃度が高く、赤血球内のナトリウムイオンNa+濃度が低い。いっぽう、血しょうでは、カリウム濃度K+が低く、ナトリウム濃度Na+が高い。つまり赤血球では、能動輸送によってNa+を細胞外へと排出して、能動輸送によってK+を細胞内へと取り入れている。\nこのような、能動輸送によって、細胞内外でNa+やK+の輸送および濃度調節をする機構のことを「ナトリウムポンプ」という。\nこの結果、細胞内外でNa+やK+の濃度差が、それぞれ生じている。\n能動輸送にはエネルギーが必要であり、ATPからエネルギーを供給されている。細胞膜にあるATP分解酵素(Na+/K+-ATPアーゼ)が、ナトリウムポンプなどの能動輸送の正体である。(※ 参考書によっては、ナトリウムポンプとATP分解酵素を同一視してあつかっている本もある。)\nなお、このような細胞による能動輸送で、イオンを輸送するポンプのことを「イオンポンプ」という。(東京書籍の専門生物(生物II相当)の検定教科書に「イオンポンプ」の記載あり ) 「ナトリウムポンプ」も、イオンポンプの一種である。\nナトリウムポンプの機構では、\nATP分解酵素に、細胞内の3つのナトリウムイオン(Na+)がポンプと結合してから、ATPのエネルギーによってATP分解酵素の形を変え、こんどは細胞外に3つのNa+を排出する。そして細胞外のカリウム(K+)がATP分解酵素に結合すると、形が変わり、細胞内へとK+を出す。そして、またATP分解酵素に、細胞内の3つのNa+がポンプと結合して、同じように繰り返していって、細胞内外でイオンを輸送している。\n細胞膜には、ところどころにイオンチャネル(ion channel)という開閉する管のような通路状のタンパク質が細胞膜(脂質二重層)をところどころ貫通してあり、イオンチャネルの開いた際にナトリウムNa+、カリウムK+など特定のイオンのみを選択的に通過させる。(※ 生物IIでイオンチャネルおを習うので、ついでに太字。)\n開閉の方法は、タンパク質分子の立体構造が分子的に変化することで、開閉が行われている。\nイオンチャネルの開いたときに、ナトリウムなど対象のイオンが通過する。イオンチャネルが閉じれば、対象イオンは通れない。\n(ナトリウムポンプなどの)能動輸送とは違い、イオンチャネルでは、濃度の高低に逆らってまで輸送をする能力は無い。\n水はリン脂質の間を通過できる。これとは別に、もっと大量に、水分子と一部の(電気的に)中性小分子(グリセロールなど)だけを透過するチャネルがあり、アクアポリン(aquaporin、AQP)という。アクアポリンは、水分子以外の水溶液中のイオンは遮断する。(グリセロールの透過については、 ※ 参考文献: ※ 参考文献: LODISHなど著『分子細胞生物学 第7版』、翻訳出版:東京化学同人、翻訳:石浦章一など、2016年第7版、415ページ)\n赤血球や腎臓の細尿管上皮細胞などにアクアポリンはある。\nいっぽう、カエルの卵にはアクアポリンが無いため、水を透過せず、低調液の中でも膨張しない。(より正確にいうと、カエルの卵にも、アクアポリンと形の似た高分子があるが、しかし、その高分子が、水を透過する作用をもたない。(※ 参考文献: ※ 参考文献: LODISHなど著『分子細胞生物学 第7版』、翻訳出版:東京化学同人、翻訳:石浦章一など、2016年第7版、415ページ) そのため、日本の高校生物の教科書では、そのカエル卵にある高分子は「アクアポリンではない」と分類されている。 )\nアクアポリンを発見したピーター アグレが2003年のノーベル化学賞を受賞した。\n\n単細胞生物が集まって、あたかも1つの個体のような物を作って生活している場合、これを細胞群体(さいぼう ぐんたい、cell colony)という。\n細胞群体の生物には、クンショウモやユードリナ、ボルボックスがある。\nボルボックス(オオヒゲマワリ)は、クラミドモナスのような細胞が数百個もあつまった群体である。\nボルボックスでは、働きの分業化が起きており、光合成をする細胞、有性生殖をする生殖細胞、無性生殖をする生殖細胞など、分業をしている。\n細胞どうしは原形質の糸で連絡しあっている。\n細胞群体の分業化が、多細胞生物の器官に似ている点もある。しかし群体は、ほかの細胞と別れても、栄養さえあれば生きていける点が異なる。\n現在の多細胞生物の起源は、おそらく、このような細胞群体であろうという説が、DNAなど分子の系統の解析から有力である。\nタマホコリカビは、単細胞生物と多細胞生物の、両方の特徴をもつ。タマホコリカビの一生には、単細胞生物の時期と、多細胞生物の時期がある。親の子実体から放出された胞子が出芽し、アメーバのような単細胞の生物になる。アメーバ状の細胞は、細菌などを食べて成長する。食べ物が無くなるなどして生存が難しくなると、そのアメーバ状の単細胞どうしが集合して一つの体をつくり、小さなナメクジのようになって、移動する。\n増殖するときは、きのこ状の子実体を形成して、胞子を放出する。\n生物の進化の研究に、タマホコリカビが、よく用いられる。単細胞生物から多細胞生物への進化の参考になる、と考えられている。\n特定の機能や形態に分かれる前の細胞を、未分化()の細胞と呼ぶ。\n未分化の細胞は、からだの部位によって特定の機能や形態を持つようになり、これを分化(differentiation)と呼ぶ。\n分化した細胞はそれぞれ不規則に混ざっているのではなく、\n同じ形態や機能をもつ細胞が規則的に集まっており、これを組織(tissue)と呼ぶ。\nまた、いくつかの種類の組織が特定の機能を果たすために集まっており、これを器官(organ)と呼ぶ。\nさらにこれらの器官がいくつも集まって1つの生物、すなわち個体(individual)を形成している。\n組織を形成する細胞は、同じ種類の細胞どうしで接着しあう。たとえば複数の組織を分解したあとに培養すると、同じ組織どうしで集合しあう。\n植物の組織は、分裂組織(meristem)と永久組織(permanent tissue)とに分けることができる。\n分裂組織には、茎頂部や根端部でいろいろな細胞への分化や伸長成長を行う頂端分裂組織(ちょうたん ぶんれつそしき、apical meristem)、維管束の内部で導管や師管などへの分化や肥大成長を行う形成層(けいせいそう、cambium)、がある。\n永久組織は表皮系(epidermal system)、維管束系(vascular system)、基本組織系(ground tissue system)の3つの組織系からなる。\n表皮系には、表皮、気孔、根毛(root hair)などがある。\n表皮は、一層の表皮細胞からなり、細胞壁の表面をクチクラ()と呼ばれる固い層が覆っており、内部を保護したり水の蒸発を防いでいる。\n気孔(stoma)は、葉や茎にみられ、2つの孔辺細胞が対になってできており、蒸散を行っている。\n根毛(root hair)は、根で水分や養分の吸収を行っている。\n維管束系は木部(xylem)と師部(phloem)からなる。\n木部には導管(vessel)または仮導管(tracheid)があり、根で吸収された水分や養分の通り道となっている。\n師部には師管(sieve tube)があり、葉で光合成された炭水化物の通り道となっている。\n表皮系と維管束系以外はすべて基本組織系と呼ばれる。\n葉では細長い細胞が密集した柵状組織(さくじょうそしき、palisade parenchyma)や、または細胞どうしの隙間(すきま)があいていて気体の通り道となっている海綿状組織(spongy tissue)などがみられる。\n茎や根では中心部で養分の貯蔵を行う髄(ずい、pith)や、周辺部で光合成を行ったり厚角・厚壁となり植物を支える皮層(cortex)などがみられる。\n動物の組織は上皮組織(epithelium tissue)、結合組織(connective tissue)、筋組織(muscle tissue)、神経組織(neural tissue)がある。\n上皮組織は体の外面、体表面や消化管の内表面などをおおっている組織である。各細胞は細胞接着(cell adhesion)により結合され、体内の組織を保護している。毛・つめ・羽毛なども上皮組織である。上皮組織には皮膚の表皮(epidermis)、小腸の内壁などの吸収上皮、毛細血管()、汗腺・胃腺などの腺上皮、などがあげられる。\n結合組織は組織や器官の間を満たして、それらを結合したり支持したりする。骨(Bone)、腱(tendon)、血液(blood)、皮膚の真皮(dermis)などが結合組織である。\n結合組織の分類では、大きく分類すると、膠質性(こうしつせい)結合組織、繊維性結合組織、骨組織、軟骨組織、血液などに分類される。\n骨(※ 硬骨(こうこつ))は骨組織であり、骨組織はリン酸カルシウムとタンパク質などを基質としてできており、骨の基質を骨基質という。帰室体内の組織や器官を支持しており、骨細胞をもつ。骨質中に血管と神経の通るハーバース管を何本も持ち、そのまわりに骨細胞がある。\n軟骨はカルシウムに乏しい。\n骨のうち、カルシウムが豊富なのは、硬骨のほうである。高校生物では、硬骨のことを単に「骨」といっている。\n軟骨は軟骨組織であり、軟骨質と軟骨細胞からできており、弾力がある。\n腱(けん)は繊維性結合組織であり、腱は骨と筋肉をつなぐ働きをする。脂肪細胞も繊維性結合組織である。血液は、血しょう(plasma)と血球(blood cell)がある。\n膠質性(こうしつせい)結合組織には、へその緒がある。膠質性(こうしつせい)結合組織の基質はゼラチン状である。\n筋組織は筋肉を形作る繊維状の組織である。筋肉は伸びたり縮んだりする。骨格を動かす骨格筋(skeletal muscle)や心臓を動かす心筋(cardiac muscle)は横紋筋(striated muscle)で構成され、内臓を動かす内臓筋(visceral muscle)は平滑筋(smooth muscle)で構成される。\n平滑筋は、一つの繊維が一つの細胞であり、一つの核をもち、繊維は紡錘形をしている。平滑筋は不随意筋であり意志では動きは変わらない。平滑筋の収縮速度はおそく、持続性があり、疲労しにくい。平滑筋に、横じまはない。\n骨格筋は収縮速度が大きいが疲労しやすい。骨格筋は意志で動かせる随意筋である。骨格筋には横紋があるので、横紋筋に分類される。\n心筋は不随意筋であり、意志では動きは変わらない。心筋には横紋があるので、横紋筋に分類される。\n横紋筋には明暗の横じまがあり、あかるく見えるほうを明帯といい、暗く見えるほうを暗帯という。アクチンとミオシンという2種類のタンパク質からできている。明帯の中央はZ膜で仕切られている。\n神経組織はニューロン(neuron)という細胞で構成されている。ニューロンは核のある細胞体(cell body)と、細胞体から伸びる一本の長い軸索(じくさく、axon)、細胞体から短く枝分かれした樹状突起(じゅじょうとっき、dendrite)からなる。軸索には鞘がついており、神経鞘(しんけいしょう)という。神経鞘は核を持っており、シュワン細胞という一つの細胞である。\nニューロン内を信号が伝わる方向は、細胞体のほうから始まり、軸索の末端へと信号が向かう。ニューロン内の信号伝達の方法は電気によるものであり、細胞膜とナトリウムポンプなどのイオンの働きによるものである。このため、一般の金属導線などの電気回路とは違い、ニューロンでの信号の方向は一方向にしか伝わらない。\n一つのニューロンの軸索の先端と、他のニューロンとの間の接合部をシナプスという。一つの神経の信号は、シナプスを経て、つぎの神経へと伝わる。また、神経と筋肉との間のこともシナプスという。\nシナプスには、小さな隙間(すきま、かんげき)があり、シナプス間隙(かんげき)という。\nシナプスから次のニューロンへと信号を伝える方法は、化学物質の分泌による。そのシナプスでの分泌物を神経伝達物質といい、軸索の末端から分泌され、ノルアドレナリンやアセチルコリンが分泌される。軸索の末端にシナプス小胞(しょうほう)という膨らんだ部分があり、ここに伝達物質が含まれている。受取り側である次のニューロンの細胞膜には、伝達物質を受け取る受容体があり、そのため受容体と伝達物質が反応して、信号が次のニューロンに伝わる。\n交感神経の末端からはノルアドレナリンが分泌される。副交感神経の末端からはアセチルコリンが分泌される。筋肉を動かす神経である運動神経の末端からはアセチルコリンが分泌される。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%94%9F%E7%89%A9/%E7%94%9F%E7%89%A9I/%E7%B4%B0%E8%83%9E%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%81%9F%E3%82%89%E3%81%8D"} {"text": "高等学校生物 > 生物I > 細胞とエネルギー \n代謝(たいしゃ、metabolism)とは、生物が生きていくために必要なエネルギーや栄養素を取り込んで利用する生命活動のことである。\n代謝は、二つの主要な過程に分けられる。一つは、栄養素を取り込んでエネルギーを作り出す「異化」、もう一つは、生体内での物質の分解や再構築を伴う「同化」である。\n異化によって取り込んだ栄養素は、細胞内で分解され、その過程で生じたエネルギーがATPというエネルギー通貨として蓄積される。\n同化では、細胞内で必要なタンパク質や脂質、糖質などが合成される。\n細胞内でのエネルギーのやりとりには、仲立ちとしてATP( アデノシン三リン酸、adenosine triphosphate)が用いられる。\nATPの構造は、ADP(アデノシン二リン酸)という物質にリン酸が結合した構造である。\nADPにリン酸を結合させる際、エネルギーが必要になる。結合によって合成されたATPは安定であり、エネルギーを蓄えることができる。そして異化によってATPのリン酸結合が切れてADPとリン酸に分解される際に、エネルギーを放出する。\n呼吸など異化の際に、ADPとリン酸からATPを合成している。\nATPは、アデノシンという物質に、直列に3つのリン酸がついている。ATPでのリン酸どうしの結合のことを高エネルギーリン酸結合といい、リン酸間の結合が切れるときにエネルギーを放出する。 \nしばしば、ATPは「エネルギー通貨」(energy currency[1])に例えられる。\nアデノシンの構造は、アデニンという塩基にリボースという糖が結合したものである。\n分解されたADPは、再利用され、呼吸(こきゅう、respiration)によって再びATPに合成されることが可能である。\nATPのエネルギーの利用先は、生体物質の合成のほかにも、筋肉の収縮や、ホタルの発光などにも、ATPのエネルギーは用いられている。\n代謝には異化と同化がある。\n異化(いか、catabolism)は複雑な物質を分解してエネルギーを取り出す反応であり、呼吸もその一つである。\n一方、同化(どうか、anabolism)は物質を合成する反応であり、エネルギーを蓄えたり、体を構成する物質を生産するために行われる。例えば、光合成による糖の合成は同化である。同化では、簡単な構造の物質から複雑な構造の物質が合成されますが、その際にはエネルギーが必要である。反応に用いたエネルギーの一部は、合成した物質に吸収される。しかし、同化によって合成物に吸収されたエネルギーを取り出して使うには、異化を行って分解する必要がある。\n同化には、炭酸同化と窒素同化がある。\n炭酸同化(carbon dioxide assimilation)は、二酸化炭素などの炭素無機物から有機物を合成する反応で、多くの植物が光合成によって有機物を合成している。\n一方、窒素同化(nitrogen assimilation)は、タンパク質などの窒素化合物を合成する反応である。\n独立栄養生物と従属栄養生物は、生物の栄養の取り方に基づく分類の一つである。\n独立栄養生物(どくりつえいようせいぶつ、autotroph)は、異化と同化のプロセスを利用して生存している。\n異化は、有機物を無機物に分解することで、エネルギーを取り出すことができる反応である。\n一方、同化は、無機物から有機物を合成することで、生物の成長や繁殖に必要なエネルギーを得る反応である。\n光合成を行う独立栄養生物は、光エネルギーを利用して、二酸化炭素と水からグルコースなどを合成する。\nこの反応は同化の過程であり、独立栄養生物が自らの生存に必要なエネルギーを得るために必要な反応である。\n従属栄養生物(じゅうぞくえいようせいぶつ、heterotroph)は、他の生物から有機物を取り込んでエネルギーを得る必要がある。\n従属栄養生物には、動物や菌類などが含まれる。\n動物は、他の生物を食べることで栄養を取り込みる。\n菌類は、他の生物や有機物を分解して栄養を取り込みる。\nこれらの反応は異化の過程であり、従属栄養生物が生存に必要なエネルギーを得るために必要な反応である。\nクレアチンリン酸は、身体の筋肉や神経細胞内で、ATP(アデノシン三リン酸)を再生産するための重要な物質である。\nATPは、筋肉や神経細胞が動いたり、働いたりするために必要なエネルギー源だが、このATPは一度使われるとすぐに分解されてしまう。\nしかし、運動中にはATPを多く使うため、ATPの再合成が必要になる。\nここで、クレアチンリン酸が重要な役割を果たす。\n休息中には、ATP濃度が高く、その結果、クレアチンリン酸の合成が進む。\nそして、運動中にATPが分解されADP(アデノシン二リン酸)が生成されると、酵素クレアチンキナーゼが働き、クレアチンリン酸とADPからすばやくATPが再合成される。\nこれによって、筋肉や神経細胞は再びATPを使ってエネルギーを得ることができ、運動や活動を続けることができるのである。\nつまり、クレアチンリン酸は、身体のエネルギー代謝に欠かせない物質であり、特に高強度の運動や活動において重要な役割を果たしている。\n赤筋と白筋の色の違いは、含まれるミオグロビン(酸素を貯蔵するたんぱく質)の量の違いによるものです。\n白筋は、収縮は速いですが、持久力が低く、疲れやすいという性質を持ちます。例えば、カレイのような白身の魚をイメージすると良いでしょう。白身の魚は、海底に潜んでおり、敵に襲われた際には一瞬の筋収縮で逃げる必要があるため、短距離型の無酸素運動に適しています。\n一方、赤筋は収縮は遅いですが、持久力が高いという特徴を持っています。遠洋をゆっくり泳ぐマグロの筋肉をイメージすると良いでしょう。赤筋は、長距離型の有酸素運動に適しています。\nしかし、マグロの筋肉は赤筋だけではなく、赤筋と白筋が混ざり合っています。混合割合は遺伝的なもので、つまり、生まれつき長距離型の人と短距離型の人が存在するということです。競技者の赤筋と白筋の割合を調べたデータがありますが、これは訓練によって変わったわけではなく、自然に自分の筋肉に合った運動を選んだ結果です。\nデンプン(starch)の分解には、硫酸水溶液などの強酸中で100℃以上の高温で分解するという方法がある。しかし、だ液(saliva)は常温付近でデンプンを分解してマルトース(maltose、麦芽糖のこと)に変える。\n特定の化学反応を促進し、自身は反応の前後で変化しない物質を触媒(しょくばい、catalyst)という。\n生物の細胞内や細胞外で触媒として作用し、生物現象を維持している物質を酵素(こうそ、enzyme)と呼ぶ。酵素はすべて有機物であり、酵素の本体はタンパク質である。先ほど説明した だ液にも、酵素がふくまれており、アミラーゼ(amylase)という酵素がだ液にふくまれている。\nさて、例えば、過酸化水素水(H2O2)に二酸化マンガン(MnO2)を加えると、二酸化マンガンが触媒として作用し、水(H2O)と酸素(O2)が発生するが、\n同様に、過酸化水素水に肝臓の細胞を加えると水と酸素が発生するのだが、この理由は細胞内に含まれるカタラーゼ(catalase)と呼ばれる酵素が触媒として作用して、過酸化水素を分解して水と酸素が発生するからである。\n細胞外で働く酵素もある。\n体外から摂取したデンプン(starch)やタンパク質(protein)は、そのままでは大きすぎて小腸の細胞に吸収できないため、\n各消化器官から分泌される消化酵素によって、吸収しやすくなるように分解される。\nデンプン(starch)は、唾液(だえき、saliva)に含まれるアミラーゼ(amylase)によって、マルトース(maltose)に分解される。\nタンパク質(protein)は、胃液に含まれるペプシン(pepsin)によってペプトン(peptone)に、すい臓から分泌されるトリプシン(trypsin)によってさらに小さなアミノ酸(amino acids)に分解される。トリプシンはpH8付近が最適pH(optimum pH)である。\nヒトが持っている酵素の種類は数千種類といわれている。\n酵素が作用する相手の物質のことを基質(きしつ)という。酵素はそれぞれ反応する相手の物質が決まっており、これを基質特異性という。二酸化マンガンや白金などの無機物質では、基質特異性は見られない。基質特異性の正体は、酵素を構成しているタンパク質の立体構造によるものである。酵素の各部のうち、その酵素が基質と結合する部位のことを活性部位あるいは活性中心という。酵素は活性部位で基質と結合する。\n酵素は、酵素-基質複合体(こうそ-きしつ ふくごうたい)をつくって、基質に触媒としての働きをする。\nこのように酵素は細胞内や細胞外で作用することにより、生命現象を維持している。\n多くの酵素は、常温の付近で働く。\nまた、70℃程度以上の湯などで高温で熱してしまった酵素は、触媒の働きを失ってしまう。高温で働きを失った酵素を低温に冷ましても、もう触媒の働きは戻らない。このように、酵素が触媒の働きを失ってしまい戻らないことを失活(しっかつ)という。\nこれは、酵素のタンパク質が高温によって乱され、タンパク質の構造が崩れてしまったからである。酵素に限らず、タマゴや肉なども、高温で熱してしまうと、冷ましても常温にしても、もう働きは復活しない。この理由も、タマゴや肉のタンパク質が崩れてしまったからである。このようにタンパク質が熱で変わってしまうことを熱変性(ねつへんせい)という。\n酵素が良く働く温度は、35℃~40℃くらいである場合が多い。酵素がもっとも良く温度のことを最適温度という。最適温度は酵素の種類ごとに違う。常温付近で、やや高めの温度が最適温度である。\nいっぽう酸化マンガンなどの無機触媒では高温のほど反応速度が強く、無機触媒では最適温度は見られない。\n酵素は、特定のpH(ペーハー、ピーエイチ)で良く働く。このpHのことを最適pHという。\nたとえば、だ液にふくまれる酵素アミラーゼの最適pHは7付近である。だ液のpHは7である。胃液で働くペプシンの最適pHは2である。(ペプシンは、タンパク質を分解する酵素。) このように、酵素の最適pHは、その酵素が多く含まれる器官のpHに近い場合が多い。\nすい液にふくまれる酵素リパーゼの最適pHは9であり、すい液のpHもややアルカリ性である。(リパーゼは脂肪を分解する酵素。)\n実験として酵素濃度を一定にして、温度を一定にして、基質濃度を変えて実験すると、つぎのような結果が得られる。\n・基質濃度が低いとき、基質濃度に比例して反応速度が増える。\n・基質濃度が高い場合、酵素の数以上に基質があっても酵素-基質複合体ができすに効果がないので、基質濃度が低いときは、あまり反応速度は変わらなず、反応速度はしだいに一定値になる。\nそのほか、活性部位に基質以外の物質が結合すると、基質が酵素に結合できなくなる場合がある。阻害物質が酵素の活性物質をめぐって基質と競争していると見なして、このような現象のことを競争的阻害という。\n阻害物質が活性物質以外の場所に結合しても、その結果、活性部位の構造が変わってしまう場合があり、そのため酵素-基質の結合を阻害する場合もある。このような、活性部位以外への阻害物質の結合による阻害を、非競争的阻害という。\nある種の酵素には、基質以外にも他の物質が必要な場合もある。このような酵素に協力している物質が有機物の場合で、その有機物が酵素に結合する場合、その有機物のことを補酵素(ほこうそ)という。補酵素は一般に低分子(=分子の大きさが小さい)であり、また酵素と分離しやすい。そのため半透膜(セロハンなど)を使って、補酵素を分離することができる。また、熱に対して、補酵素は、比較的、強い。\n補酵素の代表的な例として、呼吸に関わる脱水素酵素の補酵素NAD+がある。脱水素酵素は、基質から水素を取り除く。NADとは「ニコチン・アミドアデニン・ジヌクレオチド」のこと。\n脱水素酵素とNADは別の物質である。脱水素酵素とのNADという両方の物質があることで、NADが水素を受容できるようになるって、NADに水素水が結合しNADHに変わる。\n酵素に協力している物質が金属または金属イオンなどで、有機物で無い場合もある。\n(執筆準備中)\n植物は光エネルギーにより、水と二酸化炭素から、グルコースを合成している。\nこれを光合成(photosynthesis)と呼ぶ。\n\n葉緑体の内部の構造には、チラコイドという膜状の構造と、ストロマという無色の基質の構造がある。\nチラコイドにある色素が光エネルギーを吸収する。この吸収のとき、特定の波長の光を吸収している。赤や青の光が葉緑体に吸収される。緑色の光は吸収しない。吸収しなかった波長の光は反射される。植物の緑色は、反射した光の色であり、光合成には使用していない光である。\n吸収した光エネルギーで、ATPの合成やNADPHの合成を行っている(「NAD」とは「ニコチン アデニン ジヌクレオチド」のことである。)。\n次の(1)~(3)の反応がチラコイドで行われる。 (4)の反応がストロマで行われる。\n(1):  光化学反応\n光エネルギの吸収は、色素のクロロフィルで吸収する。クロロフィルは活性化し、活性クロロフィルになる。クロロフィルの存在する場所は、チラコイドの膜である。\nこの反応には、光が当然に必要である。温度の影響をほとんど受けない。\n(2):  水の分解とNADPHの生成\n1の反応に伴って、活性クロロフィルから電子が飛び出す。水が分解され、できた水素Hが、さらに水素イオンH+と電子e- に分解される。あまった酸素O2は、以降の反応では利用せず、このため酸素O2が排出される。\nこの反応でのHの分解から発生したe- は、チラコイドの膜上で伝達され、最終的にHとともにNADP+という物質にe- は結合し、NADPHが生成する。\n(3):  ATPの合成\n2の反応に伴って、ADPがリン酸化されATPが合成される。\n(4):  二酸化炭素の固定\nストロマで、(3)の反応で作られたATPのエネルギーも利用して、いくつもの過程を経て、植物が気孔などを使って細胞外から取り入れた二酸化炭素から、有機物(グルコース C6H12O6 )を合成する。\n生成された物質の一部が同じ物質のもどる反応経路になっており、カルビン・ベンソン回路という。\nこのカルビン・ベンソン回路の過程で、(3)の反応で作られたATPを用いている。\nこのカルビン・ベンソン回路の反応は、温度の影響を受ける。\n(※ 光合成について、くわしくは生物IIで説明する。)\n密閉したガラス容器の中でろうそくを燃焼させたのち、植物(ミント)の新芽を入れて放置したびんと入れずに放置したびんを用意した。このびんにネズミを入れたり、ろうそくの火を入れたりしたとき、どのような影響を及ぼすか調べた。\n植物を入れなかったびんでは、ネズミは死に、ろうそくの火はすぐに消えた。\n一方で、植物を入れておいたほうのびんでは、ネズミに問題を及ぼさず、ろうそくも燃えた。\nこの実験から、生きている植物は、ろうそくの燃焼やねずみの生存に必要な気体、すなわち酸素を放出していることがわかる。\nさきほどのプリーストリーの実験では、酸素を発生するには光が必要である。インゲンホウスは、プリーストリーの実験で、光を当てた場合と当てなかった場合とで実験を行い、光が必要なことを突き止めた。\n葉の一部を銀箔でおおって光を当たらなくすると、その部分ではデンプンが合成されないことを、ヨウ素デンプン反応の実験で突き止めた。\nアオミドロの細胞にスポット光を当てると、葉緑体にスポット光を当てた時に、酸素を好む細菌が光の当たった場所に集まることを発見。\n光合成は葉緑体で行われることを発見した。\nイギリスの自然哲学者であったプリーストリーは、気体の性質について調べる実験をしていた。当時、気体に関する知識は多くはなく、大気からはっきり区別されていた気体は、炭酸カルシウムを加熱分解すると発生する「固定空気」(二酸化炭素)程度のものであった。また、物質が燃焼するのは酸素と結合するためではなく、物質のなかの燃素(フロギストン)が大気に放出されるためと考えられていた。\n彼は、密閉された容器の中では、動物が生きながらえることができないのと同様、植物は生育できないと考えて実験した。だが、ミントを水上置換の要領で空気を閉じ込めたガラスびんの中にいれたところ、予想に反して数カ月にわたって成長できることを観察した。さらに、このびんの中の気体を調べると、ろうそくを燃焼させることができ、またマウスが生育させても問題がないことがわかった。とくに長期間放置したびんの中では、ろうそくが勢い良く燃えた。\nまた、ろうそくを燃やしたあとの空気の中でもミントは成長でき、10日後に、びんの中でふたたびろうそくを燃やすことができた。\n一方で、空気を閉じ込めたガラスびんにキャベツの葉を切りとったものを入れて一晩おいておくと、翌朝そのびんのなかではろうそくを燃焼させることはできなかった。このことから、死んだ葉は、空気を「悪くする」と考えた。\nこれらのことから、プリーストリーは、植物が成長するときに、呼吸や燃焼で生じた「悪い」空気を元に戻し、「良い」空気を作ることができると考えた。現在の知識では、この「良い」空気とは酸素の割合の多い空気であることがわかるが、彼はそう考えなかった。のちに、酸化水銀の分解によって純粋な酸素を生成しておきながら、たんに「燃素がふくまれていない非常に良い空気」(脱フロギストン空気)と考え、独立した酸素という物質があるとは考えなかった。酸素を初めに正しく理解したのは同年代を生きたラヴォアジェであった。\n植物はCO2を吸収していなくても光合成をしている場合がある。なぜなら、植物は呼吸をしているので、呼吸によってCO2を排出している。\n植物の呼吸による2の排出量である呼吸速度と、光合成によるCO2の吸収速度が、つりあった状態での光の強さのことを、補償点(ほしょうてん,compensation point)あるいは光補償点(ひかりほしょうてん)という。見かけの光合成速度がゼロになる点は、補償点である(光合成速度と呼吸速度が等しいため)。\n真の光合成速度(photosynthetic rate)を求めるには、見かけの光合成速度(apparent photosunthetic rate)に、呼吸速度(respiration rate)を足し合わせなければならない。呼吸速度を測定するには、暗黒で測定すればよい。\n実験による測定で、直接にO2量を測定して得られる測定値は、真の光合成速度から呼吸速度を差し引いた値である。\n光の強さが増すにつれて、光合成速度も大きくなる。\n光が、ある一定値よりも強くなると、たとえ、それ以上に光が強くなっても、光合成速度が変わらない状態になる。この状態を光飽和(ひかりほうわ)といい、飽和した直後の光の強さのことを光飽和点(photic saturation point)という。\n日なたで成長しやすい植物を陽性植物(ようせいしょくぶつ、sun plant)という。アカマツ・クロマツ・ソラマメ・ススキ・カラマツ・カタクリ・トマトなどが陽性植物である。\n森林内などの日かげで成長しやすい植物を陰性植物(いんせいしょくぶつ)という。ブナ・シイ・カシ・ドクダミ・カタバミ・モミ・アオキやシダ・コケ植物などが陰性植物である。\n光合成速度と光について、補償点や光飽和点は図のようになる。\n陽性植物は光飽和点が高い。\n一般に、光の弱い状態では、陰性植物のほうが光合成速度が大きい。このため、日かげでも陰性植物は生活できる。いっぽう、光の強い状態では、陽性植物のほうが光合成速度が大きい。\n同じ一本の木の中でも、日当たりの良い場所でつく葉と、日当たりの悪い場所でつく葉で、特性が異なる場合がある。ブナ・ヤツデなどが、そのような植物である。\n日当たりの良い場所につく葉を陽葉(ようよう, sun leaf)といい、陽性植物と同じような補償点や光飽和点は高いという特性を現す。いっぽう、日当たりの悪い場所につく葉を陰葉(いんよう, shade leaf)といい、陰性植物と同じように補償点や光飽和点は低いという特性を現す。\n陽性植物の樹木を陽樹(ようじゅ)といい、陽樹からなる森林を陽樹林(ようじゅりん)という。アカマツなどが陽樹である。陰性植物の樹木を陰樹(いんじゅ)といい、陰樹からなる森林を陰樹林(いんじゅりん)という。モミなどが陰樹である。\n樹木は、草など背丈の低い植物への日当たりをさえぎるので、地表ちかくでは陰性植物が育ちやすくなり、また、日当たりが悪いので地表ちかくでは陽性植物が育たなくなる。\n森林が陽樹林の場合、新たな陽樹は芽生えなくなるが、新たな陰樹は芽生えることが出切る。このような仕組みのため、森林は、陽樹から陰樹へと移っていくことが多い。\nひなたを好む陽生植物(sun plant)では、補償点や光飽和点は比較的高く、\n弱い光でも生育できる陰生植物()では、補償点や光飽和点は比較的低い。\n陽生植物にはクロマツ、ソラマメ、ススキなどがあり、\n陰生植物にはブナ、コミヤマカタバミなどがある。\nまた、同じ植物でも、日当たりの良いところの葉(陽葉, sun leaf)は補償点や光飽和点は比較的高く、\n日当たりの悪いところの葉(陰葉, shade leaf)は補償点や光飽和点は比較的低い。\n光合成速度は、温度によっても変わる。多くの植物では30度ちかくで、もっとも光合成が活発であり、これは酵素の温度特性と似ている。このことから光合成には酵素が関わっていると考えられ、実際に酵素が光合成に関わっている。\n空気中のCO2濃度が低下すると、光合成速度は低下する。\n光合成に必要なものは、光・温度・水・二酸化炭素という要因(よういん)である。どれかの要因を低下させた場合に光合成速度が低下する場合、その要因を限定要因(limiting factor)という。イギリスのフレデリック・ブラックマンは、光合成速度は、光の強さ、二酸化炭素濃度、温度のうち最も不足したもの(限定要因(limiting factor))によって決まるとする限定要因説()を唱えた。\n光・温度・水・二酸化炭素のうち、どれが限定要因かは、どの程度に下げるかなどの実験条件によって異なる。\n植物はタンパク質を持っており、タンパク質は多くのアミノ酸からなる。アミノ酸には窒素(ちっそ、化学式:N)が、ふくまれている。\nアミノ酸には多くの種類がある。\n植物は窒素(ちっそ)の吸収の仕方は、根から硝酸イオン(NO3-)やアンモニウムイオン(NH4+)などとして吸収する。では、そのアンモニウムイオンなどは、どこから来たのだろうか。\n細菌類や菌類などが、死んだ動植物や排泄物などを分解した際に、アンモニウムイオンや硝酸イオンなどができる。\n植物が、NO3-やNH4+など、窒素 N をふくんだ物質を吸収することを窒素同化(ちっそどうか)という。\nアンモニウムイオンが亜硝酸菌(あしょうかきん)などの細菌の働きにより亜硝酸イオンに変わり、亜硝酸イオンから硝酸菌(しょうさんきん)などの働きにより硝酸イオンに変わる。\n亜硝酸菌や硝酸菌など、硝化に関係した細菌を硝化菌(しょうかきん)という。\n大気中にも窒素があるが、植物は直接には利用できない。微生物の中に、空気中の窒素を取り込むことができる生物もいる。マメ科植物の根に住む根粒菌(こんりゅうきん、Rhizobium)が、空気中の窒素を取り込むことができるこのような微生物が大気中の窒素を取り込む事を窒素固定(ちっそこてい、nitrogen fixation)という。ダイズの根に、根粒菌が住み着き、その結果、根にコブ状のものが、できる。ゲンゲの根にも根粒菌が住み着く。\n窒素固定ができる生物には、ネンジュモなどのシアノバクテリア類(ラン藻類)、アゾトバクター、根粒菌などがある。\n窒素固定のできる細菌を窒素固定細菌(nitrogen fixation bacteria)という。\n窒素の分子 N2 (「エヌツー」と読む)は、すごく安定な分子である。窒素分子の結合では、三重結合(さんじゅうけつごう)をしているので、結合力が強いからである。三重結合について説明する。まず化学の周期表を見ると、窒素原子は左から4番目の周期表15族にある。窒素に限らず周期表15族の原子の電子軌道(これを価電子(かでんし)という)では、15族の一番外側の軌道には、電子が5つある。\nふつうの分子は、他の原子と結合して電子が補われて、最外軌道の電子数が周期表18族と同じ状態になると、ふつうの分子は安定する。このような状態を閉殻(へいかく)という。\nたとえば炭素原子Cの場合、ほかの原子と最大4つまで結合できる。(たとえばメタンCH4 )\n窒素原子Nの場合、ほかの原子と最大3つまで結合できる(たとえばアンモニアNH3 )。窒素原子どうしの結合 N2では、この3つの結合までの力を、すべて相手の一個の原子につかっているので、とても強力な結合になっている。\n多くの原子では周期表18族の価電子数は8個である。ただしヘリウムは価電子が2個である。18族の原子は、原子のままで安定しているので、分子にならない。そのため、常温でも18族原子は気体であるので、18族原子を希ガス原子(きガスげんし)ともいう。\n窒素の場合、価電子は5つであり、周期表18族に不足しており、なので窒素分氏を反応させ別の原子と結合させるためには、多くのエネルギーが必要である。窒素固定細菌は酵素の働きによって、無機的に反応させるよりかは少ないエネルギーで反応させるが、それでも多くのエネルギーが必要であり、窒素固定細菌はATPを大量に消費している。\nわれわれ人間の呼吸では、おもにグルコース(C6H12O6)などの炭水化物を分解して、生命活動に必要なエネルギーを取り出している。このグルコースの分解反応で酸素が必要なため、人間は呼吸で酸素を取り入れている。呼吸によるグルコースの分解で、グルコースに蓄えられていたエネルギーを取り出しており、さまざまな生態活動のエネルギーになっている。\nなお、呼吸におけるグルコースのように、呼吸につかわれてエネルギーを取り出す元になっている物質を呼吸基質(こきゅう きしつ)という。\n人間や魚類の呼吸は、細胞での酸素を用いる呼吸のためであり、このときの細胞での酸素を用いた呼吸を好気呼吸(こうきこきゅう)という。細胞での好気呼吸によるグルコースの分解は、おもにミトコンドリアで行われている。\nそのため、ミトコンドリアを持たない微生物では、呼吸の仕組みが、人間や魚類などとは違っている。\n微生物には、酸素を用いないで呼吸を行うものもあり、このような無酸素の呼吸を嫌気呼吸(けんきこきゅう)という。\nまずは、好気呼吸について整理しよう。\nわれわれ人間の肺呼吸は、細胞での好気呼吸のために、酸素を身体各部の細胞に血管などを用いて送り込んでいるのである。魚類の「えら呼吸」も、酸素を細胞に送り込んでいるので、細胞での好気呼吸のためである。植物の呼吸もしており酸素を取り入れており、植物の呼吸は好気呼吸である。なお、光合成は呼吸ではない。\n人間・魚類の呼吸も植物の呼吸も、これらの呼吸は、細胞では、どれもミトコンドリアが酸素を使ってグルコースなどを分解する反応である。\nさて、細菌やカビなどの一部の微生物には 、必ずしも酸素を使わなくてもグルコースなどの炭水化物を分解できる生物がいる。酵母菌や乳酸菌は、そのような菌である。酵母菌によるアルコール発酵や乳酸菌による乳酸発酵などの発酵は、これらの菌が生存のために栄養から必要なエネルギーを得るために化学反応を行った結果であり、酵母菌や乳酸菌の発酵では酸素を用いていない。\nこのような、酸素を使わないでグルコースなどの炭水化物を分解する活動も呼吸にふくめる場合がある。これらの菌などがおこなう無酸素の化学反応でグルコースなどの炭水化物を分解することを嫌気呼吸(けんきこきゅう)という。\nそのため、酸素が少ない環境、あるいは酸素が無い環境でも、栄養があれば、嫌気呼吸をする菌は生きられる。\n微生物による腐敗も、その微生物の嫌気呼吸である場合が普通である。\n発酵(はっこう)と腐敗(ふはい)の区別は、ある微生物の呼吸の結果の生産物が、人間によって健康的な生産物の場合が発酵で、有害な生産物の場合が腐敗(ふはい)である。つまり発酵と腐敗の分類は、人間の都合による。\n微生物の種類によって、嫌気呼吸の生産物の方法は違うが、基本的にはATPを生産している。\n嫌気呼吸による、このような酸素を用いない分解では、ミトコンドリアを用いていない。微生物は細胞質基質で嫌気呼吸を行っている。\n酵母菌は、嫌気呼吸と好気呼吸の両方の呼吸ができる。そのため、アルコール発酵をさせる場合には、酸素の無い環境に置く。酵母菌はミトコンドリアを持っており、酵母菌の好気呼吸はミトコンドリアによるものである。\n乳酸菌と酢酸菌は原核生物であり、ミトコンドリアを持たない。\n酵母菌(こうぼきん)のアルコール発酵での化学反応式は、まずグルコースC6H12O6からピルビン酸C3H4O3に分解される。この、グルコースからピルビン酸を得る過程を解糖系(かいとうけい、glycolysis)という。解糖系でATPが2分子つくられる。そしてピルビン酸が、無酸素の状態では酵素デカルボキシラーゼによってアセトアルデヒドCH3CHOによって分解され、そのアセトアルデヒドがNADHという物質によってエタノールC2H5OHへと変えられる。\nまとめると、アルコール発酵の反応式は、次の式である。\nグルコース1分子あたりATPが2分子できる。アルコール発酵のATPは解糖系に由来しており、それ以降はATPを産生してない。\n解糖系による、グルコースからピルビン酸ができる反応は、嫌気生物に限らず、ほとんどすべての生物の呼吸で行われている。(※ そのため、ピルビン酸は呼吸の学習における重要物質である。)\n乳酸発酵(にゅうさんはっこう)とは、乳酸菌が行う嫌気呼吸である。\nまずグルコースC6H12O6が解糖系によって、ピルビン酸へと分解され、このときATPが2分子できる。そしてピルビン酸がNADHによって乳酸:C3H6O3に変えられる。\n酢酸菌(さくさんきん)は、 酸素O2を用いて、エタノールを酢酸CH3COOH に変える。\n酸素を用いるため、一般的な無酸素の発酵とは区別して、酸化発酵とよぶ。\n酢酸発酵のとき、酢酸のほかに水ができる。\n筋肉では、はげしい運動などをして酸素の供給が追いつかなくなると、グルコースやグリコーゲンなどを解糖をして、エネルギーを得る。筋肉での解糖のときに、乳酸(にゅうさん、lactate)ができる。\n反応のしくみは、乳酸発酵と、ほぼ同じである。\n呼吸で使われる基質は通常はグルコースだが、グルコースが不足した場合などに脂肪やタンパク質やグルコース以外の炭水化物などの栄養が基質として使われる場合がある。\nなおデンプンやグリコーゲンなどは、呼吸の過程で、グルコースへと分解される。\n呼吸によって排出されるCO2と使用される酸素O2の、体積(または分子数)の比率 CO2/O2 を呼吸商(こきゅうしょう、respiration quotient)といい、RQであらわす。呼吸基質によって、呼吸商は異なる。気体の体積は圧力によって変化するので、測定するときは同温・同圧でなければならない。同温・同圧で測定した場合、気体の体積比は分子数の比になるので(物理法則により、気体の体積は、分子数が同じなら、原子・分子の種類によらず、分子数1モルの気体は0℃および1気圧では22.4L(リットル)である。モルとは分子数の単位であり6.02×1023個のこと)、よって化学反応式から理論的に呼吸商を算出でき、その理論値と実験地は、ほぼ一致する。\n呼吸商の値は、おおむね、次の値である。\n化学式\nC6H12O6 + 6O2 + 6H2O → 6CO2 + 12H2O\nよって RQ = CO2/O2 = 6÷6 = 1 より RQ = 1.0\nトリアシルリセロールの場合、\nよって RQ = CO2/O2 = 55÷77 ≒ 0.7 より RQ = 0.7\nトリステアリンの場合、\nよって RQ = CO2/O2 = 114÷163 ≒ 0.7 より RQ = 0.7\nロイシン C6H13O2N の場合、\nよって RQ = CO2/O2 = 12÷15 = 0.8\n測定実験の結果の呼吸商が0.8だからと言って、必ずしも気質がタンパク質とは限らない。なぜなら炭水化物(RQ=1)と脂肪(RQ=0.7)の両方が基質に使われている場合、呼吸商が0.7~1.0の中間のある値を取る場合があるからである。\n好気呼吸は細胞質基質とミトコンドリアで起こる。とくにミトコンドリアを中心に、呼吸によって多くのATPが合成される。\n1分子のグルコースが、2分子のピルビン酸(C3H4O3)にまで分解される。この反応は細胞質基質で行われる。酵素を必要としない。ATPを2分子、生成する。反応の途中でATPを2分子消費するが、4分子のATPを生成するので、差し引き2分子のATPを生成する。\nグルコースは、まずATP2分子によってリン酸化されフルクトース二リン酸(C6化合物)になる。\nフルクトース二リン酸が二分して、グリセルアルデヒドリン酸(C3化合物)の二分子ができる。\nグリセルアルデヒドリン酸が、いくつかの反応を経て、ピルビン酸になる。この間の反応で、電子e-とプロトンH+が生じて、補酵素NADに渡されNADHになる。ここで生じたNADHはミトコンドリアに入り、あとの電子伝達系で利用される。また、ATPが4分子できる。よって、差し引きグルコース1分子につき、2分子ATPが、解糖系で生じる。\nピルビン酸が、ミトコンドリア内に入り、ミトコンドリアのマトリックスという内膜にある酵素で、ピルビン酸がコエンザイムA(CoA)と結合してアセチルCoA(活性酢酸)というC2化合物になり、段階的に分解される。二酸化炭素が、ピルビン酸がアセチルCoAになる際に生じる。\nアセチルCoA以降の反応図は回路上であって、回路のはじめにクエン酸(citric acid)が生じることから、クエン酸回路(Citric acid cycle)という。\nと変化していく。(「C6」とはC6化合物のこと。C5とはC5化合物のこと。C4も同様にC4化合物のこと。)\nこのクエン酸回路の過程でATPが2分子できる。また、電子が放出される。\nC2化合物のアセチルCoAがC6化合物のクエン酸に変化する際、クエン際回路の最後のオキサロ酢酸(C4化合物)と化合するので、炭素の収支が合う。クエン酸回路では、脱炭酸酵素や脱水素酵素の働きで、クエン酸は変化していく。\nクエン酸回路で、コハク酸(succinate)からフマル酸になる際に発生する水素は、補酵素FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)が受け取り、FADH2になる。\nコハク酸以外での脱水素反応では、NADが水素を受け取っている。(「NAD」とは「ニコチン アデニン ジヌクレオチド」のことである。)\nミトコンドリアの内膜にシトクロム(cytochrome)というタンパク質がいくつもあり、このシトクロムは電子を受け渡しできる。解糖系やクエン酸回路で生じたNADHやFADH2から、電子e-と水素イオンH+が分離し、電子はシトクロムに渡される。そしてシトクロムどうしで電子を受け渡す。このとき、H+が、いったんマトリックスから膜間にくみ出され、それから水素イオンの濃度勾配に従ってATP合成酵素を通ってマトリックス側に戻る。このH+がATP合成酵素を通る際のエネルギーを利用して、ADPからATPが生成される。最終的に生成するATPの数は、グルコース1分子あたりATPを最大で34分子を生じる(生物種によって生成数が異なる)。\nこれらの反応ではNADHなどが酸化される反応が元になってATPを生成しているので、一連の反応を酸化的リン酸化(oxidative phosphorylation)という。シトクロムのことをチトクロームともいう。\n電子e-は、最終的に酸素原子に渡され、酸化酵素の働きで水素イオンと反応し水になる。この水の生成反応のときの反応エネルギーを用いて、マトリックスの水素が膜間へと運ばれており、さきほど述べたようにATPが合成されている。\n好気呼吸でのATPの収支は、グルコース1分子あたり解糖系で2分子のATP、クエン酸回路で2分子ATP、電子伝達系で最大34分子ATPであり、合計で最大38分子のATPになる。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%94%9F%E7%89%A9/%E7%94%9F%E7%89%A9I/%E7%B4%B0%E8%83%9E%E3%81%A8%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC"} {"text": "細胞分裂(cell division)には、体細胞分裂(たいさいぼう ぶんれつ)と減数分裂(げんすう ぶんれつ)がある。\nここでは体細胞分裂について扱う。\n多細胞生物は多数の細胞でできている。\nこれらの細胞は元は1つの細胞であり、細胞が分裂することによって構造を維持している。\nこの分裂を体細胞分裂(somatic cell division)と呼ぶ。\n分裂の前の細胞を母細胞(ぼさいぼう、ははさいぼう、mother cell)、分裂で生じた2個の細胞を娘細胞(むすめさいぼう、daughter cells)と呼ぶ。\n体細胞分裂では核が2つに分裂する核分裂(かくぶんれつ、karyokinesis)が起こる。\n体細胞分裂の核分裂は染色体の数が核分裂の前後で変わらない同数分裂()である。\nまた、核分裂の終わりには細胞質が2つに分かれる細胞質分裂(cytokinesis)が起こる。\n核分裂と核分裂の間の時期を間期(かんき、interphase)と呼ぶ。\n核分裂が行われる時期を分裂期(ぶんれつき、M phase)と呼ぶ。分裂期をM期ともいう。\n分裂期は、その段階により、さらに、前期(prophase)・中期(metaphase)・後期(anaphase)・終期(telophase)に分けられる。\n細胞分裂の準備が行われる。\nDNAやタンパク質を合成し、染色体を複製する(複製された染色体は離れてしまわないように、つながれている)。DNAは間期に複製され2倍になっている。\n染色体は核内に分散している。\n間期はG1期、S、G2期からなる。\nG1期は合成準備期。\nS期は合成期。\nG2期は分裂準備期。\n細胞分裂の過程は、まず最初に、核分裂がおこる。つづいて細胞質分裂がおこる。\nM期は前期、中期、後期、終期に分けられる。\n前期にあらわれる染色体は、核内に分散していた染色体が凝縮したもの。\n分裂期に染色体が等分されるとともに、DNAも等分される。よって、分裂後の最終的な染色体数およびDNA数は、もとの細胞と同じである。\n核膜が消失し、核の中にあった染色体が現れる。分散していた染色体が細長いひも状に集まっている。\n核膜と核小体は消失する。\n両極から紡錘糸(ぼうすいし、spindle fiber)が伸びて紡錘体(ぼうすいたい、spindle)ができはじめる。\nこのとき、動物細胞では、中心体が両極へ移動し、星状体(せいじょうたい、aster)となり、その星状体から紡錘糸が伸びる。\nやがて、染色体は太く短い棒状になり、裂け目(縦裂)が生じる。\n紡錘糸(ぼうすいし)は染色体のくびれた部分である動原体(どうげんたい, centromere)に付着する。\n染色体が細胞の中央の面にあつまる。この、染色体が集まってる細胞の中央の面を赤道面(せきどうめん)という。紡錘体が完成し、すべての染色体の動原体が細胞の赤道面に並ぶ。\nそれぞれの染色体が2本に分離して、細胞の両極に移動する。分離の際、染色体が縦裂面で2つに分かれ、紡錘糸に引かれるように(実際には引っ張られるわけではない)両極に移動する。\n核が現れ始め、染色体は核内に分散する。集まっていた染色体が次第に分散していき、\n核膜と核小体が再び出現する。また、この頃に細胞質分裂もはじまり、植物細胞の場合、細胞板(さいぼうばん、cell plate)があらわれる。植物細胞では、ゴルジ体から細胞板が形成され、細胞を二分する。動物細胞では、赤道面で細胞膜がくびれ、細胞を二分する。\n以上のような、細胞分裂の分裂の周期のことを細胞周期(cell cycle)という。\n細胞の中には分裂を停止しているものもあり、これをG0期(ジーゼロき)という。「G」とはgap(ギャップ)。\n染色体の数、大きさ、形は種によって決まっている。\n体細胞の多くは大きさや形が同じ2つの染色分体をもっており、\nこれを相同染色体(そうどう せんしょくたい、homologous chromosomes)と呼ぶ。\n相同染色体は、それぞれ両親から受け継いだものである。\n生殖細胞は、染色体数が半分になっている。\n体細胞では、染色体は父母から継いだ相同染色体が一対になっており、相同染色体1対あたり2個の染色体である。\nこのような関係を表すため、一般に染色体の対の数を n で表し、したがって体細胞の染色体数を 2n で表す。つまり、生殖細胞の染色体数は n で表す。生殖細胞は減数分裂によって染色体数が、体細胞と比べて、半減している。\nヒトの場合、染色体数は46本あり、23対である。常染色体が22対、性染色体が1対である。\nヒトの場合、n=23である。\nこのようなnや2nの表記を核相(かくそう)という。\n生殖細胞などnのことを単相(たんそう)といい、体細胞など2nのことを複相(ふくそう)という。\n核相の表記のアルファベットは、nで表すのが慣習である。\n精子や卵などの生殖細胞を作る際、通常の分裂とは違う。生殖細胞をつくる分裂は減数分裂といい、分裂が2回起きる。減数分裂での1回目の分裂を第一分裂といい、2回目の分裂を第二分裂という。\n減数分裂でも、分裂前の間期のS期にDNAが複製される。複製されたDNAが第一分裂で分配されるので、第一分裂後のDNA量は複製前(G1期)と同じである。\n第二分裂ではDNAの複製は行われず、第二分裂後にDNA量が複製前の半分になる。\n2本鎖DNAの塩基どうしの結合が、一部分、ほどける。そして、部分的に1本鎖になったDNAが2本ぶんできる。\n1本鎖のそれぞれが鋳型となって複製が始まる。それぞれの一本鎖の塩基に対応するヌクレオチドが結合して(AとT、GとCが結合)、相補的な塩基の対が出切る。そして塩基対どうしの新しい鎖のほうのヌクレオチドは、酵素のDNAポリメラーゼなどの働きによって、となりあったヌクレオチドのリン酸と糖が結合して、次々と連結していって新しい鎖ができ、よって2本鎖のDNAになる。複製前のDNAのもう一方のほうの一本鎖も同様に複製されて2本鎖になる。こうして、複製前のDNAのそれぞれの一本鎖が2本鎖のDNAになり、複製後はDNAが2個になる。\nこのような複製のしくみを半保存的複製(はんほぞんてき ふくせい)といい、アメリカのメセルソンとスタールによって1958年ごろに大腸菌と窒素の同位元素(通常の14Nと、同位元素の15N)を用いた実験で証明された。\nまず、基準として、あらかじめ通常の窒素14Nをふくむ培地で、大腸菌を培養しておく。この基準とはべつに、もう一種類、重窒素15Nをふくむ培地を、次のように用いる。\n(1) \n大腸菌を培養する際、区別のため、重窒素15Nをふくむ塩化アンモニウム(15NH4Cl)を窒素源とする培地で、培養して増殖させる。\nすると、大腸菌の窒素原子に、すべて重窒素15Nだけをふくむ大腸菌が得られる。\nまず、この大腸菌を保存しておく。もうひとつの基準とするため。\n(2) \nさらに、15Nだけをふくむ大腸菌を、ふつうの窒素14Nをふくむ培地に移して培養して、分裂1回目・2回目・・・といった分裂ごとにDNAを抽出するため遠心分離機で遠心分離して、DNAの比重を調べる。\n塩化セシウム(CsCl)溶液を加えた試験管を遠心分離機に取り付け、高速回転させると、試験管の底ほど塩化セシウム濃度が高くなるという密度勾配が出来る。\nこのときDNAを混ぜておくと、DNAの密度とつりあう溶液の密度の位置に、DNAが集まる。\nこうして、DNAの質量のわずかな違いを検出できる。\n結果\n・ 1回分裂後のDNAからは、15Nと14Nを半々にふくむDNAだけが得られ、重さは中間の重さだった。\n・ 2回分裂直後のDNAからは、15N-14Nの半々のDNAと、14NだけをふくむDNAが、1:1の割合で得られた。\n重さは、14NだけをふくむDNAが、もっとも軽い。\n・ 3回目の分裂後は、軽いDNAと中間の重さのDNAの比が3:1だった。\n・ 4回目の分裂後は、軽いDNAと中間の重さのDNAの比が7:1だった。\n・ n回目の分裂後は、軽いDNAと中間の重さのDNAの比が 2n-1:1 だった。\n中間の重さのDNAは、何世代たっても消滅しなかった。\nこの実験によって、DNAの半保存的複製は証明された。\nアメーバ、ミドリムシ、ゾウリムシなど、個体が単一の細胞からできている生物は単細胞生物(unicellular organism)と呼ばれる。\n例えばゾウリムシは、一つの細胞で、繊毛を使って泳いだり、細胞口を使って食べたり、食胞を使って消化したりしている。\n単細胞生物に対して、形や働きの異なる多くの細胞からなる生物は多細胞生物(multicellular organism)と呼ばれる。多細胞生物において、藻類や腔腸動物は、種子植物や脊椎動物に比べると簡単な構造を持っている。\n例えばヒドラは、8種類約10万個の細胞からなる多細胞生物であり、刺細胞で攻撃したり、腺細胞で消化液を分泌したり、消化細胞で消化を行ったりしている。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%94%9F%E7%89%A9/%E7%94%9F%E7%89%A9I/%E7%B4%B0%E8%83%9E%E3%81%AE%E5%A2%97%E6%AE%96"} {"text": "高等学校生物 > 生物I > 生殖と発生 \n生物は、生殖によって増え、発生の過程を経て個体(こたい、indvidual)となる。\n生殖とは、生物の個体が新個体を作り出す働きであり、\n発生とは、受精卵から成長した個体になるまでの過程である。\nこのページでは、\n生殖の働きや仕組み、\n発生の過程や仕組み、\nなどを扱う。\n生殖(せいしょく、reproduction)とは、生物の個体が新個体を作り出す働きである。\n生殖には、親に雄(おす)と雌(めす)がある有性生殖(ゆうせい せいしょく、sexual reproduction)と、親に雄と雌がない無性生殖(むせい せいしょく、asexual reproduction)がある。\n有性生殖では、親は、精子や卵のような配偶子(はいぐうし、gamete)という生殖細胞を作り、配偶子どうしが合体(接合、Bacterial conjugation)して子となる。\n配偶子には、雄と雌の配偶子の形や大きさが同じな同形配偶子(isogamete)と、雄と雌の配偶子の形や大きさが異なる異形配偶子(anisogamete)がある\n。\n同形配偶子は緑藻類のクラミドモナスなどに見られ、異形配偶子は種子植物や動物などに見られる。\n異形配偶子には、大きな卵細胞(らんさいぼう、egg cell)または卵(らん、egg, ovum)と、小さな精細胞(せいさいぼう、sperm cell)または精子(sperm, spermatozoon)がある。\n卵は栄養を蓄え、精子は移動できる。\n卵と精子が合体することを受精(じゅせい、fertilization)と呼び、合体したものは受精卵(じゅせいらん、fertilized egg)と呼ばれる。\n有性生殖では、配偶子が遺伝的に異なるため、子は親と異なる遺伝的性質を持つ。\n生殖に雄と雌が必要だが、遺伝的多様性が得られるため、環境の変化に対応できる可能性がある。\n無性生殖では、親は生殖細胞を作らずに、子を増やしていく。\n無性生殖には、分裂、出芽、栄養生殖、胞子生殖などがある。\n分裂(fission)とは、親の体が分裂して子となる生殖の方法であり、単細胞生物のアメーバやミドリムシなどが行うほか、多細胞生物のイソギンチャクやプラナリアなども行う。\n出芽(budding)とは、親の体の一部が子の体となり成長する生殖の方法であり、酵母菌やヒドラやサンゴなどが行う。\n栄養生殖(vegetative reproduction)とは、植物にみられる、親の根や茎などの栄養器官(vegetative organ)が子となる生殖の方法であり、サツマイモやジャガイモやオニユリなどが行う。\n胞子生殖(spore reproduction、sporulation)とは、親の体に胞子(spore)という細胞を作り、それが発芽し(germinate)て子となる生殖の方法であり、アオカビなどの菌類が行う。\n無性生殖では、子は親と全く同じ遺伝的性質をもち、クローン(clone)と呼ばれる。生殖に雄と雌が出会う必要がないため効率がいいが、遺伝的多様性が得られないため、環境の変化に対応できず絶滅する可能性もある。\nまた、ミズクラゲのように、有性生殖と無性生殖の両方を行う生物もいる。\nまた、ゾウリムシは、無性生殖の分裂と、有性生殖の接合を行う。\n有性生殖の目的は、環境に適応しやすくなることと、新しい核を作ることで分裂によって劣化した細胞をリセットすることである。\n細胞分裂の際、細胞の核内で観察される、DNAが折りたたまれて凝縮されて棒状になったものを、染色体(chromosome)と呼ぶ。DNA(デオキシリボ核酸、deoxyribonucleic acid)とは、アデニン・チミン・シトシン・グアニン(adenine, thymine, cytosine, guanine)の4種類の塩基(base)と呼ばれるものを含む、二重らせん構造の物質である。この塩基の並び方で決定される情報を遺伝子(gene)と呼ぶ。この遺伝子の情報が、生物の形や性質を決めている。\nヒトの細胞は同形同大のペアが23組、あわせて46本の染色体をもつ。\nただし、ヒトの精子と卵は、23組のペアのうち1本ずつ23本の染色体を持っている。受精卵になると精子と卵の染色体をあわせて46本の染色体となる。\nある細胞で、ある遺伝子を決める染色体が、父に由来する染色体と母に由来する染色体の両方をもつ場合を複相(ふくそう)といい表記「2n」で表し、体細胞が例である。生殖細胞などのように、ある遺伝子の染色体が父母のどちらか片方のみに由来している場合を単相(たんそう)といい、表記「n」で表す。複相とか単相とかのことを核相という。核相は染色体の本数では決まらず、DNA量でも決まらず、ある遺伝子の染色体の種類が父母の両方由来なら2nであり父母の片方由来ならnと決まる。よって、体細胞分裂時の細胞質分裂の直前にDNA合成によってDNA量が倍化していても、核相は2nのままである。\n減数分裂(meiosis)とは生殖細胞でみられる染色体数が半減する分裂である。\n減数分裂は第一分裂(Meiosis I)と第二分裂(Meiosis II)の2回の分裂が連続して起こる。\n減数分裂は間期(interphase)→第一分裂前期(Prophase I)→第一分裂中期(Metaphase I)→第一分裂後期(Anaphase I)→第一分裂終期(Telophase I)→第二分裂前期(Prophase II)→第二分裂中期(Metaphase II)→第二分裂後期(Anaphase II)→第二分裂終期(Telophase II)の順で起こる。\n減数分裂において、DNA量の変化の時期と核相の変化の時期は異なり、一致しないので、注意。また、顕微鏡などでの見かけの染色体の本数と、DNA量にもとづく染色体の本数とが、減数分裂では一致しない。DNA量にもとづく染色体数を数えるとき、染色分体(せんしょくぶんたい)という。\n核相は、第二分裂の間は前期から終期まで 核相=n のままである。\n減数分裂で二価染色体ができているとき、ある確率で、4本の染色分体のうちの、相同染色体の2本が組み換わることがある。これを組換え(くみかえ)または乗換え(のりかえ)という。(※ 生物IIで、組換えについて詳しく扱う。)\nDNAの塩基配列が少し異なっていて、異なった遺伝子の情報となることがある。この違いが、個人の違いとなる。\nまた、性の決定に関与する染色体を性染色体(sex-chromosome)と呼ぶ。\nヒトの男女の違いは、X染色体とY染色体を1つずつ持っていれば男性で、X染色体を2本持っていれば女性となる。生殖細胞の精子は22本+X染色体または22本+Y染色体の場合があり、卵は22本+X染色体の場合だけである。つまり、X染色体をもつ精子とX染色体をもつ卵が受精すれば女性に、Y染色体をもつ精子とX染色体をもつ卵が受精すれば男性になる。\nヒトの場合、男性ホルモンや女性ホルモンなど性ホルモンを異性の人体に投与しても、ヒトの性別は変わらない。ヒトの性を決定するのは、遺伝子の性染色体である。\n(※ ホルモンについて、詳しくは、単元環境と動物の反応などで扱う。)\nまた、ヒトの生殖細胞は、46本の染色体のうち、23組のペアから1本ずつ受け継ぐため、その組み合わせは、2^23=8388608(約800万)通りとなる。さらにその精子と卵の組み合わせは、8388608*8388608=70368744177664(約70兆)通りとなる。兄弟姉妹の違いが生まれるのは、この染色体の組み合わせの多さによる。また、組み換え(Recombination)とよばれる染色体の部分的交換により、その組み合わせはさらに増える。\n[1]\n動物の生殖では、水中の動物の多くは、母体外で受精を行い(体外受精)、陸上の動物の多くは、交尾により母体内で受精を行う(体内受精)。この節ではヒトの生殖細胞を中心に扱う。\n発生(development)の初期に存在している生殖細胞のもとになる細胞を始原生殖細胞(しげんせいしょくさいぼう、primordial germ cell)と呼ぶ。始原生殖細胞の核相は2nである。\n男性では、始原生殖細胞が受精後3週目に出現し、その後体細胞分裂で増殖し精原細胞(せいげんさいぼう、spermatogonium)となる。精原細胞の核相は2nである。青年期以降、体細胞分裂を繰り返して増殖し精原細胞から一次精母細胞(primary spermatocyte)となり、減数分裂の第一分裂で2個の二次精母細胞(secondary spermatocyte)となり、減数分裂の第二分裂で4個の精細胞となる。精細胞の核相はnである。その後、精細胞が変形して精子となる。\n精子は、頭部(head)、中片(mid piece)、尾部(tail)で構成される。頭部は、核(nucleus)とそれを覆う先体(せんたい、acrosome)からなる。中片はミトコンドリア(mitochondria)と中心粒(centriole)からなる。尾部はべん毛(flagellum)からなる。\nミトコンドリアは、ATPの反応によって鞭毛をうごかすことで、精子を動かすためのエネルギー源を供給する。\n頭部にある先体はゴルジ体が変形・由来したものであるので、よって精子に通常のゴルジ体は含まれていない(※ 2015年センター試験の選択肢で、精子にゴルジ体が含まれていないことまで知識を問う出題あり)。\n女性では、始原生殖細胞が受精後5週目に出現し、その後体細胞分裂で増殖し卵原細胞(oogonium)になる。やがて卵原細胞の多くは、退化・消失し、出生時には約200万個の一次卵母細胞(primary oocyte)ができ、青年期には約40万個に減少する。排卵の直前に、減数分裂の第一分裂で、一次卵母細胞は大型の二次卵母細胞(secondary oocyte)と小型の第一極体(first polar body)に分裂する。減数分裂の第二分裂で、二次卵母細胞は卵と第二極体(second polar body)に分裂する。やがて極体は退化して消滅する。\n精子と卵が合体することを受精と呼び、生じた卵を受精卵と呼ぶ。受精の前。\nウニ(urchin)の卵を例に説明する。卵の表面には細胞膜があり、さらに外側には細胞膜ごと卵をつつむようにゼリー状の透明な層があり、ゼリー層(jelly coat)という。ゼリー層の下に卵黄膜(らんおうまく、vitelline membrane)がある。精子がゼリー層に到着すると、精子の先体に変化が起きる、これを先体反応(せんたいはんのう、acrosome reaction)という。まず先体から加水分解酵素が放出されゼリー層を溶かす。精子頭部の先体が変形し、先体から糸状の突起が出る。この突起のことを、先体突起(せんたいとっき)といい、アクチンフィラメントの束が先体突起の中身である。この働きは、ゼリー層にふくまれる物質の働きによる。このような、先体の一連の反応を先体反応という。そして精子はゼリー層を貫通する。先体突起の表面にはバインディンというタンパク質があり、ウニ卵の細胞膜にはバインディンと結合する受容体がある。バインディンと受容体が結合して、精細胞と卵細胞が融合し、受精する。1つの精子が卵に受精したとき、卵のカルシウムイオン濃度が上昇し、このイオン濃度変化によって卵の細胞膜下にある表層粒が内容物を細胞膜と卵黄膜の間に放出する。これを表層反応という。この表層反応によって、卵黄膜が硬化し、精子の侵入点を中心に卵の表面の性質が変化していき、卵黄膜が変化し受精膜(fertilization membrane)となって、受精膜が持ち上がり、受精膜が卵の表面全体に広がり、これによって他の精子の侵入を妨げる。また、卵は受精膜で保護される。このため、精子は、1個の卵にふつう1個しか受精しない(多精拒否、たせいきょひ)。受精して卵の中に入った精子は、頭部が精核(sperm nucleus)となって卵核(egg nucleus)と合体して、核相は2nとなり、受精が完了する。\n植物(plant)の生殖では、カテンソウなどは風が媒介して受粉(pollination)する花であり(風媒花)、ツユクサなどは雄ずい(ゆうずい)の花粉(pollen)が同株の花の雌ずい(しずい)に受粉する(自家受粉)。この節では被子植物の生殖細胞を中心に扱う。\n花は植物の生殖器官である。花には、中央に雌ずい(しずい、pistil)があり、その周りに雄ずい(ゆうずい、stamen)がある。雌ずいの膨らんでいるところは子房(しぼう、ovary)と呼ばれ、その中のつぶつぶを胚珠(はいしゅ、ovule)と呼ぶ。雄ずいの先端には花粉(かふん、pollen)を含むやく(anther)がある。\n胚珠の中に卵細胞と呼ばれる細胞が、花粉の中に精細胞(sperm cell)と呼ばれる細胞がそれぞれ形成される。\n花がつぼみの頃、やくの中で、花粉母細胞(pollen-mother cell)(核相:2n)と呼ばれる細胞が、減数分裂を行い、花粉四分子(かふん しぶんし)という4個の細胞になる。花が咲く頃、花粉四分子は、体細胞分裂を行い、大きな花粉管細胞()(核相:n)と小さな雄原細胞(generative cell)(核相:n)からなる花粉になる。雌ずいの先に雄ずいの花粉が付くことを 受粉(じゅふん、pollination) と呼ぶ。受粉すると、花粉から 花粉管(かふんかん、pollen tube) と呼ばれる管が伸びて、胚珠の 珠孔(しゅこう、micropyle) に到達する。雄原細胞が花粉管の中を移動し、分裂して2個の精細胞(n)と呼ばれる細胞になる。\n胚珠(はいしゅ)では、胚のう母細胞(はいのうぼさいぼう、embryo-sac mother cell)(核相:2n)と呼ばれる細胞が、減数分裂を行い、生じた4個の細胞のうち、1個が胚のう細胞(embryo-sac cell)(n)と呼ばれる細胞になり、残りの3個の細胞は退化して消滅する。胚のう細胞は、3回の核分裂を行った後、細胞質分裂を行って、7個の細胞と8個の核からなる胚のう(はいのう、embryo sac)になる。胚のうは、珠孔側に1個の卵細胞(らんさいぼう)(n)と2個の助細胞(じょさいぼう、synergid)(n)、反対側に3個の反足細胞(はんそくさいぼう、antipodal cell)(n)、中央に2個の極核(きょくかく、polar nucleus)(n)を含む中央細胞(ちゅうおうさいぼう、central cell)から構成される。\n被子植物の場合の仕組みである。まず、花粉管内では雄原細胞が分裂して2個の精細胞(n)となっている。そして、胚のうに達した2個の精細胞(n)のうち、1個の精細胞は卵細胞と受精し受精卵(2n)になり、もう1個の精細胞は中央細胞の極核の2個(n+n)と受精して胚乳核(3n)になる。2つの受精が起こるのでこれを重複受精(じゅうふくじゅせい、double fertilization)と呼び、被子植物のみに見られる仕組みである。\n重複受精(被子植物)\n受粉時の花粉管の 胚のう への誘引は、胚のうにある助細胞が花粉管を誘引する物質を出していることが、日本の東山哲也らの研究(レーザーで助細胞を破壊するなどの実験)によって分かっている。トレニアという植物で実験された。トレニアでは胚のうが珠皮から出ているので観察しやすいためである。\n1つの 胚のう では、助細胞は2個ある。\n実験結果では、助細胞を2個とも破壊すると、花粉管が、まったく誘引されなくなる。助細胞以外の、卵細胞や極核などを破壊しても、花粉管は誘引される。助細胞を1個だけ破壊すると、花粉管の誘引の確率が下がる。\nそして、花粉管を誘引している物質は、あるタンパク質であることが分かっており、ルアーと名づけられた。魚釣りの疑似餌(ぎじえ)の「ルアー」が名前の由来である。このタンパク質が、助細胞で発現している。\n\n受精卵(embryo)から成長した個体になるまでの過程を発生(embryogenesis)と呼ぶ。例えば、ニワトリの雌は1日に1個程度の卵を産む。交尾をしないでも卵は産まれるが、孵化(ふか)しない。交尾をしないで受精しないで産まれた卵を無精卵と呼び、交尾をして受精して産まれた卵を有精卵と呼ぶ。無精卵と有精卵をニワトリの体温と同じ37℃で保温すると、無精卵は変化しないが、有精卵は2日程度で血管が3日程度で心臓が形成され、7日程度で脳や目や手足などが形成され、20日程度で生まれヒヨコになる。血管や心臓が発生の初期に形成されるのは、卵黄(らんおう、yolk)にある栄養を血管や心臓で取り入れるためである。\n受精卵は体細胞分裂を繰り返して成長するため、それぞれの細胞は受精卵の遺伝子を全てそのまま受け継ぐ。発生の過程で、それぞれの細胞は遺伝子の異なる部分を使うことで、それぞれ異なる細胞になっていき、これを分化(differentiation)と呼ぶ。つまり、個体の全ての細胞は同じ遺伝子をもつが、使う遺伝子の組み合わせで異なる細胞になっていく。\n受精卵は体細胞分裂を繰り返して成長するが、その体細胞分裂を卵割(らんかつ、cleavage)と呼ぶ。\n卵割で生じた細胞を割球(かっきゅう、blastomere)と呼ぶ。\n卵の極体を生じた側を動物極(どうぶつきょく、animal pole)と呼び、\nその反対側を植物極(しょくぶつきょく、vegetal pole)と呼ぶ。\n卵は栄養のある卵黄(らんおう、yolk)を含み、\n卵黄は卵の種類によって量や分布が異なっており、\n卵はその量や分布により等黄卵(とうおうらん,isolecithal egg)、端黄卵(たんおうらん、telolecithal egg)、心黄卵(しんおうらん,centrolecithal egg)に分けられる。\n等黄卵(isolecithal egg)は、卵黄が少なく卵内にほぼ均一に分布しており、ウニや哺乳類などが等黄卵である。\n端黄卵(telolecithal egg)は、卵黄が植物極に偏って分布しており、両生類などが端黄卵である。\n卵割には、卵全体が分裂する全割(holoblastic cleavage)と、卵の一部分が分裂する部分割(meroblastic cleavage)がある。\n全割には割球の大きさがほぼ等しい等割(equal cleavage)と割球の大きさが等しくない不等割(unequal cleavage)があり、\n部分割には動物極側にある胚盤の部分だけで行われる盤割(discodial cleavage)と表面の細胞層だけで行われる表割(superficial cleavage)がある。\nウニの発生は、受精卵→2細胞期→4細胞期→8細胞期→16細胞期→桑実胚期→胞胚期→原腸胚期→プリズム形幼生→プルテウス幼生→成体の順で起こる。\n原腸胚のころになると、胚葉は、外胚葉、中胚葉、内胚葉に分化する。\nその後、外胚葉は表皮や神経などになり、中胚葉は筋肉や骨片などになり、内胚葉は腸などになる。\n[2]\nカエル(frog)の受精では、精子は動物極側から侵入する。精子が卵に侵入した位置の反対側には、灰色の部分が三日月になっている箇所が生じる。これを灰色三日月(はいいろ みかづき)という。発生が進むと灰色三日月の位置に原口(げんこう)が生じる。\nカエルの卵は、卵黄が植物極側に片寄った端黄卵である。\nカエルの発生は、受精卵→2細胞期→4細胞期→8細胞期→16細胞期→桑実胚期→胞胚期→原腸胚期→神経胚期→尾芽胚→おたまじゃくし→成体の順で起こる。\n原腸胚のころになると、胚葉は、外胚葉、中胚葉、内胚葉に分化する。\n神経胚のころになると、外肺葉は表面を覆う表皮(epidermis)と管状体の神経管に分化し、中胚葉は支持器官の脊索(notochord)と体節(somite)と腎節(nephrotome)と側板(abdominal plate)に分化し、内胚葉は管状の腸管(enteron)に分化する。\nその後、外胚葉性の器官では、表皮は皮膚の表皮、眼の水晶体や角膜、口や鼻の上皮に分化し、神経管は脳や脊髄、眼の眼胞や網膜に分化する。\n中胚葉性の器官では、脊索は退化し、体節は脊椎骨・骨格・骨格筋、皮膚の真皮に分化し、腎節は腎臓や輸尿管に分化し、側板は心臓などの内臓、血管の結合組織や筋組織に分化する。\n内胚葉性の器官では、腸管は前部が気管・肺、食道、胃、肝臓、膵臓に分化し、中・後部が小腸、大腸、膀胱に分化する。\n胚珠内で、受精卵は発生をはじめ、珠孔と反対側の細胞は胚球()や胚柄()となり、珠孔側の細胞は吸器細胞()となる。\n胚球は子葉(cotyledon)・幼芽(plumule)・胚軸(hypocotyl)・幼根(radicle)からなる胚(embryo)となり、胚柄は退化する。\n中央細胞は養分を蓄えた胚乳(endosperm)となる。胚乳の養分はデンプンなどである。\n珠皮は種皮(seed coat)となる。\n助細胞や反足細胞は退化する。\n胚珠は種子(seed)と呼ばれるようになる。\n種子には有胚乳種子(ゆうはいにゅうしゅし)と無胚乳種子(むはいにゅうしゅし)がある。\n有胚乳種子(Albuminous seed)にはイネやムギ・トウモロコシがあり、胚乳が発達し、発芽に必要な養分が胚乳に蓄えられる種子で、カキ科やイネ科の植物の種子が有胚乳種子である。\n無胚乳種子(exalbuminous seed)にはナズナやマメやクリがあり、種子の成熟時に胚乳の養分を子葉が吸収するため胚乳は発達せず、養分が子葉に蓄えられる種子で、マメ科やアブラナ科の植物の種子が無胚乳種子である。\n種子が芽を出すことを発芽(はつが、Germination)と呼ぶ。適切な水分・温度・空気などが、そろうと、発芽する。\n発芽した種子では、有胚乳種子は胚乳の養分を、無胚乳種子は子葉の養分を、というように蓄えた栄養を使って成長する。\nやがて葉ができると、自分で光合成して栄養を作るようになる。\nコケ植物・シダ植物で、胞子生殖は無性生殖である。\nコケ植物・シダ植物では、胞子体(ほうしたい)をつくって無性生殖をする世代と、配偶体(はいぐうたい)という卵と精子をつくって有性生殖をする世代とを、交互に繰り返す。\nこのような異なる生殖方法の交代の繰り返しのことを世代交代(せだい こうたい)という。世代交代の様子を図などで環状に表したものを生活環(せいかつかん)という。\n普通、胞子体は核相が2nであり、配偶体の核相はnである。なので、世代交代での胞子体と配偶体との交代にともなって、核相も交代することになり、このような核相の交代を核相交代(かくそう こうたい)という。\nスギゴケなどのコケ植物で、通常に目にする植物体は、配偶体(核相n)である。コケ植物の配偶体には雄と雌との区別があり、それぞれ雄株(おかぶ)あるいは雌株(めかぶ)という。\n胞子が成長して雄株または雌株になるわけだから、つまり胞子には雄雌の区別があり、雄株になる胞子と、雌株になる胞子との区別がある。\n胞子をつくる胞子体の胞子嚢(ほうしのう)の中で減数分裂をして、胞子(核相:n)がつくられる。\n17~18世紀頃には、精子や卵の中に、成体を縮小した形態(ホムンクルス, homunculus)があり、それが発生とともに展開するという考えである前成説(preformation theory)が有力な学説であった。それに対して、精子や卵の中に、成体を縮小した形態は含まれておらず、発生の過程で、しだいに単純な状態から複雑な状態へと成体の構造が生じてくるという考えを後成説(epigenesis)と呼ぶ。ドイツのカスパル・ヴォルフのニワトリの発生の研究などにより後成説の正しさが次第に認められていった。\n割球を分離しても完全な胚になる卵を調節卵(regulation egg)と呼び、2細胞期のウニ・イモリ・カエルなどの卵が調節卵である。それに対して、割球を(ヒモで強く縛る等して)分離すると不完全な胚になる卵をモザイク卵(mosaic egg)と呼び、クシクラゲなどの卵がモザイク卵である。ただし調節卵であっても、ある程度発生が進むとモザイク卵となる。つまり、調節卵とモザイク卵の違いは、卵の各部分の発生運命がいつ決まるかの違いである。\n実験には、ドイツのウィルヘルム・ルーのカエルを用いた実験、ドイツのハンス・ドリーシュのウニを用いた実験、ドイツのハンス・シュペーマンのイモリを用いた実験などがある。(後述)\nなお、モザイク卵を得るために割球を縛る実験では、割球は強く縛らなければならない。縛り方が弱いと、実験は失敗する。(※ 2014年の生物Iの本試験で出題)\nイモリ胚をきつくしばる分割実験では、実験結果から灰色三日月をふくんだ部分のみが正常な幼生になることが分かった。次のような実験結果になった。\nこのことから、灰色三日月は、正常な幼生になるのに必要な物質をふくんでいることが分かる。イモリ胚の分割実験では、強くしばった場合、2個の個体になる。\nなお、弱くしばると、頭が2つある1個の個体になる。この灰色三日月の部位には、背を発生させるのに必要な因子があることが、他の実験から分かっている。\n\nドイツのウォルター・フォークトは1925年ごろ、イモリの胚を無害な色素(ナイル青や中性赤など)を含んだ寒天片で染め分ける局所生体染色(localized vital staining)と呼ばれる手法を用いて、胚の表面の各部分が、将来どの器官に分化するかを調べた。そして、実験結果から、表面の各部がどう分化するかをまとめた原基分布図 (予定運命図) を作った。\nこれによると、胚の時期から、胚のどの部分が成体のどの器官に将来、分化するか決まっている。\n原基(げんき、anlage)とは、まだ分化していない状態の細胞群のうち、発生段階で将来ある器官になることに予定されているもののことである。\nシュペーマンは、スジイモリとクシイモリの初期原腸胚で、予定神経域と予定原腸域とを交換移植してどうなるかを実験した。実験結果は、移植先の予定運命にしたがって分化した。\nしかし、神経胚のときに移植した場合は、結果が違った。移植片それぞれの予定運命どおりに分化した。\nこのことから、イモリで予定運命の決定をする時期は、原腸胚初期よりは後で、神経胚になるまでには決定していることが分かる。\nシュペーマンはさらに後期原腸胚でも同様の実験を行った。その結果、移植片は移植先の予定運命には従って変更される場合と、従わなずに変更されない場合とがあった。移植片の予定運命が変更される場合でも、初期原腸胚の場合よりも長い時間が掛かった。\nドイツのハンス・シュペーマンは、イモリの胚の交換移植実験を行った。原腸胚初期の原口の上部(原口背唇)を切り出し、同じく原腸胚初期の他の胚の外胚葉の表皮になる予定の部分へ移植した。すると頭が2つある幼生ができた。シュペーマンは、これを移植した細胞が周りの細胞に頭部になるよう情報を伝えたと考えた。原口背唇のように、胚のほかの部分に働きかけ、分化を起こさせる部分を形成体(けいせいたい)、あるいは オーガナイザー(organizer)と呼び、その働き(分化を起こさせる働き)を誘導(ゆうどう、induction)と呼ぶ。この実験結果から、原口背唇は近くの外胚葉に働きかけて、神経管を作る働きがあることが分かる。現代では、移植した細胞からタンパク質が分泌され、これが誘導を行っていることがわかっている。\nイモリの眼の形成過程は次の順で起こる。\n・一次誘導 原口背唇が形成体(一次形成体)として働き、外肺葉から神経管を誘導する。神経管の前方部は脳(のう)に分化し、脳の両側から一対の眼胞(がんぽう)が生じる。さらに眼胞はくぼんで眼杯(がんぱい)となる。\n・二次誘導 眼杯が形成体(二次形成体)として働き、表皮から水晶体(すいしょうたい)を誘導する。眼杯は網膜(もうまく)に分化する。\n・三次誘導 水晶体が形成体(三次形成体)として働き、表皮から角膜(かくまく)を誘導する。\nこのように、誘導の連鎖によって器官が作られていく。\nオランダのニューコープは、メキシコサンショウウオを用いた実験により、内胚葉が外肺葉を中胚葉へと誘導することを示した。これを中胚葉誘導()という。\n[3]\n体の一部が失われた場合、その部分が再び作り出されることを再生(さいせい、regeneration)と呼ぶ。\n例えば、プラナリアは体を切り刻まれても、切り刻まれた部分が元の体に戻る。\nプラナリアを切断すると、切断面に未分化の細胞が集まって再生芽という細胞群ができる。\nこの再生芽が増殖し、頭部側のものは尾部へ、尾部側のものは頭部へ分化していく。\nこのとき頭部と尾部の方向は切断する前と同じになる。\nまた、イモリは、手足や尾の一部が失われても、元に戻る。\nイモリの手や足を切断すると、切断面の細胞が脱分化して再生芽ができる。\nまた、イモリの眼の水晶体を除去しても、虹彩の背側の色素細胞から水晶体が再生したりもする。\nヒトも傷や骨折が治るので、ある程度再生する能力を持っているといえる。\n近年では、心不全の治療のために、筋肉組織から筋肉細胞を取り出し、培養し、シート状にして心臓に張り付けるなどの再生医療()の研究も進んでいる。\n発生などの段階で、ある細胞では、遺伝的にあらかじめ死ぬようにプログラムされている細胞がある。たとえば哺乳類や鳥類の胚では指と指の間に 水かき が始めのころにあるが、この水かきの所の細胞は死んで組織が退化していく。このような、あらかじめ死ぬようにプログラムされた細胞死をプログラム細胞死という。ヒトの手足の指の間の部分も、発生時に水かきのようなものがプログラム細胞死をしている。\nカエルの幼生(オタマジャクシ)が変態で尾がなくなるのもプログラム細胞死である。\n正常な発生のためにプログラム細胞死は必要なことである。\nプログラム細胞死の多くは、まず細胞膜および細胞小器官は正常なまま染色体・DNAだけが凝縮し、それによって細胞膜が変化するなどして細胞が断片化して壊れて死んでいく。このような細胞死をアポトーシス(apoptosis) という。\nヒトやニワトリの手足の指の間の部分の発生時に水かきのプログラム細胞死も、アポトーシスである。オタマジャクシの尾がカエルへの変態で無くなるプログラム細胞死もアポトーシスである。\nなお、いっぽう、傷や栄養不足や病原菌などによって細胞が壊されるなどして死んでいくことを壊死(えし)またはネクローシス(necrosis) という。\n※ 資料集などに書いてある。深入りの必要は無い。\n※ 保健体育などと、ほぼ同内容だが、高校生は教養として、目を通しておく程度には勉強しておくこと。大学で生物系に進学する場合、基礎知識として必要になる。\n※ 現代では、基本的に高校『生物基礎』『生物』の範囲外になっている。もし教科書に書いてあったとしても、コラムなどだろう。\n※ 第一学習社や数研出版の教科書に記述あり。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%94%9F%E7%89%A9/%E7%94%9F%E7%89%A9I/%E7%94%9F%E6%AE%96%E3%81%A8%E7%99%BA%E7%94%9F"} {"text": "高等学校生物 > 生物I > 生命の連続性に関する探求活動 \n仮に、ある条件Aが、ある現象の要因とした場合、条件A以外を同じにして条件Aだけを変更して実験をして、どういう結果になるかの確認を取る必要がある。\nたとえば植物のある実験で、仮に光が、ある現象に必要な場合は、さらに、光以外の水分や温度などの他の条件をなるべく同じにして別の実験をすることで、比較のための実験を行う。\nこのような実験を対照実験(たいしょうじっけん)という。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%94%9F%E7%89%A9_%E7%94%9F%E7%89%A9I%E2%80%90%E7%94%9F%E5%91%BD%E3%81%AE%E9%80%A3%E7%B6%9A%E6%80%A7%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%8E%A2%E6%B1%82%E6%B4%BB%E5%8B%95"} {"text": "ルーペ(独: lupe)とは、いわゆる「虫めがね」などのことである。ルーペでは、決して太陽を見てはいけない。(目を痛めるので。) \nルーペの倍率は5倍~10倍程である。\nタンポポなどの道端の植物など、肉眼で確認できる程度のものは、このルーペで見るのが効率的である。ちなみに、タンポポで、花びらのように見える物は、じつは一枚一枚が花全体である。それぞれの「花びらのような物」に、おしべ や めしべ が個別についており、独立した花なのである。\nルーペの使い方\n双眼実体顕微鏡は、観察する物をプレパラートにする必要が無い。倍率は20倍~40倍ほどである。\nピント(焦点)合わせなどの調整は、以下のように行う。\n顕微鏡のレンズには、接眼レンズ(eyepiece)と対物レンズ(objective)の2種類が必要である。\n顕微鏡の倍率は、\nである。\nたとえば接眼レンズの倍率が15倍であり、対物レンズの倍率が4倍なら、顕微鏡の倍率は60倍である。(15×4=60より)\n一般に中学校などで使うような形式の顕微鏡の倍率は、40倍から600倍までである。\nミジンコやミドリムシなど、いわゆる「微生物」と言われるものは、ルーペなどでは倍率が小さすぎて確認できない場合が多い。微生物などは、顕微鏡以上で観察しよう。\nまず、プレパラート(ドイツ語: Präparat)の準備が必要である。鏡筒上下式顕微鏡と、ステージ上下式顕微鏡のどちらとも、プレパラートが必要にななる。このプレパラートの準備方法を、つぎに説明する。\n顕微鏡で観察する時は、プレパラート(ドイツ語: Präparat)を使う必要がある。\nうすい物しか観察できない。あつい物を観察したい場合は、うすい切片にする必要がある。\n以上の手順で、観察を始められる。さらに高倍率で観察したい場合には、対物レンズをレボルバーを回して、高倍率の対物レンズに替える。\n顕微鏡で見える像は、上下左右が反対に見える顕微鏡が普通である。なので、プレパラートを動かすと、像は反対方向に動いて見える。よって、プレパラートを動かしたい場合には、動かしたい方向とは反対の方向に動かす。\nいきなり、高倍率の対物レンズで観察すると、視野がせまいので調整が難しくなる。そのため、まずは低倍率の対物レンズを使用する。\nまた、高倍率にするほど、明るさは暗くなる。\n理科におけるスケッチのしかたは、美術スケッチとは、ことなる。\n理科におけるスケッチのしかたを述べる。\n中学では、立体感の表現方法まで覚えなくてもよいが、もしスケッチで立体感をつける場合は、点の多い・少ないで表現する。(奥まっていて影になりそうなところほど、点が多くなる。)\n立体感の表現は、やや難しいので、中学校では描かないほうが無難だろう。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%90%86%E7%A7%91_%E7%AC%AC2%E5%88%86%E9%87%8E/%E8%BA%AB%E8%BF%91%E3%81%AA%E7%94%9F%E7%89%A9%E3%81%AE%E8%A6%B3%E5%AF%9F"} {"text": "高等学校生物 > 生物I > 遺伝 \nDNA(デオキシリボ核酸、英: deoxyribonucleic acid)の構造は、ヌクレオチド (nucleotide) と呼ばれる構成単位をもち、ヌクレオチドはリン酸と糖と塩基の化合物である。ヌクレオチドの糖はデオキシリボース(deoxyribose) である。DNAでは、ヌクレオチドがいくつも結合して、二重らせん構造をつくっている。\n塩基には4種類あり、アデニン(adenine)、チミン(thymine)、シトシン(cytosine)、グアニン(guanine)という4種類の塩基である。ヌクレオチド一個に、4種の塩基のうち、どれか一個が、ふくまれる。\n生殖細胞では、減数分裂で染色体が半分になることから、遺伝子の正体とは、どうやら染色体に含まれている物質であろう、という事がモーガンなどの1913年ごろのショウジョウバエの遺伝の研究によって、突き止められていた。\n遺伝子に含まれる物質にはタンパク質や核酸(かくさん)など、さまざまな物質がある。どの物質こそが遺伝子の正体なのかを突き止める必要があった。核酸の発見は、1869年ごろ、スイスの生化学者ミーシャーによって、膿(うみ)から取り出した細胞の核に、リン酸をふくんだ物質があることが発見され、この物質はタンパク質とは異なることが調べられた。ミーシャ-の発見したのが核酸である。この当時では、まだ核酸が遺伝子の正体だとは気づかれていなかった。なお、膿は、白血球を多くふくむ。\n1949年、オーストリアのエルヴィン・シャルガフは、\nいろいろな生物の持つDNAを抽出して調べ、どの生物でもアデニン(A)とチミン(T)とは量が等しく1:1であり、グアニン(G)とシトシン(C)とは量が等しく1:1であることを発見した。\nこのことから、シャルガフは、アデニンはチミンと結合する性質があり、グアニンはシトシンと結合する性質があると考えた。\nDNAの、このような、アデニン(A)とチミン(T)とが等量で結合する性質があること、グアニンとシトシンも等量で結合する性質があることを、まとめて、相補性(そうほせい)という。\n1953年、アメリカのジェームズ・ワトソンとイギリスのフランシス・クリックは、\nシャルガフの塩基組成の研究や、イギリスのモーリス・ウィルキンスのX線回折の研究をもとにして、研究を行った。そしてワトソンとクリックは、DNAが二重らせん構造であることを発見した。\nこれによると、2本のヌクレオチド鎖が、アデニンとチミン、グアニンとシトシンで対合し、柱状になり、それがらせん状にねじれている。\n二重らせん上のアデニンAとチミンTなど、らせんで対になった塩基どうしの結合は、水素結合(すいそ けつごう)という、水素を仲立ちとした弱い結合をしている。塩基上の水素原子が、向かいあった塩基の窒素原子や酸素原子などと、弱く結合するのが、DNAの場合での水素結合である。\nなお水素結合が見られるのは生物だけに限らず、一般の化学物質などでも多く見られる。たとえば水分子の安定性でも、水素結合が関わっている。\nDNAの場合の水素結合では、アデニンはチミンの塩基対では、塩基上の2箇所で水素結合をする。シトシンとグアニンの塩基対では、塩基上の3箇所で水素結合をする。\n二重らせんの幅は2.0nmで、らせん1回転(1ピッチ)の長さは3.4nm、らせん1回転中に10対のヌクレオチド対がある。\nDNAの働きには、主にタンパク質の設計図となることと、遺伝情報を子孫に伝えることがある。\nDNAの遺伝子の働きかたを決める要因は、塩基の並び方で決定される。この塩基の並び方で、細胞で合成されるタンパク質が異なるため、DNAはタンパク質の設計図となっている。このため、DNAの塩基の並び方が異なると、遺伝情報も異なる。病気などの例外をのぞけば、ある生体で合成されたタンパク質、たとえば皮膚のタンパク質のコラーゲンや、骨のタンパク質や、筋肉のタンパク質のミオシンなど、どのタンパク質も、その生体のDNAの情報をもとに合成されたタンパク質である。\nDNAは、細胞核の中で、RNA(アールエヌエー)というタンパク質合成用の塩基配列の物質をつくる。RNAの情報は、DNAの情報を元にしている。RNAは、核の外に出ていきリボソームと結合し、消化器官で食品のタンパク質から分解・吸収したアミノ酸を材料にして、\nRNAの塩基配列に従ってアミノ酸をつなぎかえることで、タンパク質を作っている。\nタンパク質の構造は、アミノ酸がいくつも結合した構造である。したがって、タンパク質を構成するアミノ酸の順序などの配列や、アミノ酸の数などによって、タンパク質の性質が異なる。なお、アミノ酸どうしの化学結合をペプチド結合という。\nDNAは、受精卵の時から、細胞分裂の際は、必ず複製されている。\nDNAは配偶子形成の際半分になり、配偶子が受精すると合わさって元に戻る。\nこうしてDNAは遺伝情報を子孫に伝えている。\n配偶子形成の際のDNA量の変化は、原細胞のときを2と置くと、一次母細胞のときは4であり、二次母細胞のときは2となり、卵細胞・精細胞のときは1になり、受精卵のときに2にもどる。\n体細胞分裂の際のDNA量の変化は、母細胞のときを2と置くと、前期~終期のときが4であり、娘細胞の時に2にもどる。\nDNAを設計図としタンパク質を作る仕組みは全ての生物で共通している。\nしかし、塩基配列が少しずつ変化(ATCGが入れ替わったり、増えたり)して、\n生物の多様性が生まれた。\nゲノム(genome)とはある生物の遺伝子の全体のことである。\n2003年にヒトゲノムの解読が完了した。\nこれにより、ヒトの遺伝子の全体が明らかとなった。\n現在では、ゲノム研究は、食品や医療などに応用されている。\n1869年、スイスのフリードリッヒ・ミーシェルは、\n細胞核内の物質を発見しヌクレイン(nuclein)と呼んだ。\n当時は、遺伝子の本体はタンパク質であると考えられていたが、\n今日では、ヌクレインはDNAと呼ばれ、遺伝子の本体であることが明らかになっている。\n1928年イギリスのフレデリック・グリフィスは、\n肺炎レンサ球菌とネズミを用いて実験を行った。\n肺炎レンサ球菌には、被膜を持っていて病原性のあるS(smooth)型菌と、被膜が無く病原性のないR(rough)型菌の2種類がある。\n被膜の有無と病原性の有無の、どちらも遺伝形質である。\n通常の菌の分裂増殖では、S型とR型との違いという遺伝形質は変わらない。\nグリフィスの実験結果は次の通り。\nこれはR型菌の形質が、加熱殺菌したS型菌に含まれる物質によって、S型菌の形質へ変化したためであり、\nこれを形質転換(transformation: nuclein)と呼ぶ。\n1943年ころ、カナダのオズワルド・アベリーは、グリフィスの実験での形質転換を起こした物質が何かを特定するため、タンパク質分解酵素とDNA分解酵素を用いて、S型菌・R型菌の実験を行った。\n実験結果\nこれによって、R型菌の形質転換を起こしたのはDNAであることがわかった。\n細菌に規制するウイルスのことをバクテリオファージまたは単にファージという。\n1952年、アメリカのアルフレッド・ハーシーとマーサ・チェイスは、\nT2ファージというファージの一種のウイルスを用いて実験を行った。\nT2ファージは細菌に寄生して増殖するウイルスであるバクテリオファージの一種であり、\nほぼタンパク質とDNAからできている。T2ファージの頭部の中にDNAが含まれる。それ以外の外殻(がいかく)はタンパク質で、できている。\n彼らは、放射性同位体の35S(硫黄の放射性同位体)および32P(リンの放射性同位体)を目印として用い、硫黄をふくむタンパク質には35Sで目印をつけ、32PでDNAに目印をつけた。DNAは P(リン)をふくむがS(硫黄)をふくまない。彼らの実際の実験では、タンパク質に目印をつけた実験と、DNAに目印をつけた実験とは、それぞれ別に行った。\n実験では、それらの放射性同位体をもつT2ファージを大腸菌に感染させ、さらにミキサーで撹拌し、遠心分離器で大腸菌の沈殿と、上澄みに分けた。\n大腸菌からは、32Pが多く検出され、あまり35Sは検出されなかった。このことからT2ファージのDNAが大腸菌に進入したと結論付けた。また、上澄みからはT2ファージのタンパク質が確認された。つまり上澄みはT2ファージの外殻をふくんでいる。\nさらに、この大腸菌からは、20~30分後、子ファージが出てきた。子ファージには35Sは検出されなかった。\nこれによって、DNAが遺伝物質であることが証明された。\nヒトの体細胞には46個の染色体があり、つまりヒトには23対の染色体がある。(2n=46)\nそのうち22対は、男女に共通して存在する染色体であり、これを常染色体(じょうせんしょくたい、Autosome)と呼ぶ。\nいっぽう残りの2本の染色体によって、ヒトの性別が決定されるので、これを性染色体と呼ぶ。\nヒトの場合、男女に共通して存在する染色体のことをX染色体という。いっぽう、ヒトでは男性にのみ存在する染色体のことをY染色体という。\n\nヒト以外の動物も含めると、性の決定には、XY型、XO型、ZW型、ZO型の4つがある。\nXY型は、雌が同形のXX、雄が異形のXYの性染色体をもち、\nショウジョウバエや、ヒトなどの哺乳類が行う。\nXO型は、雌が同形のXX、雄がXの1つだけの性染色体をもち、\nトンボやバッタなどが行う。\nZW型は、雌が異形のZW、雄が同形のZZの染色体をもち、\nニワトリ、ヘビ、カイコガなどが行う。\nZO型は、雌がZの1つだけ、雄が同形のZZの染色体をもち、\nスグリエダシャクなどが行う。\n遺伝(heredity)とは、生物の形や性質が、遺伝子によって、親から子へ伝わることである。\nまた、生物の形や性質のことを形質(けいしつ、trait)と呼ぶ。\n形質には親から子へ遺伝する遺伝形質(genetic trait)と、\n環境の影響によって獲得した遺伝しない獲得形質(Acquired trait)がある。\nこのページでは、形質とは遺伝形質を指す。\n生殖の際に、親から生殖細胞を経て、子に伝えられている遺伝の因子を遺伝子(いでんし)といい、こんにちでは遺伝子の正体は、細胞にふくまれるDNA(ディーエヌエー)という物質であることが知られている。\n[1]\nメンデルは、異なる形質をもつエンドウの品種を用意し、2年間にわたり育て、\n同一個体の配偶子間で行われる自家受精(autogamy)で\n全く同じで変化しない子孫を生じる純系(pure line)の品種を選んだ。\nその際、明確に決定的に発現する、互いに異なる対立形質を7つ採用し、\n1856年から62年にかけて交配実験を行った。\n実験1\n1.種子の形について、\n丸としわの純系を用意して両親P(Parents)としたところ、\nその子雑種第一代[2]F1(Filius)は、全て丸であった。\nこのようにF1では、対立形質の片方のみが表れる。\n現れる形質を優性形質(dominant trait)と呼び、現れない形質を劣性形質(recessive trait)と呼ぶ。\nここでの優性・劣性は、単に形質が現れやすい・現れにくいを意味し、形質が優秀である・劣等であるを意味しない。\n実験2\nF1を自家受精したところ、\n雑種第二代F2では丸としわが5474個と1850個で、およそ3:1の出現比であった。\nこのようにF2では、\n優性形質と劣性形質がおよそ3:1の比で出現する。\n実験3\nF2を自家受精したところ、\nF2でしわだったものは、F3で全てしわの純系となり、\nF2で丸だったものは、565株のF3の内、\n193株は丸の純系となり、\n372株は丸としわを3:1の比で生じた。\nこのようにF3では、F2で劣性形質を示すものは、劣性形質の純系となり、\nF2で優性形質を示すものは、このうち、3分の2は優性形質と劣性形質を3:1の比で生ずる子孫を作り、\n3分の1は優性形質の純系となる。\n実験4\n1.種子の形と2.胚乳の色について、\n種子の形が丸で胚乳の色が黄の純系と種子の形がしわで胚乳の色が緑の純系を用意して両親Pとしたところ、\nその子F1はすべて丸で黄であった。\n実験5\nF1を自家受精したところ、\nF2では丸・黄、丸・緑、しわ・黄、しわ・緑が315個、108個、101個、32個で、\nおよそ9:3:3:1の出現比であった。\n個体の遺伝子の構成を記号で表したものを遺伝子型(genotype)と呼ぶ。\n遺伝子型はふつう優性形質をアルファベットの大文字で表し、\n劣性形質をアルファベットの小文字で表す。\nある形質を決定する遺伝子は、\nペアの染色体の同じ位置に1つずつ、\nあわせて2つあるため、\nアルファベット2文字で表す。(例:AA,Aa,aa)\nまた、AAやaaのように同じ遺伝子がペアになっているものをホモ接合体(homozygous, 同型接合体)と呼び、\nAaのように異なる遺伝子がペアになっているものをヘテロ接合体(heterozygous, 異型接合体)と呼ぶ。\n遺伝子型によって現れる形質を表現型(phenotype)と呼ぶ。\n遺伝子型の記号を[]で囲んで表すこともある。(例:[A],[a])\n遺伝子型の判別のために、その個体と劣性形質の個体とを交雑することを検定交雑(test cross)と呼ぶ。\nまた、F1とPとを交雑することを戻し交雑(backcross)と呼ぶ。\n下の表は、検定交雑で遺伝子型を判別する方法を示している。\n配偶子?2と?4の遺伝子構成は、F1の表現型とその分離比から予想できる。\nつまり、?2はAのみ、?4はAとaである。\n両親?1と?3の遺伝子型は、配偶子?2と?4の遺伝子構成から予想できる。\nつまり、?1はAA、?4はAaである。\n実験1では、\n種子の形が丸をA,しわをaと表すとすると、\n遺伝子型は、丸の純系はAA、しわの純系はaaと表せる。\nこの両親Pの配偶子はそれぞれA、aとなり、\nその子F1の遺伝子型はAaとなり、表現型は[A]となる。\nこのように、優性形質の純系と劣性形質の純系とを交雑すると、\nその子は優性形質のみを表し、\nこれを優性の法則(law of dominance)と呼ぶ。\nなお、今日では、エンドウの種子の形を決める遺伝子は、\n実際には酵素を作る遺伝子であり、その酵素がデンプンを作って種子の形を丸にしていることがわかっている。デンプンの量は、AaはAAとaaの中間であるが、種子の形を丸にするには十分な量であるため、Aaの種子の形は丸となっている。\n実験2では、\nF1の遺伝子型はAaと表され、\n配偶子が作られるとき分離し、\nそれぞれの配偶子はA,aとなる。\nこのように配偶子形成の際ペアの遺伝子が分離し、\nそれぞれ配偶子に受け継がれることを分離の法則(law of segregation)と呼ぶ。\nF1の自家受精では、\nその配偶子がそれぞれ受精するため、\nF2ではAA:Aa:aa=1:2:1となり、\n結果[A]:[a]=3:1となる。\n実験3では、\nF2で[a]だったものは、aaであるから、\nその配偶子はaであり、自家受精でaaつまり[a]となる。\nF2で[A]だったものは、AA:Aa=1:2であるから、\n3分の1のAAの配偶子はAであり、自家受精でAAつまり[A]となり、\n3分の2のAaの配偶子はA,aとなり、自家受精でAA:Aa:aa=1:2:1つまり[A]:[a]=3:1となる。\n実験4では、\n種子の形が丸をA,しわをa、胚乳の色が黄をB,緑をbと表すとすると、\n遺伝子型は、丸で黄の純系はAABB、しわで緑の純系はaabbと表せる。\nこの両親Pの配偶子はそれぞれAB,abとなり、\nその子F1の遺伝子型はAaBbとなり、表現型は[AB]となる。\n実験5では、\nF1の遺伝子型はAaBbとあらわされ、\n配偶子が作られるとき分離し、\nそれぞれの配偶子は、AB,Ab,aB,abとなる。\nF1の自家受精では、\nその配偶子がそれぞれ受精するため、\nF2でAABB:AABb:AaBB:AaBb:AAbb:Aabb:aaBB:aaBb:aabb=1:2:2:4:1:2:1:2:1となり、\n結果[AB]:[Ab]:[aB]:[ab]=9:3:3:1となる。\n実験4・5では、\n種子の形だけあるいは胚乳の色だけに注目すると、\nそれぞれ優性の法則と分離の法則に従い独立して遺伝している。\nつまり、種子の形に関しては[A]:[a]=3:1であり、胚乳の色に関しては[B]:[b]=3:1である。\nこのように、2つの遺伝子が異なる染色体に存在するとき、\nその遺伝子が互いに影響しないことを独立の法則(law of independence)と呼ぶ。\n優性と劣性の関係が不完全な遺伝の仕方を不完全優性(incomplete dominance)と呼ぶ。\n不完全優性では優性の法則は当てはまらない。\n不完全優性は、マルバアサガオなどが行う。\nマルバアサガオには、花の色が赤Rと白rのものがある。\n花の色が赤の純系RRと白の純系rrを両親Pとすると、\nその子F1はRrで花の色が中間の桃色となる。\nさらにその子F2は、RR:Rr:rr=1:2:1で、赤色:桃色:白色=1:2:1となる。\n成体になるまでに致死作用がある遺伝子を致死遺伝子(lethal gene)と呼ぶ。\n致死遺伝子は、多くの生物に存在する。\n例えば、ハツカネズミは致死遺伝子を持っており、\n毛の色が黄色Yと灰色yのものがある。\n黄色Yyを両親Pとすると、\nその子F1はYy:yy=2:1で、[Y]:[y]=2:1となる。\nYYの個体は発生の段階で死んでしまう。\nこれはYが劣性の致死遺伝子だからである。\n同一の遺伝子座にある、同一形質を決める、複数の遺伝子を複対立遺伝子(multiallelic gene)と呼ぶ。\n複対立遺伝子には、ヒトのABO式血液型などがある。\nヒトのABO式血液型には、A型、B型、AB型、O型の4種類があり、\nAとBとは不完全優性で、A,BはOに対して完全優性である。\n例えば下の表のように、AO(A型)とBO(B型)を両親とすると、\nその子はAB,AO,BO,OOとなり、それぞれAB型,A型,B型,O型となる。\n対立しない2つ以上の遺伝子が、その働きを互いに補足しあって1つの形質を決めるとき、その遺伝子を補足遺伝子()と呼ぶ。\n補足遺伝子には、スイートピーの花の色などがある。\n色素原を作る遺伝子をC、色素原から色素を作る遺伝子をPとし、\n白色花CCppと白色花ccPPを両親Pとすると、\nその子F1はCcPpで有色花となる。\nさらにその子F2は、C-P-:C-pp:ccP-:ccpp=9:3:3:1で、有色花:白色花:白色花:白色花=9:3:3:1つまり有色花:白色花=9:7となる。\nこれはCとPの両方をもっていないと色素が作られないためである。\n他の遺伝子の働きを抑制する遺伝子を抑制遺伝子(suppressor gene)と呼ぶ。\n抑制遺伝子には、カイコガのまゆの色などがある。\n黄色遺伝子をY、Yの働きを抑制する遺伝子をIとし、\n白まゆIIyyと黄まゆiiYYを両親Pとすると、\nその子F1はIiYyで白まゆとなる。\nさらにその子F2は、I-Y-:I-yy:iiY-:iiyy=9:3:3:1で、白まゆ:白まゆ:黄まゆ:白まゆ=9:3:3:1つまり白まゆ:黄まゆ=13:3となる。\nこれはIがYの働きを抑制するためである。\n性染色体の中にあるが、性の決定以外の働きをもった遺伝子の遺伝現象のことを伴性遺伝(sex-linked inheritance)という。\n伴性遺伝は形質の発現が性別によって異なり、\nヒトの赤緑色覚異常や血友病などに見られる。\nヒトの赤緑色覚異常の遺伝子は、X染色体上にある劣性遺伝子である。\n記号的に書けば、優性遺伝子と劣性遺伝子をそれぞれA,aと表すと、\nXA、Xaのように表す。この場合、Xaが色覚異常の遺伝子である。\nこのように、伴性遺伝は性別によって遺伝の仕方が異なる。\nこのようなメンデル遺伝的な理由もあって男性のほうが統計的には遺伝性の色覚異常は多いが、しかし女性でも遺伝性の色覚異常者はいる[3]。\n同じ染色体にある遺伝子が、配偶子形成の際に行動をともにすることを、遺伝子の連鎖(linkage)という。\n1905年、イギリスのウィリアム・ベーツソンは、\nスイートピーの交雑実験から、\n連鎖の現象を発見した。\n生殖細胞の減数分裂のとき、相同染色体の一部が交換する現象を乗換え(crossover)という。\nそのときに遺伝子の配列が変わることを組換え(Recombination)という。\n遺伝子の組換えが起こる割合を組換え価()といい、パーセントで表される。\n組み換え価を\n\nl\n\n{\\displaystyle l}\n %、組み換えの起こった配偶子数を\n\nm\n\n{\\displaystyle m}\n、全ての配偶子数を\n\nn\n\n{\\displaystyle n}\nと置くと、組み換え価は次のように求める。\n\n\nl\n\n{\\displaystyle l}\n\n\n\n=\n\n{\\displaystyle =}\n\n\n\n\nm\nn\n\n\n{\\displaystyle {\\frac {m}{n}}}\n\n\n\n×\n100\n\n{\\displaystyle \\times 100}\n1926年、アメリカのトーマス・ハント・モーガンは、\n異なる3つの形質に対し、組み換え価を求め、その組み換え価から遺伝子距離を求める三点交雑(three-point cross)により、\nキイロショウジョウバエの遺伝子の配列を図示し、これを染色体地図(chromosome map)と呼ぶ。\n\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%94%9F%E7%89%A9/%E7%94%9F%E7%89%A9I/%E9%81%BA%E4%BC%9D%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%81%A8DNA"} {"text": "細胞分裂には、通常の細胞分裂である体細胞分裂(たいさいぼう ぶんれつ)と、生殖細胞をつくる減数分裂(げんすう ぶんれつ)がある。まず、体細胞分裂について説明する。\nDNA分子は、デオキシリボースとリン酸という2つの主要な構成要素からなります。リン酸はリン酸基(H2PO4^-)として存在し、これがDNA鎖のリン残基と結合している形で構成されます。リン酸基は弱酸性を示し、水溶液中でH^+イオンを放出することができます。そのため、DNA分子は酸性の性質を持っています。\npHは水溶液の酸性またはアルカリ性を示す指標です。pH 7を中性とし、それより低い値は酸性、それより高い値はアルカリ性を示します。DNAのリン酸基のために、DNA溶液のpHは通常、酸性または中性の範囲にあります。\nただし、DNA分子が細胞内や体液中などの生体環境で存在する場合、周囲の環境や相互作用によってpHが変化することもあります。また、DNAは他の物質と相互作用して様々な形態や機能を持つことがあります。そのため、DNAの酸性性質は単純な観点からのみ評価されるものではありません。\n細胞分裂の周期は、間期(かんき)と分裂期(ぶんれつき、M期)からなる。(M期のMはMitosis。) DNAは間期に複製され2倍になっている。\n間期にDNAが複製されている。\n間期はG1期、S期、G2期からなる。\nG1期は合成準備期。\nS期は合成期。\nG2期は分裂準備期。\n細胞分裂の過程は、まず最初に、核分裂がおこる。つづいて細胞質分裂がおこる。\nM期は前期、中期、後期、終期に分けられる。\n前期にあらわれる染色体は、核内に分散していた染色体が凝縮したもの。\n分裂期に染色体が等分されるとともに、DNAも等分される。よって、分裂後の最終的な染色体数およびDNA数は、もとの細胞と同じである。\n一般に、分裂前のもとの細胞を母細胞(ぼさいぼう、ははさいぼう)という。分裂後の細胞を娘細胞(むすめさいぼう、じょうさいぼう)という。\n以上のような、細胞分裂の分裂の周期のことを細胞周期という。\n2本鎖DNAの塩基どうしの結合が、一部分、ほどける。そして、部分的に1本鎖になったDNAが2本ぶんできる。\n1本鎖のそれぞれが鋳型となって複製が始まる。それぞれの一本鎖の塩基に対応するヌクレオチドが結合して(AとT、GとCが結合)、相補的な塩基の対が出切る。そして塩基対どうしの新しい鎖のほうのヌクレオチドは、酵素のDNAポリメラーゼなどの働きによって、となりあったヌクレオチドのリン酸と糖が結合して、次々と連結していって新しい鎖ができ、よって2本鎖のDNAになる。複製前のDNAのもう一方のほうの一本鎖も同様に複製されて2本鎖になる。こうして、複製前のDNAのそれぞれの一本鎖が2本鎖のDNAになり、複製後はDNAが2個になる。\nこのような複製のしくみを半保存的複製(はんほぞんてき ふくせい)といい、アメリカのメセルソンとスタールによって1958年ごろに大腸菌と窒素の同位元素(通常の14Nと、同位元素の15N)を用いた実験で証明された。\nDNA分子は、デオキシリボースとリン酸という2つの主要な構成要素からなります。リン酸はリン酸基(H2PO4^-)として存在し、これがDNA鎖のリン残基と結合している形で構成されます。リン酸基は弱酸性を示し、水溶液中でH^+イオンを放出することができます。そのため、DNA分子は酸性の性質を持っています。\npHは水溶液の酸性またはアルカリ性を示す指標です。pH 7を中性とし、それより低い値は酸性、それより高い値はアルカリ性を示します。DNAのリン酸基のために、DNA溶液のpHは通常、酸性または中性の範囲にあります。\nただし、DNA分子が細胞内や体液中などの生体環境で存在する場合、周囲の環境や相互作用によってpHが変化することもあります。また、DNAは他の物質と相互作用して様々な形態や機能を持つことがあります。そのため、DNAの酸性性質は単純な観点からのみ評価されるものではありません。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%90%86%E7%A7%91_%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E9%81%BA%E4%BC%9D%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%81%AE%E5%88%86%E9%85%8D"} {"text": "DNAの情報をもとに最終的にタンパク質が合成される過程では、けっして直接的にDNAがタンパク質を作るのではない。\nまず、DNAの情報をもとにRNA(ribonucleic acid, リボ核酸)という1本鎖の物質に写し取られる(この段階を「転写」(てんしゃ)という)。\nまた、けっして、いきなりタンパク質を合成するのではない。まずアミノ酸を合成する。アミノ酸を合成するために、アミノ酸配列をRNAに書き込んでいる(この段階を「翻訳」(ほんやく)という)。\nDNAの塩基情報がRNAに写し取られ、そのRNAの情報をもとにタンパク質が合成される。RNAは1本鎖である。\nRNAの基本構造は、 塩基+糖+リン酸 からなるヌクレオチドである。RNAの塩基も4種類であるが、しかしDNAとはRNAは塩基と糖の種類が違う。\nRNAでは、DNAのアデニン(A)に結びつくのは、RNAのウラシル(U)であり、RNAはT(チミン)を持たない。(ウラシル、英:uracil)\nつまり、RNAの塩基は、アデニン、ウラシル、グアニン、シトシンの4種類である。\nまた、RNAの糖はリボース(英:ribose)である。\nRNAポリメラーゼの働きによって転写される。\nRNAの種類は、働きによって、メッセンジャーRNAとトランスファーRNAとリボソームRNAの3種類に分けられる。\n\nまず、DNAの塩基情報を写し取ることで合成されるRNAをメッセンジャーRNA(略記:mRNA)という。\n真核生物の場合、核内で、DNAの一部が二本にほどけて、そのうちの一本の情報がRNAに相補塩基として写し取られる。\nなお原核生物の場合、そもそも核膜が無いので、原形質の中で同様にDNAがほどけて、RNAに情報が写し取られる。\nまた、このようにDNAの情報がRNAに写し取られることを転写(てんしゃ、transcription)という。\nmRNAの塩基3個の配列が、1つのアミノ酸を指定している。この塩基3個の配列をコドン(codon)という。コドンは、すでに解読されており、この解読結果の表を「遺伝暗号表」(いでんあんごうひょう)といい、mRNAの配列で定義されている。ほとんどの生物で、遺伝暗号は共通であり、原核生物か真核生物かは問わない。\nこのように、mRNAの塩基配列にもとづいてアミノ酸が合成される過程を翻訳(ほんやく、translation)という。\n塩基3つの組をトリプレットという。DNAの塩基は4種類あるので、トリプレットは4×4×4=64種類ある。天然のアミノ酸は20種類であり、じゅうぶんにトリプレットで指定できる。もし塩基2つでアミノ酸を指定する仕組みだとすると、4×4=16となってしまい、アミノ酸の20種類には不足してしまう。\nUUU (Phe/F)フェニルアラニン\nUUC (Phe/F)フェニルアラニン\nUUA (Leu/L)ロイシン\nUUG (Leu/L)ロイシン\nUCU (Ser/S)セリン\nUCC (Ser/S)セリン\nUCA (Ser/S)セリン\nUCG (Ser/S)セリン\nUAU (Tyr/Y)チロシン\nUAC (Tyr/Y)チロシン\nUAA Ochre (終止)\nUAG Amber (終止)\nUGU (Cys/C)システイン\nUGC (Cys/C)システイン\nUGA Opal (終止)\nUGG (Trp/W)トリプトファン\nCUU (Leu/L)ロイシン\nCUC (Leu/L)ロイシン\nCUA (Leu/L)ロイシン\nCUG (Leu/L)ロイシン\nCCU (Pro/P)プロリン\nCCC (Pro/P)プロリン\nCCA (Pro/P)プロリン\nCCG (Pro/P)プロリン\nCAU (His/H)ヒスチジン\nCAC (His/H)ヒスチジン\nCAA (Gln/Q)グルタミン\nCAG (Gln/Q)グルタミン\nCGU (Arg/R)アルギニン\nCGC (Arg/R)アルギニン\nCGA (Arg/R)アルギニン\nCGG (Arg/R)アルギニン\nAUU (Ile/I)イソロイシン\nAUC (Ile/I)イソロイシン\nAUA (Ile/I)イソロイシン, (開始)\nAUG (Met/M)メチオニン, 開始[1]\nACU (Thr/T)スレオニン\nACC (Thr/T)スレオニン\nACA (Thr/T)スレオニン\nACG (Thr/T)スレオニン\nAAU (Asn/N)アスパラギン\nAAC (Asn/N)アスパラギン\nAAA (Lys/K)リシン\nAAG (Lys/K)リシン\nAGU (Ser/S)セリン\nAGC (Ser/S)セリン\nAGA (Arg/R)アルギニン\nAGG (Arg/R)アルギニン\nGUU (Val/V)バリン\nGUC (Val/V)バリン\nGUA (Val/V)バリン\nGUG (Val/V)バリン, (開始)\nGCU (Ala/A)アラニン\nGCC (Ala/A)アラニン\nGCA (Ala/A)アラニン\nGCG (Ala/A)アラニン\nGAU (Asp/D)アスパラギン酸\nGAC (Asp/D)アスパラギン酸\nGAA (Glu/E)グルタミン酸\nGAG (Glu/E)グルタミン酸\nGGU (Gly/G)グリシン\nGGC (Gly/G)グリシン\nGGA (Gly/G)グリシン\nGGG (Gly/G)グリシン\n遺伝情報は、原則としてDNA→RNA→アミノ酸→タンパク質というふうに一方向に写されていき、その逆方向は無い。この原則をセントラルドグマ(英: central dogma)という。\nメッセンジャーRNA(mRNA)は、DNAの情報を写し取るためのRNAである。また、真核生物の場合、mRNAはリボソ-ム内へ移動し、そこでトランスファーRNAを正しくならべるための鋳型(いがた)としての役割を持つ。\nトランスファーRNA(tRNA)は、リボソ-ムまでアミノ酸を運ぶためのRNAである。なので、アミノ酸がトランスファーRNAに結合している。\n後述するが、mRNAの塩基3個ぶんの並びによってアミノ酸が決定される。なので、この塩基3つぶんの情報しか、トランスファーRNAは情報をふくまず、タンパク質を構成する多くものアミノ酸の並びについての情報はふくんでいない。\nアミノ酸を正しく配列するためには、真核生物の場合、メッセンジャーRNAが必要である。\nタンパク質の合成はリボソーム(ribosome)で行われ、トランスファーRNAの運んできたアミノ酸からタンパク質をつくる合成がリボソームで行われる。リボソームのもつRNAは、mRNAとは別の系統であり、DNAにもとづく別系統のRNAをリボソ-ムが持っているので、リボソームRNA(rRNA)という。\n真核生物の場合、メッセンジャーRNAが核膜孔から出てきてリボソ-ムへ移動し、トランスファーRNAを正しく並べることで、結果的にアミノ酸を正しく並べる。\nこのように真核生物では、リボソーム内で、メッセンジャーRNAとトランスファーRNAが再会することになる。\nこのように、リボソ-ムで合成されるタンパク質でのアミノ酸の並びの決定方法は、おもにメッセンジャーRNAの配列にもとづくのであり、いっぽうリボソームRNAの配列は直接にはアミノ酸の並びの決定には関わっていない。\nトランスファーRNA(tRNA)は、リボソ-ムまでアミノ酸を運ぶためのRNAである。なので、アミノ酸がトランスファーRNAに結合している。\nトランスファーRNAには、mRNAのコドンの3塩基(トリプレット)と相補的に結合する3塩基をもち、トランスファーRNAのその3塩基の部分をアンチコドン(anticodon)という。\nトランスファーRNAに、どの種類のアミノ酸が結合するかは、RNAのアンチコドンの配列によって異なる。\n一本の、メッセンジャーRNAに対し、トランスファーRNAはいくつも作られる。なぜならトランスファーRNAのアンチコドンは、メッセンジャーRNAのたったの3つぶんの配列にしか相当しないからである。\nメッセンジャーRNAの塩基配列をもとに、トランスファーRNAのアンチコドンが決定される。メッセンジャーRNAのコドンとトランスファーRNAのコドンは、お互いに相補的であるので、配列が違うので注意。遺伝暗号表などはメッセンジャーRNAのコドンを基準としており、アンチコドンは基準にしてない。\nさて、トランスファーRNAのアミノ酸の種類は、トランスファーRNAのアンチコドンの塩基配列にもとづいており、トランスファーRNAのアンチコドンの塩基配列の決定は、メッセンジャーRNAの塩基配列のコドンにもとづいておるから、最終的に(トランスファーRNAに結合している)アミノ酸の種類の決定はメッセンジャーRNAにもとづく事になる。\nタンパク質の合成はリボソーム(ribosome)で行われ、トランスファーRNAの運んできたアミノ酸からタンパク質をつくる合成がリボソームで行われる。リボソームも、独自のRNAを持っているのでリボソームRNA(rRNA)という。\n真核生物の場合、メッセンジャーRNA(mRNA)が核から外に出てきて、トランスファーRNA(tRNA)とmRNAがリボソームで出会って、ポリペプチドをつくる。\nリボソームに移動したmRNAの塩基配列に、tRNAのアンチコドンが結合する事によって、いくつもあるtRNAの並びが正しく並ぶ。\nこのようにアミノ酸の配列を決めているのはmRNAであり、けっしてリボソームRNAの配列はアミノ酸の配列決定には関わっていない。\nまた、リボソームへ移動するRNAは、けっしてトランスファーRNAだけでない。メッセンジャーRNAも、リボソームへと移動している。\nさて、リボソ-ムで、tRNAからアミノ酸を切り離す作業が行われる。\nそしてリボソームで、アミノ酸をペプチド結合でつなぎ合わせてポリペプチド鎖をつくり、そのポリペプチド鎖が折りたたまれてタンパク質になる。\nアミノ酸を切り離されたtRNAは、mRNAからも離れ、tRNAはふたたびアミノ酸を運ぶために再利用される。\nこのように、リボソ-ムで合成されるタンパク質でのアミノ酸の並びの決定方法は、おもにメッセンジャーRNAの配列にもとづくのであり、いっぽうリボソームRNAの配列は直接にはアミノ酸の並びの決定には関わっていない。\nmRNAへの転写が行われると、転写の終わりを待たずに、転写中に、ただちにリボソームがmRNAに直接に取りつき、そこでタンパク質の合成が行われる。\n(図を追加。)\n真核生物では、DNAからRNAへの転写時に、核の中で、いったん全ての配列が転写され、そのあとに配列のいくつが除去されて、残った部分がつなぎあわされてmRNAが出来上がる。\nRNAの転写直後の、まだ何も除去されてない状態を mRNA前駆体 という。除去される部分に相当するDNA領域をイントロン(intron)という。mRNA前駆体からイントロンが取り除かれて、残って使われる部分に相当するDNA領域をエキソン(exon)という。エキソンに相当する部分どうしのRNAが繋がる。よってエキソンの領域が、タンパク質のアミノ酸配列を決めることになる。\nこのようなイントロン除去の過程をスプライシング(splicing)という。スプライシングは核の中で起きる。\nmRNAは、転写直後のRNAから、こうしてイントロンに相当する配列が除去されてエキソンに相当する配列どうしが繋がった物である。\nスプライシングが完了してmRNAになってから、mRNAは核膜孔を通って核の外へと出て行き、リボソームでのタンパク質合成に協力をする。\nある遺伝子の配列から、2種類以上のmRNAが作られる場合がある。これは、mRNA前駆体は共通だが、スプライシングの過程で、エキソン対応領域が除去される場合もあり、どのエキソンを除去するかの違いによって、最終的に出来上がるmRNAが変わってくるからである。また、いくつかのイントロン対応領域が除去されずに残る場合もある。エキソンどうしが繋がるときに、となりどうしのエキソンではなく、離れたエキソンと繋がる場合もある。\nこうして、数種類のmRNAが作られる。これを選択的スプライシング(alternative splicing)という。\nこうして少数の遺伝子から、選択的スプライシングによって多種類のmRNAが作られ、多種類のアミノ酸配列が出来て、多種類のタンパク質が作られる。\n原核生物の場合は、一般に、転写で出来た配列が、そのままmRNAになる。よって原核生物ではスプライシングは起こらず、したがってイントロンを原核生物は持たない場合が普通である。\nRNAは上述のようにタンパク質の合成に必要なので、(ウイルスなどの生物かどうか不明な物体を例外として除けば)全ての生物がRNAを持っている、と考えられている。(※ 2016年センター試験『生物基礎』追試験の赤本(教学社)の見解)\n母が赤ちゃんを出産したときに、すでに赤ちゃんが死亡していることを死産という。\nまた、出産前に、赤ちゃんが死亡することを流産という。\n死産や流産の原因はたいてい、赤ちゃんの遺伝子(DNA)の異常による先天異常だと考えられている。\n統計的に、もしも赤ちゃんが死亡せずに生きて生まれた場合における新生児の先天異常率は、統計では約2%と言われる[2]が、しかしこの「2%」はあくまで生きて生まれた赤ちゃんだけを対象にしているので、流産も含めると、実際にはその何倍もの重大な遺伝子異常をもって出産される赤ちゃんがいたのだろう、と一般的に考えられている。\n動物のメス(雌)の体には、もし赤ちゃんに重大な遺伝子疾患のある場合に、妊娠を継続させずに流産させるという自然のメカニズムが、メスの生体にそなわっているらしい[3]、と一般的に考えらている。\n先天障害のうち、ダウン症という症状は、遺伝子の異常によるものである。(※ 検定教科書の範囲外だが、参考書で数研チャート式などに書いてある)\n「男」や「女」といった生物学的な性別も、遺伝子によって決まる。\nヒトの場合、染色体のひとつに性染色体というのがあり、その性染色体が健常男性ならXYである。健常女子なら性染色体はXXである。\nしかし、まれに先天的な遺伝子異常で、XXYやXYYなどの人間が生まれてくる場合がある。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%90%86%E7%A7%91_%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%9F%BA%E7%A4%8E/%E9%81%BA%E4%BC%9D%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%81%A8%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%AF%E8%B3%AA%E3%81%AE%E5%90%88%E6%88%90"} {"text": "生物は外界の環境の変化によらず体内の環境を一定に保つ恒常性と呼ばれる働きを持っている。\nまた、動物は刺激に対して反応することができる。\nこのページでは、動物の恒常性、様々な刺激の受容と反応、神経系の構造と働き、動物の様々な行動、などを扱う。\n生物が、外部環境(external milieu)が変化しても、その内部環境(ないぶかんきょう、internal milieu)(別名:体内環境)を一定に保とうとする働きを恒常性(こうじょうせい、homeostasis)(ホメオスタシス)という。\nヒトの体温が平常では37℃付近なのもホメオスタシスの一例である。恒常性には、温度、浸透圧、養分、酸素などを一定に保とうとする働きがある。\n生物が体温を一定に保つ理由は、酵素の働きが温度によって異なるからである。\n酵素は温度が約40℃のとき最もよく働き、低すぎると働きが鈍くなり、高すぎると酵素が破壊され全く働かなくなる。\n体温を一定に保つために、暑いときは熱を逃がし、寒いときは熱を逃がさないようにしたり筋肉を震わせて熱を作ったりしている。\n脳の間脳と呼ばれる部分が無意識に体温調節をしている。\n多細胞の動物の内部環境では、細胞は血液や組織液などの体液(body fluid)で満たされている。\n体液には、血管を流れる血液(blood)、細胞間を満たす組織液(interstitial fluid)、リンパ管を流れるリンパ液(lymph)がある。ヒトの成人の場合、体重の約60%は水分である。\n血液の成分には、液体成分である血しょう(けっしょう, plasma、血漿)と、有形成分である赤血球(erythrocyte)・白血球(leucocyte)・血小板(platelet)の血球(blood cell)がある。\n血球には、酸素を運ぶ赤血球(erythrocyte)、体内に侵入した細菌・異物を排除する白血球(leucocyte)、血液を凝固させ止血する血小板(platelet)がある。有形成分が作られる場所は、ヒトの成人の場合、骨の内部にある骨髄(こつずい、bone marrow)で作られる。\n血液が全身の細胞へ酸素や栄養分を送ることで、\n細胞は活動することができる。\n血液の重さの約55%は血しょうの重さである。血しょうの主成分は水(約90%)であり、それに少量のタンパク質(約7%)やグルコース・タンパク質・脂質・無機塩類などが混ざっている。血しょうのタンパク質は、アルブミン(albumin)やグロブリン(globulin)などのタンパク質である。\n組織液は、血しょうが毛細血管(もうさいけっかん、capillary)から染み出たものである。組織液の大部分は再び血管にもどる。\n赤血球の形は、直径が約8μmの円盤状であり、中央がくぼんでいる。赤血球には核が無い。ヒトの成人の場合、血液1mm3あたりの個数は、男子は500万個/mm3、女子は450万個/mm3。ヒトの赤血球の寿命は約120日である。古くなった赤血球は肝臓や ひ臓 で壊される。骨髄で赤血球は作られる。\n赤血球にはヘモグロビン(hemoglobin)(化学式:Hb と表記)という赤い色素タンパク質が多量に含まれている。このへモグロビンが肺で酸素O2と結合して酸素を運搬する役目を持ち、全身に酸素を運んでいる。ヘモグロビンは鉄(Fe)をふくんでいる。\nヘモグロビンは、酸素濃度が高いと、酸素と結合して酸素ヘモグロビン(HbO2)となる。\nまた、酸素濃度が低いと、酸素と分離しヘモグロビンに戻る。\nこのようにして、酸素濃度の高い肺で酸素を受け取り、\n酸素濃度の低い組織へ酸素を運ぶ。\n植物では、(そもそも植物に赤血球はないし、)植物はヘモグロビンを持ってない。(※ 検定教科書には無いが、センター試験にこういう選択肢が出る。2017年の生物基礎の本試験。)\nイカなど、いくつかの動物では、銅 Cu をふくむタンパク質のヘモシアニン (Hemocyanin)が血液を介して酸素を運ぶ役目をしている動物もいる。ヘモシアニンをふくむ動物の血液は青い。この青色は銅イオンの色である。イカの青い筋は、このヘモシアニンの色である。(※ 参考文献: 文英堂『理解しやすい生物I・II』、2004年版、205ページ) ヘモシアニンをふくむ動物には、イカ・タコや貝などの軟体動物、エビ・カニなどの甲殻類に見られる。これらの動物(イカ、タコ、エビ、カニ)は、血しょう中にヘモシアニンを含んでいる。 人間の血液は、ヘモシアニンをふくまない。\n酸素ヘモグロビンを多くふくみ酸素濃度の高い血液を動脈血(arterial blood)と呼ぶ。\nヘモグロビンを多くふくみ酸素濃度の低い血液を静脈血(venous blood)と呼ぶ。\n白血球はヘモグロビンを持たない。白血球は核を持つ。リンパ球やマクロファージは白血球である。体内に侵入した細菌・異物を排除することに白血球は関わる。\n血しょうの一部は組織へしみだして組織液になり、栄養分を供給し老廃物を受け取る。\n組織液の大部分は血管へ戻り血液となり、一部はリンパ管へ入りリンパ液となる。\nリンパ液はリンパ管を通り、鎖骨下静脈で血液と合流する。\n血小板は血液の凝固に関わる。血小板は2μm~5μmほどであり、核を持たない。\n血管などが傷つくと、まず傷口に血小板が集まる。そして繊維状のタンパク質であるフィブリンがいくつも生成し、フィブリンどうしと赤血球などの血球とが絡んで血ぺい(けっぺい)ができる。血ぺいが傷口をふさぐ。このような一連の反応を血液凝固反応という。\n採血した血液を放置した場合でも、血ぺいが生じて、血ぺいが沈殿する。このときの上澄み液を血清(けっせい、serum)という。血清の色は、やや黄色がかっている。なお、注射した血清は数日すると抗体が無くなってしまい(※ チャート式生物)、また免疫記憶も生じないので(※ 東京書籍の生物基礎の教科書)、予防には役立たない。\n傷口からトロンボプラスチンが出る。これが他の凝固因子や血しょう中のカルシウムイオンCa2+とともに、プロトロンビンというタンパク質に作用して、プロトロンビンがトロンビンという酵素になる。\nトロンビンは、血しょうに溶けているフィブリノーゲンに作用して、フィブリノーゲンを繊維状のフィブリンに変える。このフィブリンが血球を絡めて血ぺい(けっぺい)をつくる。\n血友病(けつゆうびょう)という出血しても止血が始まらない病気は、血液凝固に何らかの不具合があってフィブリンをつくれなくて起きる病気である。\n血液は、心臓(heart)によって全身へ送られる。\nヒトの心臓は、右心房(right atrium)、右心室(right ventricle)、左心房(Left atrium)、左心室(Left ventricle)の4部分に分かれていて、2心房2心室である。ほ乳類の心臓は2心房2心室である。\n心筋(cardiac muscle)という筋肉でできている。\n弁によって血液の逆流を防いでいる。心臓のリズムは、右心房の上部にある洞房結節(どうぼうけっせつ)という特殊な筋肉の出す電気刺激によって作られる。\n全身から送られた血液は、大静脈(vena cava)をとおり、右心房・右心室をとおり、肺動脈(pulmonary artery)をとおり肺へと送られる。\n肺で酸素を受け取った血液は、肺静脈(pulmonary vein)をとおり、左心房・左心室をとおり、大動脈(aorta)をとおり全身へ送られる。\n肺動脈・肺・肺静脈を通る血液の流れを肺循環(pulmonary circulation)と呼び、\n大動脈・全身・大静脈を通る血液の流れを体循環(Systemic circulation)と呼ぶ。\nバッタなど昆虫やエビなど無脊椎動物(invertebrate)の血管系は、毛細血管をもたない開放血管系(かいほうけっかんけい、open blood-vascular system)である。いっぽう、魚類(pisces)・ほ乳類(mammalia)など脊椎動物(vertebrate)は毛細血管(capillary)をもち、閉鎖血管系(へいさけっかんけい、closed blood-vascular system)である。\n人体各部の組織液の一部は毛細血管に戻らず、毛細リンパ管に入り、リンパ管で合流して、リンパ液になる。リンパ管は流れ着く先は、最終的には、静脈に合流する。リンパ管には逆流を防ぐための弁が、ところどころにある。リンパ管のところどころに、球状にふくらんだリンパ節がある。\nリンパ液にふくまれるリンパ球(lymphocyte)は白血球の一種であり、マクロファージとともにリンパ球は異物を攻撃して、細菌などを排除する。\nリンパ球はリンパ節で増殖する。\n外部環境から生体を守るために、異物の侵入を阻止したり、侵入した異物を白血球などが除去したりする仕組みを生体防御(せいたいぼうぎょ)と呼ぶ。\n生体防御には、免疫、血液凝固、炎症などがある。\n私たち生物の体は栄養豊富なので、もし生体防御の仕組みが無いと、あっという間に病原菌などが繁殖し、私たちは死んでしまう。そうならないのは、生体防御の仕組みが私たちを守っているからである。\n生体が異物を非自己と認識して、その異物を排除する仕組みを免疫(めんえき、immunity)と呼ぶ。\n免疫は、病原体や毒素を排除する働きを持つ。\n免疫には、白血球の食作用などの先天的に生まれつき備わっている自然免疫(innate immunity)と、いっぽう、リンパ球などが抗原抗体反応によって異物の情報を記憶して排除するという後天的に獲得される獲得免疫(acquired immunity)がある。\n自然免疫は、好中球(neutrophil)、マクロファージ(単球)、樹状細胞(dendritic cell)、リンパ球といった白血球(leukocyte)が、病原体などの異物を食べる現象である食作用(Phagocytosis)で行われる。食べられた異物は、分解されて排除される。\n好中球は自然免疫で、異物を食べて、除去する。攻撃した相手とともに死んでしまう細胞である。そのため寿命は短い。\nケガをしたときに傷口にできる膿は、好中球が死んだものである。\n自然免疫で異物を食べる。あとで説明する獲得免疫に、異物の情報をつたえる。\n近年、マクロファージや好中球などは、ある程度は異物の種類を認識している事が分かった。マクロファージや好中球や好中球などの細胞膜表面にはトル様受容体(TLR)という受容体がある。\nトル様受容体には、いくつかの種類があり、反応できる異物の種類が、トル受容体の種類ごとに、ある程度、(反応できる異物の種類が)限られている。\nあるトル様受容体(TLR9)は、ウイルスのDNAやRNAを認識する。また他のあるトル様受容体(TLR2)は、細胞膜や細胞壁の成分を認識する。\n(※ 読者への注意: TLR9などの具体的な番号は覚えなくてよい。wikibooks編集者が査読しやすいように補記してあるだけである。)\nべん毛タンパク質を認識するトル様受容体(TLR5)もある。\n\n出血したときは、血小板などの働きによってフィブリン(fibrin)と呼ばれる繊維状のタンパク質が合成され、\nフィブリンが血球と絡み合って血餅(けっぺい, clot)となり止血する。\n生体が傷ついたときにおこる、赤く腫れる(はれる)症状を炎症(えんしょう、inflammation)と呼ぶ。炎症は自然免疫の一つであり、白血球が異物を除去している。\nまず、赤く腫れる原因は、ヒスタミン(histamine)やプロスタグランジン(prostaglandin、略称:PG)といった警報物質による。(※プロスタグランジンは高校範囲内。数研出版『生物基礎』平成26年発行、P.128 で記述を確認。) なお、プロスタグランジンは脂肪酸から作られる生理活性物質の一つであり、その動物の体の組織・器官などに作用を及ぼす。\nヒスタミンやプロスタグランジンなど、これらの警報物質によって、血管が拡張するので、肌が赤く見えるようになる。また警報物質により、毛細血管の透過性が高くなり、水分が血管外に出るので腫れる。\n血管から組織にしみでた血液とともに、血液中の白血球もしみでる。そして、しみでた白血球が異物を認識して除去することで、自然免疫が働く。\n炎症の症状としては、発熱・発赤・はれ・痛みなどがある。\n炎症の際、神経がプロスタグランジンなどによって刺激されるので、痛みが生じる。この痛みによって、私たちは体の異常を感知できる。\nまた、炎症によって体温が上がるので、雑菌の繁殖が抑えられ、さらに白血球などが活性化する。\n鎮痛剤の「アスピリン」(主成分:アセチルサリチル酸。「アスピリン」は商品名)という医薬品は、このプロスタグランジンの合成を阻害することで、鎮痛作用を及ぼすという仕組みであることが、すでに分かっている。プロスタグランジンを合成する酵素のシクロオキシゲナーゼ(略称:COX)の働きを、アスピリンが阻害することで、プロスタグランジンの合成が阻害されるという仕組みである。そして、プロスタグランジンには、いくつもの種類があるので、種類によっては、痛みの機能以外にも、胃液の分泌調整や、睡眠の調整などの様々な機能を持っている。\nなので、プロスタグランジンの阻害をする薬では、胃液の分泌異常などの副作用が起きる場合がある。\nだ液(saliva)は弱酸性、胃液は強酸性などのように、外界と接する体液は、中性ではない体液によって、雑菌の繁殖を防いでいる。\n獲得免疫には、後述する「体液性免疫」(たいえきせい めんえき、humoral immunity)がある。\nなお「細胞性免疫」(さいぼうせい めんえき、cell-mediated immunity)とは、キラーT細胞によって生じる免疫のこと。キラーT細胞は、トリからファブリキウス嚢を除去しても働く[2]ので、細胞性免疫を獲得免疫に含めるかどうか微妙であるが、とりあえず冒頭では言及だけしておく。\n免疫グロブリンは、血液などの体液中に含まれている。\n体液性免疫は、リンパ球の一部であるB細胞が、免疫グロブリンといわれる抗体(こうたい、antibody)を作り行う。抗体は免疫グロブリン(immunoglobulin、Igと略記)というタンパク質で構成されている。\nいっぽう、病原体などの異物に対して抗体が作られた時、その異物を抗原(こうげん、antigen)と呼ぶ。\n抗原と抗体が反応することを抗原抗体反応(antigen-antibody reaction)と呼ぶ。\n病原体などの抗原は、抗体と結合することで、毒性が低下し、また凝集するので、白血球による食作用を受けやすくなる。\n免疫グロブリンによる免疫は、体液中の抗体による免疫なので、体液性免疫という。\n免疫グロブリンはY字型をしたタンパク質である。\n免疫グロブリンの構造は、H鎖とL鎖といわれる2種類のポリペプチドが2個ずつ結合した構造になっている。図のように、免疫グロブリンは、合計4本のポリペプチドから構成されている。\nH鎖とL鎖の先端部には可変部(かへんぶ、variable region)という抗体ごとに(免疫グロブリンの可変部の)アミノ酸配列の変わる部分があり、この部分(可変部)が特定の抗原と結合する。そして免疫グロブリンの可変部が抗原と結合することにより、免疫機能は抗原を認識して、一連の免疫反応をする。可変部の配列によって、認識する抗原の構造が異なる。\n1種類の抗原に対応する抗体は1種類だけであるが、しかし上述のように可変部が変わりうるので、多種多様な抗原に対応できる仕組みになっている。\n免疫グロブリンの構造において、可変部以外のほかの部分は定常部(ていじょうぶ、constant region)という。\nまた、H鎖同士、H鎖とL鎖はジスルフィド(S-S)結合でつながっている。\nそもそも免疫グロブリンはB細胞で産生される。免疫グロブリンの可変部の遺伝子も、そもそもB細胞の遺伝子が断片的に選択されて組み合わせされたものである。このような遺伝子配列の組み合わせによって、配列のパターンが膨大に増えて何百万とおりにもなるので、このような仕組みによって多種多様な病原体(抗原)に対応している。\nより細かく言うと、下記のような順序で、産生される。\n樹状細胞などの食作用によって分解された断片が、抗原として提示される(抗原提示)。 そして、その抗原が、ヘルパーT細胞(ヘルパーティーさいぼう、helper T cell)によって認識される。\n抗原を認識したヘルパーT細胞は活性化し、B細胞(ビーさいぼう)の増殖を促進する。\n増殖したB細胞が、抗体産生細胞(こうたい さんせいさいぼう)へと分化する。\nそして抗体産生細胞が、抗体として免疫グロブリンを産生する。\nこの抗体が、抗原と特異的に結合する(抗原抗体反応)。\n抗原抗体反応によって、抗体と結合された抗原は毒性が弱まり、またマクロファージによって認識されやすくなり、マクロファージの食作用によって抗原が分解されるようになる。\nヒトの遺伝子は数万種類であるといわれているが(※ 参考文献: 東京書籍の教科書、平成24検定版)、しかし抗体の種類はそれを膨大に上回り、抗体は数百万種類ていどにも対応する。\nその仕組みは、B細胞の遺伝子から、選択的に抗体の遺伝子が選ばれるという仕組みになっている。この辺の抗体の種類の計算の仕組みは、1970年代ごろに日本人の生物学者の利根川進などによって研究されており、1987年には利根川進(とねがわ すすむ)はこの業績でノーベル医学・生理学賞を受賞した。\nここでいう「可変部」とは、免疫グロブリンのY形の2股の先端部分のことである。\n実は、先端以外の、H鎖の「定常部」も、ヘルパーT細胞やサイトカインなどの働きによって形状・構造の変化することが遅くとも1970年代には分かっている。\n定説では(一般の動物では?)、免疫グロブリンには5種類あり、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類のクラスがある。(免疫グロブリンの記法は、 Igなんとか のような記号で表すのが一般的である。)\n定常部の変化によって免疫グロブリンの種類(クラス)が変わることをクラススイッチという。\nいっぽう、「可変部」の変化による組み合わせの種類は数百万~数千万ほどの無数にあるし、実際に抗原に結合する(と考えられる)接触部分は「可変部」である。\nなので、高校の段階では、「可変部」の変化だけを教えることも、それなりに合理的である。\nまた、クラススイッチの現象が起きて、ある抗体のクラスがスイッチされても、抗体の可変部は前のままであるので、抗原特異性は変わらない。(参考文献: 東京化学同人『ストライヤー生科学』、Jeremy M.Bergほか著、入村達郎ほか訳、第7版、928ページ。)\nなお、クラススイッチの発見者・研究者でもある本庶 佑(ほんじょ たすく、1942年 - )が、2018年のノーベル賞を受賞した。ただし、受賞内容の研究は、これとは違う研究テーマである。(時事的な話題であるが、大学レベルの免疫学の教科書では、かなり前からクラススイッチは紹介されている。)\nクラススイッチについては、AIDと呼ばれる酵素・因子が関わることなどが分かっているが(※ 参考文献: 東京化学同人『分子細胞生物学 第7版』、Lodishほか著、石浦章一ほか訳、 ・・・では、「AID」を酵素として紹介している。)、まだ分子機構に未解明の部分が多いので、高校生は単にこういう現象がある事を知っていればいい。\n定常部は、その名に反して、あまり定常ではないのである。\n「可変部」だの「定常部」だの、歴史的な経緯により、そういう名前がつけられてしまっているが、あまり実態を反映してないので、名前だけを鵜呑みにしないように気をつけよう。\n\n輸血は、血液型が同じ型どうしで輸血するの通常である。\n赤血球表面に、抗原にあたる凝集原(ぎょうしゅうげん)AまたはBがある。なお、凝集原の正体は糖鎖である。\n血清中に、抗体にあたる凝集素のαまたはβがある。この抗体は、病気の有無に関わらず、生まれつき持っている抗体である。\n凝集原と凝集素との組み合わせによって、4つの型に分類される。\nAとαが共存すると凝集する。\nBとβが共存すると凝集する。\nたとえばA型の血をB型のヒトに輸血すると、赤血球が凝集してしまうので、輸血するのは危険である。\nA型の糖鎖は、H型糖鎖という糖鎖の末端にNアセチルガラクトースアミン(GalNa)が結合している。\nB型は、H型糖鎖という糖鎖の末端にガラクトース(Gal)が結合している。\nAB型は、この両方の糖鎖が細胞膜にある。O型の糖鎖はH型糖鎖そのものだけである。\nトリからファブリキウス嚢を除去してもウイルス感染しない。このため、抗体とは別にウイルスを除去する機構がある事が分かっている[4]\nそのような抗体とは別のウイルス除去機構の一つとして、キラーT細胞というものがある。\nともかく細胞性免疫について、下記のキラーというものがある。\n抗原提示されたヘルパーT細胞は、キラーT細胞(killer T cell)とよばれるT細胞を増殖させる。\nキラーT細胞は、ウイルスに感染された自己の細胞を攻撃するが、移植細胞や がん細胞 も攻撃することもある。\n細胞性免疫は、キラーT細胞が、抗原を直接攻撃して行う。\n臓器移植や皮膚移植などで別の個体の臓器や皮膚などを移植すると、たとえ同種の個体からの移植でも、普通、定着しないで脱落する。これを拒絶反応という。これは細胞性免疫によって異物として移植臓器が認識され、キラーT細胞によって攻撃されたためである。\n細胞膜の表面には、MHC(主要組織適合性複合体、Major Histocompatibility Complex)というタンパク質がある。臓器移植で拒絶反応が起きる場合は、MHCが異なる場合であり、キラーT細胞が移植臓器を攻撃しているのである。\nMHCは個人ごとに異なるので、普通、他人とは一致しない。\nT細胞は、相手方細胞の表面にあるMHCを認識している。つまりMHCの違いによって、ヘルパーT細胞が自己と非自己を認識する。そしてヘルパーT細胞が非自己の物質が侵入したことを感知して、キラーT細胞を活性化させる。\nなお、ヒトでは、ヒトの白血球の細胞表面にあるヒト白血球型抗原(HLA、Human Leukocyte Antigen)がMHCとして機能する。血縁関係の無い他人どうしで、HLAが一致する確率は、ほとんど無い。同じ親から生まれた兄弟間で、HLAの一致は4分の1の確率である。移植手術の際、これらの免疫を抑制する必要があり、免疫抑制のために、あるカビから精製した「シクロスポリン」(ciclosporin)という名前の薬剤が、よく免疫抑制剤(めんえきよくせいざい)として使われる。(※ シクロスポリンはいちおう、高校の教科書で紹介されている。)[6] [7]\n臓器移植など移植手術での拒絶反応が起きる際の理由も、MHC(ヒトの場合はHLA)が異なって、T細胞が移植片を非自己と認識するからである(※ 参考文献: 第一学習社『高等学校生物』、24年検定版、26年発行、58ページ)、と考えられている。\nなおシクロスポリンは、T細胞によるサイトカイン(このサイトカインは細胞性免疫の情報伝達に関わる物質の一種であり、キラーT細胞などの他の免疫細胞を活性化させる役割を持っている)の産生を阻害することにより、細胞性免疫の作用を抑制している。(※ サイトカインは高校の範囲内)\n検定教科書には、あまり無い用語なのだが、入試過去問などでMHCについて、「MHC分子」および「MHC遺伝子」という用語がある。(※ 旺文社の標準問題精講あたりで発見。実は実教出版の検定教科書『生物基礎』に「MHC分子」だけ用語がある。)\nこの用語はどういう意味かと言うと、「MHC分子」とは、MHCの機能の受容体などに相当する、細胞膜表面のタンパク質のことである。\n検定教科書や参考書のイラストなどで、細胞膜の表面にある受容体のようなものによく(※ 正確には、受容体ではなく、MHCの結合相手のT細胞受容体に結合する(MHCにおける)「リガンド」(※ 大学生物学の用語なので暗記は不要)だが)、単に「MHC」と明記してあるが、「MHC分子」とはその受容体っぽいものの事である。つまり、教科書イラストにある「MHC」が「MHC分子」の事である。\n数研出版『生物基礎』の教科書では、「MHC抗原」と言ってる部分が、実教出版のいう「MHC分子」のことである。なお、東京書籍『生物』(専門生物)では、「MHCタンパク質」と言ってる部分でもある。\nつまり、公式っぽくイコール記号で表せば\nとなる。\n「分子」と言っても、けっして化学のH2O分子とかCO2分子のような意味ではない。\nいっぽう、「MHC遺伝子」とは、MHC分子を作らせる遺伝子のこと。\n歴史的には、「MHC」は用語の意味が微妙に変わっていき、もともとの「MHC」の意味は今で言う「MHC遺伝子」の意味だったのだが、しかし、次第に研究が進んだり普及するうちに、「MHC」だけだと読み手に混乱を起こすので、日本では意味に応じて「MHC分子」または「MHC遺伝子」などと使い分けるようになっている。\n細胞膜のMHCのタンパク質部分の呼び名は英語が MHC molecule という言い方が主流なので、それを直訳すると「MHC分子」になるのだが(大学教科書でも「MHC分子」と表現している教材が多い)、しかしハッキリ言って、「分子」という表現は(少なくとも日本では、)やや誤解を招きやすい。(だから日本の高校教科書では、「MHC抗原」とか「MHCタンパク質」とか、いくつかの出版社がそういう言い方にしているのだろう。\nなお、グーグル検索すると、 MHC antigen (直訳すると MHC 抗原)という表現も少々、出てくる。\nさて、専門書だと、遺伝子のほうを単に「MHC」でゴリ押ししている書籍もあるが、しかし高校生むけの教材なら、遺伝子のほうを表すなら「MHC遺伝子」と説明するほうが合理的だろう。(だから旺文社の参考書でも「MHC遺伝子」表記になっているわけだ。)\n\nT細胞には、MHCを認識する受容体がある。なお、T細胞には多くの種類の受容体があり、MHCを認識する受容体以外にも、異なる機能をもった受容体が、いくつもある。\nT細胞に存在する、抗原を認識する受容体のことをT細胞受容体(TCR)という。(※ いちおう、東京書籍と第一学習社の高校教科書にTCRの紹介があるが、他社の教科書には見られない。 \n高校の検定教科書(東書、第一)では、主に「MHCを認識する種類の受容体。」の意味で使われている。\nなお、MHCをもつ一般の細胞は、病原体や非自己の有機物が入ってきたとき、それを分解して得られたタンパク質をMHCの上に乗せる。MHCに非自己のタンパク質が乗ったとき、T細胞側の受容体が、MHC と MHCの乗ったタンパク質 を抗原として認識する。\nなお、B細胞の表面にある「BCR」と呼ばれる「B細胞受容体」(B Ce Receptor)については、「BCR」とは抗原と結合する部分で、抗原との結合後にB細胞から分離して免疫グロブリンとして分泌されることになる部分のことである。やはりB細胞もT細胞と同様に、「B細胞受容体」と言っても、けっしてB細胞の受容体のことではないので、注意が必要である。つまり、B細胞では、細胞表面に免疫グロブリンの前駆体があり、抗原との結合後にそれが免疫グロブリンとして分離されるが、それが「BCR」と呼ばれる部分である[10]。\n結核菌のタンパク質を投与して、結核菌に対しての免疫記憶があるかどうかを検査するのがツベルクリン反応検査である。\n結核菌への免疫があれば、炎症が起こり、赤く腫れる。この反応は細胞性免疫であり、ヘルパーT細胞やマクロファージの働きによるものである。\nツベルクリン反応をされて、赤く腫れる場合が陽性である。いっぽう、赤く腫れない場合が陰性である。\n陰性のヒトは免疫が無いので、結核に感染する可能性があり、そのため免疫を獲得させるために弱毒化した結核菌が投与される。\nBCGとは、この弱毒化した結核菌のことである。\n免疫細胞では、インターロイキン(interleukin)というタンパク質が、主に情報伝達物質として働いている。インターロイキンには、多くの種類がある。\nインターロイキンのうち、いくつかの種類のものについては、ヘルパーT細胞からインターロイキンが放出されており、免疫に関する情報伝達をしている。\n体液性免疫では、ヘルパーT細胞から(ある種類の)インターロイキンが放出されて、B細胞に情報が伝わっている。こうしてB細胞は抗体産生細胞に変化する。\n細胞性免疫では、ヘルパーT細胞が(ある種類の)インターロイキンを放出し、キラーT細胞やマクロファージなどに情報が伝わる。\nなお、名前の似ている「インターフェロン」という物質があるが、これはウイルスに感染した細胞から放出され、周囲の未感染細胞にウイルスの増殖を抑える物質を作らせる。(※ チャート式生物(平成26年版)の範囲。)\nマクロファージや樹状細胞も、病原体などを分解して、そのタンパク質断片を(マクロファージや樹状細胞の)細胞表面で抗原提示をして、ヘルパーT細胞を活性化する、・・・と考えられている。(※ 検定教科書では、MHCかどうかは、触れられてない。)\n(※ まだ新しい分野でもあり、未解明のことも多く、高校生は、この分野には、あまり深入りしないほうが安全だろう。)\nT細胞やB細胞の一部は攻撃に参加せず、記憶細胞として残り、抗原の記憶を維持する。そのため、もし同じ抗原が侵入しても、1回目の免疫反応よりも、すばやく認識でき、すばやくT細胞やB細胞などを増殖・分化できる。\nこのため、すぐに、より強い、免疫が発揮できる。\nこれを免疫記憶(immunological memory)と呼ぶ。\n一度かかった感染病には、再びは、かかりにくくなる。\nこれはリンパ球の一部が免疫記憶として病原体の情報を記憶しているためである。\n免疫記憶は予防接種としても利用されている。\n免疫は、個体が未熟なときから存在する。成熟の課程で、リンパ球(T細胞)は、いったん多くの種類が作られ、あらゆる抗原に対応するので、自己の細胞も抗原と認識してしまうリンパ球もできる。いったん自分自身に免疫が働かないように、しかし、自己と反応したリンパ球は死んでいくので、個体の成熟の課程で、自己を排除しようとする不適切なリンパ球は取り除かれる。そして最終的に、自己とは反応しないリンパ球のみが、生き残る。\nこうして、成熟の課程で、自己に対しての免疫が抑制される仕組みを免疫寛容(めんえき かんよう)という。\n免疫寛容について、下記のことが分かっている。\nまず、そもそも、T細胞もB細胞も、おおもとの原料となる細胞は、骨髄でつくられる。\n骨髄で作られた未成熟T細胞は、血流にのって胸腺まで運ばれ、胸腺でT細胞として分化・増殖する。\n膨大なT細胞が作られる際、いったん、あらゆる抗原に対応できるようにT細胞がつくられるので、作られたT細胞のなかには自己の細胞を抗原として認識してしまうものも存在している。\nしかし、分化・成熟の過程で、自己を攻撃してしまうT細胞があれば、その(自己を攻撃する)T細胞は胸腺で取り除かれる。\nこのようにして、免疫寛容が達成される。\n殺しておいた病原体、あるいは無毒化や弱毒化させておいた病原体などをワクチン(英: vaccine[11])という。このワクチンを、人間に接種すると、もとの病気に対しての抗体と免疫記憶を作らせることができるので、病気の予防になる。こうしてワクチンを接種して病気を予防することを予防接種という。\nワクチン療法の元祖は、18世紀なかばの医師ジェンナーによる、牛痘(ぎゅうとう)を利用した、天然痘(てんねんとう)の予防である。\n天然痘は、死亡率が高く、ある世紀では、ヨーロッパ全土で100年間あたり6000万人もの人が死亡したとも言われている。天然痘はウイルスであることが、現在では知られている。\n牛痘は牛に感染するが、人間にも感染する。人間に感染した場合、天然痘よりも症状は比較的軽い。\n当事のヨーロッパで牛痘に感染した人は、天然痘には感染しにくい事が知られており、また牛痘に感染した人は天然痘に感染しても症状が軽い事が知られていた。このような話をジェンナーも聞いたようであり、牛の乳搾りをしていた農夫の女から聞いたらしい。\nジェンナーは、牛痘に感染した牛の膿を人間に接種することで、天然痘を予防する方法を開発した。\nさらに19世紀末にパスツールがワクチンの手法を改良し、天然痘のワクチンを改良するとともに、狂犬病のワクチンなどを開発していった。\n狂犬病はウイルスである。\n現在では、天然痘のDNAおよび牛痘のDNAの解析がされており、天然痘と牛痘とは塩基配列が似ていることが分かっている。\n1980年、世界保健機構(WHO)は、天然痘の根絶宣言を出した。\n現在ではインフルエンザの予防にもワクチンが用いられている。インフルエンザには多くの型があり、年によって、流行している型がさまざまである。流行している型とは他の型のワクチンを接種しても、効果が無いのが普通である。\nインフルエンザの感染は、鳥やブタやウマなどにも感染するのであり、けっしてヒトだけに感染するのではない。\nインフルエンザはウイルスであり、細菌ではない。\nインフルエンザのワクチンは、ニワトリの卵(鶏卵)の中で、インフルエンザウイルスを培養させた後、これを薬品処理して無毒化したものをワクチンとしている。このように薬品などで病原体を殺してあるワクチンを不活化ワクチンという。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンである。いっぽう、結核の予防に用いられるBCGワクチンは、生きた弱毒結核菌である。BCGのように生きたワクチンを生ワクチンという。\n1918年に世界的に流行したスペイン風邪も、インフルエンザである。\nインフルエンザは変異しやすく、ブタなどに感染したインフルエンザが変異して、人間にも感染するようになる場合もある。\nウマやウサギなどの動物に、弱毒化した病原体や、弱毒化した毒素などを投与し、その抗体を作らせる。その動物の血液の中には、抗体が多量に含まれることになる。\n血液を採取し、そして血球やフィブリンなどを分離し、血清を回収すると、その血清の中に抗体が含まれている。\nマムシやハブなどの毒ヘビにかまれた場合の治療として、これらのヘビ毒に対応した血清の注射が用いられている。このように血清をもちいた治療法を血清療法(けっせいりょうほう)という。血清療法は、免疫記憶は作らないので、予防には役立たない。予防ではなく治療のために血清療法を行う。\nヘビ毒以外には、破傷風(はしょうふう)やジフテリアなどの治療にも血清が用いられる。\n血清療法は、1890年ごろ、北里柴三郎が開発した。\n(未記述)\n抗原抗体反応が過剰に起こることをアレルギー(allergy)と呼ぶ。スギ花粉などが原因で起きる花粉症もアレルギーの一つである。\nアレルギーを引き起こす抗原をアレルゲン(allergen)と呼ぶ。\nアレルギーによって、じんましんが起きるきともある。\nヒトによっては卵やソバやピーナッツなどの食品もアレルゲンになりうる。、\nダニやホコリなどもアレルゲンになりうる。\n抗原抗体反応によって、呼吸困難や血圧低下などの強い症状が起きる場合もあり、または全身に炎症などの症状が現れたりする場合もあり、このような現象をアナフィラキシーという。\n(つまり、アレルギー反応によって、呼吸困難や血圧低下などの強い症状が起きる場合や、または全身に炎症などの症状が現れたりする場合もあり、このような現象をアナフィラキシーという。)\nハチ毒で、まれにアナフィラキシーが起きる場合がある。ペニシリン(penicillin [12])などの薬剤でもアナフィラキシーが起きる場合がある。\n※ 「アナフィラキシー・ショック」(anaphylactic shock)と書いても、正しい。(※ 東京書籍の検定教科書『生物基礎』平成23年検定版、124ページでは「アナフィラキシーショック」の用語で紹介している。)\n※ 「アナフィラキシー」の結果が、血圧低下なのか、それとも炎症なのかの説明が、検定教科書でもハッキリしていない。東京書籍の教科書では、全身の炎症を「アナフィラキシーショック」の症状として説明している。だが実教出版では、血圧低下や呼吸困難を、「アナフィラキシー」の結果としているし、「アナフィラキシーショック」とはアナフィラキシーの重症化した症状だと(実教出版は)説明している。カッツング薬理学を読んでも、「アナフィラキシ-ショック」と「アナフィラキシー」がどう違うのか、あまり明確には書いてないので、高校生は気にしなくて良い[14]。\nエイズ(後天性免疫不全症候群、AIDS)の原因であるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)というウイルスは、ヘルパーT細胞に感染して、ヘルパーT細胞を破壊する。ヘルパーT細胞は免疫をつかさどる細胞である。そのため、エイズ患者の免疫機能が壊れ、さまざまな病原体に感染しやすくなってしまう。エイズ患者ではヘルパーT細胞が壊れているため、B細胞が抗体をつくることが出来ない。\nふつうのヒトでは発病しない弱毒の病原体でも、エイズ患者では免疫機能が無いため発症することもあり、このことを日和見感染(ひよりみ かんせん、opportunistic infection)という。\nHIVとは Human Immunodeficiency Virus の略。\nAIDSとは Acquired Immune Deficiency Syndrome の略。\nHIVの遺伝子は変化をしやすく、そのため抗体を作成しても、遺伝子が変化しているので効果が無く、ワクチンが効かない。開発されているエイズ治療薬は、ウイルスの増加を抑えるだけである。\nよって、予防が大事である。\n自己の組織や器官に対して、免疫が働いてしまい、その結果、病気が起きることを自己免疫疾患という。\n関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、重症筋無力症(myasthenia gravis)は自己免疫疾患である。I型糖尿病も自己免疫疾患である。\nヒトの汗や鼻水や涙にはリゾチームという酵素があり、リゾチームは細菌の細胞壁を破壊する。[15]\n「T細胞」のTの語源は胸腺(Thymus)である。\n「B細胞」の語源は、ニワトリなど鳥類にあるファブリキウス嚢(Bursa of Fabricus)である。研究の当初、まずニワトリのファブリキウス嚢が、ニワトリでは抗体産生に必要なことがわかった。また、ファブリキウス嚢を失ったニワトリは、抗体産生をしないことも分かった。\nのちに、哺乳類では骨髄(Bone Marrow)でB細胞がつくられることが分かったが、偶然、Boneも頭文字がBであったので、名前を変える必要は無かったので、現代でもそのままB細胞と呼ばれている。\nなお、動物実験で、ニワトリの(ファブリキウス嚢ではなく)胸腺を摘出した場合、この胸腺なしニワトリに(他の個体の皮膚を)皮膚移植をすれば他の個体の皮膚が定着する。\nあるいは遺伝的に胸腺の無いヌードマウスなど、胸腺の無い個体の場合、拒絶反応が起きない。(第一学習社の「生物基礎」教科書で、遺伝的に胸腺の無いヌードマウスの皮膚移植を紹介。)\n\n肝臓(かんぞう、liver)は腹部の右上に位置する最も大きな臓器であり、ヒトの成人では1kg以上の重さがあり、約1200g~2000gである。肝小葉(かんしょうよう)という基本単位が約50万個、集まって、肝臓が出来ている。心臓から出た血液の約4分の1は、肝臓に入る。\n肝臓の働きは、栄養分の貯蔵や分解、有害な物質の解毒、不要な物質を胆汁(たんじゅう、bile)として捨てる、などを行っている。\n肝臓には肝動脈と肝静脈のほかに、腸からの静脈の血管である肝門脈(かんもんみゃく)が肝臓を通っている。\n腸で吸収されたグルコースやアミノ酸などの栄養が関門脈の中を流れる血液に含まれている。\nグルコースの一部は肝臓でグリコーゲンへと合成され貯蔵される。グリコーゲンは必要に応じてグルコースに分解されて、エネルギー源として消費される。このようにして、血液中のグルコースの量や濃度(血糖値、血糖量)が、一定に保たれる。\n肝臓では血しょうの主なタンパク質のアルブミン(albumin)を合成しており、また血しょう中の血液凝固に関するタンパク質であるフィビリノーゲンも肝臓で合成している。\nタンパク質の合成にはアンモニアなど有害な物質が生成するが、肝臓はアンモニアを毒性の低い尿素(にょうそ)に変えている。尿素は腎臓(じんぞう)に集められ、膀胱(ぼうこう)を経て、尿道から体外へと排出される。\n哺乳類や両生類では、アンモニアを尿素に変えてから排出する。なお、魚類は生成したアンモニアを直接、外部に放出している。まわりに水が多いため、アンモニアを直接排出しても害が少ないため、と考えられてる。鳥類やハ虫類では、尿素ではなく尿酸を合成しており、尿酸を排出する。鳥類とハ虫類とも、陸で生まれて、かたい卵で生まれる動物である。\nそのほか有害な物質の解毒の例としては、アルコールを分解したりしている。\n胆汁は肝臓で作られており、胆汁は胆管(bile duct)を通り、胆のう(gallbladder)へ貯蔵され、十二指腸(duodenum)へ分泌される。\n胆汁は脂肪を消化吸収しやすくする。胆汁に消化酵素は含まれていない。胆汁は脂肪を小さな粒に変える。このように脂肪を小さな粒に変えることを乳化(にゅうか)という。\n古くなった赤血球を破壊する。ヒトの胆汁中に含まれる色素のピリルビンは、古くなって破壊した赤血球に含まれていたヘモグロビンに由来している。便(大便)とともに、ピリルビンは排出される。\n合成・分解など様々な化学反応が行われるため、反応熱が発生し、体温の維持にも役立っている。\nヒトなどの高等な動物の場合、腎臓(kidney)は左右一対で背側に位置し、\n腎動脈(Renal artery)、腎静脈(renal vein)、輸尿管(ureter)が伸びている。\n血液は腎動脈・腎臓・腎静脈を通り、\n腎臓は血液中の不要な成分をろ過し尿として輸尿管・膀胱(ぼうこう、bladder)・尿道(にょうどう、urethra)を通り排出する。\n腎臓にはネフロン(nephron)と呼ばれる構造上の単位があり、\nネフロンは腎小体(じんしょうたい、renal corpuscle、マルピーギ小体)と細尿管(さいにょうかん、尿細管、腎細管, renal tubule)からなり、\n片方の腎臓あたり、ネフロンは約100万個ある。\n腎小体は、毛細血管が球状に密集している糸球体(しきゅうたい、glomerulus)と、それを囲むボーマンのう(Bowman's capsule)からなる。\nタンパク質以外の血漿は糸球体からボーマンのうに ろ過 されて 原尿(げんにょう、primary urine)となり、\n原尿は細尿管で、水の再吸収と、グルコースや無機塩類などの必要な成分が再吸収される。(「再吸収」も用語) グルコースは、健康なら、すべて(100%)吸収される。これらの再吸収は、ATPのエネルギーを用いた能動輸送である。\nグルコ-ス以外の、水や無機塩類の再吸収率は、体の状況に応じて再吸収率が調節されている。原則的に、血液の塩類濃度を一定に保とうとする方向に、水や塩類の再吸収率は調節されている。この再吸収率の調整の際、ホルモンが関わっている。\n原尿は集合管(しゅうごうかん、collecting duct)を通り、ここで水分が再吸収される。ナトリウムイオンは、腎細管でほとんどが再吸収される。その結果、原尿のナトリウム濃度は低い。\n尿素は不要なため、再吸収されない。\nそして原尿から水分が吸収されたことで、残された尿素などの老廃物や再吸収されなかったものが濃縮して尿(にょう、urine)となり、体外へ尿として排出される。なお尿素は肝臓で作られる。\nボーマンのうでこし出される原尿は、ヒトの成人男性では1日あたり約170Lもあるが、その大部分は再吸収されるので、最終的に対外に尿として排出される液量は1L~2Lほどになる。99%ほど濃縮されたことになる。\nヒトなどの場合、血液中の塩分濃度が低いと、Naの再吸収がホルモンによって促進される。このホルモンは鉱質コルチコイド(mineral corticoid)という。腎細管でほとんどのナトリウムが再吸収される。鉱質コルチコイドは副腎皮質から分泌されている。\n水の再吸収については、脳下垂体からバソプレシン(vasopressin)というホルモンが分泌されることによって、集合管での水の再吸収が促進される。\n塩類の過剰な摂取などで、血液中の塩類濃度が上昇して体液の浸透圧が上がったときにも、バソプレシンによって水の再吸収が促進され、塩類濃度を下げさせる。水が吸収された結果、尿の液量は少なくなり、尿は濃くなる。\n淡水(たんすい)とは、川や湖のように、塩分をあまり含まない水のことである。海水は、淡水ではない。淡水魚の場合、体内の塩分を失わせないため、淡水魚は水をほとんど飲まない。淡水魚の えら は、塩分を吸収しやすい特殊な作りになっている。\n体内の水分を確保するため、まず海水を飲んで塩ごと水分を補給し、そして、えら から塩分を排出することで、体内の水分を確保している。\n体液の塩類濃度が海水よりも低いのが一般である(体液が低張液、海水が高張液)。そのため、浸透によって水分が海水に取られてしまう傾向にある。サメやエイなどの硬骨魚類では、体液中に尿素を溶かすことで体液の塩類濃度を上げることで浸透圧を高めており、体液の浸透圧を海水の浸透圧に近づけている。\n水分の補給は、海水だけを飲むのだが、余分な塩分を排出する塩類腺(せんるいせん)を持ち、塩類腺から、塩分のたかい液体を排出している。腺の場所はウミガメの場合、目のところに腺があるので、陸上で観察すると、あたかも涙を流しているように見える。\nアホウドリなどの海鳥は、鼻のところに塩類腺(せんるいせん)を持つ。\n多くの無脊椎動物では、海に暮らす動物の場合でも、いっぽう川に暮らす動物の場合でも、あまり塩類濃度の調節機構が発達していない。\n例外的に、いくつかの生物では発達している。\nホルモン(hormone)とは、内分泌腺(ないぶんぴせん)という器官から血液へ分泌される物質であり、他の器官に情報を伝える化学物質である。ホルモンは血液によって全身へと運ばれる。そして、特定の器官へホルモンは作用する。脳下垂体、甲状腺、すい蔵などが内分泌腺である。\nホルモンは自律神経に比べて、反応が現れるまでに時間がかかり、比較的遅く、全身へ作用する。ホルモンの主な成分は、タンパク質や脂質やアミノ酸である。このように脂質は、ホルモンの成分として、情報を全身に伝える役目も持っている。脂質は、けっして単にエネルギー源なだけではないのである。\nいっぽう汗のように体外へ物質を分泌する腺を外分泌腺(がいぶんぴせん)という。外分泌腺には、汗を分泌する汗腺、だ液を分泌する だ腺、乳を分泌する乳腺、などがある。\n*交感神経と副交感神経\n自律神経(autonomic nerve)は、意思とは無関係に、他の器官に情報を伝える神経である。\n自律神経はホルモンに比べて、比較的早く、局所へ作用する。\n自律神経には、働きの異なる二つの神経系があり、交感神経(こうかんしねけい、sympathetic nerve)と副交感神経(ふくこうかんしんけい、parasympathetic nerve)とに分けられる。\n交感神経は、敵と戦うなどの身体が活動的なときや緊張状態のときに働く。一方、副交感神経は、休息したりなどの身体が非活動的なときに働く。\nたとえば、動物が、命がけで敵と戦うとか、あるいは敵に襲われて命がけで逃げなければならない、としよう。そのときの神経の働きを考えよう。\nこのように、交感神経は、闘争(とうそう)や逃走(とうそう)のときに、よく働く。この「闘争や逃走」のことを、英語でも fight or flight (ファイト・オア・フライト)という。\n多くの場合、交感神経と副交感神経は、反対の作用を持つので、拮抗(きっこう)的に働く。交感神経と副交感神経は、同じ器官に分布している事が多い。\n交感神経は、脊髄の末端から出ていて、分布している。\n副交感神経は、中脳・延髄および脊髄の末端から出ている。\n自律神経は間脳の視床下部に中枢がある。\n神経の末端からは、情報伝達のための神経伝達物質が放出される。\n交感神経の末端からは主にノルアドレナリン(noradrenaline)という神経伝達物質が分泌される。副交感神経の末端からは、主にアセチルコリンという神経伝達物質が分泌される。\nホルモンが作用する器官を標的器官(ひょうてき きかん)という。標的器官の細胞には、特定のホルモンが結合できる受容体(じゅようたい)がある。ホルモンの種類ごとに、受容体の種類も異なるので、その受容体を持った特定の器官だけが作用を受けるので、特定の器官だけがホルモンの作用を受ける。\n標的器官の細胞で、ホルモンの受容体を持った細胞を標的細胞という。\nタンパク質でできたホルモンは、分子量が大きいため、細胞膜を透過できない。このよう細胞膜を透過できないホルモンの受容体は、細胞膜の表面にある。アミノ酸が多数つながった長いものをペプチドというのだが、ペプチドでできたホルモンをペプチドホルモンという。(※ 高校教科書の範囲内)[17]\n一般にタンパク質が細胞膜を透過できないため、ペプチドホルモンも細胞膜を透過できないのが普通である。インスリンはペプチドホルモンである。\nなおホルモンに限らず、伝達物質が細胞膜にある受容体と結合したあとの、細胞内へ情報が伝わる仕組みは、カルシウムイオンCa2+ を用いて情報伝達をしたり、あるいはcAMP(サイクリックアデノシン一リン酸、サイクリックAMP)や Gタンパク質 が、情報伝達に用いられる。cAMPやGタンパク質は酵素などに作用する。[18]なおcAMPはATPをもtにして酵素反応によって作られる。[19](※ これらの話題は高校教科書の範囲内)\nこれらカルシウムイオンやcAMPやGタンパク質のような、このような細胞内の情報伝達物質をセカンドメッセンジャー(second messenger)という。[20] (※ 高校教科書の範囲内)\nペプチドホルモンから細胞への情報伝達においても、カルシウムイオンやcAMPやGタンパク質がセカンドメッセンジャ-として機能する。\nいっぽう、脂質やアミノ酸を主成分とするホルモンの場合は、細胞膜を透過することができる。なぜなら、これらのホルモンは脂溶性であり、そしてホルモンが脂溶性ならば、リン脂質を主成分とする細胞二重膜を透過できるからである。このような細胞膜を透過するホルモンに結合するための受容体は、細胞内にある。\n脂質でできたホルモンには、脂質の一種であるステロイド(steroid)で出来ているホルモンも多い。私たちヒトの脂質のコレステロールも、ステロイドの一種である。ステロイドでできたホルモンをステロイドホルモン(steroid hormone)という。糖質コルチコイドや鉱質コルチコイドは、ステロイドホルモンである。ステロイドホルモンは、脂質に溶けやすく、そのため細胞膜を透過しやすい。(※ 高校教科書の範囲内)[21]\nつまり糖質コルチコイドや鉱質コルチコイドは、脂質に溶けやすく、細胞膜を透過しやすい。\n例外もあり、脂質を主成分としながらも細胞膜に受容体を持つホルモンも発見されている。[22](※ 高校の範囲外)\n胃酸などを含んだ酸性の消化物が十二指腸に入ると、十二指腸からセクレチン(secretin)が分泌される。\n当初、これは神経の働きだと考えられていた。\nしかし1902年にベイリスとスターリングは、神経を切断した十二指腸に塩酸を注入すると、すい液が分泌される事を発見した。\nさらに、体外に取り出した十二指腸の粘膜に塩酸を掛けてしぼった液を、すい臓(pancress)への血管に注射しても、すい液が分泌された。\nこれらの実験結果によって、十二指腸で作られた物質が血管を通してすい臓へ送られて、すい液の分泌を即していることが分かった。すい液の分泌を促進する物質は、セクレチンと名づけられた。\nホルモン分泌で中心的な役割をしている器官は、間脳にある視床下部(ししょうかぶ、hypothalamus)と、視床下部の下にある脳下垂体である。\n脳下垂体には前葉と後葉がある。\n間脳の視床下部には、ホルモンを分泌する神経細胞があり、これを神経分泌細胞(しんけい ぶんぴつ さいぼう、neurosecretory cell)という。また、このように神経がホルモンを分泌することを神経分泌(しんけい ぶんぴ)という。この間脳の神経分泌細胞により、脳下垂体の血管中にホルモンが分泌される。この神経分泌のホルモンは、脳下垂体のホルモンを調節するための放出ホルモン(releasing hormone)または放出抑制ホルモン(inhibiting hormone)である。\n視床下部から伸びている神経分泌細胞が、脳下垂体に作用して、脳下垂体のホルモン分泌を調節している。\n脳下垂体の前葉と後葉とで、分泌される血管の位置が違う。\n脳下垂体前葉では、視床下部にある血管に分泌し、その血管が前葉まで続いて脳下垂体に作用している。前葉からは成長ホルモン(growth hormone)などが分泌される。\nいっぽう、脳下垂体後葉では、視床下部からつながる神経伝達細胞が後葉まで続いており、後葉中の血管に、神経伝達細胞が直接、ホルモンを分泌している。\n後葉からは、水分調節に関わるバソプレシンというホルモンが分泌され、バソプレシンによって腎臓での集合管における水の再吸収などが促進される。\nのどの近くにある甲状腺(こうじょうせん、thyroid gland)からはチロキシン(thyroxine)が分泌される。\nチロキシンは代謝を活性化するホルモンであり、酸素の消費やグルコースの消費が、活発になる。\n視床下部は、チロキシンの濃度を、つぎのような仕組みで調節している。\nチロキシンによって、視床下部や脳下垂体による甲状腺刺激が抑制されるという仕組みである。\n視床下部や脳下垂体は、チロキシンが多くなりすぎないように、チロキシンによってホルモンを抑制する。チロキシンによって視床下部は甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンを抑制する。また、チロキシンによって、脳下垂体は甲状腺刺激ホルモンを抑制する。こうして、チロキシン自身が最終的に、甲状腺からのチロキシン分泌を抑制するように働きかける。\n逆にチロキシンが少なくなると、視床下部や脳下垂体が、甲状腺刺激ホルモンを通して甲状腺にチロキシンを増やすように働きかける。\nチロキシンを受け取った細胞では代謝が活発になる。\nこのように、最終産物(この場合はチロキシン)が、前の段階(この場合は視床下部や脳下垂体)に働きかけることをフィードバック(feedback)という。\nフィードバックは生物学に限らず、多くの分野で見られる現象だが、とりあえず生物学を例に説明する。\nフィードッバックが前の段階を抑制する場合、負のフィードバック(negative feedback)という。ふつう、ホルモンは負のフィードバックによって、濃度などが一定の範囲内に近づくように調節されている。\n腎臓での水の再吸収に関わるバソプレシンも、負のフィードバックによって一定に保たれる。この結果、バソプレシンが人体の水分調節のためのホルモンとして働くことになる。\nいっぽう、フィードバックによって、前の段階が促進される場合を正のフィードバックという。電子機械などで見られる現象で、たとえば音声マイクとスピーカーのハウリング現象(マイクをスピーカーに近づけたときの、うるさい現象。※ うるさいので実験しないように。)などが、正のフィードバックにあたる。\nハウリングの起きる仕組みは、マイクから入力された音が、スピーカーから出て、そのスピーカーから出た音をマイクがひろってしまうので、さらにスピーカーから音が出るので、音が大きくなり、その大きくなった音をふたたびマイクがひろってしまうので、さらにスピ-カーから、もっと大きな音が出てしまい、そしてさらに・・・という、とてもうるさい現象である。\n心臓の拍動は延髄と自律神経によって調節されている。\n運動などによって酸素が消費され、二酸化炭素濃度が高くなると、\n延髄は交感神経を働かせ、\n交感神経の末端からノルアドレナリン(noradrenaline)が放出され、\n心臓の拍動数が増加する。\n逆に安静時に酸素の消費量が減り、二酸化炭素濃度が低くなると、\n延髄は副交感神経を働かせ、\n副交感神経の末端からアセチルコリン(acetylcholine)が放出され、\n心臓の拍動数が減少する。\n心臓の拍動の調節の実験には、\nオットー・レーヴィのカエルの心臓を用いた実験がある。\nレーヴィは2つのカエルの心臓を取り出してつなぎ、リンガー液を循環させる装置を作った。\n片方の心臓からのびる迷走神経(副交感神経)を刺激すると、その心臓の拍動数が減少し、\nしばらくして、もう片方の心臓の拍動数も減少した。\nこれにより、迷走神経のシナプスから化学物質が分泌され、\n心臓の拍動数を制御していることが明らかとなった。\nその化学物質は、今日ではアセチルコリンであることが分かっている。\n魚類の浸透圧の調節は、えら・腸・腎臓などで行われ、\n淡水魚と海水魚の場合でその働きは異なっている。\n淡水魚の場合、水分が体内に侵入するため、\nえらや腸で無機塩類を吸収し、\n腎臓で体液より低張の尿を大量に排出する。\n海水魚の場合、水分が体外に出るため、\n海水を大量に呑み込み腸で吸収し、\n腎臓で体液と等張の尿を少量排出する。\nまた、えらから無機塩類を排出する。\n哺乳類の浸透圧の調節は、腎臓で行われる。\nまた、腎臓の働きは、間脳視床下部・脳下垂体後葉や副腎皮質(ふくじんひしつ、adrenal medulla)によって調節されている。\n水分の摂取などで、低浸透圧になった場合、副腎皮質が働く。\n副腎皮質からは鉱質コルチコイド(mineral corticoid)が分泌される。\n鉱質コルチコイドは腎臓の細尿管から無機塩類の再吸収を促進する働きがある。\n水分の不足などで、高浸透圧になった場合、\n間脳視床下部、脳下垂体後葉が働く。\n脳下垂体後葉からはバソプレシン(vasopressin)が分泌される。\nバソプレシンは腎臓の細尿管から水分の再吸収を促進する働きがある。\n血液中に含まれるグルコースを血糖(けっとう、blood glucose)という。\n健康なヒトの場合の血糖の含有量は一定の範囲に保たれ、空腹時で血液100mLあたり、ほぼ100mgという濃度である。\nこのような血統の値を血糖値(けっとうち)という。または血糖量という、または血糖濃度という。\nグルコースは細胞の活動に必要な糖である。\n血糖値が低すぎたり高すぎたりすると様々な症状を引き起こすため、\nホルモンと自律神経によって一定に保たれている。\n食事などで炭水化物や糖質を取ると、一時的に血糖値が上昇する。逆に、急激な運動の後などでは下がっている。\n血糖値が60mg以下(血液100mLあたり)だと、意識喪失や けいれん などが起き、危険である。運動などによって低血糖になると、間脳の視床下部が働く。\nさて、血糖の調節に関わる器官は、すい臓および視床下部である。\n視床下部は、交感神経によって、すい臓と副腎髄質を働かせる。\nグリコーゲンが、つぎの仕組みで分解されることで、グリコーゲンからグルコースが取り出され、グルコース濃度を上げる仕組みである。\nすい臓のランゲルハンス島のA細胞からはグルカゴン(glucagon)が分泌され、\n副腎髄質(ふくじんひしつ、adrenal medulla)からはアドレナリン(adrenaline)が分泌される。\nグルカゴンやアドレナリンは、グリコーゲンをグルコースへ分解させる働きがある。\nまた、視床下部は放出ホルモンで脳下垂体前葉を働かせ、脳下垂体前葉は副腎皮質刺激ホルモンで副腎皮質を働かせ、副腎皮質からアドレナリンが分泌される。\nまた、副腎皮質が分泌する糖質コルチコイド(glucocorticoid)が、タンパク質を分解させて、その分解された元タンパク質を材料としてグルコースを合成させる。糖質コルチコイドは、タンパク質をグルコースへ分解させる働きがある。\nアドレナリンやグルカゴンが、肝臓や筋肉に働きかけ、貯蔵されているグリコーゲンの分解を促進する。(肝臓や筋肉にはグリコーゲンが蓄えられている。)\nこれらの反応の結果、血糖値が上昇する。\n食事などによって高血糖になると、すい臓のランゲルハンス島のB細胞が、血糖値の上昇を感知し、B細胞がインスリン(insulin [24])を分泌する。\nインスリンは、グルコースをグリコーゲンへ合成させたり、\nグルコースを細胞へ吸収・分解させたりする働きがある。\nこのインスリンが、細胞でのグルコースを用いた呼吸を促進したり、肝臓でのグリコーゲンの合成を促進するので、結果的にグルコースの消費が促進されるので、グルコースの濃度が下がり、グルコース濃度が通常の濃度に近づくという仕組みである。\nまた、間脳の視床下部でも血糖値の上昇は感知され、副交感神経の刺激を通じて、すい臓にインスリンの分泌をうながし、すい臓のランゲルハンス島B細胞がインスリンを分泌する。\nいっぽう、病気により血糖値が常に200mgを越えると、糖尿病(とうにょうびょう、diabetes [25])という病気だと判断される。[26]\n(※ 高校理科の範囲内[27])\n糖尿病とは、すい臓からのインスリン分泌が、うまくは分泌されなくなってしまった病気である。インスリンが細胞と結合すると、グルコースを消費させる。しかし、インスリン分泌がうまくいかないと、この消費がなくなってしまい、その結果、グルコースが余る。\nその結果、原尿にグルコースが高濃度で含まれるので細尿管でのグルコース吸収が間に合わず、尿中に高濃度のグルコースが含まれて排出される。\n(もし健康なヒトなら、原尿のグルコースは、ほぼ100%再吸収されてるので、尿中には高濃度のグルコースは排出されない。なのに高濃度のグルコースを含む尿が排出されるという事は、つまり病気に掛かっている事になる。)\n高血糖が長く続くと、欠陥が変性して血流が低下してしまい、その結果、眼や腎臓などの、さまざまな器官で障害を起こす。糖尿病には、このような各器官での合併症があるため、危険な病気である。\n糖尿病の分類は、大きくは二つの種類に分けられる。\nまず、インスリンを分泌する細胞そのものが破壊されていて分泌できない場合のI型糖尿病がある。若くして発症することが多い。\nもう一つは、I型とは別のなんらかの原因で、インスリンの分泌量が低下したり、インスリンに細胞が反応しなくなる場合であり、これをII型糖尿病という。肥満や喫煙・運動不足などの生活習慣病などによる糖尿病で、II型糖尿病が多く見られている。\n日本の糖尿病患者の多くはII型である。\n糖尿病の治療には、I型・II型とも、インスリンの投与が行われる。患者は、食後などに毎回、自分でインスリンを注射しなければならない。\nII型の生活習慣が原因と考えられる場合、食事の見直しや、適度な運動なども、治療に必要になる。\n糖尿病の症状として頻尿(ひんにょう)がある。[28](※ 高校の範囲内)\nこの原因は、原尿の浸透圧が血糖によって上昇したことにより、細尿管での水分の再吸収が減るためだと考えられてる。[29](※ 高校の範囲外)\nまた、頻尿などにより水分が低下するので、のどの渇きが起きる。\n血糖値をあげるホルモンの種類は多く仕組みも複雑である。なのに、血糖値を下げるホルモンはインスリンのみしか今のところ知られておらず、また仕組みも単純である。この事から、動物は、飢餓に適応して、血糖値の調節の機構を進化させてきたと考えられている。飽食の時代よりも、飢餓の時代のほうが、圧倒的に多かったのだろうと考えられている。\n変温動物は、体温調節が不完全で、体温は外部環境によって変化する。\n一方、恒温動物では、体温は、外部環境によらず、一定に保たれている。ヒトの場合、健康なら、体温は約37℃に保たれる。\n体温の調節は、ホルモンや自律神経が行っている。体温調節の中枢のある場所は、間脳の視床下部にある。\n寒さによって体温が低下すると、間脳の視床下部が働く。\n視床下部は、交感神経やホルモンによって、肝臓や筋肉の代謝を促進し、発熱量を増加させる。\nまた、交感神経によって皮膚の血管や立毛筋を縮小させ、熱放散を減少させる。また、骨格筋をふるわせることで、熱を産生する。\nまた、チロキシンやアドレナリンなどが分泌され、肝臓での物質の分解を促進して熱を産生する。\n暑さによって体温が上昇すると、間脳の視床下部が働く。\n視床下部は、交感神経によって、\n皮膚血管を拡張し、汗腺から発汗させ、熱放散を増加させる。\nまた、副交感神経によって、肝臓での物質の分解が抑制され、熱の産生を抑える。\nヒトの 「のどぼとけ」 の、すぐ下には、甲状腺という器官がある。この甲状腺は、甲状腺ホルモンというホルモンを分泌している器官である。ホルモンとは、体内のいろいろな働きを調節するための分泌物(ぶんぴぶつ)である。くわしくは、中学の保健体育で習うか、または高校生物で習う。\nさて、甲状腺ホルモンの主成分はヨウ素である。ヨウ素は、ワカメやコンブなどの海ソウに多く含まれている。\nさて、通常のヨウ素には放射能(ほうしゃのう)が無く、安全である。だが、原子力発電などの原子核分裂では、放射性のある様々な原子が作られる。その中に放射性のある特別なヨウ素も作られる場合がある。\n原子力発電などの事故などへの対策として、原子力発電所などの近隣地区に ヨウ素剤(ようそ ざい) が配布される理由は、この放射能のある特別なヨウ素が甲状腺に集まらないようにするためである。\n体内に吸収されたヨウ素は、甲状腺に集まる性質がある。なので、あらかじめ、普通のヨウ素を摂取しておけば、放射性のある特別なヨウ素を吸収しづらくなるのである。もしくは、仮に吸収してしまっても、通常のヨウ素によって、放射性のあるヨウ素が、うすめられる。\nなお、甲状腺ホルモンの働きは、体内での、さまざまな化学反応を促進(そくしん)する働きがある。\n科学系に強い文庫である講談社ブルーブックス文庫の『元素118の新知識』によれば、引用「プルトニウムは放射性物質として危険であるだけではなく、化学的にもきわめて毒性が強い元素として知られている。」[30]\n中略\n引用「経口摂取や吸入摂取により体内に取り込まれ、長く体内に留まる場合には、その放射性および化学的反応性によって発がん性に結びつく。」[31]\nである。\n経口摂取の無毒性デマを真っ向から講談社ブルーバックスは否定している。\nほかにも、出典が見つからなかったので紹介しないが、放射線医学の専門書などを見ても、プロトニウムの放射性毒性ではなく化学毒性の可能性については、昔からよく学問的にも言われていることである。(※ この段落のwiki著者の地元の図書館に昔は放射線医学の専門書が置いてあったが2022年に図書館の本棚を調べたら文献が消失していた(※ 一般に公立図書館では古い書籍は廃棄処分などをされてしまうので))\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%94%9F%E7%89%A9/%E7%94%9F%E7%89%A9I/%E7%94%9F%E7%89%A9%E3%81%AE%E4%BD%93%E5%86%85%E7%92%B0%E5%A2%83%E3%81%AE%E7%B6%AD%E6%8C%81"} {"text": "高等学校生物 > 生物I > 環境と動物の反応 \n生物に作用して反応を起こさせる要因を刺激(stimulation)と呼ぶ。\n眼や耳などの、刺激を受け取る器官を受容器(じゅようき、receptor)という。生物が刺激に対して活動を起こすことを反応(reaction)と呼ぶ。\n反応は筋肉や腺などの効果器(こうかき、effector)で引き起こされる。効果器のことを作動体ともいう。そして受容器と効果器との間は神経系で結ばれている。\n受容から反応まで、次のような順序である。\nまた、刺激を受けた感覚細胞が活動状態となることを興奮(こうふん)という。興奮の正体は、細胞膜の電気的な変化である。\n受容器はそれぞれ受容する刺激が決まっており、受容できる刺激を適刺激(てきしげき、adequate stimuli)と呼ぶ。\nヒトの五感と受容器と適刺激は次の表のようになっている。\n感覚細胞は一定以上の強さの適刺激を受けないと興奮しない。興奮するための刺激の最小値のことを閾値(いきち、threshold)という。\n眼のように光を受容する器官を'視覚器(optic organ)'と呼び、\n光の感覚を視覚(vision)と呼ぶ。\nヒトの眼はカメラとよく似た仕組みになっており、このヒトの眼の仕組みをカメラ眼という。\n眼は、水晶体(すいしょうたい、lens)で光を屈折し、網膜(もうまく、retina)に像を上下左右逆に結ぶ。カメラに例えると、水晶体がレンズに相当し、網膜がフィルムに相当する。\nヒトの眼での遠近のピント調整は、カメラでいうレンズに相当する水晶体の厚さをかえることで遠近のピントを調整している。機械式カメラとは違って、レンズの前後移動に相当するような仕組みは無い。\nヒトの眼は、前部の表面に角膜(cornea)があり、その内側に瞳孔(pupil)と虹彩(iris)があり、さらにその内側に水晶体(lens)とチン小帯(Zonule of Zinn)と毛様体(ciliary body)がある。\n内部には球形のガラス体(Vitreous humour)があり、それを囲むように網膜(retina)がある。\n網膜の盲斑(もうはん、blind spot)からは視神経が伸びている。盲斑には視細胞(しさいぼう、visual cell)が無く、そのため、盲斑に像が写っても見えない。盲斑のことを盲点(もうてん)ともいう。\n光は視細胞で電気信号にかえられ、その電気信号が視神経を通り脳(主に大脳)へ送られ、視覚が発生する。\n網膜の視細胞(visual cell)には二種類の視細胞があり、明暗を感じるかん体細胞(かんたいさいぼう、桿体細胞、rod cell)と、色を感じる錐体細胞(すいたいさいぼう、cone cell)がある。\nかん体細胞は明暗のみを区別し、色は区別しない。視細胞には光を吸収する物質の視物質があり、吸収によって、その細胞の特性が変化することから、それぞれの視細胞で光あるいは色などを感じている。\nヒトやサルの錐体細胞では、三原色の赤・青・緑の区別をしており、三種類の錐体細胞(青錐体細胞、赤錐体細胞、緑錐体細胞)でこれらの色を区別しており、色覚が生じている。三種類の錐体細胞は、光の波長によって感度が異なり、それぞれ420nm(青)、530nm(緑)、560nm(赤)を中心に吸収する。このような仕組みで色覚が生じている。なお、緑と赤が近い。\nこららの三種類の錐体細胞では、それぞれの色に対応する視物質のフォトプシンがふくまれており、その色の光を良く吸収する。そのため三種類の錐体細胞の色の感度が異なる。\n錐体細胞は、網膜の中央部の黄斑に多く分布する。\n明るいところで、錐体細胞は、よく働く。弱い光では錐体細胞は反応しない。このため暗いところでは色を区別できない。\n錐体細胞の色の光を吸収する色素は、光を吸収すると一時的に分解する。この分解を視細胞が感じ取っており、色覚を生じている。\n白色の光は、赤・青・緑のすべての色をふくんでいる光であり、白色光があたると三種類の錐体細胞が三種類とも興奮する。\n動物によっては、錐体細胞の種類の数が異なり、そのためヒトとは異なる色の世界を見ている動物も多い。\nかん体細胞にはロドプシンという感光する物質が含まれている。ロドプシンの色が紅色なので視紅(しこう)ともいう。ロドプシンに光が当たると、レチナールとオプシン(タンパク質の一種)に分解される。この際、かん体細胞での細胞膜のイオンの透過性が変化し、そのため細胞が興奮する。\nロドプシンはビタミンAから作られる。そのためビタミンAが不足するとロドプシンが不足するので、暗いところで物が見えなくなる夜盲症(やもうしょう)になる。\n暗いところから明るいところになったとき、\n視覚器が次第になれてくることを明順応(めいじゅんのう、light adaptation)といい、\nその逆を暗順応(あんじゅんのう、dark adaptation)という。\n明順応の仕組み\n暗順応の仕組み\n眼は、明暗を虹彩にある瞳孔を拡大縮小することで調節している。明るい所では瞳孔は小さくなる。暗いところでは瞳孔が大きくなる。\nまた、遠近を水晶体を厚くしたり薄くしたりすることで調節している。\n遠くを見るとき、水晶体はチン小帯に引っ張られてうすくなり、このため焦点距離が長くなり(屈折率は小さくなり)、遠くの物が網膜上に像を結ぶ。チン小帯は毛様体の筋肉に引っ張られて調節される。\nいっぽう、近くを見るとき、チン小帯がゆるみ、水晶体は自らの弾性で厚くなる。このため屈折率が大きくなり焦点距離が短くなり、ちかくの物が網膜上に像を結ぶ。\nヒトの耳のように音を受容する器官を聴覚器(ちょうかくき、auditory organ)と呼び、\n音の感覚を聴覚(ちょうかく、hearing)と呼ぶ。\nヒトの耳は、外耳(がいじ、outer ear)、中耳(ちゅうじ、middle ear)、内耳(ないじ、inner ear)の3つの部分からなる。音波を受容する聴細胞(ちょうさいぼう)は内耳にある。\n音は空気の振動であり、空気の波である。音の波を、音波(おんぱ)という。音は、外耳の耳殻で集められ、外耳道を通る。\n音は中耳にある鼓膜(こまく、eardrum)を振動させ、耳小骨(じしょうこつ、ossicle)によって振動が増幅される。\n振動は内耳にあるうずまき管(cochlea)を満たすリンパ液に伝わる。\nリンパ液の振動は、うずまき管内の基底膜を振動させ、基底膜のコルチ器(Corti's organ)と呼ばれる部分の聴細胞(ちょうさいぼう)の感覚毛を変形させ、聴細胞が興奮する。詳しく言うと、リンパ液の振動によって、コルチ器の聴細胞の感覚毛が、その上をおおっているおおい膜(tectorial membrane)と接触し、その結果、コルチ器の聴細胞が興奮して、最終的に聴覚が生じる。\n聴細胞の興奮は、聴神経(ちょうしんけい)によって大脳に伝わって、こうして聴覚(ちょうかく)が発生する。\nまた、耳は聴覚のほかに、からだの傾きなどを感じる平衡覚(へいこうかく)を感じる。\nからだの姿勢・動作を知る感覚を、平衡覚(sensation of equilibrium)と呼ぶ。\n平衡覚は、前庭(ぜんてい、vestibule)と半規管(はんきかん、semicircular canals)によって感じる。内耳に、前庭と半規管がある。\n前庭では、感覚毛(vibrissa)を持った感覚細胞があり、この上に耳石(じせき、otoconium)という石灰質(炭酸カルシウム)の粒子が乗っている。体が傾くと、前庭では耳石が動き、感覚毛を持った感覚細胞が刺激として受け取るので、こうして体の傾きを感じる。耳石のことを平衡砂(へいこうさ)あるいは平衡石(へいこうせき)ともいう。\nまた、体が回転すると、半規管ではリンパ液がうごき、それを感覚毛をもった有毛の感覚細胞が刺激として受け取るので、こうして体の回転を感じる。\n体の回転を止めても、感覚では回りつづけるような感じがする現象、いわゆる「目が回る」現象のある理由は、体の回転を止めてもリンパ液は慣性によって、しばらく流れ続けているからである。\n半規管では3個の半円状の管があり、この3個の半規管は、それぞれ直交して約90度をなす配置になっている。この3つの半規管によって、それぞれ前後・左右・水平の3方向の平衡感覚を区別している。\n半規管の一方の根元にはふくらんだ部分があり、そこの内部に有毛の感覚細胞がある。\n基底膜の振動する箇所が、音の高低によって違う。なお、音の高低の正体とは、音波の振動数の違いであり、振動数が大きいほど音も高い。\n振動数が大きい音ほど、うずまき管の入口ちかくのを振動させ、つまり鼓膜に近いがわが振動する。\nいっぽう、振動数が小さい音ほど、うずまき管の奥を振動させる。\nヒトは20000Hz(ヘルツ)以上の音を聞き取ることが出来ない。Hzとは1秒間あたりの振動数。つまり20000Hzとは1秒間につき2万回の振動ということ。ヒトが聞き取れないほどに高い音波のことを超音波(ちょうおんぱ、英:ultrasonic)という。コウモリなど、いくつかの動物には、超音波を聞き取れるものがいる。コウモリは飛びながら超音波を発し、反射して帰ってきた超音波を感じることができるので、これによって夜間などでも周囲の状況を知ることができる。\n鼻のように気体の化学物質を受容する器官を嗅覚器(きゅうかくき、olfactory organ)と呼び、\nその感覚を嗅覚(きゅうかく、olfaction)と呼ぶ。\n鼻には、入口の鼻孔(nostril)、その奥の広い鼻腔(nasal cavity)、鼻腔の上部の嗅上皮(きゅうじょうひ、olfactory epithelia)がある。\n嗅上皮には、嗅細胞(きゅうさいぼう、olfactory cell)があり、表面の粘液層に繊毛をだし、粘液に溶け出した化学物質を嗅細胞の受容体が受容して興奮する。受容体に種類があり、種類ごとに結合できる物質がちがうので、それによって、においを区別できる。受容体の結合によってイオンチャネルが開き、電位が変化して、興奮する。嗅細胞の興奮が嗅神経によって脳へ伝えられていき、脳で嗅覚として認識する。\n舌のように液体の化学物質を受容する器官を味覚器(みかくき、Gustatory organ)と呼び、\nその感覚を味覚(みかく、gustation)と呼ぶ。\n舌の表面には、舌乳頭(ぜつにゅうとう)と呼ばれるつぶつぶが多数あり、\n舌乳頭には、味覚芽(みかくが、gustatory bud)と呼ばれる受容器が多数あり、この味覚芽に受容体がある。\n味覚芽には、味孔()と呼ばれる孔の奥に味細胞(みさいぼう、gustatory cell)があり、この味細胞の細胞膜にタンパク質でできた受容体があり、\nその味細胞の受容体が水などに溶け出した化学物質を受容する。\nヒトの味覚には、甘味(あまみ)、塩味(しおみ)、苦味(にがみ)、酸味(さんみ)、うま味(うまみ) の5つがある。コンブにふくまれるグルタミン酸ナトリウムなどが、うま味をひきおこす物質である。カツオブシのイノシン酸ナトリウムも、うまみをひきおこす。\n日本人の池田菊苗が、グルタミン酸ナトリウムによる、うま味を発見した。なお、池田の弟子の木霊新太郎がカツオブシのイノシン酸ナトリウムのうま味を発見した。\n特定企業の商品だが「味の素」の主成分が、グルタミン酸ナトリウムである。\nグルタミン酸は核酸の主成分であり、イノシン酸は核酸の主成分である。\n塩味など、水などに溶けた化学物質が受容体に結合すると、チャネルが開き、電位が変化してシナプスから神経伝達物質を放出し、味神経を興奮させ、興奮が脳へ伝えられていき、脳で味覚を認識する。\n私たちが甘みやうまみを「おいしい」と感じるのは、その感覚を起こす物質が生きるのに必要な場合が多いからである。たとえば甘みなら、砂糖などの糖分が含まれており、エネルギーの摂取に役立つ。うま味の物質はタンパク質やアミノ酸などの場合が多く、肉体を構成するのに必要な物質である。逆に、苦味を「まずい」味だと感じるのは、それが危険な物質である場合が多いからである。酸味は、腐敗物にふくまれる場合があり、そのため、注意が必要な味として感じているだろう、などと思われている。\nトウガラシにふくまれる化学物質のカプサイシンの辛み(からみ)は、痛覚を刺激しており、触角に近い「痛み」の感覚であり、純粋な味覚ではない。ところが、このような辛みを、脳は「味」として認識することから、どうやら味覚と触覚の感覚は、似たような受容の仕組みを持っているらしい、とも言われてる。まだ学者たちが辛みについては研究中なので、高校は深入りする必要は無い。\n[2]\n皮膚のように接触の刺激を受容する器官を触覚器()と呼び、\nその感覚を触覚()と呼ぶ。\nまた、皮膚は触覚のほかに温覚、冷覚、痛覚を感じる。\n触覚を感じるのはメルケル小体()やマイスナー小体(Meissner corpuscle)やパチーニ小体(pacinian corpuscle)(触点)、\n温覚(sensation of warm)を感じるのはルッフィーニ小体()(温点)、\n冷覚(cold sensation)を感じるのはクラウゼ小体()(冷点)、\n痛覚()を感じるのは痛点(つうてん)という神経の自由末端である。\n筋肉の内、骨格筋(きんせんい、skeletal muscle)は、自分の意志で動かすことができる。\n骨格筋には、屈筋(くっきん、flexor muscle)と伸筋(しんきん、protractor muscle)があり、これによって腕や脚を曲げたり伸ばしたりできる。\n骨格筋の筋繊維(きんせんい、muscle fiber)は多核の細胞であり、\n筋繊維の中には多数の筋原線維(きんげんせんい、myofibril)が束になっている。\nつまり、筋原繊維の束(たば)が筋繊維である。筋繊維の束が骨格筋などのそれぞれの筋肉である。\n筋原繊維は、光学顕微鏡で観察すると、明るい明帯(めいたい)と、暗い暗帯(あんたい)とが、交互に並んでいる。明るく見える部分は明帯(めいたい、light bands)といい、\n暗く見える部分は暗帯(あんたい、dark bands)という。\n明帯の中央にある仕切りをZ膜()という。\nZ膜とZ膜との間をサルコメア(筋節、sarcomere)といい、このサルコメアが筋収縮の単位がある。\n筋繊維は細いアクチンフィラメントと、太いほうがミオシンフィラメントで、できている。\nアクチンが明帯であり、ミオシンが暗帯である。\nこの骨格筋の縞模様のことを横紋(おうもん)ともいい、骨格筋には横紋が見られるので骨格筋のことを横紋筋(おうもんきん)ともいう。\nミオシンはATP分解酵素を持っており、運動のためにATPを分解してADPにする。筋肉は、このATPのエネルギーを利用して、力を出している。\nなお、一般に、ミオシンのような運動を発生させるタンパク質のことを「モータータンパク質」という。\n(※ 専門『生物』の範囲外)余談だが、筋肉組織だけでなく、微小管上を移動するキネシンとダイニンもモータータンパク質であることが知られている。なお、キネシンとダイニンもそれぞれATPを分解する部位を持つ。(※ 一部の教科書で紹介。)\n筋収縮では、ミオシンフィラメントの間にアクチンフィラメントが滑り込む。この説を滑り説(すべりせつ、sliding filament model)という。\n比喩として、よくアクチンが鉄道などのレールにたとえられ、ミオシンのほうがレールの上を移動する何らかの移動体などに(ミオシンが)例えられる(啓林館の教科書にもある比喩)。\nなお、余談だが、植物の原形質流動でも、ミオシンとアクチンとの何らかの相互作用が起きている、と考えられている(※ 参考文献: 第一学習社の専門『生物』)。また、アメーバの運動は、アクチンによるものである(※ 参考文献: 数研出版の専門『生物』)。\n筋原繊維は、筋小胞体に囲まれている。\n神経の刺激によって活動電位が発生したさい、筋小胞体からCa2+が放出される。\nこのCa2+がの作用で、アクチンフィラメントにあるトロポニンと結合し、アクチンフィラメントに付着しているトロポミオシンの構造が変化することで、トロポミオシンによってさえぎられていたアクチンのミオシン結合部位が露出し、アクチンフィラメントがミオシンと作用できるようになり、よって筋収縮が起きる。こうしてサルコメアが収縮することで、筋収縮が起きている。\nカエルのふくらはぎの骨格筋にへの電気刺激の収縮量の測定実験(キモグラフを用いる)で、つぎの段落で説明する単収縮・強縮のしくみが事が明らかになってる。\nカエルなどの実験動物の骨格筋に運動神経を付けたまま取り出したものを、神経筋標本という。\n実験動物の座骨神経(ざこつ しんけい)のついたままの神経筋標本に、1回の短い電気刺激を与えると、収縮したのち、すぐ(0.1秒ほど)に弛緩(しかん)する。この1回の電気刺激で起こる1回の収縮を単収縮(たんしゅうしゅく、twitch)という。単収縮のことを、れん縮(れんしゅく, spasm)ともいう。\n筋肉が弛緩する前に次の電気刺激を行うことを繰り返しつづけると、持続的で強い収縮を行う。この強い収縮を強縮(きょうしゅく、tetanus)という。\n動物の骨格筋の運動での収縮は、普通は、強縮である場合が多い。\n強縮でも、刺激の頻度が低ければ(1秒間に15回の割合)、測定される波形は、単収縮が重なり合ったようなギザギザした形の不完全強縮になる。刺激の頻度がじゅうぶんに多ければ(1秒間に30回の割合)、完全強縮になる。\n筋繊維はニューロンによって制御されているため、神経線維の「全か無かの法則」と同様、1本の筋繊維も、刺激の強さが収縮を起こせる一定値(閾値)以上の強さの刺激があれば筋繊維は収縮し、刺激が一定の強さに届かなければ収縮しない。\n閾値は筋繊維の一本一本ごとに違う。\n一本の運動ニューロン(motor neuron)が枝分かれして多くの筋繊維を制御する。この一本の運動ニューロンによって管理されている筋肉を、それを管理する運動ニューロンとまとめて、運動単位(うんどうたんい)という。\n筋肉が収縮するさいの直接のエネルギー源はATPである。筋肉の収縮は、ATPを消費して、ATPがADPに変化する。ミオシンの頭部にATP結合部位があり、このミオシン頭部がATP分解酵素としても働き、こうしてATPを分解することで筋収縮のエネルギーを得ている。\n急激な運動などで、呼吸や解糖によるATP合成が追いつかない場合は、筋肉にたくわえられているクレアチンリン酸(phosphocreatine)を用いて、ATPを合成する。\nクレアチンリン酸は、ATPと同様に高エネルギーリン酸結合を持っている。\n休息時などでATPが十分にあるときに、ATPのエネルギーを用いて、クレアチンからクレアチンリン酸が合成され、クレアチンリン酸が貯蔵され、エネルギーを蓄えている。\n筋線維を取り出し、それに光またはX線を当てると、光の回折(かいせつ)が見える。その回折光のパターンは、筋線維の横紋の周期に由来していると考えられている[3]。\nこれを用いて、筋節(きんせつ)の長さを測定できる。筋節とは、横紋の1周期ぶんの長さのことで、普通は Z帯から次のZ帯までの長さ を採用する[4]。\n[5]\nシビレエイやデンキウナギなどが発電器官をもつ生物には発電器官がある。\n発電器官は筋肉が変化した発電板()が多数重なってできている。\n発電版には片側に神経が分布している。\n発電版は普段は外側が+で内側が-であり、発電器官を電流が流れることはないが、\n興奮時は神経が分布している側の電位が逆になり、発電板が直列につながることで高電圧を生じる。\nシビレエイは50~60V、デンキウナギは800Vの起電力が測定される。\nホタルは腹部に発光器官を持つ。\n発光器官をもつ生物には、ホタル、ホタルイカ、オキアミなどが挙げられる。\nホタルの発光器官は発光細胞層()と反射細胞層()からなる。\n発光細胞層から発光物質を分泌し、気管から取り込んだ酸素と反応させ発光させ、反射細胞層で光を外側に反射する。\nウミホタルは口の近くの発光腺から発光物質を分泌する。\nこの物質が体外で酸化し発光する。\nホタルは、雌と雄とが出会う手段として、自己の発光を利用している。\n・ルシフェリンとルシフェラーゼ\nホタルの尻尾にある器官に、発光物質のルシフェリンがある。ルシフェリンが、酵素のルシフェラーゼが触媒として、ATPと酸素O2と反応して、酸化ルシフェリン(オキシルシフェリン)になる。この反応に伴って、発光が起こる。\n・ルシフェリンの応用(おぼえなくて良い。範囲外。参考。)\nよってATPの量の測定手段として、ルシフェリンと蛍光光度計を用いることにより、ATP量が測定できる。微生物量測定などのバイオテクノロジーにもルシフェリンが利用されている。また、遺伝子組み換え実験などでも、暗闇で光らせられるので、目的の細胞を見分けるためのマーカーとしても利用されている。\nATP量の測定については、反応する前のルシフェリンとルシフェラーゼの量を、一定にしておけば、ATPの量によって発光の強さが変わるからである。ところで、ほとんどの細菌は体内にATPをもつから、ルシフェリンを用いて、細菌の量を測定できる。つまり、微生物による汚染の度合いを測定できる。\n遺伝子組み換えについては、ルシフェラーゼをつくる遺伝子を目的の細胞に導入しておくと、ルシフェラーゼの導入された植物は、暗闇で光り輝くので、融合が成功したかどうかを確かめることができる。ルシフェラーゼ遺伝子のように、細胞融合が成功したかどうかを確かめるための遺伝子をマーカーという。\n動物の体色が変化する現象を体色変化()と呼ぶ。\n体色変化する生物には、ヒラメやカメレオンなどが挙げられる。\nメダカの体色変化は、色素胞(しきそほう)と呼ばれる細胞で、内部にある色素果粒()が、神経やホルモンの働きにより、凝縮したり拡散したりすることで起こる。\n生物が能動的に音を出すことを発音と呼び、\n発音を行う器官を発音器官()と呼ぶ。\nヒトの発音器官は咽頭部の声門(glottis)である。\n声門の軟骨の間にある声帯(vocal cord)と呼ばれる部分が、通過する空気によって振動して声が出る。\n特定の物質を分泌する器官を腺(せん、gland)と呼ぶ。\n腺には、体外に分泌する外分泌腺(がいぶんぴせん、exocrine gland)と、体内に分泌する内分泌腺(ないぶんぴせん、endocrine gland)がある。\n内分泌腺はホルモンを体内の血流に分泌する。内分泌されたホルモンは血流によって全身に運ばれる。\n外分泌腺には、皮膚で汗を分泌する汗腺(かんせん、sweat gland)や、口で唾液を分泌する だ腺(だせん、salivary gland)などがある。\n分泌物は腺細胞()で作られ、排出管()を通り分泌される。\n刺激をある器官から別の器官へ伝える器官系を神経系(しんけいけい、nervous system)と呼ぶ。\n神経系はニューロン(neuron)と呼ばれる神経細胞から成り立っている。\nニューロンは、細胞体(さいぼうたいcell body)と、細胞体の周りの多数の樹状突起(じゅじょうとっき、dendrite)と、細胞体から伸びる一本の軸索(じくさく、axon)からなる。\n軸索はシュワン細胞(Schwann cell)でできた神経鞘(しんけいしょう、neurilemma)で囲まれており、軸索と神経鞘をあわせて神経線維(nerve fiber)と呼ぶ。\n神経線維には髄鞘のある有髄神経線維()と、髄鞘のない無髄神経線維()とがある。\n有髄神経線維の髄鞘のないくびれをランビエ絞輪(ランビエこうりん、Ranvier's constriction ring)と呼ぶ。\nニューロンとニューロンの連結部をシナプス(synapse)と呼ぶ。\n刺激を受けた細胞が休止状態から活動状態になることを興奮(こうふん、excitation)と呼ぶ。\n興奮がニューロンの中を伝わることを伝導(でんどう、conduction)と呼び、\nシナプスを介してあるニューロンから別のニューロンへ刺激の情報が伝わることを伝達(でんたつ、transmission)と呼ぶ。\n伝導はニューロンの電気的変化で伝えられる。この電気を起こす正体はニューロンの細胞膜にあるイオンポンプやイオンチャネルの働きである。そのため、神経細胞は体液に取り囲まれている。神経での伝導は、金属の電気伝導などとはちがい、ニューロンの興奮の伝導では電気が伝わるのに時間が掛かる。(無髄神経線維を興奮が伝導する速さは1m/秒程度。\n有髄神経線維を興奮が伝導する速さは100m/秒程度である。)\nニューロンの細胞内は刺激を受ける前、細胞内は負に帯電しており、膜外を基準にすると膜内は -90mV ~ -60mV ( 平均 -70mV ) の負の電位をもっており、このような刺激を受ける前の膜内の負の電位を静止電位(せいしでんい、resting potential)という。\nニューロンの一部に刺激を受けると、一瞬、刺激を受けた場所の電位が変化する。\nまず、刺激を受けた直後、刺激を受けた場所の細胞内の電位は一瞬、細胞の内側が外側よりも高い電位になり、細胞内は約+40mVの電位をもつ。その後、すぐ(約1/1000秒)もとの静止電位にもどる。このような電位の変化を活動電位(かつどうでんい、action potential)という。\n神経の興奮の正体は、活動電位の発生である。\nニューロンの一部分の興奮は、ニューロン上のとなりの細胞へと伝わっていく。これが伝導(でんどう)である。その結果、興奮は、ニューロン線維の両側へと伝導していき、ニューロンの両端まで伝わっていく。\n神経細胞の活動電位にも、神経細胞の膜表面にあるイオンチャネルとナトリウムポンプが関係している。\n1\n2\n3\n4\n1本のニューロンは、刺激の強さが一定値より弱いと興奮しない。この、さかいめの一定値を閾値(いきち)という。閾値以上だとニューロンは興奮し、その興奮の大きさは刺激の強さによらず一定であり、活動電位の大きさは一定である。\nニューロンは、刺激に対して、興奮するか、興奮しないか、のどちらか2通りだけである。\nニューロンの、このような反応の現れ方を全か無かの法則(ぜんかむかのほうそく、all-or-none law)と呼ぶ。\nこのようにして軸索のある箇所に活動電位が起こると、興奮部と隣接する静止部の間に電流が生じ、その電流を活動電流(かつどうでんりゅう、action current)という。活動電流によって隣(となり)の静止部に興奮が起き、さらに、その興奮によって、そのまた隣の静止部に興奮が起き・・・、というように活動電流によって次々と興奮が伝わっていく。\nこれを興奮の伝導(でんどう、conduction)という。\n興奮をした直後の部位は、しばらく興奮しない状態になる。しくみは、イオンチャネルがしばらく不活性になるからである。この興奮直後の部位の刺激に応答しない時期のことを、不応期(ふのうき)という。\nこのため、刺激を受けた場所には興奮は戻らず、刺激は静止している側へと伝わっていく。\n興奮を伝わる速度は、無髄神経繊維よりも、有髄神経線維のほうが、興奮の伝わる速度が速い。\nこの理由は、有髄神経繊維では髄鞘(ずいしょう)は電気を通しにくい電気絶縁体であり、活動電流がランビエ絞輪(ランビエこうりん)から隣のランビエ絞輪へと飛び飛びに伝わるためである。このように有髄神経線維にて、興奮がとびとびに絞輪から次の絞輪へと伝導する現象のことを跳躍伝導(ちょうやくでんどう、 saltatory conduction)という。\n無髄神経繊維を興奮が伝導する速さは1m/秒程度で、\n有髄神経繊維を興奮が伝導する速さは100m/秒程度である。\n文献によって、伝導速度や太さや温度などの細かな数値は、少し違う。なので、細かい数値は、おぼえなくて良い。たとえばネコの場合、文献によって、伝導速度が120だったり110だったり100だったりする。だいたいの数値を把握すればよい。\n※参考文献(伝導速度の数値の出典) \nその他、各社の教科書や参考書などを参考文献・引用文献にした。\n軸策が太いほど、伝導速度が速い。また、温度が40℃未満なら、温度が高いほど、伝導速度が速い。40℃以上に温度が高くなると、伝導しにくくなる。\nイカやミミズは、太い神経軸策(巨大神経軸策)を持っており、そのぶん、興奮が伝わる速度も速い。逃げるさいなど、巨大軸策のおかげで信号が早く伝わるので行動の開始が早く、生存に有利だったと考えられている。\nふつう、神経は多数の軸策からなっている。\n刺激が大きいほど、神経細胞の興奮の発生頻度が多くなる。なぜなら刺激が強いほど、個々のニューロンでの興奮の頻度も増え、また、多くの感覚細胞が反応することでニューロンも多数が反応するからである。\n脳で感じる興奮の大きさの感覚の正体は、神経細胞から伝えられた興奮の発生頻度である。興奮の頻度が高いほど、脳で感じる興奮が大きくなる。\n一つの軸索の先端と、他の神経細胞または筋肉などの効果器との間の部分をシナプスという。神経と筋肉との間のこともシナプスという。一つの神経の信号は、シナプスを経て、つぎの神経または効果器へと伝わる。\nシナプスには、小さな隙間(すきま、かんげき)があり、シナプス間隙(シナプスかんげき)という。\nシナプスから次のニューロンへと信号を伝える方法は、化学物質の分泌(ぶんぴ、ぶんぴつ)による。そのシナプスでの分泌物を神経伝達物質(しんけいでんたつぶっしつ、neurotransmitter)といい、軸索の末端から分泌される。神経伝達物質には、ノルアドレナリンやアセチルコリン、セロトニン(serotonin)、γアミノ酪酸(ガンマアミノらくさん)、ドーパミン(dopamine)などがある。\n交感神経の末端からはノルアドレナリンが分泌される。副交感神経の末端からはアセチルコリンが分泌される。筋肉を動かす神経である運動神経の末端からはアセチルコリンが分泌される。\n軸索の末端の内部には、つぶ状のシナプス小胞(シナプスしょうほう、synaptic vesicle)という物質があり、このシナプス小胞に伝達物質が含まれている。シナプスに興奮が伝わるとシナプス小胞から、アセチルコリン(acetylcholine)、ノルアドレナリン(noradrenaline)などの神経伝達物質(neurotransmitter)が分泌されることで、となりの細胞に興奮が伝えられる。\n軸索の末端に、電位に依存するカルシウムチャネル( Ca2+チャネル )があり、このCa2+チャネルに活動電位が到達することで、このチャネルが開き、Ca2+が軸策末端の細胞内に流入する。このCa2+の流入によって、シナプス小胞の膜が 軸策末端の膜(シナプス前膜) と融合し、神経伝達物質がシナプス間隙に放出される。\nシナプスのうち、放出側の細胞のほうをシナプス前細胞(シナプスぜんさいぼう)といい、その放出側のシナプス前細胞の細胞膜を、シナプス前膜(シナプスせんまく)という。シンプスのうち、受け取り側の細胞のほうをシナプス後細胞(シナプスこうさいぼう)といい、そのシナプス後細胞の細胞膜をシナプス後膜(シナプスこうまく)という。\n受取り側の、となりの細胞の細胞膜には、伝達物質の受容体があり、さらに、その受容体によって働きの変わるイオンチャネルがある。(受容体がイオンチャネルを兼ね備えている場合もあるし(イオンチャネル型受容体)、受容体とイオンチャネルがそれぞれ存在する場合もある。 ※ 高校の範囲外だろう。)\nさて、伝達物質に依存するイオンチャネルが、受け取り側の細胞膜に存在している。伝達物質依存性のイオンチャネルが、伝達物質と受容体との結合によって働いて、興奮についての信号がとなりの細胞に伝わる。シナプスでの興奮が一方向( シナプス → となりの細胞 )に伝達され、信号は逆流はしない。\nシナプスを介してある軸索から、となりの細胞へ興奮についての情報が伝わることを伝達(でんたつ)と呼ぶ。シナプスから出る化学物質によって、興奮の情報は伝達される。\nシナプスで放出される神経伝達物質には、興奮をさせる興奮性の物質と、興奮をさせにくくする抑制性の物質とがある。興奮性の物質にはアセチルコリンやノルアドレナリンがある。抑制性の物質には、γアミノ酪酸(ガンマアミノらくさん、GABA)やグリシンがある。\nさて、興奮性の神経伝達の場合では、Na+チャネルが開き、Na+が細胞内に流入して、活動電位が生じる。シナプスに限らず、神経細胞の興奮は、ナトリウムイオンの神経細胞内への流入によって起きている。いっぽう、抑制性の神経伝達物質の場合は、Cl-チャネル(読み:「クロライドチャネル」)が開き、Cl-が細胞内に流入する。\nこれらのイオンチャネルの働きによって、受け取り側の細胞での膜電位が変わるので、膜電位の高低によって、興奮や抑制の、コントロールが行われている。\nNa+チャネルが開けば膜電位は高まり、膜電位が高まれば、受け取り側の細胞は興奮をする。\nいっぽう、Cl-チャネルが開けば膜電位は下がり、膜電位が低ければ、受け取り側の細胞は抑制される。\nNa+チャネルとCl-チャネルの両方が開けば、膜電位の高低が打ち消しあう。\nしだいに神経伝達物質は、再吸収されたり、あるいは酵素(コリンエステラーゼなど)によって分解されたりするので、興奮や抑制は、しだいに終わっていく。そして、次に来る信号が伝達可能になる。\n興奮性の伝達物質を放出するシナプスを興奮性シナプス(excitatory synapse)といい、いっぽう、抑制性の伝達物質を放出するシナプスを抑制性シナプス(inhibitory synapse)という。\nシナプスの後膜の電位のことを後電位(こうでんい)あるいは後膜電位(こうまくでんい)という。興奮性シナプスの後電位のことを興奮性シナプス後電位(EPSP:excitatory postsynaptic potential)という。抑制性シナプスの後電位のことを抑制性シナプス後電位(IPSP:inhibitory postsynaptic potential)という。\nシナプスで情報がシナプス前細胞からシナプス後細胞に伝わるのに、約1ミリ秒~2ミリ秒がかかり、この遅れ(おくれ)のことをシナプス遅延(シナプスちえん)という。\n神経毒のサリンは、アセチルコリンの分解を行う酵素(コリンエステラーゼ)の働きを、さまたげる。(数研の(チャート式だけでなく)専門生物の検定教科書にも書いてある。)\n神経系の種類には、神経細胞(ニューロン)が体全体に散在し網目状に連絡している散在神経系(diffuse nervous system)と、脳・脊髄などに神経細胞(ニューロン)のあつまった集中神経系(concentrated nervous system)がある。\n脳・脊髄・神経節などをまとめて中枢神経系(ちゅうすうしんけいけい、central nervous system)という。集中神経系の動物の神経のうち、中枢神経以外の部分の神経を末梢神経系(まっしょうしんけいけい)という。\n散在神経系をもつ生物にはイソギンチャクやヒドラやクラゲなどがあげられる。\n集中神経系は、脊椎動物などにみられる。ミミズやプラナリアの神経は、集中神経系である。バッタ・ハチなど昆虫の神経系は集中神経系である。\n感覚器で受けた刺激の情報は感覚神経によって脳(のう、brain)へ送られ、\n脳はその情報を判断し、\n運動神経によって効果器に情報が送られ反応する。\n脊椎生物の脳は大脳(だいのう、cerebrum)、間脳(かんのう、diencephalon)、中脳(ちゅうのう、midbrain)、小脳(しょうのう、cerebellum)、延髄(えんずい、medulla oblongata)からなる。\nヒトの脳には約一千億個のニューロンがあり、そのニューロンには数千のシナプスがあり、複雑なネットワークを形作っている。\n大脳の構造は、左右の半球に分かれており、それら左右を結ぶ脳梁(のうりょう、corpus callosum)がある。\n両半球は表層は大脳皮質(だいのうひしつ、cerebral cortex)でおおわれており、ニューロンの細胞体があつまって灰色をしているため 灰白質(かいはくしつ)という。\n内部には大脳髄質(だいのうずいしつ、cerebral medulla)があり、多くの神経線維が通っていて白色をしているため 白質(はくしつ)という。\n大脳皮質には、新皮質(しんひしつ、neocortex)と、古皮質(こひしつ)および原皮質(げんひしつ)からなる辺縁皮質(へんえんひしつ)がある。ヒトの大脳では新皮質が発達している。ヒトの古皮質および原皮質は、大脳に囲まれており、そのため内側に古皮質および原皮質が隠れている。\n新皮質には視覚・聴覚など感覚の中枢があり( 感覚野(かんかくや、sensory cortex) )、また、運動の中枢があり( 運動野(うんどうや、motor cortex) )、また、記憶・思考・理解などの学習を必要とする精神活動をつかさどる中枢( 連合野(れんごうや、association cortex) がある。\n辺縁皮質は、本能などを司る。辺縁皮質にふくまれる海馬(かいば、hippocampus)という部分が記憶を主につかさどる。\n中脳・間脳・延髄を 脳幹(のうかん、brainstem) という。\n間脳の位置は中脳と大脳の間に位置し、構造は視床(ししょう、thalamus)と視床下部(ししょうかぶ、hypothalamus)に分かれている。視床下部に自律神経系の中枢があり、体温の調整や内臓の働きを調整している。また、視床下部は脳下垂体(のうかすいたい)とつながっており、ホルモンの分泌を調整しており、血糖値を調整している。視床は大脳への感覚を中継する。\n中脳の構造は、間脳の後方、小脳の上方に位置している。\n中脳の働きは、間脳と小脳との通路になっている。眼球運動や瞳孔反射の中枢、聴覚反射、姿勢制御などを司る中枢がある。\n小脳の構造は、大脳の後下部に位置している。\n小脳には、体の平衡、筋肉の運動機能を司る中枢がある。\n延髄の構造は、脳の最下部に位置し、脊髄に続いている。\n延髄には、呼吸・血液循環(心臓の拍動)・消化などを司る中枢がある。\n延髄より下の体の右側は、脳の左側が担当する。延髄より下の体の左側は、脳の右側が担当する。なぜなら、神経が延髄を通るときに、多くの神経で、左右が交差するからである。したがって脳の右側が損傷すると、体の左側が麻痺(まひ)・不随(ふずい)になる。\n参考: 血液脳関門(けつえき のうかんもん)\n(※未執筆)\nさて、中学で習うように、生物学の神経分野でいう「反射」とは、たとえば熱いものに手が触れたときには、思わず手を引っ込めるように、意識とは無関係にすばやく行われる反応である。\nまた、大脳を介さない反応もあり、脊髄がそのような、大脳を介さない反射の中枢になっているので、そのように大脳を介さないで脊髄が中枢になっている反射のことを脊髄反射(せきずいはんしゃ、spinal reflex)という。\n脊髄反射には屈筋反射(くっきんはんしゃ、flexor reflex)やしつがい腱反射(しつがいけんはんしゃ、膝蓋腱反射、knee jerk)などの反射がある。\nしつがい腱反射とは、ひざの骨のすぐ下を軽く叩くと、足が勝手に跳ね上がる現象のことである。\nしつがい腱反射なら、打撃により、ひざ部の筋紡錘が興奮し、その興奮による信号が感覚神経を伝わっていく。\nしつがい腱反射に限らず一般に反射のさい、興奮が伝わる経路のことを 反射弓(はんしゃきゅう、reflex arc)と呼ぶ。\nしつがい腱反射の場合の反射弓は \nである。\n反射は大脳を経由しないため無意識で素早く行われる。\nしつがい腱反射は、大脳を介さないので、脊髄反射に分類される。\nしつがい腱反射では、しつがい腱をたたくと、大腿四頭筋が縮み、膝関節が伸びる反射を起こす。しつがい腱反射での神経中のシナプスの数は、しつがい腱反射では介在ニューロンを経由せず、よってシナプスは1つである。\n屈筋反射(くっきんはんしゃ)では、例えば熱いものに触れた時、手を思わず引っ込めるような、屈筋が縮む反射を起こす。屈筋反射での神経中のシナプスの数は、屈筋反射では介在ニューロンを経由するため、シナプスは2つである。\n屈筋反射は、大脳を介さないので、脊髄反射に分類される。\nその他の反射として、口に物を入れたときの、だ液の分泌も反射である。だ液の反射中枢は延髄にある。暑いときの発汗も反射である。\n目の瞳孔が、光を受けると縮小する、瞳孔の縮小も反射である。瞳孔の反射中枢は中脳にある。\n\n内臓の働きや、消化や、体内のホルモンや血糖の調整なども意識とは無関係に行われるが、これらの現象も「反射」であるとして分類されている(※ 検定教科書の範囲)。内臓など、こういった働きを制御している神経のことを自律神経と言うので、「自律神経」が内臓などの「反射」を調節していると言える。\n末梢神経系には、脳から伸びる脳神経(cranial nerves)と、脊髄から伸びる脊髄神経(spinal nerves)とがある。\nまた、末梢神経系は、体の感覚や運動に関する体性神経系(たいせいしんけいけい、somatic nervous system)と、\n意思とは無関係に働く自律神経系(じりつしんけいけい、autonomic nervous system)に分けることもできる。\n体性神経系には、感覚神経(sensory nerve)と運動神経(motor neuron)がある。\n自律神経系には、交感神経(こうかんしんけい、sympathetic nerve)と副交感神経(ふくこうかんしんけい、parasympathetic nerve)がある。交感神経と副交感神経は対抗的に働くことが多い。()\nヒトの脳神経は12対であり、脊髄神経は31対である。\n現過程・新課程の基礎なし科目「生物」に詳細を載せたのでそちらを見てください。\nその他、高校の検定教科書などを参照。\n[1]\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%94%9F%E7%89%A9/%E7%94%9F%E7%89%A9I/%E7%92%B0%E5%A2%83%E3%81%A8%E5%8B%95%E7%89%A9%E3%81%AE%E5%8F%8D%E5%BF%9C"} {"text": "高等学校生物 > 生物I > 環境と植物 \n中学や、高校生物Iの他の単元で説明した内容の復習である。\nすでに読者が理解できていれば、節『植物の反応と調節』へと進んで、新たな内容を勉強すること。\n植物は一か所に固定して暮らすため、\n外部環境の変化に大きな影響を受ける。\n植物は外部環境の変化に対して、\n自身の成長などを調節することで対応する。\nこのページでは、\n植物と水分・光の関係、\n植物の発芽・成長・花芽形成の調節、\nなどを扱う。\n環境のうち生物に影響を与えるものを環境要因と呼ぶ。\n植物に対する環境要因は光・水・大気(酸素・二酸化炭素)、土壌などがある。\n光は、植物が光合成を行うためのエネルギー源となっている。\n水は、化学反応を行う場となったり、様々な物質を輸送している。\n植物は光合成だけでなく呼吸も行っている。酸素はその呼吸に必要であり、二酸化炭素は光合成に必要である。\n土壌中の栄養塩類は、植物が成長するために必要である。\n水は植物に必要なものの一つで、\n植物は水を根の根毛から吸収し、\n茎の道管を通して移動し、\n葉の気孔から蒸散する。\n根の外側には表皮細胞やその表皮細胞が変形した根毛があり、吸水を行っている。\nその後、水は皮層の細胞やその間を通り、道管・仮道管へ到達する。\n根の内部の浸透圧はその外部の浸透圧より高いので、\n根は吸水する。\nこの圧力を根圧(root pressure)と呼ぶ。\n水分子は互いに引き合う凝集力()をもっている。\nこの凝集力によって水は導管で途切れることなく続いている。\n蒸散(transpiration)にはクチクラ蒸散と気孔蒸散があるが、ほとんどは気孔蒸散である。\n蒸散量の調節は気孔の開閉によって行われる。\n蒸散は、水を引き上げる力となっている。\n気孔は、2つの孔辺細胞が向かい合ってできている。\n孔辺細胞の細胞壁は、内側が外側より厚くなっている。\n水分を吸収して膨圧が高くなると、外側に曲がり、気孔が開く。\n根圧、水分子の凝集力、蒸散によって、\n植物は水を吸収し移動させている。\n植物は光エネルギーにより、\n水と二酸化炭素から、\nグルコースを合成している。\nこれを光合成(photosynthesis)と呼ぶ。\n植物は光合成で二酸化炭素から酸素を作るとともに、\n呼吸で酸素から二酸化炭素を作っている。\nしたがって、実際の光合成速度(photosynthetic rate)は、見かけの光合成速度(apparent photosunthetic rate)と呼吸速度(respiration rate)を足したものである。\nイギリスのフレデリック・ブラックマンは、\n光合成速度は、光の強さ、二酸化炭素濃度、温度のうち最も不足したもの(限定要因(limiting factor))によって決まるとする限定要因説()を唱えた。\n二酸化炭素濃度と温度を一定にし、光の強さを変えてみる。\n光の強さと光合成速度をグラフにしたとき、\n光合成速度と呼吸速度が等しく、見かけの光合成速度がゼロになる点を補償点(compensation point)と呼ぶ。\nまた、光の強さを上げても光合成速度がそれ以上上がらなくなる点を光飽和点(photic saturation point)と呼ぶ。\n日向を好む陽生植物(sun plant)では、補償点や光飽和点は比較的高く、\n弱い光でも生育できる陰生植物()では、補償点や光飽和点は比較的低い。\n陽生植物にはクロマツ、ソラマメ、ススキなどがあり、\n陰生植物にはブナ、コミヤマカタバミなどがある。\nまた、同じ植物でも、日当たりの良いところの葉(陽葉, sun leaf)は補償点や光飽和点は比較的高く、\n日当たりの悪いところの葉(陰葉, shade leaf)は補償点や光飽和点は比較的低い。\n光の強さと温度を一定にし、二酸化炭素濃度を変えてみる。\n二酸化炭素濃度と光合成速度をグラフにすると、\n二酸化炭素濃度が上がるとともに光合成速度も上がるが、\n二酸化炭素濃度がある一定の値以上になると光合成速度は上がらなくなる。\nこれは、二酸化炭素濃度が低いときは二酸化炭素濃度が限定要因となり、\n二酸化炭素濃度が高いときは二酸化炭素濃度以外が限定要因となっているためである。\n光の強さと二酸化炭素濃度を一定にし、温度を変えてみる。\n温度と光合成速度をグラフにすると、\n温度がある一定の値の時に光合成速度が最も上がり、\n温度が低すぎたり高すぎたりすると光合成速度は下がる。\nこれは、光合成を行う酵素の働きに最適な温度があるためである。\n休眠(dormancy)した植物の種子が芽を出し発育を始めることを発芽(Germination)と呼ぶ。\n発芽には、水分・温度・酸素などの条件がそろうことが必要である。\n休眠した種子の発芽には、水が必要である。\n種子の周りには水を通しにくい種皮と呼ばれるものがあり、これが種子の休眠を維持している。\n種子の休眠にはアブシシン酸(abscisic acid)という植物ホルモンが関係している。アブシシン酸は発芽を抑制する。\n発芽にはジベレリン(gibberellin)と呼ばれる別の植物ホルモンが、発芽を促進している。\nこのようにジベレリンとアブシジン酸は、種子の発芽に関して、拮抗的(きっこうてき)に、対立する。\nイネやコムギの種子では、胚がジベレリンを合成し分泌する。そしてジベレリンは胚乳の外側にある糊粉層(こふんそう)の細胞に働きかけることで、酵素のアミラーゼの発現を誘導して、アミラーゼが胚乳にふくまれるデンプンを分解することでグルコースなどの糖が生成され、これらの糖が発芽のためのエネルギー源になる。\nレタス、マツヨイグサ、タバコ、シソなどは発芽に光を必要とする種子であり、光発芽種子(ひかりはつがしゅし、photoblastic seed)という。\nいっぽう、カボチャ、ケイトウ、キュウリなどは発芽に光を必要としない種子であり、暗発芽種子(あんはつがしゅし、dark germinater)という。\nレタスの種子(光発芽種子)は、赤色光(せきしょくこう、波長660nm)を当てると発芽を促進し、遠赤色光(えんせきしょくこう、波長730nm)を当てると発芽が打ち消される。\n赤色光と遠赤色光を交互にあてた場合、最後に照射された光の波長によって発芽の有無が決まる。\n最後に赤色光を当てた場合には発芽して、いっぽう最後に遠赤色光を当てた場合には発芽しない。\nこのような仕組みは、植物が、他に植物の多い場所では発芽しないようにするための工夫であると考えられている。なぜなら、光は植物の葉を通過すると、赤色光などは吸収されて遠赤色光だけになる。もし、他に植物が多いと、他の植物に地中の栄養や水分などを奪われやすいからである。\n光発芽種子の発芽には、フィトクロム(phytochrome)という色素タンパク質が受容体として関係している。フィトクロムのように、光を受け取る受容体を光受容体(ひかりじゅようたい)という。フィトクロムには2つの型があり、赤色光を感じる型(PRまたはPrと表記)と、遠赤色光を感じる型(PFRまたはPfrと表記)がある。これらは光を吸収することによって相互に変換しあう。PRは赤色光を吸収することでPFRに変化する。PFRは遠赤色光を吸収することでPrに変化する。このフィトクロムの2つの型によって、最後に当たった光の波長が赤色光か遠赤色光かを区別している。\nPFR型が増えるとジベレリンの合成が誘導され、ジベレリンによって発芽が促進される。\nいっぽう、他の植物が生い茂っている場所などにある種子では、まわりの植物の葉緑体が赤色光を吸収して、吸収されなかった遠赤色光が種子に届くので、種子中のフィトクロムではPFRが遠赤色光を吸収してPRになってるため、種子中にPR型フィトクロムが多く、PFR型は少ない。\nこうして種子は花芽形成や種子の発芽を調節している。\nレタスの種子の発芽はジベレリンによるものなので、たとえ暗所であっても、レタスの種子にジベレリンを外部から与えれば、レタスの種子は発芽する。\n植物が刺激の方向に対して一定の方向に屈曲する性質を屈性(くっせい、tropism)と呼び、\n刺激の方向に関係なく運動する性質を傾性(けいせい、nasty)と呼ぶ。\n屈性には、光屈性(phototropism)、重力屈性(gravitropism)、水分屈性(hydrotropism)、化学屈性(chemotropism)、接触屈性(thigmotropism)などがある。\n刺激の方向へ向かって屈曲することを正の屈曲といい、\nその逆を負の屈曲という。\n傾性には、傾熱性(thermonasty)、傾光性(photonasty)、傾触性(aeschynomenous)などがある。\n[1]\nオーキシン(auxin)という植物ホルモンが、光屈性に関係している。オーキシンは茎の先端部で合成される。そして、オーキシンは光の当たらない側に移動する。そして、オーキシンの多い側(つまり光の当たらない側)では、細胞が、より伸張するため、結果的に植物が曲がる。\n植物の天然のオーキシンはインドール酢酸(インドールさくさん、IAA、indole acetic acid)である。\n光屈性の研究にはダーウィン、ボイセン・イェンセン、ウェント、ケーグルらの研究がある。\n1880年、進化論でも有名なダーウィン父子(イギリス)は、\nカナリークサヨシ(学名:Phalaris canariensis)の幼葉鞘を用いて一方向から光を当てる光屈性の実験を行った。\nそのまま光を当てると、光の方向に屈曲した。\n幼葉鞘(ようようしょう、英: coleoptile、子葉鞘とも)を土の中へ埋め、先端部だけ土の中から出すと、先端部の下方で屈曲した。\n先端部を錫箔で覆うと、屈曲しなかった。\nこれらから、幼葉鞘は、光の方向を感知するのは先端部であり、その刺激に反応して先端部よりも下の部位が屈曲することがわかった。\n1913年、デンマークのボイセン・イェンセンは、\nマカラスムギ(学名:Avena sativa)の幼葉鞘を用いて一方向から光を当てる実験を行った。\n先端部を切り、先端部と基部との間に、ゼラチン片を挟むと、屈曲した。ゼラチン片は水を通す。\n光側に雲母片を刺すと、屈曲した。\n影側に雲母片を刺すと、屈曲しなかった。\nこれらから、幼葉鞘は、\n光を先端部で受容すると、\nゼラチン片を通る成長促進の物質が作られ、その成長促進物質は光の当たらない側に移動して、そして下方に移動して作用することがわかった。そしてゼラチン片は水を通すことから、成長を促進する物質は、水溶性であることを示唆し、実際に水溶性であることが、のちに分かっている。\n1928年、オランダのウェントは、\nマカラスムギの幼葉鞘を用いて一方向から光を当てる実験を行った。\nまず、先端部だけを寒天片に乗せ、一方向から光を当てる。\n次に、その寒天片を光側と影側に半分に分け、\nそれぞれを先端部を切除した幼葉鞘に乗せる。\nすると、光側の寒天片を乗せた幼葉鞘は成長しなかったが、\n影側の寒天片を乗せた幼葉鞘は成長した。\nこれらから、先端部で作られた化学物質は、\n影側へ移動してから下降し、\n成長を促進することがわかった。このような植物成長の促進物質があることが分かり、オーキシン(auxin)と名づけられた。オーキシンのように、微量で植物の成長や作用を調節する物質をまとめて植物ホルモンという。\nまた、ウェントは屈曲の角度から成長促進物質の濃度を調べるアベナ屈曲試験法(avena curvature test)(別名:アベナテスト)を考案した。マカラスムギの学名 avena sativa(アベナ サティバ)の属名に由来する。\n1934年、ドイツのケーグルは、\n植物の、これらの成長促進物質をオーキシン(auxin)と名づけた。このとき、まだオーキシンの化学構造ははっきりしていなかった。\nのちに植物の天然のオーキシンはインドール酢酸(インドールさくさん、IAA、indole acetic acid)という物質であることを突き止めた。\nオーキシンは、茎の先端から根の方向へと移動する。逆には移動しない。これは茎をさかさまにしても、移動方向は、茎頂→根のまま変わらない。たとえば幼葉鞘を切り取ってさかさまにして、上側(根の側)をオーキシンをふくんだ寒天片に接触させても、倒立した幼葉鞘ではオーキシンは移動しない。このようにオーキシンの移動に茎→根という方向性があることを極性(きょくせい)といい、このような極性にしたがったオーキシンの移動のことを極性移動(きょくせい いどう)という。\n植物の細胞膜にはオーキシンを取り入れるタンパク質(AUX1)と、オーキシンを排出するタンパク質(PIN)があることが分かっている。これらのオーキシン輸送タンパク質が、植物の器官ごとに、それぞれ細胞の特定方向の面に片寄っているので、結果的にオーキシンの極性移動が行われる。\nオーキシンが移動する仕組みについては、まだ未解明の部分があり、学者たちの研究中である。\n今のところの説は、オーキシン(インドール酢酸)は、細胞壁や細胞膜に作用していると考えられており、酸の水素イオン(H+)が関わっているとされている。\n根の重力屈性の仕組みは、根冠の細胞中にあるアミロプラストというデンプンをふくむ細胞小器官が多くあり、このアミロプラストが重力によって下方に移動し、その細胞内の下部にアミロプラストが集まることが、オーキシンを輸送するオーキシン輸送タンパク質(AUX1やPIN)に、何らかの影響を与えているとされている。\nオーキシンの最適濃度は植物の器官によって異なる。\nオーキシンの最適濃度は 茎>側芽>根 の順となっている。さらに、オーキシンの濃度が高すぎると、成長が抑制される。\nオーキシンは極性移動とは別に、重力によって移動する。幼葉鞘を水平にするとオーキシンは重力によって下部に集まる。茎と根でオーキシンの最適濃度が違い、最適濃度を大幅に越えると、むしろ抑制されるため、結果的に茎と根が、上図『水平にした幼葉鞘の重力屈性』のように曲がって成長していく。重力と同じ方向に曲がる根のがわが正の重力屈性である。茎のがわは負の重力屈性である。\n茎の頂芽(ちょうが、茎の先端の芽のこと)が成長しているときは、そのオーキシン濃度では側芽(そくが)は抑制されて成長できない。\nこれを頂芽優勢(ちょうがゆうせい、apical dominance)と呼ぶ。頂芽優勢には、サイトカイニンという別の植物ホルモンも関係している。\n頂芽を除去しても切断芽にオーキシンを与えると、側芽は成長しない。また、頂芽を残しても側芽にサイトカイニンを与えると、側芽は成長する。これらの結果から仮説として、オーキシンが、側芽の成長に必要なサイトカイニンの合成を抑制している、と考えられている。\n(未記述)\nオーキシンの他の植物ホルモンとしては、\n植物の成長を促すジベレリン(gibberellin)、\n果実の成熟を促すエチレン(ethylene)、\n細胞分裂を促すサイトカイニン(cytokinin)、\n種子の休眠を維持するアブシシン酸(abscisic acid)などがある。\nジベレリンの発見は、イネの馬鹿苗病(ばかなえびょう)という草丈の大きくなる病気の研究から、黒沢英一によって発見され(1926年)、藪田貞治郎によって単離・結晶化され命名された(1930年代)。あるカビ(学名:Gibberella、ジベレラ属)がジベレリンを分泌することが分かり、そのジベレリンがイネの草丈を大きくしていることが分かった。当初はジベレリンはカビの産生する毒素と考えられていた。その後、健康な植物自体もジベレリンを生成していることが分かり、ジベレリンは植物ホルモンだと分かった。\nジベレリンの作用は草丈を伸ばす以外にもあり、受粉してない子房に果実をつくらせ成長させる(単為結実)ので、種無しブドウなどの生産にもジベレリンは利用されている。受粉してない子房に果実作らせることを単為結実(たんいけつじつ)という。\nエチレンは気体であり、化学式 C2H4 の植物ホルモンである。エチレンは果実の成熟をうながす。熟したリンゴからはエチレンが良く出てくる。密閉した容器に熟したリンゴと未熟なバナナを入れておくと、バナナが早く熟す。一つの箱にリンゴをいくつも入れておくと、一つでも塾すと、エチレンを出して他のリンゴも熟させるので、ほぼ同時に多くのリンゴが熟す。\nまず、充分な水がある場合、気孔にある孔片細胞に水が取り込まれ、孔片細胞が湾曲し、結果的に気孔が開く。\n水分が不足すると、葉でアブシジン酸が合成され、葉でのアブシジン酸の濃度が高まり、浸透によって後編細胞からは水が流出し、孔片細胞の膨圧が低下して気孔が閉じる。\n成長すれば花となる芽を花芽(floral bud)と呼ぶ。\n花芽形成には光や温度が関係している。\n花芽形成が暗期の長さによって調節される性質を光周性(photoperiodism)という。\n植物は一定の長さの暗期が続くと花芽形成を行い、\nこの一定の長さの暗期を限界暗期(critical dark period)という。\n限界暗期以下で花芽を形成する植物を長日植物(long-day plant)といい、\n限界暗期以上で花芽を形成する植物を短日植物(short-day plant)といい、\n限界暗期に影響を受けない植物を中性植物(neutral plant)という。\n長日植物にはアブラナ、ホウレンソウなどがあり、\n短日植物にはダイズ、コスモスなどがあり、\n中性植物にはトマト、トウモロコシなどがある。\n人為的に限界暗期を短くすることを長日処理(long-day treatment)といい、\n人為的に限界暗期を長くすることを短日処理(short-day treatment)という。\n光周性に働きかけるホルモンは花成ホルモン(flowring hormone)と呼ばれ、フロリゲン(florigen)がある。\nフロリゲンは葉で光を感知することで合成され、師管を通ることが分かっている。\n花芽形成には低温にさらされることが必要な植物もある。\nこれを春化(vernalization)と呼び、人工的に春化することを春化処理()と呼ぶ。\n春化が必要な植物には、秋まきコムギなどがある。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%94%9F%E7%89%A9/%E7%94%9F%E7%89%A9I/%E7%92%B0%E5%A2%83%E3%81%A8%E6%A4%8D%E7%89%A9%E3%81%AE%E5%8F%8D%E5%BF%9C"} {"text": "高等学校生物 > 生物I > 環境と生物の反応に関する探求活動 \n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%94%9F%E7%89%A9_%E7%94%9F%E7%89%A9I%E2%80%90%E7%92%B0%E5%A2%83%E3%81%A8%E7%94%9F%E7%89%A9%E3%81%AE%E5%8F%8D%E5%BF%9C%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%8E%A2%E6%B1%82%E6%B4%BB%E5%8B%95"} {"text": "※ 化学式を使ったアミノ酸の構造式の説明も、専門『生物』科目の範囲内です。生物の検定教科書で説明されています。(下記の説明は『化学』からの引用ではないです。)\nアミノ基( -NH2 )とカルボキシル基( -COOH )を1つの分子中にもつ化合物をアミノ酸という。この2種の官能基が同一の炭素C原子に結合しているアミノ酸をαアミノ酸という。\nアミノ酸の一般式は\nで表される。(Rは炭化水素基あるいは水素など。)\nなお、R-の部分をアミノ酸の側鎖(そくさ)という。側鎖は20種類あるので、アミノ酸は20種類である。\nアミノ酸で、側鎖を除く他の部分は、共通である。そのアミノ酸が、水に溶けやすい(親水性)か、または溶けにくい(疎水性)かは、側鎖の種類によって決まる。側鎖は水に溶けやすい基なら、そのアミノ酸は親水性になる。側鎖が水に溶けにくいなら、そのアミノ酸は疎水性である。\nヒトが体内では合成できないアミノ酸を必須アミノ酸(essential amino acid)という。\nヒトの必須アミノ酸は、\nである。\n\n\n2個のアミノ酸分子が結合し、いっぽうのアミノ酸のカルボキシル基(-COOH)と、もう一方のアミノ酸のアミノ基(-NH2)が縮合して、水1分子が取れて脱水縮合して結合することをペプチド結合という。それぞれのアミノ酸は、べつに同一種でなくても良い。また、ペプチド結合によって生成する化合物をペプチド(peptide)という。\n2個のアミノ酸がペプチド結合した重合数が2個のアミノ酸化合物(ジペプチド)は、末端にアミノ基とカルボキシル基を持つので、このアミノ酸の化合物もまた同様に他のアミノ酸と化合が出来て、重合数を3個(トリペプチド)や4個・・・と、どんどんと増やしていける。数十個から数百個と重合数を増やしていける。\n2分子のアミノ酸がペプチド結合したものをジペプチドという。3分子のアミノ酸がペプチド結合したものをトリペプチドという。多数のアミノ酸が縮合重合したものをポリペプチド(polypeptide)という。\nペプチド化合物で縮合に使われなかったアミノ基が末端に残るが、このペプチド化合物の縮合に使われなかった末端のアミノ基をN末端という。同様に、カルボキシル基も末端に残るが、これをC末端という。\nなおジペプチドなどペプチド化合物の構造式を書くときは、縮合に使われなかったN末端のアミノ基を左に配置して、C末端のカルボキシル基を右に配置して書くのが慣習である。\nタンパク質を構成するアミノ酸の配列順序のことを一次構造という。たとえば表記「Gly-Gly-Ala」などは一次構造の表記である。\nタンパク質のポリペプチドの多くの構造は、時計回り(右回り、Z撚り「ゼットより」)のらせん構造をもつか、またはジグザグ状に折れ曲がっていたりする。\nこのポリペプチドのらせん構造をαヘリックス(アルファヘリックス)という。\nポリペプチドのジグザグ状に折れ曲がっている構造をβシートという。これらの構造(αヘリックス、βシート)を二次構造という。\nαヘリックスのらせん1巻あたり、平均3.6個のアミノ酸が含まれる。\nこのらせん化は、水素結合による現象であり、 アミノ酸の分子中の-C=Oと-N-Hの間のOとHが水素結合し、\nのように水素結合した結果、ペプチド全体ではらせん構造を取る。\nαヘリックスをとったポリペプチドや、βシートをとったポリペプチドなど、二次構造をとったポリペプチドが、さらに折りたたまれて三次構造になる。三次構造の形成には、側鎖どうしに働く引力や、システインどうしによるジスルフィド結合(S-S結合)によるものが関わっている。システインの側鎖は-SHであり、側鎖どうしで水素原子が取れてS-S結合することがある。\n三次構造の生体組織の例として、ミオグロビンがある。\n複数個ポリペプチド鎖が組み合わさって集合体をなした立体構造を四次構造という。\n四次構造の生体組織の例として、赤血球にあるヘモグロビンがある。ヘモグロビンは、2種類のポリペプチド鎖が、2個ずつ集まった合計4本のポリペプチド鎖でできている。\nタンパク質を加熱したり、酸や塩基を加えたりすると凝固する。タンパク質に重金属を加えたり、有機溶媒を加えたりしても凝固する。これをタンパク質の変性(へんせい)という。加熱によって変性することを熱変性という場合もある。\nゆで卵などのように、いったん熱変性したタンパク質は、元には戻らない。熱変性では一次構造の配列順序は変わっていないが、立体構造が壊れており、二次構造以上の構造が変わっている。\n(※ 未記述)\nプリオンはタンパク質の一種である。プリオンは細胞ではない。正常なプリオンなら、なにも病気を起こさない。\n立体構造が異常な、異常プリオンが、ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病の原因物質であり、また、ウシ海綿状脳症(BSE、いわゆる狂牛病)の原因物質である。\nと思ってたら、2022年度からの新科目「現代の国語」で、書籍『プリオン説はほんとうか?』の著者である科学者・福岡伸一の別の科学エッセイ『ルリボシカミキリの青』が、東京書籍(教科書会社)の教科書で、国語の題材に選ばれたので、間接的だが『プリオン説は本当か?』も一部の高校では教養として紹介される可能性が生じることになった。\n体内に、この異常プリオンが取り込まれれると、正常なプリオンも、異常なプリオンに変えていく。\n脳や神経細胞に異常プリオンが蓄積すると、細胞死が起きるので、脳がすき間だらけになって海綿状になっていく。\nわれわれ人間の呼吸では、おもにグルコース(C6H12O6)などの炭水化物を分解して、生命活動に必要なエネルギーを取り出している。このグルコースの分解反応で酸素が必要なため、人間は呼吸で酸素を取り入れている。呼吸によるグルコースの分解で、グルコースに蓄えられていたエネルギーを取り出しており、さまざまな生態活動のエネルギーになっている。\nなお、呼吸におけるグルコースのように、呼吸につかわれてエネルギーを取り出す元になっている物質を呼吸基質(こきゅう きしつ)という。\n人間や魚類の呼吸は、細胞での酸素を用いる呼吸のためであり、このときの細胞での酸素を用いた呼吸を好気呼吸(こうきこきゅう)という。細胞での好気呼吸によるグルコースの分解は、おもにミトコンドリアで行われている。\nそのため、ミトコンドリアを持たない微生物では、呼吸の仕組みが、人間や魚類などとは違っている。\n微生物には、酸素を用いないで呼吸を行うものもあり、このような無酸素の呼吸を嫌気呼吸(けんきこきゅう)という。\nまずは、好気呼吸について整理しよう。\nわれわれ人間の肺呼吸は、細胞での好気呼吸のために、酸素を身体各部の細胞に血管などを用いて送り込んでいるのである。魚類の「えら呼吸」も、酸素を細胞に送り込んでいるので、細胞での好気呼吸のためである。植物の呼吸もしており酸素を取り入れており、植物の呼吸は好気呼吸である。なお、光合成は呼吸ではない。\n人間・魚類の呼吸も植物の呼吸も、これらの呼吸は、細胞では、どれもミトコンドリアが酸素を使ってグルコースなどを分解する反応である。\nさて、細菌やカビなどの一部の微生物には 、必ずしも酸素を使わなくてもグルコースなどの炭水化物を分解できる生物がいる。酵母菌や乳酸菌は、そのような菌である。酵母菌によるアルコール発酵や乳酸菌による乳酸発酵などの発酵は、これらの菌が生存のために栄養から必要なエネルギーを得るために化学反応を行った結果であり、酵母菌や乳酸菌の発酵では酸素を用いていない。\nこのような、酸素を使わないでグルコースなどの炭水化物を分解する活動も呼吸にふくめる場合がある。これらの菌などがおこなう無酸素の化学反応でグルコースなどの炭水化物を分解することを嫌気呼吸(けんきこきゅう)という。\nそのため、酸素が少ない環境、あるいは酸素が無い環境でも、栄養があれば、嫌気呼吸をする菌は生きられる。\n微生物による腐敗も、その微生物の嫌気呼吸である場合が普通である。\n発酵(はっこう)と腐敗(ふはい)の区別は、ある微生物の呼吸の結果の生産物が、人間によって健康的な生産物の場合が発酵で、有害な生産物の場合が腐敗(ふはい)である。つまり発酵と腐敗の分類は、人間の都合による。\n微生物の種類によって、嫌気呼吸の生産物の方法は違うが、基本的にはATPを生産している。\n嫌気呼吸による、このような酸素を用いない分解では、ミトコンドリアを用いていない。微生物は細胞質基質で嫌気呼吸を行っている。\n酵母菌は、嫌気呼吸と好気呼吸の両方の呼吸ができる。そのため、アルコール発酵をさせる場合には、酸素の無い環境に置く。酵母菌はミトコンドリアを持っており、酵母菌の好気呼吸はミトコンドリアによるものである。\n乳酸菌と酢酸菌は原核生物であり、ミトコンドリアを持たない。\nなお、酵母菌は単細胞性だが真核生物である。このため、酵母菌は分類学上は、カビやキノコ(ともに真核生物である)に近いと考えられている。(※ 2015年のセンター生物基礎の本試験で出題)\n酵母菌(こうぼきん)のアルコール発酵での化学反応式は、まずグルコースC6H12O6からピルビン酸C3H4O3に分解される。この、グルコースからピルビン酸を得る過程を解糖系(かいとうけい、glycolysis)という。解糖系でATPが2分子つくられる。そしてピルビン酸が、無酸素の状態では酵素デカルボキシラーゼによってアセトアルデヒドCH3CHOによって分解され、そのアセトアルデヒドがNADHという物質によってエタノールC2H5OHへと変えられる。\nまとめると、アルコール発酵の反応式は、次の式である。\nグルコース1分子あたりATPが2分子できる。アルコール発酵のATPは解糖系に由来しており、それ以降はATPを産生してない。\n解糖系による、グルコースからピルビン酸ができる反応は、嫌気生物に限らず、ほとんどすべての生物の呼吸で行われている。(※ そのため、ピルビン酸は呼吸の学習における重要物質である。)\n乳酸発酵(にゅうさんはっこう)とは、乳酸菌が行う嫌気呼吸である。\nまずグルコースC6H12O6が解糖系によって、ピルビン酸へと分解され、このときATPが2分子できる。そしてピルビン酸がNADHによって乳酸:C3H6O3に変えられる。\n酢酸菌(さくさんきん)は、 酸素O2を用いて、エタノールを酢酸CH3COOH に変える。\n酸素を用いるため、一般的な無酸素の発酵とは区別して、酸化発酵とよぶ。\n酢酸発酵のとき、酢酸のほかに水ができる。\n筋肉では、はげしい運動などをして酸素の供給が追いつかなくなると、グルコースやグリコーゲンなどを解糖をして、エネルギーを得る。筋肉での解糖のときに、乳酸ができる。\n反応のしくみは、乳酸発酵と、ほぼ同じである。\n呼吸で使われる基質は通常はグルコースだが、グルコースが不足した場合などに脂肪やタンパク質やグルコース以外の炭水化物などの栄養が基質として使われる場合がある。\nなおデンプンやグリコーゲンなどは、呼吸の過程で、グルコースへと分解される。\n呼吸によって排出されるCO2と使用される酸素O2の、体積(または分子数)の比率 CO2/O2 を呼吸商(こきゅうしょう)といい、RQであらわす。呼吸基質によって、呼吸商は異なる。気体の体積は圧力によって変化するので、測定するときは同温・同圧でなければならない。同温・同圧で測定した場合、気体の体積比は分子数の比になるので(物理法則により、気体の体積は、分子数が同じなら、原子・分子の種類によらず、分子数1モルの気体は0℃および1気圧では22.4L(リットル)である。モルとは分子数の単位であり6.02×1023個のこと)、よって化学反応式から理論的に呼吸商を算出でき、その理論値と実験地は、ほぼ一致する。\n呼吸商の値は、おおむね、次の値である。\n化学式\nC6H12O6 + 6O2 + 6H2O → 6CO2 + 12H2O\nよって RQ = CO2/O2 = 6÷6 = 1 より RQ = 1.0\nトリアシルリセロールの場合、\nよって RQ = CO2/O2 = 55÷77 ≒ 0.7 より RQ = 0.7\nトリステアリンの場合、\nよって RQ = CO2/O2 = 114÷163 ≒ 0.7 より RQ = 0.7\nロイシン C6H13O2N の場合、\nよって RQ = CO2/O2 = 12÷15 = 0.8\n測定実験の結果の呼吸商が0.8だからと言って、必ずしも基質がタンパク質とは限らない。なぜなら炭水化物(RQ=1)と脂肪(RQ=0.7)の両方が基質に使われている場合、呼吸商が0.7~1.0の中間のある値を取る場合があるからである。\n好気呼吸は細胞質基質とミトコンドリアで起こる。とくにミトコンドリアを中心に、呼吸によって多くのATPが合成される。\n1分子のグルコースが、2分子のピルビン酸(C3H4O3)にまで分解される。この反応は細胞質基質で行われる。酵素を必要としない。ATPを2分子、生成する。反応の途中でATPを2分子消費するが、4分子のATPを生成するので、差し引き2分子のATPを生成する。\nグルコースは、まずATP2分子によってリン酸化されフルクトース二リン酸(C6化合物)になる。\nフルクトース二リン酸が二分して、グリセルアルデヒドリン酸(C3化合物)の二分子ができる。\nグリセルアルデヒドリン酸が、いくつかの反応を経て、ピルビン酸になる。この間の反応で、電子e-とプロトンH+が生じて、補酵素NADに渡されNADHになる。ここで生じたNADHはミトコンドリアに入り、あとの電子伝達系で利用される。また、ATPが4分子できる。よって、差し引きグルコース1分子につき、2分子ATPが、解糖系で生じる。\nピルビン酸が、ミトコンドリア内に入り、ミトコンドリアのマトリックスという内膜にある酵素で、ピルビン酸がコエンザイムA(CoA)と結合してアセチルCoA(活性酢酸)というC2化合物になり、段階的に分解される。二酸化炭素が、ピルビン酸がアセチルCoAになる際に生じる。\nアセチルCoA以降の反応図は回路上であって、回路のはじめにクエン酸(citric acid)が生じることから、クエン酸回路(Citric acid cycle)という。\nと変化していく。(「C6」とはC6化合物のこと。C5とはC5化合物のこと。C4も同様にC4化合物のこと。)\nこのクエン酸回路の過程でATPが2分子できる。また、電子が放出される。\nC2化合物のアセチルCoAがC6化合物のクエン酸に変化する際、クエン際回路の最後のオキサロ酢酸(C4化合物)と化合するので、炭素の収支が合う。クエン酸回路では、脱炭酸酵素や脱水素酵素の働きで、クエン酸は変化していく。\nクエン酸回路でコハク酸からフマル酸になる際に発生する水素は、補酵素FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)が受け取り、FADH2になる。\nコハク酸以外での脱水素反応では、NADが水素を受け取っている。(「NAD」とは「ニコチン アデニン ジヌクレオチド」のことである。)\nミトコンドリアの内膜にシトクロム(cytochrome)というタンパク質がいくつもあり、このシトクロムは電子を受け渡しできる。解糖系やクエン酸回路で生じたNADHやFADH2から、電子e-と水素イオンH+が分離し、電子はシトクロムに渡される。そしてシトクロムどうしで電子を受け渡す。このとき、H+が、いったんマトリックスから膜間にくみ出され、それから水素イオンの濃度勾配に従ってATP合成酵素を通ってマトリックス側に戻る。このH+がATP合成酵素を通る際のエネルギーを利用して、ADPからATPが生成される。最終的に生成するATPの数は、グルコース1分子あたりATPを最大で34分子を生じる(生物種によって生成数が異なる)。\nこれらの反応ではNADHなどが酸化される反応が元になってATPを生成しているので、一連の反応を酸化的リン酸化(oxidative phosphorylation)という。シトクロムのことをチトクロームともいう。\n電子e-は、最終的に酸素原子に渡され、酸化酵素の働きで水素イオンと反応し水になる。この水の生成反応のときの反応エネルギーを用いて、マトリックスの水素が膜間へと運ばれており、さきほど述べたようにATPが合成されている。\n好気呼吸でのATPの収支は、グルコース1分子あたり解糖系で2分子のATP、クエン酸回路で2分子ATP、電子伝達系で最大34分子ATPであり、合計で最大38分子のATPになる。\n脂肪は加水分解されて、脂肪酸とグリセリンになる。その後、グリセリンは解糖系に入る。脂肪酸はβ酸化という過程を経て分解されてアセチルCoAになり、クエン酸回路に入る。\nタンパク質は、まずアミノ酸に分解され、アミノ酸のアミノ基を、アンモニア(NH3)として遊離する。この過程を脱アミノ反応という。アラニンは脱アミノ反応によってピルビン酸になり、以降は、糖の分解でのピルビン酸の分解と同じ過程を経る。グルタミン酸は、脱アミノ反応でケトグルタル酸になり、クエン酸回路でのケトグルタル酸と同様の代謝をされる。\nその後の分解の過程はアミノ酸の種類によって異なるが、最終的にどのアミノ酸もクエン酸回路で代謝される。ピルビン酸も、解糖系では最終的にクエン酸回路に合流するからである。\n1939年、ヒル(イギリス人)は、葉をすりつぶしたのを混ぜた水にシュウ酸鉄(III)をくわえた液を用意して、つぎの実験を行った。\nこの液に、光を与えると、酸素が発生し、またシュウ酸鉄(III)は、シュウ酸鉄(II)に還元された。この反応をヒル反応という。このヒル反応では、二酸化炭素を除去した場合でも酸素が発生する。なので、ヒル反応は二酸化炭素を必要としない。\nシュウ酸鉄(III)は、水素を受け取りやすい物質であり、酸化剤である。\n光によって、水が分解され、酸素と水素イオンH+と電子e-に分解されると考えられた。\nそして、光合成で発生する酸素は、二酸化炭素の由来ではなく、水に由来すると考えられた。\nのちにルーベンが、酸素の同位体18Oを用いて、光合成で発生する酸素が水に由来することを直接的に証明した。\nルーベンはクロレラと酸素同位体を用いた実験で、\nをそれぞれ実験し、\nこの結果、H218Oを与えた場合からは、光を照射するとクロレラから18O2が発生した。\nしかし、C18O2およびH2Oを与えた場合からは、光を照射しても18O2が発生しない(これら一連の酸素同位体の実験を「ルーベンの実験」という)・\nなお、厳密には、自然界にも18Oは自然発生するので、実験で用いる C18O2 や H218O は、自然界よりも酸素同位体18O を多く含む二酸化炭素および水である。(※ 啓林館がそう説明している)\n光の照射の結果、発生する酸素を集める必要があり、その酸素気体のうち、通常の酸素原子と同位体酸素との比率を分析する必要があり、本当はもっと実験に手間が掛かっている。\nなお、上述のルーベンの実験のような、代謝などの反応経路を調べる際の放射性同位体などのように、反応の経路を追跡するための材料のことを「トレーサー」という(※ 第一学習社の巻末付録に「トレーサー」の用語あり)。トレース trace とは「追跡」という意味。\n当然だが、放射性同位体をトレーサーとして用いる実験では、その元素を化合物などの放射線を調べたりすることで、反応の経路を調べている。\n植物の生体内では、シュウ酸鉄のかわりにNADPが光合成の際に水素を受け取る酸化剤として働いている。\n炭素の放射性同位体14Cをふくむ二酸化炭素14CO2を含む溶液中で、クロレラなどの緑藻などに光合成を5秒ほどの短時間行わせる。その後、すぐに光を当てるのを中止し、熱したアルコールに浸して、光合成を中止させる。\nこのとき、どのような物質に、14Cが取り込まれるかを調べる。\nこの結果、まずC3化合物であるホスホグリセリン酸(PGA)が増加していることが分かった。\n光の照射時間を変えていく方法などで、詳しく調べたころ、代謝の経路が回路状になっている事が分かった。\n\n葉緑体の内部の構造には、チラコイドという膜状の構造と、ストロマという無色の基質の構造がある。\nチラコイドにある色素が光エネルギーを吸収する。この吸収のとき、特定の波長の光を吸収している。赤や青の光が葉緑体に吸収される。緑色の光は吸収しない。吸収しなかった波長の光は反射される。植物の緑色は、反射した光の色であり、光合成には使用していない光である。\n吸収した光エネルギーで、ATPの合成やNADPHの合成を行っている。(「NAD」とは「ニコチン アデニン ジヌクレオチド」のことである。)\n次の(1)~(3)の反応がチラコイドで行われる。 (4)の反応がストロマで行われる。\n(1):  光化学反応\n光エネルギの吸収は、色素のクロロフィルで吸収する。クロロフィルは活性化し、活性クロロフィルになる。クロロフィルの存在する場所は、チラコイドの膜である。\nこの反応には、光が当然に必要である。温度の影響をほとんど受けない。\n(2):  水の分解とNADPHの生成\n1の反応に伴って、活性クロロフィルから電子が飛び出す。水が分解され、できた水素Hが、さらに水素イオンH+と電子e- に分解される。あまった酸素O2は、以降の反応では利用せず、このため酸素O2が排出される。\nこの反応でのHの分解から発生したe- は、チラコイドの膜上で伝達され、最終的にHとともにNADP+という物質にe- は結合し、NADPHが生成する。\n(3):  ATPの合成\n2の反応に伴って、ADPがリン酸化されATPが合成される。\n(4):  二酸化炭素の固定\nストロマで、(3)の反応で作られたATPのエネルギーも利用して、いくつもの過程を経て、植物が気孔などを使って細胞外から取り入れた二酸化炭素から、有機物(グルコース C6H12O6 )を合成する。\n生成された物質の一部が同じ物質のもどる反応経路になっており、カルビン・ベンソン回路という。\nこのカルビン・ベンソン回路の過程で、(3)の反応で作られたATPを用いている。\nこのカルビン・ベンソン回路の反応は、温度の影響を受ける。\n通常の植物は固定でC3化合物のPGA(ホスホグリセリン酸)が回路(カルビンベンソン)の最初にできるC3植物である。\nリブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼという酵素(略してRubiscoという。ルビスコと読む)が、カルビンベンソン回路での、CO2 を取り込む段階での酵素。\nリンゴ酸などのC4化合物が回路の最初にできる代謝系のC4植物といい、カルビンベンソン回路とは別の代謝系(C4回路)を持っている。\n熱帯にC4植物が多く、サトウキビやトウモロコシがC4植物である。\nC4回路というオキサロ酢酸から開始する回路があり、このC4回路によりCO2を効率よく固定している。葉肉細胞にリンゴ酸などをC4化合物として固定している。そして、炭素が必要なときは、維管束(いかんそく)鞘細胞(しょうさいぼう)に送り、分解してCO2を発生させる。\n砂漠に多い。パイナップル、ベンケイソウ、サボテンなど。\n昼間は空気が乾燥していて気孔を開いてしまうと水分をうばわれてしまうので、かわりに夜に気孔を開いて、二酸化炭素を固定する。二酸化炭素をもとにリンゴ酸などを蓄えることで、昼までCO2を固定して保存しておく。光合成は、たくわえたリンゴ酸などを材料にして昼間に光合成を行う。\nCAMとは、ベンケイソウ型酸代謝(crassulacean acid metabolism)という意味である。\n白血球が異物を取り込む場合など、細胞が、異物などを取り込む際の、取り込みかたの仕組みは、つぎの仕組みである。\n細胞膜がくぼみ、そしてくぼみの頂上部分の細胞膜どうしが接合して閉じることで、小胞が出来る。\nなお、この現象をエンドサイトーシス(飲食作用)という。マクロファージが異物を取り込む場合や、細菌が異物を食す場合の取り込みが、エンドサイトーシスである。\n一方、細胞が、物質を細胞外に分泌する仕組みは、つぎの仕組みである。\nまず、分泌される物質を囲む小胞にも膜がある。この小胞の膜が、細胞膜と融合し、その結果、小胞の内部の物質が細胞外に現れる。これをエキソサイトーシス(開口分泌)という。酵素の分泌や、ホルモンの分泌、神経伝達物質の放出なおど、エキソサイトーシスが行われている。\nこのように、細胞内外への物質の流入・流出には、細胞膜が深く関わっている。\n多細胞生物において、細胞の外にも基質があり、たとえばコラーゲン(collgen)やフィブロネクチンなどの糖タンパク質がある。(コラーゲンは糖タンパク質である。検定教科書で記述を確認。[1]) この糖タンパク質のように、細胞外にあって、細胞膜とくっついている基質を、細胞外基質(さいぼうがい きしつ、extracellular matrix:ECM)という。(細胞外基質のことを「細胞外マトリックス」ともいう。)\n細胞外基質の種類によって役目は違うが、たとえば受容体などとして働き細胞どうしの情報伝達をする役目や、あるいは細胞どうしの結合などの役目をしている。\n糖タンパク質とは、多糖類とタンパク質で、できている。\nインテグリン(integrin)は、細胞膜を貫通するタンパク質であり、細胞外基質を構成する糖タンパク質と細胞骨格をつなげる役目をしている。\nカドヘリン(cadherin)という細胞膜を貫いて細胞外に出ているタンパク質がある。このカドヘリンが、細胞どうしの接合に関わっている。カドヘリンには多くの種類があり、同じ種類どうしのカドヘリンが接着する。\nなお、このような現象を、「細胞接着」(さいぼう せっちゃく)という。\nさて、カドヘリンには いくつかの種類があり、種類の異なるカドヘリンどうしは接着しない。これを細胞選別(さいぼう せんべつ、sorting out of cells)という。\nカドヘリンの立体構造の維持にはカルシウムイオン Ca2+ が必要である。そのため、Ca2+が無い状態で培養すると、細胞どうしの接着が弱まるので、個々の細胞に解離しやすくなる(※ 高校の範囲内: 啓林館や第一学習社の教科書などに記述されている)。\nなお、カドヘリンは細胞内でアクチンフィラメントに接続している。\n(※ 右の原理図ではアクチンフィラメントが省略されている。※ より正確には、カドヘリンとアクチンフィラメントの間に、細胞内で連結タンパク質を仲介してるが、ほとんどの教科書でも参考書でも言及されてないので、無視する。 数研出版の教科書で、連結タンパク質に言及している。)\nカドヘリンは、細胞どうしを接着させるほかにも、さらに細胞どうしの情報伝達にも関与している。(※ 第一学習社の検定教科書で記載。)(※ 羊土社『理系総合のための生命科学』2007年第1刷、にてカドヘリンが情報伝達にも関わってることの裏付けを確認済み。)\n隣接した細胞を、筒のような中空軸の構造のタンパク質が結合しており、これをギャップ結合(gap junction)という。この筒をイオンや低分子の糖やアミノ酸などが移動する。\nとなりあう細胞どうしが、間にいくつかのカドヘリンを介して、ボタン状に固定されている構造をデスモソーム(desmosome)という。\nなお、デスモソームのボタン状部分には、中間径フィラメントが接続している。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%94%9F%E7%89%A9/%E7%94%9F%E7%89%A9II/%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%AF%E8%B3%AA%E3%81%A8%E7%94%9F%E7%89%A9%E4%BD%93%E3%81%AE%E6%A9%9F%E8%83%BD"} {"text": "ヒトのDNAは塩基数が約30億個であり、遺伝子は約2万個と考えられている。(暗記しなくていい。)\nDNAの複製では、2本鎖が1本ずつに別れ、それぞれ鋳型になって複製される。これをDNAの半保存的複製(はんほぞんてきふくせい、semiconservative replication)という。\nDNAの半保存的複製の仮説は、メセルソンとスタールの実験で証明された。\nまず、基準として、あらかじめ通常の窒素14Nをふくむ培地で、大腸菌を培養しておく。この基準とはべつに、もう一種類、重窒素15Nをふくむ培地を、次のように用いる。\n(1) \n大腸菌を培養する際、区別のため、重窒素15Nをふくむ塩化アンモニウム(15NH4Cl)を窒素源とする培地で、培養して増殖させる。\nすると、大腸菌の窒素原子に、すべて重窒素15Nだけをふくむ大腸菌が得られる。\nまず、この大腸菌を保存しておく。理由は、もうひとつの基準とするため。\n(2) \nさらに、15Nだけをふくむ大腸菌を、ふつうの窒素14Nをふくむ培地に移して培養して、分裂1回目・2回目・・・といった分裂ごとにDNAを抽出するため遠心分離機で遠心分離して、DNAの比重を調べる。\n塩化セシウム(CsCl)溶液を加えた試験管を遠心分離機に取り付け、高速回転させると、試験管の底ほど塩化セシウム濃度が高くなるという密度勾配が出来る。\nこのときDNAを混ぜておくと、DNAの密度とつりあう溶液の密度の位置に、DNAが集まる。\nこうして、DNAの質量のわずかな違いを検出できる。\n結果\n・ 1回分裂後のDNAからは、15Nと14Nを半々にふくむDNAだけが得られ、重さは中間の重さだった。\n・ 2回分裂直後のDNAからは、15N-14Nの半々のDNAと、14NだけをふくむDNAが、1:1の割合で得られた。\n重さは、14NだけをふくむDNAが、もっとも軽い。\n・ 3回目の分裂後は、軽いDNAと中間の重さのDNAの比が3:1だった。\n・ 4回目の分裂後は、軽いDNAと中間の重さのDNAの比が7:1だった。\n・ n回目の分裂後は、軽いDNAと中間の重さのDNAの比が 2n-1:1 だった。\n中間の重さのDNAは、何世代たっても消滅しなかった。\nこの実験によって、DNAの半保存的複製は証明された。\nアカパンカビは、糖といくつかのビタミンなどを加えただけの培地(最小培地、minimal medium)で育成できる。アメリカのビードルとテータムは、アカパンカビにX線や紫外線などの放射線を当てて、DNAを変化させ、突然変異させた。\n突然変異したものの中には、最小培地だけの栄養素では増殖できず、さらに他の栄養素も必要とする株が生じた。このような最小培地の他の栄養素も要求する株を栄養要求株という。\nアルギニンを加えないと増殖できない株をアルギニン要求株という。このアルギニン要求株には、実験の結果、次の三種類あることが分かった。\nこのことから、\nという、なんらかの順番が予想される。答えを言うと、これはアカパンカビによるアミノ酸の合成の順番である。\nアカパンカビのアミノ酸合成で、グルタミン酸を材料に、\nというふうに合成していく。グルタミン酸からオルニチンを合成し、オルニチンを材料にシトルリンを合成し、シトルリンを材料にアルギニンを合成していく。\nそして、それぞれのアミノ酸を合成する酵素は、それぞれ別の酵素である。グルタミン酸からオルニチンを合成する酵素(仮に酵素Aとする)があり、オルニチンからシトルリンを合成する酵素(仮に酵素B)があり、シトルリンからアルギニンを合成する酵素(仮に酵素C)がある。\nそして、これらは遺伝子の突然変異によるものだった。つまり、それぞれの酵素は、遺伝子が異なる。\n酵素Aに対応する遺伝子Aがあり、それとは別に、酵素Bに対応する遺伝子Bがあり、それとは別に、酵素Cに対応する遺伝子Cがあることになる。\nビードルとテータムは、このような考察をもとに、「1つの遺伝子は、対応する特定の1つの酵素の合成を支配する。」という一遺伝子一酵素説(いちいでんし いちこうそせつ)を立てた。\n現代では、さらに一遺伝子一ポリペプチド説へと拡張された。「1つの遺伝子は、対応する特定の1つのポリペプチドの合成を支配する。」というような説である、\nもっとも、実際には選択的スプライシングによって、1つの遺伝子が、複数のポリペプチドに対応することもある。\nともかく、遺伝子は、ポリペプチドの合成を支配しているのが原則だろうと考えられている。\nDNAの方向の定義は、デオキシリボースの五炭糖の炭素原子にもとづき、鎖の末端が5´の端部と、鎖の反対側の末端の3´の端部がある。3´の部分には水酸基OHが、もとから付いている。\nこの5´と3´の位置にもとづき、DNAの二本鎖のそれぞれ一本ずつの方向が定義される。なので、向かいあってるDNAの二本鎖は、定義にもとづき方向が逆となる。\nDNAの片方の鎖の5´側の末端(つまりリンPがある側の末端)を、5´末端(5´ terminal)という。同様に、3´側の末端(つまり水酸基OHがある側の末端)を、3´末端(3´ terminal)という。\nDNAを合成する酵素であるDNAポリメラーゼは、一方向にしか合成できない。このため、もう一方の鎖の合成は、合成前でのDNAのほどけていく向きとは逆向きに進行する。\nこのため、逆向きに合成するほうは、細切れの断片ずつでDNAを合成していく。そしてDNAリガーゼという酵素が断片をつないでいく。\nほどけていく向きと同じ向きに新しく合成される鎖をリーディング鎖(リーディングさ、leading strand)という。\nほどけていく向きと反対向きに合成される鎖をラギング鎖(ラギングさ、laging strand)という。\nそして、ラギング鎖のそれぞれのDNA断片を、発見者の名前にちなんで岡崎フラグメント(Okazaki fragment)という。\nDNAポリメラーゼがデオキシリボースの3´末端の位置に新たにヌクレオチドを付け加えていくことで、DNAは伸長される。伸長の方向について新生鎖を基準にすると、DNAの合成は5´から3´の方向へと合成していく。この5´→3´という方向に合成する法則は、リーディング鎖とラギング鎖ともに共通である。\nただしラギング鎖では断片がいくつもできから、3´に近い断片ほど、古くに合成された断片である。なので、長期的に見るとラギング鎖の合成方向が、新生鎖を基準にすると、まるで3´から5´に合成されていくように観察されることになる。\nDNAポリメラーゼによる合成の開始の際に、一時的に、新生鎖の塩基にプライマー(primer)というRNAの配列が必要である。(※ RNAについては、のちの節で後述する。) プライマーはあとで分解されて、DNAに置き換わる。ラギング鎖では断片がいくつもあるので、結果的にラギング鎖ではプライマーが、伸張時には、いくつも作られることになり、それぞれの断片の最初にプライマーがあることになる。\nDNAの塩基情報がRNAに写し取られ、そのRNAの情報をもとにタンパク質が合成される。RNAは1本鎖である。\nRNAの基本構造は、 塩基+糖+リン酸 からなるヌクレオチドである。\nRNAの糖はリボース(英:ribose)である。RNAでは、DNAのアデニン(A)に結びつくのは、RNAのウラシル(U)であり、RNAはT(チミン)を持たない。(ウラシル、英:uracil)\nRNAポリメラーゼ(RNA polymerase、RNA合成酵素)という酵素の働きによって転写され、RNAが合成される。このときDNAの領域で、RNAポリメラーゼが結合する領域をプロモーター(promoter)という。\nRNAの種類は、働きによって、メッセンジャーRNAとトランスファーRNAとリボソームRNAの3種類に分けられる。\nメッセンジャーRNA(mRNA)は、DNAの情報を写し取るためのRNAである。また、真核生物の場合、mRNAはリボソ-ム内へ移動し、そこでトランスファーRNAを正しくならべるための鋳型(いがた)としての役割を持つ。\nトランスファーRNA(tRNA)は、リボソ-ムまでアミノ酸を運ぶためのRNAである。なので、アミノ酸がトランスファーRNAに結合している。\n後述するが、mRNAの塩基3個ぶんの並びによってアミノ酸が決定される。なので、この塩基3つぶんの情報しか、トランスファーRNAは情報をふくまず、タンパク質を構成する多くものアミノ酸の並びについての情報はふくんでいない。\nアミノ酸を正しく配列するためには、真核生物の場合、メッセンジャーRNAが必要である。\nタンパク質の合成はリボソーム(ribosome)で行われ、トランスファーRNAの運んできたアミノ酸からタンパク質をつくる合成がリボソームで行われる。リボソームのもつRNAは、mRNAとは別の系統であり、DNAにもとづく別系統のRNAをリボソ-ムが持っているので、リボソームRNA(rRNA)という。\n真核生物の場合、メッセンジャーRNAが核膜孔から出てきてリボソ-ムへ移動し、トランスファーRNAを正しく並べることで、結果的にアミノ酸を正しく並べる。\nこのように真核生物では、リボソーム内で、メッセンジャーRNAとトランスファーRNAが再開することになる。\nこのように、リボソ-ムで合成されるタンパク質でのアミノ酸の並びの決定方法は、おもにメッセンジャーRNAの配列にもとづくのであり、いっぽうリボソームRNAの配列は直接にはアミノ酸の並びの決定には関わっていない。\nまず、DNAの塩基情報を写し取ることで合成されるRNAをメッセンジャーRNA(略記:mRNA)という。\n真核生物の場合、核内で、DNAの一部が二本にほどけて、そのうちの一本の情報がRNAに相補塩基として写し取られる。\nなお原核生物の場合、そもそも核膜が無いので、原形質の中で同様にDNAがほどけて、RNAに情報が写し取られる。\nまた、このようにDNAの情報がRNAに写し取られることを転写(てんしゃ、transcription)という。\nmRNAの塩基3個の配列が、1つのアミノ酸を指定している。この塩基3個の配列をコドン(codon)という。コドンは、すでに解読されており、この解読結果の表を遺伝暗号表(いでんあんごうひょう)といい、mRNAの配列で定義されている。ほとんどの生物で、遺伝暗号(genetic code)は共通であり、原核生物か真核生物かは問わない。\nこのように、mRNAの塩基配列にもとづいてアミノ酸が合成される過程を翻訳(ほんやく、translation)という。\n塩基3つの組をトリプレットという。DNAの塩基は4種類あるので、トリプレットは4×4×4=64種類ある。天然のアミノ酸は20種類であり、じゅうぶんにトリプレットで指定できる。もし塩基2つでアミノ酸を指定する仕組みだとすると、4×4=16となってしまい、アミノ酸の20種類には不足してしまう。\nUUU (Phe/F)フェニルアラニン\nUUC (Phe/F)フェニルアラニン\nUUA (Leu/L)ロイシン\nUUG (Leu/L)ロイシン\nUCU (Ser/S)セリン\nUCC (Ser/S)セリン\nUCA (Ser/S)セリン\nUCG (Ser/S)セリン\nUAU (Tyr/Y)チロシン\nUAC (Tyr/Y)チロシン\nUAA Ochre (終止)\nUAG Amber (終止)\nUGU (Cys/C)システイン\nUGC (Cys/C)システイン\nUGA Opal (終止)\nUGG (Trp/W)トリプトファン\nCUU (Leu/L)ロイシン\nCUC (Leu/L)ロイシン\nCUA (Leu/L)ロイシン\nCUG (Leu/L)ロイシン\nCCU (Pro/P)プロリン\nCCC (Pro/P)プロリン\nCCA (Pro/P)プロリン\nCCG (Pro/P)プロリン\nCAU (His/H)ヒスチジン\nCAC (His/H)ヒスチジン\nCAA (Gln/Q)グルタミン\nCAG (Gln/Q)グルタミン\nCGU (Arg/R)アルギニン\nCGC (Arg/R)アルギニン\nCGA (Arg/R)アルギニン\nCGG (Arg/R)アルギニン\nAUU (Ile/I)イソロイシン\nAUC (Ile/I)イソロイシン\nAUA (Ile/I)イソロイシン, (開始)\nAUG (Met/M)メチオニン, 開始[1]\nACU (Thr/T)スレオニン\nACC (Thr/T)スレオニン\nACA (Thr/T)スレオニン\nACG (Thr/T)スレオニン\nAAU (Asn/N)アスパラギン\nAAC (Asn/N)アスパラギン\nAAA (Lys/K)リシン\nAAG (Lys/K)リシン\nAGU (Ser/S)セリン\nAGC (Ser/S)セリン\nAGA (Arg/R)アルギニン\nAGG (Arg/R)アルギニン\nGUU (Val/V)バリン\nGUC (Val/V)バリン\nGUA (Val/V)バリン\nGUG (Val/V)バリン, (開始)\nGCU (Ala/A)アラニン\nGCC (Ala/A)アラニン\nGCA (Ala/A)アラニン\nGCG (Ala/A)アラニン\nGAU (Asp/D)アスパラギン酸\nGAC (Asp/D)アスパラギン酸\nGAA (Glu/E)グルタミン酸\nGAG (Glu/E)グルタミン酸\nGGU (Gly/G)グリシン\nGGC (Gly/G)グリシン\nGGA (Gly/G)グリシン\nGGG (Gly/G)グリシン\nたとえばAUGはメチオニンを指定する。またAUGは翻訳を開始するコドンでもある。\nAUGのように、翻訳を開始するコドンを開始コドン(initiation codon)という。\nいっぽう、UAA、UAG、UGAは対応するアミノ酸がなく、翻訳を終了させるので終止コドン(termination codon)という。\nまた、たとえばUUUはフェニルアラニンを指定する。\n生物学者のニーレンバーグは1961年、塩基としてウラシル(U)だけを持つRNAをリボソ-ム溶液に加えたところ、フェニルアラニンが大量に合成されたことで、フェニルアラニンの遺伝暗号がUUUであることが発見された。\nその後、生物学者コラーナなどのによって、遺伝暗号が解読された。\n遺伝情報は、原則として DNA→RNA→アミノ酸→タンパク質 というふうに一方向に写されていき、その逆方向は無い。この原則をセントラルドグマ(英: central dogma)という。\nセントラルドグマの例外的な存在として、ウイルスによってはRNAを遺伝物質として持つものがいて、このようなウイルスをRNAウイルスという。\nまた、RNAを鋳型としてDNAを合成することを逆転写といい、そのような働きの酵素を逆転写酵素という。\nRNAウイルスは、逆転写酵素をもち、逆転写を行う能力をもっている。\nエイズの原因であるHIVウイルスもRNAウイルスであり、また、HIVウイルスは逆転写酵素をもっている。\nなお、ウイルス種類のグループの呼び名として、RNAウイルスであり、さらに逆転写酵素を持っているウイルスのことをレトロウイルスという。\nエイズの治療薬は、この逆転写などを阻害することで、HIVウイルスの増殖を抑えるものである。[1] 現在の科学力ではエイズを完治することはできない。\nエイズの治療薬は、逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)阻害剤、インテグラーゼ阻害剤の3種類を組み合わせている。(※高校の範囲内)[2] [3]\nなお、現代ではウイルス以外の真核生物からも、RNAの遺伝情報をもとにDNAをつくる酵素が発見されている(※ 東京書籍の検定教科書で報告されている。東京書籍の教科書では、その酵素も「逆転写酵素」と呼んでいる)。\n\nトランスファーRNA(tRNA)は、リボソ-ムまでアミノ酸を運ぶためのRNAである。なので、アミノ酸がトランスファーRNAに結合している。\nトランスファーRNAには、mRNAのコドンの3塩基(トリプレット)と相補的に結合する3塩基をもち、トランスファーRNAのその3塩基の部分をアンチコドン(anticodon)という。\nトランスファーRNAに、どの種類のアミノ酸が結合するかは、RNAのアンチコドンの配列によって異なる。\n一本の、メッセンジャーRNAに対し、トランスファーRNAはいくつも作られる。なぜならトランスファーRNAのアンチコドンは、メッセンジャーRNAのたったの3つぶんの配列にしか相当しないからである。\nメッセンジャーRNAの塩基配列をもとに、トランスファーRNAのアンチコドンが決定される。メッセンジャーRNAのコドンとトランスファーRNAのコドンは、お互いに相補的であるので、配列が違うので注意。遺伝暗号表などはメッセンジャーRNAのコドンを基準としており、アンチコドンは基準にしてない。\nさて、トランスファーRNAのアミノ酸の種類は、トランスファーRNAのアンチコドンの塩基配列にもとづいており、トランスファーRNAのアンチコドンの塩基配列の決定は、メッセンジャーRNAの塩基配列のコドンにもとづいておるから、最終的に(トランスファーRNAに結合している)アミノ酸の種類の決定はメッセンジャーRNAにもとづく事になる。\nタンパク質の合成はリボソーム(ribosome)で行われ、トランスファーRNAの運んできたアミノ酸からタンパク質をつくる合成がリボソームで行われる。リボソームも、独自のRNAを持っているのでリボソームRNA(rRNA)という。\n真核生物の場合、メッセンジャーRNA(mRNA)が核から外に出てきて、トランスファーRAN(tRNA)とmRNAがリボソームで出会って、ポリペプチドをつくる。\nリボソームに移動したmRNAの塩基配列に、tRNAのアンチコドンが結合する事によって、いくつもあるtRNAの並びが正しく並ぶ。\nこのようにアミノ酸の配列を決めているのはmRNAであり、けっしてリボソームRNAの配列はアミノ酸の配列決定には関わっていない。\nまた、リボソームへ移動するRNAは、けっしてトランスファーRNAだけでない。メッセンジャーRNAも、リボソームへと移動している。\nさて、リボソ-ムで、tRNAからアミノ酸を切り離す作業が行われる。\nそしてリボソームで、アミノ酸をペプチド結合でつなぎ合わせてポリペプチド鎖をつくり、そのポリペプチド鎖が折りたたまれてタンパク質になる。\nアミノ酸を切り離されたtRNAは、mRNAからも離れ、tRNAはふたたびアミノ酸を運ぶために再利用される。\nこのように、リボソ-ムで合成されるタンパク質でのアミノ酸の並びの決定方法は、おもにメッセンジャーRNAの配列にもとづくのであり、いっぽうリボソームRNAの配列は直接にはアミノ酸の並びの決定には関わっていない。\nmRNAへの転写が行われると、転写の終わりを待たずに、転写中に、ただちにリボソームがmRNAに直接に取りつき、そこでタンパク質の合成が行われる。\n真核生物では、DNAからRNAへの転写時に、核の中で、いったん全ての配列が転写され、そのあとに配列のいくつが除去されて、残った部分がつなぎあわされてmRNAが出来上がる。\nRNAの転写直後の、まだ何も除去されてない状態を mRNA前駆体 という。除去される部分に相当するDNA領域をイントロン(intron)という。mRNA前駆体からイントロンが取り除かれて、残って使われる部分に相当するDNA領域をエキソン(exon)という。エキソンに相当する部分どうしのRNAが繋がる。よってエキソンの領域が、タンパク質のアミノ酸配列を決めることになる。\nこのようなイントロン除去の過程をスプライシング(splicing)という。スプライシングは核の中で起きる。\nmRNAは、転写直後のRNAから、こうしてイントロンに相当する配列が除去されてエキソンに相当する配列どうしが繋がった物である。\nスプライシングが完了してmRNAになってから、mRNAは核膜孔を通って核の外へと出て行き、リボソームでのタンパク質合成に協力をする。\nある遺伝子の配列から、2種類以上のmRNAが作られる場合がある。これは、mRNA前駆体は共通だが、スプライシングの過程で、エキソン対応領域が除去される場合もあり、どのエキソンを除去するかの違いによって、最終的に出来上がるmRNAが変わってくるからである。また、いくつかのイントロン対応領域が除去されずに残る場合もある。エキソンどうしが繋がるときに、となりどうしのエキソンではなく、離れたエキソンと繋がる場合もある。\nこうして、数種類のmRNAが作られる。これを選択的スプライシング(alternative splicing)という。\nこうして少数の遺伝子から、選択的スプライシングによって多種類のmRNAが作られ、多種類のアミノ酸配列が出来て、多種類のタンパク質が作られる。\n原核生物の場合は、一般に、転写で出来た配列が、そのままmRNAになる。よって原核生物ではスプライシングは起こらず、したがってイントロンを原核生物は持たない場合が普通である。\n2本鎖のうち、転写されるのは、どちらか片方である。残りのもう片方の鎖は転写されない。\nどちらの鎖が転写されるかは、場合によって変わり、けっして、あらかじめは決まってない。\n転写されないほうの鎖をセンス鎖(センスさ、sense strand)という。転写されたほうの鎖をアンチセンス鎖(アンチセンスさ、sense strand)という。\nどちらがセンス鎖になるかは、けっして、あらかじめは決まってない。\nある生物の細胞内に、もし外部からウイルスが侵入した場合、その細胞はすでにウイルスに感染されてしまってるので、生物はウイルスの増殖を防ぐ必要があり、ウイルスに感染した細胞の増殖やさまざまな活動を止めなければならないだろう。\n上記のような理由だろうか、下記のような実験事実がある。\nまず、真核生物では、RNAには、翻訳を行わない種類のものや、翻訳を妨害するものがあることが、わかっている。\n真核生物でのmRNAの転写後に、もし、細胞内などに、そのRNAとは他のある短いRNAが存在している場合、そのある短いRNAがmRNAに結合して、mRNAを分解したり、リボソ-ムの翻訳を妨げたりするなどして、mRNAに(たいていは妨害的に)関わることをRNA干渉(RNA interference、略称:RNA i)という。\nこのような反応によって、mRNAの発現が妨げられる。このときの短いほうのRNAの長さは、切断され、塩基対の数が21塩基ほどになる。(参考文献: 羊土社『理系総合のための生命科学』、著: 東京大学生命科学教科書編集委員会、2007年第1刷、120ページ、コラム内の記事)\nまたは細胞の遺伝子組み換えの際に、短いRNAを目的の細胞に人工的に導入して、上記のような切断反応や妨害反応などによる、遺伝子の発現の妨害(ノックダウン)を起こさせる事にも利用される。\nRNA干渉は、外部から侵入したウイルスなどのRNAも切断したりもする。\n歴史的な経緯によりセンチュウに存在するRNA干渉が有名だが、しかし、センチュウのほかにも、多くの菌類や植物などにもRNA干渉の現象は存在する(※ 第一学習社の検定教科書:)。\nこのため、外部の病原体や異物などの分解の仕組みとして、RNA干渉が発達してきたのだろうと考える研究者もいる。(参考文献: 裳華房『理工系のための生物学』、坂本順司、2015年8月10日 改訂版、133ページ、傍注、)\nRNA干渉の発見者はファイアーとメローであり、センチュウを用いた実験で1998年に発見された。ファイアーらはノーベル生理学・医学賞を2006年に受賞した。\n医療応用などにも期待されており、RNAの制御を通してDNAの発現を制御できそうだという期待をされている。\nRNAを導入するときに、相補的なRNAどうしを結合させて二本鎖RNAにした場合のほうがRNA干渉が発現しやすい。書籍によっては、RNA干渉の紹介のときに最初から、「細胞に、ある短い二本鎖RNAを導入すると、mRNAを切断したりリボソームの結合を阻害したりして発現を阻害することをRNA干渉(略称:RNA i)という。」などというように、二本鎖RNAであることを前提としてRNA干渉を紹介している場合もある。\n(※ 範囲外) よく、セントラルドグマの例外的な現象として、エイズなどの逆転写が上げられるが、逆転写以外のセントラルドグマの例外として、RNA干渉もセントラルドグマの例外とみなせる。(※ 参考文献: たとえば 東京大学理学系研究科-理学のキーワード-『RNA干渉』 2018年10月21日に閲覧)\n※ じつは、本wikibooksの本章にあるような、前書きでの免疫的な説明による仮説は、検定教科書には無い(ただし、第一学習社だけ(「免疫」ではなく)「生体防御」という語で、後書きしており、センチュウなどからの防御と説明している)。検定教科書では、先入観を除去するためだろうか、免疫的な内容を、説明の前置きにはしていない。しかし、本wikibooksでは、まずRNA干渉の動作過程を学生に覚えやすくするため、便宜的に、免疫的な内容を前置きした。\n大学レベルの教科書でも、免疫的な説明の前置きは無く、免疫的な内容は、あとがき的に、仮説のひとつとして説明されている場合が多い。\nかま状赤血球貧血(sickle-cell anemia)は、欠陥をつまらせる。溶血して貧血の原因にもなる。\n原因は、ヘモグロビンをつくるアミノ酸配列の異常であり、その配列異常の原因は、DNA配列の異常。\nそもそもヘモグロビンはタンパク質で、できている。\nヘモグロビンタンパク質の6番目をつくる遺伝子のDNA配列上のある一個のチミンが、アデニンに置き換わっているため、この病気が起きる。\nこの置き換えによって、本来ならmRNAのコドンのGAGという配列によってグルタミン酸(Glu)というアミノ酸が出来るべきところが、GUGというコドンになってしまっているのでバリン(Val)というアミノ酸が出来る。\nこのためヘモグロビンのアミノ酸配列が変化し、結果的にヘモグロビンタンパク質の立体構造が変化して、かま状の構造になる。\n鎌状赤血球貧血症の患者はマラリアに強く、そのためマラリアの生存地域のアフリカなどでは、むしろ生存に有利でもある。\nマラリアの起こる仕組みは、マラリア原虫が赤血球に感染して起きる病気である。\nショウジョウバエやユスリカの幼虫の唾腺(だせん)の細胞では、巨大な染色体が観察でき、その唾腺(だせん)染色体では、パフという、膨らんだ部分のある染色体が観察される。パフでは転写が活発に行われている。パフの位置は、発生の成長の段階に合わせて、パフの位置も変わっていく。\nこのようなことから、遺伝子は、けっして常に同時に転写されるわけではなく、そうではなくて、発生にともなって活発化する遺伝子が変わっていくことが分かる。\n昆虫の脱皮やさなぎ化などの変態はエグジステロイドというホルモンによって促進される。パフの発現も、エグジステロイドによって促進されている。\nヒトの必須アミノ酸でフェニルアラニンというアミノ酸がある。\n健康な人間なら、不要になったフェニルアラニンは分解される。しかし、フェニルケトン尿症(phenylketonuria)の患者では、そうではない。\nこの病気は遺伝病であり、原因は遺伝子の配列にある。\nフェニルケトン尿症では、フェニルアラニンをチロシンに変換する酵素の遺伝子の塩基が変化してしまっていることが原因であり、そのため変換酵素が合成できず、その結果、チロシンが合成されないで、ファニルアラニンが血液中に余り、フェニルケトンに変化して、尿中にフェニルケトンとして排出される。\nチロシンをもとにして、メラニン(melanin)やアルカプトンなどが合成される。\nメラニンを合成する酵素に異常が起きた遺伝性の症状が、アルビノ(albinism)である。\nアルカプトン(ホモゲンチジン酸)は、健康なヒトでは最終的に分解され、水と二酸化炭素になる。を分解する酵素(ホモゲンチジン酸オキシダーゼ homogentisate dioxygenase)に異常が起きたため、この酵素が無く、アルカプトンを分解できなくなった遺伝病がアルカプトン尿症(alcaptonuria)である。アルカプトン尿症では、尿中に尿を放置すると、尿が黒くなる。\nなお「アルビノ」とは、メラニン色素をつくる遺伝子が突然変異などで欠損したことによって起こり、そのために、体が全体的に白く、瞳(ひとみ)は赤い、症例または そのような動物個体。わかりやすい例でいうと、白ウサギのような色をしている動物がアルビノである。なお、アルビノ者の瞳の赤色は、毛細血管の色である。\n紫外線により、DNA上で隣接する2個のチミンどうしに紫外線が当たれば、チミンどうしが結合してしまい、こうしてチミンは損傷する。\nこうした損傷を受けると、損傷を直すために、二本鎖のうちの損傷を受けた側のヌクレオチドとその周囲の塩基(除去される塩基数は十数ほど)が除去されて、新しい塩基と置き換わる。\nDNAポリメラーゼによって、損傷を受けてない側の鎖の塩基をもとに、相補的な配列が加えられ、DNAリガーゼで両端がつながれることで、修復される。\n大腸菌は、生育にグルコースを必要とする。では、乳糖(ラクトース)などの、他の糖では、どうなるか。\nフランスのジャコブとモノーの1965年ごろの実験により、大腸菌とラクトース(乳糖)について、以下の事が明らかになった。\n大腸菌はグルコースがある環境では、ラクトース(乳糖)を消化しない。しかし、グルコースが無くて、ラクトースがある環境では、ラクトースを分解する酵素(βガラクトシダーゼなど)を合成し、大腸菌はラクトースを消化する。\nまた、突然変異をした大腸菌では、グルコースがあってもラクトースを分解する株も、あらわれた。\nこの突然変異の事から、遺伝子が、関わっていることが予想される。\nまた、突然変異でない通常の株について、糖の分解では酵素が働いてるわけであるが、そもそも酵素の合成には遺伝子が発現をしているわけだから、つまり遺伝子の発現の何かが環境によって変わったことになる。通常の株については、グルコースが多かろうが少なかろうが、DNAの塩基配列そのものは同じであり、DNAの塩基配列は何も変わっていない。グルコースの多いか少ないかで変わったのは、DNAの発現の何かである。\nでは、具体的に、いったい、DNAから酵素合成までのどの段階で、発現の有無を切り替えているのだろうか、という疑問が、本節で説明することである。\nつまり、もしやDNAが発現しないことでRNAが存在してないのか、それともRNAが発現しないことでポリペプチドが存在していないのか、あるいはポリペプチドが発現していないことで酵素として発現していないのか、それとも・・・、などの検討である。\n大腸菌のラクトース分解の場合は、DNAに調節タンパク質がくっつく事によって、DNAの発現の調節が起きていることが分かっている。このような調節タンパク質がくっつくDNAの領域をオペレーター(operator)といい、その遺伝子群をオペロン(operon)という。\n(※ 以下、参考文献:Wikipedia日本語版記事『オペロン』)\nこの大腸菌のラクトース分解の機構は、1980年ごろからの遺伝子工学やX線構造解析などの実験などによって、近年になって機構が証明された。1960年代の当事では、まだ仮説であり証明できておらず、おそらくDNAの段階で調節されているのだろうという仮説の段階であった。\n(Wikipedia解説おわり)\nジャコブとモノーは、おそらくDNAの段階で調節されているのだろう、というオペロンの機構の説を提唱し、これをオペロン説(operon theory)という。\nRNAポリメラーゼは、DNAからmRNAへの転写の開始の際、まずプロモーターというDNA領域に、くっつく。\n大腸菌のラクトース分解の事例では、大腸菌DNAのプロモーターと、酵素の遺伝子との間に、オペレーターがあって、このオペレーターに調節タンパク質がつくことで、mRNAへの転写を中断させるという仕組みで、発現を抑制してるのである。\nそして調節タンパク質がDNAに結合できるかどうかが、環境中の物質によって変わってくることになる。\nさて、転写を抑制する調節タンパク質のことをリプレッサー(repressor)という。\n大腸菌の場合、グルコースが多い通常時は、ラクトース分解酵素の遺伝子DNAの直前の領域について、リプレッサーとして働く調節タンパク質が、オペレータ領域に結合することでRNAポリメラーゼの進展を妨害し、こうしてラクトース分解酵素の発現を抑制している。\nまたラクトースがありグルコースが無い環境では、大腸菌は、リプレッサーとして働く調節タンパク質の形状が変わり、もはや調節タンパク質はオペレータ領域に結合できなくなる。すると、グルコースが多い通常時ではRNAポリメラーゼの進展を妨害していた結合タンパク質がなくなるので、RNAポリメラーゼが酵素遺伝子に向かって進展ででるようになり、こうして酵素の遺伝子をRNAポリメラーゼが転写して、ラクトース分解酵素が発現する。\nなお、大腸菌のラクトース分解の以外の事例では、別にRNAやタンパク質などが酵素の発現を調節する事が無いわけではない。そのような現象もある。単に大腸菌のラクトース分解の場合では、DNAにリプレッサーが結合することで、酵素の発現を調節しているということである。\nこれらの結果から、また、調節タンパク質をつくるための遺伝子も存在している事が分かる。\n調節タンパク質をつくるための遺伝子を調節遺伝子(regulatory gene)という。\n大腸菌では、アミノ酸のトリプトファンが多いとき、転写が促進される 。トリプトファンが少ないとき、転写が抑制される。\n真核生物のDNAは、通常時は、ヒストン(histone)という球体のタンパク質に、まとわりついている。このヒストンは、ヒストン4個(つまり球体4個)で、一つの組になっている。ヒストンにDNAがまとわりついた構造をヌクレオソーム(nucleosome)という。さらに、このヌクレオソームが連なったものが、折りたたまれる構造をとっており、このヌクレオソームの折りたたまれた構造をクロマチン繊維(chromatin fiber)という。\nDNAからRNAへの転写について、このようなヌクレオソームな状態では(つまり、ヒストンにDNAが、まとわりついた状態ではクロマチン繊維がぎゅうぎゅうにくっついているため、RNAポリメラーゼがくっつくことができない)、転写できない。転写の前にヒストンから、DNAが、ほどかれる必要がある。\nヒストンの特定のアミノ酸にアセチル基 -CH3CO- が結合することで、DNAとヒストンとの結合が弱くなり、ヒストンからDNAが、ほどかれる。\nいっぽう、ヒストンの特定のアミノ酸にメチル基が結合すると、ヒストンに強く結合するので、ほどけにくくなるため、転写されにくくなる。\n(※ 未記述)\n染色体は、ふつうは2nだが、まれに2n±1や2n±2などの個体が現れ、このような性質を異数性といい、その性質を持って生まれた個体を異数体という。\n染色体の核相が3nや4nの場合、そのような性質や現象を倍数性といい、その性質を持って生まれた個体を倍数体(ばいすうたい、ploid)という。3nのものを三倍体といい、4nのものを四倍体という。なお、通常の核相2nの個体を二倍体という。\n三倍体は正常には減数分裂ができないため、生殖能力が無い。たねなしスイカは三倍体であるので、種を持たないのである。\n4nなどの倍数体は、化学薬品のコルヒチンなどで生じやすい。なお、コルヒチンそのものはユリ科のイヌサフランなどに含まれる。\n細胞分裂時の紡錘体の形成を、コルヒチンが阻害する。このため、細胞分裂時に倍増した染色体が両極に分かれず、そのまま四倍体の細胞になる。\n三倍体は、四倍体と二倍体とを交配させて作る。\n(※ 未記述)\n「アルビノ」とは、メラニン色素をつくる遺伝子が突然変異などで欠損したことによって起こり、そのために、体が全体的に白く、瞳(ひとみ)は赤い、症例または そのような動物個体。わかりやすい例でいうと、白ウサギのような色をしている動物がアルビノである。なお、アルビノ者の瞳の赤色は、毛細血管の色である。\nフェニルケトン尿症やアルカプトン尿症については、他の単元で説明する。(単元「遺伝性の代謝異常」など。)\nダウン症候群とは、ヒトの遺伝病の一つであり、21番目の染色体が一本多い。先天的な知能障害がある(※ 参考文献: 『チャート式新生物 生物基礎・生物』平成26年版)。このため染色体数は合計で47本になる。母親の高齢出産で生じやすい。\n(※ 理科の範囲外 :)なお、人間の場合、高齢出産でダウン症が起きる確率が上がる。(※ 清水書院の社会科の資料集『現代社会ライブラリーへようこそ 2018-19』でも紹介。)\n近年、出生前診断(しゅっせいまえ しんだん)により、胎児のダウン症や流産などの異常の有無を検査できるようになった(※ 2019年に記述)。\n\nおもに遺伝子工学について、この単元では解説される。\nたとえば大腸菌は、菌体内に侵入してきたウイルスのDNAを切って殺す酵素を持つことがわかっている。この酵素は、特定の配列をもつDNAの特定の箇所を切断することがわかった。制限酵素にDNAを混ぜると、DNAの特定の配列を切断する。\n大腸菌の持つEcoR1(エコアールワン)は GAATTC という配列を持つDNAをその個所で、GとAの間を切断する。\nというふうに、切断する。\nほかのバクテリアなどからは、BamH1(バムエイチワン)が発見された。\nBamH1は、GGATCCを切断する( G(切)GATCC )。\nこのように酵素が異なれば、切断する配列も異なる。\nこれらのような、特定の配列のDNAを切断する核酸分解酵素を制限酵素(せいげんこうそ、restriction enzyme)という。\nいっぽう、切れたDNAをつなげるDNAリガーゼ(DNA ligase)という酵素も見つかっている。\n制限酵素とDNAリガーゼは、DNAを組替えるための、ハサミとノリのような物として利用できる。制限酵素がハサミであり、DNAリガーゼがノリである。\nこのような酵素をいくつも用意しておけば、人間が酵素を混ぜることによって、遺伝子の組換えができる。\n二本鎖DNAでは、A-T、G-Cがついになっている。\nEcoR1の切断する、GAATTCの対は、\nというふうに、下側のDNA配列(CTTAAG)を逆向きに読むと、上の配列と同じになっており、回文(かいぶん)構造である。回文とは、「たけやぶ やけた」とか「しんぶんし」とかのような逆さ読みしても同じ言葉になる文のことである。\nなお、遺伝子組み換えした生物のことをトランスジェニック生物(トランスジェニックせいぶつ)という。\n2本鎖DNAの両端がつながり、環状になっているDNAをプラスミド(plasmid)という。大腸菌にはプラスミドがある。遺伝子の組換えではプラスミドが、用いられる場合が多い。プラスミドは菌体内で独立して増える。バイオテクノロジーでの遺伝子組み換えのときに、大腸菌などのプラスミドに遺伝子を組み込んで、その菌に取り込ませて菌のDNAに組み込む事が多い。DNA発現時に有用なタンパク質を生産するDNAを組み込めば、遺伝子組み換えした菌を増殖させることで、その菌に有用なタンパク質などを作らせたりもできる。\n遺伝子組み換えのときのプラスミドのように、遺伝子組み換えのときに目的の生物に遺伝子を組み込むための容れ物のことをベクター(vector)という。vectorとは「運び屋」という意味である。\nヒトの糖尿病の治療に用いられるインスリン(すい臓のホルモン)や、ヒトの成長ホルモンも、遺伝子組み換えした大腸菌で、すでに生産できるようになった。このように天然からは少量しか採取できないタンパク質や酵素などを遺伝子組み替え技術を用いて大量生産する技術が研究・開発されている。\n大腸菌はプラスミドを持ち、プラスミドの中に、大腸菌自身が作る制限酵素をコントロールする遺伝子を持つ。\nたとえば輪ゴムを切ると一本のゴム糸になるように、プラスミドは制限酵素を用いて切断されると、切断されたプラスミドは線状になる。\n植物に遺伝子を組み込む場合は、アグロバクテリウム (Agrobacterium)という土壌細菌と、そのプラスミドを用いる場合が多い。アグロバクテリウムを植物に感染させて遺伝子を組み込む。\n目的の遺伝子をプラスミド中に組み込み、そしてアグロバクテリウムを植物に感染させる方法で、植物に組み込む。\nなお、このように、遺伝子組み換えした植物のことをトランスジェニック植物という。\n植物によってはアグロバクテリウムが感染しづらい場合もある。そのような感染しづらい場合、後述の細胞融合などの方法を用いたり、微小ピペットなどで直接的に導入する場合もある。\n遺伝子組み換えなどによって、個体の形質を変えることを、形質転換(けいしつ てんかん)という。\n研究中の遺伝子組み換え生物では、その安全性が、まだ検証中の場合もあり、なので実験中の生物が外部に漏れないようにするなどの対策も行う必要もある。\nカルシウムイオンCa2+は大腸菌の細胞膜の透過性を上げるので、カルシウムイオンを発生させる物質を加えると大腸菌がプラスミドを取り込みやすくなる。このカルシウムイオンによる大腸菌へのプラスミド組み込みの実験では、塩化カルシウム Cacl2 がよく使用される。このようにして大腸菌にプラスミドを取り込ませて形質転換を起こさせる。\nDNAは95℃程度の高温にすると、塩基間の水素結合が外れて、一本鎖に分かれる。この現象を利用して、さらにDNA合成酵素のDNAポリメラーゼ(DNA polymerase)と、材料の塩基対4種類(アデニン・チミン・グアニン・シトシン)を使って、DNAの個数を2倍に複製する事が出来る。\n95℃で2本に分かれた一本鎖の両方ともDNAポリメラーゼで相補塩基を足されて2本鎖になるから、最終的にDNAの個数が2倍になる。\n同じ反応を何回も繰り返すことで、最初から数えて 2倍→4倍→8倍・・・ と倍倍でDNAの個数を複製できる。\n増幅率は、理論上は20回くりかえすと、220=1048576個になる。\nDNAポリメラーゼは、すべての生物にあるが、この反応で用いるDNAポリメラーゼは温泉などから発見された細菌に由来する、熱に強い耐熱性のDNAポリメラーゼを用いている。\nこのようなDNAポリメラーゼを用いたDNAの複製技術をPCR法(ピーシーアール法)あるいはポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)という。\nDNAポリメラーゼによる合成の開始には、出発点としての塩基対の一本鎖が別に必要である。あらかじめ化学合成しておいた短めの相補塩基対の一本鎖をプライマーという。プライマーが合成の出発点として必要である。\nくわしい手順は、次の通り。\n増幅率は、理論上は「20回くりかえすと、220=1048576個になる」だが、実際には、一回の工程では、かならずしも複製しきれないこともあり、理論値よりも実際の増幅率が低くなる。\nまず、DNAは、水の中では負の電荷を帯びる。なぜなら、DNAのリン酸基が電離するためである。よって、適切な緩衝液の中ではDNAは負に帯電している。このような緩衝液の水溶液で湿らした寒天ゲルの中にDNA断片を置く。寒天の材質にはアガロースが良く用いられる。 さて、DNA断片に電場をかけると+極に引かれて動き出す。\nこのとき、移動速度は、長いDNA断片ほど、寒天の網目に引っかかるので移動速度が遅い。\nこのような実験を電気泳動(でんき えいどう、electrophoresis)という。電気泳動によって、移動速度を実験的に調べることで、DNAの長さを実験的に調べられる。つまり、DNA断片の分子量や塩基数を実験的に調べられる。\n実験の際、比較のため、長さを調べたいDNA断片とは別に、すでに塩基数・分子量が分かっている別のDNA断片も用いて比較実験する。このような比較のための既に塩基数や分子量の分かっているDNA断片をマーカーという。\n観測する際は、泳動後にDNA染色液を用いて染色する。実験装置の構造上、DNAが帯(バンド)状に染めだされるので、DNA電気泳動で染めだされた物をバンドという。このバンドの位置から、塩基数を推定する。\nまず人によってDNAの配列は微妙に違っている。制限酵素でDNAを切ると、得られるDNAの断片の長さは人によって違う。このDNA断片を電気泳動にかけると、人によって、DNA断片の移動速度が違う。\n刑事捜査や血液鑑定などに応用されている。\nオワンクラゲは緑色に光る蛍光タンパク質を持つ。このオワンクラゲの緑色蛍光タンパク質のことをGFP(green fluorecent protein)という。このGFPが、遺伝子組み換え実験での、組み込んだ遺伝子の発現を調べるための目印として、よく用いられる。\nまず、GFPに紫外線を与えると、緑色の蛍光を発する。\n調べたいDNA配列の一部に、オワンクラゲの緑色蛍光タンパク質(GFP)の遺伝子を組み込む。すると、調べたいDNA配列が発現している箇所で、いっしょにGFPの遺伝子も発現し、その結果、緑色の蛍光を発する。調べたい対象の生物を生きたまま蛍光させられるので、生きたまま遺伝子の発現を調べることができる。\n下村修(しもむら おさむ)が2008年に、オワンクラゲのGFPの研究でノーベル賞を受賞した。\nなお、ホタルの発光は、これとは異なる仕組みであり、ホタルの光は化学反応による発光でありATPを消費する。\n実は、オワンクラゲの体内では、光のおおもとの光源はGFPではない。イクオリン (aequorin) というタンパク質が、オワンクラゲの発光の光源である。イクオリンにカルシウムが結合すると、青く光る。(このため研究ではイクオリンは細胞中のカルシウムの検出にも用いられる。) \n目的の細胞への注射、または組み換え遺伝子により、目的の細胞の部位にイクオリンを含ませるのである。) (※ イクオリンの導入方法が注射の場合もあることについての参考文献: 羊土社『基礎から学ぶ生物学・細胞生物学』和田勝、2015年第3版、194ページ、)\nイクオリンからの青色の光をGFPが受け取り、緑色に変換しているのである。\nこのイクオリンを発見した人こそ、ノーベル賞受賞をした下村修(しもむら おさむ) である。\nなお、単にGFPで緑色に光らせたい目的の実験なら、イクオリンが無くても紫外線を照射すれば、GFPが緑色に発光する。(※ 参考文献: チャート式の生物、平成26年4月版)\nDNAポリメラーゼを用いたDNAの複製時に、材料のヌクレオチドに、塩基配列中のデオキシリボースの代わりにジデオキシリボースを持つ特殊なヌクレオチド(つまりジデオキシヌクレオチド)を作っておくと、そのジデオキシリボースがDNAに混ざったところで合成が止まる。\nこれを利用して、塩基配列を解析する方法が、ジデオキシ法(あるいはサンガー法ともいう)である。\nまず、解析したいDNAを一本鎖にする。\nそしてジデオキシリボースの塩基ごと(A、T、G、C、)に、合計4色の異なった蛍光色素で標識する。\nあとはDNAポリメラーゼで合成を開始させればよい。\nたとえばA(アデニン)にジデオキシリボースwp持つ物をある蛍光色素(1とする)で染色し、Tに持つ物を色素2で染色し、Gに持つ物を蛍光色素3で染色、Cに持つ物を蛍光色素4で染色する。このように、それぞれを異なる色素で染色しておく。こうすれば、合成が止まったときのDNAの蛍光色素の色で、止まった部位の塩基が分かる。\nこれと電気泳動を組み合わせれば、長さごとに分けられるので、あとは長さの順に並べて塩基を読めば、DNAの配列が分かる。\n植物や菌の細胞を、まずペクチン質が細胞どうしをくっつけているので、ペクチナーゼで、そのペクチン質を溶かす。そしてセルラーゼで細胞壁を溶かす。(またはリン酸カルシウムを用いて、細胞壁を溶かす場合もある。)\nなお、実際の実験では、浸透圧を調節する必要がある、浸透で細胞を壊さないようにするためセルラーゼ液などにマンニト-ルやグリシンなども加えている。[5]\n細胞壁がなくなると、細胞融合が起こりやすくなる。細胞壁がなくなると、内側の球形の細胞だけが残る。この細胞壁の無くなった残りの内側の球形の細胞をプロトプラスト (protoplast) という。プロトプラストは細胞膜だけに包まれている。プロトプラストと組換えプラスミドを混合すれば、細胞融合が行われる。細胞壁が残ったままだと、融合はほとんど行われない。\n融合を開始するにはポリエチレングリコール(PEG)を加えるか、あるいはセンダイウイルス(HVJ)を用いる。センダイウイルスは動物細胞の融合でも利用される。\nこのような細胞融合の方法で、ポマトとトマトの細胞を融合したポマトも開発された。しかし、特性などが悪く、たとえばジャガイモの芽にある毒がポマトにも含まれるなどの短所もあり、実用化されなかった。\nホタルの尻尾にある発行物質ルシフェリンは、ルシフェラーゼを酵素として、アデノシン3リン酸ATPと酸素O2と反応して、オキシルシフェリンという、ルシフェリンに酸素の化合した物質を生成する。この反応に伴って、発光が起こる。\nよって、ルシフェリンと蛍光光度計を用いることにより、ATPの量が測定できる。\n反応する前のルシフェリンとルシフェラーゼの量を、一定にしておけば、ATPの量によって発光の強さが変わるからである。\nところで、ほとんどの細菌は体内にATPをもつから、ルシフェリンを用いて、細菌の量を測定できる。つまり、微生物による汚染の度合いを測定できる。\n実用品として、すでに食品やレストランの衛生の度合いを測定するためのキットとして、ルシフェリンを含んだキットが実用化している。\n(※ 以降、範囲外?)\nルシフェリンを用いた微生物量の測定\nしかし細菌の体内にあるATPはこのままでは、ルシフェリンの混合液とは反応しない。細菌の細胞壁を破壊して、菌体外にATPを出してからでないと、ルシフェリンとは反応しない。よって、水に油を混ぜて菌を破壊して、ATPを菌体外に出す必要がある。\n従来の方法では、検査対象をガーゼでふき取り、付着した微生物を寒天培地で一晩ほど培養し、バクテリアのコロニーを数えていたので、検査に1日かかっていた。\nだが、ルシフェリンを用いた方法では短時間で終わる。\nこの方法には、大量のルシフェラーゼが必要になる。ホタルは希少な昆虫であり、乱獲するわけには行かないので、ホタル以外からの生産方法が必要になる。\n日本の民間企業であるキッコーマン株式会社は遺伝子工学を用いてルシフェラーゼを大量生産することに成功した。大腸菌にルシフェラーゼを作る遺伝子を導入して、大腸菌にルシフェラーゼを生産させる方法である。\nルシフェラーゼの生産\n植物の細胞片に植物ホルモンや培養液などを与えると、それから未分化の細胞の塊(かたまり)を育成したり、さらには個体を育成できる。こうしてできた未分化の細胞塊(さいぼうかい)をカルス(callus)という。\n培養する前の細胞片は、植物の分化した細胞だったわけだから、その培養細胞から個体が作れたということは、再び分化したことになる。このような植物は条件を整えれば再度の分化をすることを再分化(さいぶんか)という。また、植物の細胞片から培養などで個体を作れることを分化全能性(ぶんかぜんのうせい)あるいは単に全能性という。\nこのように、分化した細胞片が全能性のある細胞に戻ることを脱分化(だつぶんか)という。\nちなみに細胞壁を除去した植物細胞であるプロトプラストを培養すると、細胞壁を再生する。\nカルスを培養する際、添加する植物ホルモンの種類と量により、どのような組織に分化するかを制御できる(※ 高校理科の範囲内。)。\n高いオーキシン濃度で、さらに低いサイトカイニン濃度という条件では、カルスは根に分化する。\nいっぽう、高いサイトカイニン濃度、および、低いオーキシン濃度では、カルスは芽に分化する。(2016年現在の新課程生物でも、範囲内。数研出版や啓林館の検定教科書に記述あり。)\n培養元の細胞片がウイルスに感染していると、培養中にウイルスごと培養して増殖してしまう。植物の茎の頂上である茎頂(けいちょう)の組織は、つねに成長分裂をしているので(茎頂分裂組織)、一般に、まだウイルスに感染していない(ウイルスフリー)。なので茎頂から採取した細胞片が、培養によく用いられる。(これを「茎頂培養」という。)\nおしべの やく から取った花粉も、培養できる。これをやく培養という。生殖細胞の核相は、減数分裂によって核相が体細胞の半分(核相:n)であるので、よって培養された細胞も半数体(核相:n)である。なので、そのままでは花粉などの生殖細胞をつくれず生殖できない。これにコルヒチンを茎頂に加えると、コルヒチンは細胞分裂での紡錘体の形成を阻害して倍数体をつくる作用があるので、半数体の核相が2倍になって、もとの核相(2n)に戻る。染色体の2本鎖の両方とは、もともと同じ半数体の染色体だったので、コルヒチン処理後の染色体の遺伝子は純系(ホモ)になっており、やく培養前の遺伝子とは異なっている。\n短時間で純系の植物を培養したい場合に、よく利用される。\n農学などの応用の理由もあり、植物細胞の培養のバイオテクノロジーは、よく研究されているが、詳しい説明は高校理科の範囲を超えて、大学生物学や農学などの範囲になるので、説明を省略する。\n一般に、発生後の多くの動物の細胞は、すでに分化を終えているので、培養しようと培養液につけても分裂・増殖できない。ただし例外として、発生中の動物細胞や、いくつかの動物を除く。\nしかし、がん細胞は、発生後の個体から採取したがん細胞でも、培養できる。\nがん研究などで、Hela細胞(ヒーラさいぼう)が用いられている。子宮がんで死んだアメリカ人女性ヘンリエッタ Henrietta Lacks の細胞である。1951年にHela細胞が実用化された。\n1907年、アメリカのハリソンはカエルの神経細胞を培養し、培養した神経細胞から神経繊維が突起を伸ばすことを観察した。\n植物に突然変異を起こしたい場合、放射線を用いる場合がある。\nあるいは倍数体(核相が3nや4nなどのこと)を作りたい場合に化学薬品のコルヒチンを用いる事がある。(倍数体育種法)\nなお、コルヒチンそのものはユリ科のイヌサフランなどに含まれる。\n通常の細胞は二倍体である。細胞分裂時の紡錘体の形成を、コルヒチンが阻害する。このため、細胞分裂時に倍増した染色体が両極に分かれず、そのまま四倍体の細胞になる。\nたねなしスイカは三倍体などの倍数体であるので、種を持たないのである。\nこの単元では、おもに遺伝子組み換えの観点からテクノロジーを解説しているが、これら遺伝子工学的なテクノロジーのほかにも、多くのバイオテクノロジーがある。\nたとえば動植物の伝統的な育成方法にも様々な知識や技術が必要だし、また、たとえば人工授精には発生の仕組みの理解が必要である。身近な食品などでも、たとえば納豆やヨーグルトなどの発酵食品だって、生物を利用した技術である。ほかにも、木材を用いた家具とか、イグサを用いたタタミとか、生物に由来する材料は多くある。そのような生物に関する様々な技術の原理を理解できるようにするため、読者は、けっして、この単元だけでなく、ほかの単元も学ぶ必要もあり、よって生物I・IIを全体的に学ぶ必要がある。\nまた、薬品も用いることが多いので、読者は化学なども勉強しなければならない。遠心分離機も使うことがあるから物理の力学も勉強しなければいけないし、電気装置や照明機器・光学機器なども用いることがあり、さまざまな物理を勉強しなければならない。\n読者は勉強する事は多いが、あまり気負いしないようにして、とにかく、きちんと高校の各教科の教科書・参考書・問題集などにマジメに取り組めば良いだろう。\n(未記述)\n(未記述)\niPS細胞は、体細胞に、ある4種類の遺伝子を入れるだけで分化全能性のある細胞になったのをiPS細胞というのである。では、どうやって、その4種類を特定したかというと、・・・\nまず、ES細胞などの研究により、分化全能性をつかさどってる可能性のある遺伝子の候補を、24種類までに特定できた。\nこの24種類のなかには、分化全能性をつかさどるのに必要不可欠な遺伝子と、いっぽう、文化全能性には不要な遺伝子とが、混ざっており、一体どれが本当に必要な遺伝子かを、さらに調べる必要があった。\nしかし、224(2の24乗)は16777216である。\nそんな莫大な回数(16777216回)の実験をするのは無理だし、実際に山中伸弥らのグループはそのような実験はしてない。\n山中らのグループは、24個の候補遺伝子から1個だけ遺伝子を抜いた23個の遺伝子を、使って実験したのである。\nつまり、例えば、\n・・・\nたった24回の実験をするだけでよい。そして、山中らは実際に24回の実験をして、このようにして、山中のグループは、iPS細胞の発見にたどりついた。\nなお、現状では、iPS細胞化のための4種類の遺伝子のひとつに、がん化を引き起こすウイルスから採取したDNAを使っているので、がん化のリスクがある。(※ 清水書院の社会科の資料集『現代社会ライブラリーへようこそ 2018-19』で紹介。)\n高校用の検定教科書・受験参考書などを確認のために参考してるが、どこの教科書にも書かれているような共通的な内容のため、引用などの特別な理由の無い限り、これら検定教科書および参考書については参考文献としての文献紹介を省略する。\nバイオテクノロジーについては、検定教科書のほか、次の文献を参考にした。\nそのほか、大学用の教科書などを確認のため参考にしたが、高校範囲外なので、書名を高校生に知らせないほうが良いと考えて、特別な理由の無い限り、文献紹介を省略する。\nルシフェラーゼの記述の参考文献については、手元に文献が無いので書名を思い出せない。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%94%9F%E7%89%A9/%E7%94%9F%E7%89%A9II/%E9%81%BA%E4%BC%9D%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%81%AE%E7%99%BA%E7%8F%BE"} {"text": "地球は約46億年前に誕生しました。地球が誕生したときは、高温のマグマに覆われていたと考えられています。その時は、生命は存在していなかったと考えられています。\n表面が徐々に冷えてくると、水蒸気が冷えて雨になり海ができました。\n最初の生命は、この原始の海の中や近くで生まれたのではないかと考えられています。\nまた、隕石に有機物が含まれていることがあるので、有機物の起源を宇宙に求めるという説もあります。\nミラーは原始地球の大気を想定した気体中で放電することで、アミノ酸などの有機物が合成されることを発見した(1953年)。\nミラーが想定した原始大気は、メタン(CH4)・アンモニア(NH3)・水蒸気(H2O)、水素(H2)の混合気体である。\nこのような実験結果から、原始大気で放電などによってアミノ酸などが発生し、それをもとに生命が誕生したという可能性が、生命の発生の一説として考えられている。\nまた、このように、単純な化学反応によって最初の生命ができたという説を化学進化(かがく しんか、chemical evolution)という。\n海洋の海底で、熱水が噴出している場所があり、これを熱水噴出孔(ねっすい ふんしゅつこう)という。地下のマグマによって熱せられている。\n噴き出す熱水にはメタン・硫化水素・アンモニアなども含まれており、これらの物質は有機物の原料になるものが多いので、このような場所で生命の発生が起きた可能性も、生命の発生の説として考えられている。\nオパーリン(生物学者)は、タンパク質をふくむ水の液滴、あるいは核酸をふくむ水の液滴などをコアセルベートとよび、コアセルベートから生命が誕生したと考えた。\n今日の生命の遺伝物質はDNAであるが、しかし最初の生命はRNAを遺伝物質とする生命だったという考えがあり、RNAを遺伝物質とする生命が繁栄していたという考えがある。このようなRNAを遺伝物質とする生命の時代や、このような考えをRNAワールドという。\nこれに対して、今日の生命のようにDNAを遺伝物質とする生命の時代や考えをDNAワールドという。\n最古とされる生物化石が、オーストラリアの約35億年前の地層から、見つかっている。この生物化石の最古の生物は、原核生物だろうと考えられている。\nグリーンランドの約38億年前の地層の堆積岩から、生命の痕跡が見られる。これらのことから、約40億年前には、生命が誕生していたと考えられている。\n27億年前の地層から、ストロマトライトとよばれる岩石状の層状構造が見つかっており、この構造は原核生物のシアノバクテリアが作る構造として知られている。この時代以降の地層で、世界各地からストロマトライトの地層が見つかっている。よって、この時代にシアノバクテリアが大繁殖していたと考えられている。\n光合成をシアノバクテリアは行う。光合成で酸素が放出される。そのため、シアノバクテリアが繁栄していれば、海洋や大気で酸素が増加する。はじめは海洋中に解けていた鉄イオンと酸素が結びつき、酸化鉄として海底に沈殿していったと考えられている。(なお、今日、海底や地中にある鉄鉱床は、この時代に作られたと考えられている。) 海水中の鉄イオンが酸化して沈殿していくので、しだいに海洋中の鉄イオン濃度が低下していき、こんどは大気中で酸素濃度が増大することになった。この大気中での酸素の増加によって、酸素を好む好気性細菌が増加したと考えられている。\nまた、大気中の二酸化炭素が光合成などにより低下していたと考えられる。その結果、二酸化炭素による温室効果が低下し、地球の温度が低下したと考えられる。また、地上では酸素が増大したことにより、オゾンが形成され、地表に降りそそぐ紫外線の量が減るようになり、生物が生息しやすくなったと考えられる。\n真核生物の中にあるミトコンドリアは、独自のDNAを持っている。\nこのことから、原核生物の嫌気性細菌の中に、ミトコンドリアの祖先である好気性細菌が入り込んで、それらが共生していった結果だと考えられており、このような説を共生説(きょうせいせつ)といい、マーグリス(アメリカ人)などによって提唱された。\n葉緑体も独自のDNAを持っている。同様に、原核生物に、葉緑体の祖先の生物が入り込んで、共生していった結果だと考えられている。葉緑体の祖先は、シアノバクテリアに近い生物であることが、DNAの塩基配列の解析によって、分かっている。\n地球上で最古の岩石ができてから現在までを地質時代(ちしつ じだい)という。\n地質時代の区分は、先カンブリア時代・古生代(こせいだい)・中生代(ちゅうせいだい)・新生代(しんせいだい)に分けられる。\n最古の生物が現れてから真核生物が現れるまでの時期は、先カンブリア時代にふくまれる。\n各代は、さらに、いくつかの紀に分けられる。たとえば古生代は、カンブリア紀・オルドビス紀・シルル紀・デボン紀・石炭紀・ベルム紀に分けられる。\nなおカンブリア紀は、古生代であり、先カンブリア時代ではない。\n三葉虫(さんようちゅう)は古生代の生物であり、アンモナイトは中生代の生物である。三葉虫は古生代末に絶滅してしまう。よって、三葉虫の化石がある地層から出土すれば、その地層が形成された年代は古生代であることが分かる。このような、時代を知れる化石を示準化石という。三葉虫の化石は、示準化石である。いっぽう、サンゴは暖かくて浅い海に生息するので、サンゴの化石があれば、その化石ができた時代に、その場所は暖かくて浅い海底だったことが分かる。このサンゴの化石のように、場所の特徴を知れる化石を示相化石(しそう かせき)という。\n先カンブリア時代の後半である約7億年前、地球が寒冷化して、地球の大半が氷河で覆われた。これを全球凍結(ぜんきゅう とうけつ、Snowball Earth スノーボール・アース)という。全球凍結によって、多くの生物が絶滅した。一部の生物は絶滅をまぬがれて、生き残った。\n示準化石によって、地層の新旧は分かるが、具体的に何年前のものかは分からない。具体的な年代は、放射性年代測定によって測定される。放射性同位体は、一定の速さで壊変して最終的に安定な原子に変わっていく。(と考えられている。実際に古代から現在までの放射同位体の壊変速度を測定した人はいない。)\n放射性同位体のもとの原子の総数が、もとの半分になるまでの間にかかる時間のことを、半減期(はんげんき、half-life)といい、放射性同位体の種類によって異なる。\n半減期は、その原子ごとに一定であり、変わらない。この法則を利用して、化石の年代を測定する。\n元素の種類によって、測定方法は細かくちがう。\n生物の化石の場合、つぎに述べる炭素の放射性同位体がよく利用される。\n地上の大気にふくまれる炭素Cは、太陽光線などの影響により、いくらかの割合で一部の炭素が放射性同位体の炭素 14C に変わる。生きている植物体は光合成などにより、放射性炭素ごと、炭素を取り込む。このため、生きている植物体は、一定の割合で放射性炭素をふくむ。放射性炭素の半減期は、約5700年である。\n植物体が死ぬと、大気との循環が止まるので、新たな放射性炭素が増えなくなるので、これを利用して化石の年代を測定できる。\n炭素の半減期は、約5700年と、地球の歴史の中では短いほうなので、数万年以内という新しい時代の年代を測定するときに用いる。\n古い地質時代の年代測定は、ウラン(238U)などの半減期の長い元素の放射性同位体による。ウラン238Uの半減期は4.5×109 年。\n化石や地層の古さを数値で具体的に、たとえば「約200万年前」「約2500万年前」のように表した年代を、絶対年代(ぜったい ねんだい、absolute age)とか数値年代()という。\n放射性同位体による測定を利用して数値年代を測定する場合が多いので、放射性年代(ほうしゃせい ねんだい、radiometric age)ともいう。\n一方、示準化石などを利用して、「この地層は、あの地層よりも古い」などというように地層の新旧関係のみを考えた場合の年代を相対年代(そうたい ねんだい、reklative age)という。\n最初の多細胞生物が出現した時期は不明だが、おそらく約10億年前の先カンブリア時代だと考えられている。最古の多細胞生物の化石が、約6.5億年前とされる地層から見つかっている。世界各地で、同時期の地層から、この時代の生物の化石が見つかっている。オーストラリアのエディアカラという地域が、そのような化石の産出地として代表的であるので、この6.5億年前ごろの時代の生物群をエディアガラ生物群(エディアカラせいぶつぐん)という。エディアカラ生物群のほとんどは、体がやわらかく、殻を持たず、扁平な形をしている。\n体が扁平なことから、移動能力は低いと考えられ、また、海中から酸素を直接に取り入れていたと考えられる。\nクラゲのような生物の化石も見つかっている。\nこのエディアカラ生物群は、気候の変動などにより、ほとんどの種が絶滅した。\nそして、約5億4000年前に先カンブリア時代が終わる。\n軟体動物や節足動物、環形動物など、多くの種類の動物が誕生した。このような、カンブリア時代での生物の多様化を「カンブリア大爆発」という。\nカナダのロッキー山脈のバージェスで化石が発見されたことから、この時代の生物群をバージェス動物群という。\n三葉虫、アノマロカリスなどが、バージェス動物群である。\n殻の成分としてカルシウムを持つ生物が多くいることから、海水中にカルシウムが豊富だったと考えらている。また、硬い殻は、捕食者に対抗するためのものだと考えられており、つまり、捕食者-被食者の関係が、この時代の生物群で既に存在していたと考えられている。\nカンブリア紀の末までに多くが絶滅した。\nカンブリア紀末~オルドビス紀(古生代)の魚には、顎(あご)が無く、ヤツメウナギの仲間である無顎類(むがくるい)だった。\n古生代シルル紀~デボン紀に、顎のある魚が出現し、シーラカンスなどが出現した。\nカンブリア時代に光合成をする藻類が繁栄し、酸素が大気中に増大し、それによってオゾン層が形成された(オゾンの化学式はO3)。\n このため、地表にふりそそぐ紫外線が減った。(紫外線は、DNAを傷つける。)\n化石が確認されている最古の陸上植物は、シルル紀のクックソニアである。(クックソニアの高さは数cm) クックソニアの個体は、二つに枝分かし、その枝の先に胞子のうをつける。\nその後、リニアという維管束をもつ植物が出現し、のちの維管束植物の祖先になった。\nデボン紀には、維管束を持ち、根・茎・葉の区別があるシダ植物のような植物が繁栄した。また、シダ植物のような種子植物が繁栄し、シダ種子植物といわれる。シダ種子植物が、ソテツとよく似ているシダ植物なので、ソテツシダともいう。 これらの植物には高さ20mにもなるものもあり、森林をつくるほどであった。\n植物の陸上進出と同じころ、動物も陸上に進出した。植物と動物のどちらが先かは、不明である。\nこのころの動物は、ムカデやクモや昆虫のような節足動物であったと考えられる。\nデボン紀の末期には、魚類から進化したと考えられる原始的な両生類が現れた。最古の両生類として考えられているイクチオステガは肺を持っており、また四肢を持っており、浅瀬や陸上を歩いて移動できたと考えられている。\n石炭紀になると、ハ虫類が出現した。ハ虫類は、胚発生時に、胚膜(はいまく)で胚が保護されておる。また、卵の外側は硬い殻で覆われている。卵が陸上で生存できるようになり、脊椎動物の陸上への進出が、達成された。\nまた、羽を持った昆虫も出現した。巨大なトンボ(80cmくらい)の化石が見つかっている。\n古生代の末、地球が寒冷化し、大量絶滅が起きた。三葉虫は絶滅し、シダ植物の森林は衰退した。\n寒冷化の原因は不明だが、この時期に大規模な地殻の変動が起き、また酸素濃度が激減したことが分かっている。\n古生代最後のペルム紀から中生代の初めごろに、地球の乾燥化が起き、乾燥に強い生物が繁栄した。中生代には、植物ではイチョウやソテツなどの裸子植物が繁栄した。また、中生代の中ごろから、被子植物が出現した。被子植物は胚珠が子房の中にあり、そのため乾燥に強い。\n中生代の動物では、ハ虫類の大型化した恐竜類が出現して繁栄した。また、三畳紀(さんじょうき、別名:トリアス紀)には哺乳類(ほにゅうるい)が出現した。\nジュラ紀には、恐竜から進化した鳥類が出現した。始祖鳥(しそちょう)が、中生代ジュラ紀には出現していた。ジュラ紀の地層から始祖鳥の化石が見つかっている。中生代の海中ではアンモナイトが繁栄した。\n中生代の最後の白亜紀(はくあき)には、現在でいうカンガルーにあたる、有袋類(ゆうたいるい)が出現していた。白亜紀には、草本の被子植物が出現した。\n中生代の末期、大量絶滅が起きた。中生代末期である約6600万年前に、大型の隕石が地球に衝突したことが分かっているので、この隕石衝突による気候変動が原因だろうという説が有力である。\n新生代末期の白亜紀の地層と、新生代の初めの地層から、高濃度のイリジウムが多く見つかっているが、このイリジウムは小惑星に多いことが知られている。また、メキシコのユカタン半島に巨大なクレーターがあり(クレーター直径は100km以上)、この時代の隕石衝突によるものだろうと考えられている。ここに衝突した隕石の直径は10kmだろうと計算されている。\n大きな隕石の衝突により、粉塵などが舞い上がり、太陽光がさえぎられて、植物の光合成が低下し、\nそのため、植物の衰退および、食物連鎖で繋がっている動物が死亡し、動植物が大量絶滅した、などという説が考えられている。\n中生代の末期ごろ、恐竜類は絶滅し、アンモナイトも絶滅した。なお、恐竜の色素は化石としては残りづらく、そのため恐竜の表皮などの色は不明である。\n(※ 未記述)\n新生代に入り、哺乳類が繁栄し始め、また哺乳類は多様化していった。\nヒトは哺乳類の一種の霊長類(れいちょうるい、別名:サル類)である。霊長類が出現したのは、新生代に入ってからである。\n霊長類でヒトに、遺伝子が、もっとも近いヒト以外の動物は、チンパンジーであり、DNAの塩基配列の違いが1.2%程度である。\n霊長類に含まれる動物はゴリラやチンパンジーだけでなく、キツネザルやテナガザルなども霊長類である。\n霊長類の祖先は、現在でいうツバイに似た食虫類だと考えられている。\nこのような食虫類が進化して、現在でいうキツネザルに似た霊長類が出現した。\n霊長類は、樹上で生活するように進化していった。霊長類は目が顔面の前のほうに集中しており、そのため立体視ができる。この立体視は樹上での素早い移動のために獲得された特徴だと考えられている。また、手は、親指が他の指と向かい合っており(ぼ指対向性、「ぼしたいこうせい」)、指の爪は鉤爪(かぎづめ)ではなく平爪(ひらづめ)になっているので、枝をつかみやすい。\n新生代の第三期に、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル、ボノボなどの類人猿(るいじんえん)の祖先が出現した。\n古い地質時代に繁栄していた生物の子孫で、現在でも、その個体の体の特徴が、古い地質時代の体の特徴と、あまり変わっていない生物を 生きている化石という。\n植物では、イチョウやソテツやメタセコイアが、「生きている化石」の具体例である。イチョウは裸子植物だが、精子をつくる。(シダ植物は精子をつくる。)\n動物では、カモノハシやシーラカンスやカブトガニが、「生きている化石」の具体例である。\nオーストラリアに生息するカモノハシ(英:platypus)は、子を母乳で育てるのでホニュウ類だが、卵生であり、くちばしを持っている。このため、カモノハシは、ハチュウ類から哺乳類への進化の間の特徴であると考えられている。\nまたカモノハシは体が毛におおわれている。このことからも、ハ虫類と哺乳類との近縁関係が、うかがえる。\nシーラカンスは魚類の一種である。胸びれ(むなびれ)の内部にある骨のつくりが、両生類の前足に当たると考えられている。\n人類はアフリカ大陸で誕生した。人類と類人猿の違いとして、人類は直立二足歩行(ちょくりつにそくほこう)が可能である。\n最初の人類は 猿人(えんじん) である。アフリカで440万年以上前の地層(ちそう)からラミダス猿人(アルディピテクス・ラミダス)の化石が発見されている。猿人は二本足で立って歩ける直立二足歩行(ちょくりつにそくほこう)が可能だった。\n二足歩行ができるようになった結果、手で使う道具が発達していき、それにともなって知能も発達していったと考えられている。\nまた、東アフリカの300万年ほど前の地層からアウストラロピテクス類 の足跡化石が見つかっており、直立二足歩行をしていたことが分かっている。アウストラロピテクスの脳容積は500mLであり、現生人類の半分以下である。なお、現生人類の脳容積は約1500mLである。\nラミダス猿人やアウストラロピテクス類をまとめて、猿人といい、初期の人類と見なしている。また、これら猿人の化石がアフリカからのみ見つかっていることから、人類はアフリカで誕生したと考えられている。\nなお、猿人は石を打ち砕いてつくった打製石器(だせいせっき)を使っていた。打製石器は旧石器(きゅうせっき)とも呼ばれる。このような打製石器までしか使っていない時代を旧石器時代(きゅうせっき じだい)という。\nその後の100万年〜200万年後の時代の間に、人類はアフリカから出て、各地に散らばっていった。\n今から200万年ほど前に 原人(げんじん、hominid) があらわれた。\n中国大陸の中国の北京(ペキン)の近くの周口店(しゅうこうてん)からは、 北京原人(ペキンげんじん、シナントロプス=ペキネンシス) のあとが発見されている。\n原人の脳容積は約1000mLであり、猿人と現生人類の中間である。\n北京原人は火を使用していたことが分かっている。\nインドネシアのジャワ島からはジャワ原人のあとが発見されている。\nドイツからはハイデルベルグ人が発見されている。\n原人は、言葉を話せた。\n石器は、打製石器を使っている。旧石器時代にふくまれる。\n旧人のうちの一種の ネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス) の化石が、ドイツのネアンデルタールから発見されている。ネアンデルタール人は、約3万年前に絶滅した。ネアンデルタール人の脳容積は、現生人類とほぼ同じである。(ネアンデルタール人の脳容積は約1500mL)\n私達、現在の人間の直接の祖先である 新人(しんじん) が、4万年前には、あらわれていた。\n新人を、現生人類(げんせいじんるい)とも言い、また、 ホモ=サピエンス(Homo sapiens) とも言う。ホモ・サピエンスの最古の化石がアフリカのエチオピアで見つかっていることから、現生人類はアフリカで誕生したと考えられている。また、ミトコンドリアのDNAの解析も、アフリカで現生人類が誕生したことと一致している。\n人類は約10万年前にアフリカ大陸を出て、世界中に散らばった。\n新課程・現過程「生物」の進化の証拠を見てください。\n交配して生殖可能な集団に存在する遺伝子全体の集合を遺伝子プールという。\nある遺伝形質について、対立形質のそれぞれの遺伝子の割合を遺伝子頻度(いでんし ひんど、gene frequency)という。\nたとえば、白黒の碁石が50個ずつ計100個の入った不透明の袋から、中を見ないで10個の石を取り出した場合、たまたま白6個で黒4個だったり、あるいは白3個で黒7個だったりする場合もあり、必ずしも白5個かつ黒5個とは限らない。もちろん、たまたま白5個かつ黒5個を取り出す場合もある。\n遺伝子の進化でも、子供の世代での、ある遺伝子の頻度が、親の世代とは同じとは限らない。子供の世代で、たまたまある遺伝子の頻度が増える場合もあれば、減る場合もある。\n仮に先ほど、白6個で黒4個を取り出したとしよう。\n次に、先ほどの結果を反映して、今度は白石60個と黒石40個を用意したとして、それを不透明の袋に入れたとしよう。そして、中を見ないで、石を10個だけ取り出したとしよう。\n結果で、たまたま白7個で黒3個の場合もあれば、たまたま白6個で黒4個と先ほどと同じ場合もあれば、たまたま白5個で黒5個という場合もある。\nこのように、自然選択や突然変異などの生物的な過程が起きて無くても、偶然という確率的な過程によって遺伝子頻度は変動していく。このような遺伝子頻度の偶然による変化の現象を遺伝子浮動(いでんし ふどう、genetic drift)という。\nある集団で交配が自由に行われる場合、単純計算では、遺伝子頻度は変化しないことになる。(だが実際は、仮定どおりにいかないので遺伝子頻度は変化する。)\n単純計算では、つぎのような計算が成り立ち、なので遺伝子頻度は変化しない。\nまず、ある個体群の集団で、対立遺伝子Aとaの頻度を、それぞれAの頻度はpとして、aの頻度はqとする。(p+q=1)\n次世代の遺伝子型はAA、Aa、aaの三種類である。\nそれぞれの遺伝子型の頻度は、\n\n(\np\nA\n+\nq\na\n)\n2\n\n=\nP\n2\n\nA\nA\n+\n2\np\nq\nA\na\n+\nq\n2\n\na\n\n{\\displaystyle (pA+qa)^{2}=P^{2}AA+2pqAa+q^{2}a}\nの展開式より、AAはp2であり、Aaの頻度は2pqであり、aaの頻度はq2である。\nこの世代のA遺伝子の頻度は、\n\n2\np\n2\n\n+\n2\np\nq\n=\n2\np\n(\np\n+\nq\n)\n=\n2\np\n\n{\\displaystyle 2p^{2}+2pq=2p(p+q)=2p}\n である。(2p2の係数の2の理由は、AAではAが2文字あるから。)\n同様に、この世代のa遺伝子の頻度は、\n\n2\np\nq\n+\n2\nq\n\n=\n2\n(\np\n+\nq\n)\nq\n=\n2\nq\n\n{\\displaystyle 2pq+2^{q}=2(p+q)q=2q}\n となる。\nAとaの遺伝子頻度の比は、A:a = 2p:2q = p:q となり、親の世代と同じにA:a=p:qになる。\nよって、このような集団では、遺伝子頻度は、その後の世代でも同じである。これをハーディ・ワインベルグの法則(Hardy-Weinberg principle)という。\nこの法則の前提として、\nという前提がある。\n個体数が少ないと、ハーディ・ワインベルグの法則が成り立たない。では、個体数がが少なくなると、遺伝子頻度はどうなるかを、具体的に考えてみよう。たとえば、親の世代の遺伝子頻度が A:a=p:q であっても、子供の数が少なくて、たったの4個体しかない場合、\n子供の形質が仮に全員aaという場合も起こりうる。(計算の都合上、子世代の男女比は無視する。無性生殖の場合を考えると計算が簡単である。) この場合、子供の世代以降は A:a=0:1 となり、親の世代とは遺伝子頻度が変わる。\nこのように、個体数が小さくなると、遺伝子頻度が変わりやすくなる現象をびん首効果という。\nそして、いったん遺伝子頻度が変わると、今度はその遺伝子頻度が受け継がれていく。\n先ほどの例では、極端な例としてA遺伝子が失われる場合を挙げたが、べつにA遺伝子が失われなくても個体数が少数の世代のときに遺伝子頻度が変わってしまえば、以降の世代では、その頻度が受け継がれていく。\nいろいろな生物種のヘモグロビンのα鎖のアミノ酸配列を調べてみると、生物種に関わらず、生物種どうしのアミノ酸配列の違いが、その2種の生物が進化的に分かれてからの時間に比例して増えていくことが分かった。そして生物種に関わらず、この配列の変化速度が、ほぼ一定だということが分かった。同様に、他のタンパク質のアミノ酸配列でも、DNAの塩基配列でも、変化速度が一定だということが分かった。\nこのような、遺伝される配列の変化の速度を分子時計(ぶんしどけい、molecular clock)という。\n分子時計は、種間の類縁関係を測定する手段の一つとして用いられる。\nまた、DNAやタンパク質の変化など分子レベルでの進化を分子進化(ぶんし しんか、molecular evolution)という。\n遺伝子の種類によって、分子進化の起こりやすさは違う。その遺伝子が少しでも変化してしまうと生存に不利な遺伝子の場合、分子進化は遅い。\nDNAのある箇所の塩基配列が突然変異したとしても、発現されるアミノ酸が変わらない場合もある。(コドンやイントロンなどを参照せよ) \nこのような場合、そのDNAの変化は、生存に有利でも不利でもないのが普通である。\nこのような、生存に有利でも不利でもない形質も、遺伝によって受け継がれていく。このような有利でも不利でも形質は、自然選択(いわゆる「自然淘汰」のこと)を受けない。進化では、このような場合が大多数であるという説を中立説といい、木村資生(もとお)などが分子的な解析にもとづいて提唱した。また、このような、自然選択に掛からないで起こる進化を中立進化(ちゅうりつしんか、neutral evolution)という。\n塩基配列などの分子レベルの変化(つまり分子進化)で中立進化が多く見られるが、表現型でも中立進化は起こる場合もある。\nダーウィン(Darwin)は若手のころ、イギリスの軍艦ビーグル号に同乗して、世界一周の航海をしており、南米に立ち寄ったとき、ガラパゴス諸島で生物の研究をした。このガラパゴス諸島で、ダーウィンはトリの形質が、島ごとに形質が違うのに注目した。また、トリ以外も調査した。\n同じころ、イギリス人のウォレスもマレー諸島で同じような研究をしており、そこでダーウィンの帰国後、二人は共同研究をして、その結果をもとに『種の起源』を1859年に出版した。進化の原因として、彼らは自然選択(自然淘汰)説などを考えた。\nド フリースは、同じ環境でオオマツヨイグサを栽培しても、突然変異体が現れることを発見した。また、それらの突然変異体の交雑実験をして、突然変異(mutation [1])の形質は遺伝することを明らかにした。これらの結果をもとに、突然変異が進化の主な原因であるという突然変異説を唱えた。(1902年) \nある場所に済んでいた集団が、生息地の中に、地殻変動などで移動不可能になる地理的な障壁ができて二分されると、その二箇所の往来が出来なくなる。このような環境を地理的隔離(ちりてき かくり)という。\nこうなると、その二箇所のそれぞれに住んでいる生物で、飛行できない生物は、交配をする機会が無くなり、よって、別々に進化をしていくことになる。やがて、二地域の、その生物の遺伝的な差が大きくなっていくと、ふたたび出会っても、もはや交配できなくなる。これを生殖的隔離(せいしょく かくり)という。\nこのようにして、新たな種が生じていくと考えられる。このようにして、新たな種が生じていくことを種分化(しゅぶんか)という。ダーウィンの観察した、南米ダーウィン諸島で野鳥のフィンチが島ごとに違っている事例は、地理的隔離による種分化の典型的な例である。\n地理的隔離をしていなくても、同じ場所に住んでいても生殖隔離をする場合もある。ある種の一部に繁殖時期が変化する突然変化がおきれば、その二種は生殖する機会が無くなり、種分化をしていく。\n種分化に至らない小規模な進化を小進化(しょうしんか、micro evolution)という。一方、種分化にいたるほどの大きな進化を大進化(だいしんか、macro evolution)という。\n近代19世紀のイギリスの工業地帯(マンチェスターなど)で、ガの一種のオオシモフリエダシャクで、体色が黒っぽく変化した個体が増えるという現象が起きた。\nオオシモフリエダシャクの体表の色には二型があって、白っぽい明色型と、黒っぽい暗色型がいた。\nイギリスでは木の幹に白っぽい地衣類が生えており、白型白っぽい明色型のオオシモフリエダシャクの白色は保護色になっていたので、捕食者の鳥などに見つかりにくかった。\n工業化の進む前の時代は明色型のほうが多く、暗色型の個体数は、明暗全体の1%程度であった。\nしかし、工業により大気汚染が進んだことで、白い地衣類が減ったり、また大気汚染の黒煙などにより、黒色のほうが目立たなくなった。このため暗色型が増えた。リバプールでは、暗色型は90%を超えるほどになった。\nこの現象を工業暗化(こうぎょう あんか、industrial melanism)という。オオシモフリエダシャクの工業暗化は、小進化の例でもある。\n現在では大気汚染への規制や対策が進み、その結果、暗色型の個体数は減っており、地域にもよるが、暗色型の個体数は、明暗全体の個体数のうちの10%~20%程度である。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%94%9F%E7%89%A9/%E7%94%9F%E7%89%A9II/%E7%94%9F%E7%89%A9%E3%81%AE%E9%80%B2%E5%8C%96"} {"text": "たとえばヒトは、動物界・セキツイ動物門・哺乳綱・霊長目・ヒト科・ヒト属・ヒト である。\nイヌは、動物界・セキツイ動物門・哺乳綱・食肉目・イヌ科・イヌ属・イヌ である。\nこのように、属(ぞく、genus)・科(か、family)・目(もく、order)・綱(こう、class)・門(もん、divisio)・界(かい、kingdom) という階層に分類される。\nある生物の種(しゅ)の名前には、世界共通の学名がある。学名のつけかたには、二名法(にめいほう、binominal)という命名法にもとづく国際規約が定められている。\nたとえばヒトの学名は Homo sapiens 。 このように、二名法では2単語のラテン語で表す。最初の Homo は属名(ぞくめい、genus)。 sapiens が種小名(しゅしょうめい、species epithet)である。このように二名法では、属名と種小名を併記する。このようなな命名法を、18世紀の中ごろにカール・フォン・リンネが確立した。\nいっぽう、ヒト や イヌ や ネコ などと言った、ある種について、日本で一般的に使われる呼び名は、和名(わめい)である。\nかつて生物の分類で「界」というのが、よく使われ、「二界説」や「五界説」などが使われていたが、1977年代ごろからリボソ-ムRNAなどの研究が進み、やがて、それらRNAなどの研究の知見を反映した「ドメイン」という分類が生物の分類に使われるようになった。\n植物界と動物界の2つに分ける。昔からある分類法。\n単細胞生物からなる原生生物界(げんせい せいぶつかい)を加えて、植物界と原生生物界と動物界の3つに分ける。ヘッケルが提唱した。また、へッケルは生物の分類を、樹木形であらわす系統樹(けいとうじゅ、phylogenetic tree)として表現した。\n全ての生物は真核生物と原核生物とに分類される。この知見を生物の分類に反映して、五界説などが提唱された。\n五界説は、つぎの5つの界からなる。\nこの5つの界からなる。\nホイタッカーやマーグリスによって提唱された。\n原生生物界は、他の界に入らなかった系統の寄せ集めである。\n食物連鎖の観点から見ると、植物界・動物界・菌界は、それぞれ、植物=生産者、動物=消費者、菌=分解者というふうに理解できる。\nリボソームRNAの構造をもとにした分類が、カール・ウーズにより1977年代後半に提唱された(六界説)。\nそして、この分類のためウーズは、ドメインという分類を提唱し、すべての生物は 細菌ドメイン または 古細菌ドメイン または 真核生物ドメイン の3つのグループのうちの、いずれかのグループに属すると1990年に提唱した(3ドメイン説)。\nドメインは界より上位の分類である。\n遺伝子などの解析結果から、古細菌は、細菌よりも真核生物に近いことが分かっている。\n五界説における原生生物界、菌界、植物界、動物界の4つの界は、真核生物ドメインに属する。\nなお大腸菌もネンジュモも、単細胞の原核生物である。現在では、「細菌」の分類の条件として、原核生物であることを要求するのが一般的である。\nシアノバクテリアは光合成を行える。なのでシアノバクテリアをついつい植物に分類しがちであるが、しかし上述のような理由からシアノバクテリアは細菌に分類する場合が多い。\n(光合成などを行う)独立栄養生物であるかどうかは、「細菌ではない」かどうかは無関係である。もし、シアノバクテリアは「光合成を行うので独立栄養生物である」という理由で、仮に「細菌でない」(仮)と仮定すると、硝酸菌の硝酸からのエネルギー摂取の行為も独立栄養生物の行為なので、硝酸菌が「細菌ではない」(仮)になってしまい、不合理である。\nまた、「細菌は原核生物」とする前提をもとにすると、酵母菌は単細胞であるが真核生物なので、「細菌」でないことになる。(※ 教科書では特に明記されてないが、センター試験で出題された。)そのため酵母菌は、カビやキノコ(ともに真核生物)の仲間であると考えられている。\n「菌」であるかどうかは、原核生物とは無関係。たとえばキノコなどは「子のう菌」(しのうきん)に分類される。(※ 詳しくは、後述する。)\n胚に、内胚葉(endoderm)、中胚葉(mesoderm)、外胚葉(ectoderm)というふうに、3つの胚葉がある動物を三胚葉性という。\nいっぽう、外胚葉と内胚葉というふうに2種類の胚葉しかない動物を二胚葉性といい、クラゲやサンゴやカイメンなどが二胚葉性である。\n海綿動物と刺胞動物は二胚葉性の動物である。\nクラゲは刺胞動物門であり、クラゲの胚は、中胚葉を持たない。\n海綿動物と刺胞動物を除く、他の多くの動物は三胚葉性である。\n三胚葉性の動物のうち、原口(げんこう、blastopore)が口になるのが旧口動物(きゅうこう どうぶつ,protostomes)。原口または、その付近が、肛門(こうもん、anus)になるのが新口動物(しんこう どうぶつ,deuterostomes)。\n脊椎動物は新口動物である。ヒトデ、ウニは新口動物。\n旧口動物はゴカイ、プラナリア、イカ、昆虫、エビなど。\nカイメンは、胚葉が分化しない、無胚葉性の動物である。カイメンには、組織・器官の分化が無い。\nカイメンには神経が無い。\n体内の体壁に、多くの えり細胞 が存在し、体内に取り入れた水とともに、プランクトンをこしとって食べる。\nえり細胞には、1本の べん毛 がある。このべん毛の動きで水流を作り、体内に水を取り入れている。\nカイメンの えり細胞 が、原生生物の えりべん毛虫 に似ているので、えりべん毛虫から進化してカイメンが出来たと考える研究者が多い。\nカイメンは、海綿動物である。\nクラゲやヒドラやイソギンチャクなどが、刺胞動物。\n形状は、放射相称である。\n動物食性である。接触したものを、刺胞(しほう)で刺し、捕食する。\n肛門が無い。排泄物は、口から排出する。\n触手には刺胞(しほう)という細胞小器官があり、これを外敵などに刺して、外敵から身を守ったり、食物を捕食したりする。\n神経が分化しており、散在神経系である。\n扁形動物(へんけいどうぶつ)、環形動物、輪形動物、軟体動物をまとめて、冠輪動物(かんりんどうぶつ)という。\n近年の分子データの解析から、これら冠輪動物どうしは、比較的、近縁であることが分かってる。\n扁形動物(へんけいどうぶつ)、環形動物、輪形動物、軟体動物は、旧口動物である。\nプラナリアなどが扁形動物。\n体腔を持たない。頭部に脳や眼を持つ。呼吸器や循環器を欠く。肛門が無い。口は体の中央にあり、腹部のあたりに口がある。\nプラナリアは淡水中で生活する。\nミミズやゴカイやヒルが環形動物。\n多数の体節を持つ。太い2本の神経を持つ、はしご形神経系。\n発生の過程で、トロコフェア幼生の時期を持つ。\nイカやタコなどの頭足類や、貝などが軟体動物。\n外とう膜という、内臓を保護する膜を持つ。殻は外骨格であり、外とう膜から分泌されたカルシウムなどによって、殻が作られている。\n貝殻は炭酸カルシウムなどの石灰質。\n発生の過程で、トロコフェア幼生の時期を持つ。\nなお、イカやタコなどの頭足類は、体の中央の眼がある部分が頭部である。つまり、頭部から足が生えている。(だから、「頭足類」と呼ぶ。) 頭足類を、足を下にした向きで見た場合、頭足類の体の上端のほうの、ふくらんでいる部分は、胴であり、頭部ではない。頭足類の上部のほうのふくらんだ部分は胴なので、中には内臓がつまっている。\n線形動物と節足動物をまとめて、脱皮動物(だっぴどうぶつ)という。\n近年の分子データの解析から、これら脱皮動物どうしは、比較的、近縁であることが分かってる。\n線形動物と節足動物は、旧口動物である。\nエビやカニなどの甲殻類。昆虫類。クモなど。\n動物の中で、最も種類の多いのが、節足動物である。\n体表の殻は、キチン質からなる外骨格。\n体節からなる。神経系は、はしご形神経系。\n成長の過程で脱皮(だっぴ)を行う。\n排出器は、甲殻類は、腎管が排出器。\n甲殻類以外は、マルピーギ管という器官が排出器。\nセンチュウなどが線形動物。\nクチクラに被われている。脱皮する。\nキョク皮動物(きょくひどうぶつ、棘皮動物)、原索動物、脊椎動物が、新口動物である。\nヒトデ、ウニは新口動物。\nヒトデやウニ、ナマコが、キョク皮動物。\n水管系を持つ。この水管系が、呼吸器や循環器として働いている。運動は管足(かんそく)で行う。管足は、水管系と、つながっている。\n原索動物には、ナメクジウオやホヤなどがある。\n発生の段階で、脊索(せきさく)を持つ。ナメクジウオは、終生、脊索を持つ。ホヤの場合は、幼生のときには脊索を持つが、成体になると脊索が退化する。\n環状神経系を持つ。\nホヤの幼生は、オタマジャクシのような形をしており、名前も「オタマジャクシ幼生」という。\n脊椎動物では脊索は退化し、脊椎が出来る。\n植物の外表面はクチクラ層で覆われている。\n光合成色素(photosynthetic pigment)として、クロロフィルaとクロロフィルbを持つ。\n種子植物・コケ植物・シダ植物がある。\nシダ植物と種子植物には、維管束(いかんそく)がある。\nコケ植物とシダ植物は、胞子で繁殖する。種子植物は、種子で繁殖する。\n胞子で繁殖する。光合成をしない。維管束を持たない。ゼニゴケ、ツノゴケ、スギゴケなどが、コケ植物。\n普通に見かける植物体は配偶体(核相:n)である。\n胞子は、受精せず、発芽して、株の形状である配偶体になる。\n胞子には、雄になる胞子と、雌になる胞子とが、別々にある。このように、雄と雌とは、株が異なるのが、普通。それぞれ雄株または雌株という。\n普通は、コケ植物には、根・茎・葉の区別が無い。\n雄株の造精器で精子が作られる。雌株の造卵器で卵が作られる。\n胞子で繁殖する維管束植物である。\n普通に見かける植物体は胞子体(核相:2n)である。減数分裂によって、胞子が生じる。\n胞子体には根・茎・葉の区別があり、維管束がある。\n胞子は発芽して、前葉体という配偶体(n)になる。配偶体には、維管束は無い。前葉体が成熟すると、造精器または造卵器が生じる。造精器で精子(n)が作られる。精子が、雨の日などに、水を伝わって泳いで、造卵器の内部にある卵細胞(n)に到達すれば、受精して、受精卵(2n)となる。\nこの受精卵から、胚発生と体細胞分裂によって、胞子体が発生する。\n種子植物のうち、イチョウやマツなどは、子房が無く、胚珠がむきだしなので、裸子植物(らし しょくぶつ)という。\nいっぽう、胚珠が子房の中にあるのを被子植物(ひし しょくぶつ)という。\n菌糸(きんし)という糸状の構造が、多数、組み合わさって、体が出来ている。\n光合成の能力が無い。光合成色素を持たない。\n細胞壁の主成分は、多糖類の一種であるキチン。\n胞子で繁殖。\n種類は、接合菌類、子のう菌類、担子菌類、がある。\nクモノスカビやハエカビなどが、接合菌類である。\n無性生殖が通常だが、有性生殖も行う。\n有性生殖では、菌糸が接合して接合胞子を作る。\nアカパンカビ、アオカビなどが、子のう菌類 である。\nマツタケ、シイタケなどが、担子菌類 である。\n子実体(しじつたい)\n\n真核生物のうち、植物界・菌界・動物界には、属さないものを、原生生物(げんせい せいぶつ)という。単細胞のものもあれば、多細胞のものもある。\nアメーバやゾウリムシなどの単細胞生物。ミドリムシも原生動物である。ミドリムシは、葉緑体を持ち、光合成を行う。\nべん毛や仮足、繊毛などで運動を行う生物が多い。\nミドリムシは、べん毛で運動する。(ミドリムシを原生動物ではなく藻類に分類する場合もある。その場合、ミドリムシはケイ藻類またはミドリムシ類に分類される。)\nムラサキホコリなどの真性粘菌類、およびキイロタマホコリなどの細胞性粘菌などが、変形菌類。\nケイ藻類など。光合成を行う、独立栄養生物である。水中で生活する。\n光合成色素に、クロロフィルaが必ず含まれている。\nミドリムシを藻類に分類する場合もある。(ミドリムシは、藻類のうちのケイ藻類に分類される場合もあれば、藻類のうちのミドリムシ類という独立した類に入れる場合もある。)\n藻類には、ケイ藻類、緑藻類、紅藻類、褐藻類、シャジクモ類などがある。\nケイ藻類と褐藻類とは、同じ光合成色素を持つ。\nケイ酸の殻を持つ。\nクロロフィルaとクロロフィルcを持つ。(ケイ藻類と褐藻類とは、同じ光合成色素)\nミドリムシが、ケイ藻類に分類される場合もある。\nアオサやアオノリなど。クラミドモナスやクロレラなどは単細胞生物であるが、緑藻類。\nボルボックスは細胞群体であるが、緑藻類。\n緑藻類は、クロロフィルaとクロロフィルbを持つ。\nシャジクモ類を、緑藻類に含める場合もある。\nアサクサノリやテングサ。\nクロロフィルaを持つ。\nコンブやワカメなど。\nコロロフィルaとクロロフィルcを持つ。\n光合成色素の違いは、届く波長の違いであり、水深の違いが原因。浅い海にいるのは、緑藻類であり、赤色光を光合成に利用している。深い海にいるのは、紅藻類であり、緑色光を利用している。\n中間の深さの海にいるのが、褐藻類であり、青色光を利用している\n植物は、クロロフィルaとbを持ち、これは緑藻類の光合成色素と同じである。\nしたがって植物は、緑藻類から進化してきた、と考えられている。シャジクモ類と陸上植物で、細胞分裂の様式が似ていることから、近縁だと考えられている。\n陸上植物の進化は、緑藻類を祖先として、シャジクモ類を経て、陸上植物が進化してきた、と考えられている。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%94%9F%E7%89%A9/%E7%94%9F%E7%89%A9II/%E7%94%9F%E7%89%A9%E3%81%AE%E7%B3%BB%E7%B5%B1"} {"text": "ある場所に生育してる植物の集まりを植生(しょくせい)または植物群落(しょくぶつ ぐんらく)または植物群集(しょくぶつ ぐんしゅう)という。\n植物のうち、一年以内に枯れる植物を一年生植物(いちねんせい しょくぶつ)という。\n一年を越えて生育する植物を多年生植物(たねんせい しょくぶつ)という。\n森林の見た目を相観(そうかん)という。\nある地域が森林で覆われているとき、その森林のそれぞれの木の頂上部付近の集まりを林冠(りんかん)という。森林で被われると、その木の下の生物には日当たりが減るので、林冠は、その場所の植生に大きな影響を与える。また、森林外から人間が観察している場合、林冠の植物が目立つので、相観には林冠が大きな影響を与える。\nいっぽう、森林がある場所において、草木やコケ植物、キノコなど、地表に近い部分の植物をまとめて林床(りんしょう)という。林床の草木は、日当たりが悪いため、ふつうの林床は陰生植物である。\n植物の生育により、環境が変わっていく。たとえば背丈の高い木が生えれば、その下の植物の環境では日当たりが減る。このように、植物の生育によって環境が変わっていくことを遷移(せんい、succession)という。\nつまり、植生は遷移していく。\nたとえば、ある陸上の地域で火山が噴火し、森林に溶岩が流れ込むなどして、森林が焼き払われたとする。そして、時間が経過し、溶岩が常温まで冷めたとする。\nその地域には、まだ森林が育つような土壌が出来上がって無いので、森林は育たない。また、植物の根や種子も、溶岩で焼き払われており、存在していない。植物が育つのに必要な窒素分などの栄養分も、少ない。保水力も少ない。\nその焼かれて冷めたあとの地域には、まずコケ類や地衣類などが、その地域に入り込み、遷移が始まる。このように、植物が生育していなかった場所から始まる遷移を一次遷移(いちじ せんい、primary succession)という。\nまた、このように初期の遷移で、その地域に入りこむ植物種を先駆種(せんくしゅ)という。あるいは、先駆種のことをパイオニアともいう。\nある遷移が、陸上で起きた遷移なら、乾性遷移(かんせい せんい、xerarch succession)という。いっぽう、湖沼などの水辺で起きる遷移を湿性遷移(しっせい せんい、hydrarch succession)という。\n先ほど例にあげた、溶岩が流れたあとの遷移は、乾性遷移(かんせい せんい)である。\n乾性遷移での一次遷移は、普通、コケ類・地衣類の侵入から始まり、続いて同じ場所に草木が侵入し、そのあと、同じ場所に木が侵入する。\n木には、日当たりの良い場所で育ちやすい陽樹と、日当たりの悪い場所でも育ちやすい陰樹がある。一次遷移で草が生えてた場所に、始めて木が侵入していく場合、最初に侵入する木の種類は、陽樹である場合が、普通である。\nしかし、その陽樹がつくる陽樹の子は、日当たりが悪いので、育ちにくい。いっぽう、陰樹は、日当たりが悪くても育つので、陰樹の子は育つ。なので、やがて森林は陰樹に変わっていく。\n日なたで成長しやすい植物を陽性植物(ようせいしょくぶつ、sun plant)という。アカマツ・クロマツ・ソラマメ・ススキ・カラマツ・カタクリ・トマトなどが陽性植物である。\n森林内などの日かげで成長しやすい植物を陰性植物(いんせいしょくぶつ、shade plant)という。ブナ・シイ・カシ・ドクダミ・カタバミ・モミ・アオキやシダ・コケ植物などが陰性植物である。\n光合成速度と光について、補償点や光飽和点は図のようになる。\n陽性植物は光飽和点が高い。\n一般に、光の弱い状態では、陰性植物のほうが光合成速度が大きい。このため、日かげでも陰性植物は生活できる。いっぽう、光の強い状態では、陽性植物のほうが光合成速度が大きい。\n同じ一本の木の中でも、日当たりの良い場所でつく葉と、日当たりの悪い場所でつく葉で、特性が異なる場合がある。ブナ・ヤツデなどが、そのような植物である。\n日当たりの良い場所につく葉を陽葉(ようよう, sun leaf)といい、陽性植物と同じような補償点や光飽和点は高いという特性を現す。いっぽう、日当たりの悪い場所につく葉を陰葉(いんよう, shade leaf)といい、陰性植物と同じように補償点や光飽和点は低いという特性を現す。\n陽性植物の樹木を陽樹(ようじゅ)といい、陽樹からなる森林を陽樹林(ようじゅりん)という。アカマツなどが陽樹である。陰性植物の樹木を陰樹(いんじゅ)といい、陰樹からなる森林を陰樹林(いんじゅりん)という。モミなどが陰樹である。\n樹木は、草など背丈の低い植物への日当たりをさえぎるので、地表ちかくでは陰性植物が育ちやすくなり、また、日当たりが悪いので地表ちかくでは陽性植物が育たなくなる。\n森林が陽樹林の場合、新たな陽樹は芽生えなくなるが、新たな陰樹は芽生えることが出切る。このような仕組みのため、森林は、陽樹から陰樹へと移っていくことが多い。\nいったん森林が陰樹林になると、災害や森林伐採などが起きない限り、普通は、もう、あまり、それからは遷移しない。\nある植生が、さまざまな遷移を経過した結果、もうほとんど変わらない状態になり、安定的な状態になる。この最終的な植物群の状態が極相(きょくそう)である。極相のことをクライマックス(climax)ともいう。日本の場合、たいていの森林では、陰樹林が極相である。\n森林が極相の場合、その極相の森林を、極相林(きょくそうりん)という。\n山火事や地滑りや台風などで、森林で一部の木が破壊されると、その破壊されて倒れたりした木の部分での植生の競争の安定が崩れ、その破壊された木の付近の場所は草原などに戻る。倒れた木のあった場所では、今まで覆っていた木が無くなったため、光が差し込むようになり、日当たりが増す。このような、森林内部の日当たりの良い場所をギャップという。\nこのようなギャップの場所では(森林内の日当たりの良い場所では)、陽生の植物が成長できるので、新たに遷移していく。これを二次遷移(にじ せんい、secondary succession)という。二次遷移では、土壌がすでに形成されているため、一時遷移と比べて遷移が速く進行する。\n二次遷移が起きるのは、けっして地滑りや台風による倒木などの自然災害だけでなく、人間が森林伐採をした場合にも二次遷移は起きる。\nまた、湖沼でも遷移は起きる。湖沼など水場で起きる遷移を湿性遷移(しっせい せんい、hydrarch succession)という。いっぽう、陸上での遷移を乾性遷移という。\nまず、水深によって、湖沼での遷移は変わる。あまりにも水深が深すぎると、日光が水底に届かないため、水草は生えにくい。\nそこそこの深さの湖沼だと、水底に日光が届くため、水底には水草が生えている。\nまず、クロモは、全身が水中にあっても育つので、初期の遷移ではクロモなどの全身が水中でも育てる植物が生えていく。クロモなどのように、全身が水中でも育てる植物を、沈水植物(ちんすい しょくぶつ)という。クロモやマツモが沈水植物である。\nスイレンは、根が水底の地中にあるので、そこそこ浅くないとスイレンは育たない。\nスイレンやヒシなどの、葉が水面にあり、根が地中にある植物のことを浮葉植物(ふよう しょくぶつ)という。\n湖沼には、付近の土砂が堆積していくのが普通なので、だんだん水深が浅くなっていく。浅くなってくると、スイレンなどの浮葉植物でも、湖沼に侵入できるようになる。\nさらに堆積が進行し推進が浅くなってくると、今度はヨシなどの抽水植物(ちゅうすいしょくぶつ)が侵入してくる。\nヨシは、全身の大部分は水上にあるが、根は水中にある。ヨシのような、全身の大部分は水上にあるが、根は水中にある 植物を抽水植物(ちゅうすい しょくぶつ)という。\nこうして、沈水植物 → 浮葉植物 → 抽水植物 というふうに、湿性遷移が進んでいくのが普通である、\n水深がさらに浅くなると湿原(しつげん)になる。\n冒頭の植物のバイオームと気温、降水量のグラフを分析しよう。\nまず、森林が形成されるには、あるていどの降水量が必要である。じっさいにグラフを見ると、確かに、降水量の多いほど、樹林が形成されている。\n降水量が少ないと、森林が維持できなくなり、草原になっていく。さらに降水量が少ないと、砂漠などになっていく。\nたとえば草原には、サバンナとステップがある。\nサバンナとステップの気候は、一見するとぜんぜん違う気候だが、じつは気温が違うだけで、降水量は同じくらいなのである。\nサバンナは、熱帯の中にある乾燥地域に見られ、サバンナの草の種類は、イネの仲間の植物を主体としている。\nステップは、温帯の中にある乾燥地域に見られ、ステップの草の種類も、イネの仲間の植物を主体としている。\nアフリカのサバンナでは、シマウマなどの大型の草食動物が住む。また、その草食動物を捕食する、ライオンなどの肉食動物も、アフリカのサバンナには住む。サバンナというとアフリカが有名だが、オーストラリアや南アメリカなどにもサバンナはある。\nサバンナには、乾季があるのが普通である。乾季のあいだ、草食動物は、水場や食料などを求めて、集団で大移動する。\nアフリカに限らず、サバンナには草食動物が住みつき、その草食動物を捕食する肉食動物も住みつく。\nいっぽう、気温がほぼ同じ地域を見てみると、たとえば年平均20℃〜30℃の地域は、熱帯多雨林、雨緑樹林、サバンナが、気温が同じ気候である。これらの植生を分けるのは、たんに降水量の多少なのである。\n砂漠は、地域によって、温度の差が、とても広い。日本人はついつい「砂漠」と聞くと、熱い地域を想像してしまいがちなので、気をつけよう。砂漠では、サボテンのような、乾燥に適応した植物が、まばらに生育する。\nなお、グラフには無いが、土壌や水質などによっても、植生は異なる。たとえば海水の多い地域では、海水の耐性のある植物が分布する。\nまたなお、グラフでの各植生の各領域の温度範囲や降水量範囲の広さや値は、教科書ごとに若干、異なる。なので、あまり細かな数値を覚えても無価値である。\n熱帯・亜熱帯の気候の地域に、分布している。\n高木(こうぼく)が多い。30m〜60mの高木もある。林内は暗い。\nまた、つる植物も多い。\n東南アジアや南アメリカ大陸などで、このような熱帯多雨林が見られる。\n海岸や河口付近では、海水にも耐性のあるマングローブ林などが分布し、マングローブであるヒルギ類などが分布する。\n日本では、九州地方南端から沖縄地方、小笠原地方に、亜熱帯多雨林が見られる。\n熱帯・亜熱帯の地域のうち、雨季と乾季のある地域に、雨緑樹林が分布する。\n乾季に落葉するチークなどが見られる。\n温帯地方では、硬葉樹林、照葉樹林、夏緑樹林が分布する。\n地中海沿岸の、温帯のなかでも冬に雨が多く、夏に雨が少ない地中海性気候の地域で見られる。\n夏の乾燥に耐えるため、葉が小さく、クチクラ層が厚く、一年中、葉をつける、オリーブやコルクガシなどが見られる。\n日本では、関東から四国、九州地方までの低地に分布する。スダジイやアラカシなどが生育する。\n温帯の中でも、比較的寒冷な地域に分布し、ブナ、ミズナラ、カエデ類などが見られる。\n冬に落葉する。秋に紅葉する。\n日本では、北海道南部の低地、東北地方に分布する。\nシベリア、スカンジナビア半島、アラスカなどで亜寒帯の地域に見られ、常緑針葉樹のトウヒ類、モミ類などがある。東シベリアにはカラマツなども見られる。\n樹種が少ない。\n日本では、比較的寒冷な北海道東北部に見られる。トドマツやエゾマツが見られる。\n針葉は、凍結に耐えるための仕組みである。\n北極圏の寒帯などに分布する。夏の一時期を除いて、年中、土壌が凍結している凍土(とうど)のため、高木が育たない。草本は育つが、地衣類やコケ類などが混ざる。\nこの地域は降水量も少ないため、低温で降水量の少ない地域に、ツンドラが分布することになる。\n日本では、どこでも降水量が多いため、森林が形成される。\nよって日本では、おもに気温の地域差によって、各地の植生が違ってくる。\nそして、気温の地域差は、おもに緯度と標高により、決まってくる。一般に、高度が1000m増すごとに気温が5〜6℃下がる。\nなので結果的に、緯度と標高によって、植生が違ってくる。\n標高に応じてバイオームの地域差を、垂直分布(すいちょく ぶんぷ)という。\nいっぽう、緯度によるバイオームの地域差を水平分布という。\n人工林としてスギなどを植えてた地域も日本では多く、そのため人の手が加わってない自然な植生は、日本では少ない。\n2600m以上くらいに、標高が高くなりすぎると、気温が低すぎるため、森林が形成されない。この、森林の形成できる高さの限界を森林限界(しんりん げんかい)という。\nまた、森林限界を越えた、標高の高い場所は、強風の場所でもある場合が多く、そのため風に強い植物が多い。\nまた、その森林限界より前でも、高木の形成できる限界の標高があり、これを高木限界(こうぼくげんかい)という。\n高木限界より高い場所の植物は、草や花や低木である。夏には、お花畑と呼ばれる高山草原が見られることもある。\nまた、森林を形成するには、夏の平均気温が10℃以上は必要である。\nこのような現象のあるため、森林限界(2500mあたり)をさかいにして、標高により、高山帯と亜高山帯とに分かれる。森林限界より高い側が高山帯(こうざんたい)で、森林限界より低い側が、亜高山帯(あこうざんたい)である。\n2500m〜あたりが高山帯であり、コケモモ、コマクサなどが見られる。\n1700m〜2500mあたりが、亜高山帯であり、シラビソ、コメツガなどが見られる。\n1700m〜600mあたりを山地帯といい、夏緑樹林が見られ、ブナやミズナラなどが見られる。\n〜600mあたりを丘陵帯(きゅうりょうたい)という。\n沖縄や鹿児島は亜熱帯である。日本でもマングローブが沖縄県など南西諸島の海岸などで見られ、ヒルギ類がマングローブとして分布している。海岸以外では、ソテツ、ヘゴ、ガジュマルなどが分布している。\n九州中部から関東までの、標高の低い地域で、照葉樹林の生育する気候である。\n日本では、その地域の気温によって、植生が決まる。\nよって、その地域の気温の積算値をもとにした指数によって、植生が説明できる。\n植物の生育がうまくできる下限の値を5℃と考え、よって月平均気温からマイナス5℃をした値を各月もとめ、さらにその各月の値を足し合わせた積算値を、暖かさの指数(warmth index, WI)という。\nWIが15〜45は、トドマツなどの針葉樹が分布し、亜寒帯に相当し、北海道の北東部などである。\n45〜85は、ミズナラなどの夏緑樹林が分布し、冷温帯に相当し、東北地方などである。\n85〜180は、スタジイなどの照葉樹林が分布し、温暖帯に相当する。\n180〜240は、沖縄県や鹿児島などで見られ、亜熱帯多雨林が分布し、亜熱帯に相当する。\n(※ 未記述)\n(※ この解説は、現時点では 中学校理科のWikibooks を引用したものです。そのため、高校および大学受験では、不適切な可能性があります。)\n動物性プランクトンは、エサとして、植物性プランクトンを食べている。\n具体的に言うと、ミジンコやゾウリムシなどの動物性プランクトンは、ケイソウやアオミドロなどの植物性プランクトンを食べる。\nそして、動物性プランクトンも、メダカなどの小さな魚に食べられる。\nメダカなどの小さな魚も、さらに大きな魚に、エサとして食べられる。\nというふうに、より大型の生き物などに食べられていく。\n生きてるあいだは食べられずに寿命を迎えて死んだ生物も、微生物などにエサとして食べられていく。\nこのように、生き物どうしが、「食べる・食べられる」 の関係を通じて関わり合っていることを 食物連鎖(しょくもつれんさ、food chain) という。食べる側を捕食者(ほしょくしゃ、predator)といい、食べられる側を被食者(ひしょくしゃ)という。ミジンコとメダカの関係で言えば、メダカが捕食者、ミジンコが被食者である。捕食者も、さらに上位の捕食者によって食べられて、捕食者から被食者へとなる場合も多い。このように、捕食者-被食者の関係は、立場によって変わる相対的なものである。\n実際には、捕食者が1種類の生物だけを食べることはまれであり、2種類以上のさまざまな種類の生物を食べる。食べられる側も、2種類以上の捕食者によって食べられる。このため、食物連鎖は、けっして1本道のつながりではなく、網状のつながりになっており、この食物連鎖の網状のつながりを食物網(しょくもつもう、food web)という。\n食物連鎖は、なにも水中の生き物だけでなく、陸上の生き物にも当てはまる考え方である。\n植物など、光合成を行って有機物を豪勢する生物のことを 生産者(せいさんしゃ、producer) と言う。動物のように、別の生物を食べる生き物を 消費者(しょうひしゃ、consumer) という。消費者は、生産者の合成した有機物を、直接または間接に摂取していると見なす。\n動物は、他の動物または植物を食べているので、動物はすべて消費者である。肉食動物(carnivore)も草食動物(herbivore)も、どちらとも消費者である。\n消費者のうち、草食動物のように、生産者を直接に食べる生物を一次消費者(primary consumer)という。その一次消費者を食べる肉食動物を二次消費者(secondary consumer)という。二次消費者を食べる動物を三次消費者という。さらに三次消費者を食べる生物を四次消費者という。\nなお、二次消費者を食べる三次消費者が一次消費者を食べるような場合もある。このように、実際には、必ずしも直接に1段階下位の生物を食べるとは限らない。\nいっぽう、菌類(きんるい)や細菌類(さいきんるい)のように、(落ち葉や 動物の死がい や 動物の糞尿(ふんにょう)などの)動植物の遺体や排泄物などの有機物を分解して無機物にする生物を分解者(ぶんかいしゃ、decomposer)と言う。\n菌類とは、いわゆるカビやキノコのことである。シイタケやマツタケは菌類である。アオカビやクロカビは菌類である。\n細菌類とは、たとえば、大腸菌(だいちょうきん)、乳酸菌(にゅうさんきん)、納豆菌(なっとうきん)などが菌類である。\n分解によって、有機物は、二酸化炭素や水や窒素化合物などへと分解される。さまざまな分解者によって有機物は分解されていき、最終的には無機物へと変わる。\nこれら、菌類や細菌類は、普通は、葉緑体を持っていないので、光合成によって栄養を作ることができない。\n菌類は葉緑体を持っていないため、菌類は植物には、ふくめない。細菌類も、同様に、植物にふくめない。\n菌類の栄養の取り方は、カビ・キノコともに、菌糸をのばして、落ち葉や動物の死がいなどから、養分を吸収している。\n一般的に、長期的に見れば、一次消費者の個体数は、生産者よりも少ない。なぜなら、一次消費者が一時的に生産者よりも増えても、食べ物の植物が足りずに一次消費者は死んでしまうからである。同様に、二次消費者の個体数は、一次消費者よりも少ない。\nなので、本ページの図のように、生産者の個体数と一次消費者・二次消費者・三次消費者・ … の個体数を積み上げていくと、三角形のピラミッド型の図になる。このような個体数を生産者・一次消費者・二次消費者・ … と積み上げた図を個体数ピラミッドという。\n同様に、生物量について、積み上げた図を生物量ピラミッド という。\n個体数ピラミッドや生物量ピラミッドをまとめて、生態ピラミッドという。\nこれらのピラミッドのように、生態系を構成する生物を、生産者を底辺として、一次消費者・二次消費者・ … と食物連鎖の段階によって段階的に分けることができ、これを栄養段階(えいよう だんかい)という。\n栄養は、おおむね、\nというふうに、移動していく。そして、消費者も一生の最期には死ぬから、死んで分解されるので、栄養は分解者へと移動する。\n栄養素として食べられる物質も、このように循環していく。\n\n物質は、生物どうしでは上記の食物連鎖のように循環をするが、しかしエネルギーは循環せず、最終的には地球外(宇宙空間)に熱エネルギーなどとして出て行く(※ 東京書籍、数研、実教、啓林などの見解)。 (※ 第一出版の教科書を紛失したので、第一は分からない。)\n生物の利用するエネルギーのおおもとは、ほとんどが太陽からの光エネルギーであるので、光エネルギーが光合成などによって有機物に変えられるなどして化学エネルギーとして変換され、消費などによって熱エネルギーとして排出さて、その熱エネルギーが宇宙に放出されている、というような出来事になっている。\nつまり、エネルギーは生態系の中を循環はしていない。\nこのようなことから、検定教科書では「エネルギーは生態系の外に放出される」とか「エネルギーは生態系外に出ていく」などのように説明している。\nある生態系の一定面積内において、一定期間において生産者が光合成した有機物の総量を総生産量(そう せいさんりょう)という。生産者である植物は、自身の生産した有機物の一部を、自身の呼吸で消費している。呼吸によって使われた有機物の量を呼吸量という。\n総生産量から呼吸量を差し引いた量を、純生産量(じゅん せいさんりょう)という。\n純生産量の一部は、落ち葉となって枯れ落ちたり( 枯死量、(「こしりょう」) )、あるいは一時消費者によって捕食されたりする( 被食量、(「ひしょくりょう」) )ので、生産者の成長に使える量は、純生産量よりも低くなる。\n純生産量から、枯死量と被食量を差し引いた量を、成長量(せいちょうりょう)という。\n植物が成長に使える有機物の総量が、成長量である。\n消費者である動物は、食べた有機物の一部を、消化・吸収せずに排泄する。食べた有機物の総量を摂食量(せっしょくりょう)という。消化吸収せずに排出したぶんの量を、不消化排出量(ふしょうか はいしゅつりょう)という。\n消費者の同化量は、摂食量から不消化排出量を差し引いた量であるので、次の式になる。\nさらに、ある動物の群れを、集団全体で見ると、その群れの一部の個体は、食物連鎖で、より上位の個体によって捕食される。なので、群れの成長に使える有機物の総量から、被食量を差し引かねば、ならない。さらに、動物には寿命があり、かならずいつかは死滅する。死滅するぶんの量が死滅量である。\nこれらを考慮すると、消費者の成長量は、次の式になる。\nある環境において、生産者の被食量は、一次消費者の摂食量と等しい。\n同様に、一時消費者の被食量は、二次消費者の摂食量と等しい。\n食物連鎖で生物間を移動する物質は栄養素だけではなく、生命には望ましくない有害物も、食物連鎖を移動していく。\nたとえば、かつて農薬として使用されていたDDTは、自然界では分解されにくく、脂肪に蓄積しやすく、そのため食物連鎖を通じて高次の消費者へも取り込まれ、動物に害をおよばした。\n生物内で分解・排出できない物質は、体内に蓄積しやすいという特徴がある。さらに、その生物を食べる消費者の体には、もっと多く蓄積しやすい。このため、生態ピラミッドで上位の生物ほど、高濃度で、その物質が存在しているという現象が起き、この現象を生物濃縮(せいぶつ のうしゅく、biological concentration)という。\n毒性のある物質で、生物濃縮を起こす物質によって、高次の消費者を死亡させたり、高次の消費者の生命が脅かされた事例が過去に起きた。\n生物濃縮を起こす、危険物質は、DDTのほか、PCB(ポリ塩化ビフェニル)や有機水銀などである。\n現在、アメリカおよび日本などでは、DDTの使用は禁止されている。\nなんらかの理由で、生産量ピラミッド中での、ある生物の個体数の比率が変わっても、時間が経てば、もとどおりに近づいていく。\nそのため、しだいに、もとどおりに近づいていく。\n他の場合も考えてみよう。\nつりあいの状態から、なんらかの理由で、肉食動物が増えた場合も考えよう。仮に、この状態を「(肉食動物=増)」と書くとしよう。\nこのように、食物連鎖を通じて、個体数の比率は調節されている。\n(※ 画像を募集中。カナダでの、オオヤマネコ(捕食者)とカンジキウサギ(被食者)の個体数のグラフなどを作成してください。)\n環境破壊や森林伐採などで、ある地域で、大規模に森林が破壊されてしまうと、生産量ピラミッドの最下段の生産者が減ってしまうので、上の段の消費者の動物も、その地域では生きられなくなってしまう。\n人工的な環境破壊のほかにも、火山の噴火、山くずれ、洪水などの自然災害で、生物の量が大幅に減る場合もある。\n現在の日本に生息している ブラックバスの一種(オオクチバス) や アメリカザリガニ やブルーギル などは、もともとの生息環境は外国だが、人間の活動によって日本国内に持ち込まれ、日本に定着した生物である。このような外部から、ある生態系に持ち込まれた生物を、外来生物(がいらい せいぶつ)という。\nある生態系に、遠く離れた別の場所から持ち込まれた外来生物が入ってきてしまうと、(天敵がいない等の理由で外来生物が大繁殖しやすく、その結果、)持ち込まれた先の場所の生態系の安定が崩れる。なぜなら、その外来生物の天敵となる生物が、まだ、持ち込まれた先の場所には、いないからである。\nこのため、外来生物を持ち込まれた場所では、外来生物が増えてしまい、従来の生物で捕食対象などになった生物は減少していく場合が多い。\nその結果、外来生物によって(捕食対象などになった)従来の生物が単に減るだけでなく、絶滅ちかくにまで従来の生物が大幅に激減する場合もある。(※ 検定教科書ではここまで書いてないが、センター試験でここまで智識を要求する。※ 2016年の生物基礎の本試験)\n外来生物の例として、オオクチバス(ブラックバスの一種) や ブルーギル という肉食の魚の例があり、これら肉食の外来生物の魚が在来の魚の稚魚を食べてしまうので、在来の魚の個体数が減少してしまうという問題も起きている。\n一説では、湖沼によっては、オオクチバスやブル-ギルなどの繁殖した湖沼にて従来の魚が激減しているという(※ 数研の教科書や2016年センター試験がその見解)。\n社会制度としては、上述のように外来生物が従来の生物に多大な悪影響を及ぼしかねないので、日本では法律で外来生物の持込みが規制されている。生態系を乱す恐れの特に高い生物種を「特定外来生物」に指定して、飼育や栽培・輸入などを規制したり、他にも日本政府は生物多様性条約の批准を受けて日本国内で『生物多様性国家戦略』などの構想を打ち立てたりしている。\n植物でも、セイタカアワダチソウ や セイヨウタンポポ などの外来生物がある。\n沖縄のマングース(ジャワマングース)も外来生物であり、ハブの捕獲の目的で沖縄へと持ち込まれた。しかし、ハブ以外の生物も捕食してしまい、オキナワの固有種のアマミノクロウサギやヤンバルクイナなどを、マングースが捕食してしまうという問題が起こった。また、ハブは夜行性であり、そのためマングースとは行動時間が一致せず、ハブ捕獲の効果も低いことが分かった。\n現在、環境省は、対策として、沖縄でマングースを捕獲している。\n日本の外来生物には、これらのほか、アライグマ、カミツキガメ、ウシガエル、セイヨウオオマルハナバチなどが外来生物である。\n絶滅のおそれのある生物種を絶滅危惧種(ぜつめつきぐしゅ、an endangered species [1])という。絶滅危惧種のリストをレッドリストといい、それらをまとめた本をレッドデータブックという。\n世界各国の政府や環境団体などは、絶滅を防ぐための取り組みとして、レッドデータブックをまとめている。日本では、環境省によりレッドデータブックが作成されている。\n動植物への乱獲などによる絶滅を防ぐため、絶滅危惧種の取引を規制する条約としてワシントン条約などがある。\n干潟は、渡り鳥の生息地になっていたり、貝などの生息地になっている。現在では、干潟は自然保護の観点から、環境保護をされている。だが昔は、干潟はたんなるドロの多い場所と考えられており、そのため、干拓や埋立て工事などによって、多くの干潟が消失した。\nかつて冷蔵庫などの冷媒として利用されていたフロンガスという物質が原因で、オゾン層が破壊され減少していることが1980年代に分かった。\nオゾン層は紫外線を吸収する性質があるので、オゾン層が破壊されると、地上にふりそそぐ紫外線が増え、生物が被害を受ける。\n大気中で二酸化炭素の濃度が上がると、地球の気温が上昇すると考えられている。大気中の二酸化炭素には、赤外線を吸収する性質があるので、その結果、熱を吸収する働きがある。なので、二酸化炭素が増えると、地上の熱が宇宙に逃れず地球の周囲に閉じ込められるので、地上の気温が上がる、と考えられている。これが、温暖化の原因と考えられている。また、大気中の二酸化炭素が、熱を閉じ込める作用のことを 温室効果(おんしつ こうか) と言う。二酸化炭素など、熱を閉じ込める温室効果のある気体のことを温室効果ガスと言う。\n地球温暖化(ちきゅう おんだんか) の主な原因は、石油などの化石燃料(かせき ねんりょう)の大量使用によって、排気にふくまれる二酸化炭素(にさんかたんそ)により、空気中の二酸化炭素が増加したためと考えられている。他にも、森林伐採などによって光合成によって固定される炭素の総量が低下した結果も含まれる、という考えもある。\nもし、温暖化が進行して、南極の大陸上の氷や氷河の氷が溶ければ、海面上昇する。低地が水没する。海抜の低いツバル、モルディブ、キリバスの国は、海水面が上がれば、国土の多くが水没してしまう恐れがある。\nなお、北極の氷が溶けても、もともと北極海に浮かんでいる氷が水に変わるだけなので、海面は上昇しない。\nまた、温暖化によって、熱帯で生息していた蚊の分布域が広がることが心配されている。マラリアを媒介する蚊のハマダラカの生息域が広がる恐れが有る。\n酸性雨の原因は、化石燃料の排気にふくまれる窒素酸化物などの物質が、雨の酸性化の原因と考えられている。酸性雨により、森林が枯れたり、湖や川の魚が死んだりする場合もある。\n耕作や工業用地化や住宅地化を目的にした森林伐採などで、世界的に森林面積が減少している。森林の減少により光合成量が減るので、温暖化の原因にもなっていると考えられている。また、動物の生息域が減るので、生態系の保護の観点からも、森林破壊が問題である。\nなお、温暖化の化石燃料以外の他の原因として、森林伐採などによる森林の減少によって、植物の光合成による二酸化炭素の吸収量が減ったのも理由の一つでは、という説もある。\nまた、過度の森林伐採などにより、土壌の保水性が失われたために、その土地で植物が育たなくなる砂漠化(さばくか)も起きている。\n植物プランクトンによる光合成量と消費量のつりあう水深のことを補償深度(ほしょう しんど)という。\n補償深度は、外洋で水深100メートルまでに存在している。\n湖の水質で窒素やリンなどの濃度の高くなると、硝酸塩やリンは植物プランクトンにとっての栄養でもあるので、植物プランクトンにとっての栄養に富んだ湖になるので、そのような窒素やリンの濃度の高い湖の事を富栄養湖(ふえいよう こ)という。生活排水や農業廃水などに含まれるリンや窒素(ちっそ)化合物などの成分の流入によって、富栄養湖になっている場合もある。\nまた、湖や海などが、そのように窒素やリンなどの濃度の高い水質になる事を富栄養化(ふ えいようか, entrophication)という。\nいっぽう、窒素やリンなどの濃度の低い湖のことは「貧栄養湖」(ひん えいようこ)という(※ 数研の教科書で紹介)。\n検定教科書によっては「窒素」ではなく「硝酸塩」(しょうさんえん)と書いてある場合もあるが(たとえば啓林館)、これは硝酸は窒素化合物だからである。(※ 高校の『化学基礎』や『専門化学』などで硝酸を習う。)\nここでいう「塩」は、けっして塩化ナトリウムのことではない。そうではなく、「陽イオンと陰イオンとの化合物」というような意味での「塩」である。\n「硝酸塩」と書く場合は、「リン」のほうも「リン酸塩」と書いたほうがバランスが取れるだろう。(実際、啓林館の教科書はそうである。)\nつまり、上記の富栄養湖の記述を「硝酸塩」および「リン酸塩」を使って言い換えると、下記のような言い回しになる。\nのような記述になろだろう。\nさらに、これら硝酸塩やリン酸塩をまとめて、「栄養塩」または「栄養塩類」という事もある。「栄養塩」という語句を使って上記文を言い換えれば、\nのような記述にでも、なるだろう。\nなお、「栄養塩」という用語は、けっしてプランクトン限定ではなく、一般の樹木や草などの植物の生育に必要な硝酸塩やリン酸塩などのことも「栄養塩」という(※ 数研の検定教科書『生物基礎』でも、植物の遷移の単元でそういう用語を使っている)。\n\nさて、「栄養」と聞くと、よさそうに聞こえるが、これはプランクトンにとっての栄養という意味であるので、水中の水草や魚などにとっては、プランクトンの増大が害になっている場合もある。\nなぜなら、プランクトンにより日照がさえぎられるので(植物プランクトンは光の届く水面近くにいるので)、湖の底にある水草は光合成をできなくなる。\n自然界の河川や海水にも、栄養が溶けており、それらは水中の生物の生存にも必要な場合もあるし、プランクトンが少なすぎても、それを食べる魚介類が増えない(※ 数研の見解 )。また、微生物がそれら水中の窒素やリンを消費するなどして、ある程度の範囲内なら窒素やリンなどは自然に分解消費されていく(自然浄化)\nしかし栄養が過剰になりすぎると、プランクトンの大量発生などにより水系の生態系のバランスが崩れ、水草の現象や魚介類の大量死などの原因にもなる。過去には、過剰に富栄養化した湖や沿岸などで、魚介類の大量死が発見される場合もあった。(※ 数研の『生物基礎』に記述あり。)\n赤潮(あかしお、red tide)という海水面の赤くなる現象の原因も、水質の富栄養化である。(※ 数研の『生物基礎』に記述あり。)\nなお、淡水では、富栄養化により(赤潮ではなく)水面の青緑色になる「水の華」(みずのはな)が発生する(「アオコ」ともいう)。\nなお、プランクトンとは、水中を浮遊する微生物の総称で、そのうち光合成をするものが植物プランクトンとして分類されている。水中の、光合成しない浮遊微生物は動物プランクトンに分類される。\n(※ 範囲外、資料集などに記載あり) \nアオコの植物プランクトンは、シアノバクテリア類である。(たぶん暗記は不要。市販の受験問題集でも、ここまで問われていない(※ 旺文社の入試標準問題精講で確認)。)\nなお、「シアノバクテリア」という品種名ではなく、ミクロキスティスなどの品種名であり、そのミクロキスティスがシアノバクテリア類に含まれるという事(※ 数研の資料集『生物図録』229ページにそう書いてある)。\n(赤潮のプランクトンの名称については、資料集などに記載が無い。)\n赤潮で、色が赤く見える原因は、その赤潮を起こすプランクトンの色がわずかに赤いからであり、そのプランクトンが大量発生しているから赤く見えるという仕組みである。[2]。\n※ つまり、けっして、塩化ナトリウムの化学変化などで赤いわけではないようであるという事を、wikibooksでは言いたい。\n※ 入試には出ないだろうが、河川では水が流れてしまうので、プランクトンも流れてしまうためか、アオコは発生しないのが通常である(※ 教科書では、いちいち説明されていないが、丸暗記をしないで済ませるために、こんくらい分析しよう)。\nまた、赤潮の発生しやすい場所は、沿岸部や内海である。検定教科書でも、「内海」だと明記しているものもある(数研出版など)。つまり、外洋では、赤潮は発生しづらい(※ 教科書では、いちいち説明されていない)。\nおそらくだが、沿岸から遠いと、栄養塩が陸地から流れてこなかったり、または栄養塩が滞留しづらいからだろう。(※ 丸暗記せず、分析して理解するようにしよう。)\n\n有機物による水質の汚染の具合を定量的に測定するための指標として、BODおよびCODというのがある。\nBODは、生物学的酸素要求量というものであり、その水の単位量あたりの有機物を分解するのに、水中の微生物が必要とする酸素量が、どの程度かというものである。\nいっぽう、CODは、化学的酸素要求量というものであり、その水の有機物を酸化剤で酸化分解するのに必要な、化学計算に換算した際の酸素量のこと。\nBODおよびCODは、数値が大きいほど、有機物による汚染がひどい事を表す。\n", "url": "https://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%AB%98%E7%AD%89%E5%AD%A6%E6%A0%A1%E7%94%9F%E7%89%A9/%E7%94%9F%E7%89%A9IB%E2%80%90%E7%94%9F%E6%85%8B%E7%B3%BB"} {"text": "ある地域に住む同種の個体(indvidual)の群れを個体群(こたいぐん、population)という。ゾウの群れでもウマの群れでも、ハエの群れでも、同種の個体の群れでさえあれば、個体群という。\nショウジョウバエの雄と雌とのつがいを、エサの足りた飼育ビンなどの中で飼育すると、初めは個体数が急激に増加する。\nもし、エサが限りなく豊富にあり、居住空間も広ければ、どんどん増えていくことになる。しかし、実際には、エサには限りがある。\nある環境において、個体数の密度が高まると、食べ物の不足や、居住空間の減少、排出物の増加などによって、生活空間が悪化する。その結果、生まれてくる子が減ったり、あるいは生存競争が激しくなって死亡率が増えるなどして、個体数の増加が抑えられる。そのため、個体数の時間についてのグラフを書くと、図のようにS字型になる。このグラフのように、個体群における個体数の推移を描いたグラフを個体群の成長曲線(せいちょうきょくせん、growth curve)という。\n動物でも植物でも、このような現象が見られる。\nある環境においての、個体数の最大数を環境収容力(かんきょう しゅうようりょく、carrying capacity)という。\nまた、密度によって、個体の成長や発育などが変化することを密度効果(みつど こうか、density effect)という。\n植物でも密度効果はある。\nダイズでは、種をまいたときの密度に関わらず最終的な単位面積あたりの総重量が、ほぼ同じ値になる。\nこれを最終収量一定の法則(さいしゅうしゅうりょう いってい の ほうそく、law of constant final yield)という。\nトノサマバッタでは、幼虫時の密度で、成虫になったときの様子が変わる。\n幼虫時に密度が低いと、成虫は孤独相(こどくそう、solitarious phase)になる。子には遺伝しない。\n孤独相\nいっぽう、幼虫時に密度が高いと、成虫は群生相(ぐんせいそう)になる。子には遺伝しない。\n群生相\n移動能力の高さは、新しい環境を探すためのものである。\nこのように、個体群密度によって、同じ種の形態や行動に違いが出ることを相変異(そうへんい)という。アブラムシやヨトウガでも相変異が見られる。\n動物の、ある個体群で、個体の生存数を数表にしたものを生命表(せいめいひょう、life table)といい、生命表の内容をグラフにしたものを生存曲線(survival curve)という。\n種によって生存曲線は違い、主に3つの型に分かれる。\n晩死型と早死型と平均型という3つである。\n晩死型は、死期が寿命の近くである。早死型は、生まれてから、すぐに死ぬ個体が多い。平均型は、時期によらず死亡率が、ほぼ一定である。\n魚類など、産卵数の多い生物は、子育てをせず、そのため早死型が多い。\nいっぽう、大型の哺乳類は、晩死型である。\n鳥類・爬虫類などは平均型である。\n\n台風や山火事、土砂崩れや噴火など、環境に変化を与える現象を 攪乱(かくらん、かく乱) という。\nたとえば、台風で、熱帯のサンゴ礁が傷付くのも攪乱である。\n種の多様性について、いちばん多様性を多くする攪乱の規模は、攪乱が中程度の場合であり、この理論を 中規模攪乱説(ちゅうきぼ かくらんせつ) という。\nたとえば熱帯のサンゴ礁では、中規模の台風が起きた方が、サンゴの種の多様性が高まることが知られている。オーストラリアのヘロン島でのサンゴ礁の調査で、このような中規模攪乱説どおりの事例が知られている。\nたとえば右の図のような地域の場合、30%くらいの被度で、もっとも種数が多くなる。\n攪乱が強すぎると、攪乱に強い種しか生き残れない。\n攪乱が弱すぎると、通常時の競争に強い種しか、生き残れない。\n人間が森林を伐採したりするなどの、人為的なことも攪乱である。\n森林の場合、攪乱がないと、陰樹ばかりになる。攪乱が起きて、噴火などで、いったん樹木が焼き払われると、そのあとの地には、まず陽樹が生えてくるようになる。\n里山(さとやま)など、人里ちかくの森林では、かつては人々が林業などで木材として森林資源を利用してたので、かく乱が適度に行われていた。だが、最近では林業の後継者不足や経営難などで放置される森林も増えており、そのため木材として伐採されなくなり、攪乱されなくなったので、種の多様性が低下していると主張する者もいる。種の多様性確保のため、適度に木材などの森林資源を理容すべきだと主張する者もおり、日本国での小中高の公教育での検定教科書なども、そのような立場に立っている。\n持続可能な社会のためには、持続可能な生態系が必要である。人間が食べる動植物は、生態系があるからこそ生存できるのである。もし、動植物がいなくなれば、人間にとっても食べ物が無くなり、人間も滅ぶ。生態系の維持のためには、根本的な対策は、人間が、資源の消費や森林伐採された土地の利用などに基づいた現代の文明を見直して、消費を控え、持続可能な文明へと変えていく必要があるのかもしれない。そのためには我慢をする事が今後の人類には必要であり、今後はおそらく現代のような放漫な消費ができなくなり、かつて住宅地や工業用地などとして開発された土地のいくつかを農地や雑木林などにも戻す必要もあるかもしれない。現時点で存在している里山を維持するだけでは、すでに宅地化などの開発によって消失した里山は、復活しないのである。\nまた国によっては人口も減らす必要もあり、おそらく今後は人間が不便も感じることもあるだろう。\n学校教科書は、政治的に中立でなければならないので、具体的な環境対策には踏み込めない。しかし、自然環境は、そのような人間の都合になどには、合わせてくれないのである。たとえば日本ではニホンオオカミや野生トキなど日本の固有種の動物のいくつかが絶滅したが、けっして自然環境は、日本人に合わせて、ニホンオオカミなどの生物の絶滅のスピードを緩めてなんて、くれなかったのである。日本の政治家や学校などが、「日本は素晴らしい国」だと言っても、日本での動植物の生態の歴史の観点から見れば、日本国および日本人は、ニホンオオカミや野生トキなどを絶滅させた環境破壊を行ったという、不名誉な実績のある国および国民なのである。人間の学生が「環境問題や環境の生物学について、勉強しよう」などと考えている間にも、人類が生態系に負荷を与える活動を続けていくかぎり、生物種は絶滅に近づいていくのである。\n商人や、一部の政治家や有権者にとっては、人間が資源を消費をするほうが商人が売買をしやすく、そのため税収も増えるので、彼らには都合が良い。しかし、そのような人間中心の都合に、生態系は合わせてくれない。\n乱獲や農薬の乱用によって、絶滅したり激減した生物種も、世界の自然界には、事例が多い。\n自然界だけが日本人の都合になんて合わせてくれないどころか、人間社会の内部ですら、日本以外の外国は、日本国の都合になんて合わせてくれない。たとえば、魚などの海洋資源の漁獲の規制のありかたについての問題は、魚は各国の領海や沿岸を移動するため、漁獲資源は世界的な感心後とであり、諸国が自国の立場を主張するので、たとえ他国の立場も尊重することはあっても、けっして他国の立場には従わない。だから世界各国の主権国家は、日本国の命令には従わないので、仮に日本が自国の漁獲を伝統文化などと主張しても、外国からすれば、「日本の文化」などと主張するだけでは根拠不十分として、それだけでは日本国の主張には従ってくれない。また、ヨーロッパの国では、環境問題が国を越えて影響を与えることもあり、環境問題は国際問題として取り組むべきだと、考えられている。\nさらに、じつは農地などの里山ですら人間が利用しやすいように環境を改変した人工的な環境であり、けっして本来の自然環境ではなく、農地などは人間にとって不要な森林を「開墾」(かいこん)などといって森林伐採するなどして環境破壊されたあとの状況なのである。(農業が森林伐採を伴うことは、検定教科書でも説明されている。[1])よく書籍などでは、途上国での焼畑(やきはた)農法が環境破壊として問題視されるが、何も農業による環境破壊は、焼畑に限った話ではないのである。水田も、森林伐採をした結果の場所名のである。ただし、アスファルトやコンクリートなどで舗装したりするのと比べれば、農地などの里山のほうが生態系への負荷が少なく、里山のほうがアスファルト舗装よりかは種の多様性が大きくてマシである、ということである。\nまた、ひとまとめに「農地」と言っても、現代の農法は、江戸時代などの古くからの農法とは異なり、現代では農業に化学肥料や農薬などを用いる場合が多く、暖房や照明なども用いる場合があり、現代の農法の多くは石油資源などの消費に頼った農法である。現代の食生活は、現代の農法を前提としており、その農法は、資源の消費を前提としている。いつの日か、人類は、食生活を見直す必要があるのかもしれない。\n\nハチ、アリ、シロアリなどでは、同種の個体が密集して生活し、コロニーとよばれる群れを形成している。これらの昆虫(ハチ、アリ、シロアリ)は、社会性昆虫と呼ばれる。\nシロアリの場合、産卵を行う個体は、ふつうは1匹に限られる。その産卵を行うアリが、女王アリである。\n女王アリ以外のメスは不妊である。\n女王以外のアリには、ワーカーや兵アリがいる。\nワーカーとは、いわゆる「はたらきアリ」のことで、食物の運搬や幼虫の世話などの仕事をする個体のことである。\nシロアリのワーカーや兵アリには生殖能力が無い。\nハチも同様に、女王バチやワーカーがいる。ハチでも、産卵を行うのは女王ハチのみであり、ワーカーや兵ハチには生殖能力が無い。\n(ほうかつ てきおうど)\nニワトリやニホンザルやオオカミなどで、よく見られる。\nニワトリの場合、何羽かを檻(おり)の中で買うと、つつきあいをして順位が決まる。順位の高いほうが、つつく。順位のひくいほうが、つつかれる。\nニホンザルの場合、順位の高い個体のほうが、順位の低い個体の尻の上に乗っかり、これをマウンティングという。\nある種の個体群について、必要とする資源の特徴や、活動時間などのように、生態系の中で占めている地位を生態的地位(ニッチ、niche)という。\n異種の個体群のニッチが似ている場合、ニッチを奪い合って競争が起きる場合が多いので、そのようなニッチの似ている異種個体群が共存するのは難しい。\nたとえばゾウリムシ(P.caudatum)とヒメゾウリムシ(P.aurelia)は、ともに細菌を食物とするためニッチが似ており、よって共存は難しい。\nいっぽう、タカとフクロウは、食べ物が似ているが、活動時間が違うため、自然界なら共存は可能である。\nゾウリムシとヒメゾウリムシのように、異種がニッチを奪い合って競争することを種間競走(しゅかん きょうそう、interspecific competition)という。\nヒメゾウリムシのほうが体が小さく、そのため、少ない食料でもヒメゾウリムシは有利である。なので、ヒメゾウリムシとゾウリムシを、たとえば狭い容器などに入れて競走させると、ゾウリムシが競争にやぶれて減少し、やがてゾウリムシは絶滅するという場合が多い。\nこのように、異種が競争して、どちらかが絶滅することを競走的排除(きょうそうてき はいじょ、competitive exclusion)という。\nニッチが異なっていれば、同じ場所であっても、異種の個体群が共存できる場合がある。\nたとえばミドリゾウリムシとゾウリムシは、ニッチが微妙に異なっており、そのため共存しやすい。ミドリゾウリムシは光合成でエネルギーを生産できる。\n縄張り(テリトリー)\nシジュウカラは一夫一妻制。\nアリとアブラムシ\nサメとコバンザメ\n寄生者、宿主(しゅくしゅ)\n寒冷地ほど、体が大型化。\nホッキョクグマ(大きい)と、ツキノワグマ(小さい )との関係など。\n寒冷地の動物は、耳などの突起物が小型である。寒冷地であるほど、突起物が小型化している。\n", "url": 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